《速報解説》 教育資金・結婚子育て資金の一括贈与非課税措置の延長及び見直し ~平成31年度税制改正大綱~ 税理士 菅野 真美 平成31年度税制改正大綱(与党大綱)では、平成31年3月31日で適用期限を迎える教育資金の一括贈与非課税措置及び結婚・子育て資金の一括贈与非課税措置について、それぞれ適用期限の延長及び要件の見直しが示された。 Ⅰ 教育資金一括贈与非課税措置の延長・見直し [従来の制度概要] 教育資金一括贈与非課税措置は平成25年度改正で導入された制度で、平成25年4月1日から平成31年3月31日までの間に、親や祖父母が30歳未満の子や孫に金融機関を通じて1,500万円まで贈与(信託)し、その資金が教育費として使われた場合には、贈与時点での贈与税が非課税とされる制度である。 通常、扶養義務者間においてその都度教育費を贈与した場合は非課税だが、将来の教育費に充てるための資金をまとめて贈与した場合は課税される。しかしこの制度では、お金をまとめて贈与した時点でも、将来の使途が決まっているため、贈与税が非課税とされる。 ただし、期間の制限があり、受贈者が30歳に達した日、受贈者が死亡した日、残高が0になる日のいずれか早い日に終了する。受贈者が30歳になって契約が終了した時点で資金の残高(管理残額)がある場合は、たとえその時点で贈与者が死亡していたとしても、受贈者に贈与税が課される。 なお、制度自体は信託銀行を介したものだけでなく、銀行や証券を介したものも創設されたが、圧倒的に信託銀行を利用したものが普及している。 [改正内容] 平成31年度税制改正では、この制度を平成33年(2021年)3月31日まで2年延長した上で、下記のように大幅な見直しが行われる予定である。 (1) 受贈者の所得制限 この制度の受贈者は、金融資産の多い親や祖父母をもつ子や孫が多く、より高い教育を受け所得が高額となるものも多かった。高額所得者に優遇税制を適用するのは格差の拡大となると考えて、信託等する日の属する年の前年の受贈者の合計所得金額が1,000万円超の場合は、適用を受けることができないとした。 この改正は、平成31年4月1日以後の信託等により取得する信託受益権から適用される。 (2) 教育資金の範囲 従来教育資金として預けたお金の使い方について学校等に対する支払は1,500万円まで非課税で可能であったが、学校等以外の者への支払(学習塾やスポーツ・ピアノ等の習い事)は500万円までの制限があった。しかし、いずれであったとしても30歳までの支払である場合は認められた。 改正案では、23歳以上の支払については、これまでどおりの学校等への支払に加え、学校等以外の者への支払については、学校等に関連する費用を除くと教育訓練給付金の支給対象となる支払いに限定される。例えば、大学を卒業して就職したが、医者になるために25歳で退職して株式会社の予備校に通った場合の授業料等は認められないと考える。 この改正は、平成31年7月1日以後に支払われる教育資金から適用される。 (3) 契約終了日までに贈与者が死亡した場合 この制度では、期間終了までの間に贈与者が死亡した場合においても、相続時点の管理残額は相続税の課税対象とはならなかった。この点を利用して、余命いくばくもない資産家が大勢いる子供や孫に教育資金の一括贈与を行うことによって「1,500万円×直系卑属の数」に相当する相続財産を減らすという節税が可能となり問題視された。 そこで、改正案では、死亡前3年以内に信託等された部分のうち死亡日の管理残額に対応する部分については、相続財産に含まれることとなる。ただし、贈与者の死亡時に次の3つのいずれかの要件に該当する場合は含まれない。 この改正は平成31年4月1日以後の贈与者の相続から適用されるが、経過措置として平成31年4月1日前に信託された部分の管理残高については相続財産に含まれない。 (4) 信託終了事由 現行制度では上記のように、教育資金の制度の終了事由の1つとして、「受贈者が30歳に達した日」というものがある。改正案では、30歳時点で上記(3)の②③のいずれかに該当する場合は、契約が終了せず、1年を通して(3)の②③に該当する期間がない年の12月31日か受贈者が40歳に達する日のいずれか早い日に契約が終了するとされる。 学校は大学や大学院だけでなく、専門学校や各種学校も含まれることから、継続して学び続けると40歳までこの制度を利用できる。 この改正は平成31年7月1日以後に受贈者が30歳に達する場合に適用される。 Ⅱ 結婚・子育て資金一括贈与非課税措置の延長・見直し [従来の制度概要] 結婚・子育て資金の一括贈与非課税措置は、Ⅰの教育資金一括贈与非課税措置が平成25年の創設時に相当な件数の信託契約が締結されたことを受けて平成27年度改正で導入された制度であり、平成27年4月1日から平成31年3月31日まえの間に、親や祖父母が20歳以上50歳未満の子や孫に金融機関を通じて1,000万円まで贈与し、その資金が結婚資金(300万円限度)や子育て資金として受贈者が50歳になるまでに使われた場合には、贈与税が非課税とされる制度である。 この制度と教育資金の制度との大きな違いとしては、契約途中で贈与者が死亡した場合は、死亡した時点での管理残高が、贈与者の相続財産に含まれることが挙げられる。贈与者の相続財産に含まれた場合は、その後、受贈者が50歳になって契約終了時に管理残額があったとしても贈与税は課されない。 [改正内容] Ⅰと同様、制度が平成33年(2021年)3月31日まで2年延長される。 また、この制度の受贈者は、金融資産の多い親や祖父母をもつ子や孫が多く、子や孫の所得も高額となるものも多かった。高額所得者に優遇税制を適用するのは格差の拡大となることから、信託等する日の属する年の前年の受贈者の合計所得金額が1,000万円超の場合は、適用を受けることができないとした。 この改正は、平成31年4月1日以後の信託等により取得する信託受益権から適用される。 (了) ↓お勧め連載記事↓
《速報解説》 事業承継ファンドから出資を受けた場合のみなし大企業の要件緩和 (中小企業向け設備投資減税の適用の特例) ~平成31年度税制改正大綱~ 辻・本郷税理士法人 税理士 安積 健 平成31年度税制改正では、中小企業に対する規制強化の一環として、みなし大企業の範囲が拡大される予定である。他方、平成30年度税制改正では、中小企業の事業承継を円滑に進めるべく、いわゆる自社株納税猶予の制度が大きく見直された。今回のみなし大企業に関する改正でも、事業承継に関する部分については、例外的に規制を緩める改正が予定されており、注意が必要である。 (1) みなし大企業とは 租税特別措置法では、大企業に比べると、中小企業について設備投資減税をはじめとする優遇措置が講じられていることが多い。ここで中小企業と大企業を分ける基準は、資本金であり、通常、資本金1億円以下の法人が中小企業者とされる。ただし、大企業の傘下にある場合には、資本金1億円以下の法人といえども中小企業者には該当しないとされる。これが「みなし大企業」である。 中小企業者等が機械等を取得した場合の特別償却又は法人税額の特別控除(中小企業投資促進税制)を例に説明すると、中小企業者とは、次のいずれかに該当する者をいう(措法42の6①、42の4③、措令27の4⑫)。 みなし大企業とは、資本金の額が1億円以下の法人のうち、上記(ア)又は(イ)に該当する法人をいい、資本金の額が1億円以下であっても、中小企業者から除外される法人である。 特定中小企業者等が経営改善設備を取得した場合の特別償却又は法人税額の特別控除(商業・サービス業・農林水産業活性化税制)、中小企業者等が特定経営力向上設備等を取得した場合の特別償却又は法人税額の特別控除(中小企業経営強化税制)などにおける中小企業者も同様である。 (2) 改正の概要 平成31年度税制改正では、中小企業等経営強化法の事業再編投資計画の認定に係る投資事業有限責任組合の組合財産である株式を発行した中小企業者について、上記みなし大企業の判定における大規模法人の有する株式又は出資から、その投資事業有限責任組合に係る組合員の出資をした独立行政法人中小企業基盤整備機構の有する株式が除外される。 改正内容が適用される租税特別措置法の規定は下記の通りである。 独立行政法人中小企業基盤整備機構では、中小企業者に対する投資事業を行う民間機関などとともに投資ファンド(投資事業有限責任組合)を組成し、中小企業者への資金調達の円滑化と踏み込んだ経営支援(ハンズオン支援)を通じて、ベンチャー企業や既存中小企業の新事業展開の促進又は中小企業者の再生を支援している。 (※) 中小企業基盤整備機構ホームページより 今回の改正は、財政基盤が脆弱な中小企業を支援するという本来の趣旨を踏まえ、必要な事業承継を推進するとともに、事業承継を実施する中小企業の設備投資を促す観点から行われるものである。 〈現行〉 現行制度の場合、支援対象会社は、資本金1億円以下でも、複数の大規模法人から70%の出資を受けており、中小企業者には該当しないため、中小企業向け優遇税制を適用することができない。 〈改正案〉 改正案のもとでは、支援対象会社は、資本金1億円以下で、同一の大規模法人から30%の出資しか受けていないこととされるため、中小企業者に該当し、中小企業向け優遇税制を適用することができる。 (了)
《速報解説》 無形資産の取引に係る移転価格税制の見直し ~平成31年度税制改正大綱~ 税理士・行政書士 島田 弘大 1 はじめに 平成30年12月14日に「平成31年度税制改正大綱」(与党大綱)が公表された。 日本企業の健全な海外展開を支えるとともに、BEPSプロジェクトを背景に国際的な租税回避や脱税に対してより効果的に対応することが求められることから、近年では毎年のように国際課税に関する重要な改正が行われている。 平成31年税制改正大綱においては、国際課税について主に「過大支払利子税制」及び「移転価格税制」に関する改正が行われている。本記事ではそのうち、移転価格税制(無形資産取引)の見直しに係る主な改正ポイントを解説したい。 2 移転価格税制の対象となる無形資産の明確化 現行法では、移転価格税制の対象となる無形資産については、その定義が租税特別措置法基本通達66の4(3)-3の(注1)にて記載されているのみであった(下記【参考】参照)。 改正案では、移転価格税制の対象となる無形資産は、 と広範かつ明確な定義が採用されている。 無形資産の定義が明確化されることになるため、企業としては無形資産の存在を再度検討する必要があると考えられる。 3 DCF法の導入 独立企業間価格の算定方法としてディスカウント・キャッシュ・フロー法(以下、「DCF法」)が新たに追加される。DCF法とは、将来その無形資産から得られるであろうキャッシュフローを予測し、その金額について一定の割引率を用いて現在価値を計算する方法である。 DCF法はOECD移転価格ガイドラインにおいて比較対象取引が特定できない無形資産取引等に対する算定方法として有用性が認められている方法である。今後の無形資産取引等に係る独立企業間価格の算定方法として多く利用されることが想定される。 なお、DCF法による具体的な計算方法については、今後の情報に注目する必要がある。 4 評価困難な無形資産に係る取引に係る価格調整措置(所得相応性基準)の導入 ① 特定無形資産 評価困難な無形資産に係る取引(以下、「特定無形資産取引」)について独立企業間価格の算定の基礎となる予測と結果が相違した場合には、一定の要件のもと、税務当局は最適な価格算定方法により算定した金額を独立企業間価格とみなして更正等(価格調整)をすることができることとされる。ただし、税務当局が算定した価格と当初の取引価格との相違が20%以下である場合には、価格調整措置は行われない。 ② 適用免除要件 また、国税当局の職員が一定の書類(特定無形資産取引に係る独立企業間価格の算定の基礎となる予測の詳細を記載した書類や取引時において予測と結果が相違する原因となった事由の発生の可能性を適切に勘案して算定したことを証する書類など)の提出等を求めた日から一定期間内に法人からその書類の提出があった場合も価格調整措置は行われないこととされている。 なお、上記の所得相応性基準の導入により、過去に遡って事後的に指摘を受けるケースが増加すると考えられる。そのため、独立企業間価格の算定の基礎となる予測と結果の差異の要因となり得る事由を検討し、予測と結果とで大きな差異が生じないように独立企業間価格をより慎重に検討する必要があるだろう。 5 更正期間等の延長 移転価格税制に係る更正期間及び更正の請求期間等が現行の6年から7年に延長される。 6 適用時期 上記の改正は、平成32年4月1日以後に開始する事業年度分の法人税から適用される。 (了)
《速報解説》 中小企業向けの法人税軽減税率の特例、2021年3月31日まで2年延長 ~平成31年度税制改正大綱~ 公認会計士・税理士 鯨岡 健太郎 1 はじめに 平成30年12月14日、与党(自由民主党及び公明党)より平成31年度の税制改正大綱が公表された。平成31年度は消費税率の引上げが予定されている中、引き続き現在の景気回復基調を持続させ、デフレ脱却・経済再生を確実なものとすることが必要であるとして、企業に対しては引き続き収益拡大分を賃金上昇・雇用拡大や設備投資の増加につなげることが期待されている。 このように、経済政策についてはこれまでの流れを踏襲しつつ、中小企業対策についても必要な税制改正が盛り込まれているところであるが、本稿では中小企業向け軽減税率の延長について説明する。 2 改正の概要 中小企業向けの法人税の軽減税率の特例について、その適用期限を2年延長し、平成33(2021)年3月31日までの間に開始する事業年度まで適用する。 3 補足(現制度の概要) 普通法人(※)のうち各事業年度終了の時において資本金額又は出資金額が1億円以下であるもの、資本もしくは出資を有しないもの(一定の医療法人を除く)、又は人格のない社団等の平成24年4月1日から平成31年3月31日までの間に開始する各事業年度の所得の金額のうち年800万円以下の金額については、法人税率を本則の19%ではなく15%とする特別措置が定められている(措法42の3の2①)。 (※) 保険業法に規定する相互会社、及び大法人(資本金額又は出資金額が5億円以上である法人等)との間に完全支配関係がある普通法人を除く。 (了)
《速報解説》 会計士協会、「偶発事象の会計処理及び開示に関する研究報告」(公開草案)を公表 ~偶発事象全般に関する会計基準の開発を提言~ 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 2018(平成30)年12月14日、日本公認会計士協会は、「偶発事象の会計処理及び開示に関する研究報告」(公開草案。会計制度委員会研究報告)を公表し、意見募集を行っている。 我が国には、偶発事象に関する会計基準は存在せず、偶発債務等の注記は規定されているが、偶発事象(偶発損失及び偶発利益)の定義や会計上の取扱いに関するルールが定められていないことから、偶発事象の会計上の取扱いについて研究を行ったものである。 意見募集期間は2019(平成31)年1月25日までである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 公開草案の概要 公開草案は、目次を含めて40ページに及ぶものであり、以下では、主な内容について解説する。 1 偶発事象の定義 偶発事象について、現行の日本基準では特に定義はないとのことである。 日本公認会計士協会が過去に公表していた監査基準委員会報告書第2号(中間報告)「特記事項」(1992年(平成4年)11月11日公表、2003年(平成15年)2月18日廃止)の偶発事象の定義や、「監査マニュアル」(監査第一委員会研究報告第1号)の「4090偶発債務に関する監査手続書」を用いて検討している。 すでに廃止された監査基準委員会報告書第2号(中間報告)「特記事項」では、偶発事象を次のように定義していた。 なお、IFRSのIAS 第37号「引当金、偶発負債及び偶発資産」では引当金、偶発負債及び偶発資産についての定義は定められているものの、偶発事象の定義は定められていないとのことである(4ページ)。 2 日本公認会計士協会の提言 日本公認会計士協会として、偶発債務の我が国の会計上の取扱いについて、次の取扱いを検討すべきではないかと考えるとのことである(22ページ)。 我が国においては存在していない偶発事象全般に関する会計基準を新たに開発することを目標に検討されることが望ましいと考えられるとのことである(30ページ)。 (了)
《速報解説》 会計上の論点及びスキーム別の会計処理上の論点などをまとめた 「インセンティブ報酬の会計処理に関する研究報告」(公開草案)が公表される 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 2018(平成30)年12月14日、日本公認会計士協会は、「インセンティブ報酬の会計処理に関する研究報告」(公開草案。会計制度委員会研究報告)を公表し、意見募集を行っている。 これは、インセンティブ報酬の会計上の取扱いについて研究したものである。 意見募集期間は2019(平成31)年1月25日までである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 公開草案の概要 公開草案は、目次を含めて101ページに及ぶものであり、以下では、主な内容について解説する。 1 インセンティブ報酬に関する会計上の論点(総論) インセンティブ報酬に関する会計上の論点(総論)として、次のことが記載されている。 「② 費用計上額の測定日(事後的な時価の見直しの要否)」に関しては、費用計上額に焦点を当てて考えたときの時価測定の時点は、付与日(契約締結日)ということになり、また、発行されるオプション又は株式に焦点を当てて考えてみたときにおいても、時価測定の時点は、付与日(契約締結日)ということになると記載している(17ページ)。 2 インセンティブ報酬に関するその他の会計上の論点(各論) インセンティブ報酬に関するその他の会計上の論点(各論)として、次のことが記載されている。 「⑥ 株価連動型金銭報酬における取扱い」に関して、株価連動型金銭報酬とは、株式の発行や自己株式の処分は伴わず、金銭(現金)によって役員等に給付される報酬であるものの、当該報酬の額が自社ないし親会社等の株価に連動して決定されるような報酬をいい、我が国の会計基準等において、株価連動型金銭報酬の会計処理は特に定められておらず、会計上の定義についても明文の定めはないと記載されている(48ページ)。 一般的に、株価連動型金銭報酬に区分される報酬制度としては、仮想的に株式を交付するか否かによって、次の2つに区分されるとのことである(48、49ページ)。 3 インセンティブ報酬のスキーム別の会計処理上の論点 インセンティブ報酬のスキーム別の会計処理上の論点として、次のことが記載されている。 (了)
《速報解説》 空き家に係る譲渡所得の3,000万円特別控除の特例に係る改正事項 ~平成31年度税制改正大綱~ 弁護士 羽柴 研吾 1 はじめに 平成30年12月14日に公表された与党の平成31年度税制改正大綱において、空き家の発生を抑制するための特例措置の拡充・延長措置が明記された(大綱21頁)。 2 改正の背景 近年、周辺の生活環境に悪影響を及ぼしうる空き家の数が年々増加し、相続人が使う見込みのない古い住宅が空き家として放置され、周辺の生活環境に悪影響を与えることを未然に防止する必要性が認識されていた。 このような中、平成28年度税制改正において、空き家の発生を抑制するため、被相続人の居住用財産に係る譲渡所得の特別控除の特例(以下「相続空き家の特例」という)が創設された。これは、相続又は遺贈によって取得した被相続人居住用家屋及び被相続人居住用家屋の敷地等を譲渡した場合で、一定の要件に該当するときは、居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例(租特法第35条《居住用財産の譲渡所得の特別控除》第1項)の適用を受けることができるようにするものであった。 相続空き家の特例の適用対象となる「被相続人居住用家屋」とは、相続の開始の直前において当該相続又は遺贈に係る被相続人の居住の用に供されていた家屋である(租特法第35条第4項)。そのため、例えば、その被相続人がその相続の開始の直前において老人ホーム等に入居していて、既にその家屋を居住の用に供していなかった場合には、被相続人居住用家屋には該当しないものとされていた(財務省「平成28年度税制改正の解説」152頁参照、租特通35-10、31の3の2も併せて参照されたい)。 しかしながら、被相続人は相続開始の直前において老人ホーム等に入居していることも多く、被相続人が家屋に住まなくなった理由のうち、老人ホーム等の施設に入居したことを理由とするものが14.4%を占めており、これは死亡を理由とするもの(64.2%)に続く割合を占めている(国土交通省「平成31年度国土交通省税制改正概要」11頁)。 そこで、今回の改正は、老人ホーム等に入居した場合であっても、一定の要件に該当するときは、相続空き家の特例の適用を受けられるようにしたものである。 3 拡充の内容 (1) 被相続人居住用家屋の対象の拡充 次の要件を満たす場合に、被相続人居住用家屋に該当するものとされた。 (2) 適用期間の延長 相続空き家の特例の適用期間が、4年間(平成32年(2020年)1月1日から平成35年(2023年)12月31日)延長された。 4 適用時期 改正法は、平成31年4月1日以後に行う被相続人居住用家屋又は被相続人居住用家屋の敷地等の譲渡について適用される予定である。 (了)
《速報解説》 土地の所有権移転登記等に係る登録免許税の軽減措置の延長等、登録免許税に係る主な改正事項 ~平成31年度税制改正大綱~ 税理士・行政書士・AFP 山端 美德 平成30年12月14日、与党(自由民主党と公明党)による「平成31年度税制改正大綱」が公表された。 登録免許税に係る主な改正事項は、以下のとおりである。 1 土地の所有権移転登記等に係る登録免許税の延長 人口の減少下においても土地に対する需要を喚起し、土地の流動化を通じた有効利用等の促進を図るため、また、2019年10月には消費税率の10%への引上げが予定されており、土地に係る税額も住宅取得に影響を与えるおそれがあることから、土地の所有権移転登記等に係る登録免許税の税率について、下記の軽減税率を平成33年(2021年)3月31日まで2年間延長する。 2 Jリート及びSPCが取得する不動産に係る特例措置の延長 2017年6月に閣議決定された「未来投資戦略2017-Society 5.0の実現に向けた改革」により、2020年頃までにリート等の資産総額を約30兆円に倍増することを目指し、成長性の高い不動産への転換や供給に向けた投資を促す観点から、Jリート及びSPC(資産流動化法に基づく特定目的会社)が取得する不動産に係る登録免許税について、下記の軽減税率を平成33年(2021年)3月31日まで2年間延長する。 3 不動産特定共同事業において取得される不動産に係る特例措置の拡充・延長 都市機能の向上及び地域活性化を図るため、またデフレからの脱却のためには、不動産特定共同事業法の仕組みを一層活用し、さらなる民間不動産投資を誘発することが必要であり、特例事業者等が取得する不動産に係る現行の特例措置を平成33年(2021年)3月31日まで2年間延長するとともに、一部の要件の見直しを行う。 (了)
《速報解説》 BEPS勧告を受けた過大支払利子税制の見直し ~平成31年度税制改正大綱~ 弁護士 木村 浩之 平成30年12月14日公表の与党大綱において、過大支払利子税制の見直しが明記された。本稿ではその概要について解説を行う。 1 改正の背景 法人税の所得の計算上、支払利子は損金に算入されることから、これを利用し、過大な支払利子を損金に計上することで税負担を圧縮する租税回避行為が可能となる。そこで、日本では、平成24年度税制改正により、所得金額に比して過大な利子を関連者間で支払うことを通じた租税回避を防止するため、過大支払利子税制が創設された。 この点、企業グループ内のような関連者間においては、借入れを比較的容易に設定できるため、過大な支払利子を通じた税負担の圧縮が恣意的になされるおそれが高いといえる。このようなことから、改正前の現行制度(以下「旧制度」という)では、関連者に対する純支払利子(支払利子からこれに対応する受取利子を控除したもの)のうち、基準となる所得(調整所得金額)のうちの一定の割合(50%)を超える部分の金額について損金不算入とされていた。 かかる過大な支払利子を通じた租税回避行為は日本のみならず、各国における共通の問題と考えられており、G20/OECDのBEPSプロジェクトでも独立したテーマ(行動4)として取り上げられた。そして、BEPSプロジェクトの最終報告書において、これに対抗するためのベストプラクティスについて勧告がなされた(以下「勧告」という)。 今回の改正は、この勧告内容に照らして、旧制度が不十分であると考えられる点を強化するとともに、借入れを活用した投資活動を過度に抑制することのないようにとの経済界等の要望にも一定の配慮がなされたものといえる。 以下では、主な改正点について解説する。 2 対象となる利子の支払先の拡張 旧制度では、損金算入制限の対象となる利子の支払先は関連者に限られていた。これに対して、関連者以外の第三者からの借入れを通じた租税回避行為も多くみられることが指摘されており、勧告では支払先について特段の限定はなされていない。 そこで、今回の改正では、基本的には、支払先について特段の限定をすることなく、関連者以外の第三者に対する支払であっても制限の対象にするものとされた。もっとも、それでは正常な経済活動が阻害されるおそれがあることから、租税回避とは考えにくい一定の支払利子については対象外にすることとされた。 対象外となる主なものは、①受領者において日本の課税所得に含まれる支払利子(すなわち、日本の課税ベースを侵食しない支払利子)、②社債などの債券に係る支払利子であって非関連者に対して支払われるもの(すなわち、恣意的な借入れに係る支払利子とはみられにくいもの)である。②については、債券利子が日本で課税されるかどうか、国内又は国外のいずれで発行されるかなどにより、対象外とされる金額が異なることになる。 3 基準となる所得の縮小 旧制度では、受取配当の益金不算入額も基準となる所得に含まれており、課税対象とはならない多額の所得によって損金算入が認められる余地が大きく増加するという弊害があった。これに対して、勧告では、益金不算入となる受取配当は基準となる所得には含まれないものとされている。 そこで、今回の改正では、国内外の受取配当益金不算入額は基準となる所得に含まれないこととされた。これにより、損金算入が認められる余地は減少することになる。 4 基準割合の引下げ 旧制度では、基準となる所得のうちの50%を超える部分が損金不算入とされており、言い換えれば、50%までは損金算入が認められていた。これに対して、勧告では、基準割合は10%~30%とされている。 そこで、今回の改正では、この基準割合を20%に引き下げることとされた。これにより、損金算入が認められる余地は減少することになる。 5 制度の適用免除 以上のとおり、今回の改正は制度の適用対象を拡大するものであるが、その緩和措置として、制度の適用免除の要件が緩和された。すなわち、いわゆるデミニミスルールとして、対象となる純支払利子が2,000万円以下である場合には適用を免れられることになった。旧制度では1,000万円以下が基準とされており、これが引き上げられることで要件が緩和されたものである。 また、旧制度では、関連者に対する支払利子割合が全体の50%以下である場合に適用免除とされていたが、今回の改正では、このルールに替えて、50%超の保有関係にある内国法人グループ全体を見た場合において、グループ全体での支払利子のネット金額が基準となる所得の20%以下である場合に適用免除が認められることとされた。 6 適用時期 今回の改正は、平成32年4月1日以後に開始する事業年度分の法人税について適用される予定である。 (了)
《速報解説》 平成31年度税制改正大綱(与党大綱)が公表される ~個人版事業承継税制の創設と特定事業用宅地等に係る小規模宅地等特例の要件見直し、 配偶者居住権の評価方法を明記、 中小企業の防災・減災設備投資を促進する税制の創設~ Profession Journal編集部 自由民主党・公明党は平成30年12月14日、当初予定より2日ほど遅れ「平成31年度税制改正大綱」(与党大綱)を公表した。 今回の大綱取りまとめに当たり焦点となったのは、来年(2019年)10月1日から実施される消費税率10%引上げ後の景気の落ち込みを抑制する施策であり、増税後の自動車や住宅の購入に係る税制措置のさらなる拡充が図られることとなった。 一方で、来年中に期限切れとなるものを含む租税特別措置については、単純な延長ではなく、その効果等を検証し適用要件の見直しが行われるものも多い。 さらに相続法制の見直し及び成年年齢の引下げに関するそれぞれの改正民法を受け、税制においても新たな財産の評価方法や現行制度の見直しが行われており、実務への影響も大きい。それぞれの施行時期については一律ではないという点も留意したい。 以下、主な改正事項を紹介する。なお、例年のとおり、重要な改正事項については年末から年始にかけ個別に速報解説を順次公開していくので、そちらも合わせて参照されたい。 また、こちらの[資料リンク集]ページも今後更新を重ねていくので、ログインの上、ブックマークボタンを押すなどして確認できるようにしていただきたい。 (注)下記で用いている元号表示を西暦で表記すると、次のとおりとなります。 〇住宅・車体課税 車体課税については、平成31年10月1日に導入される自動車税の環境性能割について平成32年9月30日までの軽減措置、自動車税種別割の税率引下げ(恒久化)を行い、一方で自動車税のグリーン化特例や自動車取得税のエコカー減税については対象の絞り込みを行うなど抜本的な見直しが行われている【大綱p83】。 住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除(住宅ローン控除)の特例が創設され、消費税等の税率が10%である場合の住宅の取得等について、適用年の10年目までは現行制度と同額の住宅借入金等特別控除を認めた上、11~13年目までの各年の控除額を消費税率2%引上げの負担に着目し、①住宅借入金等の年末残高(4,000万円(※)を限度)×1%と②〔住宅の取得等の対価の額又は費用の額-当該住宅の取得等の対価の額又は費用の額に含まれる消費税額等〕(4,000万円(※)を限度)×2%÷3のいずれか少ない金額とすることとされる(平成31年10月1日~平成32年12月31日)【大綱p18】。 (※) 一般住宅の場合。認定長期優良住宅及び認定低炭素住宅の場合は5,000万円。 なお、住宅関連では他に、来年12月31日で期限切れとなる空き家に係る譲渡所得の3,000万円特別控除の特例について適用期限を平成35年12月31日まで4年延長した上、老人ホーム等に入所したことにより被相続人の居住の用に供されなくなった家屋・土地等について、一定の要件の下、適用を認めることとした(H31.4.1以後の譲渡から)【大綱p21】。また、土地の売買による所有権の移転登記等に対する登録免許税の税率の軽減措置の適用期限は平成33年3月31日まで2年延長される【大綱p48】。 〇中小企業関係税制、延長に合わせ一部見直しも まず中小企業者等の法人税率の特例(年800万円以下の所得金額について15%(本則19%))は平成33年3月31日までの2年延長。中小企業向けの主な設備投資減税(中小企業経営強化税制、中小企業投資促進税制、商業・サービス業・農林水産業活性化税制)もそれぞれ平成33年3月31日まで延長される。ただし、商業・サービス業・農林水産業活性化税制は「投資を含む経営改善により売上高又は営業利益の伸び率が年2%以上となる見込みであることについて認定経営革新等支援機関等の確認を受けること」という要件が追加され(H31.4.1以後取得等分)、中小企業経営強化税制についても特定経営力向上設備等の範囲の明確化・適正化を行うとしている【大綱p64】。 これら法人税関係の中小企業向けの各租税特別措置の適用に当たっては、適用不可とされる「みなし大企業」をめぐり以下の改正が行われる。まず適用対象法人の中に法人税法上のみなし大企業(下記〔補足〕参照)に該当する法人も存在しているとの指摘から、措置法上のみなし大企業の適正化を図るため、その判定において、大規模法人に①大法人(※)の100%子法人②100%グループ内の複数の大法人に発行済株式又は出資の全部を保有されている法人が加えられる【大綱p66】。一方で、事業承継ファンドから出資を受けた場合にみなし大企業とされ、中小企業向けの設備投資減税が適用されないという問題から、事業承継ファンドを通じて中小企業基盤整備機構から受ける出資については、大規模法人の所有する株式等に含まないこととされる【大綱p65】。 (※) 資本金の額等が5億円以上の法人、相互会社もしくは外国相互会社(常時使用従業員数1,000人超)又は受託法人 新たな税制措置としては、昨今頻発する自然災害を受け、中小企業・小規模事業者の事業継続力を強化するための設備投資を後押しするため、一定規模以上の自家発電機や制震・免震装置、照明器具や貯水タンク等の防災・減災を目的とした設備(特定事業継続力強化設備等)を取得等し事業の用に供した場合の特別償却(20%)制度が創設される。なおこの新制度は中小企業等経営強化法の改正が前提とされ(施行時期は同法の改正法の施行日~平成33年3月31日)、適用に当たっては一定の事業継続力強化計画又は連携事業継続力強化計画(仮称)を作成し経済産業大臣の認定を受ける必要がある【大綱p65】。 公益法人等又は協同組合等の貸倒引当金の特例(繰入限度額の10%割増措置)については、既報のとおり会計検査院からの指摘により、来年3月31日をもって期限切れ(廃止)となる(5年間の経過措置あり)【大綱p79】。 研究開発税制は、税額控除率の上乗せ措置の期限切れに合わせ、主に以下の見直しが行われる。まずオープンイノベーション型の対象範囲に民間企業(研究開発型ベンチャー(経産省が認定したファンドから出資を受けているベンチャー企業等))への一定の委託研究を追加等し控除上限を法人税額の10%(現行5%)に引き上げる。また総額型については、研究開発を行う一定のベンチャー企業の控除上限を法人税額の25%から40%に引き上げるとともに、税額控除率及び控除上限の上乗せ措置の適用期限を2年延長し、増加インセンティブを高めることを目的に、平成29年度改正に続きさらに控除カーブの見直し等を行う。これらにより高水準型は総額型に統合される構造となる【大綱p60】。 〇個人事業者の事業用資産に係る納税猶予制度の創設 中小企業の事業承継を促進する措置については平成30年度税制改正において事業承継税制の特例措置が期間を10年に限定して導入されたところだが、平成31年度では新たに個人事業者の事業承継を促進する個人版の事業承継税制(個人事業者の事業用資産に係る贈与税・相続税の納税猶予制度)が、こちらも10年間の時限措置として創設される【大綱p41】。 具体的には、贈与税の場合、一定の承継計画に記載され経営承継円滑化法の規定により認定を受けた後継者(認定受贈者)が、平成31年1月1日から平成40年12月31日までの間に贈与により特定事業用資産を取得し事業を継続する場合、担保の提供を条件に、認定受贈者が納付すべき贈与税額のうち贈与により取得した特定事業用資産の課税価格の100%に対応する贈与税額が猶予される。なお特定事業用資産とは、贈与者の事業(不動産貸付事業等を除く)の用に供されていた土地(面積400㎡まで)、建物(床面積800㎡まで)及び建物以外の減価償却資産(固定資産税又は営業用として自動車税もしくは軽自動車税の課税対象となっているもの等)をいう。その他、猶予税額の全額・一部免除や承継後の届出書等の提出要件など法人版の事業承継税制をベースに設計されている。 なお個人事業者の事業承継をめぐっては、許認可手続の簡素化が規制改革推進会議で検討されており、これら他方面からの環境整備の動向も注目される。 ただしこの個人版事業承継税制は、既存の個人版事業承継税制ともいえる特定事業用宅地等に係る小規模宅地等特例との選択適用となる。既存制度はすでに浸透している制度であり減税効果も大きいことから、新制度の適用には躊躇する面もあるが、一方で特定事業用宅地等については、昨年の会計検査院の指摘もあり、その範囲から、相続開始前3年以内に事業の用に供された宅地等(当該宅地等の上で事業の用に供されている減価償却資産の価額が、当該宅地等の相続時の15%以上である場合を除く)が除外されるという見直しが行われる(H31.4.1~)【大綱p44】。 特定事業用宅地等をめぐる本特例については、相続税の申告期限までしか事業の継続要件がない等、上記以外にも制度上の問題点がいくつか指摘されており、小規模宅地等特例については、32年度以降の改正動向にも注視が必要だ(【大綱p6、p121】の記載も合わせて参照されたい)。 〇改正相続法への対応 既報のように11月公布の施行日政令により、各改正項目の施行時期が判明した民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律(改正相続法)だが、税制上の対応として次の事項が示された【大綱p57】。 まず、改正相続法の附帯決議にもその対応が求められていたが、相続税における配偶者居住権等の評価額を次のように定めるとした。 一昨年の広大地評価の見直し等と同様に考えると、今後、財産評価基本通達の改正案がパブコメに付され、配偶者居住権の施行(平成32年4月1日)に合わせて確定されるという工程が考えられる。 なお、配偶者居住権が設定された不動産については物納劣後財産(物納に充てることが認められる順位の低い財産)とされ、配偶者居住権の設定の登記については、登録免許税を課税することとされた(2/1,000)【大綱p58】。 他の改正項目として、被相続人の療養看護等を無償で行い被相続人の財産の維持等に貢献した相続人以外の被相続人の親族(例えば長男の嫁等)に、相続人に対するその寄与に応じた金銭の請求が認められる特別寄与料については、被相続人から遺贈により取得したとみなし相続税の課税対象とされる。また特別寄与料を支払う相続人の課税価格からは、その額が控除される【大綱p58】。 〇成年年齢の引下げに伴う見直し 「民法の一部を改正する法律」が平成34年4月1日から施行され成年年齢が20歳から18歳に引き下げられるが、税制上、年齢要件を20歳又は成年(未成年)としている制度は、対象者の行為能力や管理能力に着目して要件を定めているとの考えから、同法施行に合わせ、相続税の未成年者控除の対象者や、相続時精算課税制度(及び同特例)・直系尊属からの贈与に係る贈与税の特例税率・非上場株式等に係る贈与税の納税猶予といった各制度における受贈者の年齢要件が20歳から18歳に引き下げられる【大綱p57】。成年=20歳との思い込みから判断を誤ることのないよう施行時期に合わせた対応を心がけたい。なお、他にも税理士資格を有する成年の年齢についても改正後の成年の年齢と同様とされるため【大綱p118】、今後、10代の税理士資格保有者が登場する可能性がある。 〇世代間の早期資産移転を目的とした贈与税の非課税措置は縮減へ 平成31年3月31日に適用期限を迎える「教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置」及び「結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置」は、内閣府や文部科学省などから制度恒久化や対象拡大等の要望がなされていたが、共に足元1年間の新規契約数が創設当初の件数から大幅に落ち込んでいることや、教育資金特例については経済格差が教育格差を生んでいる現状などから、共に平成33年3月31日まで2年延長されたものの、教育資金特例については受贈者の所得要件(1,000万円)が規定され23歳以上の者の教育資金の範囲の限定などが行われ、結婚・子育て資金特例も受贈者の所得要件(1,000万円)が追加された【大綱p45、p46】。 〇その他地方税、国際課税関係、ひとり親への対応 地方税源の偏在是正の問題への対応として、平成31年10月1日以後開始事業年度からの地方法人特別税の廃止と法人事業税への復元に合わせ、復元後の法人事業税(所得割・収入割)の一部(法人事業税の約3割)を特別法人事業税(仮)(国税(ただし賦課徴収は法人事業税と併せ都道府県が行う))として分離し、その全額を特別法人事業譲与税(仮称)として、人口を譲与基準として都道府県に譲与する仕組みが設けられる【大綱p71】。 また過度な返礼品が問題視されていたふるさと納税については、税額控除の対象となる団体を、一定の基準(返礼割合3割以下、地場産品等)に基づき総務大臣が指定したものに限られ、指定した都道府県等がその基準に適合しなくなった場合は指定を取り消すことができることとされた(H31.6.1~)【大綱p40】。 国際課税の関係では、過大支払利子税制においてBEPS勧告内容に合わせるため①対象となる利子②調整所得の定義③基準値についての見直し等を行い【大綱p98】、移転価格税制では評価困難な無形資産取引に係る価格調整措置の導入、移転価格税制上の無形資産の定義の明確化などが行われている【大綱p100】。 最後まで与党間での協議が難航したひとり親をめぐる税制上の措置については、「子どもの貧困に対応するため、事実婚状態でないことを確認した上で支給される児童扶養手当の支給を受けており、前年の合計所得金額が135万円以下であるひとり親に対し、個人住民税を非課税とする措置を講ずる」とした上【大綱p14、p41】、大綱p121(第三 検討事項)において「婚姻によらないで生まれた子を持つひとり親に対する更なる税制上の対応の要否等について、平成32年度税制改正において検討し、結論を得る。」とされている。 (了)