検索結果

詳細検索絞り込み

ジャンル

公開日

  • #
  • #

筆者

並び順

検索範囲

検索結果の表示

検索結果 10667 件 / 5591 ~ 5600 件目を表示

企業の[電子申告]実務Q&A 【第2回】「義務化の対象となる法人の範囲」

企業の[電子申告]実務Q&A 【第2回】 「義務化の対象となる法人の範囲」   SKJ総合税理士事務所 税理士 坂本 真一郎   ●○●○解説○●○● 電子申告の義務化の対象となる法人は、次のとおりです。 上記を表にまとめると、下表のとおりとなります。 【電子申告の義務化の対象法人】 ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 (注) 1 資本金の額等の判定は事業年度開始の日で行う。 2 資本金、出資金、持分等の定めがない法人は、原則として義務化の対象外。 ▷[ポイント1] 資本金の額等が1億円超であるかどうかについては、「事業年度開始の時」に判定します。したがって、事業年度開始後に減資を行い資本金の額等が1億円以下となった場合でも、義務化の対象となります。なお、消費税の申告において、期間特例を受けている法人の各課税期間の消費税申告についても、課税期間開始の時ではなく「事業年度開始の時」に判定します。   ▷[ポイント2] 設立根拠法に、①その資本金又は出資金自体について規定されているもの、②その資本金又は出資金の出資について規定されているもの、③前記のほか、定款に出資持分に関する定めがあることを前提とした制度が規定されているものについては、資本金の額等が1億円を超える場合に義務化対象法人に該当します。   ▷[ポイント3] 「相互会社」、「投資法人」、「特定目的会社」、「国」及び「地方公共団体」は、一律義務化対象法人となります(国及び地方公共団体は、消費税及び地方消費税の申告について対象となります)。   ▷[ポイント4] 内国法人には、公共法人(消費税及び地方消費税のみ)・公益法人等・協同組合等を含みます。 なお、人格のない社団等及び外国法人は、資本金の額等の有無にかかわらず、電子申告の義務化対象法人には含まれません。 (了)

#No. 285(掲載号)
#坂本 真一郎
2018/09/13

特別事業再編(自社株対価M&A)に係る課税繰延措置等特例制度の解説 【第3回】「課税関係の整理」

特別事業再編(自社株対価M&A)に係る 課税繰延措置等特例制度の解説 【第3回】 「課税関係の整理」   太陽グラントソントン税理士法人 マネジャー 税理士 川瀬 裕太   1 法人株主の譲渡損益の繰延べ ① 制度概要 法人が、認定特別事業再編事業者(※1)の行った産業競争力強化法の認定に係る特別事業再編計画(※2)に係る特別事業再編によりその有する他の法人(以下「特別事業再編対象法人」という)の株式等を譲渡し、認定特別事業再編事業者の株式の交付を受けた場合には、特別事業再編対象法人の株式等の譲渡について算入すべき益金の額又は損金の額は、ないこととされている(措法66の2の2①)。 (※1) 認定特別事業再編事業者とは、産業競争力強化法第25条第1項に規定する特別事業再編計画について認定を受けた法人をいう。 (※2) 特別事業再編計画とは、特別事業再編に関する計画をいい(産業競争力強化法25①)、特別事業再編とは、産業競争力強化法第2条第11項に規定する事業再編のうち、2以上の事業者が、それぞれの経営資源を有効に組み合わせて一体的に活用して、それぞれの事業の全部又は一部の生産性を著しく向上させることを目指したものであって、一定の要件に該当するものとされている(産業競争力強化法2⑫)。なお、特別事業再編計画の認定要件については前回参照。 ② 交付を受けた株式の取得価額 特別事業再編により交付を受けたその認定特別事業再編事業者の株式(以下「交付株式」という)の取得価額は、譲渡した株式等(以下「譲渡株式等」という)の譲渡直前の帳簿価額(交付を受けるために要した費用がある場合には、その費用の額を加算した金額)に相当する金額とされている(措令39の10の3①一)。 ③ 売買目的有価証券に該当していた場合 交付株式で、その交付の基因となった特別事業再編に係る譲渡株式等が売買目的有価証券とされていたものは、売買目的有価証券として処理する(措令39の10の3①二)。 ④ 100%グループ法人間の取引の損益 内国法人が完全支配関係のある他の法人に対して譲渡損益調整資産に該当する特別事業再編による譲渡株式等を譲渡した場合には、法人税法第61条の2第1項第1号に掲げる金額とされる譲渡原価の額を、譲渡に係る収益の額として譲渡損益調整資産の譲渡利益額又は譲渡損失額を計算することとされている(措令39の10の3①三)。   2 個人株主の譲渡損益の繰延べ ① 制度概要 個人が、認定特別事業再編事業者の行った産業競争力強化法の認定に係る特別事業再編計画に係る同法の特別事業再編によりその有する他の法人の株式等を譲渡し、交付株式の交付を受けた場合には、その株式等の譲渡はなかったものとみなし、その譲渡に係る事業所得、譲渡所得及び雑所得の課税を繰り延べる(措法37の13の3①)。 ② 交付株式の取得価額 個人が交付株式をその後に譲渡した場合の事業所得の金額、譲渡所得の金額又は雑所得の金額の計算において、収入金額から控除する取得費の計算の基礎となる交付株式の取得価額は、その特別事業再編に係る譲渡した株式等の取得価額(その交付株式の交付を受けるために要した費用がある場合には、その費用の額を加算した金額)となる(措令25の12の3)。   3 認定特別事業再編事業者が取得した特別事業再編対象法人の株式等の取得価額及び認定特別事業再編事業者における増加資本金等の額等 ① 特別事業再編対象法人の株式等の取得価額 特別事業再編計画に係る特別事業再編により取得した譲渡株式等の取得価額は、次の場合の区分に応じそれぞれ次の金額とされている(措令39の10の3②一)。 (※3) 前期期末時とは、特別事業再編対象法人の取得の日を含む事業年度の前事業年度終了の時をいう(措令39の10の3②一)。ただし、同日以前6月以内に中間申告書を提出し、かつ、提出の日から取得の日までの間に確定申告書を提出していなかった場合には、取得の日を含む事業年度開始の日以後6月の期間終了の時とされている(措令39の10の3②一)。 (※4) 簿価純資産価額とは、資産の帳簿価額から負債の帳簿価額を減算した金額をいい、前期期末時から取得の日までの間に資本金等の額又は利益積立金額が増加し、又は減少した場合には、増加した金額を加算し、又は減少した金額を減算した金額とされている(措令39の10の3②一)。 (※5) 発行済株式の総数は、出資の場合には総額とされている。ただし、特別事業再編対象法人が有する自己の株式又は出資を除く(措令39の10の3②一)。 ② 認定特別事業再編事業者における増加資本金等の額等 認定特別事業再編事業者におけるその交付株式の交付により増加する資本金等の額は、その特別事業再編により移転を受けた特別事業再編対象法人の譲渡株式等の取得価額とされている。ただし、取得をするために要した費用の額が含まれている場合には、その費用の額を控除した金額とされている(措令39の10の3②二)。 認定特別事業再編事業者に該当する法人が交付株式の交付の直後に2以上の種類の株式を発行している場合には、交付株式の交付に係る増加した資本金等の額を交付株式の交付の直後の価額の合計額で除し、これにその交付株式のうちその種類の株式の交付の直後の価額の合計額を乗じて計算した金額を、その種類の株式に係る種類資本金額に加算する(措令39の10の3②三)。   【課税関係のまとめ】 *  *  * 連載最終回となる次回は、上記課税関係を踏まえた具体例の紹介と特別事業再編計画の認定手続について解説する。 (了)

#No. 285(掲載号)
#川瀬 裕太
2018/09/13

〈平成30年度改正対応〉賃上げ・投資促進税制(旧・所得拡大促進税制)の適用上の留意点Q&A 【Q10】「比較雇用者給与等支給額に関する調整計算」-(1)「基準日」の意義-

〈平成30年度改正対応〉 賃上げ・投資促進税制(旧・所得拡大促進税制)の 適用上の留意点Q&A 【Q10】 「比較雇用者給与等支給額に関する調整計算」 -(1)「基準日」の意義-   公認会計士・税理士 鯨岡 健太郎   [Q10] 平成30年度の税制改正によって、組織再編を行った場合の比較雇用者給与等支給額に関する調整計算はどのように変更されたのでしょうか。   [A10] ◆新たに「基準日」という概念が設けられ、基準日から適用年度開始の日の前日までの期間が「調整対象年度」と定義されました。 ◆具体的な調整計算については大きな変更はありませんが、計算期間が「前年度」から「各調整対象年度」に変更されています。 【解説】 (1) 「基準日」の意義 比較雇用者給与等支給額に関する調整計算の基礎となる計算期間に関連する概念として「基準日」という用語が新たに導入されている。そのうえで、「基準日」から「適用年度開始の日の前日」までを「調整対象年度」として、これに含まれる各事業年度の給与等支給額を基礎として比較雇用者給与等支給額を計算することとされた。 基準日は原則として前事業年度等(適用年度開始の日の前日を含む事業年度等)の開始の日とされるが(措令27の12の5⑫二)、前事業年度等の月数と適用年度の月数が異なる場合には、その大小関係に応じて基準日の取扱いが以下のように異なる。 ① 前事業年度等の月数が適用年度の月数に満たない場合で、かつ、月数が6月に満たない場合 ➡基準日は以下(ⅰ)(ⅱ)のいずれか早い日とされる(措令27の12の5⑫一)。 (※1) 当該適用年度が1年に満たない場合には、当該適用年度の期間。 (※2) 当該現物分配が残余財産の全部の分配である場合には当該設立の日から当該前事業年度等の終了の日の前日までの期間内においてその残余財産が確定したものとし、その分割、現物出資又は現物分配に係る移転給与等支給額が零である場合における当該分割、現物出資又は現物分配を除く。 (※3) 当該設立の日から当該合併、分割、現物出資又は現物分配の日の前日(当該現物分配が残余財産の全部の分配である場合には、その残余財産の確定の日)までの期間に係る給与等支給額が零である場合に限る。 (※4) 当該被合併法人又は分割法人等の設立の日以後に終了した事業年度に限る。 ② ①以外の場合 ➡前事業年度等の開始の日(措令27の12の5⑫二) ・・・下図の【C】 特に①については難解なため、以下に図示しておく。 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 前事業年度の月数が6月に満たない場合について複雑な取扱いとなっているのは、前事業年度が短すぎるため賞与等を含めた1年間の給与等支給額の月平均額が適用年度における状況と整合せず、それだけでは適切な比較を行うことができないおそれがあるためである。 そこでこのような場合には、前事業年度の開始日とは別の「基準日」を定めたうえで「基準日から適用事業年度開始日の前日」までの期間(調整対象年度)を設定することによって、少なくとも1年以上の集計期間を確保して適切な金額比較を可能せしめるという趣旨による。 次に、上図の【A】【B】【C】について、それぞれ詳しく確認していく。 【A】のケース ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 【A】のケースは、設立後間もなく合併等が行われた場合であって、設立事業年度が6月に満たない場合を想定している。 このときの基準日は、適用年度開始の日前1年以内の日を含む被合併法人等の各事業年度のうち、最も古い事業年度の開始の日となる。 ただし、条文上はカッコ書きが複数含められており(上記(※1)~(※4)参照)、実際の適用に当たってはこれらカッコ書きに記載されている制限等に十分留意する必要がある。 【B】のケース ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 【B】のケースは、みなし事業年度が設定されて前事業年度が6月に満たない場合を想定している。 このときの基準日は、適用年度開始の日前1年以内に終了した各事業年度のうち、最も古い事業年度の開始の日となる。 【C】のケース ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 【C】のケースは、【A】【B】以外の一般的な場合を想定しており、このときの基準日は前事業年度の開始の日となる。   (了)

#No. 285(掲載号)
#鯨岡 健太郎
2018/09/13

〔Q&A・取扱通達からみた〕適格請求書等保存方式(インボイス方式)の実務 【第4回】「適格請求書等保存方式の下での税額計算」

〔Q&A・取扱通達からみた〕 適格請求書等保存方式(インボイス方式)の実務 【第4回】 (最終回) 「適格請求書等保存方式の下での税額計算」   アースタックス税理士法人 税理士 島添 浩   適格請求書等保存方式における売上税額については、原則として、課税期間中の課税資産の譲渡等の税込金額の合計額に110分の100(軽減税率の対象となる場合は108分の100)を掛けて計算した課税標準額に7.8%(軽減税率の対象となる場合は6.24%)を掛けて算出する(総額割戻し方式)。 また、これ以外の方法として、交付した適格請求書及び適格簡易請求書の写し(電磁的記録により提供したものも含む)を保存している場合に、そこに記載された税率ごとの消費税額等の合計額に100分の78を乗じて計算した金額とすることもできる(適格請求書等積上げ方式)。 ただし、適格簡易請求書の記載事項は、「適用税率又は税率ごとに区分した消費税額等」であるため、「適用税率」のみを記載して交付する場合、税率ごとの消費税額等の記載がないため、積上げ計算を行うことはできないこととなる。 なお、売上税額の計算は、取引先ごとに割戻し計算と積上げ計算を分けて適用するなど、併用することも認められるが、併用した場合であっても売上税額の計算につき積上げ計算(適格請求書等積上げ方式)を適用した場合に該当するため、仕入税額の計算方法に割戻し計算(下記②(ロ)参照)を適用することはできない。   適格請求書等保存方式における仕入税額の計算方法は、以下のとおりである。 (イ) 積上げ計算(原則) 原則として、交付された適格請求書などの請求書等に記載された消費税額等のうち課税仕入れに係る部分の金額の合計額に100分の78を掛けて算出する(請求書等積上げ計算)。 また、これ以外の方法として、課税仕入れの都度(注)、課税仕入れに係る支払対価の額に110分の10(軽減税率の対象となる場合は108分の8)を乗じて算出した金額(1円未満の端数が生じたときは、端数を切捨て又は四捨五入する)を仮払消費税額等などとし、帳簿に記載(計上)している場合は、その金額の合計額に100分の78を掛けて算出する方法も認められる(帳簿積上げ計算)。 なお、仕入税額の計算に当たり、請求書等積上げ計算と帳簿積上げ計算を併用することも認められるが、これらの方法と割戻し計算(下記(ロ)参照)を併用することは認められない。 (注) 例えば、課税仕入れに係る適格請求書の交付を受けた際に、当該適格請求書を単位として帳簿に仮払消費税額等として計上している場合のほか、課税期間の範囲内で一定の期間内に行った課税仕入れにつきまとめて交付を受けた適格請求書を単位として帳簿に仮払消費税額等として計上している場合が含まれる。 (ロ) 割戻し計算(特例) 課税期間中の課税仕入れに係る支払対価の額を税率ごとに合計した金額に110分の7.8(軽減税率の対象となる部分については108分の6.24)を掛けて算出することができる。 ただし、仕入税額を割戻し計算することができるのは、売上税額を割戻し計算する場合に限る。 【参考】 売上税額と仕入税額の計算方法   適格請求書又は適格簡易請求書に記載された消費税額等を基礎として、仕入税額を積み上げて計算する場合には、次の区分に応じた金額を基として仕入税額を計算することとなる。   (連載了)

#No. 285(掲載号)
#島添 浩
2018/09/13

金融・投資商品の税務Q&A 【Q38】「発行会社による自己株式(非上場株式)取得の課税関係」

金融・投資商品の税務Q&A 【Q38】 「発行会社による自己株式(非上場株式)取得の課税関係」   PwC税理士法人 金融部 パートナー 税理士 箱田 晶子   ●○ 検 討 ○● 1 自己株式の取得に係る税務上の取扱い 株主たる個人がその有する非上場株式を他者に譲渡する場合、当該譲渡に伴う損益は一般に「一般株式等に係る譲渡所得等」として区分され課税されます。しかしながら、譲渡の相手先が株式の発行会社である場合、税務上、自己株式の取得として取り扱われ、一定の事由(※1)に該当する場合を除き、譲渡損益のうち一部がみなし配当、一部が一般株式等に係る譲渡所得等として取り扱われます。 (※1) 一定の事由に該当する場合、みなし配当とされる部分はなく、損益の全額が株式等に係る譲渡所得等として取り扱われます。「一定の事由」には、例えば以下が含まれます。 ① 金融商品取引市場による購入 ② 店頭売買登録銘柄の店頭売買による購入 ③ 金融商品取引業者が株式の売買の媒介、取次又は代理をする場合 ④ 事業の全部の譲受け ⑤ 合併又は分割若しくは現物出資による被合併法人又は分割法人若しくは現物出資法人からの移転(適格と非適格) ⑥ 合併に反対する当該合併に係る被合併法人の株主等の買取請求に基づく買取り ⑦ 単元未満株式の買取りの請求又は端株の買取請求による買取り ⑧ 全部取得条項付き種類株式の取得にあたっての端数株式の買取り   2 みなし配当の計算 自己株式の取得により株主が交付を受ける金銭及び金銭以外の資産の価額の合計額のうち、発行法人の当該譲渡直前の対応資本金等の額を超える部分の金額はみなし配当とされます。 すなわち、みなし配当の金額は、簡易な式にすると以下のようになります(発行法人が1種類の株式のみを発行している場合)。 (※3) 当該直前の資本金等の金額が0以下である場合には、0とする。   3 譲渡損益の計算 自己株式の取得により交付を受ける金額(譲渡対価)のうち、みなし配当とされる金額以外は、株主たる個人において株式の譲渡に係る譲渡収入として取り扱われます。 すなわち、株式等に係る譲渡所得等として取り扱われる金額は以下の通り計算されます。   4 みなし配当及び譲渡損益の課税関係 ① みなし配当 みなし配当については配当所得として取り扱われ、発行法人により20.42%(所得税及び復興特別所得税)の税率にて源泉徴収がなされます。 個人株主は、受け取った配当について、原則として配当所得として申告を行う必要があります。配当所得は他の所得と合算され総合課税の対象となります。配当について申告を行う場合は、配当控除の適用があります。 ただし、みなし配当の金額が10万円以下である場合(少額配当)は、所得税については申告をせず、源泉税のみで課税関係を完結することができます(住民税については総合課税)。 上場株式等の配当と異なり、申告分離課税の適用はなく、また、金額にかかわらず申告不要とすることはできません。 ② 譲渡損益 非上場株式等の売却による売却益は、「一般株式等の譲渡に係る事業所得、雑所得、譲渡所得」として区分され、申告分離課税が適用されます(原則として確定申告が必要となります)。税率は20.315%(所得税及び復興特別所得税15.315%、住民税5%)が適用されます。 非上場株式等の売却による売却損は、他の非上場株式等(非上場の株式、私募の投資信託や一般公社債)の売却から生じた売却益と損益通算することができます。しかしながら、上場株式等の売却益や、配当所得(上場・非上場)との損益通算を行うことはできません。また、譲渡損の繰越しもできません。   5 本件へのあてはめ 本件の場合、発行会社に相対で譲渡したということですので、1に記載の「一定の事由」に該当しない限り、譲渡から生じた利益はみなし配当(配当所得)と譲渡損益(一般株式等に係る譲渡所得等)に分類されます。 自己株式の取得の場合、発行法人の税務上の資本金等の金額によっては、(プラスの)みなし配当、マイナスの譲渡損益(譲渡損失)が発生することがあり得ます。その場合、本件は非上場株式ということですので、みなし配当(配当所得)と譲渡損失(一般株式等に係る譲渡損失)を損益通算することはできません。したがって、実額の利益より大きいみなし配当に対し課税が生じる可能性があります(下記【事例】参照)。 【事例】 〈前提〉 ・A株式の取得価額:100 ・A株式の自己株式の譲渡対価:200 ・A発行法人の譲渡直前の資本金等の額:80 〈計算例〉 ・みなし配当・・・200-80=120 ・株式の譲渡所得等・・・200-120-100=△20   (了)

#No. 285(掲載号)
#箱田 晶子
2018/09/13

組織再編税制の歴史的変遷と制度趣旨 【第54回】

組織再編税制の歴史的変遷と制度趣旨 【第54回】   公認会計士 佐藤 信祐   (《第8章》 平成18年から平成21年までの議論) (4) のれん 平成18年度税制改正により、非適格合併等における受入処理が明確化された。具体的には、以下のものが規定されている。 これらの基本的な考え方は、「企業結合に関する会計基準」に規定されているパーチェス法における以下の考え方に類似している。 これらに対応し、佐藤信祐『組織再編におけるのれんの税務』(中央経済社、平成20年)において、資産調整勘定、負債調整勘定の解説を行った。当時は、企業結合に関する会計基準が導入されたばかりの頃であるため、実務上も混乱が見受けられたが、現在では、国税庁からの公式見解が公表されたこともあり、解釈が明確化されたと思われる。 資産調整勘定、負債調整勘定の条文は精緻に作られていることから、解釈上の相違があるものは少ないため、本稿では、条文からは断言できないものの、組織再編税制の実務家の中で暗黙知として共有されている解釈についてのみ解説を行う。 ① 賞与引当金 前掲の拙著59-62頁では、非適格組織再編成により賞与引当金を引き継いだ場合において、当該賞与引当金の金額が資産の取得価額の20%を超える場合には、短期重要負債調整勘定として認識すべきこととした。 しかし、その後、国税庁から質疑応答事例「事業の譲受けに伴い賞与支払債務の履行に係る負担を引き受けた場合の課税関係について」が公表され、短期重要債務見込額が「移転を受けた事業について生ずるおそれのある『損失の額』として見込まれる金額」とされているのに対し、賞与は販売費及び一般管理費に属する「費用」であり「損失」には当たらないことから、賞与引当金の額は、「移転を受けた事業について生ずるおそれのある『損失の額』として見込まれる金額」に該当しないことを理由として、短期重要負債調整勘定に該当しないことが明らかにされた。 そのため、現行法上は、賞与引当金に相当する金額は、差額負債調整勘定として処理することになる。 このように、短期重要負債調整勘定を認識すべきかどうかの判定では、「損失」に該当するのか、「費用」に該当するのかという点が重要になる。 ② 早期退職慰労金 前掲の拙著24頁では、 と解説した。 賞与引当金と異なり、割増退職金の支払いは、販売費及び一般管理費に属する「費用」ではなく、特別損失に属する「損失」であることから、上記質疑応答事例が公表された後であっても、「短期重要負債調整勘定」として処理することはできると考えられる。 ③ 役員退職慰労金 前掲の拙著25頁では、役員退職慰労引当金は、「退職給付に係る会計基準」で対象にされていないことから、退職給与負債調整勘定として認識することができないものとした。その後に公表された「退職給付に関する会計基準」3項でも、「取締役、会計参与、監査役及び執行役(以下合わせて「役員」という。)の退職慰労金については、本会計基準の適用範囲には含めない」と規定されていることから、現行法上も、同様に解するべきであると考えられる。 これに対し、賞与引当金と同様に、役員退職慰労引当金の額が資産の取得価額の20%を超える場合には、短期重要負債調整勘定として処理すべきなのかが問題となる。この点については、役員退職慰労引当金繰入額は、販売費及び一般管理費として計上されることが多いのに対し、引当金を計上していないときには、特別損失として計上されることが多いことから、「費用」なのか、「損失」なのかが不明確であるように思えるからである。 この点については、一般的に「費用」とは「収益」に貢献するものであり、「損失」とは「収益」に貢献しないものと整理することができるのに対し、役員退職慰労金の支払いは、過去の収益に対する貢献に対して支払われるものであり、引当金を計上していない場合に特別損失として計上されたことを理由として、費用としての性格が否定されるものではないと考えられる。 そう考えると、役員退職慰労金を短期重要負債調整勘定として処理することは適切ではなく、差額負債調整勘定として処理すべきであると考えられる。 ④ 資産調整勘定及び負債調整勘定を認識することができない会社分割 会社分割を行った場合には、(ⅰ)分割事業が分割承継法人に移転しており、かつ(ⅱ)当該事業に係る主要な資産又は負債の概ね全部が分割承継法人に移転をする場合に、資産調整勘定及び負債調整勘定を認識することができる。 実務上、上記(ⅱ)に該当しない場合にどのように取り扱うべきかが問題となるが、『平成18年度版改正税法のすべて』367頁では、 と解説されていた。 そのほか、前掲の拙著135頁では、 と解説した。現行法上も、同様に解するべきであると考えられる。 *   *   * 次回では、債務超過会社の組織再編成について解説を行う予定である。 (了)

#No. 285(掲載号)
#佐藤 信祐
2018/09/13

さっと読める! 実務必須の[重要税務判例] 【第40回】「虚偽の遺産分割協議の無効確認判決の確定を後発的理由とする更正の請求事件」~最判平成15年4月25日(集民209号689頁)~

さっと読める! 実務必須の [重要税務判例] 【第40回】 「虚偽の遺産分割協議の無効確認判決の確定を 後発的理由とする更正の請求事件」 ~最判平成15年4月25日(集民209号689頁)~   弁護士 菊田 雅裕   (了)

#No. 285(掲載号)
#菊田 雅裕
2018/09/13

企業結合会計を学ぶ 【第1回】「企業結合会計の全体像」

企業結合会計を学ぶ 【第1回】 「企業結合会計の全体像」   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 企業の組織再編として、合併、株式交換・株式移転、会社分割、事業譲渡・譲受などが行われている。 これらの組織再編については、次の会計基準等が設定されており、組織再編の方法にあわせて会計処理及び開示(表示・注記)を行うことになる。 本シリ-ズでは、企業結合(適宜、事業分離等を含めて解説する)の会計処理及び開示(表示・注記)に関する基本的な考え方について解説を行う。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 企業結合 1 基本的な考え方 「企業結合」とは、ある企業又はある企業を構成する事業と他の企業又は他の企業を構成する事業とが1つの報告単位に統合されることである(企業結合会計基準5項)。 この定義から分かるように、企業結合会計基準は、経済的に独立した企業同士の取引に限定することなく、法的に独立した企業同士の取引を対象としているため、企業集団内における合併、吸収分割、現物出資等の取引(共通支配下の取引)が含まれることとなる(企業結合会計基準118項)。 企業集団内における組織再編のうち企業結合に該当しない取引、例えば、株式移転による持株会社の設立や新設分割による子会社の設立については、共通支配下の取引に係る会計処理に準じて処理することとなる(企業結合会計基準118項)。 企業結合会計基準等では、組織再編の形式が異なっていても、組織再編後の経済的実態が同じであれば、連結財務諸表上(合併の場合には個別財務諸表上)も同じ結果が得られるように会計処理を定めている(結合分離適用指針200項など)。 2 企業結合の分類と会計処理 企業結合の分類と会計処理を示すと、おおむね次のようになる。 「事業」とは、企業活動を行うために組織化され、有機的一体として機能する経営資源をいう(企業結合会計基準6項、事業分離等会計基準3項)。 3 共通支配下の取引と非支配株主との取引 「共通支配下の取引等」とは、「共通支配下の取引」と「非支配株主との取引」をあわせた呼称である(企業結合会計基準40項)。 次のように整理される。   Ⅲ 事業分離等 「事業分離」とは、ある企業を構成する事業を他の企業(新設される企業を含む)に移転することをいう(事業分離等会計基準4項)。 事業分離等会計基準では次の事項などについて規定している(事業分離等会計基準1項、4~7項、10項、32項)。   Ⅳ 連結会計基準との関係 連結会計基準では、次のように規定し、企業結合会計基準及び事業分離等会計基準との関係を示している(連結会計基準19項、60項、注解15、74項)。 (了)

#No. 285(掲載号)
#阿部 光成
2018/09/13

M&Aに必要なデューデリジェンスの基本と実務-財務・税務編- 【第9回】「固定資産の分析(その2)」-有形固定資産②-

M&Aに必要な デューデリジェンスの基本と実務 -財務・税務編- 【第9回】 「固定資産の分析(その2)」 -有形固定資産②-   公認会計士 石田 晃一   ←(前回) | (次回)→   ▷中小企業の保有する有形固定資産 ◆平成28年における主要業種別有形固定資産の水準(単位:億円) ※画像をクリックすると拡大して表示されます。 (*)印の項目は土地の帳簿価額を除いて計算している。 (出典:中小企業庁「中小企業実態基本調査(平成28年確報)」(調査対象母集団全1,485,107社)から筆者作成) 日本の中小企業が貸借対照表に計上している有形固定資産の金額規模は上表のとおりであり、1社当たりの帳簿価額は91.6百万円で総資産全体の1/3ほどを占めている。減価償却の進行割合は17.8%、売上高に対する減価償却費の割合は2.3%であり、減価償却費の帳簿価額に対する割合は14.5%となっている(上表では簡便的に土地を除く期末帳簿価額と減価償却費の割合を比較している)。 当然のことながら、貸借対照表上の有形固定資産の水準は業種によって異なり、いわゆる「箱物」事業である宿泊/飲食業や不動産・物品賃貸業では総資産の半分以上を占める一方、償却累計率は耐用年数の長い建物躯体等の比重が高いと思われることから8~9%程度と他業態よりも低くなっている。同様に情報通信業の償却進行率が他業種と比較して低くなっているが、これは設備の頻繁な更新投資を行っているためと思われる。 M&Aに際して有形固定資産に関して実施すべき調査のポイントは前回述べたとおりであるが、今回は固定資産の評価に関連するその他のトピックスをいくつか紹介しよう。   ▷M&Aに際して不動産鑑定を行わない場合の評価方法 買収対象となる事業用不動産の評価額については、通常の場合、不動産鑑定士による不動産鑑定を行うことが一般的である。しかしながら、事業用不動産であっても重要性の低いもの、例えば償却が完了している倉庫建物や、地方営業所の土地建物などは、不動産鑑定の費用対効果の観点から、簡略な評価で済ませるケースも多い。 さらに、M&Aでも救済型の事業再生における資金支援のためのデューデリジェンスにおいて、買い手である救済側が被救済企業への出資ではなく、新規設備投資等に必要な資金融資を行うような場合、被救済側企業の保有する不動産の正確な時価の把握までは必要とならない場合もあり、そうした場合には全ての事業用不動産について、財務デューデリジェンスの範疇で簡易な評価を行う場合がある。 こうした場合によく用いられる評価方法として、以下の「公的価格」を用いた簡便的な評価方法が挙げられる。   ▷M&Aに際して筆者らが経験した評価事例 【実務事例9-1】 船舶の評価が必要となる海運会社のM&Aが近年増えているが、「バラ積み船」等の商業船舶については、建造年や建造国、船舶のタイプやサイズ等に応じた中古船の売買市場が確立されており、当該マーケットにおける売買事例に基づく評価も相応の合理性が認められるものであろう。 話は変わって、筆者らは以前、観光用の高速フェリーを運航する会社の調査に携わったことがある。この会社が保有していたフェリーは世界に数隻しかない類い稀な超高速船であって、売買事例などは全く見当たらず、適正償却後簿価を基準として評価することとなった。   【実務事例9-2】 製造業を営む会社でよく見受けられるものに「工場財団抵当」がある。財団抵当権の目録が手書きの相当古いものであることが多く、筆者らが遭遇したケースでも、設備の入れ替えやライン移設に伴う設備移動等が頻繁に起こっていたにも関わらず、目録の更新が一切行われていなかったケースがあった。 目録に記載されている設備の消息を丹念に調べた上で、既に廃棄され存在しない設備のみならず、別の建屋に移設されている設備に関する抵当権の取扱い等に関して、当事者の協議に必要な情報を収集した。   ▷金融機関における担保評価額 経営不振の状態にある対象会社に対する事業再生目的での救済型M&Aを行うような場合、買収対象となる不動産に対しては、ほとんどの場合、金融機関が先順位での抵当権を付しているケースが大半であろう。 こうした場合の留意点として、例えばM&Aによる買収条件として提示される不動産評価額が、取引金融機関による担保評価額に満たない場合、救済型であっても、M&Aそのものが成立しないことも起こり得る。担保評価額未満での担保処分は、金融機関としては当該企業が破産した場合等の清算配当を下回る水準での処分を意味するため、通常の場合、容認し難いためである。 通常は、M&Aによる事業継続前提の不動産評価額は、清算前提の早期処分価値を上回ると考えられる上、金融機関による担保評価に際しては保守的な「掛け目」が乗じられていることが多く、買収側による担保不動産の評価額が金融機関による担保評価額を下回るようなケースはあまり生じないものと思われるが、救済型M&A実行時の評価と金融機関による担保評価とは、評価時点も評価目的も全く異なるものであることから、実際にはこのようなケースは往々にして起こり得る。 救済型M&Aに際しては、こうした点にも十分な注意が必要であり、法務デューデリジェンスチームとの連携した調査も重要となろう。 (了)

#No. 285(掲載号)
#石田 晃一
2018/09/13

〔会計不正調査報告書を読む〕 【第76回】五洋インテックス株式会社「第三者委員会調査報告書(平成30年5月7日付)」

〔会計不正調査報告書を読む〕 【第76回】 五洋インテックス株式会社 「第三者委員会調査報告書(平成30年5月7日付)」   税理士・公認不正検査士(CFE) 米澤 勝   【第三者調査委員会の概要】   【五洋インテックス株式会社の概要】 五洋インテックス株式会社(以下「五洋インテックス」と略称する)は、昭和54(1979)年3月設立。旧商号は五洋産業株式会社(平成5年4月変更)。室内装飾品(主たる商品はカーテン)の販売を主たる事業とする。連結売上高1,748百万円、連結経常損失213百万円、従業員数64名(数字は、いずれも2018年3月期)。本店所在地は愛知県小牧市。JASDAQ上場。   【調査報告書の概要】 1 調査に至る経緯 五洋インテックスは、「外部通報」により、過年度におけるタブレット端末の販売、太陽光パネルなどの販売及びその他の新規事業に関する取引に関して、会計処理の妥当性について懸念がある旨の指摘を受け、本件各取引に係る会計処理の内容と同会計処理に関する事実等の究明を開始するとともに、平成30年3月27日、外部の専門家により構成される第三者委員会を設置した。 「外部通報」について、2018年3月27日付の「第三者委員会設置に関するお知らせ」では、「外部からの指摘により」と表記されており、少し表現が異なっている。また、調査報告書には、「外部通報」についての詳細は記述されていない。 2 不適切な売上処理の概要 五洋インテックスが不適切な会計処理として調査の俎上に載せたのは、次の7つの形態の取引であった。 それぞれの取引に係る売上高と仕入高は以下のとおりである。 (1) 太陽光パネル販売関連の取引(単位:円) (2) エステ商材等の仕入・販売にかかる取引(単位:円) (3) リフォーム関係の取引(単位:円) (4) 焼肉店内装工事及び店内什器・家具の仕入・販売にかかる取引(単位:円) (5) 家電の仕入・販売にかかる取引(単位:円) (6) タブレット端末の仕入・販売にかかる取引(単位:円) 第三者委員会は、上記取引(1)から(5)までは、いずれも五洋インテックスが主体的な立場での取引とは言えず、スルー取引として売上高・売上原価の全額を計上するのではなく、その差額を雑収入として営業外収益に振り替えるのが妥当であるとの見解を示した。 また、(6)のタブレット端末の販売取引については、五洋インテックスは、仕入代金をN社に支払ったのみで、販売代金の回収ができていないことから、N社代表取締役を詐欺罪で刑事告訴しており、すべてが架空であったと判断している。 (7)のソフトウェア開発については、開発委託先Q社からソフトウェアの引渡しを受け、検収を行ったものの、五洋インテックスが企図していた通販、ネット販売については、システムが稼働したにもかかわらず、顧客からのオーダーがまったくなかったため、備忘価額を残して減損処理をした会計処理を妥当なものとして認めた。 3 各取引の特性 第三者委員会は、五洋インテックスが行った新規事業に係る取引について、営業活動と社内管理業務という2つの切り口から、その特性を分析している。第三者委員会が、本件各取引をスルー取引であると判断した根拠が述べられているため、報告書から引用したい。 4 発生原因 第三者委員会が発生原因として挙げた項目は次のとおりである。 権限分離体制と人員不足について、第三者委員会は、五洋インテックスでは「経理・財務の責任者である管理部長に、新規事業部(環境事業部)の事業部長を兼任させた」ことから、「営業、経理、財務に関する権限が1名(引用者注:小林光博取締役。以下「小林取締役」と略称する)に集中し、取引開始から資金決済、会計処理にいたるまでの取引が単独で行われる状況となっていた」ことを問題視するとともに、新規事業について、「組織的な営業体制・管理体制」が不十分であったことを挙げている。 5 再発防止策 第三者委員会からの提言を受けて、6月20日、五洋インテックスが公表した再発防止策は、次のとおりである。 権限分離体制については、平成30年6月28日開催予定の定時株主総会において、管理部管掌に新たに常勤取締役を選任することとしており、また、経理体制の強化として、経理財務の実務責任者の採用を行うとともに、公認会計士を顧問とすることが挙げられている。   【調査報告書の特徴】 訂正前の有価証券報告書によれば、平成27年3月期から平成29年3月期まで3期連続で経常損失と、業績が低迷傾向にあった五洋インテックスが、新規事業として参入した太陽光パネル販売やタブレット端末販売は、第三者委員会の調査によって、スルー取引または架空取引であるとの結論が出された。その結果、五洋インテックスは新規事業から全面撤退、本業であるカーテン事業に専念することを決定する。 1 ヒアリング対象者である「丁氏」について ヒアリング対象者である「丁氏」については、その役職等として「A社代表取締役・B社代表取締役」との記載があり(報告書p.5)、また、太陽光パネルの仕入販売業務を足掛かりとして環境事業の拡大を企図して、五洋インテックスが、丁氏との協力関係をより強固にすべく取締役就任を依頼し、平成27年6月26日、取締役に就任したとの記述があることから(報告書p.7)、社外取締役である名井博明氏(以下「名井取締役」と略称する)のことではないかと考えられる。 五洋インテックスは、上述のとおり、第7回目の太陽光パネル販売取引において、E社に仕入代金2,160万円(消費税額等込)を支払ったものの、販売先であるD社からの入金がなく、結果的に支払った金額を更生債権等に振り替えて全額の貸倒引当金を設定している。 小林取締役は売買代金の回収について、販売先であるD社ではなく、名井取締役と交渉をして、名井取締役は「太陽光発電所の取引によって対象会社(引用者注:五洋インテックス)が得た利益分を対象会社との協業事業で回収出来れば支払う」と回答した(報告書p.13)というのだが、第三者委員会はこの説明に納得しているのだろうか。 また、本件に関する会計処理の修正については、以下の記述がある(報告書p.18)。 すなわち、第1回から第6回の取引で得た利益は、第7回の買掛金決済名目の支払いで、丁氏(名井取締役)側に大部分を返還したということのようであるが、第三者委員会は、名井取締役に対する利益供与や利益相反の問題にはまったく触れていない。差額を雑収入として認識すればいいという会計処理の問題ではない気がするのだが、いかがなものであろうか。 2 証券取引等監視委員会による課徴金納付命令の勧告 6月29日、五洋インテックスは、「証券取引等監視委員会による課徴金納付命令の勧告について」というリリースで、証券取引等監視委員会が、金融商品取引法に基づき600万円の課徴金納付命令勧告を発出したことを公表した。 証券取引等監視委員会のリリースによれば、五洋インテックスは、「太陽光発電事業に係る商材及びタブレット端末の架空取引により売上を過大に計上した」ことにより、東海財務局長に対し、金融商品取引法第172条の4第1項に規定する「重要な事項につき虚偽の記載がある」有価証券報告書を提出したことが、法律違反に当たるとしている。 3 東京証券取引所による「公表措置」の実施及び「改善報告書」の提出請求 次いで7月24日、五洋インテックスは、「東京証券取引所による『公表措置』の実施及び『改善報告書』の提出請求について」というリリースを公表した。 東京証券取引所のリリースによれば、その理由は、次のとおりである。 4 小林取締役の辞任 同じ7月24日には、定時株主総会後の職務分掌の変更により、「子会社管理室長」の任にあった小林取締役は、7月31日付で、「過年度決算訂正の事態と影響を厳粛に受け止め、退任する」という理由により、退任することが公表された。 第三者委員会調査報告書では、取締役の責任についての言及はまったくなく、五洋インテックスは、責任の明確化について、「本件の責任は全役員が負うことといたします」としたうえで、「役員全員が、報酬の20%を3か月分について、それぞれ自主返納する」ことを、再発防止策とともに公表していたため、いささか唐突の感を否めない。 環境事業の拡大を企図して、五洋インテックスの取締役に就任した名井取締役は、同社が新規事業から事実上撤退したにもかかわらず、そのまま取締役に留まっていることとは対照的である。 (了)

#No. 285(掲載号)
#米澤 勝
2018/09/13
#