山本守之の法人税“一刀両断” 【第25回】「租税法の解釈②」-通達の読み方とその問題点(貸倒損失を事例として)-
筆者:山本 守之
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山本守之の
法人税 “一刀両断”
【第25回】
「租税法の解釈②」
-通達の読み方とその問題点(貸倒損失を事例として)-
税理士 山本 守之
1 貸倒れの法律規定
法人税法第22条第3項は所得金額の計算上損金の額に算入すべき金額を次のように規定しています。
(1) 当該事業年度の収益に係る売上原価、完成工事原価、その他これらに準ずる原価の額
(2) (1)に掲げるもののほか、当該事業年度の販売費、一般管理費その他の費用(償却費以外の費用で当該事業年度終了の日までに債務の確定しないものを除く。)の額
(3) 当該事業年度の損失の額で資本等取引以外の取引に係るものの額
「貸倒損失」は上記のうち(3)の損失の額に該当します。
損失の額は、元来、収益との対応にも期間との対応にもなじまないものといえます。その点から考える限りは、収益を得るために直接必要なものであったといえない面もあります。
しかし、損失の額は、法人の生み出した剰余を減殺しており、所得計算上のマイナス要素であることは明らかで、しかも、法人は、その活動の全てを通じて剰余を生み出そうとしており、その活動の中で剰余を減殺するものが存在する限り、それが収益を生むために直接必要であったか否かを問わず損金の額に算入されるべきです。
このような考え方から、その事業年度に発生した損失の額は、所得の金額の計算上の損金の額に算入します。
(注) 純資産が減少しても法人の意図した事業に関係のない支出は、ここにいう損失の額には含まれず、利益の処分とするのであるという考え方もあります。
損失の額は、発生の事実によってこれをとらえるから、法人税法においては、臨時巨額の損失を繰り延べることはしません。
「資本等取引以外の取引に係る」と規定されているのは、剰余の減殺される原因が対資本等取引によるものである場合は、資本等取引として資本の払戻しと考えられますので、所得金額の計算上は損金の額に算入しないのです。
なお、損失の額とは、例えば災害による資産の減損失、貸倒れによる債権の喪失、消滅時効完成による債権の消滅等が考えられますが、資産の譲渡損失はこれには含まれません。資産の譲渡対価は益金の額に算入され、譲渡原価が損金の額に算入されます。
2 貸倒れの通達規定
「貸倒損失とは何か」については、法令は全く規定しておらず、法人税基本通達9-6-1~3に定めているため、課税要件法定主義に反するのではないかという疑問が生じます。
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連載目次
山本守之の法人税“一刀両断”
▷2018年(第43回~54回)
▷2017年(第31回~42回)
▷2016年(第18回~30回)
- 【第18回】 実効税率はどのような経過で引き下げられたか
- 【第19回】 消費税の軽減税率を検証する
- 【第20回】 寄附金の課税要件を考える
- 【第21回】 土地と共に取得してから1年以内に取り壊した建物
- 【第22回】 訴訟のわかれ道~認知症と損益通算
- 【第23回】 税執行における洒落
- 【第24回】 租税法の解釈①-租税法律主義とその問題点-
- 【第25回】 租税法の解釈②-通達の読み方とその問題点(貸倒損失を事例として)-
- 【第26回】 租税法の解釈③-税務形式基準と事実認定-
- 【第27回】 課税要件法定主義を考える
- 【第28回】 売り上げの計上時期はどうなっているか
- 【第29回】 取引別にみた収益の認識基準①
- 【第30回】 取引別にみた収益の認識基準②
▷2015年(第7回~17回)
筆者紹介
山本 守之
(やまもと・もりゆき)
税理士。現在、日本税務会計学会顧問、租税訴訟学会副会長(研究・提言担当)、税務会計研究学会理事、日本租税理論学会理事を務め、全国各地において講演活動を行うとともに、千葉商科大学大学院(政策研究科、博士課程)でプロジェクト・アドバイザー(専門分野の高度な学術研究、高度な実務経験を持つ有識者)として租税政策論の教鞭をとっている。研究のためOECD、EU、海外諸国の財務省、国税庁等を約30年にわたり歴訪。2020年11月29日、逝去。
【著書】
・『時事税談-人間の感性から税をみつめる』(清文社)
・『役員給与税制の問題点-規定・判例・執行面からの検討』(中央経済社)
・『検証 税法上の不確定概念 (新版)』(中央経済社)
・『裁決事例(全部取消)による役員給与・寄附金・交際費・貸倒れ・資本的支出と修繕費』(財経詳報社)
・『法人税申告の実務全書』監修(日本実業出版社)
・『法人税の理論と実務』(中央経済社)
・『体系法人税法』(税務経理協会)
・『税金力-時代とともに「税」を読む』(中央経済社)
・『租税法の基礎理論』(税務経理協会)
他、多数
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