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金融・投資商品の税務Q&A 【Q38】「発行会社による自己株式(非上場株式)取得の課税関係」

筆者:箱田 晶子

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金融投資商品税務

【Q38】

「発行会社による自己株式(非上場株式)取得の課税関係」

 

PwC税理士法人
金融部 パートナー
税理士 箱田 晶子

 

[Q]

私(居住者たる個人)は日本法人A社発行の非上場株式(普通株式)を100株(持株割合は5%)保有していますが、このたびA社(発行会社)との合意によりA社に対し相対で当該株式の譲渡を行い、金銭を取得しました(発行会社による自己株式の取得)。

この譲渡(自己株式取得)については、税務上どのように取り扱われますか。

なお、本件の譲渡対価は適正に決定されており、A社は普通株式のみを発行している法人です。

[A]

株主である個人に、みなし配当及び譲渡損益が発生する可能性があります。

みなし配当は配当所得、譲渡損益は一般株式等に係る譲渡所得等としてそれぞれ取り扱われるため、プラスのみなし配当とマイナスの譲渡損益(譲渡損失)が算出される場合、両者を損益通算することはできません。

検 討

1 自己株式の取得に係る税務上の取扱い

株主たる個人がその有する非上場株式を他者に譲渡する場合、当該譲渡に伴う損益は一般に「一般株式等に係る譲渡所得等」として区分され課税されます。しかしながら、譲渡の相手先が株式の発行会社である場合、税務上、自己株式の取得として取り扱われ、一定の事由(※1)に該当する場合を除き、譲渡損益のうち一部がみなし配当、一部が一般株式等に係る譲渡所得等として取り扱われます。

(※1) 一定の事由に該当する場合、みなし配当とされる部分はなく、損益の全額が株式等に係る譲渡所得等として取り扱われます。「一定の事由」には、例えば以下が含まれます。

① 金融商品取引市場による購入

② 店頭売買登録銘柄の店頭売買による購入

③ 金融商品取引業者が株式の売買の媒介、取次又は代理をする場合

④ 事業の全部の譲受け

⑤ 合併又は分割若しくは現物出資による被合併法人又は分割法人若しくは現物出資法人からの移転(適格と非適格)

⑥ 合併に反対する当該合併に係る被合併法人の株主等の買取請求に基づく買取り

⑦ 単元未満株式の買取りの請求又は端株の買取請求による買取り

⑧ 全部取得条項付き種類株式の取得にあたっての端数株式の買取り

 

2 みなし配当の計算

自己株式の取得により株主が交付を受ける金銭及び金銭以外の資産の価額の合計額のうち、発行法人の当該譲渡直前の対応資本金等の額を超える部分の金額はみなし配当とされます。

すなわち、みなし配当の金額は、簡易な式にすると以下のようになります(発行法人が1種類の株式のみを発行している場合)。

みなし配当= 自己株式の取得により 交付を受ける金銭及び 金銭以外の資産の価額 の合計額 - 資本金等の額のうち その交付の基因となった 当該法人の株式に対応する 部分の金額(※2)

(※2) 資本金等の額のうちその交付の 基因となった当該法人の株式に 対応する部分の金額(※3) = 法人の自己株式取得直前の 税務上の資本金等の金額  ×  各株主の自己株式取得直前の 所有株式数  法人の自己株式取得直前の 発行済株式総数

(※3) 当該直前の資本金等の金額が0以下である場合には、0とする。

 

3 譲渡損益の計算

自己株式の取得により交付を受ける金額(譲渡対価)のうち、みなし配当とされる金額以外は、株主たる個人において株式の譲渡に係る譲渡収入として取り扱われます。

すなわち、株式等に係る譲渡所得等として取り扱われる金額は以下の通り計算されます。

株式等に係る譲渡所得等 = 譲渡対価 - みなし配当 - 株式等の取得費(※4)

(※4) 譲渡のために要した手数料等を含む。

 

4 みなし配当及び譲渡損益の課税関係

① みなし配当

みなし配当については配当所得として取り扱われ、発行法人により20.42%(所得税及び復興特別所得税)の税率にて源泉徴収がなされます。

個人株主は、受け取った配当について、原則として配当所得として申告を行う必要があります。配当所得は他の所得と合算され総合課税の対象となります。配当について申告を行う場合は、配当控除の適用があります。

ただし、みなし配当の金額が10万円以下である場合(少額配当)は、所得税については申告をせず、源泉税のみで課税関係を完結することができます(住民税については総合課税)。

上場株式等の配当と異なり、申告分離課税の適用はなく、また、金額にかかわらず申告不要とすることはできません。

② 譲渡損益

非上場株式等の売却による売却益は、「一般株式等の譲渡に係る事業所得、雑所得、譲渡所得」として区分され、申告分離課税が適用されます(原則として確定申告が必要となります)。税率は20.315%(所得税及び復興特別所得税15.315%、住民税5%)が適用されます。

非上場株式等の売却による売却損は、他の非上場株式等(非上場の株式、私募の投資信託や一般公社債)の売却から生じた売却益と損益通算することができます。しかしながら、上場株式等の売却益や、配当所得(上場・非上場)との損益通算を行うことはできません。また、譲渡損の繰越しもできません。

 

5 本件へのあてはめ

本件の場合、発行会社に相対で譲渡したということですので、に記載の「一定の事由」に該当しない限り、譲渡から生じた利益はみなし配当(配当所得)と譲渡損益(一般株式等に係る譲渡所得等)に分類されます。

自己株式の取得の場合、発行法人の税務上の資本金等の金額によっては、(プラスの)みなし配当、マイナスの譲渡損益(譲渡損失)が発生することがあり得ます。その場合、本件は非上場株式ということですので、みなし配当(配当所得)と譲渡損失(一般株式等に係る譲渡損失)を損益通算することはできません。したがって、実額の利益より大きいみなし配当に対し課税が生じる可能性があります(下記【事例】参照)。

【事例】

〈前提〉

・A株式の取得価額:100

・A株式の自己株式の譲渡対価:200

・A発行法人の譲渡直前の資本金等の額:80

〈計算例〉

・みなし配当・・・200-80=120

・株式の譲渡所得等・・・200-120-100=△20

 

【参考(関連条文)】
所法第24条、第25条、所令第61条第1項・第2項第6号
措法第8条の5第1項1号、措令第4条の3第4項
措法第37条の10第3項第5号、措令第25条の9

(了)

この連載の公開日程は、下記の連載目次をご覧ください。

連載目次

金融・投資商品の税務Q&A

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筆者紹介

  • 箱田 晶子

    (はこだ・あきこ)

    PwC税理士法人 金融部 パートナー。 税理士。

    金融機関、ファンド等に対し、内外の投資信託、仕組債、リッパケージローン等の金融商品に関する税務上のアドバイス、クロスボーダーのファンド投資ストラクチャー組成に関する税務コンサルティングサービスを数多く行っている。

    【主な共著書】
    ・『金融・投資商品の税務Q&A』共著(清文社)
    ・『逐条解説投資信託約款』共著(金融財政事業研究会)
    ・『投資ストラクチャーの税務(九訂版)』共著(税務経理協会)
    ・『信託の税務』共著(税務経理協会)
    ・『法人税重要事例400』共著(税務研究会)

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