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酒井克彦の〈深読み◆租税法〉 【第30回】「「海洋掘削装置」は所得税法上の「船舶」に当たるか?(その3)」~同一税法内部における同一用語の解釈~

筆者:酒井 克彦

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酒井克彦の

〈深読み◆租税法〉

【第30回】

「「海洋掘削装置」は所得税法上の「船舶」に当たるか?(その3)」

~同一税法内部における同一用語の解釈~

 

中央大学商学部教授・法学博士
酒井 克彦

 

《(その1)はこちら

1 事案の概要

2 争点

3 判決の概要

《(その2)はこちら》

4 解説

(1) 概念解釈の道筋

(2) 固有概念該当性

4 借用概念該当性

前述のとおり、所得税法161条3号にいう「船舶」が固有概念ではないとすると、次に、借用概念であるかどうか(前回のチャート図の④)という点が問題となるであろう。

東京地裁は、

これ〔筆者注:所得税法161条3号にいう『船舶』〕が他の特定の法律からのいわゆる借用概念であると解すべき根拠も見いだし難い。

とするが、このような理解は妥当なのであろうか。

そこで、「船舶」という用語を用いている他の法令について見てみたい。

ところで、借用概念論は、私法からの借用がその中心であり、公法はある特定の目的をもった法律であることから、公法からの借用という理解の仕方は消極的になされるべきである旨はすでに論じてきたところである(本連載第18回参照)。

そうであるとするならば、「船舶」という用語を用いている法令は多数あるが、まずは私法領域の概念を確認しておくべきであろう。海上企業活動の関係主体の利益を調整する立場から規制するものとして商法第3編《海商》に置かれた商法684条1項は、同法における「船舶」について、商行為をする目的をもって航海の用に供するものをいう旨を定めている。

商法684条

本法ニ於テ船舶トハ商行為ヲ為ス目的ヲ以テ航海ノ用ニ供スルモノヲ謂フ

2 本編ノ規定ハ端舟其他櫓櫂ノミヲ以テ運転シ又ハ主トシテ櫓櫂ヲ以テ運転スル舟ニハ之ヲ適用セス

これに対し、船舶の国籍、総トン数その他の登録に関する事項及び船舶の航行に関する行政上の取締り等を定めた公法である船舶法は、同法35条本文において、商行為をする目的を有さずに航海の用に供するものも同法における「船舶」に含まれることを前提に、これに商法第3編の規定が準用される旨を定めている。他方、船舶法施行細則2条は、推進器を有しないしゅんせつ船は船舶法における「船舶」とはみなさない旨を定めている。


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筆者紹介

  • 酒井 克彦

    (さかい・かつひこ)

    法学博士(中央大学)。
    国税庁等での勤務を経て、現在、中央大学商学部教授として、学部のほか大学院やロースクール等でも教鞭をとる。
    一般社団法人アコード租税総合研究所 所長、一般社団法人ファルクラム 代表理事。

    一般社団法人ファルクラム http://fulcrumtax.net/
    一般社団法人アコード租税総合研究所 http://accordtax.net/

    【著書】
    「正当な理由」をめぐる認定判断と税務解釈―判断に迷う《加算税免除規定》の解釈』(2015年、清文社)
    「相当性」をめぐる認定判断と税務解釈―借地権課税における「相当の地代」を主たる論点として』(2013年、清文社)
    『スタートアップ租税法〔第3版〕』(2015年)、『クローズアップ保険税務』(2016年)その他5冊のアップシリーズ(財経詳報社)
    『裁判例からみる所得税法』(2016年、大蔵財務協会)
    『裁判例からみる法人税法〔2訂版〕』(2017年、大蔵財務協会)
    『レクチャー租税法解釈入門』(2015年、弘文堂)
    『プログレッシブ税務会計論Ⅰ〔第2版〕、Ⅱ〔第2版〕』(2018年、中央経済社)
    『アクセス税務通達の読み方』(2016年)、『税理士業務に活かす!通達のチェックポイント -法人税裁判事例精選20』(2017年)、『税理士業務に活かす!通達のチェックポイント -所得税裁判事例精選20』(2018年、第一法規)
    『30年分申告・31年度改正対応 キャッチアップ仮想通貨の最新税務』(2019年、ぎょうせい)
    その他書籍・論文多数

     

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