2020年3月19日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル No.361を公開! - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。
日本の企業税制 【第77回】 「グループ通算制度創設に伴う税効果会計の適用」 一般社団法人日本経済団体連合会 経済基盤本部長 小畑 良晴 〇令和2年度税制改正法案の状況 令和2年度税制改正に係る所得税法等の一部を改正する法律案が、1月31日に国会に提出された。2月28日に衆議院を通過し、3月6日に参議院財政金融委員会に付託された。 法人税法の改正案においては、令和4年4月1日以後開始する事業年度から、連結納税制度を廃止し、グループ通算制度を創設する点も盛り込まれている。例えば、連結納税制度における連結所得の計算や税額の計算に係る中心的な規定(法法第2編第1章の2)は全て削除され、新たに「完全支配関係がある法人の間の損益通算及び欠損金の通算」(新法法第2編第1章第1節第11款)が創設されるなど大規模な条文の改正がみられる。 こうした状況を踏まえ、企業会計基準委員会(ASBJ)は、2月13日、「連結納税制度からグループ通算制度への移行に係る税効果会計の適用に関する取扱い(案)」を公表した。 〇決算日において国会で成立している税法 税制改正法案が年度内に成立する見通しとなる中、現在、連結納税制度を採用している企業グループについては、本年3月期の税効果会計における繰延税金資産・繰延税金負債の額を算定するにあたり、今回の改正法案に盛り込まれている新たなグループ通算制度を反映する必要があるのかが問題となる。 企業会計基準適用指針第28号「税効果会計に係る会計基準の適用指針」第44項の定めには、次のように規定されているからである。 これを文言通り読めば、現在連結納税制度を適用しており令和4年4月1日からグループ通算制度へ移行することが見込まれる企業においては、改正法人税法の成立日以後に終了する事業年度の決算(四半期決算を含む)において、グループ通算制度の適用を前提とした税効果会計の適用を行う必要があることとなる。 〇ASBJの公開草案による取扱い ASBJの公開草案では、改正法人税法の成立日の属する事業年度において連結納税制度を適用している企業及び改正法人税法の成立日より後に開始する事業年度から連結納税制度を適用する企業を対象とし、実務対応報告第5号「連結納税制度を適用する場合の税効果会計に関する当面の取扱い(その1)」及び実務対応報告第7号「連結納税制度を適用する場合の税効果会計に関する当面の取扱い(その2)」に関する必要な改廃をASBJが行うまでの間は、グループ通算制度への移行及びグループ通算制度への移行にあわせて単体納税制度の見直しが行われた項目について、改正前の税法の規定に基づくことができるとすることを提案している。 つまり、改正法の内容を当面反映する必要がないということである。 グループ通算制度に係る改正法案には、例えば、欠損金の通算の規定(法法64の7)は相当詳細な計算方法まで規定が書き込まれているものの、政省令や通達が明らかでない中、新たな制度を反映した繰延税金資産の回収可能性の判断をすることが困難なことは言うまでもないことであり、今回の提案は、当面の混乱を避けるためにはどうしても必要な措置と言えよう。 なお、この取扱いにより改正前の税法の規定に基づくこととした場合、繰延税金資産及び繰延税金負債の額について、この取扱いにより改正前の税法の規定に基づいている旨を注記することを提案している。 ASBJでは3月27日の会合で、この「取扱い」の公表承認に関する審議を行う予定である。 〇今後の検討課題 グループ通算制度の詳細が判明した後には、連結財務諸表と個別財務諸表の当期税金費用の計上方法、税効果会計における繰延税金資産の回収可能性の判断方法について検討を行い、上記実務対応報告第5号・第7号の見直しを行う必要がある。 現行の会計上の取扱いでは、連結財務諸表においては連結納税会社の会社群を全体で1つの納税主体として扱い、繰延税金資産・繰延税金負債・法人税等調整額を計上し、繰延税金資産の回収可能性も連結納税主体を一体とみなして検討することとされている。 一方、個別財務諸表では、各連結法人の連結個別利益積立金額等に基づいて認識される財務諸表上の一時差異に対して法定実効税率を乗じて繰延税金資産・繰延税金負債を計算し、繰延税金資産の回収可能性については、個別所得見積額だけではなく、他の連結法人の個別所得見積額も考慮することとされている。これは、他の連結法人との間で受払をする連結法人税・地方法人税の個別帰属額は利益に関連する金額を課税標準とする税金と同様と考えられるという点に基づいている。 グループ通算制度においては、個別申告方式の下、損益通算の方法は、各法人で計算した所得をベースに、赤字法人の「通算前欠損金額の合計額」を、黒字法人の「通算前所得金額の合計額」を限度に、黒字法人の通算前所得金額の割合で按分して黒字法人の損金として算入し(損金算入された欠損は赤字法人の「通算前欠損金額」の割合で按分し赤字法人側で益金算入する)、その結果が各通算法人の所得の金額となり(法法64の5)、その金額に税率を乗じて、各通算法人の法人税の額が計算される(法法66)。 また、グループ通算制度においては、通算法人の繰越欠損金の通算も行う(法法64の7)。具体的には、グループ内の各法人の欠損金の繰越控除前の所得の金額(つまり損益通算後の所得の金額)の50%に相当する金額の合計額が、損金算入限度額とされ、繰越欠損金の損金算入額の計算では、その発生年度ごとに区分し、当期の損金算入限度額に達するまで、欠損金額のうち最も古い事業年度に生じた欠損金額から、順次損金の額に算入することとなる。また、同一の事業年度において生じた欠損金額のうちに特定欠損金額と非特定欠損金額があるときは、まず特定欠損金額から繰越控除していく。 こうした計算の基本的な骨格は連結納税制度と似ているが、繰越控除により損金算入する法人は損益通算後の黒字法人に限られることから、繰越欠損金を有する法人とその繰越欠損金を損金の額に算入する法人とが異なる。つまり、繰越欠損金の授受が生じる場合がある。 これらの新たな制度の特徴を踏まえ、実務対応報告の見直しを検討することが必要である。 (了)
〈検証〉 TPR事件 東京高裁判決 【第2回】 公認会計士・税理士 佐藤 信祐 3 TPR東京高裁判決の問題点 「〈検証〉TPR事件 東京地裁判決」でも解説したように、東京地裁、東京高裁が示した制度趣旨は、平成22年度税制改正と整合していないことから、平成22年度税制改正後の事件において参考にすべきではないと考えている。 さらに言えば、平成13年当時における大蔵省主税局(現財務省主税局)の総意として、完全支配関係内の組織再編成において事業単位の移転が必要であったと認識していたかどうかについても疑わしいと考えている。なぜなら、【第1回】で解説したように、『平成13年版改正税法のすべて』136頁の記述からも、「資産の移転が独立した事業単位で行われること」及び「組織再編成後も移転した事業が継続すること」という要件は、完全支配関係内の組織再編成だけでなく、支配関係内の組織再編成に対しても税制適格要件を認めるために、付加的に課された要件であると考えられるからである。 もちろん、平成13年当時の大蔵省主税局の総意ではなかったにしても、組織再編成とは事業単位の移転のことを意味すると漠然に考えていた者がいたことは否定できない。平成13年当時の商法では、会社分割を行うためには、事業単位の移転が必要であった(平成17年改正前商法373、374の16)ことからも、実務家の中にも、そのような議論があったことは事実である。 しかし、平成18年度の会社法施行により、そのような前提は覆され、平成22年度税制改正により、残余財産の確定により繰越欠損金を引き継ぐことが可能になっただけでなく(法法57②)、事業を移転しない適格分割若しくは適格現物出資又は適格現物分配について、繰越欠損金の使用制限、特定保有資産譲渡等損失額の損金不算入の特例計算が定められたことからも(法令113⑤~⑦、123の9⑨~⑪)、事業を移転しない適格組織再編成が存在することが明確になっている。 このように、平成22年度税制改正において、事業を移転しない適格組織再編成が存在することを明確にする税制改正が行われていながらも、組織再編税制における考え方が変わったとする財務省主税局の説明がなかったことから、完全支配関係内の組織再編成において事業単位の移転が必要だったというのは、平成13年当時の大蔵省主税局の総意ではなかったと考えられる。 むしろ、後述するように、完全支配関係内の組織再編成において事業単位の移転が不要であるというのが、平成22年当時の財務省主税局の総意であったことが明らかであったということが言えることから、平成13年当時の大蔵省主税局の中にも、完全支配関係内の組織再編成において事業単位の移転が不要であると考えていた者がいた可能性は極めて高いと思われる。 4 平成22年度税制改正と朝長英樹氏による批判 「〈検証〉TPR事件 東京地裁判決」でも解説したように、平成22年度税制改正では、適格現物分配(法法62の5)、残余財産の確定に伴う繰越欠損金の引継ぎ(法法57②)、事業を移転しない適格分割若しくは適格現物出資又は適格現物分配に対する繰越欠損金の使用制限、特定保有資産譲渡等損失額の損金不算入の特例計算(法令113⑤~⑦、123の9⑨~⑪)がそれぞれ定められた。この点についての『平成22年版改正税法のすべて』と朝長英樹氏(平成13年度の組織再編税制の立案に関与し、平成18年に税務大学校教授を最後に退官)による批判を比較すると以下の通りである。 このように、平成22年当時の財務省主税局は、適格組織再編成に該当するためには、「資産の移転が独立した事業単位で行われること」及び「組織再編成後も移転した事業が継続すること」が前提であるとは考えていないのに対し、朝長英樹氏は、これらの要件を満たすことが前提であると考えているということがわかる。 もちろん、朝長英樹氏による批判は立法論からの批判であり、現行法上の解釈という意味では、『平成22年版改正税法のすべて』を参考にするしかない。朝長英樹氏による批判を素直に読めば、平成22年度税制改正により、財務省主税局が制度趣旨の変更を行ったと解さざるを得ない。そのように解した場合には、TPR事件は平成22年度税制改正後の事件に影響を与えないということになる。 しかし、包括的租税回避防止規定(法法132の2)の解釈という観点からは、『平成13年版改正税法のすべて』136頁の記述から「資産の移転が独立した事業単位で行われること」及び「組織再編成後も移転した事業が継続すること」という要件は、完全支配関係内の組織再編成だけでなく、支配関係内の組織再編成に対しても税制適格要件を認めるために、付加的に課された要件であると読み解くことができることから、そのような曖昧な制度趣旨を根拠として「制度趣旨に反することが明らかである」としてしまう制度濫用論の危うさを指摘せざるを得ない。制度濫用論により包括的租税回避防止規定を適用するとしても、そのための制度趣旨は、より明確なものである必要があろう。 5 総括 東京高裁では、「資産の移転が独立した事業単位で行われること」及び「組織再編成後も移転した事業が継続すること」との要件を緩和したという国側の主張を納税者も認めてしまっているため、平成13年当時において、適格組織再編成に該当するために、「資産の移転が独立した事業単位で行われること」及び「組織再編成後も移転した事業が継続すること」が必要であったかどうかは明らかになったとは言い難い。 そうは言っても、平成22年度税制改正と明らかに整合しないことから、このような解釈は、平成22年度税制改正後の事件に影響を与えないとすることが、現実的な対応になると考えられる。 (連載了)
〈ポイント解説〉 役員報酬の税務 【第12回】 「役員退職給与に係る功績倍率の是認水準」 税理士 中尾 隼大 ○●○● 解 説 ●○●○ 役員退職給与は、相当であると認められる金額を超える部分は損金不算入であると規定されている(法法34②、法令70二)。その損金算入限度額の算定方法は本連載【第5回】で触れており、「功績倍率法」と「1年当たり平均額法」が通常用いられ、功績倍率法には最高功績倍率法と平均功績倍率法がある。 会社にとって、役員退職給与の損金算入限度額の計算は重要な問題である。そこで、実務上の取扱いやその注意点を確認したい。 (1) 実務上の取扱い 実務においては、代表取締役の退職については功績倍率3倍が認められているという認識が支配的となっている。仮に役員退職給与の損金算入性が問題となる場合、すなわち課税当局が役員退職給与について税務調査の場で指摘しようとする場合、功績倍率による損金算入限度額に焦点を当てるよりも、当該役員に本当に退職の事実があったか否かという事実認定にて決着するケースの方が多い(本連載【第2回】参照)(※1)。 (※1) 稟議書への捺印、組織図や名刺の肩書、従業員へのヒアリングや金融機関等への反面調査等で、その「退職」した役員の勤務実態や法人への関与度が明らかとなるためである。したがって、生前退職の場合には、経営から決別する覚悟で役員退職給与の支給を受けるべきである。 翻せば、形式的な書類を具備し、役員の勤続年数計算等に誤りがなく、3倍以下の功績倍率にて損金算入限度額を把握している場合、税務調査の場では問題視されるケースはほとんどないといえるだろう(※2)。 (※2) 現に、裁判例や裁決例において、筆者が調査した限り、当初から3倍以下の功績倍率を設定し、その結果係争に発展したという事例は見当たらない。 (2) 係争時の取扱い これに対して、例えば功績倍率10倍を採用しているなど、客観的かつ確実にイレギュラーだと認識されるケースにおいては、課税庁により抽出された同業類似法人の功績倍率により更正処分が行われることとなるだろう。当該更正処分は、納税者にとっても金額的に大きなインパクトがあるため、その多くが係争事案に発展すると思われる。 この場合、抽出された同業類似法人の役員退職給与支給実績に基づいて功績倍率が算定されるため、結果として3倍という実務上の運用より大きく下振れするケースも往々にしてある。例えば、東京高裁平成25年7月18日判決では(※3)、代表取締役の死亡退職に対し、同業類似法人として3社を抽出した結果、功績倍率の平均値として1.18倍を採用した例がある。他にも、裁判所が3倍を下回る功績倍率を採用した例は、枚挙に暇がない。 (※3) 税務訴訟資料263号順号12261、TAINS:Z263-12261 係争に発展した場合、納税者側は功績倍率を少しでも高く主張したいわけである。そのためには、課税庁側が行った同業類似法人の抽出基準自体の合理性に疑いがあると主張していくことが1つの柱となるが、そのほとんどは合理性が認められるとして退けられているのが実態といえる(※4)。 (※4) 抽出基準に合理性は認められるものの、納税者と業種の異なる法人が混入していたとして納税者の主張が結果として一部認められた裁決例として、国税不服審判所平成29年4月25日裁決がある。TAINS:J107-3-06 係争事案に発展する要因の1つは、民間である納税者が事前に入手することが可能な同業類似法人に関する情報と、課税庁が有している、すなわち更正処分時に抽出可能な情報に格差があることである。 この点、納税者にとって事業年度末まで、ないし確定申告期限までに必要な情報が入手できず不透明であるという、予測可能性の問題がある。もっとも、この点については札幌地裁平成11年12月10日判決にて(※5)、「必要な限度において、納税者の予測可能性が制限されることがあってもやむを得ないといわざるを得ない(平均功績倍率法に限らず、最高功績倍率法にせよ、1年当たり平均額法にせよ、比較法人の資料に基づいて計算する手法をとるのであるから、納税者の側での資料の入手が困難であることに変わりはないはずである。)」と判示されている。 (※5) 税務訴訟資料245号703頁、TAINS:Z263-12261 (3) 1.5倍判決の出現と「特殊な事情」 このような情報格差の問題について、東京地裁平成29年10月13日判決の出現は(※6)、いわゆる「1.5倍判決」等と呼ばれ実務家の注目を集めた。これは、抽出された同業類似法人の平均を採用する平均功績倍率法を合理的であるとした上で、さらに算出された功績倍率に1.5倍を乗じた係数にて、役員退職給与に係る税務上の損金算入限度額を計算する旨を示した地裁判決である。 (※6) 税務訴訟資料267号順号13076、TAINS:Z267-13076 その理由として、平均功績倍率法は、①個々の特殊性を捨象した平均値に過ぎず、②抽出した同業類似法人のうちその功績倍率の平均値を超える法人があり、③納税者と課税当局では情報量に格差がある、という問題がある点が挙げられている。この判決は、上記で触れたような納税者と課税庁の情報格差に一石を投じたものであると評価できるが、1.5倍とする根拠については何ら指摘されていない(※7)。 (※7) この点については、拙著「平均功績倍率の合理性-東京地裁平成29年10月13日判決を素材として-」税理61巻6号(ぎょうせい、2018)135頁。 これに対し、その後の高裁判決は、原審の判示内容を補正した上で1.5倍の記載部分を削除した(※8)。そして、「同業類似法人の抽出が合理的に行われてもなお、同業類似法人の役員に対する退職給与の支給の状況として把握されたとはいい難いほどの極めて特殊な事情があると認められる場合に限り、これを別途考慮すれば足りる」と示している。 (※8) 東京高裁平成30年4月25日判決。訟務月報65巻2号133頁、TAINS:Z888-2177 なお、この「特殊な事情」は、冒頭では「特段の事情」と表現しているものであるが、どのような場合に相当だと認められるのかは明らかにされていない。 (4) 役員退職給与支給時の留意点 上記の通り、実務上の考え方と、裁判所が採用する、すなわち課税庁が抽出した同業類似法人から得られる功績倍率には乖離がある場合が認められるのである。この要因は、同業類似法人を抽出する場合、同一地域・同一業種・同一規模等を基準としてフィルタをかけるため、その業種・業界の状況や特色が如実に現れることにある。 例えば、(2)では功績倍率が3倍を下回る結果となった例が多々あることに触れているが、その逆も然りである。全体的に数は少ないが、(3)で触れた1.5倍判決では、5社を抽出した上で最終的に平均功績倍率として3.26倍を採用し、これは3倍を上回る結果となった。これは、製造業である原告の同業類似法人全体がその当時、「景気が良かった」といえるのだろう。 このように、係争段階にならなければ適正な功績倍率が不明である以上、そして納税者と課税庁の間には情報格差が存在している以上、実務上の慣行でもある「3倍」が問題となることはないと思われる。しかし、3倍超の功績倍率を採用すると、それ相応の理由が必要となるばかりか、課税庁へのチャレンジであるとの心証を抱かれる可能性もあるため、避けるべきである。 (了)
相続税の実務問答 【第45回】 「令和元年台風第19号による被災地内の土地等の評価」 税理士 梶野 研二 [答] 令和元年台風第19号に係る特定地域に指定された地域内の土地等については、同台風による災害の発生前に相続により取得したものであっても、相続税の申告書の提出期限がこの災害の発生日以後である場合には、災害発生直後の価額により相続税の課税価格を計算することができます。 令和元年台風第19号による災害の発生直後の価額は、令和元年分の路線価及び評価倍率に「調整率」を乗じて求めた調整後の路線価又は評価倍率を基にして算出した価額により求めることができます。 この「調整率」については、令和2年2月に公表されており、国税庁ホームページで確認することができます。 ● ● ● ● ● 説 明 ● ● ● ● ● 1 特定土地等及び特定株式等に係る相続税の課税価格の計算の特例 相続税の課税価格の計算上、相続や遺贈により取得した財産の価額は、相続開始時における各財産の時価とされており(相法22)、相続開始後に生じた原因により財産の価額が下落したとしても、相続税の課税価格の計算には影響しません。 しかしながら、前回説明しましたように、特定非常災害の発生日前に相続が開始し、かつ、その相続に係る相続税の申告書の提出期限前に特定非常災害が発生した場合には、相続又は遺贈により取得した財産のうち、特定非常災害の発生日において所有していた特定土地等又は特定株式等について相続税の課税価格に算入すべき価額は、その特定非常災害の発生直後の価額とすることができることとされています(措法69の6①)。 令和元年台風第19号は、特定非常災害に指定され、その発生日は令和元年10月10日とされています。長野県は全域が特定地域に指定されていますので、長野県内に所在する土地等については、台風第19号による被災前に相続や遺贈により取得した土地等であっても、その災害の発生直後の価額により相続税の課税価格を計算することができます。 2 令和元年台風第19号による災害の発生直後の価額 相続又は遺贈により取得した土地等は、路線価方式又は倍率方式により評価することとなります。これらの方式における路線価や評価倍率は、毎年1月1日を評価時点として、1年間を通して適用されることとされており、その年中における災害等による地価下落は、路線価や評価倍率の評定に織り込まれていません。 そこで、令和元年台風第19号に係る特定地域における特定非常災害の発生直後の価額は、この路線価や評価倍率に一定の調整率を乗じた後の価額によることができることとされ、その調整率は、特定地域に指定された地域ごと、かつ地目の別に定められ、令和2年2月26日に公表されました。この調整率表は、国税庁ホームページで確認することができます。 《調整率表の例》 3 調整率を適用した場合の評価方法 (1) 路線価地域の場合 特定土地等が路線価地域にある場合の「令和元年台風第19号の発生直後の価額」は、令和元年分の路線価に「調整率」を乗じて求めた調整率適用後の路線価を基に、奥行価格補正等の画地計算を行います。 また、評価対象地が貸宅地、貸家建付地、借地権などである場合には、調整率適用後の路線価により計算した自用地としての価額を基に、貸宅地、貸家建付地、借地権などとしての価額を計算します。 (2) 倍率地域の場合 特定土地等が倍率地域にある場合の「令和元年台風第19 号の発生直後の価額」は、令和元年分の評価倍率に「調整率」を乗じて計算します。評価対象地が貸宅地、貸家建付地、借地権などである場合には、調整率適用後の路線価により計算した自用地としての価額を基に、貸宅地、貸家建付地、借地権などとしての価額を計算します。 4 ご質問の場合 お父様の遺産である土地は、令和元年台風第19号に係る特定地域に指定された長野県N市に所在するとのことですから、同台風に係る災害の発生直後のこれらの土地の価額により相続税の課税価格を計算することができます。 具体的には、令和元年分の路線価又は評価倍率に、令和元年台風第19号に係る調整率表に定める調整率を乗じて求めた調整後の路線価又は評価倍率を基にして、令和元年台風第19号による災害の発生直後の価額を求めることとなります。遺産の中に貸家建付地があるとのことですが、調整率適用後の路線価又は評価倍率を適用して計算した自用地としての価額を基に、貸家建付地としての価額を計算することとなります。 なお、あなた方が相続等により取得した土地は、特定地域であるN市内にありますので、相続税の申告書の提出期限が延長されます(【第44回】「令和元年台風第19号による被災地内の土地等がある場合の相続税の申告期限」参照)。 (了)
基礎から身につく組織再編税制 【第14回】 「非適格合併を行った場合の合併法人の取扱い」 太陽グラントソントン税理士法人 ディレクター 税理士 川瀬 裕太 今回は、非適格合併を行った場合の合併法人の取扱いについて解説します。 1 非適格合併を行った場合の資産・負債の受入れ(原則) 被合併法人が合併により合併法人にその有する資産・負債の移転をしたときは、合併時の時価による譲渡をしたものとされるため、合併法人が受け入れる資産・負債の取得価額は、合併時の時価となります(法法62)。 引当金や準備金については、被合併法人の最後事業年度で取り崩すこととされており、合併法人に引き継ぐことはできません。 2 非適格合併により受け入れた棚卸資産の取扱い 移転を受けた棚卸資産については、時価で取得したものとされるため、取得価額は合併時の時価となります。 3 非適格合併により受け入れた減価償却資産の取扱い (1) 取得価額 移転を受けた減価償却資産については、時価で取得したものとされます。取得価額は、合併時の時価に事業の用に供するために直接要した費用の額を加算した金額となります(法令54①)。 (2) 耐用年数 耐用年数は、中古資産の耐用年数を使用することができます(耐令3①)。 4 繰延資産・一括償却資産 移転を受けた繰延資産・一括償却資産については、時価で取得したものとされるため、取得価額は合併時の時価となります。一括償却資産に該当するかどうかは、合併法人の取得価額が20万円未満かどうかで判定することになります。 5 資産(負債)調整勘定 非適格合併により、合併法人が受け入れた資産等の時価純資産価額と交付した新株等の価額の合計額(合併対価)に差がある場合には、資産(負債)調整勘定を計上することとなります(法法62の8)。 (1) 資産調整勘定 非適格合併による合併対価が、移転資産等の時価純資産価額を超えるときは、超える部分の金額のうち資産等超過差額以外のものが資産調整勘定となります。資産調整勘定として計上された金額は、60ヶ月で損金算入されます(法法62の8①④、法令123の10④)。 (2) 資産等超過差額 資産等超過差額とは、非適格合併による合併対価の合併時の時価と合併契約時の時価に著しい差異が生じている場合の差異及び実質的に被合併法人の欠損金に相当する金額をいいます(法令123の10④、法規27の16)。 資産等超過差額については、損金に算入されることはありません。 (3) 負債調整勘定 非適格合併による合併対価が、移転資産等の時価純資産価額に満たないときは、満たない部分の金額が負債調整勘定となります。負債調整勘定として計上された金額は、60ヶ月で益金算入されます(法法62の8③⑦)。 (4) 退職給与負債調整勘定 ① 内容 退職給与負債調整勘定とは、非適格合併に伴い被合併法人から引継ぎを受けた従業者につき、退職給与債務の引受け(②参照)を行った金額に係る負債調整勘定をいいます(法法62の8②)。 ② 退職給与債務の引受け 「退職給与債務の引受け」とは、非適格合併等後の退職その他の事由により非適格合併等に伴い引継ぎを受けた従業者に支給する退職給与の額につき、非適格合併等前における在職期間その他の勤務実績等を勘案して算定する旨を約し、かつ、これに伴う負担の引受けをすることをいいます。 ③ 益金算入額 引継ぎを受けた従業者が退職したとき、又は、引継ぎを受けた従業者の退職給与の支払いを行ったときに、次のいずれかの方法により計算した金額を、益金の額に算入することとなります(法法62の8⑥⑩⑫、法令123の10)。 (5) 短期重要負債調整勘定 ① 内容 短期重要負債調整勘定とは、非適格合併により被合併法人から移転を受けた事業に係る将来の債務(②参照)で、その履行が非適格合併の日からおおむね3年以内に見込まれるものについて、合併法人がその履行に係る負担の引受けをした場合のその債務の額に相当する金額をいいます。 この場合の「債務の額に相当する金額」は、移転資産の取得価額の20%を超える債務引受け額に限定されています。 ② 将来の債務 「将来の債務」とは、その事業の利益に重大な影響を与えるものに限るものとし、退職給与債務引受けに係るもの及び既にその履行をすべきことが確定しているものを除きます。 ③ 益金算入額 短期重要負債調整勘定については、次の区分に応じて、それぞれの金額を益金の額に算入することとなります(法法62の8⑥)。 6 非適格合併により増加する資本金等の額 合併法人において、合併により増加する資本金等の額は、次のとおりです(法令8①五)。 ① 加算項目 ② 減算項目 (※) 抱合株式とは、合併法人が合併前から保有している被合併法人株式のことをいいます。 非適格合併により増加する資本金等の額を図にすると、下記のようになります。 7 非適格合併により増加する利益積立金額 非適格合併の場合には、合併法人は被合併法人の最後事業年度の利益積立金額を引き継ぎません(増加しません)。 8 完全支配関係法人間の非適格合併の取扱い (1) 内容 グループ法人税制により、完全支配関係がある法人間で譲渡損益調整資産((2)参照)を譲渡した場合には、譲渡損益が繰り延べられるため、完全支配関係がある法人間で非適格合併が行われたときも、譲渡損益調整資産については譲渡損益が繰り延べられ、帳簿価額で受け入れたのと同様の結果となります。 (2) 譲渡損益調整資産 「譲渡損益調整資産」とは、固定資産、棚卸資産である土地等、有価証券(売買目的有価証券を除きます)、金銭債権、繰延資産のうち、直前の帳簿価額が1,000万円以上の資産をいいます。 9 具体例 〔前提〕 〔合併法人の受入税務仕訳〕 ◆非適格合併を行った場合の合併法人の取扱いのポイント◆ 非適格合併があった場合には、原則として資産・負債は時価で受け入れます。 非適格合併があった場合には、資産(負債)調整勘定の計上を検討する必要があります。 非適格合併があった場合には、合併法人は被合併法人の最後事業年度の利益積立金額を引き継ぎません。 完全支配関係がある法人間で非適格合併が行われたときは、譲渡損益調整資産を帳簿価額で受け入れることとなります。 (了)
2020年3月期決算における会計処理の留意事項 【第3回】 RSM清和監査法人 公認会計士 西田 友洋 Ⅵ 企業結合会計基準等の改正 2019年1月16日にASBJより、改正企業会計基準第21号「企業結合に関する会計基準」等が公表された。 主な改正点等は、以下のとおりである。 1 条件付取得対価の定義の変更 条件付取得対価の定義が変更されている(企業会計基準第21号「企業結合に関する会計基準(以下、「結合基準」という)」(注2))。企業結合において、条件付取得対価がある場合に、企業結合日後に返還される場合もあるため、これについて定義に含めている。 2 対価が返還される条件付取得対価の会計処理 企業結合日後に返還される条件付取得対価について、会計処理が定められている。 3 「企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針」の記載内容の改正 ① 記載内容の整合 結合当事企業の株主に係る会計処理に関する企業会計基準適用指針第 10 号「企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針(以下、「結合指針」という)」の第279項から第289項について、企業会計基準第7号「事業分離等に関する会計基準」と記載内容の整合性を図るための改正が行われている。 ② 分割型会社分割のみなし事業年度に関連する規定の削除 平成22年度税制改正において分割型会社分割のみなし事業年度が廃止されていることから、分割型会社分割が非適格組織再編となり、分割期日が分離元企業の期首である場合の分離元企業における税効果会計の取扱いを定めた適用指針第109項及び第403項を削除している。 上記改正は、会計処理の改正ではなく、記載内容の整合性を図ったのみであるため、本解説では、詳細な解説は行わない。 4 適用時期 2019年4月1日以後開始する事業年度の期首以後実施される組織再編から適用する。 なお、上記改正の適用前に行われた企業結合及び事業分離等の会計処理の従前の取扱いについては、改正後も継続する。そのため、改正結合基準及び改正結合指針の適用日における会計処理の見直し及び遡及的な処理は行わない。 Ⅶ 在外子会社等の会計処理の改正 2018年9月14日と2019年6月28日にASBJより、実務対応報告第18号「連結財務諸表作成における在外子会社等の会計処理に関する当面の取扱い」等の改正が公表された。 1 2018年改正 2018年9月14日にASBJよりIFRS第9号「金融商品」の適用に伴い、実務対応報告第18号「連結財務諸表作成における在外子会社等の会計処理に関する当面の取扱い(以下、「2018改正在外子会社取扱い」という)」及び実務対応報告第24号「持分法適用関連会社の会計処理に関する当面の取扱い(以下、「2018改正持分法取扱い」という)」の改正が公表された。 (1) 改正の内容 在外子会社等においてIFRS第9号「金融商品」を適用し、資本性金融商品の公正価値の事後的な変動をその他の包括利益に表示する選択をしている場合(OCIオプション(※))、連結決算手続上、当該資本性金融商品の売却損益相当額及び減損損失相当額を当期の損益として修正する(2018改正在外子会社取扱い 当面の取扱い(5))。 (※) OCIオプションとは、取得原価と時価の差額(評価差額)をその他の包括利益(OCI)として認識し、その後、リサイクリングを行わない(売却時の売却損益や減損損失を計上せず、利益剰余金に振り替える)ことをいう。 また、持分法適用関連会社において在外子会社取扱いに準じて処理を行う場合には、上記と同様に修正を行う(2018改正持分法取扱い 当面の取扱い)。 (2) 適用時期 (3) 適用初年度の取扱い 改正在外子会社取扱いの適用初年度においては、会計基準等の改正に伴う会計方針の変更として取り扱う。 ただし、2018改正在外子会社取扱いの適用初年度においては、会計方針の変更による累積的影響額を当該適用初年度の期首時点の利益剰余金に計上することができる。 この場合、在外子会社等において IFRS 第9号「金融商品」を早期適用している場合は、遡及適用した場合の累積的影響額を算定する上で、在外子会社等においてIFRS第9号「金融商品」を早期適用した連結会計年度から在外子会社取扱いの適用初年度の前連結会計年度までの期間において資本性金融商品の減損会計の適用を行わず、在外子会社取扱いの適用初年度の期首時点で減損の判定を行うことができる(2018改正在外子会社取扱い 適用時期(3)④)。 2 2019年改正 2019年6月28日にASBJより実務対応報告第18号「連結財務諸表作成における在外子会社等の会計処理に関する当面の取扱い(以下、「2019改正在外子会社取扱い」という)」の改正が公表された。 当該改正では、IFRS第16号「リース」(以下、「IFRS第16号」という)及び米国会計基準会計基準更新書第2016-02号「リース(Topic 842)」(以下、「リース(Topic 842)」という)の適用に伴い、「考え方」が整理されている。 (1) 考え方の整理 IFRS第16 号及びリース(Topic 842)を対象に、修正項目として追加する項目の有無について検討が行われ、日本の連結財務諸表を作成するにあたり、修正項目の追加は行わないこととなった(2019改正在外子会社取扱い 本実務対応報告の公表及び改正の経緯 2019 年改正)。 つまり、在外子会社等がIFRS第16号やリース(Topic 842)を適用している場合、これらの適用に伴う会計処理について、修正することなく、日本の連結財務諸表に取り込む。 なお、在外関連会社の財務諸表がIFRS又は米国会計基準に準拠して作成されている場合、及び国内関連会社が指定国際会計基準又は修正国際基準に準拠した連結財務諸表を作成して金融商品取引法に基づく有価証券報告書により開示している場合については、当面の間、実務対応報告第18 号に準じて行うことができる。 (2) 適用時期 2019年6月28日以後適用する。 Ⅷ 時価の算定に関する会計基準等の公表 日本では、企業会計基準第10号「金融商品に関する会計基準」等において、時価(公正な評価額)の算定が求められているが、算定方法に関する詳細なガイダンスは公表されていなかった。一方、IFRSではIFRS第13号「公正価値測定」が公表されている。 そこで、2019年7月4日に、ASBJより企業会計基準第30号「時価の算定に関する会計基準(以下、「時価基準」という)」及び企業会計基準適用指針第31号「時価の算定に関する会計基準の適用指針(以下、「時価指針」という)」が公表された。 また、関連して以下の基準等の改正も公表された。 さらに、日本公認会計士協会から以下の指針について改正が公表されている。 1 適用範囲 時価基準は、以下の項目の時価の算定に適用する(時価基準3、26~28)。 2 時価の定義 「時価」とは、算定日において市場参加者間で秩序ある取引が行われると想定した場合の、当該取引における資産の売却によって受け取る価格又は負債の移転のために支払う価格をいう(時価基準5)。 時価は、直接観察可能であるかどうかにかかわらず、算定日における市場参加者間の秩序ある取引が行われると想定した場合の出口価格(資産の売却によって受け取る価格又は負債の移転のために支払う価格)であり、入口価格(交換取引において資産を取得するために支払った価格又は負債を引き受けるために受け取った価格)ではない(時価基準31(2))。 3 時価の算定方法 時価の算定にあたっては、状況に応じて、十分なデータが利用できる評価技法(そのアプローチとして、例えば、マーケット・アプローチやインカム・アプローチがある)を用いる。評価技法を用いるにあたっては、関連性のある観察可能なインプットを最大限利用し、観察できないインプットの利用を最小限にする(時価基準8)。 時価の算定に用いるインプットは、レベル1、2、3があり、レベル1からレベル3の順に優先的に使用する(時期基準11)。 4 市場価格のない株式等 時価基準では、時価のレベルに関する概念を取り入れ、たとえ観察可能なインプットを入手できない場合であっても、入手できる最良の情報に基づく観察できないインプットを用いて時価を算定する。このような時価の考え方の下では、時価を把握することが極めて困難と認められる有価証券は想定されない。 しかし、市場価格のない株式等に関しては、たとえ何らかの方式により価額の算定が可能であったとしても、それを時価とはせず、従来どおり取得原価をもって貸借対照表価額とする(金融商品基準81-2)。 5 注記 金融商品の時価のレベルごとの内訳等に関する事項として以下の(1)から(3)を注記する。ただし、重要性が乏しいものは注記を省略することができる。なお、連結財務諸表において注記している場合には、個別財務諸表の注記は不要である(金融商品開示指針5-2、39-9、39-11、39-12、金融商品基準40-2)。 また、時価基準及び時価指針の適用初年度においては、下記(1)から(3)の比較情報の注記は不要である(金融商品開示指針43)。 (※1) 時価の算定に用いる評価技法又はその適用を変更する場合は、会計上の見積りの変更として処理する。ただし、この場合であっても、会計上の見積りの注記(企業会計基準第24号「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準(以下、「遡及基準」という)」18)は不要である。 (※2) 企業自身が観察できないインプットを推計していない場合(例えば、過去の取引価格又は第三者から入手した価格を調整せずに使用している場合)には、記載は不要である。 (※3) 調整表を作成するにあたっては、以下を区別して注記する。なお、時価基準及び時価指針を「年度末」の財務諸表から適用する場合(下記6参照)は、調整表の注記は省略することができる。 ① 当期の損益に計上した額及びその損益計算書における科目 ② 当期のその他の包括利益に計上した額及びその包括利益計算書における科目 ③ 購入、売却、発行及び決済のそれぞれの額(これらの額の純額でも可) ④ レベル1の時価又はレベル2の時価からレベル3の時価への振替額及び当該振替の理由 ⑤ レベル3の時価からレベル1の時価又はレベル2の時価への振替額及び当該振替の理由 ⑥ 上記①に定める当期の損益に計上した額のうち貸借対照表日において保有する金融商品の評価損益及びその損益計算書における科目 ⑦ 上記④及び⑤の振替時点に関する方針 例えば、以下のような方針が挙げられる。 ➤振替を生じさせた事象が生じた又は状況が変化した日 ➤会計期間の期首 ➤会計期間の末日 調整表は、基本的に表形式により注記することが想定されるものの、時価がレベル3の時価に分類される金融商品の期首残高から期末残高までの変動の大部分が単一の変動理由によって説明できる場合には、一般的な重要性の判断に基づき、表形式によらない注記も可能である。 (※4) 例えば、企業における評価の方針及び手続の決定方法や各期の時価の変動の分析方法等 (※5) 観察できないインプットと他の観察できないインプットとの間に相関関係がある場合には、当該相関関係の内容及び当該相関関係を前提とすると時価に対する影響が異なる可能性があるかどうかに関する説明を注記する。 6 適用時期 (1) 適用にあたっての経過措置 時価基準及び時価指針の適用初年度においては、時価基準及び時価指針が定める新たな会計方針を、将来にわたって適用する。この場合、その変更の内容について注記する(時価基準19)。 ただし、上記に関わらず、時価基準及び時価指針の適用により、時価の算定方法を変更した場合で、当該変更による影響額を分離することができる場合は、会計方針の変更に該当するものとする。この場合、以下のいずれかの方法により時価基準及び時価指針を適用することができる。なお、いずれの場合も遡及基準第10項に定める事項(会計基準等の改正に伴う会計方針の変更の注記)の注記は必要である(時価基準20)。 (2) 投資信託の経過措置 投資信託の時価の算定は、時価基準公表後概ね1年をかけて検討を行うこととされた。改正までの間は、投資信託の時価は、取引所の終値若しくは気配値又は業界団体が公表する基準価格が存在する場合には当該価格とし、当該価格が存在しない場合には投資信託委託会社が公表する基準価格、ブローカーから入手する評価価格又は情報ベンダーから入手する評価価格とすることができる。 また、当該経過措置を適用した投資信託について、上記5の注記は不要である。当該注記を行わない場合、当該投資信託について、その旨及び貸借対照表計上額を上記5(1)の注記に併せて注記する(時価指針26)。 (3) 組合等への出資の経過措置 貸借対照表に持分相当額を純額で計上する組合等への出資(金融商品指針132、308)の時価の注記は、投資信託に関する取扱いを改正する際(上記(2)参照)に取扱いを明らかにする。改正までの間は金融商品開示指針第4項(1)(金融商品の時価等に関する事項)の注記は必要ない。 なお、当該注記を行わない場合、その旨及び貸借対照表計上額を金融商品開示指針第4項(1)の注記に併せて注記する(時価指針27)。 (4) トレーディング目的で保有する棚卸資産の経過措置 トレーディング目的で保有する棚卸資産の時価の定義の見直しにより生じる会計方針の変更は、将来にわたって適用する。この場合、その変更の内容について注記する(棚卸資産基準21-7)。 (5) その他有価証券の経過措置 その他有価証券の期末の貸借対照表価額に期末前1ヶ月の市場価格の平均価額を用いることができる定めの削除や、市場価格のない株式等以外の時価を把握することが極めて困難と認められる有価証券の定めの削除などにより生じる会計方針の変更は、将来にわたって適用する。この場合、その変更の内容について注記する(金融商品基準44-2)。 Ⅸ 収益認識会計基準等の早期適用 企業会計基準第29号「収益認識に関する会計基準(以下、「収益認識会計基準」という)」及び企業会計基準適用指針第30号「収益認識に関する会計基準の適用指針(以下、「収益認識指針」という)」の適用時期及び会計方針の取扱いは、以下のとおりである。 1 適用時期 2 会計方針の取扱い (1) 原則的な取扱いに従って遡及適用する場合の実務上の負担を軽減する取扱い 原則的な取扱いに従って遡及適用する場合、以下の(ⅰ)から(ⅳ)の方法の1つ又は複数を適用することができる(収益認識会計基準85)。 (2) 容認処理に従って遡及適用する場合の実務上の負担を軽減する取扱い 容認処理を採用する場合、以下の方法のいずれかを適用することができる(収益認識会計基準86)。 3 注記例 2020年2月期及び3月期決算の会社において、以下の(1)から(8)のとおり早期適用を行っている会社が8社ある。今後、収益認識会計基準及び収益認識指針を適用するにあたって、参考にされたい。 第3四半期報告書の会計方針の変更の注記例から読み取れることは、以下のとおりである。 なお、下記注記の下線は、筆者が追加したものである。 (1) (株)安川電機 2020年2月期 第3四半期 会計方針の変更注記 《POINT》 ➤収益認識会計基準第84項ただし書きを適用 ➤収益認識会計基準第86項の記載あり ➤収益認識会計基準の適用による影響は軽微 (2) 三井化学(株) 2020年3月期 第3四半期 会計方針の変更注記 《POINT》 ➤収益認識会計基準第84項ただし書きを適用 ➤収益認識会計基準の適用による影響は軽微 (3) (株)ラック 2020年3月期 第3四半期 会計方針の変更注記 《POINT》 ➤収益認識会計基準第84項ただし書きを適用 ➤他社が提供する保守サービスやソリューションの販売を一定期間での売上計上から提供開始時点で売上計上に変更 ➤準委任契約により提供するサービスについては、サービス提供の完了時点で売上を計上する方法から契約における取引開始日から完全に履行義務を充足すると見込まれる時点までの期間がごく短い場合を除き、一定の期間にわたり売上計上する方法に変更 ➤収益認識会計基準の適用による影響あり (4) パルステック工業(株) 2020年3月期 第3四半期 会計方針の変更注記 《POINT》 ➤収益認識会計基準第84項ただし書きを適用 ➤収益認識会計基準第86項の記載あり ➤輸出販売の一部に関して、船積基準から財又はサービスを顧客に移転し当該履行義務が充足された一時点で収益を認識する方法に変更 ➤収益認識会計基準の適用による影響なし (5) あすか製薬(株) 2020年3月期 第3四半期 会計方針の変更注記 《POINT》 ➤収益認識会計基準第84項ただし書きを適用 ➤収益認識会計基準第86項の記載あり ➤一部の販売先における製商品が引き渡された時点で収益を認識していた取引について、販売先から特約店に製商品が引き渡された時点で収益を認識 収益の計上金額についても製商品が引き渡された時点の販売価格を基礎とした金額で収益で認識する方法に変更 ➤販売奨励金等の特約店に支払われる対価について、販売費及び一般管理費として処理する方法から取引価格から減額する方法に変更 ➤返品権つき販売については、従来、売上総利益相当額に基づき返品調整引当金を計上していた方法から、予想される返品部分に関しては、変動対価に関する定めに従って、販売時に収益を認識しない方法に変更 ➤収益認識会計基準の適用による影響あり (6) (株)ディスコ 2020年3月期 第3四半期 会計方針の変更注記 《POINT》 ➤収益認識会計基準第84項ただし書きを適用 ➤収益認識会計基準第86項の記載あり ➤精密加工装置等の販売において、出荷基準から検収基準に変更 ➤収益認識会計基準の適用による影響あり (7) (株)ビジネスブレイン太田昭和 2020年3月期 第3四半期 会計方針の変更注記 《POINT》 ➤収益認識会計基準第84項ただし書きを適用 ➤収益認識会計基準の適用による影響あり (8) 住友林業(株) 2020年3月期 第3四半期 会計方針の変更注記 《POINT》 ➤収益認識会計基準第84項ただし書きを適用 ➤収益認識会計基準第86項の記載あり ➤木材建材事業における国内流通事業に係る収益について、総額で収益を認識する方法から、当社の役割が代理人に該当する取引については、顧客から純額で収益を認識する方法に変更 ➤住宅・建築事業及び海外住宅・不動産事業における工事契約について、進捗部分について成果の確実性が認められる工事は工事進行基準を、工期がごく短い工事については工事完成基準を適用する方法から、すべての工事について一定の期間にわたり収益を認識する方法に変更(期間がごく短い工事契約については代替的な取扱いを適用) ➤戸建住宅等の引渡後の無償点検サービス部分について、従来は収益を認識していなかったが、戸建住宅等の引渡しに係る履行義務と当該サービスに係る履行義務をそれぞれ識別し、履行義務ごとに収益を認識する方法に変更 ➤収益認識会計基準の適用による影響あり (了)
計算書類作成に関する “うっかりミス”の事例と防止策 【第33回】 「配当原資の記載ミス」 公認会計士 石王丸 周夫 1 今回の事例 計算書類のドラフトにはうっかりミスがつきものです。 たとえば、こんなミスをよく見かけます。 【事例33-1】 剰余金の配当の注記で、決算書に照らすと問題が判明する記載がある。 【事例33-1】は、剰余金の配当に関する注記事項です。この中にミスが1ヶ所あります。しかも、結構、重大なミスです。 ミスの場所は、3.(2)の記載事項の中ですが、この注記だけを眺めていても、見つけることはできません。株主資本等の数値を合わせて見ていかなければ、わからないでしょう。 この会社の連結株主資本等変動計算書と株主資本等変動計算書は以下のとおりです(いずれも株主資本部分のみ抜粋)。どこが問題なのかわかりますか? ヒントは今回のタイトルにあるとおり、「配当原資」に関することです。 2 配当原資が利益剰余金でないこともある では、正解を見てみましょう。以下のとおりです。 上記正解事例の赤丸で囲んだとおり、配当原資はではなく、とすべきでした。 会社の配当原資には、との2つがあります(厳密には、「」と「」)。 このうちとは、会社がこれまでに獲得してきた利益の累積のことで、そこから株主に配当を支払うというのは、イメージとして理解できると思います。 ところが、会社が予想外の赤字決算となってしまった場合等で、がマイナス値になってしまうことがあります。その場合、直感的には配当できないかのように思えますが、実はそうではありません。があれば、そこから配当できるのです。 とは、株主の会社への払込資本に関わる取引から生じる剰余金です。そのうち資本準備金以外のものが配当原資となります。それが「」です。たとえば、資本金及び資本準備金の取崩しによって生じた剰余金や、自己株式を取得価額超の価額で売却等した場合の差額です。 少し難しい話が続きましたが、以上を踏まえて今回のケースの具体的数値を見ていきましょう。 3 個別の数値で配当原資をチェック この会社は連結と個別の両方の計算書類を作成していますが、配当原資について確認する場合は、個別の数字を見ます。配当は、個々の法人単位で実施するものだからです。 実際のところ、剰余金の内訳は連結株主資本等変動計算書からは知りえず、株主資本等変動計算書により、内訳を確認していくことになります。 【事例33-1】では、配当原資はであると記載されていましたが、この会社の株主資本等変動計算書で、の残高がどうなっているかを見てください。のうち「」の残高のところです。そこが配当原資になります。 すると、これがマイナス値になっています。つまり、ここからは配当できないということになるのです。 その場合、前述のとおり、「」から配当できないかを見てみます。その残高は1,500百万円。会社法の規制による分配の上限額(分配可能額)は、この資料から判断する限り1,423百万円(1,500+△27-自己株式50=1,423)。注記に記載されている配当金総額は1,234百万円です。配当金総額は及び分配可能額のいずれの枠内にも収まっており、から配当可能です。 以上から、この配当の原資は「」でなければならないということになります。 4 なぜ、ミスが見逃されたのか では、なぜこうしたミスが見逃されてしまったのかについても触れておきましょう。 今回の場合は特徴的なことが1つあります。それは、連結と個別で業績が正反対だったということです。連結株主資本等変動計算書を見ると、当期の業績は黒字(親会社株主に帰属する当期純利益)ですが、株主資本等変動計算書を見ると、赤字(当期純損失)です。連結決算を行っている会社では、連結ベースの数値を使って経営判断するのが通常ですから、この会社では業績良好であるという認識が支配的だった可能性があります。 その認識の下、連結株主資本等変動計算書のの当期末残高が1,918百万円と、配当金総額の1,234百万円を上回っていたことが誤認の原因になったのかもしれません。配当は個別計算書類をベースに判断しなければならないにもかかわらず、連結ベースの数値を見て、から配当しても問題ないと勘違いしてしまったのではないでしょうか。 それでもこの会社の場合は、から配当可能だったので、まだよかったです。も十分になければ、配当不能となり、これはもううっかりミスでは済まされないからです。 うっかりミスというのは、「間違えたら直せばよい」というものではありません。特に配当関連の注記事項では、致命的なミスにつながることさえあります。そうならないよう、十分に気をつけていきたいですね。 〈今回のまとめ〉 配当関連の記載事項では、うっかりミスが致命的なミスにつながることが多いので、十分に気をつけましょう。 (連載了)
給与計算の質問箱 【第3回】 「高年齢労働者の雇用保険料の徴収」 税理士・特定社会保険労務士 上前 剛 Q 令和2年4月1日からは、すべての雇用保険被保険者の雇用保険料を徴収しなければならなくなるそうですが、詳しく教えてください。 A 令和2年3月31日までは、「高年齢労働者」の雇用保険料は免除されていたが、令和2年4月1日からは雇用保険料を徴収しければならない。 * * 解 説 * * 1 高年齢労働者とは 雇用保険料が免除される「高年齢労働者」とは、保険年度(4月1日~翌年3月31日)の初日(4月1日)において、64歳以上の雇用保険の一般被保険者をいう。 なお、「高年齢労働者」と「高年齢被保険者」は同義である。 2 これまでの取扱いの変遷 (1) 平成28年12月31日まで 65歳以上の者は、雇用保険の適用除外だった。このため、65歳を過ぎてから会社に入社した場合、雇用保険に加入できなかった。 一方、65歳になる前に会社に入社し雇用保険の一般被保険者だった者が、65歳になった後もその会社に勤務し続ける場合、「高年齢継続被保険者」として雇用保険に加入し続けることができた。 高年齢継続被保険者の雇用保険料は、本人負担・会社負担ともに免除された。 (2) 平成29年1月1日から令和2年3月31日まで 平成29年1月1日からは、以下の〈ケース1〉~〈ケース3〉のとおり、65歳以上の者も「高年齢被保険者」として、入社時の年齢にかかわらず、雇用保険の適用対象とされた。 高年齢被保険者の雇用保険料は、令和2年3月31日までは、本人負担・会社負担ともに免除される。 〈ケース1〉平成29年1月1日以後の入社で、入社時に65歳以上のケース ⇒入社時から高年齢被保険者として雇用保険の適用対象となる(雇用保険料は免除)。 〈ケース2〉平成28年12月31日以前の入社で、入社時に65歳以上のケース ⇒入社時は雇用保険の適用除外だったが、平成29年1月1日からは高年齢被保険者として雇用保険の適用対象となる(雇用保険料は免除)。 〈ケース3〉平成28年12月31日以前の入社で、入社時に65歳未満であった者が、65歳になった後もその会社に勤務し続けるケース ⇒入社時は雇用保険の一般被保険者で、65歳になった後は高年齢継続被保険者として雇用保険の適用対象となり(雇用保険料は免除)、平成29年1月1日からは高年齢被保険者として雇用保険の適用対象となる(雇用保険料は免除)。 (3) 令和2年4月1日から 令和2年4月1日からは、年齢に関係なく、すべての雇用保険被保険者から雇用保険料を徴収しなければならない。 3 雇用保険料率 令和2年度(令和2年4月1日~令和3年3月31日)の雇用保険料率は、本稿執筆時点では未定であるが、平成31年度と同じになる見込みである。平成31年度の雇用保険料率は下表のとおりである。 〔平成31年度の雇用保険料率〕 (※) 厚生労働省「平成31年度の雇用保険料率について」より 4 雇用保険料を免除されている高年齢被保険者の給与から雇用保険料の徴収を開始する時期 上記の通り、令和2年4月1日からは、年齢に関係なく、すべての雇用保険被保険者から雇用保険料を徴収しなければならない。このため、これまで雇用保険料を免除されていた高年齢被保険者の給与から雇用保険料を徴収する必要がある。 徴収を開始する時期については、例えば、高年齢被保険者で末日締め、翌月25日払いの場合、令和2年3月分給与(令和2年4月25日支給)からは雇用保険料を天引きせず、令和2年4月分給与(令和2年5月25日支給)から雇用保険料を天引きすることになる。 (了)
組織再編時に必要な労務基礎知識 Q&A (最終回) 【Q27】 会社分割した場合、雇用保険に関してどのような手続きが必要か 特定社会保険労務士 岩楯 めぐみ 【A】 雇用保険に関しては、承継会社の適用事業所を管轄するハローワークにおいて分割会社と承継会社が同一の事業主であることの認定を受けた上で、被保険者資格を移す手続きなどを行う。 (※) 本稿では、会社分割により事業を分割する会社を「分割会社」、それを承継する会社(新設分割の場合の新設会社も含む)を「承継会社」という。 ここでは、A社を分割会社、B社を承継会社とする吸収分割で、分割前後の事業所の設置状況が下記であることを前提として、必要な雇用保険の手続きを確認する。 なお、A社・B社ともに本社以外は事業所の規模が小さいこと等から、雇用保険の手続き事務は本社で一括して実施する場合とする。 《分割前》 ◇A社(分割会社) ◇B社(承継会社) 《分割後》 ◇A社(分割会社) ◇B社(承継会社) 同一事業主の認定手続き B社の本社を管轄するハローワークにおいて、A社とB社が同一の事業主であることの認定を受ける手続きを行う。 この同一事業主の認定手続きは、同一事業主であることを確認する一定の資料を提出するものとなるが、ハローワークにより「新旧事業実態証明書」等の任意様式の提出が必要になるため、管轄のハローワークに事前に提出書類の確認が必要となる。なお、任意様式以外では概ね次のような書類の提出が求められる。 その他の手続き 同一事業主の認定手続きと合わせて、B社の適用事業所を管轄するハローワークへ次の①の書類を提出する。なお、この手続きは分割後10日以内に実施する必要がある。 また、b5事業所(福岡)を管轄するハローワークへ次の②の書類を提出する。 ①は、A社からB社へ被保険者を移す手続きとなり、分割によりA社からB社に承継されるすべての雇用保険の被保険者について必要となる。 ②は、分割後新設されたb5事業所(福岡)に関する手続きで、規模が小さい等のため雇用保険の手続きを本社で一括して実施するために必要な手続きとなる。 (連載了)