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〈Q&A〉印紙税の取扱いをめぐる事例解説 【第2回】「同一書式で記載方法により課否が異なる場合」

〈Q&A〉 印紙税の取扱いをめぐる事例解説 【第2回】 「同一書式で記載方法により課否が異なる場合」   税理士・行政書士・AFP 山端 美德   当社は百貨店です。 時計宝飾等を修理加工等のために顧客から預かった際に下記の「お預り証」を交付しますが、同じ文書であっても課税文書に該当したり、しなかったりする場合があるとのことですが、その取扱いについて教えてください。 (書式)   時計宝飾等の修理加工依頼を受けた場合に交付する文書には、承り票、引受票、修理票、引換証、預り証、受取書等、作成者によって様々な名称が付けられており、その文書に記載される内容についても、預かる内容等によって様々である。 そこで、上記「お預り証」を基に印紙税の取扱いについて検討することとする。   (記載例1) (記載例2) (記載例3)   ▷ ま と め 修理・加工の依頼を受けた際に交付する文書のうち、標題が承り票、引受票と称するものは、標題から修理・加工を引受けた旨が明らかであり、請負契約の成立を証明するものとなる。 また、修理票、引換証、預り証、受取書等と称するもので、仕事の内容(修理、加工箇所、方法等)、契約金額、期日又は期限のいずれか1以上の事項の記載のあるものも同様に請負契約の成立を証明するものといえるであろう。 (了)

#No. 112(掲載号)
#山端 美德
2015/03/26

贈与実務の頻出論点 【第4回】「相続人以外の贈与で効果的な節税を」

贈与実務の頻出論点 【第4回】 「相続人以外の贈与で効果的な節税を」   税理士法人チェスター   解 説 [1] 生前贈与加算(相法19) 相続または遺贈により財産を取得した者がその相続開始前3年以内にその相続に係る被相続人から贈与により取得した財産は、相続税の課税価格にその贈与により取得した財産の価額を加算します(この規定は暦年贈与を対象にしており、相続時精算課税を適用している場合には、別の規定により相続税の計算上加算されます。以下同じ)。 加算される贈与財産に対して過年度に贈与税の支払いがされている場合には、その支払った贈与税については、相続税の計算上控除します。 相続税の生前贈与加算は、相続または遺贈により財産を取得した者に限られるため、相続または遺贈により財産を取得していない者への生前贈与は、加算されません。 相続税で適用される最高税率が贈与税の実効税率よりも高い場合には、積極的に生前贈与を行ったほうがいいのですが、贈与後3年以内に相続が発生してしまっては意味がなくなってしまいます。相続人以外への贈与を行うことで、効果的な生前対策をすることができます。 下の図表では、毎年500万円の贈与を行っていて相続が発生した場合、相続人である子に贈与を行ったときと相続人でない孫への贈与を行っていたときを比較したものです。相続開始時の相続財産が3億円、相続人が子2人であることを前提としております。 相続人ではない孫に生前贈与をしていた場合には子に生前贈与をしていた場合と比べて454.5万円の節税、さらに孫2人に分散して贈与をしていた場合には516万円節税となっています。 〈相続人以外への生前贈与の効果〉 *1 上表は年間500万円生前贈与、相続開始時の相続財産3億円相続人子2人の場合 *2 ③のケースでは、孫1人につき250万円(計500万円)贈与した場合で計算しています。 *3 生前贈与加算を考慮して相続税を計算した場合と生前贈与加算を考慮しなくていい場合との相続税の差額を計算しております。 課税価格300,000,000円+15,000,000円=315,000,000円 算出相続税額 75,200,000円    贈与税額控除970,000円 納付相続税額 74,230,000円 3億円の財産に対して課税される相続税額   69,200,000円 生前贈与1,500万円が加算されたことによる増差税額             74,230,000円−69,200,000=5,030,000円 [2] 相続税に加算される贈与財産・加算されない贈与財産(相基通19‒1、19‒3、19‒4、19‒8) (1) 加算される贈与財産 相続税に加算される贈与財産は、相続または遺贈により財産を取得した者がその相続に係る被相続人から相続開始前3年以内に贈与により取得した財産です。また、相続税で加算する贈与財産の価額は贈与の時における価額です。 加算される贈与財産は、暦年贈与で贈与税を申告した財産はもちろん、贈与税がかかっていない基礎控除以下(110万円以下)の財産及び相続開始の年に贈与された財産も含みます。 (2) 加算されない財産 相続開始前3年以内の贈与で相続税に加算されない贈与財産は次のとおりです。 贈与を受けた者が相続開始した時に無制限納税義務者に該当したとしても、贈与時に贈与税の課税財産とならないものについては、相続税の計算上加算しません。 (了)

#No. 112(掲載号)
#税理士法人チェスター
2015/03/26

法人税に係る帰属主義及びAOAの導入と実務への影響 【第10回】「内国法人の法人税①」

法人税に係る帰属主義及び AOAの導入と実務への影響 【第10回】 「内国法人の法人税①」   税理士法人トーマツ パートナー 税理士 小林 正彦   3-2 内国法人の法人税 前節までは、外国法人の日本に所在するPEの課税に関する改正内容を解説してきたが、本節では、内国法人に関する改正点について解説する。 3-2-1 外国税額控除の改正 3-2-1-1 国外源泉所得 (1) 改正の概要 《改正前》 内国法人の外国税額控除に係る控除限度額の計算における国外源泉所得は、外国法人課税における国内源泉所得の概念を借用し、国内源泉所得以外の所得をいうとされていた(旧法法69①、旧法令142③)。 《改正後》 帰属主義の採用に伴い、国外源泉所得を積極的に定義した(法法69④)。 (2) 各種国外源泉所得の内容  具体的には国外源泉所得を次の①から⑯に掲げる16種類に区分して定めた。 (3) 国外事業所等帰属所得への該当性の優先 上記②から⑬まで及び⑯に掲げる所得には、上記①に掲げる所得は含まれないとされている(法法69⑤)。つまり、「国外事業所帰属所得」はその他の種類の所得には該当しない。 (4) 租税条約に異なる定めがある場合 租税条約に上記(2)と異なる定めがある場合には、租税条約の定めるところによる(法法69⑦)。 (5) 単純購入非課税の扱い 内国法人の国外事業所等が単純購入非課税の定めのある租税条約相手国に所在する場合には、国外PE帰属所得の計算において、単純購入非課税の取扱いが行われる。つまり、当該PEが本店等のために商品の買付けのみを行っている場合、帰属所得はないものとされる(法法69)。 (6) 複数の国外事業所等を有する場合の取扱い 国外事業所が複数ある場合には、事業所ごとに帰属所得を計算する。一の外国に複数の事業活動の拠点がある場合には、1つの拠点として認識し計算することとされている(法基通16-3-9の2)。 (了)

#No. 112(掲載号)
#小林 正彦
2015/03/26

貸倒損失における税務上の取扱い 【第39回】「法人税基本通達改正の歴史⑧」

貸倒損失における税務上の取扱い 【第39回】 「法人税基本通達改正の歴史⑧」   公認会計士 佐藤 信祐   前回、解説したように、昭和54年度から昭和55年度の間には、法人税基本通達等の総点検が行われており、第三次分である昭和55年12月25日付直法2-15通達においては、貸倒損失についての通達が公表されている。 本稿では、昭和55年度の貸倒損失についての法人税基本通達の改正について解説を行う。   8 昭和55年度法人税基本通達改正における貸倒損失の取扱い 昭和55年度において改正された法人税基本通達のうち、貸倒損失に係る部分については、以下の通りである。 このうち、「容易に処分できない担保物がある場合における担保物の価額を超える部分の金額」について、貸倒損失ではなく、債権償却特別勘定として処理されることになったというのはひとつの大きな改正であり、平成23年度税制改正により、中小法人や金融機関等を除き、貸倒引当金の設定が認められなくなった現在に至っては、貸倒損失の適用範囲を考えるうえで、重要な論点であるため、以下ではその点について、私見を述べさせてもらいたい。 この改正の趣旨として、当時の国税庁法人税課係長である戸島利夫氏は、 として、そのようなトラブル防止のためであったと解説されている(*1)。 (*1) なお、金融機関については、「金融機関の貸倒金の取扱いについて(昭和25年直法1-42)」が廃止されておらず、「当該債権の担保に供されている資産がある場合において、当該担保に供されている資産について、担保権が実行されていないときにおいても、当該債権の額のうち担保物の価額をこえている金額が明らかに回収不能と認められる場合は、その回収不能と認められる金額について法人の計算を認めるものとする。」という規定が、平成9年度に同通達が課法2-10によって削除されるまで存続しており、部分貸倒れが可能であったとする考え方も存在する。 すなわち、かなり、事務的な理由により対応がなされており、「債権償却特別勘定として処理すれば実害は無いだろう」というご都合主義的なものも含まれていたように思える。言い換えれば、貸倒損失と債権償却特別勘定の間における厳密な境というものが存在していたのかどうかすら怪しい対応と言わざるを得ない。 現在のように、平成23年度税制改正により、中小法人や金融機関等を除き、貸倒引当金の設定が認められなくなった時代においては、過去の法人税法に遡ったうえで、「容易に処分できない担保物がある場合における担保物の価額を超える部分の金額」について、貸倒損失として処理することを容認されるのではないかという意見が出てきても不思議はない。 実際に、平成23年度税制改正後の論文や文献を見てみると、平成21年度税制改正により、法的整理等を行った場合において、金銭債権の評価損が可能となったことから、解釈論としての部分貸倒れに対する大きな障害が取り除かれることになったとする見解(金子宏『租税法(第18版)』331頁、野口浩『会計』第184巻第1号40頁、中井稔『税務弘報』VOL.60 NO.1・144頁)も存在しており、このうち、野口浩准教授は、平成23年度税制改正により中小法人や金融機関等を除き、貸倒引当金を設定することができなくなった影響についても触れられている。 この点につき、昭和39年度法人税基本通達の文言を見ると、「債務者から貸金等の一部について金銭等による弁済がある間」は適用されないことが明らかにされており、担保物以外に回収手段がないという特殊なケースについてのみ認められていた内容である。さらに、「担保物が特殊な専用機械、農地等であるため容易に処分できないもの」となっており、これまたかなり特殊なケースについてのみ認められていたものであるが、担保物の時価そのものは変動することから、当然のことながら回収不能見込額は常に変動することになり、担保物を処分するまでは貸倒損失が確定するということは考えにくい。 すなわち、昭和55年度改正前の法人税基本通達については、本来の法人税法では認められるべきでなかった貸倒損失について、通達により緩和を図ったという見方をすることも可能であり、債権償却特別勘定が貸倒損失として認められないものについて通達で緩和を図ったものであったという背景を考えると、そのような見方も決して不自然ではない。そうなると、担保物以外から回収することができず、かつ、担保物が容易に処分することができない場合であっても、担保物の処分が不可能であり、実質的に回収可能額が0円であると認定されるような特殊なケースを除き、貸倒損失として認識することはできないという整理の方が、現在の法体系からすると自然ではないかと考えられる。 ちなみに、現在の法人税基本通達11-2-8(1)においては、「担保物の処分によって得られると見込まれる金額以外の金額につき回収できないことが明らかになった場合において、その担保物の処分に日時を要すると認められる」場合には、個別金銭債権に対する貸倒引当金として処理することが明らかにされている。 次回においては、平成4年に公表された「認定による債権償却特別勘定の設定に関する運用上の留意点について(平成4年9月18日課法2-4、査調4-4)」について解説する予定である。 (了)

#No. 112(掲載号)
#佐藤 信祐
2015/03/26

経理担当者のためのベーシック税務Q&A 【第25回】「役員給与」―届出額と実際の支給状況が異なる場合―

経理担当者のための ベーシック税務Q&A 【第25回】 「役員給与」 ―届出額と実際の支給状況が異なる場合―   仰星税理士法人 公認会計士・税理士 草薙 信久     1 法人税法における役員給与の取扱い 法人税法においては、いわゆる「お手盛り」や租税回避の弊害を防止するため、役員給与は原則として損金不算入となります(法法34)。ただし、「(ア)定期同額給与」、「(イ)事前確定届出給与」、「(ウ)利益連動給与」のいずれかに該当する給与額のうち、過大な部分の金額以外は損金の額に算入することができます(法法34②)。 具体的には、法人税法上の役員給与は次のように区分され、その内容や性質等に応じて損金算入または損金不算入の取扱いを受けます。 (※1) 債務の免除、経済的利益の供与を含みます。 (※2) 被付与者が、給与所得課税等が生じた日の属する事業年度にストックオプションの費用を損金算入します。 (ア) 定期同額給与 1ヶ月以下の一定期間ごとに支給される給与で、その事業年度における支給額が同額であるものをいいます(法法34①一)。 (イ) 事前確定届出給与 所定の時期に確定額を支給する旨の定めに基づいて支給する給与で、事前に、支給時期や支給金額等の事項を記載した書類を税務署に届出をしたものをいいます(法法34①二)。 (ウ) 利益連動給与 利益に関する指標を基礎として算定される給与をいいます。なお、同族会社以外の法人であること等の要件があります(法法34③)。 以下、事前確定届給与の適用に際して、いくつかのポイントに分けて整理、検討します。   2 届出書の記載額と異なる支給をした場合の取扱い 実務上、事前に届け出た支給時期及び支給金額と、実際の支給時期及び支給金額が異なる場合があります。事前確定届出給与は、所定の時期に確定額を支給する旨の定めに基づいて支給する必要があるため、届出額と支給額が異なる場合や支給時期が届出と一致していない場合には、原則として、その支給額の全額が損金不算入となります(法基通9-2-14)。 事前確定届出給与が支給されることになっている役員のうちに届出書の記載額と異なる金額が支給された役員がいても、届出どおりに支給された他の役員の役員給与については、損金不算入となることはありません。なぜなら、法人税法第34条第1項第2号では、「その役員の職務につき・・・支給する給与」と規定されており、個々の役員単位で届出額と支給額の判定をすれば足りると解されるからです。もちろん、届出通りに支給されなかった役員の役員給与は損金不算入となります。 お尋ねのケースでは、5名の役員に対して事前確定届出給与を支給していますが、届出額と支給額が一致している役員と一致していない役員が混在していますので、個々の役員単位で届出額と支給額の判定をする必要があります。 B専務は届出額よりも職務執行期間の実際の支給額が多く、逆に、C常務及びE取締役は届出額より職務執行期間の実際の支給額が少なくなっています。このように、1円でも届出額と支給額に差異がある場合には、実際支給額が届出額よりも少なかったとしても支給額全額が損金不算入となりますので、B専務、C常務及びE取締役に対する支給額の全額が損金不算入となります。   3 定めどおりに支給されたかどうかの判定 事前確定届出給与を支給している場合で、資金繰りの都合がつかなくなったため、届出していた支給時期に支払いがなされず、一時的に支給額の全部または一部が未払いとなる場合であっても、役員給与未払金が債務として確定したものであれば、損金の額に算入すべき金額の計算の通則に従い、支給したものとして取り扱われます。したがって、届出した支給時期に未払いであることを理由として損金不算入になることはありません。 なお、あらかじめ未払いになることを前提に役員給与を決定し、事前確定届出給与の届出をしたようなケースでは、未払いとなることが見込まれる金額が含まれており、支給額が事前に確定しているとは言えないため、その実質により判断することになります。 お尋ねのケースでは、支給時期に計上したA社長の役員給与未払金は債務として確定しており、また、その未払金は翌月には支払っていますので、6月の支給時期における支給額は未払金を含めた額となり、届出書の記載額とおりに支給されたものとみなされます。   4 2回以上の支給がある場合の定めどおりに支給されたかどうかの判定 一般的に、役員の職務執行期間は定時株主総会から次の定時株主総会までの1年間で、2事業年度に跨ることになりますが、役員の職務執行期間内に複数回の支給がある場合には、それぞれの支給がどちらの事業年度で行われたかにかかわらず、原則として、そのすべての支給が届出どおりに行われたかどうかにより判定します。ただし、最初の事業年度に行われた支給がすべて届出どおりに行われている場合には、当該事業年度の支給額はすべて損金算入することができ、翌事業年度に行われた支給については別途判定することができます。 反対に、最初の事業年度に行われた支給のうちの1回でも届出どおりに行われていない場合には、原則に戻って、たとえ翌事業年度に行われる支給がすべて届出どおりに行われていても、当該事業年度及び翌事業年度の支給額はすべて損金不算入となります。 例えば、3月決算法人が、X年6月26日からX+1年6月25日までを職務執行期間とする役員に対し、X年12月とX+1年6月に役員給与を支給することとし、所轄税務署長に届け出ている場合に、X年12月の支給が届出どおりに行われていれば、X+1年6月の支給が届出どおりでなくても、X+1年3月期の課税所得に影響を与えるものではないことから、X年12月の支給額はX+1年3月期に損金算入することができます。 お尋ねのケースでは、役員の職務執行期間中に支給された2回の役員給与(平成26年6月と12月の支給)は、同一の事業年度に支給されていますので、それぞれの役員について原則どおりに判定を行います。その判定結果は、上記2の項で説明したとおりです。 (了)

#No. 112(掲載号)
#草薙 信久
2015/03/26

フロー・チャートを使って学ぶ会計実務 【第15回】「関連当事者との取引の注記」

フロー・チャートを使って学ぶ会計実務 【第15回】 「関連当事者との取引の注記」   仰星監査法人 公認会計士 西田 友洋   【はじめに】 今回は、連結財務諸表作成会社を前提に関連当事者との取引の注記について解説する。 関連当事者とは、ある当事者が他の当事者を支配しているか、又は、他の当事者の財務上及び業務上の意思決定に対して重要な影響力を有している場合の当事者等をいい、具体的には、親会社、子会社、関連会社、会社の役員等をいう(企業会計基準第11号「関連当事者の開示に関する会計基準(以下、「基準」という)」5(3))。 会社と関連当事者が取引を行った場合、対等な立場で行われているとは限らず、会社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼすことがある。また、直接の取引がない場合においても、関連当事者の存在自体が、会社の財政状態や経営成績に影響を及ぼすことがある。そのため、会社と関連当事者との取引や関連当事者の存在が財務諸表に与えている影響を財務諸表利用者が把握できるように、関連当事者との取引の注記が求められている(基準2)。 また、関連当事者との取引の注記は、有価証券報告書では連結ベースで注記するのに対して、計算書類では個別ベースで注記を行う。そのため、有価証券報告書の場合と計算書類の場合で検討過程が異なるので留意が必要である。 ※各ステップをクリックすると、それぞれのページに移動します。 ※画像をクリックすると、別ウィンドウでPDFが開きます。 (次ページ【STEP1】へ進む) (前ページ【はじめに】へ戻る) 関連当事者との取引の注記を行う上では、関連当事者の範囲を網羅的に把握する必要がある。具体的には、以下の順に関連当事者に該当するものがないか検討する。以下の(1)~(11)は、上から順に全て検討する。 また、関連当事者の範囲の把握にあたっては、経理部のみで網羅的に把握することが難しい場合もある。そのような場合、各部署の協力をもとに網羅的に把握できる体制を構築する必要がある。 ※画像をクリックすると、大きい画像が開きます。   (1) 連結財務諸表(計算書類)作成会社の主要株主及びその近親者 主要株主とは、自己又は他人の名義をもって総株主の議決権の10%以上を保有している法人及び個人株主をいう(基準5(6))。連結財務諸表(計算書類)作成会社の主要株主は関連当事者に該当する。また、主要株主が個人の場合で、近親者(2親等以内の親族。以下、同様)が存在する場合、その近親者も関連当事者に該当する(基準5(3)⑥)。   (2) 連結財務諸表(計算書類)作成会社の役員及びその近親者 連結財務諸表(計算書類)作成会社の役員は関連当事者に該当する。また、その役員に近親者が存在する場合、その近親者も関連当事者に該当する(基準5(3)⑦)。役員には、取締役、監査役、執行役等だけでなく、相談役、顧問、執行役員等で、その会社内における地位や職務等からみて実質的に経営に強い影響を及ぼしていると認められる者も含まれる(以下、同様。企業会計基準適用指針第13号「関連当事者の開示に関する会計基準の適用指針(以下、「適用指針」という)」4)。 また、創業者等で役員を退任していても、役員の定義に該当するかどうかを実質的に判定する必要がある(以下、同様。適用指針4)。   (3) 親会社の有無 親会社が存在する場合、その親会社は関連当事者に該当する(基準5(3)①)。 親会社が存在する場合、(4)を検討する。存在しない場合は、(5)を検討する。   (4) 親会社の役員及びその近親者の有無 連結財務諸表(計算書類)作成会社の親会社の役員は関連当事者に該当する。また、その役員に近親者が存在する場合、その近親者も関連当事者に該当する(基準5(3)⑧)。   (5) 子会社の有無 子会社は関連当事者に該当する(基準5(3)②)。   (6) 重要な子会社の役員及びその近親者の有無 重要な子会社の役員とは、会社グループの事業運営に強い影響力を持つ者が子会社の役員である場合の当該役員をいう(基準21)。つまり、「重要な」は子会社ではなく、役員にかかっている。 そして、重要な子会社の役員が存在する場合、その役員は関連当事者に該当する(基準5(3)⑨)。また、その役員に近親者が存在する場合、その近親者も関連当事者に該当する(基準5(3)⑨)。   (7) 関連会社及び当該関連会社の子会社の有無 関連会社及び当該関連会社の子会社が存在する場合、これらの会社は、関連当事者に該当する。(基準5(3)⑤)。   (8) 連結財務諸表(計算書類)作成会社と同一の親会社をもつ会社(兄弟会社)の有無 兄弟会社が存在する場合、その兄弟会社は関連当事者に該当する(基準5(3)③)。   (9) 連結財務諸表(計算書類)作成会社が他の会社の関連会社である場合における当該他の会社(その他の関係会社)並びに当該その他の関係会社の親会社及び子会社の有無 その他の関係会社、当該その他の関係会社の親会社及び子会社が存在する場合、それらの会社は関連当事者に該当する(基準5(3)④)。   (10) 上記(1)、(2)、(4)、(6)の者が議決権の過半数を自己の計算において所有している会社及びその子会社の有無 上記(1)、(2)、(4)、(6)の者が議決権の過半数を自己の計算において所有している会社及びその子会社がある場合、これらの会社は、関連当事者に該当する(基準5(3)⑩)。   (11) 従業員のための企業年金の有無 従業員のための企業年金が存在する場合、その企業年金は関連当事者に該当する(基準5(3)⑪)。 なお、関連当事者に該当するのは、企業年金と会社の間で掛金の拠出以外の重要な取引を行う場合に限る(基準5(3)⑪)。例えば、退職給付信託を設定している場合で、年金資産の入替や返還を行うときで、これらの取引に重要性がある場合は、注記対象になると考えられる(基準23)。 (次ページ【STEP2】へ進む) (前ページ【STEP1】へ戻る) 関連当事者の範囲を把握したら、次に関連当事者との取引について把握する。 ※画像をクリックすると、大きい画像が開きます。 (1) 関連当事者との取引の網羅的な把握 関連当事者と行った取引について、金額の多寡に関係なく網羅的に把握する。ただし、有価証券報告書作成の場合と計算書類作成の場合で集計範囲が異なるため、別々に検討する必要がある。 取引の集計にあたっては、経理部のみで網羅的に把握することも難しい場合もある。この場合、各部署の協力をもとに網羅的に取引を把握できる体制を構築する必要がある。 ① 有価証券報告書における取引の集計 有価証券報告書の場合、連結ベースで注記するため、連結子会社は関連当事者に該当せず(基準5(3)なお書)、連結会社(連結財務諸表作成会社と連結子会社)と関連当事者の取引について集計する(基準34)。そのため、連結財務諸表を作成するにあたって相殺消去した取引は集計する必要はない(基準6)。 また、関連当事者に対する債権が貸倒懸念債権及び破産更生債権等に該当する場合、貸倒引当金・債務保証損失引当金等、貸倒引当金繰入額・債務保証損失引当金繰入額等、貸倒損失額(一般債権に区分されている場合において貸倒損失が生じた場合を含む)も注記対象(適用指針8、連結財務諸表規則15条の4の2①九)であるため、取引として集計する。 ② 計算書類における取引の集計 計算書類の場合、個別ベースで注記するため、計算書類作成会社と関連当事者の取引についてのみ集計する。 例えば、以下の取引については、集計する必要はない。 子会社同士の取引 子会社と関連会社の取引 また、以下のものは、計算書類では関連当事者に該当しないため、以下のものとの取引も集計する必要はない。 重要な子会社の役員及びその近親者と計算書類作成会社との取引(会社計算規則(以下、「規則」という)112④) 重要な子会社の役員及びその近親者が議決権の過半数を自己の計算において所有している会社及びその子会社と計算書類作成会社との取引(規則112④)   (2) 役員に対する報酬等であるか (1)で集計した取引のうち、会社法第361条等の役員報酬(報酬、賞与及び退職慰労金の支払い)に該当する場合、注記の必要はない(基準9(2)、適用指針24)ため集計から除く。 なお、相談役や顧問等の場合、使用人兼務役員の場合、ストック・オプションの場合には、注記対象か否かは、以下のようになる。 ① 相談役や顧問等の場合 相談役や顧問等が関連当事者に該当する場合、これらの者への報酬は会社法上の役員報酬に該当しないため、関連当事者の取引として注記の対象となる。 ② 使用人兼務役員の場合 使用人兼務役員の場合で、従業員としての立場で行っていることが明らかな取引(例えば、使用人兼務役員が会社の福利厚生制度による融資を受ける場合など)は、注記の必要はない(適用指針5)。 ③ ストック・オプションの場合 役員へのストック・オプションの付与で役員報酬に該当する場合、注記は不要である。ただし、ストック・オプションの行使は、役員報酬ではなく、資本金等が増加する資本取引であるため、注記の対象となる。なお、相談役や顧問等へのストック・オプションの付与は、役員報酬ではないため、関連当事者の取引として注記の対象となる。   (3) 一般競争入札による取引であるか (1)で集計した取引のうち、一般競争入札による取引については、恣意性の介入の可能性がなく、会社の利益を損なうことがないため、注記の必要はない(基準9(1))。そのため、集計から除く。   (4) 預金利息及び配当の受取りであるか (1)で集計した取引のうち、預金利息及び配当の受取りについては、取引条件が一般の取引と同様であることが明白なため、注記の必要はない(基準9(1))。そのため、集計から除く。   (5) その他の取引で取引条件が一般の取引と同様であるか (1)で集計した取引のうち、(2)~(4)以外の取引で取引条件が一般の取引と同様である場合、注記の必要はない(基準9(1))。そのため、集計から除く。 例えば、公募増資は、取引条件が一般の取引と同様であるため注記の必要はない(基準28)。なお、第三者割当増資や自己株式の取得は注記の対象となる(基準28)。 (1)で集計した取引から(2)~(5)の取引を除いた取引について、【STEP3】で重要性の判定を行う。 (次ページ【STEP3】へ進む) (前ページ【STEP2】へ戻る) 【STEP2】で把握した関連当事者との取引について、全て注記するわけではない。関連当事者との取引のうち、重要な取引を注記する(適用指針12)。そのため、ここでは、重要性の判定について検討する。 有価証券報告書作成の場合と計算書類作成の場合で検討過程が異なるため、有価証券報告書作成の場合は(1)と計算書類作成の場合は(2)を検討する。 ※画像をクリックすると、大きい画像が開きます。 (1) 有価証券報告書作成の場合の重要性の判定 有価証券報告書作成の場合、法人グループと個人グループで重要性が異なる。そのため、まず、関連当事者を、法人グループと個人グループに分類する。その後に、重要性の判定を行う。 ① 法人グループ及び個人グループの分類 法人グループには、以下のものが該当する(適用指針13(1)~(3))。 個人グループとは、①の法人グループ以外をいう。具体的には、以下のものが該当する(適用指針13(4))。 なお、連結財務諸表作成会社の役員(親会社及び重要な子会社の役員を含む)若しくはその近親者が、他の会社の代表者を兼務しており、当該役員等がその会社の代表者として、連結財務諸表作成会社と行う取引は、法人間における商取引に該当すると考えられるため、法人グループとして取り扱う。一方、連結財務諸表作成会社の役員(親会社及び重要な子会社の役員を含む)若しくはその近親者が議決権の過半数を自己の計算において所有している会社との取引は、個人グループとして取り扱う。 法人グループに該当したものとの取引については、②を検討する。個人グループに該当したものとの取引については、③を検討する。 ② 法人グループにおける重要性の判定 連結損益計算書項目、連結貸借対照表項目等に分けて重要性の判定を行う。重要性の判定の結果、重要性がある取引については、【STEP4】(1)を検討する。重要性がない取引について、それ以上の検討は不要である。 重要性の判定は、各関連当事者との取引(類似・反復取引についてはその合計)ごとに行う。例えば、1つの取引について売上高は重要であるが、売掛金残高には重要性がない場合においても、売上高及び売掛金残高の両者の注記が必要となる(適用指針14)。 (ⅰ) 連結損益計算書項目における重要性の判定 連結損益計算書項目における重要性の判定は以下のとおりに行う(適用指針15(1)、17(1))。 ただし、「営業外収益、営業外費用」及び「特別利益、特別損失」の各項目に係る関連当事者との取引については、上記判断基準により注記対象となる場合であっても、その取引総額が、税金等調整前当期純損益又は最近5年間の平均の税金等調整前当期純損益(当該期間中に税金等調整前当期純利益と税金等調整前当期純損失がある場合には、原則として税金等調整前当期純利益が発生した年度の平均とする)の10%以下となる場合には、注記は不要である。 (ⅱ) 連結貸借対照表項目等における重要性の判定 連結貸借対照表項目に属する科目の残高及びその注記事項に係る関連当事者との取引、債務保証等の残高、担保提供・受入れ残高(連結貸借対照表項目等)における重要性の判定は以下のとおりに行う(適用指針15(2)、17)。 ③ 個人グループにおける重要性の判定 連結損益計算書項目及び連結貸借対照表項目等のいずれに係る取引についても、1,000 万円を超える取引については、注記を行う(適用指針16)。重要性の判定の結果、重要性がある取引については、【STEP4】(1)を検討する。重要性がない取引について、それ以上の検討は不要である。 重要性の判定は、各関連当事者との取引(類似・反復取引についてはその合計)ごとに行う。例えば、1つの取引について売上高は重要であるが、売掛金残高には重要性がない場合においても、売上高及び売掛金残高の両者の注記が必要となる(適用指針14)。   (2) 計算書類作成の場合の重要性の判定 計算書類における関連当事者との取引の注記においても、重要なものだけ注記する(規則112)。ただし、重要性の判断基準は有価証券報告書作成の場合(上記(1)参照)のように規則では規定されていない。 そのため、各社で重要性の基準を設けて注記が必要かどうかを判定する必要がある。実務的には、有価証券報告書作成の場合の重要性の判定と同様に行うことが多いと考えられる。 重要性の判定の結果、重要性のある取引については、【STEP4】(2)を検討する。重要性がない取引について、それ以上の検討は不要である。 (次ページ【STEP4】へ進む) (前ページ【STEP3】へ戻る) 有価証券報告書と計算書類において注記内容が異なるため、別に検討する必要がある。 ※画像をクリックすると、大きい画像が開きます。 (1) 有価証券報告書における関連当事者との取引の注記 有価証券報告書においては、原則として個々の関連当事者ごとに以下の注記が必要となる(基準10、適用指針7~9、連結財務諸表規則15条の4の2①十)。また、関連当事者との取引の注記は4つのグループ(【STEP3】(1)①(ⅰ)~(ⅳ))順に並べて注記する(適用指針13)。 (※) 下線部分は、計算書類では注記は求められていないが、有価証券報告書においては、注記が求められている箇所である。   (2) 計算書類における関連当事者との取引の注記 計算書類においては、個々の関連当事者ごとに以下の注記が必要となる(規則112)。 上記(1)の(※)のとおり、計算書類における注記は、有価証券報告書における注記よりも少ない。 *   *   * 以上、4のステップをまとめたフロー・チャートを再掲する。 ※画像をクリックすると、別ウィンドウでPDFが開きます。 (了)

#No. 112(掲載号)
#西田 友洋
2015/03/26

〔事例で使える〕中小企業会計指針・会計要領《固定資産》編 【第4回】「ゴルフ会員権の減損」

〔事例で使える〕中小企業会計指針・会計要領 《固定資産》編 【第4回】 「ゴルフ会員権の減損」   公認会計士・税理士 前原 啓二   はじめに 中小企業会計指針では、ゴルフ会員権の計上額の重要性が高い場合に減損処理を行うこととされます。 今回は、ゴルフ会員権の減損損失の一例について税務上の取扱いとの差異を含めてご紹介します。   1 当期末の仕訳 〈当期末〉 [A]  [B] [C] [D] [E] ゴルフ会員権の計上額の重要性が高いケースで、時価のあるもの(この設例ではA)については時価が著しく下落した場合に、時価のないもの(この設例ではB、C、E。いずれも回収見込みなし)については発行会社の財政状態が著しく悪化した場合に、そのゴルフ会員権を減損します。 預託保証金方式によるゴルフ会員権を減損する際には、帳簿価額のうち預託保証金を上回る金額について、まず直接評価損を計上し、さらに時価が預託保証金の額を下回るときには、その部分を債権の評価勘定として貸倒引当金を設定します(中小企業会計指針38)。 この設例では、次のとおりです。 Dのゴルフ会員権については、再生計画認可決定により切り捨てられた7,000,000円部分を減額処理します。   2 決算書の金額 〈当期損益計算書〉 〈当期末貸借対照表〉   3 損益計算書の当期純損益から法人税申告書の課税所得を算出する際の加算・減算調整 〈当期法人税申告書別表四〉 〈当期法人税申告書別表五(一)〉 これら加算合計23,800,000円の内訳は、次のとおりです。 税務上、ゴルフ会員権は、ゴルフ場でプレーできる限り施設利用権が顕在し預託権返還請求権が潜在しているので、施設利用権を主とするものとして金銭債権とされません。しかし、退会手続や破産手続開始の決定があった場合には、施設利用権がなくなって預託権返還請求権が顕在化するので、その時点で金銭債権に転換されます。したがって、AとBについては、金銭債権ではないので税務上の貸倒引当金の対象とされません。CとEについては、金銭債権であるので税務上の貸倒引当金の対象とされます。 つまり、Cのように更生手続開始の申立てがなされて、かつ退会した場合と、Eのように破産手続開始の決定があった場合におけるその金銭債権の額の50%に相当する金額は、個別評価金銭債権に係る貸倒引当金繰入限度額に含められます(法令96①、この設例では貸倒引当金繰入額が損金算入できる資本金1億円以下の法人とします)。 Dについては、再生計画認可決定により切り捨てられた7,000,000円部分が貸倒損失として損金の額に算入されます(法基通9-6-1)。   ((《固定資産》編 終了))

#No. 112(掲載号)
#前原 啓二
2015/03/26

最新!《助成金》情報 【第12回】「雇用関連助成金の活用(その12)《平成27年度の新設・変更予定の助成金》」

最新!《助成金》情報 【第12回】 「雇用関連助成金の活用(その12) 《平成27年度の新設・変更予定の助成金》」」   特定社会保険労務士 五十嵐 芳樹   今回は、平成27年度に新たに新設又は変更されると見込まれる助成金の要点を解説する。 ただし、あくまでも参考情報のため、解説した制度が実現しないあるいは名称や制度の内容が異なる場合もあり得ることを前提に参照していただきたい。   1 職場定着支援助成金(個別企業助成制度) (1) 対象事業主拡大 この助成金は従来の「中小企業労働環境向上助成金」を見直したもので、今までは中小企業を対象としていたが、変更後は重点分野の事業を営む中小企業以外の事業主も対象とする予定。 (2) メンター制度(雇用管理制度導入時) 直属上司とは別に、若手の指導や相談役となるメンターを導入しサポートする制度を導入した場合に10万円を支給予定。 (3) 目標達成助成金の創設 事業実施前の雇用管理制度整備計画において、計画制度導入の効果として1年経過後の定着率の目標設定を義務づけ、目標達成時には60万円を追加支給予定。これに伴い従来の助成金の支給額は減額予定。   2 建設労働者確保助成金 (1) 雇用管理制度コースの拡充 (2) 若者に魅力ある職場づくりコース (3) 建設広域教育訓練コース 広域的な職業訓練を実施する職業訓練法人への経費助成額を年間9,000万円から1億5,000万円へ拡充予定。   3 キャリア形成促進助成金 (1) ものづくり人材育成訓練助成金 ※( )は中小企業 製造業等が実施する認定を受けたOJT付き訓練を受けた場合は経費の1/2(2/3)、また1時間当たりの400円(800円)の賃金助成、OJT実施の場合は1時間当たり400円(700円)の助成金を支給予定。 (2) 熟練技能育成・承継コース 対象を従来の中小企業から中小企業以外へも拡充予定。 (3) 若年人材育成コース 対象を従来の中小企業から中小企業以外へも拡充予定。 若年者育成認定企業(仮称)が行う勤続5年未満でかつ35歳未満の若年労働者に対する訓練の経費助成率を費用の1/2(2/3)に拡充予定。 (4) 育休中・復職後等能力アップコース 育児休業中、復職後、再就職後の能力アップのための訓練を実施した場合は、経費の1/2(2/3)の助成金、また1時間当たりの400円(800円)の賃金助成金、OJT実施の場合は1時間当たり400円(700円)の助成金を支給予定。 (5) 認定実習併用職業訓練コース 対象を従来の中小企業から中小企業以外へも拡充予定。 製造業等が実施する認定を受けたOJT付き訓練を受けた場合は、経費の1/2(2/3)の助成金、1時間当たりの400円(800円)の賃金助成金、OJT実施の場合は1時間当たり400円(700円)の助成金を支給予定。   4 キャリアアップ助成金 (1) 勤務地・職務限定正社員制度に関する助成金の創設 新たに「勤務地・職務限定正社員」制度を導入する事業所に対する助成制度を創設するほか、非正規労働者の賃金テーブルの改善を促進するキャリアアップ助成金を拡充する予定。 (2) 派遣労働者の正社員雇用に関する助成金の拡充 派遣先事業所が派遣労働者を正社員雇用する場合のキャリアアップ助成金を拡充し一人当たり80万円を支給予定。   5 トライアル雇用奨励金 フリーター、ニート等の正社員としての就職を早期実現するため、トライアル雇用奨励金を拡充し支援を強化する予定。   6 女性活躍推進加速化助成金(仮称)の創設 女性活躍推進のインセンティブとして、女性活躍の実態を把握し情報公開を行うとともに、原因を分析したうえで課題達成に向けた目標を定めた行動計画を公表し、審査確認を受けた場合に事業主に支給する助成金制度を新たに創設予定。   7 仕事と育児の両立支援助成金 (1) 職場復帰促進に関する助成金 育児休業者の職場復帰を促進する助成金として、育児休業復帰支援プランなど育児休業後に職場復帰しやすい仕組みを導入した中小企業を対象に30万円を支給(平成27年2月より制度開始、平成27年度も同内容で継続予定)。 (2) 両立支援等助成金の拡充 期間雇用者の育休取得促進、育休中の代替要員確保等を行う事業主への両立支援等助成金を拡充予定。 (3) 育児休業中・復職後・再就職後の能力向上のための訓練に対する助成金の拡充 育児休業中・復職後・再就職後の能力向上のための訓練を行う事業主に対する助成金を拡充予定。  (了)

#No. 112(掲載号)
#五十嵐 芳樹
2015/03/26

〈まずはこれだけおさえよう〉民法(債権法)改正と企業実務への影響 【第1回】「総論」

〈まずはこれだけおさえよう〉 民法(債権法)改正と 企業実務への影響 【第1回】 「総論」   堂島法律事務所 弁護士 奥津  周 司法書士法人F&Partners 司法書士 北詰 健太郎   1 民法が変わる 「民法」とは、我が国における私人間の権利義務や、相続関係などの家族関係を定める重要な法律である。私人間の法律関係は多種多様であり、私人間の権利義務等について定める法律(私法)は無数にあるが、その中で最も基本的な契約のルールや様々な私法上の権利(債権、物権、担保権等)の内容について定めるのが民法である。 現行民法のうち、債権関係に関する規定(以下、「債権法」という)が改正されるということは、大々的に報道されており、読者の方々も多くの方が認識されているかと思う。 ただし、「法定利率が変わる」、「消滅時効が変更される」など断片的な情報は入ってきているものの、全体を理解されている読者は、まだ少ないのではないだろうか。 本連載では、そうした債権法の改正について、重要な項目を選択し、できるだけ分かりやすく解説を行い、企業実務への影響を考察したい。   2 債権法改正の諮問 上記は、平成21年(2009年)10月28日の法制審議会第160回会議において、当時の千葉景子法務大臣から法制審議会になされた諮問である。 法制審議会とは、法務省に設置された審議会の1つであり、法務大臣の諮問に応じて、民事法、刑事法その他法務に関する基本的な事項を調査審議すること目的とする。 法制審議会は、本諮問を受けて、「民法(債権関係)部会」を設置し、審議を開始した。   3 民法改正の理由 現行民法は、明治29年(1896年)に制定されてから、一部改正はなされたことはあるものの、大規模な見直しをされることはなかった。 それではなぜ今、大幅な改正がされることになったのか。 その理由は次のとおりである。   4 改正の範囲 以下の表は、民法の条文構成である。 【図表:現行民法の条文構成】 ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 (※) 章はさらに、「節」、「款」に細分化されることがあるが、本稿では省略している。 上表のとおり、民法は、「総則」、「物権」、「債権」、「親族」、「相続」という5つの編から構成されている。 このうち、今回の改正の対象となっているのは、債権編の大部分と総則の一部である。 債権編のなかでも、交通事故など他人の違法な行為によって損害が生じた場合の損害賠償請求権について定めた「不法行為」や、法律上の原因がなく利得が生じた場合の返還義務等について定めた「不当利得」などは、今回の改正の対象とはなっていない。   5 今後の流れ 既に法制審議会第174回会議(平成27年2月24日開催)において、「民法(債権関係)部会」が取りまとめた「民法(債権関係)の改正に関する要綱案」 が全会一致で採択され、「民法(債権関係)の改正に関する要綱」として、法務大臣に答申がなされた。 今後、この要綱を元に改正法案が作られ、現在開催中の通常国会に提出される予定である。 (了)

#No. 112(掲載号)
#奥津 周、北詰 健太郎
2015/03/26

コーポレートガバナンス・コードのポイントと企業実務における対応のヒント 【第2回】「コード策定の経緯及び背景、コードの目的、構成」

コーポレートガバナンス・コードのポイントと 企業実務における対応のヒント 【第2回】 「コード策定の経緯及び背景、コードの目的、構成」   あらた監査法人 マネージャー 公認会計士 北尾 聡子   〔コーポレートガバナンス・コード(原案)の策定の経緯及び背景〕 先般2015年3月5日に確定した「コーポレートガバナンス・コードの基本的な考え方~コーポレートガバナンス・コード原案~会社の持続的な成長と中長期的な企業価値向上のために~」(以下「コーポレートガバナンス・コード原案」または「CGコード」という)について、本稿では、CGコードの策定の経緯及び背景、目的、構成についてご説明したい。なお、文中の意見にわたる部分は筆者の私見であることをお断りしておく。 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 過去20年間を振り返ったときに、米国の平均ROE(株主資本利益率)が12%程度であるのに対し、日本企業の平均は5%程度であり、海外投資家から日本企業の投資魅力度の低さが指摘されていた。 そこで、2014年6月に閣議決定された「日本再興戦略2014」においては、企業の稼ぐ力(中長期的な収益性・生産性)の向上にむけたコーポレートガバナンスを強化するため、「CGコード」の策定が掲げられた。また、企業にとって投資魅力度の高い企業で構成された「JPXインデックス400」が策定され、その選定基準の加点要素の一つに、社外取締役の選任が含められた。企業に「JPXインデックス400」に選定されるというインセンティブを与え、コーポレートガバナンス強化を目指す企業を後押しする仕組みが設けられている。 企業は、経営者を付託された者としての責任(受託者責任)の説明責任を果たす必要があるが、機関投資家からは、十分な情報開示がない・対話不足との声が聞かれ、期待ギャップが生じている。企業の中長期的な成長を促すためには、機関投資家と企業との間の建設的な対話を促進し、期待ギャップの解消を図らなければならない。その施策の一つが、「日本版スチュワードシップ・コード」の策定であり、これは、機関投資家としての行動規範を定めるものである。 今回の「CGコード」と「日本版スチュワードシップ・コード」は、車の両輪とも称され、両者がそろったことで、建設的対話促進のための道具立てが揃ったと考えることができる。 「コーポレートガバナンス」は、会社が、株主をはじめ顧客・従業員・地域社会等の立場を踏まえた上で、透明・公正かつ迅速・果断な意思決定を行うための仕組みである。 これまで、会社法の前身である商法の下においては、監査役は、どちらかといえば取締役の適法性確保といった役割が重視されていたという側面がある。しかしながら、監査役には取締役の利益相反取引を監視するといった役割も期待されており、日本で監査役(会)制度を採用している企業において、監査役に取締役会での議決権がなく、取締役の監督機能を十分に発揮できるのかといった点で、海外投資家からは理解されにくいといった問題が指摘されてきた。 そこで、今回の2014年会社法(2015年5月1日施行)に関して、コーポレートガバナンス強化を目的とした3つの改正ポイントを紹介したい。 1つ目は、社外取締役・社外監査役の社外性要件の強化である。 親会社、兄弟会社、その近親者は社外取締役とはなれないとされ、1名以上の社外取締役を置いていない場合には、「社外取締役を置くことが相当でない理由」の開示が求められることとなっている。これは、本当に企業の中長期的な成長を促すための意見発信のできる適任者が社外取締役に選任されるべきであり、社外性の要件を厳しくすることで、コーポレートガバナンスの強化を図ろうとしている。 2つ目は、監査等委員会設置会社制度の新設である。 監査役に代えて社外取締役が過半数を占める監査等委員会が監査にあたること、取締役選任議案・取締役の報酬等について株主総会で意見陳述ができるとするものである。これは、従来の委員会設置会社(会社法改正後は指名委員会等設置会社)では、業務執行を行う取締役会以外の3つの委員会が過半数の社外取締役で構成される必要があり、日本ではほとんど浸透しなかったため、導入しやすい監査等委員会設置会社という新しい機関設計を設けることで、コーポレートガバナンス強化が図りやすいようにしたというのが、新設の背景にあると考えられる。 3つ目は、会計監査人の選解任等に関する議案の内容の決定権を監査役または監査役会に付与することである。 従来は会計監査人の選解任等に関する議案等についての同意権及び提案権を有するだけであった監査役(会)に、監査役会に会計監査人の選解任等に関する議案の内容の決定権を付与することで、監査役の発言権を強化し、ガバナンスの強化を図ろうとするものである。   〔コードの目的~実効的なコーポレートガバナンスの実現~〕 CGコードは、企業が株主から経営を付託された者としての責任(受託者責任)に関する説明責任を果たし、実効的なコーポレートガバナンスの実現、いわば「攻めのガバナンス」の実現を目指すものである。企業がCGコードに沿った行動をとり、本来の受託者責任を果たす、すなわち企業の企業価値の向上や持続的成長を促すことにより、顧客・受益者の中長期的な投資リターンの拡大を図ることが期待されている。   〔CGコードの構成〕 本コード原案は、 から構成されているが、基本原則・原則・補充原則のいずれもがComply or Explainの対象とされている。Comply or Explain については、次回において詳しく説明する予定である。 ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 なお、CGコード原案の各原則・補充原則の内容については、今後本シリーズの各回において詳しくご説明する。 (了)

#No. 112(掲載号)
#北尾 聡子
2015/03/26
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