公開日: 2020/08/06 (掲載号:No.380)
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谷口教授と学ぶ「税法の基礎理論」 【第40回】「租税法律主義と租税回避との相克と調和」-不当性要件と経済的合理性基準(6)-

筆者: 谷口 勢津夫

谷口教授と学ぶ

税法基礎理論

【第40回】

「租税法律主義と租税回避との相克と調和」

-不当性要件と経済的合理性基準(6)-

 

大阪大学大学院高等司法研究科教授
谷口 勢津夫

 

Ⅰ はじめに

第37回以来、ユニバーサルミュージック事件・東京地判令和元年6月27日(未公刊・裁判所ウェブサイト。以下「本件東京地判」という)における不当性要件に関する同判決の判断枠組みを検討してきた。なお、そうこうしているうちに本年6月24日に控訴審判決が東京高裁で示されたが(T&Amaster841号(2020年7月6日)4頁参照)、この判決については次回検討することにする。

第37回には、不当性要件の趣旨解釈によって導き出した経済的合理性基準について、会社法における経営判断原則の「応用」により、相応性基準ともいうべき、会社による行為計算の選択に関する広範な裁量を尊重する判断基準(裁量尊重基準)を判示した旨の理解を示した上で、第38回には、会社法における経営判断原則の検討を通じてその意義及び実質的根拠、さらには同原則に基づく司法審査の「姿勢」を明らかにし、第39回には、相応性基準による裁量審査(相応性審査)に関連して行政法における比例原則の検討を通じて、相応性審査と比例原則による裁量審査との異同に留意しつつ、目的・手段の合理的関連性基準を明らかにした。

今回は、第38回で予告しておいたところに従い、以上の検討を踏まえた上で、本件東京地判における経営判断原則の「応用」について、同判決の実体的判断内容ではなく判断過程に着目して、検討することにしたい。

 

Ⅱ 二段階審査(1)-経営判断を基礎付ける客観的事情の存否-

本件東京地判は、まず冒頭で、結論を次のように判示した(下線筆者)上で、その理由について、以下で述べるとおり、経済的合理性基準に係る判断を二段階に分けて判示していると解される。

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税法基礎理論

【第40回】

「租税法律主義と租税回避との相克と調和」

-不当性要件と経済的合理性基準(6)-

 

大阪大学大学院高等司法研究科教授
谷口 勢津夫

 

Ⅰ はじめに

第37回以来、ユニバーサルミュージック事件・東京地判令和元年6月27日(未公刊・裁判所ウェブサイト。以下「本件東京地判」という)における不当性要件に関する同判決の判断枠組みを検討してきた。なお、そうこうしているうちに本年6月24日に控訴審判決が東京高裁で示されたが(T&Amaster841号(2020年7月6日)4頁参照)、この判決については次回検討することにする。

第37回には、不当性要件の趣旨解釈によって導き出した経済的合理性基準について、会社法における経営判断原則の「応用」により、相応性基準ともいうべき、会社による行為計算の選択に関する広範な裁量を尊重する判断基準(裁量尊重基準)を判示した旨の理解を示した上で、第38回には、会社法における経営判断原則の検討を通じてその意義及び実質的根拠、さらには同原則に基づく司法審査の「姿勢」を明らかにし、第39回には、相応性基準による裁量審査(相応性審査)に関連して行政法における比例原則の検討を通じて、相応性審査と比例原則による裁量審査との異同に留意しつつ、目的・手段の合理的関連性基準を明らかにした。

今回は、第38回で予告しておいたところに従い、以上の検討を踏まえた上で、本件東京地判における経営判断原則の「応用」について、同判決の実体的判断内容ではなく判断過程に着目して、検討することにしたい。

 

Ⅱ 二段階審査(1)-経営判断を基礎付ける客観的事情の存否-

本件東京地判は、まず冒頭で、結論を次のように判示した(下線筆者)上で、その理由について、以下で述べるとおり、経済的合理性基準に係る判断を二段階に分けて判示していると解される。

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連載目次

谷口教授と学ぶ「税法の基礎理論」

筆者紹介

谷口 勢津夫

(たにぐち・せつお)

大阪学院大学法学部教授

1956年高知県生まれ。京都大学法学部卒業、同大学大学院法学研究科博士後期課程単位修得退学。甲南大学法学部教授、大阪大学大学院高等司法研究科教授を経て2022年4月より現職。大阪大学名誉教授。ほかに大阪大学大学院高等司法研究科長・大阪大学法務室長、アレクサンダー・フォン・フンボルト財団奨励研究員(Forschungsstipendiat der Alexander von Humboldt-Stiftung)・ミュンヘン大学客員研究員、日本税法学会理事長、租税法学会理事、IFA(International Fiscal Association)日本支部理事、資産評価政策学会理事、司法試験考査委員、公認会計士試験試験委員、独立行政法人造幣局契約監視委員会委員・委員長、大阪府収用委員会委員・会長、大阪府行政不服審査会委員・会長、公益財団法人日本税務研究センター評議員・同「日税研究賞」選考委員、公益財団法人納税協会連合会「税に関する論文」選考委員、公益社団法人商事法務研究会「商事法務研究会賞」審査委員、近畿税理士会・近畿税務研究センター顧問など(一部現職。ほか歴任)。

主要著書は『租税条約論』(清文社・1999年)、『租税回避論』(清文社・2014年)、『租税回避研究の展開と課題〔清永敬次先生謝恩論文集〕』(共著・ミネルヴァ書房・2015年)、『税法の基礎理論』(清文社・2021年)、『税法基本講義〔第7版〕』(弘文堂・2021年)、『基礎から学べる租税法〔第3版〕』(共著・弘文堂・2022年)、『税法創造論』(清文社・2022年)、『税法基本判例Ⅰ』(清文社、2023年)など。
 
  

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