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相続税の実務問答 【第54回】「財産を追加取得したが配偶者の税額軽減規定により納付すべき税額が算出されない場合の修正申告」

相続税の実務問答 【第54回】 「財産を追加取得したが配偶者の税額軽減規定により 納付すべき税額が算出されない場合の修正申告」   税理士 梶野 研二   [答] 配偶者に対する相続税額の軽減規定を適用するためには、軽減税額に係る計算明細等を記載した書類や配偶者が財産を取得したことを明らかにする書類を添付した申告書(期限後申告書及び修正申告書を含みます)又は更正の請求書を提出しなければなりません。 あなたは、遺産分割協議により、新たにC社株式を取得することとなりましたので、配偶者に対する相続税額の軽減額の再計算に係る計算明細を記載した書類やC社株式を取得したことを証する書類である遺産分割協議書の写しを添付した相続税の修正申告書を提出する必要があります。 ● ● ● ● ● 説 明 ● ● ● ● ● 1 申告期限までに遺産の一部分割により配偶者が財産を取得している場合 相続税法第19条の2第1項の配偶者に対する相続税額の軽減規定(以下「配偶者に対する税額軽減規定」といいます)は、配偶者が遺産分割等により取得したことが確定した財産について適用され、申告書の提出期限において未分割である財産に対応する相続税額についてはこの規定の適用対象とはなりません。 つまり、相続税の申告書の提出期限において未分割の財産がある場合には、その未分割財産は相続税法第55条の規定に基づき各共同相続人又は包括受遺者が法定相続分又は包括遺贈の割合により取得したものとして相続税の申告を行うこととなりますが、その未分割の財産は、配偶者が確定的に取得した財産ではありませんので、配偶者に対する税額軽減規定の適用対象とはなりません(相法19の2②)。 ところで、遺産の一部が分割され、残りの遺産が未分割である場合において、遺産の一部分割により自己の法定相続分又は包括遺贈の割合を超える価額の財産を取得した相続人又は包括受遺者があるときには、この相続人又は包括受遺者を除いた相続人又は包括受遺者の間で、これらの者の間における民法の規定による相続分又は包括遺贈の割合と等しくなるように、これらの相続人又は包括受遺者の課税価格の計算に含める未分割財産の価額を調整することとなります(【第53回】「遺産の一部が未分割である場合の相続税の申告(法定相続分以上の財産を取得した者があるとき)」参照)。 遺産の一部分割により法定相続分に相当する価額を超える財産を配偶者が取得した場合、未分割財産は他の相続人又は包括受遺者が取得したものとして相続税の申告をすることとなりますので、配偶者の課税価格の計算の基となる財産に未分割の財産は含まれません。 そうしますと、配偶者の課税価格を構成する財産は、全て配偶者が確定的に取得した財産となりますので、配偶者の課税価格が配偶者の法定相続分相当額又は1億6,000万円のいずれかに満たない場合には、配偶者に対する税額軽減規定を適用することにより、この配偶者の納付すべき相続税額は算出されません。   2 配偶者に対する税額軽減規定を適用するための手続き 配偶者に対する税額軽減規定を適用するためには、相続税の申告書(期限後申告書及び修正申告書を含みます)又は更正の請求書に、同規定の適用を受ける旨及び軽減額に係る計算の明細を記載した書類(以下「計算明細書」といいます)及び財産の取得の状況を証する書類(遺言書の写し、遺産分割協議書(当該書類に当該相続に係る全ての共同相続人及び包括受遺者が自署し、自己の印を押しているものに限ります)の写し(当該自己の印に係る印鑑証明書が添付されているものに限ります)など)の添付をしなければなりません(相法19の2③、相規1の6③)。 配偶者の課税価格の計算の基となる財産に未分割の財産が含まれておらず、かつ、配偶者が取得した財産の額が配偶者の法定相続分相当額又は1億6,000万円のいずれかに満たない場合には、配偶者に対する税額軽減規定を適用することにより、納付すべき相続税額は算出されませんが、この規定を適用するためには上記の書類を添付した相続税の申告書を提出しなければなりません。 ところで、遺産分割協議の結果、新たに取得することとなった財産の価額を相続税の課税価格に加算しても、課税価格が1億6,000万円に満たないことから、配偶者に対する税額軽減規定を適用すれば納付すべき相続税額が算出されないこととなる場合であっても、この規定を適用するためには、上記の手続きが必要になります。 新たに財産を取得することとなったため相続税の課税価格が増加する場合には、一般的には修正申告書を提出することができるケースです。しかしながら、修正申告書は、納税申告書を提出した者が、次の①から④のいずれかに該当する場合において、その申告に係る課税標準等又は税額等を修正するために提出することができるとされています(通法19①)。 遺産分割により新たに財産を取得することとなったことから、相続税の課税価格が増加するものの配偶者に対する税額軽減規定を適用すれば、納付すべき税額が発生しないというケースの場合には、上記①から④のいずれにも該当しません。そうしますと税法は、新たに取得した財産に係る相続税額の軽減規定の適用を受ける方法を用意していないこととなります。 しかしながら、このようなケースにおいては、上記の書類を添付した修正申告書を提出することにより配偶者に対する税額軽減規定を適用することができるとの取扱いが相続税法基本通達において示されています(相基通19の2-19)。   3 ご質問の場合 あなたは、相続税の期限内申告書を提出した後に行われた遺産分割協議により、C社の株式を取得しましたが、このC社株式の価額を相続税の課税価格に含めたうえで配偶者に対する税額軽減規定に基づいて納付すべき相続税額を再計算すると納付すべき相続税額は算出されないこととなります。 ただし、あなたが、この税額軽減規定を適用するためには、計算明細書及びC社の株式を取得したことを証する書類として遺産分割協議書の写しを添付した相続税の修正申告書を提出する必要があります。 (了)

#No. 399(掲載号)
#梶野 研二
2020/12/17

Q&Aでわかる〈判断に迷いやすい〉非上場株式の評価 【第22回】「〔第5表〕借地権の計上」-土地の無償返還に関する届出書の期限及び内容の変更-

Q&Aでわかる 〈判断に迷いやすい〉非上場株式の評価 【第22回】 「〔第5表〕借地権の計上」 -土地の無償返還に関する届出書の期限及び内容の変更-   税理士 柴田 健次   Q 経営者甲が所有しているA土地及びB土地は、甲が株式を100%保有している甲株式会社に賃貸していますが、その概要は下記の通りとなります。 経営者甲が甲株式を令和2年に後継者である乙に贈与する場合において、甲株式会社の第5表の純資産価額の計算明細書の資産の部に計上するA土地及びB土地の相続税評価額及び帳簿価額はそれぞれいくらになるのでしょうか。 なお、甲株式会社はA土地及びB土地について借地権の認定課税を受けたことはありません。 A 第5表の純資産価額の計算明細書の資産の部に計上する借地権の金額の内訳は下記の通りとなります。 (単位:千円) なお、B土地については土地の無償返還に関する届出内容の変更がありますので、速やかに土地の無償返還に関する届出書を賃貸借として提出し直す必要があります。  ◆  ◆  ◆ ① 土地の無償返還に関する届出書が提出されている場合の純資産価額の計上金額 土地の無償返還に関する届出書が提出されている場合の当該土地に係る借地権の価額は、原則として、0として取り扱います。ただし、同族会社の株式を保有している被相続人又は贈与者が評価会社に土地を無償返還により賃貸している場合には、被相続人の土地が80%で評価されることの権衡を考慮し、自用地価額の20%で評価することとされています。 なお、無償返還が使用貸借の場合には、被相続人の土地は自用地で評価されることになるため、借地権の価額は常に0として取り扱います(昭和43年10月28日付直資3-22他「相当の地代を収受している貸宅地の評価について」通達、昭和60年6月5日付直資2-58「相当の地代を支払っている場合等の借地権等についての相続税及び贈与税の取扱いについて」通達の5・8)。   ② 土地の無償返還に関する届出書の提出期限(A土地) 土地の無償返還に関する届出書は、昭和55年12月25日における法人税基本通達の改正により、通常収受するべき権利金又は相当の地代を収受しない土地の賃貸借取引又は使用貸借取引がある場合において、借地権の設定等に係る契約書において将来借地人等がその土地を無償で返還することが定められており、かつ、その旨を借地人等との連名の書面により遅滞なく土地所有者の納税地の所轄税務署長(国税局の調査課所管法人にあっては、所轄国税局長)に届け出たときは、借地権の認定課税は行わない(法基通13-1-7)ことを定めたものとなります。 この通達は、昭和55年12月25日以降の土地の賃貸等に適用されますが、同日前の土地の賃貸等については経過的な取扱いとして、権利金の認定課税が行われていない場合(認定課税の除斥期間を経過しているものを含む)において、この通達の適用を受けることにつき、遅滞なくその旨の届出を行っている場合には、上記の通達の適用を受けることができるものとされています。 土地の無償返還に関する届出書の提出期限は、上記の通り「遅滞なく」とされていますが、具体的にいつまでかは定められていません。平成29年3月29日の裁決事例(TAINSコード:F0-3-540)は、被相続人が所有している土地の上に被相続人の同族会社が所有する建物を昭和44年に新築し、その後、平成15年に土地の無償返還に関する届出書を提出し、平成25年に相続が発生している事案で、土地の無償返還に関する届出書の有効性が争われました。その裁決の中で、不服審判所は、「遅滞なくの判断は原処分庁に委ねられている」として、税務署が有効と判断した場合には、相当期間経過後の土地の無償返還に関する届出書の提出の効力を認めました。 平成9年2月17日の裁決事例(TAINSコード:F0-3-008)は、昭和33年に被相続人から土地を無償で借り受け、同族会社が建物を建築し、その後、平成3年に相続が発生している事案で、土地の無償返還に関する届出書が提出されていない場合の土地の評価については法人に借地権が存在するとされた事例ですが、その裁決の中で、不服審判所は、「土地に係る無償返還届出書は、少なくとも、本件相続の開始日までに原処分庁に対し提出されていなければ、本件土地の利用権の価額が存在する」とし、相続開始日までに土地の無償返還に関する届出書の提出があれば、その提出は有効であることを暗に示唆しています。 実際の実務においては、土地の無償返還に関する届出書の後出しは行われており、租税負担回避等の課税上の弊害がない限りにおいて認められるものと考えられます。 例えば、A土地を仮に売却するにあたり、個人の土地売却に係る所得を法人ではなく個人に全て帰属させるために、土地の無償返還に関する届出書を提出し、法人の課税を免れようとする場合には、法人税の租税回避行為となり認められるべきものではありません。 本問の場合には、そのような租税回避行為はありませんので、A土地の無償返還に関する届出書の提出は、相当期間経過後に行われていますが、有効なものと考えられます。 したがって、土地の無償返還に関する届出書が使用貸借であるA土地は、借地権の価額は0となります。   ③ 土地の無償返還に関する届出書の提出に変更があった場合(B土地) 土地の無償返還に関する届出書には、「土地の所有又は使用に関する権利等に変動が生じた場合には、速やかにその旨を届け出ることとします。」と記載がされていますので、使用貸借から賃貸借に変更があった場合には、速やかに、土地の無償返還に関する届出書を提出し直す必要があります。法律上の速さの順番としては、「直ちに」⇒「速やかに」⇒「遅滞なく」とされていますので、「遅滞なく」よりは、早く提出する必要があります。ただし、「速やかに」についても具体的な期限がありませんので、上記②の「遅滞なく」と同様、課税上の弊害がない限りは認められるものであると考えられます。 本問の場合には、昭和62年当時、使用貸借による土地の無償返還に関する届出書を提出していますので、法人に借地権はないものとして課税上は行うことになり、その後、賃貸借となっても法人に借地権が発生することはありませんので、法人税の課税上は、何ら弊害はないと考えられます。したがって、土地の無償返還に関する届出書が賃貸借であるB土地は、借地権の価額は、自用地としての価額の100分の20に相当する金額により評価します。   ④ 同族会社等の行為計算否認規定との関係 土地の無償返還に関する届出書が受理されている場合においても、その届出書の提出自体が相続税の負担を不当に減少させることを目的としたものである場合には、その提出がなかったものとして取り扱われる可能性もあります。 例えば、土地の無償返還に関する届出書を使用貸借により提出し、株式の贈与を行うときは借地権の価額を0として贈与を行い、相続開始直前において相続税の負担を減少することを目的として、土地の無償返還に関する届出書を賃貸借として提出し、自用地としての価額の100分の80に相当する金額により被相続人の土地の評価をすることは、不当に相続税の負担を減少するものとして認められるべきではないかと考えられます。 たとえ、土地の無償返還に関する届出書の受理があったとしても、同族会社等の行為又は計算の否認規定(相法64)により、土地の無償返還に関する届出書の提出がなかったものとして、課税処分が行われる可能性もあります。したがって、土地の契約内容に変更があった場合には、その理由をよく確認することが重要となります。   ☆実務上のポイント☆ 土地の無償返還に関する届出書は、土地賃貸の開始時点において、当事者同士に無償で返還する意図があるかどうかが前提となりますので、当時の土地賃貸借の内容をよく確認することが不可欠となります。 また、無償で返還する意思があった場合においても土地貸付時において、土地の無償返還に関する届出書を提出しておらず、原始発生的に借地権が生じており法人に借地権があると考えられる場合には、土地の無償返還に関する届出書を提出する必要がない場合もありますので、提出する前に借地権が法人に帰属しているのかどうかも含めてよく検討することが重要となります。 (了)

#No. 399(掲載号)
#柴田 健次
2020/12/17

給与計算の質問箱 【第12回】「年末年始の退職者の給与計算における注意点」

給与計算の質問箱 【第12回】 「年末年始の退職者の給与計算における注意点」   税理士・特定社会保険労務士 上前 剛   Q 当社では2020年12月20日付けで社員A、2020年12月31日付けで社員B、2021年1月10日付けで社員Cがそれぞれ退職します。この際の給与計算の注意点がありましたらご教示ください。なお、当社の給与は末日締め翌月25日支給です。 A 社員A、B、Cのそれぞれの場合について、以下解説する。 * * 解 説 * * 1 社員Aの場合 ① 所得税(年末調整) 年の中途で退職した人のうち、12月中に支給期の到来する給与(12月25日支給)の支払いを受けた後に退職した人は年末調整の対象となる。Aは12月20日退職なので12月25日支給の給与の支払いを受ける前の退職だから年末調整の対象にならない。したがって、12月25日支給の給与計算では年末調整しない。 ② 住民税 6月1日から12月31日までの間に退職する場合、未徴収の住民税について特別徴収(給与から天引き)から普通徴収(Aが自分で納付)へ切り替える。Aの退職後、会社は異動届出書をAの前年(2019年)1月1日時点の住所地の市区町村役場へ提出する。なお、Aの希望があれば普通徴収へ切替えせず、1月25日支給の給与から未徴収の住民税を一括で天引きすることもできる。 ③ 雇用保険 注意点なし。12月25日支給の給与、1月25日支給の給与から雇用保険料を天引きする。 ④ 健康保険・厚生年金 社会保険の資格喪失日は、退職日の翌日の12月21日である。したがって、前月11月分の社会保険料まで給与から天引きする。11月分の社会保険料は12月25日支給の給与から天引きする。1月25日支給の給与からは社会保険料を天引きしない。 〈まとめ〉   2 社員Bの場合 ① 所得税(年末調整) 年の中途で退職した人のうち、12月中に支給期の到来する給与(12月25日支給)の支払いを受けた後に退職した人は年末調整の対象となる。Bは12月31日退職なので12月25日支給の給与の支払いを受けた後の退職だから年末調整の対象になる。したがって、12月25日支給の給与計算で年末調整する。 ② 住民税 6月1日から12月31日までの間に退職する場合、未徴収の住民税について特別徴収(給与から天引き)から普通徴収(Bが自分で納付)へ切り替える。Bの退職後、会社は異動届出書をBの前年(2019年)1月1日時点の住所地の市区町村役場へ提出する。なお、Bの希望があれば普通徴収へ切替えせず、1月25日支給の給与から未徴収の住民税を一括で天引きすることもできる。 ③ 雇用保険 注意点なし。12月25日支給の給与、1月25日支給の給与から雇用保険料を天引きする。 ④ 健康保険・厚生年金 社会保険の資格喪失日は、退職日の翌日の1月1日である。したがって、前月12月分の社会保険料まで給与から天引きする。12月分の社会保険料は1月25日支給の給与から天引きする。 〈まとめ〉   3 社員Cの場合 ① 所得税(年末調整) 1年を通じて勤務している人、年の中途で就職し年末まで勤務している人は年末調整の対象になる。したがって、12月25日支給の給与計算で年末調整する。 ② 住民税 1月1日以降に退職する場合、未徴収の住民税の一括徴収が義務付けられている。したがって、2月25日支給の給与から未徴収の住民税を一括で天引きする。 ③ 雇用保険 注意点なし。1月25日支給の給与、2月25日支給の給与から雇用保険料を天引きする。 ④ 健康保険・厚生年金 社会保険の資格喪失日は、退職日の翌日の1月11日である。したがって、前月12月分の社会保険料まで給与から天引きする。12月分の社会保険料は1月25日支給の給与から天引きする。2月25日支給の給与からは社会保険料を天引きしない。 〈まとめ〉 (了)

#No. 399(掲載号)
#上前 剛
2020/12/17

居住用財産の譲渡損失特例[一問一答] 【第9回】「居住用家屋とその敷地の一部を同時に譲渡した場合」-居住用家屋の敷地の一部の譲渡-

居住用財産の譲渡損失特例[一問一答] 【第9回】 「居住用家屋とその敷地の一部を同時に譲渡した場合」 -居住用家屋の敷地の一部の譲渡-   税理士 大久保 昭佳   Q Xは、14年前に取得した家屋とその敷地を居住の用に供していましたが、本年2月に、その居住用家屋とその敷地の一部を区分して売却したところ、譲渡損失が出てしまいました。 本年5月に、銀行から住宅取得資金を借り、残った敷地に新たに家屋を建てて、居住の用に供しています。 他の適用要件が具備されている場合に、Xは当該譲渡について、「居住用財産買換の譲渡損失特例(措法41の5)」を受けることができるでしょうか。 A 「居住用財産買換の譲渡損失特例」を受けることができます。 ●○●○解説○●○● 現に存する居住用家屋の敷地の用に供されている土地等の一部の譲渡である場合で、その譲渡が、その家屋の譲渡と同時に行われたものであるときは、「居住用財産買換の譲渡損失特例」適用対象の譲渡資産に該当します(措通41の5-9(居住用家屋の敷地の一部の譲渡)(1))。 なお、この取扱い規定は、「特定居住用財産の譲渡損失特例(措法41の5の2)」についても準用されます(措通41の5の2-7(居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例に関する取扱い等の準用))。 (了)

#No. 399(掲載号)
#大久保 昭佳
2020/12/17

値上げの「理屈」~管理会計で正解を探る~ 【第9回】「誤った値上げを避ける」~手がかかる子は誰だ~

値上げの「理屈」 ~管理会計で正解を探る~ 【第9回】 「誤った値上げを避ける」 ~手がかかる子は誰だ~   公認会計士 石王丸 香菜子   登場人物 *  *  * 一定単位の製品の製造に関して直接的に認識できる原価を「直接費」、直接的に認識できない原価を「間接費」と呼びます。例えば、製品を製造するために直接かかる主要材料費は直接費です。一方、消耗品費や減価償却費などは、製品に直接的に結び付けられないので間接費に相当します。 直接費はどの製品のためにいくら生じたかが明確に認識できるので、各製品に直接集計します。一方、間接費は製品との関わりが直接認識できず、各製品に直接集計することはできないので、整理したうえで、何らかの基準で製品に割り当てます(「配賦」と言います)。 *  *  * 《通常の計算》 *  *  * 製品の中には、目立たないところで意外に手がかかるものがあります。例えば、補聴器は一見ワイヤレス・イヤホンと似ていますが、両者の販売価格には歴然とした開きがあることから、補聴器は、手がかかりコストも多額に生じる製品であると考えられます。 補聴器の販売価格が高い理由は1つではないでしょうが、精密機器であり開発費や研究費が多額にかかる(にも関わらず利用者が限られている)、利用者の聞こえや環境に合わせて継続的にフィッティングする必要があるなど、意外に手がかかることが一因となっているようです。 *  *  * *  *  * 間接費は、様々な性質のコストの寄せ集めです。実際には直接作業時間と相関性の低いコストも含まれていますので、間接費をまとめて直接作業時間という1つの基準で配賦することは、合理性が高くないことがあります。 *  *  * *  *  * より合理的な配賦計算として、ABC(Activity Based Costing)の考え方を利用する方法があります。間接費をひとまとめにせず、個々のコストを性質に応じた基準で細かく配賦する考え方です。 まず、製品を製造するためにどのような活動があるのかを把握し、個々のコストをそれぞれの活動に集計します。次に、各活動に集計したコストを、その性質に応じた基準を用いて各製品に配賦します。 *  *  * 2人が調査したところ、ガーデンライトを製造するためは、「」「」「」の3つの活動があることがわかりました。 《ABCによる計算(イメージ)》 *  *  * *  *  * 間接費2,400千円の内容を精査したところ、は600千円、は1,200千円、は600千円であることがわかりました。各活動に集計されたコストを、その活動の性質に応じた適切な基準を用いて各タイプに配賦してみましょう。 *  *  * 《ABCによる計算》 《1個当たり間接費の比較》 *  *  * *  *  * ABCの考え方は、製造業だけでなくサービス業などのコスト計算にも応用することができます。例えば、顧客ごと・販売チャネルごとのコストを把握したい場合なども、同じ発想で合理的にコストを集計することができます。ただし、ABCの考え方でコストを集計するためには手間や時間がかかりますので、状況に応じ可能な範囲で利用してみましょう。 (了)

#No. 399(掲載号)
#石王丸 香菜子
2020/12/17

経理担当者のためのベーシック会計Q&A 【第164回】収益認識基準⑨「重要性等に関する代替的な取扱い」

経理担当者のための ベーシック会計Q&A 【第164回】 収益認識基準⑨ 「重要性等に関する代替的な取扱い」   仰星監査法人 公認会計士 渡邉 徹     〈事例による解説〉   〈会計処理〉(単位:円) ◆X1年1月31日 〔一般顧客Aへの食料品の販売〕 ◆X1年2月28日 〔一般顧客Bへの食料品の販売〕 (※) 5,000円(食料品)+ 100円(配送料) ◆X1年3月31日 〔給食センターCへの食料品の出荷〕   〈会計処理の解説〉 1 会計処理 収益認識に関する会計基準の適用指針では、収益認識基準における重要性等に関する代替的な取扱いが定められています。本設例においては、以下の規定に基づいて会計処理をしています。 上記②、③、⑥の論点についての原則的な取扱いと代替的な取扱いを整理すると以下のようになります。   2 設例へのあてはめ (1) X1年1月31日(一般顧客Aへの食料品の販売) 顧客Aに発行した次回以降の買い物で使用できる割引クーポンについても、顧客との契約において約束した財又はサービスとして評価することが原則(会計基準32項)ですが、本設例の割引クーポンは重要性が乏しいため、当該約束が履行義務であるかについて評価しないことができます(適用指針93項)。 顧客との契約の観点で重要性が乏しいかどうかを判定するにあたっては、当該約束した財又はサービスの定量的及び定性的な性質を考慮し、契約全体における当該約束した財又はサービスの相対的な重要性を検討します(適用指針93項)。 (2) X1年2月28日(一般顧客Bへの食料品の販売) 配送サービスについても履行義務として識別することが原則(会計基準32項)ですが、顧客が商品又は製品に対する支配を獲得した後に行う出荷及び配送活動については、商品又は製品を移転する約束を履行するための活動として処理し、履行義務として識別しないことができる(適用指針94項)とされています。そのため、Z社では配送サービスを履行義務として識別せず、配送料についても顧客Bが食料品に対する支配を獲得したタイミングで収益を認識しています。 (3) X1年3月31日(給食センターCへの食料品の販売) 給食センターCへの食料品の販売は、一時点で充足される履行義務であるため、資産に対する支配を顧客に移転することにより当該履行義務が充足される時に、収益を認識します(会計基準39項)。本設例の場合も、顧客の検収時(会計基準40項)に資産に対する支配が顧客に移転すると考えられます。しかし、代替的な取扱いとして、商品又は製品の国内の販売において、出荷時から当該商品又は製品の支配が顧客に移転される時までの期間が通常の期間である場合には、出荷時から当該商品又は製品の支配が顧客に移転される時までの間の一時点(例えば、出荷時や着荷時)に収益を認識することができるとされています。 なお、商品又は製品の出荷時から当該商品又は製品の支配が顧客に移転される時までの期間が通常の期間である場合とは、当該期間が国内における出荷及び配送に要する日数に照らして取引慣行ごとに合理的と考えられる日数である場合をいうとされています(適用指針98項)。 給食センターCは、Z社の近隣(国内)であり、出荷の翌日には検収を受けて、商品の支配が顧客に移転しており、商品の支配が顧客に移転される時までの期間が通常の期間であると言えます。このため、Z社では、給食センターCとの取引について、商品の出荷時に収益を認識することができます。 *  *  * (了)

#No. 399(掲載号)
#渡邉 徹
2020/12/17

税効果会計を学ぶ 【第19回】「子会社等が保有する親会社株式等を当該親会社等に売却した場合の連結財務諸表における法人税等に関する取扱い」

税効果会計を学ぶ 【第19回】 「子会社等が保有する親会社株式等を当該親会社等に売却した場合の 連結財務諸表における法人税等に関する取扱い」   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 今回は、子会社等が保有する親会社株式等を当該親会社等に売却した場合の連結財務諸表における法人税等に関する取扱いについて解説する。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 子会社等が保有する親会社株式等を当該親会社等に売却した場合の連結財務諸表における法人税等に関する取扱い 1 取引例 税効果適用指針の「設例9」をもとに、子会社が保有する親会社株式を当該親会社に売却し、子会社において、親会社株式売却益が計上されているケースについて考える。 【各社の個別財務諸表】 《P社(親会社)の個別財務諸表(X2年3月期)》 ① 取得時(X1年12月) ② 決算時(X2年3月31日) 《S社(連結子会社)の個別財務諸表(X2年3月期)》 ① 売却時(X1年12月) ・前提条件⑦から⑨を参照。 ② 決算時(X2年3月31日) ・前提条件⑦から⑨を参照。 【連結財務諸表】 《P社(親会社)の連結財務諸表(X2年3月期)》 ① 非支配株主に帰属する当期純利益の処理(X2年3月31日) ・S社の当期純利益のうち20%を非支配株主持分に振り替える(前提条件②、⑨を参照)。 ・非支配株主持分14 = 当期純利益70 ×(100% - P社持分比率80%) ② 連結会社間の取引消去(X2年3月31日) ・S社で計上した親会社株式売却益100を全額消去し、下記の計算式により、非支配株主持分に対応する部分20を非支配株主に配分する。 ・非支配株主持分20 = 親会社株式売却益100 ×(100% - P社持分比率80%) ③ 子会社に生じる売却損益に対応する法人税等に対する親会社持分相当額の処理(X2年3月31日) ・税効果適用指針40項に従って、下記の計算式により、S社に生じる売却損益(親会社株式売却益)に対応する法人税等のうちP社持分相当額を資本剰余金から控除する。 ・資本剰余金24 = S社で計上した法人税、住民税及び事業税30 × P社持分比率80% 2 会計処理 連結子会社が保有する親会社株式を当該親会社に売却した場合(親会社としては、連結子会社から自己株式を取得した場合)、当該子会社に生じる売却損益に対応する法人税等のうち親会社持分相当額は、「自己株式及び準備金の額の減少等に関する会計基準の適用指針」(企業会計基準適用指針第2号)16項に準じて、資本剰余金から控除する(税効果適用指針40項、144項)。 また、持分法の適用対象となっている子会社等が保有する親会社の株式又は投資会社の株式(親会社株式等)を当該親会社等に売却した場合についても、上記の税効果適用指針40項と同様に処理する(税効果適用指針41項)。 自己株式等会計適用指針16項は次のように規定している。 3 基本的な考え方 連結子会社における親会社株式の売却損益(内部取引によるものを除いた親会社持分相当額)の会計処理は、親会社における自己株式処分差額と同様にその他資本剰余金を加減する(「自己株式及び準備金の額の減少等に関する会計基準」(企業会計基準第1号)16項)。 前述のとおり、当該会計処理に関連して、自己株式等会計適用指針16項は、連結子会社における親会社株式の売却損益及び持分法の適用対象となっている子会社等における親会社株式等の売却損益は、関連する法人税、住民税及び事業税を控除後のものとしている。 これらに鑑みて、連結子会社が保有する親会社株式を当該親会社に売却した場合の会計処理として、税効果適用指針40項が規定されている。 (了)

#No. 399(掲載号)
#阿部 光成
2020/12/17

法務局における「自筆証書遺言書保管制度」利用上のポイント

法務局における 「自筆証書遺言書保管制度」利用上のポイント   司法書士法人F&Partners 司法書士 北詰 健太郎   はじめに 「法務局における遺言書の保管等に関する法律」(以下、「保管法」という)が令和2年7月10日から施行され、法務局における自筆証書遺言書の保管制度(以下、「本制度」という)が開始された。 本制度は、これからの相続・遺言実務に影響を与えるものであり、実務に携わる方にとっては必須の知識といえる。本稿では、筆者が実際に本制度を利用した経験を踏まえて、制度の概要と実務的なポイントを紹介するものとする。   1 制度の趣旨 自筆証書遺言は、作成にあたり公証人の関与が必要となる公正証書遺言と比較して、紙とボールペンと印鑑を用意すれば、いつでも自分の思いついたときに作成ができる手軽な点がメリットとされる。一方で、作成日付が抜けているなどの形式不備で無効となるリスクや、紛失・盗難のリスクがあるとされていた。 本制度では、自筆証書遺言書の保管にあたり法務局の職員(遺言書保管官)が形式面の不備をチェックしたうえで、法務局(遺言書保管所)で自筆証書遺言書を保管することとし、自筆証書遺言書の弱点とされていた部分を補い、自筆証書遺言書の作成を促進していくことを狙いとしている。   2 本制度利用の流れ 本制度の利用の流れは以下のとおりである。 自筆証書遺言書の作成 保管の予約 申請書等作成 申 請 保管の予約は、管轄の法務局に電話して行うこともできるが、専用のホームページ(※1)が用意されている。 (※1) 24時間365日利用可能で予約可能時間も確認しやすい。電話での予約は平日8時30分から17時15分まで(土・日・祝日・年末年始を除く)となっている。 なお、筆者自身は専用のホームページから予約を行った。予約可能な時間が分かりやすく示されており、ちょうど美容院や飲食店をインターネットから予約するのに近い印象を持っている。申込みを行うと、予約が行われた旨のメールが予約時に登録したメールアドレスに送られてきた。   3 管轄 保管の申請ができる遺言書保管所の管轄は、遺言者の住所地、本籍地、所有する不動産の所在地を管轄する遺言書保管所とされている(保管法4条3項)。   4 保管の申請にあたっての必要書類等 保管の申請にあたっては、以下の書類等が必要になる。   5 保管の申請当日の流れ 予約した日時に法務局に出頭し、担当者に自筆証書遺言書の保管の申請のために訪れた旨を伝える。必要書類を提出し、法務局側がチェックを行うことになる。特に問題がなければ30分ほどで手続が完了する。 筆者が体験した実感としては、法務局側の対応も丁寧でストレスなく完了できたと感じている。   6 申請にあたっての注意点 申請にあたって注意しなければならない点は以下の2点である。 (※3) 遺言書の閲覧の請求についてはモニターでの確認につき1回1,400円、原本での確認につき1回1,700円の手数料が生じる。   7 遺言書保管所での保管方法 遺言書保管所では、遺言書の原本を保管するとともに(保管法6条1項)、提出された遺言書をスキャナで読み取り画像情報(遺言書情報)としても遺言書保管ファイルに記録する(保管法7条2項)。 相続開始後、遺言書保管所は、遺言者の相続人から遺言書の内容を記載した「遺言書情報証明書」の交付を受け付け、預金の解約など相続手続に利用してもらう取扱いになっている。保管された遺言書について検認は不要であり、相続手続を円滑に進めることが可能となる。   8 保管の撤回 遺言者は、保管の申請をした遺言書保管所において、保管の撤回を行うことができる。なお、保管の撤回を行ったとしても、遺言の撤回(民法1022条)になるわけではない点には注意が必要である。   9 通知について 遺言者が保管の申請を行っても、保管の事実を相続人等が知らなければ遺言書を手続に活用することができない。そこで本制度では2通りの相続人等への通知制度を用意している。 (1) 関係遺言書保管通知 遺言者の死亡後、相続人、受遺者等(関係相続人等)が、その遺言書を閲覧したり、遺言書情報証明書の交付を受けたときは、遺言書保管所から関係相続人等に対して、遺言書が保管されている旨を通知する制度である。これにより全ての関係相続人等に遺言書が保管されていることが伝わることとなる。ただし、関係相続人等が遺言書の閲覧等をしなければ、遺言者に相続が発生していても通知がなされないことになる。 (2) 死亡時の通知 関係遺言書保管通知を補うために、遺言書の保管申請時に、希望する遺言者が遺言者の推定相続人並びに遺言書に記載された受遺者等から1名を指定し、遺言書保管官が遺言者の死亡を把握したときは当該指定を受けた者に対して遺言書が保管されている旨を通知する仕組みが用意されている。遺言書保管官が遺言者の死亡の事実を把握しやすくするために、市役所等の死亡届などにより遺言者の死亡の事実を把握する役所と情報連携する仕組みを整えるとされている。   10 これからの相続手続を行うにあたって これからの相続手続を行うにあたっては、被相続人につき、まず自筆証書遺言書の保管がなされていないかを確認する必要がある。自筆証書遺言書の保管の事実に気が付かず、遺産分割協議をまとめた後に自筆証書遺言書が保管されていることが分かった場合、せっかくまとめた遺産分割協議が無駄になってしまう可能性もある。 保管の申請は、令和2年11月現在で、およそ年3万件程度のペースで利用されており(※4)、少なくない方が本制度を利用しているようである。同様のリスクは公正証書遺言にも存在するが、本制度の利用をきっかけに相続業務のフローを見直すとよいであろう。 (※4) 法務省ホームページ「遺言書保管制度の利用状況」 (了)

#No. 399(掲載号)
#北詰 健太郎
2020/12/17

税理士が知っておきたい不動産鑑定評価の常識 【第12回】「貸宅地の評価をめぐる争点」~税務の常識と鑑定評価の常識~

税理士が知っておきたい 不動産鑑定評価の常識 【第12回】 「貸宅地の評価をめぐる争点」 ~税務の常識と鑑定評価の常識~   不動産鑑定士 黒沢 泰     1 底地評価に関する鑑定評価の考え方と手法 (1) 底地とは 不動産鑑定評価基準では底地を次のとおり定義しています。 このイメージを表したものが、次の〔図1〕です。 〔図1〕 底地のイメージ (2) 不動産鑑定評価基準における底地の評価手法 不動産鑑定評価基準では、底地の価格は借地権設定者(注1)に帰属する経済的利益を貨幣額で表示したものであり、底地の鑑定評価額は、実際支払賃料に基づく純収益等の現在価値の総和を求めることにより得た収益価格及び比準価格(注2)を関連づけて決定する旨定められています(不動産鑑定評価基準各論第1章第1節Ⅰ.3(2))。 (注1) 借地権設定者とは賃貸人を指します。 (注2) 収益期間を永続的なものとして捉えた場合、「実際支払賃料に基づく純収益の現在価値を求める」に当たっては、次の算式を用いることとなります。 ・実際支払賃料(年額)- 総費用(年額)= 純収益(年額) ・純収益(年額)÷ 還元利回り = 底地の収益価格 また、比準価格とは、実際に市場で売買された事例を基に、事例地と対象地の諸条件を比較検討して求められた対象地の価格のことです。そして、「底地の比準価格」という場合には、更地でなく、底地が実際に取引された事例を基に求めた価格を指しています。 土地所有者が建物所有を目的として土地を賃貸した場合(定期借地権を除きます)、借地借家法の手厚い保護により借地人に恒久的な利用権が保証され、しかも、同法の制約も手伝って賃貸人は地代改定も思うとおり実現できないのが実情です。そのため、収益性から捉えた底地の価格を試算しても、一般的な考え方を当てはめて計算した金額(=更地価格から路線価図等に記載されている借地権割合相当額を控除した額)に比べて低い結果しか得られず、底地の市場性は著しく劣るケースが多いといえます。 そのイメージを表したものが、次の〔図2〕であり、この図の(A)の線が収益性から捉えた底地価格の水準を示します。 〔図2〕 更地価格、借地権価格、底地価格の関係   2 財産評価基本通達における貸宅地の評価 (1) 貸宅地とは 財産評価基本通達25では、「貸宅地」という用語を、「借地権(又は定期借地権)の目的となっている宅地」という意味で使用していますが、鑑定評価における「底地」と同じ趣旨です。 (2) 財産評価基本通達における貸宅地の評価方法 財産評価基本通達25(1)では、借地権の目的となっている宅地の価額は、その宅地の自用地としての価額から借地権の価額を控除した金額によって評価する旨定めています(以下、この方式を「借地権価額控除方式」といいます)。 なお、上記〔図2〕の(B)の線が借地権価額控除方式を適用した結果求められる貸宅地の価額の水準を示します。   3 鑑定評価の常識と財産評価基本通達の手法(税務の常識)との本質的な相違点 上記1及び2で述べたとおり、「底地の収益性を重視する鑑定評価の捉え方」と、「自用地の価額から借地権価額を控除した価額そのものをもって貸宅地の価額とする財産評価基本通達の捉え方」の間には隔たりが見受けられます。すなわち、納税者からすれば、「実態に比べて財産評価基本通達における貸宅地の評価割合が高いのではないか」という疑問です。それでは、この隔たりはどこから生じているのでしょうか。 (1) 鑑定評価の常識 鑑定評価において求める価格は正常価格(=市場において誰が売り買いしても等しく成り立つ客観的な価格)が原則であり、底地の正常価格を求める際には、既に掲げたような貸主の様々な制約を踏まえ、底地が事実上地代収益権の価格と化している事実に着目しているケースが通常です。 すなわち、底地の正常価格を求めるという場合、その前提には、底地の買主は借地人以外の第三者であり、買主は借地人が居付きの状態で当該土地を買い取ることが条件となっています。このような状況を踏まえた場合、よほど高額な地代を徴収している土地でもない限り、底地の市場性は著しく劣るといえるでしょう。 ただし、底地の取引のなかには、現に借地をしている人がその底地を買い取る場合もあり、このような場合には当該宅地が同一所有者に帰属することにより市場性が回復することから、鑑定評価においても正常価格より割高な価格(=限定価格)で評価するケースがあります。なお、ここにいう「割高な価格」の意味ですが、これは買主にとって割の合わない価格ということではありません。それは、底地を借地人が買い取ることにより煩雑な権利関係が解消され、当該土地がその所有者にとって利用上の制約が一切ない状態に変化することから底地の価値が回復し、その分だけ割り増しして購入しても損はない(=経済合理性に見合う)といえるからです。 このように、底地の取引当事者をはじめから貸主・借主間に限定して捉える場合、鑑定評価で求める価格は正常価格ではなく限定価格ということになりますが、鑑定評価の基本原則は不動産鑑定評価基準に則り、正常価格を求めることにあります(なお、「正常価格」と「限定価格」について詳しくは本連載の【第2回】をご参照ください)。 (2) 財産評価基本通達による借地権価額控除方式の考え方 筆者が貸宅地の評価に係るこれまでの裁決事例や裁判例の傾向を調査したところ、借地権価額控除方式が適用されている背景には、例えば次の考え方が存するものと推察されます。 (3) 鑑定評価の常識と財産評価基本通達の手法(税務の常識)との本質的な相違点 上記(1)、(2)で述べたことを踏まえた場合、鑑定評価で求める底地の価格が「正常価格」を原則としているのに対し、財産評価基本通達ではむしろ鑑定評価にいう「限定価格」を前提とした貸宅地の評価方法を指向しているものと推察されます。鑑定評価の常識と税務の常識がかみ合わない大きな理由はこの点に基づくものと考えられ、その根底には根深い溝が存在するようにも受け止められます。 納税者が、財産評価基本通達に基づく貸宅地の評価方法に代えて不動産鑑定士による底地の鑑定評価書を課税庁に提出しても、結局は、「借地権価額控除方式によって適正な時価を適切に算定することのできない特別の事情はない」として否認されてしまうケースが多いのも、ここにその一端があるものと思われます。 参考までに、貸宅地の評価に当たり不動産鑑定士による鑑定評価の結果が受け容れられなかった事例としては、例えば以下のものがあげられます。 (了)

#No. 399(掲載号)
#黒沢 泰
2020/12/17

《速報解説》 土地の所有権移転登記等に係る登録免許税の特例措置の延長等、登録免許税に係る主な改正事項~令和3年度税制改正大綱~

《速報解説》 土地の所有権移転登記等に係る登録免許税の特例措置の延長等、 登録免許税に係る主な改正事項 ~令和3年度税制改正大綱~   税理士・行政書士・AFP 山端 美德   令和2年12月10日、与党(自由民主党と公明党)による「令和3年度税制改正大綱」が公表された。 登録免許税に係る主な改正事項は、以下のとおりである。   1 土地の売買による所有権移転登記等に係る登録免許税の特例措置の延長 新型コロナウイルス感染症により経済が大きな打撃を受ける中、土地の取得コストを軽減することにより、土地の流動化を通じた有効利用等の促進を図り、デフレ脱却・経済再生を確かなものとするため、土地の所有権移転登記等に係る登録免許税の税率について、下記の特例措置を令和5年3月31日まで2年延長する。   2 特定目的会社に係る登録免許税の特例措置の延長 特定目的会社が資産流動化計画に基づき特定不動産を取得した場合の所有権の移転登記に対する登録免許税の税率の軽減措置の適用期限を令和5年3月31日まで2年延長する。   3 不動産特定共同事業法上の特例事業者に係る登録免許税の特例措置の延長 特例事業者等が不動産特定共同事業契約により不動産を取得した場合の所有権の移転登記等に対する登録免許税の税率の軽減措置について、下記の措置を講じたうえで、適用期限を令和5年3月31日まで2年延長する。   4 相続登記の促進のための登録免許税の特例措置の拡充及び延長 相続登記が未了となっている土地の要因として相続登記に係る費用の負担が指摘されていることから、相続に係る所有権の移転登記に対する登録免許税の免税措置について、以下の対応を行う。 なお、令和3年度税制改正とは別に、相続等に係る不動産登記の登録免許税のあり方については、所有者不明土地等の問題の解決に向け、不動産登記法等の見直しについて、時期通常国会にて法案を提出する方向で検討が進められており、令和4年税制改正において必要な措置が検討される予定である。 (了)

#No. 398(掲載号)
#山端 美德
2020/12/15
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