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平成29年度税制改正を踏まえた設備投資減税の選定ポイント 【第7回】「[設備種別]適用税制の選択ポイント③(器具備品)」

平成29年度税制改正を踏まえた設備投資減税の選定ポイント 【第7回】 「[設備種別]適用税制の選択ポイント③(器具備品)」   アースタックス税理士法人 代表社員  税理士 島添 浩  シニアマネジャー 税理士 小嶋 敏夫 壽命 正晃 發知 諭志   【第5回】から【第10回】にわたっては、青色申告法人(連結法人を除く)における設備種別の適用税制(中小企業投資促進税制、商業・サービス業・農林水産業活性化税制、中小企業経営強化税制)の選択ポイント及び具体的な申告実務上の留意事項を確認する。 なお、各税制の概要や適用手続き等については、【第1回】から【第3回】までを参照願いたい。 それでは今回【第7回】は、器具備品について紹介する。   1 選択ポイント 中小企業投資促進税制、商業・サービス業・農林水産業活性化税制、中小企業経営強化税制の主なポイントは下記のとおりである。 【器具備品における適用税制一覧表】 ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 (※) 上記税制以外に、【第4回】で確認した「地域中核企業向け設備投資促進税制(地域未来投資促進税制)」が平成29年7月31日から適用開始されている。  承認地域経済牽引事業に係る承認地域経済牽引事業計画に従って、特定地域経済牽引事業施設等の新設又は増設をするような場合には、当該税制の検討も要する。 器具備品においては、中小企業投資促進税制は対象外となるため、商業・サービス業・農林水産業活性化税制と中小企業経営強化税制の選択となる。 商業・サービス業・農林水産業活性化税制及び中小企業経営強化税制は、原則として器具備品を取得する前に一定の手続きを要するため、事前準備を行う必要があるが、商業・サービス業・農林水産業活性化税制より手続きが複雑な中小企業経営強化税制が特別償却、税額控除ともに有利な制度になっている。 なお、商業・サービス業・農林水産業活性化税制では経営の改善に資するものである必要があり、中小企業経営強化税制では経営力向上に特に資するものである必要がある。それぞれの要件には留意されたい。 また、器具備品の固定資産税の特例措置(課税標準の特例)については、【第3回】で確認したとおり、地域と業種によって適用を受けることができるか否かが決定されることから注意が必要である。   2 具体例(特別償却準備金、税額控除) 今回は、前回【第6回】同様に、特別償却に代えて特別償却準備金を選択した場合と税額控除を選択した場合について確認する。 - 前 提 - 小売業を営む青色申告法人である内国法人甲社(資本金3,000万円、発行済株式の総数1,000株、従業員の数20人、大規模法人に株式を所有されていない)は、当期(平成29年4月1日から平成30年3月31日)において、冷凍ショーケース(陳列だな及び陳列ケース・冷凍機能付又は冷蔵機能付のもの)を取得し、事業の用に供した。なお、償却方法については、定率法を選定し届け出ている。 【冷凍ショーケース(陳列だな及び陳列ケース・冷凍機能付又は冷蔵機能付のもの)の詳細】 取得価額:2,000,000円 法定耐用年数:6年 (定率法償却率:0.333、改定償却率:0.334、保証率:0.09911) 取得日:平成29年11月5日 事業供用日:平成29年11月5日 普通償却費:277,500円 普通償却限度額:277,500円 (1) 特別償却準備金を選択適用した場合 ① 中小企業投資促進税制 器具備品については、適用できない。 ② 商業・サービス業・農林水産業活性化税制 当期末において剰余金の処分により特別償却準備金として600,000円を積み立てているものとする。 ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 ③ 中小企業経営強化税制 当期末において剰余金の処分により特別償却準備金として1,722,500円を積み立てているものとする。 ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 (2) 税額控除を選択適用した場合 ① 中小企業投資促進税制 器具備品については、適用できない。 ② 商業・サービス業・農林水産業活性化税制 調整前法人税額は150,000円であるものとする。 ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 ③ 中小企業経営強化税制 調整前法人税額は150,000円であるものとする。 ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 ④ 税額控除選択適用時の留意事項 上記具体例において税額控除を選択適用した際は、税額控除限度額が税額基準額(調整前法人税額×20%)を超えるため、当期において税額控除限度額の全部を控除しきれないが、この控除しきれなかった金額(繰越税額控除限度超過額)については、1年間の繰越しが認められている。 よって、商業・サービス業・農林水産業活性化税制の場合の繰越税額控除限度超過額110,000円(140,000円-30,000円)、中小企業経営強化税制の場合の繰越税額控除限度超過額170,000円(200,000円-30,000円)は、翌期において税額控除をすることができる。 ただし、繰越し可能な期間は1年間であるため、繰越税額控除限度超過額が翌期の税額基準額(調整前法人税額×20%)を超える場合には、その超える部分の金額は控除することができなくなる。 このような事態に陥ることがないよう事前の事業計画において、税額控除により控除しきれるかどうかも検討しておく必要がある。 *  *  * 次回【第8回】では、建物附属設備についての選択ポイント及びその具体例を確認していく。 (了)

#No. 232(掲載号)
#アースタックス税理士法人
2017/08/24

相続空き家の特例 [一問一答] 【第8回】「被相続人居住用家屋及びその敷地等の範囲②(離れや倉庫などの建築物が未登記であった場合)」-相続空き家の特例の対象となる譲渡の範囲-

相続空き家の特例 [一問一答] 【第8回】 「被相続人居住用家屋及びその敷地等の範囲② (離れや倉庫などの建築物が未登記であった場合)」 -相続空き家の特例の対象となる譲渡の範囲-   税理士 大久保 昭佳   Q Xは、昨年2月に死亡した父親の居住用家屋(昭和56年5月31日以前に建築)とその敷地を相続により取得しました。 相続の開始の直前において、父親は1人暮らしをし、父親名義のその土地(200㎡)は、用途上不可分の関係にある2以上の建築物(父親登記名義の母屋:140㎡、未登記の離れ:40㎡、未登記の倉庫:20㎡)のある一団の土地でした。 Xは、耐震リフォームに伴って母屋を増築し、その床面積を160㎡とした上で、その土地と建築物の全てを売却しました。 この場合、「相続空き家の特例(措法35③)」の適用にあたって、被相続人居住用家屋の敷地に該当する部分の面積はいくらでしょうか。 A 被相続人居住用家屋の敷地に該当する部分の面積は、140㎡となります。 ●○●○解説○●○● 譲渡した土地等が、「被相続人居住用家屋の敷地の用に供されていた土地」に該当するかどうかは、社会通念に従い、その土地等が相続の開始の直前において被相続人居住用家屋と一体として利用されていた土地であったかどうかより判定することとされています。 この場合において、その相続の開始の直前において、その土地が用途上不可分の関係にある2以上の建築物のある一団の土地であった場合には、その土地のうち、次の算式で計算した面積に係る土地の部分に限られます。 なお、これらの建築物について、相続の時後に増築や取壊し等があった場合であっても、この算式による床面積按分の計算は、相続の開始の直前における現況の床面積によることとなります(措通35-13(被相続人居住用家屋の敷地等の判定等)。 (算式) (注1) 被相続人以外の者が相続の開始の直前において所有していた土地等も含まれます。 (注2) 被相続人以外の者が所有していた建築物も含まれます。 (注3) 被相続人から相続又は遺贈により取得した被相続人の居住の用に供されていた家屋の敷地の用に供されていた土地等の面積のうち、譲渡した土地等の面積となります。 なお、上記算式中の床面積は、「その母屋及び別棟の離れ、倉庫、蔵、車庫の登記の有無や所有権に関係なく、合計されます」(財務省HP「平成28年度税制改正の解説」153頁)。 したがって、それらの建築物の登記の有無に関係なく計算し、また、相続の時後に増築が行われた場合であっても、相続の開始の直前における現況の床面積に基づくことから、本事例における、被相続人居住用家屋の敷地に該当する部分の面積を計算すると、次のようになります。 (了)

#No. 232(掲載号)
#大久保 昭佳
2017/08/24

「税理士損害賠償請求」頻出事例に見る原因・予防策のポイント【事例53(相続税)】 「相続税の申告において同族会社の敷地の用に供している宅地につき「土地の無償返還に関する届出書」を提出せずに借地権を計上してしまった事例」

「税理士損害賠償請求」 頻出事例に見る 原因・予防策のポイント 【事例53(相続税)】   税理士 齋藤 和助     《基礎知識》 ◆貸宅地と借地権(財産評価基本通達25、27) Aが自己所有の宅地に借地権を設定してBに貸し付け、Bが宅地を利用している場合 ◆相当の地代(相当の地代通達1) 相続税法上、借地権の設定に際しその設定の対価として通常の権利金を支払っていない場合においても、通常の権利金に対応する地代を支払っているときには、地主は十分な経済的利益を受けているため、贈与税の課税関係は生じないこととされている。この地代を「相当の地代」といい、次の算式により計算する。 相当の地代の年額 = 自用地価額の過去3年間の平均額 × 6% ◆土地の無償返還に関する届出(法基通13-1-7) 法人が借地権の設定等により他人に土地を使用させた場合で、その借地権の設定等に係る契約書において将来借地人等がその土地を無償で返還することが定められている場合に、その後遅滞なくこれを届け出るもので、この届出を行っている場合には、権利金の認定課税は行われないこととなる。なお、この届出者は、土地所有者が個人である場合であっても提出することができる。 ◆土地の無償返還に関する届出書が提出されている場合(相当の地代通達5、8) 権利金等を支払わずに土地の賃貸借があった場合において、相当の地代を支払っていないときは、借地権の贈与があったものとみなされる。しかし、「土地の無償返還に関する届出書」を提出することにより、借地権の贈与がなかったものとして取り扱うことができる。 この場合の、それぞれの評価額は次のようになる。 なお、借地人(法人)の借地権の評価額は零であるが、当該法人の株式評価上、次の金額を純資産価額に算入する(使用貸借の場合には、この取扱いはない)。       (了)

#No. 232(掲載号)
#齋藤 和助
2017/08/24

国外財産・非居住者をめぐる税務Q&A 【第8回】「非居住者期間における各種保険料の取扱い」

国外財産・非居住者をめぐる税務Q&A 【第8回】 「非居住者期間における各種保険料の取扱い」   税理士 菅野 真美   - 質 問 - 私(現在、日本の非居住者)甲は、乙社(内国法人)の従業員ですが、今年から4年間の予定で海外駐在となります。給料は引き続き乙社から支払われます。 転勤後は、給料から所得税は差し引かれないはずですが、厚生年金保険料や健康保険料などは差し引かれるのでしょうか。 また、海外に駐在した場合の年金保険料について、日本でも保険料を支払い、現地国でも払う場合は、二重払いになりませんか。また、現地国のみで保険料を支払い、将来、帰国して、年金を受け取るときになって、現地国での支払期間を通算してもらえますか。   ◆ ◆ 解 説 ◆ ◆ ▷海外に転勤した場合の健康保険・雇用保険・介護保険の取扱い 従業員が海外に転勤した後も、内国法人から給与を支払われる場合、国外源泉所得となることから所得税は非課税となり、住民税についても、翌年以後の特別徴収分は1月1日現在日本にいないことから非課税となる。 しかし、給料から源泉徴収されるのは税金だけでなく、健康保険、厚生年金保険、介護保険、雇用保険等がある。 健康保険は常時5人以上の従業員が働いている会社・工場・商店・事務所などの事業所と、5人未満であってもすべての法人事業所は「適用事業所」となり、海外勤務となってもその適用事業所との雇用関係がある場合は被保険者となる。したがって、支給される給料から個人負担分が控除される。 海外で医療費が生じた場合は、いったん全額自費で支払い、後日、加入している健康保険組合に請求すると、健康保険組合等の負担部分が還付されることとなる。 雇用保険も健康保険と同様に、適用事業所との雇用関係が継続されているならば被保険者資格が継続され、給料から個人負担分が控除される。 ただし、介護保険は、日本国内に住所を有しなくなったときは適用が除外されるので注意が必要である。   ▷厚生年金保険料の支払いと社会保障協定 海外転勤者の厚生年金保険についても健康保険、雇用保険と同様に、適用事業所との雇用関係が継続されている場合は、適用対象となる。しかし、現地国においても厚生年金と同様の制度が設けられ加入しなければならない場合もあり、この場合、日本と現地国で保険料の二重払いの状況となる。 また、日本での年金の支払いをやめ、現地国だけで支払い、その後、帰国して、将来年金を受給するときに、保険料を支払った期間のうち、日本で支払わず、海外で支払った期間がある場合、その期間も通算して年金の額が算定できるかという問題がある。 このような問題を解決するため、日本は諸外国と「社会保障協定」を締結している(日本年金機構HPによると、平成29年8月現在、署名済み20ヶ国、発効済み17ヶ国(下図参照))。 (注) イギリス、韓国及びイタリアについては「保険料の二重負担防止」のみで「年金加入期間の通算」は行われない。   ▷「加入期間の通算」については注意が必要 社会保障協定発行済みの国に転勤になった場合で、海外勤務期間が5年以内の場合は、日本での厚生年金に継続して加入することになり、現地国での加入手続は不要となる。海外勤務期間が5年超の場合は、原則として、派遣される国の社会保障制度にのみ加入することとなる。これにより、日本と現地国での保険料の二重払いを避けることができる。 なお、年金については、二重払いの問題だけでなく、資格期間の通算の問題がある。年金を受け取るためには、一定期間保険料を支払わなければならない。この期間が従来は25年以上であったが、平成29年8月からは10年となる。 この10年の期間に、社会保障協定国(発行済み)で、年金加入期間通算が認められる国において年金制度に加入(日本の年金制度には未加入)していた期間がある場合は、日本の年金制度の加入期間とみなされることになる。 たとえば、上記のとおり、アメリカは日本と社会保障協定を締結し、加入期間の通算も認められていることから、アメリカでの加入期間を加えて、日本での年金の支給額が決定される。一方で、イギリスは日本と社会保障協定を締結しているが、保険料の二重負担防止のみで、加入期間の通算は認められていないことから、イギリスでの加入期間を加えて日本での年金支給額が決定されることはない。 なお、社会保障協定が結ばれていない国への転勤の場合は、日本での年金保険料の支払いと、現地国の制度における保険料の二重払いの可能性がある。たとえば、中国とは社会保障協定が結ばれていない。   ▷社会保険料控除の適用は? このように海外転勤により非居住者となった場合においても社会保険料の支払いは発生するが、非居住者の期間に支払った社会保険料は所得控除を受けることができない。 このため、たとえば、その従業員が、海外勤務期間中に自宅を貸し、不動産所得が生じたことから確定申告をしたとしても、社会保険料を控除して税額を計算することはできない。   (了)

#No. 232(掲載号)
#菅野 真美
2017/08/24

平成29年度税制改正における『連結納税制度』改正事項の解説 【第9回】「地方税率の改正時期の変更他」

平成29年度税制改正における 『連結納税制度』改正事項の解説 【第9回】 (最終回) 「地方税率の改正時期の変更他」   公認会計士・税理士 税理士法人トラスト 足立 好幸   [11] 地方税率の改正時期の変更 平成28年11月28日公布の「社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法の一部を改正する等の法律等の一部を改正する法律」により消費税率の10%への引上げ時期が平成31年10月1日に延期されたことに伴って、地方税率の改正についても実施時期が変更されている(社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための地方税法及び地方交付税法の一部を改正する法律等の一部を改正する法律)。 改正後の法人税、地方税の税率と税効果会計で適用される法定実効税率を示すこととする。 ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 以上のように、平成30年4月1日以後開始事業年度と平成31年10月1日以後開始事業年度について、合計の法定実効税率は30.62%で変わらないため、単体納税の税効果会計(繰延税金資産の計算)には影響は生じない。 一方、法人税及び地方法人税の法定実効税率と住民税の法定実効税率の内訳が変わるため、連結納税の税効果会計において、法人税及び地方法人税と住民税で将来減算一時差異等の回収可能額が異なる場合、計算される繰延税金資産についても異なることとなる。   [12] 組織再編税制に係る改正 連結納税における組織再編税制の取扱いについては、次に掲げる条文以外、単体納税と同じ条文が適用され、単体納税と同じ取扱いになる(法法81の3)。 したがって、組織再編税制の適用範囲、適格要件、適格・非適格の譲渡資産・保有資産の取扱い、株主課税(株式譲渡損益とみなし配当)などは、連結納税を採用している場合も、単体納税と同じ取扱いとなる。 一方、連結納税特有の取扱いのうち、次に掲げるものについて、組織再編税制の取扱いが影響を与える。 そして、平成29年度税制改正のうち、組織再編税制に係るものについては、以下の改正項目があるが、【第2回】「スクイーズアウトにおける特定連結子法人の範囲の拡大」で解説した改正内容を除いて、連結納税における取扱いは単体納税と同じ取扱いになる。 そのため、具体的な改正内容は、組織再編税制に係る他の改正記事を参照してほしい。   [13] タックス・ヘイブン税制の総合的見直し 連結法人に係る外国子会社合算税制は、租税特別措置法第68条の90で定められているが、その内容は、租税特別措置法第66条の6で定める内国法人(単体申告法人)に係る外国子会社合算税制と同じである。 そして、平成29年度税制改正では、BEPS報告を踏まえて、外国関係会社の平成30年4月1日以後に開始する事業年度について、内国法人の外国子会社合算税制(措法66の6)について、抜本的な改正が行われているが、連結法人に係る外国子会社合算税制(措法68の90)についても同じ内容の改正が行われている(平成29年所法等改正法附則1五、85①②)。 したがって、具体的な改正内容は、外国子会社合算税制に係る他の改正記事を参照してほしい。 なお、単体申告法人と異なり、連結親法人がまとめて、各連結法人に係る次に掲げる外国関係会社の財務諸表等を連結確定申告書に添付しなければならない(措法68の90⑪、66の6⑪)。   (連載了)

#No. 232(掲載号)
#足立 好幸
2017/08/24

収益認識会計基準(案)を学ぶ 【第1回】「範囲と定義」

収益認識会計基準(案)を学ぶ 【第1回】 「範囲と定義」   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 本シリーズでは、平成29年7月20日から意見募集が開始された「収益認識に関する会計基準(案)」(以下「収益認識会計基準(案)」という)及び「収益認識に関する会計基準の適用指針(案)」(以下「収益認識適用指針(案)」という)についての解説を行う。 収益認識会計基準(案)は、わが国における収益認識に関する包括的な会計基準の開発として公表されたものである。意見募集は平成29年10月20日までである。 今回は、収益認識会計基準(案)における「範囲と定義」について解説する。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 範囲 1 収益認識会計基準(案)の対象 収益認識会計基準(案)は、顧客との契約から生じる収益に関する会計処理及び開示に適用される(3項)。 次の事項に注意する(95項)。 次の取引は収益認識会計基準(案)の適用範囲から除かれている(3項、96項~100項)。 収益認識会計基準(案)の適用範囲については、次の事項にも注意する(101項~102項)。 なお、参考までに記載すると、固定資産の売却に関しては、平成16年2月13日に、企業会計基準委員会から「不動産の売却に係る会計処理に関する論点の整理」が公表されており、不動産の売却の会計処理の考え方などが述べられている。 2 留意点 収益認識会計基準(案)は「企業会計原則」に優先することから(1項)、今後は、実現主義の原則(「企業会計原則」 第二 損益計算書原則 三 B)とは異なる考え方で会計処理及び開示を行うことになると考えられるので、収益認識会計基準(案)の全体像を理解することが必要になると考えられる。 収益認識会計基準(案)の開発に当たっての方針は次のとおりであり(91項~94項)、その適用に当たっては、下記(2)の重要性等に関する代替的な取扱い(収益認識適用指針(案)91項から102項)を用いるかどうかなどを含めて、実務上の適用方法を早めに検討することが考えられる。 〈方針(1)〉 ▷具体的な規定 ・収益認識会計基準(案)の13項から76項 ・収益認識適用指針(案)の4項から88項及び103項 〈方針(2)〉 ▷具体的な規定 ・収益認識適用指針(案)の91項から102項(次の事項) 〈方針(3)〉 3 廃止される会計基準等 収益認識会計基準(案)等が会計基準等として確定した場合、次の会計基準等は廃止される予定である(86項、90項)。 このため、従来、これらの会計基準等を適用している会社は、収益認識会計基準(案)に従って会計処理等をする場合の影響について検討することが必要と考えられる。   Ⅲ 定義 収益認識会計基準(案)は、次の定義を設けている(4項~12項)。 契約、顧客、債権、契約資産及び契約負債など重要な定義が規定されている。 『契約』 【定義】 法的な強制力のある権利及び義務を生じさせる複数の当事者間における取決めをいう。 『顧客』 【定義】 対価と交換に企業の通常の営業活動により生じたアウトプットである財又はサービスを得るために当該企業と契約した当事者をいう。 『履行義務』 【定義】 顧客との契約において、次の①又は②のいずれかを顧客に移転する約束をいう。 ① 別個の財又はサービス(あるいは別個の財又はサービスの束) ② 一連の別個の財又はサービス(特性が実質的に同じであり、顧客への移転のパターンが同じである複数の財又はサービス) 『取引価格』 【定義】 財又はサービスの顧客への移転と交換に企業が権利を得ると見込む対価の額(ただし、第三者のために回収する額を除く)をいう。 (※1) 収益認識適用指針(案)の「Ⅲ.我が国に特有な取引等についての設例」の「[設例28]消費税等」では、その前提条件において、「売上に係る消費税等は、第三者である国や都道府県に納付するため、第三者に支払うために顧客から回収する金額に該当することから、取引価格には含まれない(会計基準第44項)」と記載されている。 (※2) 第348回企業会計基準委員会(2016年11月4日)の「審議事項(3)-7」の11項では、第三者に代わって回収する金額に該当するか否かの判断に迷う可能性がある事項として、次のものが検討されている。 ① 消費税等(消費税及び地方消費税) ② 電気事業における再生可能エネルギー発電促進賦課金 ③ クレジットカード会社に支払う手数料 ④ 小型家電等のリサイクル費用 ⑤ パートナー企業と収益の配分割合を取り決めている契約 ⑥ 旅行業界における燃油サーチャージや空港利用税等 ⑦ 航空業界における共同運航に関する収益 ①消費税等については、国内において広く見られる重要な取引であるため、我が国の実務における会計処理の多様性を軽減する観点から、今後検討すべき課題の候補とすることが考えられるがどうかとする一方、②から⑦の「判断の困難さがあるケース」については、いずれも「審議事項(3)-7」の14項に記載の趣旨に当たるほどの重要性はないと考えられるがどうかと述べられている。 『独立販売価格』 【定義】 財又はサービスを独立して企業が顧客に販売する場合の価格をいう。 『契約資産』 【定義】 企業が顧客に移転した財又はサービスと交換に受け取る対価に対する企業の権利(ただし、債権を除く)をいう。 (※) 契約資産及び契約負債に関する会計処理については、収益認識適用指針(案)の設例を参照していただきたい。 『契約負債』 【定義】 財又はサービスを顧客に移転する企業の義務に対して、企業が顧客から対価を受け取ったもの又は対価を受け取る期限が到来しているものをいう。 『債権』 【定義】 企業が顧客に移転した財又はサービスと交換に受け取る対価に対する企業の権利のうち無条件のもの(すなわち、対価に対する法的な請求権)をいう。 対価に対する企業の権利が無条件である(収益認識会計基準(案)11項)とは、当該対価を受け取る期限が到来する前に必要となるのが時の経過のみであるものをいう(129項)。 『工事契約』 【定義】 仕事の完成に対して対価が支払われる請負契約のうち、土木、建築、造船や一定の機械装置の製造等、基本的な仕様や作業内容を顧客の指図に基づいて行うものをいう。 「受注制作のソフトウェア」とは、契約の形式にかかわらず、特定のユーザー向けに制作され、提供されるソフトウェアをいう。 (※) 「工事契約に関する会計基準」(企業会計基準第15号)を踏襲している(104項)。 (了)

#No. 232(掲載号)
#阿部 光成
2017/08/24

税理士が知っておきたい[認知症]と相続問題〔Q&A編〕 【第16回】「実務の現場における判断能力の判定方法(その2)」

税理士が知っておきたい [認知症]と相続問題 〔Q&A編〕 【第16回】 「実務の現場における判断能力の判定方法(その2)」   クレド法律事務所 駒澤大学法科大学院非常勤講師 弁護士 栗田 祐太郎   前回に続いて、実際に実務の現場で関係者の判断能力を判定する方法、3ステップ方式について解説する。3ステップ方式の概要は次の通りである。 今回は第2ステップを解説したい。   ▷第2ステップ:医師の手を借りた確認を行う  1 第1ステップの結果をふまえた振り分け 前回解説したとおり、第1ステップ(予備面談を行う)を実施した結果、最も判断に迷うのが、(ハ)簡単な質問は理解し、何とか答えられるが、少し込み入った質問となると適切な回答ができない場合である。 このような場合、①聞き手の理解のペースに合わせて、ゆっくり、丁寧に話をしていけば、こちらが言うことをおおよそ理解できるという場合も多い。そこで、このようにゆっくり丁寧に話をしていくことで本人とのコミュニケーションが成立し、話の内容もほぼ理解できるという感触が得られた場合には、次の第3ステップへ進んでよいだろう。 他方、②ゆっくり丁寧に話をしても、どうしても会話が噛み合わないところが部分的にあり、本人がどこまで理解できているのか判断しかねるという場合も中にはありうる。 このような場合には、医師の手を借りなければ的確な判断能力の判定ができないため、これから説明する第2ステップへ進むことになる。 2 医師の手を借りる前に確認すべきこと 第2ステップは、医師の手を借りて判断能力を確認していくことになるが、すぐに医師の協力を仰ぐのではなく、事前に確認すべき事項がある。 それは、高齢者本人の判断能力について、これまでに何らかの形で医師の診断がなされていないかを確認するということである。 この点、「判断能力・意思能力の判定にあたって証拠となり得るもの」については、既に解説編【第5回】で説明した。そこに掲載されているような検査結果や医学的資料が入手できれば、それらを参考にすることができる。 これ以外にも、例えば、高齢者本人が要介護状態となっており介護保険の適用を受けている場合には、介護保険の申請時に作成されている「主治医意見書」等における心身の状況の記載が参考になる場合がある。 これらにおいて、過去の時点で既に「判断能力に問題がある」という趣旨の診断が下されているならば、多くの場合、認知機能の低下は年々進行していくという一般論を考え合わせると、「現時点の判断能力はない」という方向で処理していくべきであろう。 この点、法曹実務家向けの一般的な解説書の中には、判断能力に疑義があるケースにおいては、どのような場合であっても医師の診断を得ることを勧めているものもある。たしかに、それが最も確実な方法であるとは言えるかもしれない。 しかし、医師による診断・意見を得るには費用もかかるし、何より時間を要する。その先にある契約締結のタイミングまで考えると、判断能力そのものの判定に時間がかかりすぎることは現実的ではない。 そこで、特に医師の手を借りなくとも「判断能力なし」として判断できるようなケースでは、わざわざ医師による診断等を経ないでも「判断能力がない」ことの判定がすみやかにできるように、上記のように工夫すべきであろう。 3 どの医師に、どのような依頼をすればよいか? 過去の検査結果や医師による診断が入手できず、医学的資料が参照できない場合や、これらの資料を参照してもどうしても判定ができないような場合には、いよいよ医師の手を借りることになる。 この点、このように判断能力について疑義が生じているような場合には、通常は、既に通院して認知症の治療を受けていたり、普段からかかりつけの主治医がいることが多い。 そこで、本人の家族に依頼して、現時点での判断能力の有無や心身の状況等につき、主治医の診断書を取得してもらうのがよいであろう。 この場合、書式としては、成年後見申立用のものと同形式の診断書作成を依頼するのがわかりやすい。なお、最高裁判所事務総局家庭局による「成年後見制度における診断書作成の手引」では、p8以下に診断書の様式や記載例が掲載されており参考になる。 仮にかかりつけ医がいない場合、あるいは、かかりつけ医が診断書の作成を固辞するような場合(診療科目の違い等により、判断能力に関する診断書を作成することに難色を示す医師もいる)には、精神科もしくは神経内科を専門としている医師を探し、診察と診断書の作成を依頼するのがよいであろう。 このようにして診断書を取得した上で、記載内容について確認したい点があったり、契約締結のための準備として「本人の判断能力が回復している時間帯やタイミングがあるのか。あるとすれば具体的にいつか」等につき突っ込んだアドバイスを受けたい場合には、診断書を作成した医師に面談あるいは電話にて直接確認していくことになる。 4 第2ステップの小括 このようにして、第2ステップでは、医師の意見を参考にしたうえで、①本人が現時点において判断能力を欠く状態にある、もしくは、判断能力が著しく不十分な状態であると判定される場合には、今回の取引を取り止めにするということになる。 他方、②一般的見地から最低限の判断能力は兼ね備わっていると判定される場合には、今回の契約内容につき具体的に確認していく第3ステップに進むことになる。 (次回に続く)

#No. 232(掲載号)
#栗田 祐太郎
2017/08/24

法務・会計・税務からみた循環取引と実務対応 【第6回】「循環取引の実務対応②(初動対応後)」

法務・会計・税務からみた循環取引と実務対応 【第6回】 (最終回) 「循環取引の実務対応②(初動対応後)」   弁護士・公認不正検査士 下尾 裕   1 初動対応後の実務対応に関する留意点 初動対応後の検討事項については、一般の企業不祥事(特に会計不正案件)と大きく変わることはないが、検討すべき事項を列挙すると以下のとおりである。   2 再発防止策の策定 企業においては、社内調査等によって判明した循環取引発生の背景事情等を踏まえ、その原因等を分析した上、適切な再発防止策を策定する必要がある。 再発防止策の策定は、企業の将来的な損害を防止するのは勿論のこと、金融機関等の債権者を含むステークホルダーとの関係において信用回復を図るとともに、特に上場企業等においては、内部統制システムがなお有効に機能していることを明らかにする意味合いがあり、いずれにしても非常に重要である。 【第1回】で述べたとおり、循環取引に関しては、不正の兆候が表れにくいという特徴はあるものの、循環取引を可及的に未然に防止する又は早期に発見するという観点からは、各取引における実需(目的物の完成又は引渡し等)の有無を如何に確認するか、また、債権額が雪だるま式に膨らんでくるという循環取引の特徴を踏まえ、取引先との関係で如何に与信枠の管理等を行うかが1つの視点になると思われる。   3 関与した役員・従業員等に対する責任追及・社内処分 社内調査等を踏まえ循環取引における自社の役員・従業員の関与の有無及び程度、さらには首謀者が誰かということなどが判明した場合には、関与した役員・従業員について責任追及・社内処分を行うかどうかを検討する必要がある。 (1) 責任追及 企業から関与した役員・従業員に対する責任追及としては、任務懈怠又は不法行為を理由として損害賠償請求を行うことが考えられる。 特に、役員のうち取締役については、内部統制システム構築義務(会社がその事業内容や規模に応じて適切にリスクを管理できるような体制を構築する義務、最高裁平成21年7月9日判決等)又は監視・監督義務(さらには不正調査実施義務)、監査役については、内部統制システム構築に係る助言等を行う義務(大阪高裁平成27年5月21日判決)又は適切な監査を行うなどの義務をそれぞれ負っていることから、循環取引に積極的に関与していた場合のみならず、循環取引を防止又は早期発見できる体制を構築していなかった(監査役についてはそれに関する助言等を行っていなかった)場合においても損害賠償責任を負うことになる。 (2) 社内処分 まず、関与した役員については、仮に任務懈怠があるとまでは認定できない場合でも、ステークホルダーとの関係で、道義的責任等を明確にする趣旨で月額報酬の減額ないし自主返還等を行うかどうかを検討する必要がある。 次に、関与した従業員に対する社内処分としては、人事権行使の範疇で行われる役職の引下げ及び懲戒権の行使として行われる職能資格の引下げ、譴責・減給・解雇等が検討対象となる。 関与した従業員に対していかなる社内処分を行うかは、あくまで当該対象者の関与の程度等を踏まえた総合判断となる。この点、人事権行使については企業に広い裁量が認められているのに対し、懲戒権の行使については、就業規則に定める懲戒事由への該当性が厳格に問題となることから、特に懲戒権を行使する場面においては事後的にその相当性が争われるリスクを踏まえ、慎重に判断する必要がある。   4 刑事告訴 故意に循環取引に関与していた役員等、さらには社外の首謀者については、(特別)背任罪(企業における職務に違反して、企業に損害を与えたという犯罪)、詐欺罪等による刑事告訴を行うかどうかを検討する必要がある。 企業が刑事告訴を行うかどうかの判断にあたっては、犯行態様の悪質性、損害額の程度、被害回復の有無及び程度、社内モラル維持の必要性の程度、社外への影響の程度、犯罪を立証できる資料の有無等を踏まえた総合考慮によることになる。 刑事告訴については、特にその対象が自社の役員等である場合には抑制的になる傾向があるように見受けられるが、刑事告訴、さらにはプレスリリース等をしないままに、事後に企業が循環取引に関与していたことが明らかになった場合には、企業の信用に深刻なダメージを与える可能性があることから、慎重な判断が必要になる。   5 民事上の債権回収 (1) 循環取引に基づく債権行使 前回述べたとおり、循環取引発覚時には、企業の循環取引に基づく債権(売掛金)が未回収になるケースがあることから、特にこれに対応する債務(買掛金)を支払済である場面においては、未回収債権を請求するかどうかの検討が必要になる。 循環取引に基づく債権行使に関する法的整理については、【第2回】において詳述したとおりであり、社内調査等の結果を踏まえ、当該企業の勝訴可能性等を事前に見極めた上で、請求の当否を判断すべきである。 また、別の視点として、企業が当該債権を回収するため民事訴訟を提起した場合、権利行使する原告側が循環取引であることを認識していたかどうかが1つの争点となり、その結果、企業側の理解に反して、裁判所より、原告である企業側が循環取引であることを認識していたと認定されるリスクがあることから、この場合のレピュテーションリスクも十分に考慮に入れる必要があろう。 (2) 首謀者に対する損害賠償請求 企業としては、不法行為を根拠として、循環取引の首謀者に対する損害賠償請求を行うことも考えられるが、現実問題としては、循環取引発覚時には首謀者には資力がないことが多く、回収は現実的ではない場合が多い。   6 (上場企業等)訂正報告書及び改善報告書の提出等 【第3回】及び【第5回】で述べたとおり、上場企業等においては、不適切な会計処理を前提に株主総会における決算承認等、適時開示又は有価証券報告書等の提出が行われることになることから、速やかに会計処理を修正再表示した上、次の株主総会における過年度決算報告等の処理を行うとともに、並行して、既に提出した有価証券報告書等との関係で訂正報告書、また、証券取引所との関係では、適時開示、さらには改善報告書の提出(東証上場規程第502条第1項第1号)等の対応を行う必要がある。 なお、循環取引の発覚が企業の事業年度末に近接した時期であった場合には、不適切会計処理を是正した上での会社法上の計算書類等の作成が間に合わず、定時株主総会の延期又は続行(会社法第317条)等を検討する必要が生じるとともに、有価証券報告書等の提出遅延回避のための対応が必要になることに留意が必要である。   7 過年度の税務処理に関する検討 企業においては、会計上の遡及修正方式に沿って、過年度における法人税及び消費税を再度計算した上、その結果に応じて更正の請求等の対応を検討する必要がある。 詳細については、【第4回】を参照されたい。   (連載了)

#No. 232(掲載号)
#下尾 裕
2017/08/24

〔検証〕適時開示からみた企業実態 【事例18】株式会社大戸屋ホールディングス 「第34回定時株主総会における議案の一部否決に関するお知らせ」(2017.6.29)

〔検証〕 適時開示からみた企業実態 【事例18】 株式会社大戸屋ホールディングス 「第34回定時株主総会における議案の一部否決に関するお知らせ」 (2017.6.29)   事業創造大学院大学 准教授 鈴木 広樹   1 今回の適時開示 今回取り上げる適時開示は、株式会社大戸屋ホールディングス(以下「大戸屋」という)が平成29年6月29日に開示した「第34回定時株主総会における議案の一部否決に関するお知らせ」である。 同社は、平成29年5月10日、従業員等に対してストックオプションを付与するという内容の「ストックオプション(新株予約権)の付与に関するお知らせ」を開示していた。そのストックオプションの付与が、平成29年6月28日開催の定時株主総会において否決されたのである(翌日の平成29年6月29日ではなく平成29年6月28日中に開示すべきであったが)。   2 可決された議案 大戸屋は、平成29年5月10日、「ストックオプション(新株予約権)の付与に関するお知らせ」とともに「創業者功労金の贈呈に伴う特別損失の計上に関するお知らせ」も開示している。創業者功労金として2億円を支払うという内容だが、その決定理由として次のような記載がある。 同社の創業者の「功績と在任中の労に報いる」ことが目的だが、「故三森久実氏」とあるとおり、その創業者は故人である。この創業者功労金は、創業者本人に対してではなく、創業者の遺族に対して支払われるものなのである。 この創業者功労金の支払いも、平成29年6月28日開催の定時株主総会に付議されたが、こちらは可決された。   3 鍵を握っていたのは なぜ、創業者本人ではなくその遺族に対する創業者功労金の支払いという、疑問符が付きそうな議案が可決され、従業員等に対するストックオプションの付与が否決されたのだろうか。 鍵を握っていたのは、おそらく創業者の遺族だろう。 創業者の遺族は、大戸屋の株式を約2割保有している。約2割しか保有していないのであれば、その株主総会での影響力は限定的に見えるが、そうとは限らない。株主総会に出席した株主の数によって変わってくる。 株主総会における普通決議は、総議決権の過半数を有する株主が出席した上で、出席株主の過半数の議決権により、特別決議は、総議決権の過半数を有する株主が出席した上で、出席株主の3分の2以上の議決権により可決される。 今回の株主総会において、創業者功労金の支払いは普通決議が、ストックオプションの付与は特別決議が必要な議案だった。出席株主の数によっては、創業者の遺族が、創業者功労金の支払いを可決に、ストックオプションの付与を否決に導く上で強い影響力を持ち得たのである。   4 なぜストックオプションの付与に反対したのか 創業者の遺族が、自分達に対する創業者功労金の支払いに賛成するのは容易に理解できる。しかし、ストックオプションの付与に反対する理由はどうだろうか。 ストックオプションは、経営者や従業員と株主の利害を一致させることを目的とするものである。「ストックオプション(新株予約権)の付与に関するお知らせ」には、付与理由として次のような記載がある。従業員等のやる気が高まり、会社の業績そして株価が向上すれば、従業員等と株主の双方に利益がもたらされることになる。 詳細は、大戸屋が平成28年10月3日に発表した第三者委員会調査報告書を参照していただきたいが、創業者の遺族は、同社の経営に関与したいという意向を持っていた。ストックオプションが付与された場合、その行使により株式が発行され、自分達の議決権比率が低下し、同社への影響力が小さくなってしまう可能性がある。それを懸念して、ストックオプションの付与に反対したという推測は成り立つだろう。 もとより、創業者の遺族だからという理由だけで上場会社の経営に関与することなど、認められるはずがない。ましてや、もしも従業員への配慮を忘れ、自分達の利益のためだけにストックオプションの付与を否決に導いたのならば、絶対に認められないだろう。そうだとしたら、同社の株式を即刻売却し、同社との関係を一切絶つべきだろう。 (了)

#No. 232(掲載号)
#鈴木 広樹
2017/08/24

プロフェッションジャーナル No.231が公開されました!~今週のお薦め記事~

2017年8月17日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.231を公開! プロフェッションジャーナルのリーフレットは 全国のTAC校舎で配布しています! -「イケプロが実践するPJの活用術」「第一線で活躍するプロフェッションからPJに寄せられた声」を掲載!-   - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。

#Profession Journal 編集部
2017/08/17
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