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《速報解説》 経産省、『「攻めの経営」を促す役員報酬-企業の持続的成長のためのインセンティブプラン導入の手引-』の平成31年度税制改正版を公表

《速報解説》 経産省、『「攻めの経営」を促す役員報酬-企業の持続的成長のためのインセンティブプラン導入の手引-』の平成31年度税制改正版を公表   Profession Journal編集部   2017年の公表以降、各法令等の改正を受け経済産業省によって改訂が繰り返されている『「攻めの経営」を促す役員報酬-企業の持続的成長のためのインセンティブプラン導入の手引-』は、既報の通り本年3月にも株式交付信託に関するQ&Aが追加されたばかりだが、このほど5月31日付で、今年度の税制改正事項を反映した新たな改訂が行われた。 役員報酬に関する平成31年度税制改正では、昨年改訂されたコーポレートガバナンス・コードにおいて監査役会設置会社や監査等委員会設置会社における報酬決定の手法として、客観性・透明性の高い報酬諮問委員会の活用が原則化されたことを受け、法人税法34条1項3号に定められた業績連動給与の損金算入要件のうち、その算定方法の決定手続(同号イ(2))について見直しが行われた。 (※) 経済産業省『「攻めの経営」を促す役員報酬-企業の持続的成長のためのインセンティブプラン導入の手引-』P27より一部抜粋 今回の改訂版は上記の税制改正を踏まえ、以下のQ&Aが追加・見直されている。 Q2-1及びQ2-2では税制改正の概要及び経過措置を含む適用時期について解説しており、Q64-1~4にかけては税制改正後の業績連動給与としての損金算入要件の詳細がまとめられている。 例えばQ64-2で取り上げられた、今回の改正で報酬委員会等の独立社外取締役等に求められる「独立職務執行者」という要件については、改正法人税法施行令69条14項及び18項、改正法人税法施行規則22条の3第3項及び第4項でその規定内容を細かく確認することができるが、Q64-2ではこれら規定内容が「証券取引所における独立役員の基準(いわゆる「独立性基準」)とおおむね同等の要件であるため、証券取引所が求める「独立役員届出書」の対象となる者は原則として独立職務執行者の要件を満たすと考えられる」との見解を示しており、Q64-4でも「決定手続に係る損金算入要件を満たす報酬諮問委員会のイメージ」を図解するなど、利用者にとって判定しやすい視点・工夫が織り込まれている。 (了) ↓お勧め連載記事↓

#No. 320(掲載号)
#Profession Journal 編集部
2019/06/04

《速報解説》 金融庁、「監査基準の改訂」等の公開草案を公表~限定付意見とした場合の理由記載を義務化~

《速報解説》 金融庁、「監査基準の改訂」等の公開草案を公表 ~限定付意見とした場合の理由記載を義務化~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 令和元年5月31日、企業会計審議会監査部会は、次の公開草案を公表し、意見募集を行っている。 「監査基準の改訂について(公開草案)」は、監査人による監査に関する説明及び情報提供の一層の充実を図る観点から、監査報告書における意見の根拠の記載や監査人の守秘義務に関するものである。 また、「中間監査基準の改訂について(公開草案)」及び「四半期レビュー基準の改訂について(公開草案)」は、今般の監査基準の改訂及び昨年(平成30年7月5日)の監査基準の改訂における監査報告書の記載区分の見直し等を踏まえたものである。 意見募集期間は令和元年7月1日までである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 主な内容 1 監査基準の改訂(公開草案) アンダーラインが改訂事項である。 2 中間監査基準の改訂(公開草案) 次の改訂を行う。 3 四半期レビュー基準の改訂(公開草案) 次の改訂を行う。   Ⅲ 適用時期等 (了)

#No. 320(掲載号)
#阿部 光成
2019/06/04

プロフェッションジャーナル No.320が公開されました!~今週のお薦め記事~

2019年5月30日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.320を公開! - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。

#Profession Journal 編集部
2019/05/30

山本守之の法人税“一刀両断” 【第59回】「節税保険の改革のあり方」

山本守之の 法人税 “一刀両断” 【第59回】 「節税保険の改革のあり方」   税理士 山本 守之   1 OECDによる提言 経済協力開発機構(OECD)は4月15日に、日本の経済政策に対する提言を発表しました。 これによると、日本が十分な財政健全化を進めるためには、消費税率を20%から26%へ引き上げることが必要であるとしています。 日本の債務残高の国内総生産(GDP)に対する比率は226%で、36のOECD加盟国の中でも過去最高となっており、この比率を150%に低下させるためには、プライマリーバランスを5%から8%の黒字で維持する必要があるという試算が出ています。プライマリーバランスの黒字化とは、社会保障などの政策経費を新たな借金なしで賄うことですので、そのためには消費税率を20%から26%へ引き上げることが必要であるというのです。 ただ、ここで注意したいのは、財政健全化のために所得税をどのようにしたらよいのかが触れられていないことです。   2 経営者保険に対する国税庁の対応 経営者保険(中小企業)は、経営者が死亡などの万一の事態に備える保険ですが、支払った保険料を会社の損金として計上できるため、節税を目的とした使い方が多くなっていました。支払った保険料の大部分を解約時に受け取れる商品などは、まさにこの保険の代名詞ではないでしょうか。 保険はもともと正しい保険数理によって保険料などを設計するものですが、保険会社としても顧客の“節税中心のニーズ”に合わせるため、本来の提案からずれてしまっていたという反省もあるようです。 いわゆる「節税保険」については、これまでも掛け捨ての会社契約における定期保険の支払保険料の損金算入と、保険期間の前半における高い解約返戻率をめぐって、平成20年に長期平準定期保険等の保険料の損金算入割合を見直すなどの対症療法を繰り返してきましたが、この度、国税庁は抜本的な見直しをするとしています。 国税庁は2月14日に生保各社に通達を見直すことを告知し、4月11日に改正通達案を公表しました。 改正通達案では、保険商品の類型ごとの個別通達を廃止し、法人税基本通達の定期保険の取扱いに第三分野の保険を取り込み、保険料に相当多額の前払部分の保険料が含まれる場合の取扱いを同通達9-3-5の2として新設するとしています。既契約分への遡及適用はされません。 この改正案は4月11日から5月10日到着分までパブリックコメントを募集していましたが、国税庁は節税を中心とする保険を許してきたことを反省すべきです。 後述のように、国税庁は経営者保険の税制を見直し、解約時の返戻率が50%を超える場合に損金算入を制限することとし、生保各社は今後、返戻率の大きな保険の販売を中止し、返戻率が50%以下の新ルールに沿った販売を再開します。   3 通達整備の方向 改正通達は次のような方向で整理されています。 ☆新設又は改正される基本通達 ★廃止される個別通達 今回の通達改正の方向性の大きな特徴の1つが、個別通達を廃止して法人税基本通達に取り込むことです。 国税庁はその必要性について、類似する商品であっても、個別通達に該当するか否かで取扱いに差異が生じることや、今回、定期保険の保険料に関する法人税基本通達に吸収される第三分野保険の取扱いに差異が生じることがないように、取扱いを統一することを明らかにしています。 個別通達の廃止は、通達の射程範囲から外れる商品を開発する節税にひとまずピリオドを打つことになるでしょう。類似する商品に当てはめてきた例外的な取扱いの個別通達が存在しなければ、基本通達に立ち返って原則の取扱いに当てはめるしかないからです。 これまで問題とされてきたのは、保険会社が、保険期間が長期にわたる定期保険や保険金額が逓増する定期保険は、保険期間の前半に支払う保険料に後半の前払保険料が相当額含まれ、中途解約した場合にはその前払部分の保険料の多くが返戻される商品が多くあったことです。節税効果も加味した実質返戻率が100%を超えるものもあり、これについても法人税基本通達9-3-5の定期保険の定期保険料の原則の取扱いを適用することは課税所得の適正な期間計算を損なうとして、支払保険料の損金算入時期や資産計上割合を個別に定めたのが平成20年の長期平準定期保険料の取扱いです。 第三分野のがん保険についても、全額損金をセールストークに販売される商品が相次ぐ中、平成13年の個別通達に続き、平成24年には「がん保険」(終身保障タイプ)の保険料の取扱いに関する個別通達を改め、損金算入時期や資産計上割合の適正化を行ってきました。   4 最高解約返戻率ごとに定めた資産計上期間と割合 改正通達では、最高解約返戻率が50%を超えるものについて、下表のように3つの区分に分け、それぞれ資産計上期間と資産計上額(割合)を定めています。 【改正通達による資産計上期間・割合】 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 (※) 当該期間経過後の各期間において、その期間における解約返戻金相当額からその直前の期間における解約返戻金相当額を控除した金額を年換算保険料相当額で除した割合が100分の70を超える期間がある場合には、その超えることとなる最も遅い期間   5 節税保険の対応への疑問 国税庁は今回の改正においても節税保険の対応を通達に委ねていますが、租税法律主義の下で、果たしてこのような見直しが正しいのか、問い直さなければなりません。税理士は通達によるお上の見解を定めたものをうのみにするのではなく、法人税のような租税法律主義による法解釈のあり方を考えるべきではないでしょうか。 (了)

#No. 320(掲載号)
#山本 守之
2019/05/30

谷口教授と学ぶ「税法の基礎理論」 【第12回】「租税法律主義と実質主義との相克」-税法の目的論的解釈の過形成③-

谷口教授と学ぶ 税法の基礎理論 【第12回】 「租税法律主義と実質主義との相克」 -税法の目的論的解釈の過形成③-   大阪大学大学院高等司法研究科教授 谷口 勢津夫   Ⅰ はじめに 第7回では、課税減免制度濫用の法理を租税法規の趣旨・目的の法規範化論として性格づけ検討した(第10回も参照)。租税法規の趣旨・目的の法規範化論は、租税法規についてその趣旨・目的を解釈基準としてではなく「規範」そのものとして用いる考え方であるが、これについては、その趣旨・目的を立法資料等に基づき探知・確認し得ることを「前提」にして、目的論的解釈の過形成を検討した。 ところが、税法の目的論的解釈の過形成に関する研究の過程で、そのような「前提」それ自体を問題とせず、いわば「措定」した趣旨・目的を基準として目的論的解釈を行ったものと解される裁判例を「発見」した。それは、信託の利用による贈与税回避スキームの事案に関する名古屋高判平成25年4月3日訟月60巻3号618頁(以下「本判決」という)である。 拙稿「租税回避と税法の解釈適用方法論-税法の目的論的解釈の『過形成』を中心に-」岡村忠生編著『租税回避研究の展開と課題〔清永敬次先生謝恩論文集〕』(ミネルヴァ書房・2015年)1頁、29頁以下では、上記のような「措定」した趣旨・目的を基準として目的論的解釈を行う考え方を「租税法規の趣旨・目的の措定論」と呼び、その観点から本判決について検討を行ったが、以下の叙述は、その検討をベースにして、これに加筆したものである。 本論に入る前に、本判決の内容について本論と関連する要点を整理しておこう。この事件では、相続税法上のみなし贈与財産のうち平成19年度改正前相続税法(以下単に「相続税法」という場合これを指す)4条1項にいう「受益者」の意義が争点の1つであったが、本判決はこの争点について次のとおり判示した。 その上で、本判決は次のとおり判示して、相続税法4条1項は信託行為時(信託設定時)課税方式を定める規定であり、その趣旨・目的は相続税及び贈与税の回避防止にある、とした(下線筆者)。   Ⅱ 信託行為時課税方式の趣旨・目的 1 信託行為時課税方式の立法経緯 本判決は、前述のとおり、信託行為時課税方式採用の趣旨・目的を相続税及び贈与税の回避防止として解釈し、その解釈を「課税の公平の観点」と「同条項の立法の経緯」から導き出している。「課税の公平の観点」については後で検討することとして、以下では、相続税法4条1項の立法経緯について概観することから検討を始めることにしよう。 まず、本判決では言及されていないが、信託行為時課税方式が初めて採用されたのは大正11年の相続税法改正においてであった。その際には、「相続税法に於いては右の信託行為を贈与と同一に取扱ふことと為し、以て相続税の逋脱を防ぐの必要」が採用理由とされた(大蔵省編纂『明治大正財政史 第7巻』(財政経済学会・1938年)243頁。下線筆者)。なお、ここでは「相続税の逋脱」という言葉が使われているが、当時はまだ「租税回避」の観念は一般に認識されておらなかったものの、その言葉は内容的には「相続税の回避」を意味するものと解される(この点については、清永敬次『租税回避の研究』(ミネルヴァ書房・1995年/復刻版2015年)第3編第1章、特に324-327頁[初出・1962年]のほか、拙稿「同族会社税制の沿革及び現状と課題」税研192号(2017年)34頁も参照)。 次に、昭和13年の相続税法改正では信託行為時課税方式に代えて現実受益時課税方式が採用されたが、その理由は、「納税者の負担を緩和する」(大蔵省昭和財政史編集会議室編『昭和財政史 第5巻-租税』(東洋経済新報社・1957年)431頁)こと、より具体的にいえば、「例へば、信託の実際に於いて見るに、単に受益権を享有するも必ずしも負担力の増加なきものがあるにも拘はらず納税せざるべからざる場合をも生じ、委託者は受益者変更権を留保するを常態とし、更に受益権の価格の評定に困難が伴ひ、延いては課税の公平を害することになる」(窪田好秋「信託と相続税の課税(二)」税16巻8号(1938年)31頁、38頁。下線筆者)ことであった。 最後に、昭和22年の相続税法改正によって、贈与について、「推定相続人等の特定の者に高額な動産などを贈与した場合に、相続が開始したものとみなして相続税を課税するという特殊な形態」(菊地紀之「相続税100年の軌跡」税大ジャーナル1号(2005年)35頁、39頁)の相続税課税が廃止され、相続税の補完税として贈与者課税方式の贈与税が導入されたが、その際に再び信託行為時課税方式が採用された理由については、次のとおり述べられている(松井静郎「改正相続税法の解説」税務協会雑誌4巻5号(1947年)2頁、5頁)。 その後、シャウプ勧告を受けて、昭和25年の相続税法改正によって、相続税が遺産税方式から遺産取得税方式に、贈与税が贈与者課税方式から受贈者課税方式にそれぞれ変更されたが、しかし、他益信託の場合の贈与税課税については信託行為時課税方式が維持された。この点について明確な理由を示す文献・資料は見当たらず、下記の見解(佐藤英明「信託税制の沿革-平成19年改正前史」日税研論集62号(2011年)5頁、26頁)と同様に考えざるを得ない(橋本守次『平成27年1月改訂 ゼミナール相続税法』(大蔵財務協会・2015年)651頁も参照)。 なお、このような過去の立法資料等の状況に鑑みると、公文書管理の重要不可欠性を改めて痛感するとともに、わが国においても現在の国立公文書館と並んであるいはその発展的改組により議会公文書館の設置を可及的速やかに実現することを強く求めるものである(国立公文書館の機能・施設の在り方等に関する調査検討会議(内閣府)の議論・提言等参照)。この要望は、わが国の立法の現状を前提とするものではなく、Ⅳで述べる立法者の説明責任の改善・強化を前提とするものである。 2 本判決による信託行為時課税方式の趣旨・目的の「措定」 以上で概観した立法の経緯に照らして、相続税法4条1項の趣旨・目的を相続税及び贈与税の回避防止に求めることには、相当無理があるように思われる。確かに、大正11年改正による信託行為時課税方式の採用は、相続税回避の防止を目的とするものであったが、しかし、本判決がなぜこの改正に言及していないのかも不可解である上に、その後、昭和13年改正による現実受益時課税方式への変更を経て、昭和22年改正により新たに創設された贈与税における信託行為時課税方式の採用に当たって、大正11年改正における考慮が「復活」し、それが昭和25年改正以降も維持されてきたことを、本判決が論証しているとは到底いえない。 そうすると、本判決は、相続税法4条1項が定める信託行為時課税方式について、実証的な検討を全くといってよいほど行うことなく、いわば「決め打ち」的に、同規定の趣旨・目的を相続税及び贈与税の回避防止として「措定」したものといわざるを得ない。 わが国においては立法資料等の制約(特に「逐条的理由書」の不存在)により、租税法規の趣旨・目的を探知することが著しく困難である場合があることは確かである。しかし、そうだからといって、本判決は「租税法規の趣旨・目的の措定」の誹りを免れることはできないであろう。 本判決は、租税回避の不当性(拙著『税法基本講義〔第6版〕』(弘文堂・2018年)【66】【69】参照)の故に税法の解釈適用者によっては税法秩序に対する「敵対行為」と思われることもある租税回避の試み(同【67】参照)の事案に直面して、租税回避否認(相続税及び贈与税の回避防止)を自明の趣旨・目的として「措定」したのかもしれないが、そうであるとすれば、税法に「税法秩序の自力防衛」原則(“Bewahrung der Steuerrechtsordnung aus eigener Kraft” Grundsatz. これについてはFischer, Der Betrieb 1996, 644とこれを紹介する拙著『租税回避論』(清文社・2014年)175頁参照)が内在することを前提とする判断とみてよかろう。 以上でみた租税法規の趣旨・目的の措定論は、本判決が「課税の公平の観点」から立論したものであろう(Ⅰの最後の引用判示参照)。「課税の公平の観点」は、既に第7回でみたとおり租税法規の趣旨・目的の法規範化論において法創造の論拠とされるものであるが、租税法規の趣旨・目的の措定論においても同様の位置づけが与えられるべきものである。 租税法規の趣旨・目的の法規範化論は、課税減免制度については、「不文の濫用規制要件」ともいうべき法規範の創造を根拠づけるものであるが(第7回ⅢⅣ参照)、租税法規の趣旨・目的の措定論も、「不文の租税回避否認規定」の創造を根拠づけるものである。いずれも、課税に租税法律上の明文の根拠を要求する租税法律主義にとって「自己否定」を意味する考え方であり(前掲拙著【11】【47】参照)、その意味で、税法の目的論的解釈の「過形成」と評価すべきものである。   Ⅲ 租税法規の趣旨・目的探知の困難性の克服 では、本判決は相続税法4条1項の解釈に当たって、租税法律主義の自己否定ないし目的論的解釈の過形成と評価されるような解釈の「途」しかとることができなかったのであろうか。相続税法4条1項の趣旨・目的を探知する困難さを克服する「途」はなかったのであろうか。 この点に関して、原審・名古屋地判平成23年3月24日訟月60巻3号655号(以下「原判決」という)の次の判断(下線筆者)は、正当にも、その後者の「途」を示しているように思われる。 ここで示された解釈は体系的解釈ないし論理解釈とみることができる。一般に、体系的解釈ないし論理解釈とは、「ある法規と他の関係諸法規との関連、当該法令・法領域あるいは法体系全体のなかでその法規が占める地位など、解釈の対象たる法規の体系的連関を考慮しながら行われる解釈」をいう(田中成明『現代法理学』(有斐閣・2011年)467頁)。そして、「法規相互の体系的連関は、究極的には目的論的判断によって確定されなければならないことが多いから、体系的解釈は、大部分、同時に、目的論的解釈であるとも言える。」(田中・前掲書467-468頁)ので、原判決が示した解釈は目的論的解釈であるともいえよう(以下では「体系的・目的論的解釈」という)。 原判決の前記判断については、「相続税法における他のみなし贈与財産の規定との比較から相続税法4条1項の受益者の解釈を導いている」との理解を示した上で、みなし贈与財産規定を「それ自体が何らかの一貫した視座を持って立法化されてきたものではない」「規定群」として捉え、「少なくとも他の規定とは異なる独自の沿革と構造(所得税との関係など)を有する信託受益権については、その規定の内容に応じた解釈がなされる必要があると思われる」とする批判的見解(佐藤英明「信託の『受益者』と所得計算について-名古屋地裁平成23年3月24日判決を素材として-」村井正先生喜寿記念論文集刊行委員会編『租税の複合法的構成』(清文社・2012年)113頁、116頁)がある。 しかし、原判決は、他のみなし贈与財産規定との比較のみによって「受益者」の解釈を行っているわけではなく、国税通則法15条2項5号の規定をも「併せて」読んだ上で、その解釈を行っているのである。後者の規定は贈与税一般について納税義務の成立時期を定めるものであるから、原判決は、みなし贈与財産に係る贈与税についてだけでなく贈与税一般について「受贈者とされる者が贈与による利益を現に有することに担税力を認めて、これに対して課税する制度」という理解を示したものと解すべきである。 このような理解は、昭和25年の相続税法改正によって、相続税が遺産税方式から遺産取得税方式に、贈与税が贈与者課税方式から受贈者課税方式にそれぞれ変更されて成立した、現行の相続税及び贈与税の体系に適合する。更にいえば、昭和25年の相続税法改正に伴って所得税法において「同一の経済的価値に対する相続税又は贈与税と所得税との二重課税を排除したもの」(最判平成22年7月6日民集64巻5号1277頁)という趣旨で、相続及び贈与により取得した財産が非課税所得とされたことをも考慮すると、わが国の税制の体系全体と整合的な理解であるといってもよかろう。 原判決は、相続税法4条1項の趣旨・目的を以上のような体系的方法によって探知し、その趣旨・目的に従ってその規定にいう「受益者」の意義を目的論的に解釈したものと解される(体系的・目的論的解釈)。そうすると、原判決は、その規定の趣旨・目的として相続税及び贈与税の回避防止を措定した上で「受益者」の意義を目的論的に解釈したと解される本判決よりも、税法の解釈方法論の観点からみて、はるかに妥当であると考えられる。 わが国における租税法規の趣旨・目的探知の困難性については既に述べたところであるが、その困難性は、租税法規の趣旨・目的を措定することによってではなく、体系的・目的論的解釈によって克服すべきである。   Ⅳ おわりに 以上で、租税法規の趣旨・目的の措定論が税法の目的論的解釈の過形成の一場合であることを述べた。租税法規の趣旨・目的の措定論は、本判決においては「不文の租税回避否認規定」の創造を根拠づけるものであるが、他の事案においても採用される可能性は十分にある。 租税法規の趣旨・目的の措定論が採用される背景には、租税法規の趣旨・目的を探知することが困難であるというわが国の立法事情があり、その根本的な原因は、立法者が租税立法について「説明責任」を適正に果たしていない点にある(「租税立法者の説明責任の問題」。前掲拙著【33】参照)。この点において、租税立法(いや立法一般)に関する議会制民主主義のあり方が問われているのである。 わが国の判例(大嶋訴訟・最大判昭和60年3月27日民集39巻2号247頁等)では、租税立法につき立法者の裁量的判断が広く尊重され合憲性の推定が働くこととされているが、このことは民主主義的租税観(前掲拙著【14】、第1回Ⅲ2等参照)の下では基本的に妥当であるとしても、それは議会制民主主義の適正な運営を前提にしていえることである(同【17】参照)。議会制民主主義の運営の適正さは、1つには、立法者の説明責任にかかっていると考えるところである。 租税立法者の説明責任の改善の第一歩として、少なくとも、財務省から(現在は事後に)公表される「税制改正の解説」は、事前に改正法案とともに国会に提出され、国会審議に供されるべきである。そうすれば、「税制改正の解説」及びその審議内容は、実質的には逐条的立法理由となり、正式な(権威ある)解釈基準としてわが国における税法の目的論的解釈の質的改善に大いに寄与するであろう。 (了)

#No. 320(掲載号)
#谷口 勢津夫
2019/05/30

「税理士損害賠償請求」頻出事例に見る原因・予防策のポイント【事例74(消費税)】 「賃貸建物新築に係る消費税の還付を受けるため「課税事業者選択届出書」を提出したが、「簡易課税制度選択不適用届出書」の提出を失念したため、簡易課税での申告となり、還付を受けることができなくなってしまった事例」

「税理士損害賠償請求」 頻出事例に見る 原因・予防策のポイント 【事例74(消費税)】   税理士 齋藤 和助       《基礎知識》 ◆高額特定資産を取得した場合の納税義務の免除等の特例(消法12の4) 事業者が事業者免税点制度及び簡易課税制度の適用を受けない課税期間中に高額特定資産の仕入れ等を行った場合には、当該高額特定資産の仕入れ等の日の属する課税期間の翌課税期間から、当該高額特定資産の仕入れ等の日の属する課税期間の初日以後3年を経過する日の属する課税期間までの各課税期間においては、事業者免税点制度及び簡易課税制度の適用ができない。なお、この特例は、平成28年4月1日以後に仕入れ等を行った高額特定資産に対して適用される。 ◆高額特定資産(消令25の5) 高額特定資産とは、一の取引の単位につき、課税仕入れに係る支払対価の額(税抜き)が1,000万円以上の棚卸資産又は調整対象固定資産をいう。 ◆調整対象固定資産(消令5) 調整対象固定資産とは、棚卸資産以外の資産で、建物及びその附属設備、構築物、機械及び装置、船舶、航空機、車両及び運搬具、工具、器具及び備品、鉱業権その他の資産で、一の取引単位の価額(税抜き)が100万円以上のものをいう。       (了)

#No. 320(掲載号)
#齋藤 和助
2019/05/30

〈事例で学ぶ〉法人税申告書の書き方 【第38回】「特別償却の付表(6) 地域経済牽引事業の促進区域内における特定事業用機械等の特別償却の償却限度額の計算に関する付表」

〈事例で学ぶ〉 法人税申告書の書き方 【第38回】 「特別償却の付表(6) 地域経済牽引事業の促進区域内における 特定事業用機械等の特別償却の償却限度額の計算に関する付表」   公認会計士・税理士 菊地 康夫   Ⅰ はじめに 本連載では、法人税申告書のうち、税制改正により変更もしくは新たに追加となった様式、実務書籍への掲載頻度が低い様式等を中心に、簡素な事例をもとに記載例と書き方のポイントを解説していく。 今回は、地域経済を牽引する地域中核企業による、地域経済に波及効果のある高い先進性を有する新たな事業への挑戦を促す観点から、平成29年度の税制改正により導入されたいわゆる「地域未来投資促進税制」のうち「特別償却の付表(6) 地域経済牽引事業の促進区域内における特定事業用機械等の特別償却の償却限度額の計算に関する付表」の記載の仕方を採り上げる(※1)。 (※1) 平成31年度税制改正を受けた付表様式については、本稿執筆時点で未公表のため、旧様式を用いて解説する。 Ⅱ 概要 この付表は、青色申告法人で地域経済牽引事業の促進による地域の成長発展の基盤強化に関する法律(以下「地域経済促進法」という)第24条に規定する承認地域経済牽引事業者に該当するものが、租税特別措置法(以下「措置法」という)第42条の11の2第1項(地域経済牽引事業の促進区域内において特定事業用機械等を取得した場合の特別償却)の規定の適用を受ける場合(この規定の適用を受けることに代えて措置法第52条の3に規定する特別償却準備金として積み立てる場合を含む)に、特定事業用機械等の特別償却限度額の計算に関し参考となるべき事項を記載し、該当の別表16に添付して提出するものである。 これは、青色申告を提出する法人が、指定期間内(平成29年7月31日から平成31年3月31日(※2)までの間)に、地域経済活性化に貢献する一定の事業計画に基づいた承認地域経済牽引事業について、一定の規模の機械装置、器具備品、建物及びその附属設備並びに構築物(以下「特定事業用機械等」という)を取得し、その事業の用に供したときは、その事業の用に供した日を含む事業年度において、その特定事業用機械等の取得価額(100億円を限度とする)の20%ないし40%相当額の特別償却ができる制度である。 (※2) 後述の通り平成31年度税制改正により、適用期限が2年延長された。 本制度の適用対象事業は、地域経済促進法第24条の承認地域経済牽引事業とされているが、具体的には承認地域経済牽引事業計画に従って行われる地域経済牽引事業をいい、地域の成長発展の基盤強化に特に資するものとして主務大臣が定める基準に適合することについて主務大臣の確認を受けたものに限られる。詳細については経済産業省のHPを参照のこと。 ▼ 注意!▼ 本制度と措置法上の圧縮記帳及び他の特別償却等との重複適用は認められない。   この特定事業用機械等の特別償却に代えて、法人税額の特別控除(2ないし4%)の規定の適用を受ける場合は、「別表6(17) 地域経済牽引事業の促進区域内において特定事業用機械等を取得した場合の法人税額の特別控除に関する明細書」(※3)を作成することになるが、この別表は次回解説する。 (※3) 平成31年度税制改正を受け法人税申告書の様式が改正され、この別表6(17)は一部変更の上、番号が6(19)となった。 なお、平成31年度の税制改正において、本制度の適用期限が2年延長されるとともに、主務大臣が確認を行う課税特例要件のうち、直近事業年度の付加価値額の増加率が8%以上の上乗せ要件を満たす場合には、機械装置・器具備品の投資について「50%」の特別償却もしくは「5%」の税額控除が新たに受けられることとなり、対象資産の取得価額の合計額は80億円が限度とされる改正が行われている。 本制度において適用される特別償却と税額控除の割合の一覧は、次の通りである。   Ⅲ 「特別償却の付表(6)」の書き方と留意点 (1) 設例 (2) 今回の別表が適用される事業年度 平成31年3月31日までに終了する事業年度。 なお、平成31年4月1日以後終了する事業年度用の改正後の付表6の様式については、本稿執筆時点で未公表となっている。 (3) 別表の記載例 ※画像をクリックすると、別ページでPDFが開きます。 (4) 付表の各記載欄の説明 〔適用要件等〕欄 (了)

#No. 320(掲載号)
#菊地 康夫
2019/05/30

収益認識会計基準と法人税法22条の2及び関係法令通達の論点研究 【第4回】

収益認識会計基準と 法人税法22条の2及び関係法令通達の論点研究 【第4回】   千葉商科大学商経学部講師 泉 絢也   第Ⅲ部 法人税法上の収益計上時期・計上額② (法人税法22条の2の逐条解説) 第Ⅲ部では、法人税法22条の規定内容を確認した上で、新設された法人税法22条の2の規定を逐条的に解説する。ただし、以下の点に留意していただきたい。 ① 更に踏み込んだ考察を要する場合には、「更なる検討」としてそのことを述べるか又は第Ⅳ部において個別論点等として取り上げる。 ② 読者の便宜を考慮し、関係通達にも触れるが、原則として、主要なものの紹介にとどめる。通達に関して、その妥当性を検証する必要がある場合など更に踏み込んだ考察を要する場合は①と同様の対応をとる。   1 法人税法22条の確認 (1) 法人税法22条1項 法人税法22条の2の規定内容を理解するためには、同条創設前から法人税の所得計算の通則規定としての役割を果たしてきた法人税法22条の規定内容を確認しておくことが肝要である。 法人税法は、原則として、その課税の対象とされるもの(課税物件)を「所得」とし、これに期間的な限定を付した「各事業年度の所得」に対して、各事業年度の所得に対する法人税を課するとしている(法法5)。税額を算出するためには課税物件を金額等で表示する必要があり、その表示したものを課税標準という。 法人税法は、「内国法人に対して課する各事業年度の所得に対する法人税の課税標準」を「各事業年度の所得の金額」と規定している(法法21)。これらの規定を前提として、法人税法22条に「各事業年度の所得の金額」の計算に関する定めが設けられている(同条の見出しは「各事業年度の所得の金額の計算」とされていたが、平成30年度税制改正により削除された)。 法人税法「第二編 内国法人の法人税」の「第一章 各事業年度の所得に対する法人税」の「第一節」は「課税標準及びその計算」について定めており、その「第二款」に「各事業年度の所得の金額の計算の通則」が定められている。法人税法22条は、この「第二款」に唯一置かれた規定であり、規定の配置からもその課税所得計算における重要性を理解できる。 以下、法人税法22条の規定内容を確認する。 内国法人に対して課する各事業年度の所得に対する法人税の課税標準は、各事業年度の所得の金額である(法法21)。内国法人の各事業年度の所得の金額は、次の算式により算出される(法法22①)。 【所得の金額の算式】 「法人の所得」というのは基本的には「法人の利益」と同義であって、法人の事業活動の成果を意味する。法人税法22条1項は、わが国の企業会計において、法人の利益が、損益法すなわち一定期間における収益からそれを得るのに必要な費用を控除する方法で計算されることを前提として、法人の各事業年度の所得の金額を上記のような算式で導き出すこととしている。「収益・費用」という言葉の代わりに「益金」、「損金」という言葉を用いているのは、企業会計の場合と異なる取扱いが多いためである(金子宏『租税法〔第23版〕』337頁(弘文堂2019)参照)。 かような理解は、法人税法が課税の対象として想定する所得は、純資産価値の単純な増減ではなく、企業が営む経済活動の成果としての所得が選択されているという指摘にもつながる(中里実ほか編『租税法概説〔第3版〕』156頁〔吉村政穂〕(有斐閣2018)参照)。 (2) 法人税法22条2項 《概要》 法人税法22条は、法人税の課税標準たる所得の金額の計算に関する基本的な規定と位置付けることが妥当であるが、法人税法は、所得の概念を規定することなく、益金の額と損金の額との差額をもってその額を算出することとしている。また、同条は、益金及び損金について、それぞれの内容を概念的に画定するというよりも、「益金の額に算入すべき金額」及び「損金の額に算入すべき金額」として、やや計算規範的な定めを有しているにすぎない。 具体的には、法人税法22条2項は、内国法人の各事業年度の所得の金額のプラス要素である「当該事業年度の益金の額に算入すべき金額」について、次のとおり規定する。 ごく単純な算式として表現するならば、次のようになる。 【益金の額の算式】 (※) ただし、「収益の額」を経由して「益金の額」に算入する別段の定めのパターンもありうる。いずれにしても上記算式は簡便的に表現したものにすぎない。 《いかなる「収益の額」か?》 法人税法22条2項にいう「収益」とは、むしろ収入というべきグロスの概念であるが、収入では評価益や債務免除益が入らないため、「収益」という語を用いたと説明されている(吉牟田勲「所得計算関係の改正」税務弘報13巻6号140頁)。 後に改めて解説するが、法人税法22条2項は、単に「収益の額」としているわけではないことに注意を要する。当該事業年度の益金の額に算入すべき金額は、「資産の販売、有償又は無償による資産の譲渡又は役務の提供、無償による資産の譲受けその他の取引で資本等取引以外のものに係る当該事業年度の」収益の額とすると定めているのである。 収益の額を修飾している部分を意識して読むと、収益の発生原因と時間的帰属の概念が埋め込まれていることに気がつく。すなわち、当該事業年度の益金の額に算入すべき金額は、「取引」に係る収益の額であり、かつ、「当該事業年度」の収益の額である。単に「収益」なる概念を規定しているのではなく、収益の発生原因と時間的帰属というフィルターを設けることで、当該事業年度の益金の額に算入すべき収益の額に絞りをかけていると見ることもできる。 《別段の定めとは?》 従来の議論を眺める限り、法人税法22条2項にいう「別段の定め」の範囲について、基本的に法人税法23条以下がこれに該当することに異論はないが、法人税法の「特例」として定められている租税特別措置法(同法1条参照)などを含むかどうかについては見解が分かれている。 立案担当者は、「別段の定めとは、法人税法、同施行令、租税特別措置法等の法令その他による定めをいう」(吉牟田勲「所得計算関係の改正」税務弘報13巻6号140頁)、「法人税法の他の規定は勿論、租税特別措置法その他の法律および政令を含むもの」と説明している(国税庁『昭和40年版 改正税法のすべて』102頁)。 〈更なる検討〉 ~「益金」又は「損金」と純資産増加説~ 「益金」又は「損金」という用語は、法人税法が往年より使用していた、法人税法固有の色彩が強い概念である。かかる概念の使用は、法人税法上の所得ないし所得の金額は企業会計又は会社法会計でいうところの利益と一線を画していることの表れであると解しうる。 法人税法22条の基本的枠組みは1965年(昭和40年)の法人税法全文改正によって作られたものである。全文改正前の旧法人税法は、「法人税の課税標準は、各事業年度の所得の金額・・・による。」とし(8条)、「内国法人の各事業年度の所得は、各事業年度の総益金から総損金を控除した金額による。」と規定していた(9条1項)。そして、9条2項以下に現在の別段の定めに相当する個別の「益金」又は「損金」の算入又は不算入の規定が配置されていた。 1899年(明治32年)に法人に対する所得税が創設されて以来、維持されてきた課税所得の計算規定である旧法人税法9条を、1965年(昭和40年)の全文改正において現行法人税法22条2項のように改めた理由として、次の諸点が挙げられる。 改正当時の説明資料では、法人税法22条は、規定の明確化を図るために新たに設けられたものであって、これにより従来行われていた所得計算の原則を変更するつもりはないことが強調されている(国税庁『昭和40年版 改正税法のすべて』102頁など参照)。 このこととの関係では、従来、法人税法の課税所得概念ないし益金・損金概念については、純資産の増加をもって課税所得と捉える純資産増加説が支持されてきたことに目を向けておきたい。 純資産増加説は、利益計算について財産法的なものと密接な関連を持つものと解されていた。1965年(昭和40年)の改正法は、課税所得概念ないし益金・損金概念について、純資産増加説の考え方を背景としつつも、収益からこれに対応する原価・費用・損失を控除して課税所得を算出するという損益法を採用(とりわけ、原価・費用は収益に対応させて計上するという費用収益対応の原則の採用)したものであると解する。 すると、益金の意義に関する次の見解に理解を寄せることができよう。 (中里実ほか編『租税法概説〔第3版〕』156頁〔吉村政穂〕(有斐閣2018)) 後に考察するとおり、法人税法22条の2の創設についても、法人税法22条2項という所得計算の通則的規定の明確化を図るために新たに設けられたものであって、これにより従来行われていた所得計算の原則を変更する趣旨ではないであろう。観念的ないし理念的な意味における益金の額を変容するものではないといってもよい。 他方、法人税法22条の2の創設が、個別具体的な場面で当該事業年度の益金の額に与える影響は、今後の事例の積み重ねによって時間をかけて明らかにされるものである。 (3) 法人税法22条3項 法人税法22条3項は、内国法人の各事業年度の所得の金額のマイナス要素である「当該事業年度の損金の額」について、次のとおり定める。 要するに、損金の額は、別段の定めがあるものを除き、1号の原価の額、2号の販売費、一般管理費その他の費用の額、3号の損失の額で構成されるということである。 法人税法22条3項1号の原価の額は「当該事業年度の収益に係る」原価の額である。当該事業年度に計上する原価の額は、収益と個別的に対応するものであり、言い換えれば、原価の額の計上時期は対応する個別の収益の計上時期に依拠することを明らかにしているのである。 収益認識会計基準や法人税法22条の2は、基本的には、当該事業年度の益金の額や収益の額について定める法人税法22条2項に影響を与えるものである。もっとも法人税法22条3項1号は、当該事業年度の原価の額は当該事業年度の「収益に係る」原価の額としている。原価の計上時期のエスコート役として「収益」を“指名”していることからすれば、収益認識会計基準や法人税法22条の2は、間接的には、この原価の額に対しても影響を与えることになる。 差し当たり、収益をいつの事業年度に計上すべきであるかという点は、当該事業年度に計上される原価の額を左右するため、収益認識会計基準や法人税法22条の2は、法人税法22条3項1号の原価の額、ひいては当該事業年度の損金の額に影響を与えるという程度の理解をしておこう。 また、適用指針の中には引当金を計上する旨定めるものがあるが(指針34、90、91、134、162、163)、現在、法人税法では貸倒引当金以外の引当金は認められていないと解されていることに注意が必要である(法法22③括弧書、52)。   (了)

#No. 320(掲載号)
#泉 絢也
2019/05/30

国外財産・非居住者をめぐる税務Q&A 【第29回】「海外への外国為替による送金は国外財産か」

国外財産・非居住者をめぐる税務Q&A 【第29回】 「海外への外国為替による送金は国外財産か」   税理士 菅野 真美   - 質 問 - 私(一時居住贈与者)は、海外に住んでいる外国籍の孫に、本人には内緒で、日本にある預金口座から外貨に換えて送金しようと考えています。この場合、国外財産の贈与ですから、日本の贈与税はかからないと考えてよいでしょうか。   ◆ ◆ 解 説 ◆ ◆ ▷贈与者が一時居住贈与者に該当する場合 贈与税の納税義務者の範囲は、近年頻繁に改正され、現在では贈与者が一時居住贈与者(※)に該当する場合は、贈与時に贈与者が日本に居住していた場合でも、受贈者が外国籍で、贈与時に日本に住所を有していないときは、贈与税の課税対象は国内財産に限定される(論末の【参考】参照)。 (※) 「一時居住贈与者」とは、贈与の時において在留資格を有し、その贈与前15年以内に日本国内に住所を有していた期間の合計が10年以下である贈与者をいう。 本稿は、外国為替により国外送金をしたものが国内財産か否かについて、平成14年4月18日判決(東京地方裁判所平成13年(行ウ)第231号「相続税の更正の請求に対する通知処分取消請求事件」、TAINSコード:Z252-9110)、平成14年9月18日判決(東京高等裁判所平成14年(行コ)第142号「相続税の更正の請求に対する通知処分取消請求控訴事件」、TAINSコード:Z252-9193)を基に検討する。   ▷事案の概要 乙は下記の通り、米国籍で米国に住む丙(乙の子)の米国の銀行口座へ、両日とも外国為替により送金した。なお、贈与契約の書面は残されていなかった。 〈その後〉 本事案の争点は、上記2件の海外送金が、相続税の課税価格に加算されるか否かである。   ▷課税庁の主張は 海外送金は、相続税の課税価格に加算される。なぜなら、これは現金の贈与の契約があり、その契約に基づいて外国為替による送金を行ったと考えるからである。贈与契約の根拠は、平成9年2月5日付の乙の変更遺言に、丙に対して相当額の生前贈与をした旨の記載があったことによる。 相続税法10条4項「財産の所在の判定は、当該財産を相続、遺贈又は贈与により取得した時の現況による。」において贈与により取得した時とあるのは、贈与契約がある場合は契約成立時点であり、変更遺言から2月5日以前に贈与契約があったと考えられ、贈与時点では国内にある現金であるから、国内財産である。したがって相続税の課税価格に加算される。   ▷納税者の主張は 海外送金は、相続税の課税価格に加算されない。なぜなら贈与契約は締結されておらず、一方的に乙が丙に送りつけた現物贈与である。 また、贈与されたのは現金ではなく預金払戻請求権であって、取得した時点は贈与の履行が完了した時点であり、それは「支払銀行から受取人に支払われたとき又は支払銀行が受取人の預金口座に入金したとき」である。 なぜなら贈与者の手続完了後、銀行は直ちに支払手続をするのではなく、支払いの停止がないか、受取人が正当な受取人か等確認した後に手続をしており、入金時点では国外財産である。したがって相続税の課税価格に加算されない。   ▷地裁の判決は 海外送金は、相続税の課税価格に加算されない。課税価格に加算されるためには、日本にある現金の贈与である必要があり、そのためには海外送金以前に贈与契約が成立していなければならない。 しかし、その点について課税庁は立証できていないため、海外送金は日本にある財産を取得したこととは認められない。したがって、相続税の課税価格に加算されない。 この判決に不服な課税庁は控訴した。   ▷高裁の判決は 海外送金は、相続税の課税価格に加算される。贈与契約の書面がなくとも口頭で贈与をし、謝意を述べるようなやりとりが電話を通じてあったと考えるのが自然である。ただ、口頭の贈与の場合は取り消すことができ権利が不確定であるから、履行が終わった時に受贈者の権利が確定し課税すべきであるとも考えられる。 権利が確定するのは実際に受贈者の口座に入金された時点ではなく、贈与者が送金手続を完了した時点である。なぜなら手続完了時点で金銭は贈与者の支配下から離れ、受贈者がこれを待つ状態だからである。送金手続完了時点では、金銭は国内財産である。したがって相続税の課税価格に加算される。 この判決に不服な納税者は上告したが、平成15年2月27日に上告不受理が決定され、納税者敗訴が確定した。   ▷この判決からの学びは この事案の当時は、贈与時に受贈者が国内に住所を有しない場合には、たとえ受贈者が日本国籍を有する人であったとしても、贈与税の課税対象は国内財産に限定されていた。また、贈与者の贈与時の住所についての制限はなかった。 海外への外国為替による送金について、「贈与により取得した時」を素直に考えると、受贈者が自由に管理処分できる時点、すなわち入金時点のように考えられるが、送金を利用した過度な節税行為の防止という観点から考えると、送金手続完了時にも合理性もある。この判決により、海外送金が国内財産となることが明らかにあったところもあるから、実務家は判断を誤らないようにしたい。 【参考】平成30年度税制改正後の相続税及び贈与税の納税義務 (※) 財務省「平成30年度税制改正の解説」P581より   (了)

#No. 320(掲載号)
#菅野 真美
2019/05/30

措置法40条(公益法人等へ財産を寄附した場合の譲渡所得の非課税措置)を理解するポイント 【第10回】「「公益目的事業の用に直接供される」とは②」-公益法人等が寄贈建物を職員の社宅として使用する場合-

措置法40条(公益法人等へ財産を寄附した場合の 譲渡所得の非課税措置)を理解するポイント 【第10回】 「「公益目的事業の用に直接供される」とは②」 -公益法人等が寄贈建物を職員の社宅として使用する場合-   公認会計士・税理士・社会保険労務士 中村 友理香   - 質 問 - 現物寄附を行った際、取得価額と時価との差額についてのみなし譲渡課税が非課税となるための条件として、現物寄附を受領する公益法人等への寄附が「寄附があった日から2年を経過する日までの期間内に、当該寄附を受けた法人の公益目的事業の用に直接供される」ことが課されています。 寄贈建物を職員の社宅として使用する場合には、寄附者は租税特別措置法40条の一般特例の適用を受けることができますか。   - 回 答 - 租税特別措置法施行令第25条の17第5項第2号に規定する「当該贈与又は遺贈があった日から2年を経過する日までの期間内に、当該公益法人等の当該贈与又は遺贈に係る公益目的事業の用に直接供され、又は供される見込みである」かどうかの判定は、寄附財産そのものが公益目的事業において直接利用されることを指します。 したがって財産等が、贈与又は遺贈を受けた公益法人等の理事、監事、評議員その他これらの者に準ずるもの(以下「役員等」という)若しくは当該公益法人等の社員又は職員のための宿舎、保養所その他の福利厚生施設として利用される場合には、当該財産等は、公益目的事業の用に直接供されていることにはなりません(措置法40条通達14)ので、租税特別措置法第40条の適用を受けることはできません。 ○●○◆ 解 説 ◆○●○ 財産等が贈与又は遺贈に係る公益目的事業の用に直接供されるかどうかの判定は、原則として、当該財産等そのものが、当該贈与又は遺贈を受けた公益法人等の当該贈与又は遺贈に係る公益目的事業の用に直接供されるかどうかにより行われます。 そのため、財産等が、贈与又は遺贈を受けた公益法人等の理事、監事、評議員といった役員等やその他これらの者に準ずる者、若しくは当該公益法人等の社員又は職員のための宿舎、保養所その他の福利厚生施設として利用される場合には、間接的には公益目的事業の用に供されるとはいえますが、直接供されているわけではないため、当該財産等は租税特別措置法40条の適用対象にはなりません。 なお、当該財産等が、例えば、宗教法人において本堂に付随する庫裏やその敷地として利用されている場合などで、当該法人の事業内容、活動状況、施設の状況等に照らして当該法人の事業遂行上必要不可欠な用途に供されると認められる場合には、公益目的事業の用に直接供されるものとして判断されます(措置法40条通達14)。 以上より、寄贈建物を職員の社宅として使用する場合には、寄附者は租税特別措置法40条の適用を受けることはできません。 また、贈与又は遺贈があった日から2年を経過する日までの期間内に、当該公益法人等の公益目的事業の用に直接供される見込みであるかどうかという制限が課されていますが、この判定については、当該財産等が、当該贈与又は遺贈があった日から2年を経過する日までの期間内に、当該公益法人等の公益目的事業の用に直接供されることについて、例えば、建物の設計図、資金計画などその具体的計画があり、かつ、その計画の実現性があるかどうかにより判定されることになっています(措置法40条通達15)。 したがって、寄附された時点で即公益目的事業の用に供されなければならないわけではありませんが、やむを得ない事情による国税庁長官の認可がない限り、実際に2年以内に直接供されなければ承認を取り消されることになります(措法40②、措令25の17⑩)。   (了)

#No. 320(掲載号)
#中村 友理香
2019/05/30
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