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経理担当者のためのベーシック会計Q&A 【第97回】外貨建取引⑥「在外支店の換算」

経理担当者のための ベーシック会計Q&A 【第97回】 外貨建取引⑥ 「在外支店の換算」   仰星監査法人 公認会計士 上村 治   〈事例による解説〉 〈会計処理〉 原則的処理による支店財務諸表の換算結果は以下のようになります。 【貸借対照表】 (※1) 円建金額の貸借差額 24,000+36,000+16,500+42,000-100,000=18,500 【損益計算書】 (※2) 貸借対照表で計算された当期純利益 (※3) 円建金額の貸借差額 22,000+5,250+18,500-34,500=11,250   〈会計処理の解説〉 1 在外支店の換算手順 在外支店財務諸表の換算の手順は以下のとおりです。 2 原則的換算方法 在外支店における外貨建取引については、原則として、本店と同様に処理します(外貨基準二)。 すなわち、取引発生時には発生時の為替レートで換算し(外貨基準一、1.)、決算時の処理として外国通貨や外貨建金銭債権債務については決算時の為替レートで換算替えを行います(外貨基準一、2.(1))。 事例の貸借対照表項目の換算として、預金や売掛金は決算時の為替レートで換算します。その他の棚卸資産、固定資産、本店勘定は取引発生時の為替レートで換算します。これらの換算結果の貸借差額をもって当期純利益を計算します。 次に損益計算書の換算としては、売上高は取引発生時の為替レート、売上原価は棚卸資産の購入時の為替レート、減価償却費は固定資産の購入時の為替レートで換算します。当期純利益は貸借対照表の貸借差額で計算されており、損益計算書項目で生じる貸借差額は為替差損益とします。 3 換算方法の特例 原則的換算方法では、取引発生時の為替レートで換算することを基本としており、在外支店の取引のほとんどすべてについて、取引時の為替レートを把握しておくことが必要になり、実務的に煩雑です。そのため、以下のような換算の特例が認められています。 ① 収益及び費用の換算の特例 収益及び費用(収益性負債の収益化額及び費用性資産の費用化額を除く)の換算については、期中平均為替レートによることができます(外貨基準二、1.)。 ② 外貨表示財務諸表項目の換算の特例 在外支店の外国通貨で表示された財務諸表項目の換算にあたり、非貨幣性項目の額に重要性がない場合には、すべての貸借対照表項目(支店における本店勘定等を除く)について決算時の為替レートによる円換算額を付する方法を適用することができます。この場合においては、損益項目についても決算時の為替レートによることが認められています(外貨基準二、2.)。 【在外支店の換算方法のまとめ】 *   *   * 次回は、外貨建取引に関する会計処理のうち、在外子会社の換算について解説します。 (了)

#No. 140(掲載号)
#上村 治
2015/10/15

[平成27年9月30日施行]改正労働者派遣法のポイント 【第3回】「雇用安定措置の義務化・キャリアアップ措置の新設」

[平成27年9月30日施行] 改正労働者派遣法のポイント 【第3回】 「雇用安定措置の義務化・キャリアアップ措置の新設」   特定社会保険労務士 岩楯 めぐみ   派遣元が雇用し派遣先が使用する労働者派遣では、「雇用」と「使用」が分離していることから、雇用の安定やキャリアアップの形成が図られにくいという問題がある。そこで、今回の改正では雇用安定措置が強化され、また、キャリアアップ措置が付加された。 第3回は、義務化された「雇用安定措置」と新設された「キャリアアップ措置」についてみていく。   1 雇用安定措置の義務化 改正前も、「派遣元」に対して、有期雇用の派遣労働者等を対象に雇用安定措置を講ずることが努力義務とされてきたが、改正後は、一段進んで雇用安定措置を講ずることが義務化されている。 対象となる派遣労働者、講ずべき雇用安定措置等は次の通りとなっている。 (1) 対象となる派遣労働者 雇用安定措置の義務化の対象となる派遣労働者は、次のいずれにも該当する者となる。 (※) 訂正のお知らせ 2016/2/19 上記(※)部分につきまして、「3年以上」は「3年」の誤りでした。お詫びの上、訂正させていただきます。なお、本稿において以下同様です。 なお、派遣就業終了日の前日までに、派遣元は派遣労働者から就業の希望を聴取する必要がある。 また、「3年以上」従事する見込みの考え方は、次の例示となり、派遣元の主観的な意思ではなく、契約期間という客観的な指標により判断することとされている。 (2) 4つの雇用安定措置 対象となる派遣労働者について派遣元が講じなければならない雇用安定措置は、次の4つのいずれかの措置となる。 なお、上記措置を講ずるにあたっては、次の点にも注意しなければならない。 (3) 事業報告 派遣元は、年に1回求められる事業報告の中で、雇用安定措置の実施状況を報告しなければならず、これにより雇用安定措置の履行確保を図るとされている。 なお、派遣元が雇用安定措置の義務を逃れるために意図的に派遣労働者の派遣期間を3年未満とすることは、雇用安定措置の趣旨に反する脱法的な運用であり、義務違反と同視されるものとして行政指導の対象になる。また、繰り返し指導を行っても改善されない場合は、労働者派遣事業の許可の更新が行われなくなるため注意が必要だ。 (4) 経過措置 派遣元に対する雇用安定措置の義務化には経過措置が設けられており、施行日(平成27年9月30日)以後に“締結”された労働者派遣契約によって行われる労働者派遣を対象とするとされている。 よって、施行日(平成27年9月30日)前の期間は通算されず、施行日(平成27年9月30日)以後に締結された労働者派遣契約の始期を起算日として3年以上従事する見込みがある者が雇用安定措置の義務化の対象となる。 (5) 努力義務 今回の改正では、派遣元に、前述の雇用安定措置を“努力義務”としても課している。その対象となる派遣労働者は、次のいずれかに該当する者である。 (6) 派遣先に求められる措置 派遣元に求められる雇用安定措置に関連して、「派遣先」には次の措置が求められている。なお、下表の「通常の労働者」とある場合はいわゆる“正社員”を指し、「労働者」とある場合は正社員に限らず契約社員やパート等も含めた雇用関係にあるすべての労働者を指す。 (※) 雇用安定措置の義務化と同様に経過措置が設けられている。   2 キャリアアップ措置の新設 派遣労働者のキャリアアップを図るため、「派遣元」に新しく求められる「キャリアアップ措置」は、次の2つとなる。 なお、派遣事業の許可基準に「派遣労働者のキャリア形成支援制度を有すること」が追加され、キャリアコンサルティングの相談窓口の設置や、教育訓練の時期・頻度・時間数等の基準が定められたため、改正後は、派遣元に派遣労働者のキャリアアップを図る体制があることが派遣事業を実施する上での前提となる。また、年に1回求められる事業報告の中で、キャリアアップ措置の取組みについて報告することが求められる。 *   *   * 以上、雇用安定措置とキャリアアップ措置について確認したが、両措置は派遣労働者にとって重要な措置であり、また、派遣事業の許可基準に関わることでもあるため、派遣元においては実際の運用を踏まえた体制整備が必要となり、実施すべき事項・期日を整理した上で、早めの対応が求められる。 (了)

#No. 140(掲載号)
#岩楯 めぐみ
2015/10/15

社外取締役の教科書 【第9回】「社外取締役としての法的責任(その1)」

社外取締役の教科書 【第9回】 「社外取締役としての法的責任(その1)」   クレド法律事務所 駒澤大学法科大学院非常勤講師 弁護士 栗田 祐太郎   1 社外取締役が会社経営一般に対して負う法的責任 今回より新たなテーマ、「社外取締役としての法的責任」について説明したい。 既に【第3回】において、会社と取締役との利害関係が対立する場面があること、その場合には、取締役は会社の利益を優先しなければならないこと(忠実義務)について説明した。あわせて、会社法が規定する典型的な利害対立の場面についても紹介している。 今回は、社外取締役が、会社経営一般についていかなる法的責任を負うのか、について説明することとしたい。   2 善管注意義務から派生する法的責任の全体像 取締役は、会社から経営の委任を受けた「受任者」として、いわゆる「善管注意義務」(善良なる管理者としての注意義務。これを敷衍すれば、「会社経営者として、通常期待される内容について、適切に実行しなければならない義務」の意味である)を負う立場にある。 社外取締役もこのような義務を負うことは勿論である。 そして、この善管注意義務の違反が問題となるケースは、大まかに言えば次のように整理されている。 【善管注意義務違反が問題となる類型】 仮に、上記の義務違反が認定された場合、取締役は会社に対して、あるいは会社外の第三者(取引先、従業員等)に対して、その者が被った損害を賠償しなければならない。 このように善管注意義務は、取締役にとって非常に重大な法的責任なのである。   3 経営上の意思決定に関する法的責任-調整弁としての「経営判断の原則」 社外取締役も、取締役会に出席し、取締役間での活発な議論を経て、経営戦略等を策定し経営方針を決定するなど、経営判断を行っていくことになる。 しかし、そこで決定した経営方針(たとえば、将来的な成長が見込まれる特定分野に人員と予算を集中させ、それ以外の部門は縮小・整理するといった絞込み等)が、数年後、市場の時流から完全に外れてしまい、それが原因となり会社が倒産に至ってしまった場合は、その責任の所在はどのようになるのであろうか。 この場合、倒産の原因は、取締役会で決定し、(後から見て、結果的に誤りであった)「経営方針」にある。 それでは、そのような「誤った」意思決定に関与した取締役全員に対し、会社は、あるいは第三者は、損害賠償等の法的責任を追及できるのだろうか。 この点、現在の裁判実務の大勢は、以下のような判断枠組みを採用していると言われている。 【経営判断の原則】 計画通りの実績が出ずに失敗した経営判断について、それがすべて取締役の「誤り」だとして法的責任を負わせることは、取締役を必要以上に萎縮させる。 そうなっては、取締役の地位にある者は、とにかく失敗しない、確実な、手堅い経営判断だけに終始することになりかねず、これでは現状維持のままで何も新しいものを生み出すことはない。ましてや、リスクを取りながら、成功確率は高くないが当たれば非常に大きな利益が見込める分野に参入する等の大胆な会社運営は、到底望めないことになる。 それでは企業の成長は実現せず、株主の利益や社会の発展にも繋がらない。 そこで、上記のような判断枠組みを採り、ここから外れるような「不当な意思決定」がなされた場合に限って、取締役に法的責任を負わせることとしているのである。   4 監視・監督義務の懈怠 取締役、特に社外取締役の基本的職務が「ガバナンスの強化」にあることは、 既に【第1回】、【第4回】で説明してきたとおりである。 そのため、社外取締役を含めた取締役は、各人、代表取締役をはじめとした他の取締役が法令や定款を遵守したうえで業務執行しているかどうかを監視・監督する義務を負っている。 そして、この監視・監督義務は、取締役会に上程された事柄についてだけ監視するにとどまらず、代表取締役等の他の取締役の業務執行一般を監視し、必要があれば取締役会を自ら招集し、あるいは招集することを求め、取締役会を通じて業務執行が適正に行われるようにする職務を有すると考えるのが最高裁判例の立場である。 これは、しがらみに捕われない社外の客観的な見地から業務執行を監視することを期待された社外取締役にとっては、中心的な義務と言いうる。 そうであるからこそ、【第4回】で説明したように、さまざまなチャンネルを通じてその会社の経営状況をモニタリングし、会社の業務執行全般について監視・監督をしていく必要があるのである。   5 内部統制システム構築義務の懈怠 取締役が、他の取締役の業務執行を監視・監督する義務を有するといっても、特に規模が大きい会社においては、取締役が企業活動すべての監視・監督をなし、法令遵守(コンプライアンス)を実現することは到底不可能である。 そこで、企業活動における法令遵守を実効あらしめるためには、「社内における組織作りや業務フローそのものについて、法令遵守へとつながるような体制を整備する必要がある」という方向へと議論が進む。 これが、内部統制構築義務の問題である。 法は、大会社(資本金5億円以上または負債が200億円以上の会社)において、下記のような内部統制を整備する義務を課している。 【内部統制システム構築義務の内容】   6 社外取締役であることによる特殊性はあるか? 社外取締役であっても「取締役」であることには変わりなく、今回説明したような内容の各種の法的責任は、社外取締役であるからといって基本的には免れることはできない。 特に、社外取締役の基本的職務が「ガバナンスの強化」にある以上、業務執行の監視・監督に重要な役割を果たすべきことは、株主の立場から見ても期待されるところである。 したがって、社外取締役に就任しようとする者、あるいは就任した者は、自分がただの「お飾り」、「お客様」であれば足りると思っていたとしたら、大変な誤りである。 社外取締役が、必ずしも経営の専門家ではなかったとしても、自らが出席した取締役会における意思決定について責任を問われる可能性はあるし、他の取締役がなした違法行為に自らは関わっていない場合であっても、それを監視・監督する義務があったにもかかわらず怠ったとして、責任を問われる余地があるのである。 もともと会社と一定の距離を有している社外取締役であるからこそ、今回説明した各種義務を尽くするように普段から注力しなければならない。 次回からは、取締役の法的責任が問われた著名なケースを紹介することにしたい。 (了)

#No. 140(掲載号)
#栗田 祐太郎
2015/10/15

税理士ができる『中小企業の資金調達』支援実務 【第5回】「具体的な資金調達支援の流れ(その2)」~融資の申し込みは2通り~

税理士ができる 『中小企業の資金調達』支援実務 【第5回】 「具体的な資金調達支援の流れ(その2)」 ~融資の申し込みは2通り~   公認会計士・中小企業診断士・税理士 西田 恭隆   前回は、「社長から融資の相談を受けた場合は下手なことは言わず、金融機関に相談に行くようすすめるのが良い」と述べた。 では、「相談に行くとして、どの金融機関を選べばよいのか?」というのは社長からたびたび受ける質問である。 中小零細企業の融資は、大きく分けて以下の2通りの申し込み方法がある。 本稿ではまず、日本政策金融公庫と信用保証協会について簡単に説明し、その後、金融機関の選択について述べる。   1 日本政策金融公庫 日本政策金融公庫の概要と特徴 日本政策金融公庫は、民間金融機関の補完を理念に掲げる金融機関であり、国が株式の100%を保有している。 その理念のとおり公的色合いが強く、中小零細企業の融資に積極的である。そのため、民間金融機関から借り入れが困難な場合でも、相談に乗ってもらえることがある。 日本政策金融公庫への申し込み方法と融資にかかるコスト 日本政策金融公庫への融資の申し込みは、会社の営業所在地を管轄する支店に行う。なお、融資にかかるコストは支払利息のみである。   2 信用保証協会 信用保証協会の概要と特徴 信用保証協会は、中小企業の資金調達を容易にするため、連帯保証サービスを提供する組織である。融資そのものは行っていない。都道府県等が出資する公的な組織で、全国各地に存在する。 連帯保証サービスとは、中小零細企業が借り入れを行う際にその連帯保証人となることで、企業が返済不能に陥った場合、信用保証協会が金融機関に返済を行うものである。 これにより金融機関は確実に債権を回収することができるので、信用保証協会から保証が得られれば、ほぼ確実に金融機関から融資を得ることができる。 中小零細企業が民間金融機関から融資を受ける場合、信用保証協会の保証付き融資がほとんどである。保証なし融資(プロパー融資)は、相当に業績が好調で、金融機関との取引実績がある企業以外は難しい。 信用保証協会への申し込み方法と融資にかかるコスト 信用保証協会への申し込みは、最寄りの金融機関で行う。各金融機関が信用保証協会への申し込み窓口になっている。信用保証協会に直接申し込むことも可能ではあるが、結局金融機関の窓口に行くことになるので、それならば最初から金融機関に行った方が効率的である。直接申し込むことに特に利点はない。 信用保証協会への申し込みに必要な手続は、地域によって異なる場合があるので注意する。都道府県等のあっせん書や、商工会議所で事前の相談が必要な場合など様々である。詳細については金融機関担当者に確認し、その助言に従って手続を進める。 なお、融資にかかるコストとして、金融機関に対する支払利息に加え、信用保証協会に対する保証料が発生する。また、サービスの提供形態上、融資交渉は金融機関と保証協会の両者に対して行うことになる。   3 相談する金融機関の選択 これまで解説してきたとおり、社長から「どの金融機関に相談に行けばよいか」という質問があった場合、日本政策金融公庫の支店か最寄りの金融機関に行くように回答する。しかし、「最寄りの金融機関」と言われても実際には金融機関は多種多様に存在し、どれに行けばよいのか判断に困るであろう。 そういった場合、以下の点に留意して相談する金融機関を選択する。 *  *  * 以上、今回説明した内容をまとめると、社長から「どの金融機関に相談に行けば良いのか」と質問を受けた場合、以下2通りの金融機関への相談を薦める、ということになる。 次回は、金融機関との相談の後、正式に融資を申し込むことになった場合の資料作成支援について述べる。 (了)

#No. 140(掲載号)
#西田 恭隆
2015/10/15

女性会計士の奮闘記 【第34話】「デリケートな数値は慎重に」

女性会計士の奮闘記 【第34話】 「デリケートな数値は慎重に」   公認会計士・税理士 小長谷 敦子   〈ノビ(株)部門別損益表〉 ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。   ◆ワンポントアドバイス◆ 基本的には数字をオープンにすることが大切ですが、人件費などのデリケートな問題は慎重に計上しましょう。 その際も、どのような方法で計上しているかを明らかにし、全社員が人件費を削減して利益を出すため、どうすればよいのかを提案できるようにしましょう。 (了)

#No. 140(掲載号)
#小長谷 敦子
2015/10/15

《速報解説》 第6回 ACFE JAPANカンファレンス「会計不正、ふたたび」が開催~エンロン事件告発者シェロン・ワトキンス氏が緊急来日~

   《速報解説》 第6回 ACFE JAPANカンファレンス「会計不正、ふたたび」が開催 ~エンロン事件告発者シェロン・ワトキンス氏が緊急来日~   税理士・公認不正検査士(CFE) 米澤 勝   一般社団法人日本公認不正検査士協会(ACFE JAPAN)は、10月9日(金)、御茶ノ水のソラシティ カンファレンスセンターにおいて約300名の参加者のもと、第6回ACFE JAPANカンファレンスを開催した。 カンファレンスの開催概要、プログラムはこちら。 当初、ACFE JAPANは、エンロン社元CFO Andrew Fastow氏の招聘を公表していたが、外務省は氏の日本入国を認めず、代わりに登壇することになったのはエンロン社元Vice Presidentで、エンロン事件の告発者となったSherron Watkins氏であった。 Fastow氏はビデオ上映による基調講演を行うことになり、結果的には、事件の中心人物とその告発者の双方から話を聞くことができるという、非常に興味深いプログラムとなった。 まず、青山学院大学の町田祥弘教授による講演「エンロン事件の解説」が行われた。2001年12月、エンロン社は破産法の適用に至ったわけだが、その背景として、当時の経済環境や会計基準、監査制度が大きな問題を孕んでいたことが示唆された。 Fastow氏によるビデオメッセージのテーマは「規則対原則Rules Versus Principles」。ビデオ画像の氏は、穏やかな口調で、自らが犯した過ちについて語り始めた。 Fastow氏の口調はよどみなく、淡々と、時には微笑みを浮かべて語り続ける。禁固6年という刑期を終え、2,300万ドルを返還した後、法律事務所で訴訟サポート業務を行いながら、国連やFBIの主催する会議で基調講演などをこなしているからだろうか、私たちがイメージする「犯罪者」とは全く異質のように感じられた。 表面的には、犯した罪を真摯に反省しているように見えた。とはいえ、デリバティブなどの金融商品の発達や会計基準、法体系に不備があったことに責任を転嫁するかのような発言があったことも事実である。 そして、もちろん、Fastow氏がすべてを語っているわけではないという印象はあった。 それを決定的なものにしたのは、ビデオの後に登壇したWatkins氏であった。 開口一番、彼女はこう言った。 「Andiの行為は、明らかに法を犯しています。」 「Lessons from Enron’s Collapse:Rules vs Principle / Myth vs Facts」と題された講演において、そしてその後の青山学院大学教授八田進二氏との対談でも、彼女は厳しくエンロン社経営幹部への批判を繰り広げた。 彼女はまた、「裸の王様」の寓話を引き合いに、CEOだったKenneth Layを裸の王様に、COOのJeffrey SkillingとCFOのAndrew Fastowを見えない服地を仕立てあげた詐欺師であると断じてみせた。筆者たちCFEに対しては、有名なゆでガエルの話を交え、ぬるま湯に気づき、ぬるま湯を冷たい水に戻すことの必要性を、「不正に対してはゼロ・トラレンス」で臨まなければならない、と強調した。 彼女の準備したスライドの最後にあった文章を引用する。 後半のパネルディスカッションも興味深いものであった。 中では、パネリストの一人、日本CFO協会理事長・藤田純孝氏が繰り返し強調していた日本企業における不正の特徴について、引用しておきたい。 氏は、日本企業の特徴として、会社が共同体となり、これを終身雇用と年功序列が支えていることから、排他的とならざるをえないこと、社長に人事権が集中し、社長退任後も会長、相談役として長く会社に君臨し、かつ、後継者を自身で指名できることの2点を挙げ、「トップが私腹を肥やす不正は少なく、共同体・従業員を守るという意識が罪悪感を薄くする」結果となることを指摘していた。 ACFE JAPANが第6回カンファレンスのテーマを「会計不正」と決めたのは昨年秋であったということである。運よくといっては何だが、今年4月に発覚した東芝事件によって、あらためて「会計不正」が注目を集めることになったため、時宜を得た企画となった。 公認不正検査士Certified Fraud Examinerは「会計」、「調査」、「法律」、「犯罪学と倫理」という4つの分野に関する知識を習得した不正対策の専門家資格であり、現在世界150ヶ国に約7万人の会員を擁し、日本にも1,400人の会員(うち有資格者約900人)がいる。 (了) ↓お勧め記事↓

#No. 139(掲載号)
#米澤 勝
2015/10/13

《速報解説》 措置法施行規則等の改正により、本人へ交付する源泉徴収票等への個人番号記載は不要に

 《速報解説》 措置法施行規則等の改正により、 本人へ交付する源泉徴収票等への個人番号記載は不要に   公認会計士・税理士 篠藤 敦子   平成27年10月2日付け官報号外第227号において、租税特別措置法施行規則等の一部を改正する省令が公布された。 今回の改正により、「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」(以下、「番号法」という)の施行後も、本人へ交付する源泉徴収票等に個人番号を記載する必要はないこととされた。 (1) 改正の概要 平成28年1月に、番号法が施行される。それに伴い、租税特別措置法施行規則等においては、源泉徴収票等を本人へ交付したり、税務署等へ提出するときに、それらの書類に個人番号を記載することが求められていた。 しかし、この取扱いに対しては、本人へ交付する源泉徴収票等に個人番号を記載すると、情報漏えいや情報流出のリスクが高まるという指摘がなされていた。 このような指摘に配慮し、今回の改正では、本人へ交付する源泉徴収票や支払通知書等には個人番号の記載を行わないこととされた。 (2) 個人番号の記載が不要となる書類 改正により個人番号の記載が不要となる税務関係書類は、次のとおりである。 個人番号の記載が不要となるのは、給与等の支払いを受ける本人に対して交付するものに限られる。税務署等へ提出するものについては、個人番号の記載が必要となる。 なお今回の改正に合わせ、国税庁の「国税分野におけるFAQ」や特定個人情報保護委員会の「特定個人情報の適正な取扱いに関するガイドライン(事業者編)」に関するQ&A等、関係資料についても追加・更新が行われているため留意されたい。 (了)

#No. 139(掲載号)
#篠藤 敦子
2015/10/13

《速報解説》 国税庁、「法人番号公表サイト」を開設~10/26夕刻以降、通知書送付分の「基本3情報」の検索・閲覧が可能に

《速報解説》 国税庁、「法人番号公表サイト」を開設 ~10/26夕刻以降、通知書送付分の「基本3情報」の検索・閲覧が可能に   Profession Journal 編集部   国税庁は10月5日付、企業・団体等の法人に付与される「法人番号」とその法人の本店所在地等が検索・閲覧できる『法人番号公表サイト』を開設した。 法人番号の通知書は10月22日から地域ごとに順次発送されるが、10月26日の夕刻以降同ページにおいて、通知書が発送された法人等の分から、基本3情報(下記参照)の検索・閲覧ができるようになり、12月1日までに段階的に機能拡張される予定となっている。   〇法人番号を利用する場面は 13桁の数字で表される法人番号は、マイナンバー(個人番号:12桁の数字)と異なり利用範囲の制約がなく、誰でも自由に利用することができる。なお、複数の支店や事務所のある法人でも、付与される法人番号は1つである。 法人番号は9月に公表されたスケジュール(下記リンク参照)により、設立登記法人については登記されている本店又は主たる事務所の所在地へ書面(「法人番号指定通知書」)にて通知される。 (※) 設立登記法人については、10月22日から11月25日の間に、都道府県単位で7回に分けて発送される予定。 (※) 「法人番号指定通知書」のイメージは[こちら(国税庁ホームページ)]。 今回開設された「法人番号公表サイト」では、 「法人番号で法人の商号及び所在地などを調べる」 「法人の商号及び所在地などから法人番号を調べる」 ことが主な機能となっており、「基本3情報」といわれる ① 商号又は名称 ② 本店又は主たる事務所の所在地 ③ 法人番号 をそれぞれ連動させた検索が可能となっている。 このため、例えば 出張先で、自社の法人番号を確認したい 新たな取引先の法人番号を確認したい 取引先から提出された書類に記載された法人番号に間違いがないか確認したい といった場面で、同サイトを利用することが考えられる(スマートフォン・タブレット端末表示に対応)。   〇データファイルのダウンロード等も可能に なお、上記のほかに、次のように企業等が一定数の法人番号等のデータを一括して利用するケースについても想定されている。 法人番号等のデータを自社システムのデータベースに取り込む 法人番号をマーケティング(市場調査・開拓)等に活用する 法人番号を活用した取引先情報の維持管理における効率化 法人の名称・所在地の入力事務(システム操作)の省力化 このため、基本3情報はCSV形式やXML形式など、二次活用が容易なファイル形式でダウンロードにより取得することができる。 (※) 文字コードは「Shift-JIS(JIS第一・第二水準)」と「Unicode(JIS第一~第四水準)」の2種類。ファイル形式との組み合わせで3種類のファイルが用意される。 (※) 平成27年11月末時点の基本3情報のダウンロードは平成27年12月1日から利用可能。 なお、所在地(各都道府県及び国外の単位)別に全件データをダウンロードする方法と、新規に法人番号を指定した団体の情報のほか名称・所在地の変更や登記記録の閉鎖等の変更情報をダウンロードする方法とが選択できる。 また、これらの情報データを利用者から事前送付されたDVDに記録して返送するサービスもある。 さらに、平成27年12月1日以降は、利用者の保有するシステムからインターネットを経由して、簡単なリクエスト送信により、指定した法人番号の法人に係る情報や、指定した期間及び地域で抽出した法人の更新(差分)情報を取得できるWeb-API機能の利用も可能となる予定だ(利用にあたってはアプリケーションIDの発行手続が必要)。 その他、法人番号の公表機能の詳細は、この「法人番号公表サイト」内のほか、下記国税庁ホームページを参照されたい。 (了)

#No. 139(掲載号)
#Profession Journal 編集部
2015/10/08

プロフェッションジャーナル No.139が公開されました!~今週のお薦め記事~

2015年10月8日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.139を公開! プロフェッションジャーナルのリーフレットは 全国のTAC校舎で配布しています! -「イケプロが実践するPJの活用術」「第一線で活躍するプロフェッションからPJに寄せられた声」を掲載!-   - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。

#Profession Journal 編集部
2015/10/08

酒井克彦の〈深読み◆租税法〉 【第34回】「公正処理基準の形成過程と税務通達(その1)」

酒井克彦の 〈深読み◆租税法〉 【第34回】 「公正処理基準の形成過程と税務通達(その1)」   中央大学商学部教授・法学博士 酒井 克彦   法人税法は、益金に算入する金額や損金に算入する金額の計算について、「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」(以下「公正処理基準」ともいう。)に従うこととしている(法法22④。企業会計準拠主義)。 こうした法人税法の構造がいかなる意味を持つのかを解明することは、同法を理解するにあたり極めて重要な意味を有するといえるだろう。 他方、この企業会計準拠主義が租税法律主義に反するのではないのかという問題も従来から議論されてきた。 もっとも、この点は、商法(会社法)にいう「一般に公正妥当と認められる(企業)会計の慣行」に準拠したものであると考えれば、租税法律主義に反するものではないといえるだろう。すなわち、法人税法は商法(会社法)に準拠しているのであって、その商法(会社法)が企業会計に委任をしているとの理解である。法人税法22条4項は企業会計に白紙委任をしたものではなく法的根拠を有する基準であると論じることができるだろう(中里実「租税法と企業会計(商法会計学)」商事1432号26頁)。 しかし、それでも、企業会計準拠主義には租税法律主義を脅かす問題が伏在しているのではないだろうか。以下では、この点について、組合課税における通達の機能と商法(会社法)における「一般に公正妥当と認められる(企業)会計の慣行」を素材として、これまでの議論とはやや異なる角度から検討を加えてみたい。   Ⅰ 問題点の所在 企業会計準拠主義を採用する法人税法22条4項における公正処理基準にかかる問題点について以下の2点に着目してみたい(金子宏『租税法〔第20版〕』318頁参照(弘文堂2015))。 企業会計原則や確立された会計慣行が、必ずしも公正妥当であるとはいい切れないとか、網羅的であるとは限らないということであれば、公正処理基準に依拠しようにも、その根底が揺らいでしまうことになりはしないだろうか。 なお、企業会計原則や財務諸表規則等の内容が抽象的である点や、わが国の場合、業界が自主的に具体的な会計基準を作成する動きが弱いことなどの理由から、租税行政庁がイニシアティブをとって通達を発遣し、健全な税務会計コンヴェンション(慣行)を導くべきであるという考え方もある(小宮保『法人税の原理』221頁参照(中央経済社1968))。 こうした考えによると、租税行政庁がイニシアティブをとって発遣した通達に基づく税務会計コンヴェンションが企業の会計実務として確立した場合には、当該通達は、先駆者としての機能を果たしたとして廃止すべきであるとされる。 要するに、企業会計が適切なルールを自主的に作成しないのであれば、租税行政庁主導の通達により会計処理の方法を示し、それが会計慣行として確立されたとき、当該通達は会計慣行確立により、その役目を終えるという考え方である。 しかし、こうした見解は妥当であろうか。いわば行政が主導するかたちで、通達等によりコンヴェンションを形成し、かかる会計慣行が成立すれば、租税法の理念である公平な課税の実現が担保できるという期待の下、公正処理基準に租税法的な意味が付与されるという点には肯定できるところもあるが、それでも本来の租税法律主義の見地からは強い躊躇を覚えるのである。   Ⅱ 税務通達と公正処理基準 1 租税訴訟にみられる見解 興銀事件控訴審東京高裁平成14年3月14日判決(民集58巻9号2768頁)は、税務通達と公正処理基準の関係性について次のように述べる。 どうやら、興銀事件において東京高裁は、国税庁の通達が会計処理の基準を補完するという意味で公正処理基準の一部を構成するものと捉えており、公正処理基準に租税法の観点を持ち込むことに肯定的な立場であるように思われる。 しかし、この考え方は、上告審最高裁平成16年12月24日第二小法廷判決(民集58巻9号2637頁)において否定されている。また、学説においても公正処理基準の中に租税法独自の観点を持ち込むような解釈を許すべきではないとの見解がある(例えば、山田二郎「法人税法上の貸倒損失」金判1134号2頁参照)。 こうした見解は、税法基準以前に公正処理基準が存在することを前提としていると思われるが、公正処理基準に租税法独自の観点を持ち込むべきではないとするこれらの見方はどのように考えるべきであろうか。そこで、次に、公正処理基準が依拠するとされている商法(会社法)における「一般に公正妥当と認められる(企業)会計の慣行」について検証してみたい。 2 公正処理基準と商法(会社法) 法人税法22条4項の公正処理基準について、租税法の通説は、商法(会社法)を経由して、一般に公正妥当と認められる会計処理の「慣行」によると考える(金子宏『租税法〔第20版〕』316頁(弘文堂2015))。 したがって、公正処理基準を理解するためには、商法(会社法)にいう「一般に公正妥当と認められる(企業)会計の慣行」を確認する必要があるだろう。 商法1条《趣旨等》2項は、「商事に関し、この法律に定めがない事項については商慣習に従い、商慣習がないときは、民法・・・の定めるところによる。」とし、同法19条は、「商人の会計は、一般に公正妥当と認められる会計の慣行に従うものとする。」と規定する。また、会社法431条は、「株式会社の会計は、一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行に従うものとする。」とし、同法614条は、「持分会社の会計は、一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行に従うものとする。」と規定している。 では、商法(会社法)は、いかなるものを「一般に公正妥当と認められる会計の慣行」とか、「一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行」と考えているのだろうか。 この点、長銀配当損害賠償事件第一審東京地裁平成17年5月19日判決(判時1900号3頁)は、次のように判示する。 この事件において原告は、「会計慣行」とは、既に行われている事実に限らず、新しい合理的な慣行が生まれようとしている場合には、それを含むと解すべきであると主張していたが、これについて東京地裁は次のように述べる一方、特段の事情がある場合に限って例外が認められる旨を示している。 ここでは、特段の事情のある場合には、新しい会計処理の方法によることも会計慣行に従った処理をしたことになる旨を判示している点に注目したい。 〔東京地裁の考える「公正なる会計慣行」〕  (続く)

#No. 139(掲載号)
#酒井 克彦
2015/10/08
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