〈ポイント解説〉 役員報酬の税務 【第22回】 「選択型DCを導入した場合の留意点」 税理士 中尾 隼大 ○●○● 解 説 ●○●○ (1) 企業型DCとは 企業型DCとは、企業や企業に在籍する役職員が拠出した掛金とその運用収益との合計額により、将来の給付額が決定される年金制度の1つである。企業型DCは、全社員に拠出を義務付け、企業側が掛金を負担することが原則ではあるが、給与等を減額した上で、当該減額分を企業が掛金として負担するか給与等に上乗せするかを役職員が選択することもできる(以下、「選択型DC」という)。これら企業型DCは、導入する企業が年々右肩上がりに増加しており、2020年3月末時点において36,018社(723.1万人)に及んでいるとのことである(※1)。 (※1) 厚生労働省「規約数等の推移(規約数、事業主数、企業型年金加入者数、個人型年金加入者数)」 企業が給与等を減額した上で掛金を拠出する選択型DCの最大のメリットは、給与等を減額することで、企業が追加負担なく確定拠出年金制度に加入できることにある。そして、減額した給与等が損金算入可能な掛金負担額となることで個人所得税の節税につながるとともに、賃金総額や標準報酬月額が減少し、企業と役職員双方において社会保険料負担が軽減されることもメリットであるといえる。さらに、税制上は運用益が非課税となることも魅力だろう。 企業が選択型DCを導入することで、従業員にとっては給与額や厚生年金の額に影響があるため、その導入には従業員の理解こそ何より必要となる。現に、確定拠出年金法では、その導入に際して労使合意を求めており、この点が導入時の最大のネックであるように思われる(確定拠出年金法3①)。この点、厚生労働省社会保障審議会企業年金・個人年金部会は、従業員に対して、正確な説明を行うべきであるとして、法令解釈通知に明記すべきと要求しているところだ(※2)。 (※2) 厚生労働省「社会保障審議会企業年金・個人年金部会における議論の整理」17頁。 企業型DCは、運用先を本人が自由に選択でき、預貯金としての運用を選択することも可能であることから(※3)、説明においてはこのような運用方法のリスク等に重きが置かれていると推察される。 (※3) その他、DC制度については厚生労働省HP「確定拠出年金制度の概要」を参照のこと。 (2) 税務上の留意点 ① 定期同額給与への該当性 税務上、選択型DC導入時にまず問題となり得るのは、導入する場合における役員給与の減額である。この場合においては、定時改定時期に合わせて導入するケースや、企業形DCとして法人が追加負担するケースであれば、税務上のリスクはない(※4)。 (※4) 法令135三において、確定拠出年金法の定めに基づいて法人が負担した掛金は損金算入する旨が示されている。 問題は、定期同額給与における臨時改定事由に当たるか否かである。ここで、臨時改定事由の具体例としては、分掌変更や組織再編であれば臨時改定が認められるとしか示されていないが(法基通9-2-12の3)(※5)、定期同額給与を臨時に改定するやむを得ない事情があれば改定が可能である。しかし、選択型DCの導入がやむを得ない事情として認められるとは考えにくい。したがって、選択型DCを導入する場合は、定期同額給与の定時改定時期に合わせて行わなければ、一定額が損金不算入となる。 (※5) 【第11回】参照。 選択型DCを導入する場合において、意外と忘れがちな点であるように思われるため、留意が必要だろう。 ② 役員退職給与の過大性判断 もう1点留意したいのが、役員退職時における役員退職給与の過大性判断である。 企業型DCの対象となっていた役員が退職し、一時金として年金を受け取ることを選択した場合は退職所得となる。退職所得は一般に税額が優遇されているため、一時金として受け取る者が多いと思われるところ、通常、法人に役員の退職というイベントが発生した際には、法人から役員退職給与が支給されることがあり、当該役員退職給与が過大であれば、当該過大部分は損金算入されないのは周知のとおりである(法法34②、法令70二)(※6)。 (※6) 【第12回】参照。 この場合において、役員退職給与としての支給の他、役員であった期間における企業型DCの給付額をも勘案して、その役員退職給与の額が不相当に高額であるかどうかの判定を行うものとすると示されているため(法基通9-2-31)、こちらも留意が必要である。 (了)
組織再編税制、グループ法人税制及びグループ通算制度の 現行法上の問題点と今後の課題 【第19回】 (最終回) 「おわりに」 公認会計士 佐藤 信祐 《終章:おわりに》 本連載では、組織再編税制、グループ法人税制及びグループ通算制度に対する筆者の問題意識をまとめた。現時点で筆者が考えている「あるべき組織再編税制、グループ法人税制及びグループ通算制度」をまとめると下記のようになる。なお、本来であれば、グループ通算制度についても、発行済株式又は出資の総数又は総額の3分の2以上に相当する数又は金額の株式又は出資を保有する関係にまで広げるべきであると考えているが、第2回で解説したように、この点について分析するためには、諸外国の租税法を分析する必要があるため、ここではその対象から除外している。 (1) 組織再編税制、グループ法人税制の基本的な考え方 (2) 組織再編税制の計算項目 (3) その他諸税 (4) グループ通算制度との整合性 (※1) 株式交換等・株式移転に係る時価評価課税を残す場合には、親子逆転型の株式交換、完全支配関係内のスクイーズアウトの明確化を図るとともに(第8回)、単独株式移転をグループ法人税制の対象に含める(第5回)。 (※2) 第13回で解説したように、個人又は外国法人による支配関係が生じた場合の規制も必要になるため、欠損等法人の制度を廃止することは難しいと思われる。 本連載では、実務家の立場から、組織再編税制、グループ法人税制及びグループ通算制度の問題点を挙げるとともに、その解決策としての税制改正について検討を行った。もちろん、本連載で提案した税制改正は、実務家の問題意識から提案したものに過ぎないことから、実際には、全く異なる税制改正が行われると思われる。 なお、本連載では、諸外国の税制を分析していない。本来であれば、諸外国の税制を分析することにより、さらに深い分析を行う必要があると思われる。この点については、いずれ時間のある時に行いたい。 そして、今後も、組織再編税制、グループ法人税制及びグループ通算制度が改正される可能性があることから、改正に応じて情報提供ができるように努める予定である。 (連載了)
基礎から身につく組織再編税制 【第24回】 「適格分割型分割を行った場合の分割承継法人の取扱い」 太陽グラントソントン税理士法人 ディレクター 税理士 川瀬 裕太 今回は、適格分割型分割を行った場合の分割承継法人の取扱いについて解説します。 1 適格分割型分割を行った場合の資産・負債の受入れ(原則) 分割法人が適格分割型分割により、分割承継法人にその有する資産・負債の移転をしたときは、分割直前の帳簿価額で引継ぎをしたものとされるため、分割承継法人が受け入れる資産・負債の取得価額は、分割法人の分割直前の「帳簿価額」となります(法法62の2、法令123の3)。 「帳簿価額」とは、税務上の帳簿価額をいうため、税務上否認した金額も含めて受け入れることとなります(法基通12の2-1-1)。 2 適格分割型分割により受け入れた「棚卸資産」の取扱い 棚卸資産の取得価額は、次の金額の合計額となります(法令28③)。 3 適格分割型分割により受け入れた「減価償却資産」の取扱い (1) 受入価額 税務上の帳簿価額で引き継ぐこととなるため、税務上否認した金額(償却超過額)を含めた帳簿価額で引き継ぎます。 (2) 償却限度額の計算の基礎となる取得価額 受け入れた価額とは別に、償却限度額の計算の基礎となる取得価額は、次の金額の合計額となります(法令54①五ロ)。 (3) みなし損金経理 分割法人から引き継ぐ償却超過額は、分割承継法人において、過年度に償却費として損金経理した金額として取り扱われます。 分割法人の帳簿価額を減額して受け入れたときも、その減額部分を分割承継法人の過年度の損金経理額とみなすこととされています(法法31④⑤)。 (4) 耐用年数 耐用年数は、中古資産の耐用年数の規定を適用することができますが(耐令3①)、分割法人が中古資産の見積耐用年数によって計算していたときは、その耐用年数によることもできます(耐令3②)。 4 適格分割型分割により受け入れた「繰延資産・一括償却資産」の取扱い (1) 取得価額 減価償却資産と同様に、税務上の帳簿価額で引き継ぐこととなるため、税務上否認した金額(償却超過額)を含めた帳簿価額で引き継ぎます。 (2) みなし損金経理 分割法人から引き継ぐ償却超過額は、分割承継法人において、過年度に償却費として損金経理した金額として取り扱われます(法法32④⑥、法令133の2⑨)。 分割法人の帳簿価額を減額して受け入れたときも、その減額部分は分割承継法人の過年度の損金経理額とみなすこととされています(法法32⑦、法令133の2⑩)。 5 適格分割型分割により受け入れた「貸倒引当金」の取扱い 分割承継法人が貸倒引当金を分割法人から受け入れた場合は、分割承継法人の分割事業年度の所得金額の計算上、益金の額に算入することとなります(法法52⑪)。 6 所有期間の通算 受取配当等の益金不算入の関連法人株式等の判定、外国子会社配当益金不算入の外国子会社の判定、所得税額控除の配当元本の所有期間の計算において、分割法人が保有していた期間は分割承継法人で保有していたものとみなされます。 7 適格分割型分割により増加する「資本金等の額」 分割承継法人において分割により増加する資本金等の額は、次のとおりです(法令8①六)。 ① 加算項目 (※) 分割法人における分割型分割により減少する資本金等の額 ② 減算項目 8 適格分割型分割により増加する「利益積立金額」 分割承継法人において分割により増加する利益積立金額は、次のとおりです(法令9①三)。 ① 加算項目 ② 減算項目 適格分割型分割により増加する資本金等の額、利益積立金額の算式を図にすると、下記のようになります。 9 具体例 下記では具体例を用いて、適格分割型分割を行った場合の分割承継法人の取扱いについてみていきます。 〈分割法人の貸借対照表〉 〔前提〕 〔分割承継法人の受入税務仕訳〕 〇資産・負債 適格分割型分割の場合は、簿価で受け入れることとなります。 〇増加する資本金等の額 分割法人の分割型分割直前の資本金等の額に移転割合を乗じて計算します。 〇増加する利益積立金額 移転資産の帳簿価額から移転負債の帳簿価額と増加する資本金等の額を減算して計算します。 ◆適格分割型分割を行った場合の分割承継法人の取扱いのポイント◆ 原則として資産は税務上の帳簿価額で受け入れることとなります。 分割法人の移転する資産・負債に対応する資本金等の額、利益積立金額を分割承継法人は引き継ぎます。 (了)
値上げの「理屈」 ~管理会計で正解を探る~ 【第10回】 「価格弾力性を理解する」 ~「マニア」にロック・オン!~ 公認会計士 石王丸 香菜子 登場人物 《デジタル・ポット2.0/販売計画》 * * * カケイくんのような新製品好きのマニア、あなたの周りにもいませんか? 新製品の発売を待ち望み、即座にゲットする新しい物好きの人は、一定数いるものです。 新製品が世の中に普及していくプロセスを説明する考え方として、『イノベーター理論』が知られています。新製品をまず購入するのは、「イノベーター」と呼ばれるマニア層です。新しい物や最先端の物が大好きで、高価格でも新製品を購入する傾向があります。その後に新製品を購入するのは、「アーリー・アダプター」と呼ばれる層です。マニアではありませんが、流行や世の中の動向に敏感で、自らが良いと判断した新製品を抵抗なく取り込む層です。 新製品の市場投入に際し、こうした層をターゲットとして、あえて高価格設定することを「スキミング・プライシング(上澄み吸収価格設定)」と言います。マニア層や富裕層に狙いを定めてすくい取る(=skim)ということですね。iPhoneの価格戦略などが典型です。 * * * 《デジタル・ポット2.0/低価格シミュレーション》 * * * 【第2回】でも取り上げましたが、価格が1%下がったとき需要量が何%増えるかを「需要の価格弾力性」と呼びます。『デジタル・ポット2.0』は、販売価格を((@11,000円- @5,000円)÷ @11,000円 ≒)55%下げても、需要量は((6,000個 -4,000個)÷ 4,000個 =)50%しか増加しないので、需要の価格弾力性は(50% ÷ 55% ≒)0.9です。需要の価格弾力性が1より小さい場合、販売価格を下げても大幅に需要量が増えるわけではないので、売上高は減少します。また、販売価格を下げた分、1個当たりの限界利益も減るので、総利益は大きく減少してしまいます。 見方を変えると、需要の価格弾力性が小さい製品は、多少強気に高価格としても販売量が激減しないので、スキミング・プライシングが成功する見込みがあるといえます。 * * * 《セルフ・プランター/販売計画》 * * * 新製品の市場投入に際し、一気に市場へ普及するような低価格に設定することを「ペネトレーション・プライシング(市場浸透価格設定)」と言います。『イノベーター理論』の「イノベーター」や「アーリー・アダプター」だけでなく、それ以降に新製品を追随して採用する多数派層も含めた、広い層をターゲットにした戦略です。 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 * * * 《セルフ・プランター/高価格シミュレーション》 * * * 『セルフ・プランター』は、販売価格を((@1,000円 - @800円)÷ @800円 =)25%上げただけで、需要量は((30,000個 -20,000個)÷ 30,000個 ≒)33%も減少してしまうので、需要の価格弾力性は(33% ÷ 25% ≒)1.3です。需要の価格弾力性が1より大きい場合、販売価格を上げると大幅に需要量が減るので、売上高は減少します。 裏返すと、需要の価格弾力性が大きい製品は、販売価格を下げることで一気に需要量が増えるので、ペネトレーション・プライシングが成功する可能性があります。 * * * * * * 累積生産量が増加するにしたがって、製品の単位当たりコストが減少していく現象は、「経験曲線効果」と呼ばれます。累積生産量が増えることで、能率が上がったり、作業方法が改善されたりすることが主な要因です。経験曲線効果が強く働くような製品は、大量生産することで単位当たりコストが下がるので、ペネトレーション・プライシングによって利益を得られる見込みがあるでしょう。 * * * (了)
税効果会計を学ぶ 【第21回】 「遡及適用及び修正再表示に関する税効果会計の取扱い」 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 今回は、遡及適用及び修正再表示により繰延税金資産又は繰延税金負債を変更する場合の取扱いについて解説する。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 遡及適用に関する取扱い 1 遡及適用 会計方針は、正当な理由により変更を行う場合を除いて、毎期継続して適用する(「会計方針の開示、会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」(企業会計基準第24号。以下「過年度遡及会計基準」という)5項)。 正当な理由により会計方針を変更した場合、新たな会計方針は過去の財務諸表に遡って適用していたかのように会計処理する。これを「遡及適用」という(過年度遡及会計基準4項(9))。 新たな会計方針を遡及適用する場合には次の処理を行う(過年度遡及会計基準7項)。 2 遡及適用に関する繰延税金資産又は繰延税金負債 会計方針の変更により遡及適用した連結会計年度及び事業年度の連結財務諸表及び個別財務諸表(以下「遡及適用した年度の比較情報」という)において、資産又は負債の額が変更される場合がある。 この場合、当該変更に伴い一時差異が生じるときは、当該一時差異に係る繰延税金資産又は繰延税金負債の額は、遡及適用した年度の比較情報に反映させることになる(税効果適用指針57項)。 3 子会社等の留保利益 子会社等が会計方針を変更し当該会社の留保利益が変更されることにより、遡及適用した年度の比較情報において子会社等に対する投資に係る連結財務諸表固有の一時差異の額が変更される場合がある。 この場合、当該一時差異に係る繰延税金資産又は繰延税金負債を計上しているときは、当該一時差異の額の変更に係る繰延税金資産又は繰延税金負債の額を遡及適用した年度の比較情報に反映させる(税効果適用指針58項)。 4 繰延税金資産の回収可能性 遡及適用に伴い、将来の利益の額が変更されることに対応して、繰延税金資産の回収可能性の判断における将来の一時差異等加減算前課税所得の見積額が変更される場合がある。 この場合、過年度遡及会計基準17 項(会計上の見積りの変更に関する原則的な取扱い)に従って会計方針の変更を行った年度以降において、変更後の将来の一時差異等加減算前課税所得を前提として、繰延税金資産の回収可能性を判断することになる(税効果適用指針59項)。 また、遡及適用により過年度において回収可能性適用指針15項から32項に従って判断した企業の分類を見直す場合、当該見直しに伴う影響は、会計方針の変更を行った年度の財務諸表に反映させる(税効果適用指針59項)。 5 遡及適用と税効果会計の適用の基本的な考え方 以上に述べた遡及適用に関する税効果会計の基本的な考え方は次のとおりである(税効果適用指針の「[設例12-1]会計方針の変更に伴う遡及適用による繰延税金資産の取扱い」を参照)。 ここで、繰延税金資産の回収可能性の判断は、会計上の見積り(過年度遡及会計基準4項(3))に該当する事項と考えられ、次のように処理する。 また、企業の分類及び繰延税金資産の取扱いについては、次のように処理する。 ※下記の記載は、会計方針の変更に伴い、新たな会計方針を遡及適用した結果、表示期間のうち最も古い期間の期首(X2年3月期の期首)における棚卸資産に係る将来減算一時差異が遡及適用前よりも大きくなったことにより、X2年3月期の期首において、将来減算一時差異を十分に上回る課税所得が生じているとはいえない状況となったことを前提としている。 Ⅲ 修正再表示に関する取扱い 1 修正再表示 過去の財務諸表に誤謬が発見された場合、当該誤謬の訂正は過去の財務諸表に反映する。これを「修正再表示」という(過年度遡及会計基準4項(11))。 過去の財務諸表における誤謬が発見された場合には、次の方法により修正再表示する(過年度遡及会計基準21項)。 2 修正再表示に関する繰延税金資産又は繰延税金負債 過去の誤謬により修正再表示した連結会計年度及び事業年度の連結財務諸表及び個別財務諸表(以下「修正再表示した年度の比較情報」という)において、資産又は負債の額が変更される場合がある。 この場合、当該変更に伴い一時差異が生じるときは、当該一時差異に係る繰延税金資産又は繰延税金負債の額を修正再表示した年度の比較情報に反映させる(税効果適用指針60項)。 3 子会社等の留保利益 子会社等において過去の誤謬により当該会社の留保利益が変更され修正再表示が行われた場合で、かつ、当該修正再表示した年度の比較情報において子会社等に対する投資に係る連結財務諸表固有の一時差異の額が変更される場合がある。 この場合、当該一時差異に係る繰延税金資産又は繰延税金負債を計上しているときは、当該一時差異の額の変更に係る繰延税金資産又は繰延税金負債の額を修正再表示した年度の比較情報に反映させる(税効果適用指針61項)。 4 繰延税金資産の回収可能性 修正再表示した年度の比較情報における将来の一時差異等加減算前課税所得の見積額や過年度において回収可能性適用指針15項から32項に従って判断した企業の分類を見直す場合、当該見直しに伴う影響は、当該修正再表示した年度の比較情報に反映させる(税効果適用指針62項)。 5 修正再表示と税効果会計の適用の基本的な考え方 以上に述べた修正再表示に関する税効果会計の基本的な考え方は次のとおりである(税効果適用指針の「[設例12-2]修正再表示による繰延税金資産の取扱い」を参照)。 ※下記の記載は、次のことを前提としている。 (a) B社では、X3年3月期において、過去の期間(X2年3月期以前)の売上の過大計上が発見されたため、修正再表示を行った。 (b) X1年3月期及びX2年3月期の回収可能性適用指針におけるB社の分類は、(分類3)に該当する。 (c) 修正再表示により、表示期間のうち最も古い期間の期首(X2年3月期の期首)の回収可能性適用指針におけるB社の分類は、(分類5)に該当する。 ここで、修正再表示した年度の比較情報における将来の一時差異等加減算前課税所得の見積額や企業の分類の判断を変更する場合、当該変更に伴う影響は、当該修正再表示した年度の比較情報(X2年3月期)に反映させることになる。 前述の前提により、X2年3月期の期首において、修正再表示によりB社の分類は(分類5)に変更されることから、B社がX2年3月期の期首において修正再表示前に計上していた繰延税金資産の回収可能性はないものとなる。この処理は、新たな会計方針の遡及適用の場合(「Ⅱ 遡及適用に関する取扱い」)とは異なるものである。 (了)
税理士が知っておきたい 不動産鑑定評価の常識 【第13回】 「争いが生じやすい中古建物の評価」 ~鑑定評価で重視される市場性の観点~ 不動産鑑定士 黒沢 泰 1 建物が古くなっても固定資産税評価額が下がらない理由 これに関しては次の2つの要因が考えられますが、本稿と深く関連するのは要因2です。 ➤ 要因1 固定資産税の評価の仕組みに起因する場合 ➤ 要因2 建物の評価額の下限が再建築価格の20%とされていることに起因する場合 ➤ 要因1について 建物は3年に一度の評価替時に次の算式で評価額を見直すこととされていますが、建物が古くなり経年減点補正率が下がっても、再建築価格が上昇していくことがあります(人件費や資材高騰によります)。このような場合、建物は見かけ上は古くなっても、前年度の評価額のまま据え置かれることがあります。 (※1) 課税の対象となった建物と同一のものを評価替えの時点で新たに建築する場合に必要とされる建築費をいいます。 (※2) 建物は築年数の経過によって損耗していくため、経過年数の状況に応じて価値を減少させるために適用する割合をいいます。 ➤ 要因2について 経年減点補正率は一定年数を経過しても、再建築価格の20%を超えて下がらない仕組みとなっています(本稿では掲載を省略しますが、関心のある方は固定資産評価基準別表第9「木造家屋経年減点補正率基準表」、別表第13「非木造家屋経年減点補正率基準表」を参照ください)。そのため、いくら建物が古くなっても、それだけの理由では評価額は下がらないということになります(イメージ図を以下に掲げます)。 〈一定年数以上経過した建物の場合〉 それでは、この20%の根拠はどこに求めればよいでしょうか。これに関しては賛否を含めていくつかの見解が示されていますが、筆者の調査したところによれば、おおむね次の2つに集約されます。 2 鑑定評価の視点 鑑定実務においては、建物価格を求めるに当たり定額法等を用いて減価修正を行う場合でも、残価率をゼロとして評価する(=再調達原価(※3)全体を減価の対象として捉える)ことが一般的です。 (※3) 固定資産税の評価では(※1)の再建築価格に相当するものです。 その理由は、鑑定評価では市場性の側面を重視して価格にアプローチしており、経済的耐用年数満了時においては、通常、市場価値はないものと判断しているためです。 もちろん、建物が建築後一定期間を経過したという理由だけでは、それがそのままゼロ評価につながるわけではなく、価格時点において今後何年使用に耐え得るかという点を判断の上で鑑定評価が行われます。その際、対象不動産の用途や利用状況に即して劣化の程度や市場競争力の程度を判定し、これに応じた経済的残存耐用年数を査定することが建物の鑑定評価では重要となります。 例えば、建築当初に経済的耐用年数が30年と見積もられていたところ、耐用年数が満了してもその後3年間は利用価値(経済価値)が認められると判定されれば、現価率(※4)は、 と計算されます。 (※4) ここでは、再調達原価に対する現時点での価値割合を示すという意味で「現価率」という用語を使用しています(「原価率」とは異なります)。 鑑定評価の経験則から推した場合、建築後の年数が相当経過した建物に関して固定資産税評価で適用される残価率(20%)は現実を反映しないのではないかという声が多く聞かれます(さらに、建物の老朽度が著しい場合は、冒頭に述べたように「建物及び敷地の評価額 = 更地価格 - 家屋の撤去費」という考え方が適用されることがあります)。 3 税務の常識(財産評価基本通達、固定資産評価基準)と鑑定評価の常識との相違点 以上、中古建物の評価額に関し、財産評価基本通達や固定資産評価基準を適用して算定した結果と鑑定評価額との間に乖離が生ずる場合の要因を検討してきました。これらを通じ、鑑定評価においては、財産評価基本通達や固定資産評価基準に比べて、物的な側面以上に市場性という観点が一層重視されることが読み取れたと思います。一概に中古建物といっても、鑑定評価では、他の類似物件と比較してそれが市場でどれだけの競争力を有しているかを評価に反映させるという考え方が重視されているということです。財産評価基本通達や固定資産評価基準のような税務評価と鑑定評価の間に捉え方や価格の乖離が生じる要因はこの点にあるものと推察されます。 なお、今まで述べてきた内容と一部重複する点もありますが、鑑定評価の過程では個々の建物を精査してその損傷度を把握する(= 物理的な減価要因の把握)だけでなく、機能的な減価要因(= 耐震性が劣る等)及び経済的な減価要因(= 代替不動産と比較して競争力が劣る等)も把握の上、評価額に反映させることが必要となります。 これらの事情も踏まえ、建物の評価に関しても税務の常識と鑑定評価の常識との間には本質的な相違点があるものと理解しておけば、疑問点の払拭に少なからず役立つのではないでしょうか。 参考までに、中古建物の評価額に関し、固定資産評価基準や財産評価基本通達の取扱い(再建築価格の20%とすることが妥当である旨)が争点とされた事例としては、例えば以下のものがあげられます。 (了)
〈知識ゼロからでもわかる〉 ブロックチェーン技術とその活用事例 【第2回】 「ブロックチェーンの技術と特徴」 東京ハッシュ株式会社 代表取締役 段 璽 はじめに ブロックチェーンは、取引記録が全てブロックの中に入っており、それらがチェーンによって繋がって今までの全ての取引が記録されていることになる。ブロックチェーンをより理解するために、ブロックチェーンに活用されている技術や使用される専門用語を今回は概説する。 1 P2Pネットワーク ブロックチェーンはP2P(Peer to Peer)ネットワークを用いてデータを管理し、システムダウンしない分散システムを実現している。P2Pネットワークとは、従来のクライアントサーバ型のような中心となるサーバが存在せず、対等の立場のネットワーク参加者がデータを保持又は送受信し合うネットワークのことである。 これにより、ネットワーク参加者であるノード(【第1回】参照)で取引記録を共有し、誰もがブロックチェーンを閲覧することができ、お互いに監視する仕組みができているのである。また、P2Pネットワークでは、世界中に点在しているネットワークの参加者たちが、全く同じ内容のデータをそれぞれで管理していることになる。 【図2-1】P2Pネットワークのイメージ 2 ゼロダウンタイム 取引情報はブロックチェーン上に公開され、参加者全員の合意や検証のもとで正当性が証明されている。全てのノードが平等につながっており、全く同じ機能を有している。すなわち、従来型の中央集権型と違い取引はノードごとに分散管理されているため、例えば、一部のノードが故障しても、他のノードが正常であれば、「ブロックチェーン」全体が停止することがなく、全て処理が続行される。このように、ブロックチェーンはサービスが停止することはない「ゼロダウンタイム」といった特徴を有している。 3 デジタル署名と公開鍵暗号 ブロックチェーンの安全性を確保する技術として、デジタル署名(電子署名)という方法が使用されている。デジタル署名とは、デジタル文書の作成者を証明する電子的な署名であり、デジタル署名をすることで、下記の妥当性を証明することが可能となる。 デジタル署名を生成する際には「公開鍵」と「秘密鍵」と呼ばれるペアとなるキーが作成される。署名者は秘密鍵を使ってデータに署名し、デジタル署名として受信者に送る。受信者は事前に受け取っていた対となる公開鍵を使うことで、そのデータが署名者によって作成されたことを確認する。署名者が秘密鍵の取扱いに注意すれば、データの中身が第三者に漏洩することはない。ブロックチェーンは、このデジタル署名を利用することで、なりすましや改ざんを防止している。 4 ハッシュ値とナンス値 ハッシュ関数は、⼊⼒された異なる⻑さのデータを固定⻑の⽂字列に変換する関数である。ハッシュ関数によって導き出された値はハッシュ値と呼ばれ、データの特定に長けた暗号化技術である。ブロックチェーンにおいては、ハッシュ値の下記のような特性を生かし、ブロックとブロックのデータの連続性の検証など改ざん耐性が高く効率的なデータの管理を実現している。すなわち、データを特定するIDとしていわば指紋のような機能を有するため、データの改ざんや破損があれば瞬時に検出できるのである。 また、ナンス(number used once)値は、ブロックチェーン上で、採掘者(マイナー)が新しいブロックを追加する際に生成する数値である。採掘(マイニング)は取引の整合性を採掘者が行う承認作業のことであり、新たに追加されるブロックを過去のブロックとチェーン状に繋いでいく作業である。ハッシュ値の生成には、過去全ての取引データ(トランザクションデータ)がまとめられ、暗号化されたハッシュ値に、新たにブロックに含める取引データ、そしてナンス値を加えることが求められる。 【図2-2】ハッシュ値とナンス値のイメージ 5 コンセンサスアルゴリズム 不特定多数の参加者から成るブロックチェーンにおいては、取引時に不正を働く参加者や正常に動作しない参加者が含まれる可能性があるため、これらが含まれていたとしても正しく合意を形成できる仕組みが求められる。ブロックチェーンにおけるコンセンサスアルゴリズムとは、不特定多数の参加者の間で正しく合意形成を得るための仕組みである。なお、主なコンセンサスアルゴリズムは、下記のとおりである。 (1) PoW(Proof of Work) PoWは、仕事量(計算速度)により、正当性を担保するコンセンサスアルゴリズムである。膨大な計算が必要な採掘(マイニング)作業を参加者に課すことで、改ざん等を困難にしている。なお、PoWを採用している代表例がビットコイン(BTC)である。 (2) PoS(Proof of Stake) PoSは、一定以上の資産を保有しなければ採掘(マイニング)に参加できないコンセンサスアルゴリズムである。PoSはPoWに比べ、低コストかつ51%攻撃(※)を防ぐことができる仕組みがあると言われている。なお、代表例として、イーサリアム(ETH)はPoWを採用していたが、イーサリアム2.0ではPoSに移行している。 (※) 「51%攻撃」とは、悪意のある採掘者(マイナー)が全体の51%以上の計算能力を持つことにより、ブロックチェーンネットワークをある程度コントロールできるようになることである。 (3) PoC(Proof of Consensus) PoCは誰でも取引承認できるわけではなく、あらかじめ承認者をバリデーターと呼ばれる取引の承認作業を行う特別なノードのみに限定し、その承認者(バリデーター)たちの80%以上の合意が得られたときに取引が承認される仕組みである。PoCはPoWに比べ、承認スピードが速いと言われている。なお、PoCを採用している代表例がリップル(XRP)である。 (4) PoI(Proof of Importance) PoIとは、重要度(貢献度)が高い参加者の中からブロック生成者を決める仕組みであり、重要度は、通貨の保有量や取引回数、取引量などの複数の指標から判断される。なお、PoIを採用している代表例がネム(XEM)である。 6 スマートコントラクト 「ブロックチェーン」上で、人の手を介さずに契約を自動実行させる仕組みを「スマートコントラクト」と言う。契約成立のための特定条件と成果を明文化して事前に実行コードとして共有しておくと、全参加者(ノード)による監視の下、公平にプログラムが自動実行される仕組みであり、近年注目を集めている。 【図2-3】ブロックチェーン技術まとめ (了)
《速報解説》 ASBJが「時価の算定に関する会計基準の適用指針(案)」を公表 ~投資信託財産が金融商品・不動産である投資信託の時価の算定について取扱いを示す~ 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 2021年1月18日、企業会計基準委員会は、「時価の算定に関する会計基準の適用指針(案)」(企業会計基準適用指針公開草案第71号。企業会計基準適用指針第31号の改正案)を公表し、意見募集を行っている。 これは、投資信託の時価の算定と貸借対照表に持分相当額を純額で計上する組合等への出資の時価について取扱いを示すものである。 意見募集期間は2021年3月18日までである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 投資信託財産が金融商品である投資信託の取扱い 「時価の算定に関する会計基準」(企業会計基準第30号)5項に定める時価の定義により、金融商品取引所等の市場に上場している投資信託で市場における取引価格が存在する場合、通常は当該価格が時価になると考えられる(公開草案49-2項)。 市場における取引価格が存在しない場合について、次のように規定している。 「コメントの募集」では、フローチャートが記載されており、公開草案の理解に資するものと思われる。 1 市場における取引価格が存在せず、かつ、解約又は買戻請求に関して市場参加者からリスクの対価を求められるほどの重要な制限がない場合(公開草案24-2項) なお、公開草案24-2項の取扱いを適用し、基準価額を時価とする場合、解約等に関して市場参加者からリスクの対価を求められるほどの重要な制限がなく、当該基準価額で解約できることで、第三者から入手した相場価格が会計基準に従って算定されたものであると判断することができる(公開草案24-6項)。 2 市場における取引価格が存在せず、かつ、解約等に関して市場参加者からリスクの対価を求められるほどの重要な制限がある場合(公開草案24-3項) 投資信託財産が金融商品である投資信託について、市場における取引価格が存在せず、かつ、解約等に関して市場参加者からリスクの対価を求められるほどの重要な制限がある場合、次のいずれかに該当するときは、基準価額を時価とみなすことができる。 次の規定に注意する。 Ⅲ 投資信託財産が不動産である投資信託の取扱い 市場価格のない投資信託財産が不動産である投資信託について、金融商品会計基準に従い、時価をもって貸借対照表価額とすることで会計処理を統一している(公開草案49-9項)。 市場における取引価格が存在しない場合について、次のように規定している。 「コメントの募集」では、フローチャートが記載されており、公開草案の理解に資するものと思われる。 1 市場における取引価格が存在せず、かつ、解約又は買戻請求に関して市場参加者からリスクの対価を求められるほどの重要な制限がない場合(公開草案24-8項) なお、公開草案24-8項の取扱いを適用し、基準価額を時価とする場合、解約等に関して市場参加者からリスクの対価を求められるほどの重要な制限がなく、当該基準価額で解約できることで、第三者から入手した相場価格が会計基準に従って算定されたものであると判断することができる(公開草案24-10項)。 2 市場における取引価格が存在せず、かつ、解約等に関して市場参加者からリスクの対価を求められるほどの重要な制限がある場合(公開草案24-9項) 投資信託財産が不動産である投資信託について、市場における取引価格が存在せず、かつ、解約等に関して市場参加者からリスクの対価を求められるほどの重要な制限がある場合、基準価額を時価とみなすことができる。 次の規定に注意する。 Ⅳ 貸借対照表に持分相当額を純額で計上する組合等への出資の時価の注記に関する取扱い 貸借対照表に持分相当額を純額で計上する組合等への出資(「金融商品会計に関する実務指針」(会計制度委員会報告第14号)132項、308項)については、金融商品時価開示適用指針4項(1)に定める事項の注記を要しないこととし、その場合、他の金融商品における金融商品時価開示適用指針4項(1)の注記に併せて、所要の注記を行う(公開草案24-15項)。 Ⅴ 適用時期等 (了)
《速報解説》 国税庁、「在宅勤務に係る費用負担等に関するFAQ」を公表 ~在宅勤務で生じた通信費等のうち非課税となる「業務のために使用した部分」の合理的な算定方法を示す~ Profession Journal編集部 長期化するコロナ禍により大企業を中心に在宅勤務(テレワーク)が浸透しており、在宅勤務を行う従業員に対し在宅勤務に必要な費用として在宅勤務手当を支給する企業も増えつつある。 国税庁はこのたび1月15日付けで「在宅勤務に係る費用負担等に関するFAQ」を公表、企業が従業員に上記手当を支給した場合や費用負担を行う場合の給与課税の有無について、その取扱いを明らかにした。 FAQではまず、企業が従業員に対し在宅勤務に必要な費用を支給する場合、その費用の実費相当額を精算する方法によるものであれば、従業員に対する給与として課税する必要はないとした(一方、例えば企業が従業員に対し毎月5,000円を渡切りで支給するなど精算不要とするような場合については給与課税される)。 また、その精算方法については、①企業が従業員に仮払いした後、その費用に係る領収証等とともに従業員が精算する方法(超過分は企業へ返還)と、②従業員が立替払いした後、その費用に係る領収証等とともに実費を精算する方法が考えられるが、事務用品費はともかく通信費や電気料金については、業務のために使用した部分を明確に算定するのは難しい。 FAQでは「インターネット接続に係る通信料(基本使用料やデータ通信料など)」のうち「業務のために使用した部分」として、例えば以下の【算式】により算出したものを企業が従業員に支給する場合には、従業員に対する給与として課税しなくて差し支えないとしている。 なお、「電話料金」のうち「通話料」については通話明細書等により「業務のための通話に係る料金」が確認できるとしているが、「基本使用料」や、「業務のための通話を頻繁に行う業務(営業担当等)に従事する従業員の通話料」については、上記【算式】により算出したものを「業務のための通話に係る料金」として支給する場合には給与課税されない。 次に、従業員が負担した「電気料金(基本料金・電気使用料)」のうち在宅勤務に要した部分を企業が支給する場合に、例えば次の【算式】のように床面積割合で算出したものを「業務のために使用した部分」として支給した場合には、従業員に対する給与として課税しなくて差し支えないとしている。 なお上述したそれぞれの算式によらず、より精緻な方法で業務のために使用した金額を算出し、その金額を企業が従業員に支給している場合についても、給与課税はされないとしている。 いずれにせよ企業としては、在宅勤務に係る費用について、定額で渡切り(精算不要)として給与課税されるか、上記の管理を行って業務使用部分を精算(非課税)するかの判断が求められよう。 (了)
《速報解説》 本日が申請期限の「持続化給付金」及び「家賃支援給付金」、 緊急事態宣言の再発令により書類準備が間に合わない等特段の事情がある場合は、2月15日まで期限を延長 Profession Journal編集部 新型コロナウイルス感染症の影響を受けた事業者に対し政府から支給される「持続化給付金」及び「家賃支援給付金」は、申請期限が本日1月15日(金)とされているが、経済産業省はこのたびの緊急事態宣言の再発令を受け、申請期限に間に合わない特段の事情がある場合については、2月15日(月)まで申請期限を延長することを明らかにした。 なお、持続化給付金については、本日(1/15)から1月31日までに、書類の提出期限延長の申込みを行う必要がある。 期限延長に伴う手続についてはそれぞれのポータルサイトで詳細が明らかにされているが、上記の通り持続化給付金については事前の申出が必要といったように手続が異なるため、十分注意されたい。 なお経済産業省は、緊急事態宣言の再発令に伴う飲食店の時短営業や不要不急の外出自粛などにより影響を受ける中小事業者に対する支援策をまとめたページを公表している。 (了)