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法人税の解釈をめぐる論点整理 《交際費》編 【第1回】

法人税の解釈をめぐる論点整理 《交際費》編 【第1回】   弁護士 木村 浩之     1 はじめに 法人が支出する交際費の中には、事業との関連性が必ずしも高いとはいえないものが含まれており、また、無制限に損金算入を認めるとすれば、いたずらに冗費・濫費を増大させ、法人の所得金額が操作されるおそれもある。特に、法人の役員等が交際費を使用する際には、それが役員等に対する現物給与には該当しないとしても、どの程度法人の事業と関連性を有するものであるか不透明な場合がある。 そこで、交際費(ただし、一定の範囲のものは除かれる。後記2(2)参照)については、中小法人の場合に限り、定額の控除限度額(現在800万円)を定めて、その限度額の範囲内で損金算入を認め、それを超える部分については損金算入を認めないものとされている(措法61の4)。 ただし、交際費のうち接待飲食費については、平成26年度税制改正により、大法人であっても、50%に相当する金額までは損金算入が認められることになった。また、中小法人については、かかる50%の特例と上記の控除限度額のいずれか有利な方の選択適用が認められることになっている。 いずれにせよ、交際費については、一定の範囲で損金不算入とされていることから、税務調査などで、交際費の範囲等をめぐって問題となるケースは実に多い。そこで、本稿では、交際費をめぐる論点について整理した上で、あわせて問題となることが多い使途不明金(使途秘匿金)についても取り上げて解説することとしたい。 本稿で取り上げる予定のテーマは、以下のとおりである。   2 交際費の範囲(総論) (1) 交際費の要件 交際費課税の対象となる交際費とは、「交際費、接待費、機密費その他の費用で、法人が、その得意先、仕入先その他事業に関係のある者等に対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為のために支出するもの」(措法61の4④柱書)をいい、その要件は次のとおり整理することができる。 このうち、(ⅰ)の相手方要件については、相手方が事業とは全く関係のない場合は除かれるものの、事業に多少なりとも関係していれば広く含まれるのであり、法人内部の者(役員、従業員、株主等)であっても同様である。通常は、何らかの意味で事業に関係すると言い得るのであり、この要件が独立して問題になることは乏しいといえる。 そこで、重要となるのは、(ⅱ)の目的要件であるが、これは要するに、支出の目的が特定の相手方の歓心を買うことを主たるものとするかどうかという基準で判断がなされることになる。この支出の目的は主観的要素ではあるものの、その判断は客観的になされるものであり、相手方の属性、支出の経緯、背景、金額、態様、効果等の具体的事情を総合的に評価して判断されることになる(東京高判平成15年9月9日・税資253号順号9426参照)。 (2) 交際費から除外されるもの 上記の交際費の要件を満たす場合であっても、次に掲げる費用については、明文において交際費から除外されている(措法61の4④一~三、措令37の5①②)。 これらは形式的に交際費に該当するものであるとしても、事業との関連性が比較的高いと評価し得るもの、冗費としての性質が乏しいと評価できるものであり、実質的な観点からみて、交際費ではなく、通常の営業費用として単純に損金算入することが認められる。 (3) 交際費の判定手順 前記(1)でみたとおり、交際費に該当するかどうかは総合的な評価による判断とならざるを得ないことから、交際費と隣接費用(広告宣伝費、販売促進費、会議費、福利厚生費等の交際費以外の営業活動に伴う費用)との区分が問題となることは実に多いといえる。 これらを判定する手順としては、まずは、交際費から除外される費用に該当するか否かを検討することが思考経済上有益と思われる(前記(2)参照)。その上で、除外要件に該当しないものであるとしても、法人にとって単純損金となる費用に該当するのか、それとも交際費に該当するのかを支出の目的に照らして判断することになる(前記(1)参照)。その際には、支出の主たる目的が何であるのかを整理して検討することが有益であると思われる。 なお、交際費に該当する費用の支出については、相手方にとって無償でなされることが多く、寄附金との区分も問題となり得るが、その具体的な判断基準については、本連載の《寄附金》編を参照されたい。 (4) 小括 以上のとおり、交際費をめぐっては、隣接費用との区分が問題になることが多いといえるのであり、その一般的な判定方法について解説した。 次回以降は、交際費に関連して問題となることが多い論点を個別に敷衍して解説することとしたい。 (了)

#No. 101(掲載号)
#木村 浩之
2015/01/08

5%・8%税率が混在する消費税申告書の作成手順 【第4回】「個別対応方式による具体例」

5%・8%税率が混在する消費税申告書の作成手順 【第4回】 「個別対応方式による具体例」   アースタックス税理士法人 税理士 島添  浩 (監修) 税理士 小嶋 敏夫(執筆)   今回は個別対応方式を採用している事業者の確定申告書及び付表の記載方法を具体例に従って解説する。 設 例 B株式会社の当課税期間(平成26年1月1日~平成26年12月31日)の課税売上高等の状況は以下のとおりである。   【付表2-(2)の作成方法】 《記載見本》 ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。   【付表1の作成方法】 《記載見本》 ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 《確定申告書の記載見本》 ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 *  *  * 次回は、一括比例配分方式の場合の確定申告書及びその付表の作成方法を確認する。 (了)

#No. 101(掲載号)
#島添 浩、小嶋 敏夫
2015/01/08

組織再編・資本等取引に関する最近の裁判例・裁決例について 【第17回】「日本IBM事件②」

組織再編・資本等取引に関する最近の裁判例・裁決例について 【第17回】 「日本IBM事件②」   公認会計士 佐藤 信祐   前回においては、日本IBM事件の概要について解説を行った。日本IBM事件の争点については3つ存在するが、そのうち、裁判所が判断を行っているのは、【争点1】のみである。 そのため、本稿においては、【争点1】についての原告、被告のそれぞれの主張について解説を行う。 (5) 当事者の主張 ① 被告の主張 (ⅰ) 法人税法132条1項の射程範囲について 法人税法132条1項にいう「不当」なものであるか否かは、同項が、同族会社について、一般に1人又は少数の株主又は社員によって支配されていることから、会社の意思決定を容易に操作することが可能であり、租税回避行為を容易になし得ることに鑑みて創設されたものであることを踏まえると、専ら経済的・実質的見地において、当該行為又は計算が通常の経済人の行為又は計算として不合理・不自然なものと認められるかどうかを基準として判断すべきであり、行為・計算が経済的合理性を欠いている場合とは、それが異常ないし変則的で租税回避以外に正当な理由ないし事業目的が存在せず、専ら租税回避の目的に出たものと認められる場合や、独立・対等で相互に特殊関係のない当事者間で通常行われる取引とは異なっている場合をいうものと解すべきである。 そして、これらの事項を解明するためには、当該行為又は計算の内容、その必要性、合理性等といった当該行為又は計算自体に関する事情を考慮することはもとより、当該行為又は計算が行われるに至った経緯や目的、その後の状況、当該行為又は計算を行った同族会社と関連会社(同族親会社等)との関係等といった当該行為又は計算に関連する周辺事情も含めて考慮する必要があり、これらを総合して不当性の評価を行うべきである。 また、当該行為を行った時点における当該法人の租税回避の意図の有無だけを問題とするのではなく、当該法人と密接に関連する法人の租税回避の意図に従って当該行為が行われたという事実が認定又は合理的に推認できるのであれば、当該法人がいつの時点でその意図を有するに至ったかが必ずしも明確に特定されていなくても、その一連の事実関係は不当性の評価を基礎づける重要な事実となり得るというべきである。 このように、法人税法132条1項において、不当性の評価に影響を与える具体的な事実は、「否認」の対象となる法人の行為又は計算自体に関する事実に限られるものではなく、その周辺事情も広く含まれると解するのが相当である。 (ⅱ) 本事件への当てはめ 本件株式購入がされる前は、米国WTが日本IBMに対して直接に同社の株式を譲渡することによって、日本IBMから利益の還元を受けるという通常の経済人の行為又は計算として合理的かつ自然な取引がされていたところ、本件各譲渡は、上記のような取引の間に、独立した法主体としての事業上の存在意義が極めて希薄な原告を中間持株会社としてあえて介在させたものであり、原告は米国WTのいわゆる分身として、米国IBMの意を受けて日本IBMの株式を法律上形式的に保有していたにすぎず、経済実質的に見れば、日本IBMの株式を保有していたのは米国WTであって、本件各譲渡における実質的な譲渡人も原告ではなく米国WTであるということができる。このことは、 〔1〕 チェック・ザ・ボックス規則等を活用しつつ、米国の税制上は内部取引として扱われる米国WTから原告への日本IBMの株式の譲渡を行うことによって、原告の下で同社の株式の取得価額をかさ上げする結果を作り出すとともに、 〔2〕 本件株式購入の前後において、日本IBMが自己株式を取得した都度、その代金を日本から直ちに米国WTへ送金し、米国IBMに日本IBMが得た利益を還元するという経済的、実質的実態は何ら変わっていないにもかかわらず、原告を日本IBMが自己株式を取得する取引に介在させて原告が日本IBMから自己株式の取得に係る譲渡対価を受領することとしたことにより、米国WTの分身としての我が国の内国法人である原告をして、法人税法24条1項5号等の規定の適用を受けることを可能とし、我が国において利用可能な多額の株式譲渡損を計算上発生させた ことを意味する。 米国IBM及びIBMグループは、わざわざ有限会社である原告を取得し、中間持株会社とするための各種手続を手間暇かけて行ったが、それは、当初から、将来的に日本におけるIBMグループを成す法人について連結納税制度を利用して、日本IBMの株式の譲渡によって生じる有価証券譲渡損失を連結課税所得から控除することを想定したものである。このことは、本件株式購入後に原告が果たした機能やその活動を勘案しても、その持株会社としての役割、活動は形式的、名目的なものにすぎず、原告の持株会社としての具体的な事業上の存在意義は極めて希薄であると評価せざるを得ないことからも裏付けられる。 このように、いずれもIBMグループを成す法人である米国WTが保有する日本IBMの株式を同社が取得する取引について、傘下に多数のグループ企業を擁する日本IBMとは別に、わざわざ原告を中間持株会社として米国WTと日本IBMの中間に置き、原告を介して日本IBMが自己株式取得により米国側へ利益を還元した一連の行為は、巨額の税負担の軽減という効果を除けば、通常の経済人として正当な事業目的を有する合理的な行為とは到底認められない異常ないし変則的行為であって、遅くとも本件各譲渡の計画がされた時点までに原告ひいては米国IBM及びIBMグループの不当な租税回避を企図した上でされたものといわざるを得ないから、原告による本件各譲渡を容認した場合には、原告の法人税の負担を不当に減少させる結果となるものであることは明らかである。 ② 原告の主張 (ⅰ) 法人税法132条1項の射程範囲について 対象となる行為又は計算の内容あるいは行為そのものが不合理、不自然なものであることが否認の要件となっているというべきであり(札幌高裁昭和51年1月13日判決・訟務月報22巻3号756頁及びその上告審判決である最高裁昭和53年判決も同旨であると解される。)、対象となる行為又は計算が行われた背景事情を基礎づける事実にすぎない経緯、目的、その後の状況等の周辺事情又は対象となる行為又は計算を行うに至った同族会社の意思決定過程等の特殊性は、行為若しくは計算の内容又は行為そのものの不合理、不自然さを基礎づける事実ではないから、これらの事情を総合的に判断することにより同項にいう「不当」性を肯定することはできないというべきである。 (ⅱ) 本事件への当てはめ 日本再編プロジェクト(日本におけるIBMグループを成す会社に係る持株会社として原告を設置するプロジェクト)は、IBMグループが平成14年頃に進めていたグローバルな組織再編の一環として、日本における事業展開を見据えた上で、 〔1〕 日本におけるIBMグループを成す会社を全て持株会社である原告の下に統合すること 〔2〕 原告を当時米国IBMが精力的に行っていた事業買収取引における日本の受皿会社とすること 〔3〕 原告をして資金のより効率的な配分を行う機能を担わせること 〔4〕 原告をして日本において新規事業を行う場合の受皿会社とすること という4つの目的を達成するために企画実行されたものであるところ、中間持株会社の設置は、いわゆる多国籍企業が世界中において各国への投資形態として頻繁に採用している形態であり、外国企業の対日投資の形態として一般的に採用されるようになった異常性も変則性もないものである。また、本件各譲渡は、そもそも、日本IBMが平成9年以降株主への利益還元手段として採用してきた取引そのものであって、異常な法形式でもなく、変則的な取引でもないところ、日本再編プロジェクトとは全く別の時期に、全く別の意思決定によってされた取引である。そして、これらのこと(原告の設置及び本件各譲渡)は、上記の法人税法の改正、連結納税制度の導入に係る税制改正の動向とは全く無関係に企画、決定及び実行されたものであって、本件各譲渡により原告に有価証券の譲渡損が生ずることや将来連結納税制度を利用してかかる譲渡損を利用することについては何らの関心の対象ではなかった。さらに、自己株式を譲渡する取引によってみなし配当の額が計算されることにより有価証券の譲渡損が発生し、みなし配当の額を含む配当等の額の益金不算入の制度と相まって欠損金が計上されるという結果は、法人税法が定める計算規定の論理的帰結であって、特別な課税の減免ではなく、租税法規が課税所得の計算結果として当然に予定しているものである。 被告は、 〔1〕 行為又は計算を容認した場合には法人税の負担を減少させる結果となることと 〔2〕 法人税の負担の減少が法人税法上不当と評価される行為又は計算に基づくものであること とを分断して、各々独立した要件とし、いわば縦割り方式で、それぞれに該当する事実の認定及び評価を行うという論法を採っている。その結果、上記〔1〕の要件については、原告による正常な行為又は計算による税額との比較を示すことなく、原告自身の行為としては株式譲渡損の計上に基づく欠損金の計上のみを摘示(比較対象として、米国WTが直接日本IBMに対し同社の株式を譲渡した場合という原告以外の者の行為又は計算を挙げる)し、上記〔2〕の要件については、例えば、原告における意思決定過程の特殊性や独立性、主体性の欠如といった、同族会社の行為又は計算であることという別の要件において既に評価済みであって法人税負担の減少と直接結びつかない事実を法人税法132条1項の「不当」性を基礎づける事実として摘示して、それぞれの要件が充足された旨主張する。このような被告の主張・立証における論法は、例えば、税負担の減少効果のある行為又は計算について、重箱の隅を突いて少しでも不合理、不自然な事実が見つかれば、それが税負担の減少と無関係な事実であっても、同項の適用要件を満たすというものであり、要件事実論を悪用した典型的なこじつけである。 ③ 総括 このように、法人税法132条に規定する同族会社等の行為計算の否認の適用対象として、原告側は従来の判例・通説に従って厳格に捉えようとしているのに対し、被告側は周辺事情も含めたうえで、広く捉えようとしているという点が特徴的である。 すなわち、第1回から第15回で解説した法人税法132条の2に規定する包括的租税回避防止規定と同様に、射程範囲を広くしようとしている国税当局の試みを窺い知ることができ、本来であれば、法人税法132条の2と同様に、制度の濫用と認められるものについても同族会社等の行為計算の否認対象に含めたいのであろうという印象を受ける。 次回以降は、このような当事者の主張を受けて、裁判所がどのような判断を行ったのかについて解説を行う予定である。 (了)

#No. 101(掲載号)
#佐藤 信祐
2015/01/08

こんなときどうする?復興特別所得税の実務Q&A 【第17回】「源泉所得税及び復興特別所得税の誤納額の還付請求・充当届出」

こんなときどうする? 復興特別所得税の実務Q&A 【第17回】 「源泉所得税及び復興特別所得税の誤納額の還付請求・充当届出」   税理士・社会保険労務士 上前 剛   当社は、設立直後に「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」を税務署へ提出しています。 7~12月に源泉徴収した所得税及び復興特別所得税の合計額は20万円、年末調整による還付額の合計額は15万円、結果として、1月20日までに納付する所得税及び復興特別所得税は5万円となりました。ところが、経理担当のAさんが納付書を作成する際、5万円と記載すべきところ、誤って20万円と記載し、1月8日に銀行にて納付しました。 納め過ぎた15万円の処理についてご教示ください。 次の理由で源泉所得税及び復興特別所得税を納め過ぎたときは、会社は税務署に過誤納金の還付請求をすることができる。また、過誤納金が給与や賞与に係るものであるときは、還付請求に代えて、その後に納付する源泉所得税及び復興特別所得税に充当することができる。 今回のケースにおいては、上記下線部に該当することから会社は税務署に過誤納金の還付請求をすることができる。また、過誤納金が給与や賞与に係るものであることから、還付請求に代えて、その後に納付する源泉所得税及び復興特別所得税に充当することもできる。具体的には、会社は所轄の税務署に次に掲げる書類を提出する。 (了)

#No. 101(掲載号)
#上前 剛
2015/01/08

税務判例を読むための税法の学び方【51】 〔第6章〕判例の見方(その9)

税務判例を読むための税法の学び方【51】 〔第6章〕判例の見方 (その9)   立正大学法学部准教授 税理士 長島 弘   ⑤ 裁判の不服申立てに係る裁判の種類 裁判に対する不服申立てには、上級裁判所への「上訴」がある。ただし手形訴訟及び少額訴訟については、同一裁判所への異議の申立てが可能である(民事訴訟法第357条、第378条)。そのほか、特別の不服申立てとして、一定の事由に該当した場合には、再審の訴えと特別上訴がある。 (a) 通常の上訴 上訴は、裁判が確定する前に、上級裁判所に対し、その裁判の取消し・変更を求める不服申立てであるが、裁判の形式(判決・決定・命令)に対応して、判決に対する控訴及び上告と、決定・命令に対する抗告及び再抗告とがある。 このように判決には二段階の上訴が規定されており、第一審と合わせて三審級にわたって裁判を受けることができるようになっている(三審制)。 控訴審(及び抗告審)では、原裁判における事実認定と法規の適用の両面について審理される(事実審)が、上告審(及び再抗告審)は、原則として原裁判の法令違反についてのみ審理する法律審である。 なお、本連載【第43回】や【第44回】に示したように、上告理由は限定されており、事実上は三審制が保障されているとは言い難い状況にある。 再抗告は、民事訴訟法第330条に「抗告裁判所の決定に対しては、その決定に憲法の解釈の誤りがあることその他憲法の違反があること、又は決定に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があることを理由とするときに限り、更に抗告をすることができる。」と規定されている。【第43回】以下に記載しなかったため、ここで示す。 また、高等裁判所への上告の場合と最高裁判所への上告の場合には、若干上告理由が異なる(後掲)。 なお第一審が簡易裁判所の場合には、控訴審(及び抗告審)は地方裁判所で、上告審(及び再抗告審)は高等裁判所で行われることになる。ただし刑事裁判では、控訴審は高等裁判所、上告審は最高裁判所である(裁判所法第16条第1~3号)。また刑法第77条乃至79条の内乱罪等に関する裁判は、第一審から高等裁判所である(裁判所法第16条第4号))。 では、第一審がどのような場合に簡易裁判所になるかであるが、裁判所法第33条によれば、次の事項のものとされている。なお、行政事件訴訟に係る請求は、訴訟価額にかかわらず、第一審はすべて地方裁判所となる。 (b) 特別上訴 特別上訴は、憲法審への不服申立ての制度である。 憲法第81条において、「最高裁判所は、一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である」と規定されており、このような最高裁判所の違憲審査権を保障しようとするものであるため、原裁判に憲法解釈上の誤りがあること、その他憲法違反がある場合に限って許される。 特別上告は、高等裁判所が上告審としてした判決に対して認められる(民事訴訟法第327条、第380条第2項)。 特別抗告は、高裁の決定・命令や地裁・簡裁の決定・命令で不服を申し立てることができないものに対して認められるが、特別抗告の理由は、原裁判の憲法解釈の誤り又は憲法違反に限られる(民事訴訟法第336条)ため、違憲抗告とも呼ばれる。刑事訴訟法では、そのほか判例違反も特別抗告の理由となる(刑事訴訟法第433条、第405条)。 高裁への上告では、憲法違反(民事訴訟法第312条第1項)と絶対的上告理由(民事訴訟法第312条第2項第1~6号に列挙される手続違反)のほか、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反も、上告理由とされている。民事訴訟法第312条第3項には、「高等裁判所にする上告は、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があることを理由とするときも、することができる。」と規定されている。しかし、最高裁への上告の場合には、上告理由として憲法違反と絶対的上告理由に限られ、憲法以外の法令の違反は、上告理由とならず、上告受理の申立てによるしかない。 この上告受理の申立てとは、民事裁判において(刑事裁判においては「事件受理の申立」という)、上告をすべき裁判所が最高裁判所である場合に、原判決に最高裁判所の判例と相反する判断がある事件その他の法令の解釈に関する重要な事項を含むものと認められる事件について、最高裁判所に対して上告審として受理することを求める申立てをいう(民事訴訟法第318条1項)。 (続く)

#No. 101(掲載号)
#長島 弘
2015/01/08

減損会計を学ぶ 【第24回】「減損会計の開示・税効果」

減損会計を学ぶ 【第24回】 (最終回)  「減損会計の開示・税効果」   公認会計士 阿部 光成   減損会計の適用により、財務諸表における開示として、貸借対照表及び損益計算書の表示並びに注記事項が規定されている。 また、通常、固定資産の減損損失については、税務上、損金算入されないことから、税効果会計の対象となる一時差異等が発生することになる。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅰ 財務諸表における開示 減損適用指針では、財務諸表における開示について以下のように規定している。 実際の財務諸表における開示に際しては、財務諸表等規則及び連結財務諸表規則に従って開示を行っていただきたい。 1 貸借対照表の表示 減損処理を行った資産の貸借対照表における表示は、以下のように行う(「固定資産の減損に係る会計基準の適用指針」(企業会計基準適用指針第6号。以下「減損適用指針」という)57項、139項)。 減損処理を行った資産の貸借対照表における表示形式は、例えば、減価償却累計額については各資産科目に対する控除項目として掲記する(間接控除形式)が、減損損失については直接控除形式を採るなど、減価償却累計額の表示形式と同じものである必要はない(減損適用指針57項、139項)。 2 損益計算書の表示 減損損失は、原則として、特別損失とする(「固定資産の減損に係る会計基準」四、2)。 3 注記事項 重要な減損損失を認識した場合には、損益計算書(特別損失)に係る注記事項として、以下の項目を注記する(減損適用指針58項、140項)。 上記の注記事項は、資産グループごとに記載する。ただし、多数の資産グループにおいて重要な減損損失が発生している場合には、資産の用途や場所等に基づいて、まとめて記載することができる(減損適用指針59項)。 割引率の開示については、少なくとも割引率のみ開示すれば足り、その算定方法の開示までは求められていない(減損適用指針141項)。 また、経済的残存使用年数を注記することまでは求められていない(減損適用指針142項)。   Ⅱ 固定資産の減損損失に係る税効果会計 固定資産の減損損失に係る税効果会計については、「その他有価証券の評価差額及び固定資産の減損損失に係る税効果会計の適用における監査上の取扱い」(監査委員会報告第70号)に規定されている。 減損損失を計上することにより発生する将来減算一時差異に係る繰延税金資産の回収可能性の監査上の取扱いについても、「繰延税金資産の回収可能性の判断に関する監査上の取扱い」(監査委員会報告第66号)に従って検討及び判断する。 減損損失に係る将来減算一時差異は、解消までに長期間を要する可能性が高いこと、また、事業として使用している固定資産であることから、監査委員会報告第66号の適用に際しての留意点を、次のように規定している。 適用に際してのポイントは、「スケジューリングの可能性」にあると解される。 1 スケジューリングの可能性の判定 固定資産の減損損失に係る将来減算一時差異についての繰延税金資産の回収可能性は、監査委員会報告第66号によって判断することになる。 そこで、当該将来減算一時差異の解消時期について、スケジューリング可能な一時差異であるか、スケジューリング不能な一時差異であるかの判定を行う。 次のことに留意する必要がある(監査委員会報告第70号、Ⅱ2)。 2 スケジューリング可能な一時差異 監査上、次のように取り扱う。 なお、監査委員会報告第70号は、「土地の再評価に関する法律」に関する「再評価に係る繰延税金資産」の取扱いについても言及しているので、税効果会計の適用に際しては、注意が必要である(監査委員会報告第70号、Ⅱ2(2))。 3 スケジューリング不能な一時差異 スケジューリング不能な一時差異と判定されたものについては、監査委員会報告第66号の「5.(1)①(分類1)の会社等」を除いて、回収可能性はないものと判断する(監査委員会報告第70号、Ⅱ2)。   Ⅲ 終わりに 「減損会計を学ぶ」については今回の「第24回」で終了することとなる。 減損会計は、適用されてから時間が経過していることもあり、実務に定着していると思われる。 固定資産に関する会計は、減価償却などとも関連するものであり、また、実務上の論点が多岐にわたっているので、今回の連載が、少しでも実務に役立つことを期待している。 (連載了)

#No. 101(掲載号)
#阿部 光成
2015/01/08

経理担当者のためのベーシック会計Q&A 【第67回】企業結合会計④「株式交換」―株式交換前に株式交換完全子会社の株式の保有はなく、新株を企業結合の対価とする場合

経理担当者のための ベーシック会計Q&A 【第67回】 企業結合会計④ 「株式交換」 ―株式交換前に株式交換完全子会社の株式の保有はなく、新株を企業結合の対価とする場合   仰星監査法人 公認会計士 大川 泰広   〈事例による解説〉 〈会計処理〉 ① A社の会計処理 (*1) A社株式の1株当たり時価20×50株(*2)=1,000 (*2) B社発行済株式総数100株×交換比率0.5=50株(=A社がB社株主に発行したA社株式総数) (*3) 増加すべき払込資本の内訳は会社法の規定に従い、株式交換契約書で定めます。 ② B社の会計処理 (*4) 株式交換は「A社」と「B社の株主」との間で行われる取引であるため、B社においては会計処理が発生しません。   〈会計処理の解説〉 株式交換とは、株式会社がその発行済株式の全部を他の株式会社又は合同会社に取得させることをいいます(会社法2条31号)。株式交換は、完全親会社となる会社の株式や金銭等の対価と引換えに、完全子会社となる会社の株主が有する完全子会社株式を完全親会社に移転することにより、完全親子関係を作り出すことを目的とするものです。 株式交換をイメージで表すと以下のようになります。 【株式交換のイメージ】 上記(株式交換のイメージ)のとおり、株式交換は株式交換完全親会社A社と、株式交換完全子会社B社の株主との間で行われる取引です。株式交換完全子会社B社においては、何ら取引は発生しておらず、株主構成が変わるだけですので、株式交換完全子会社B社では会計処理は発生しません。 企業結合に関する会計基準(以下、基準)では、被取得企業の取得原価は、原則として取得の対価(支払対価)となる財の企業結合日における時価で算定すると定められています(基準23)。したがって、本事例におけるB社株式の取得原価は、株式交換日において、A社がB社の株主に対して発行するA社株式の時価20を基礎として算定することとなります。 A社はB社の株主に対して、B社株式1株につきA社株式0.5株を交付します。A社はB社を完全子会社化するため、B社の株主から発行済株式のすべてを取得することとなります。したがって、A社がB社の株主に交付するA社株式は全部で50株(=B社発行済株式総数100株×0.5)と なり、株式交換日におけるA社株式の1株当たりの時価20×交付した株式数50株=1,000が、B社株式の取得原価となります。 株式交換により、B社の株主はA社株式を保有するため、新たにA社の株主として加わります。したがって、A社が取得したB社株式の取得原価相当額は、払込資本の増加として認識します。増加すべき払込資本(資本金、資本準備金、資本剰余金)の内訳は、会社法の規定に従い、株式交換契約書にて当事者間で決定します。 *   *   * 次回は、共通支配下の取引(100%子会社同士の無対価合併)について解説します。 (了)

#No. 101(掲載号)
#大川 泰広
2015/01/08

最新!《助成金》情報 【第8回】「雇用関連助成金の活用(その8)《中小企業労働環境向上助成金》」

最新!《助成金》情報 【第8回】 「雇用関連助成金の活用(その8) 《中小企業労働環境向上助成金》」   特定社会保険労務士 五十嵐 芳樹   《中小企業労働環境向上助成金》 この助成金の目的は、労働環境向上のための措置を講じた中小企業事業主や事業協同組合などを助成することで、雇用管理の改善を推進し魅力ある職場を作ることにより人材の確保定着を図ることであり、次の2コースがある。 1 目的 この助成金は、評価・処遇や研修体系あるいは健康づくりなどの雇用管理制度を導入する次の対象分野(重点分野関連事業主)の中小事業主(【第1回】参照)や介護関連事業主を助成することで、人材の確保と定着を目的とする。 介護関連事業主(都道府県が指定・監督)は、他の事業と兼業していても差し支えない。ただし、対象となるのは計画初日の前日から起算して6ヶ月前の日から支給申請書提出日までに事業主都合による解雇(勧奨等退職を含む)者又は6%(3人以下除く)を超える特定受給資格者を出していない事業主に限る。   2 対象となる雇用管理制度 【重点分野関連事業主】 =次のいずれかの措置を定めた就業規則等を監督署に届け出てから実際にそれらの制度を導入すること (1) 評価・処遇制度の導入 ①評価・処遇制度、②昇進・昇格基準、③賃金体系制度、④諸手当制度のいずれか。 (2) 研修体系制度の導入 新任・管理職・幹部社員研修など能力付与の一定内容で1人10時間以上の教育訓練。 (3) 健康づくり制度の導入 費用の半額以上を事業主が負担する、①人間ドック、②生活習慣病予防検診、③腰痛健康診断、④メンタルヘルス相談のいずれか。 【介護関連事業主】 =次のいずれかの措置を導入すること (1)~(3)の措置は重点分野関連事業主と同じ (4) 介護福祉機器の導入 介護労働の環境改善のための次のいずれかの介護福祉機器を導入するとともに、導入後は適切な運用措置を行うこと。   3 支給額 (1) 重点分野関連事業主 (2) 介護関連事業主 (※)導入効果=職員の改善率60%以上で支給決定される。   4 手続の流れ   5 活用のポイント 能力や意欲・貢献度が高い社員を適正に評価し処遇しなければ、やる気を失い企業活力が低下するだけでなく、良い人材が離職する可能性がある。適正な評価と処遇には根拠制度が必要であるため、雇用管理制度導入を考えている中小企業では、この助成金は特に有効と思われる。 また、介護事業所では身体的負担を理由とする介護労働者の離職者が多いが、介護福祉機器の導入は身体的負担の軽減に効果的であるため、介護労働者の離職率を低減させるには、この助成金は特に効果的と思われる。   1 目的 この助成金は、構成員である中小企業の労働環境向上事業を推進する事業主団体を助成することで、雇用管理の改善を図り人材の確保定着を実現することを目的とする。   2 対象となる事業主団体 この助成金の対象となる事業主団体は、[Ⅰ]の1で示した対象分野の事業を営む中小企業を構成員として含む次の事業主団体とする。   3 対象となる労働環境向上事業 1年間の事業実施期間に、次の(1)と(4)を実施しかつ(2)又は(3)のいずれか又は両方を実施する。 (1) 計画策定・調査事業 労働環境向上に必要な調査研究を行って事業実施計画を策定するとともに、雇用管理状況や意識調査など雇用管理を改善する課題を把握する事業 (2) 安定的雇用確保事業 募集採用の諸問題を改善するための、募集採用ガイドブック作成や合同会社説明会などの開催などの事業 (3) 職場定着事業 職場定着のための雇用環境の問題改善事業や安全衛生セミナー等の開催や、職業相談員配置などの事業 (4) モデル事業普及活動 労働環境向上事業の効果を把握し、その成果の普及や活用を図るためのモデル事業説明会の開催など   4 支給額 この助成金の支給額は、1年間の労働環境向上事業の実施費用の2/3の額が支給される。ただし、構成中小企業者の数により次の支給限度額がある。   5 手続の流れ   6 活用のポイント 事業主団体ごとの規模や業種、取引関係などにより団体を構成する中小企業に共通した特長や課題などがある場合は、課題の解決や改善を推進する事業を行う団体にとってこの助成金は特に有効と思われる。また、事業主団体に他団体との相互交流がある場合は、それぞれの団体の課題解決事例や改善事例を共有できればさらに高い効果が期待できると思われる。  (了)

#No. 101(掲載号)
#五十嵐 芳樹
2015/01/08

〔2015年からできる!〕企業が行うマイナンバー制度への実務対応 【第1回】「制度の再確認と企業対応の意義、必須情報(資料)の紹介」

〔2015年からできる!〕 企業が行うマイナンバー制度への実務対応 【第1回】 「制度の再確認と企業対応の意義、必須情報(資料)の紹介」   仰星監査法人 公認会計士 岡田 健司   -はじめに- 現在のところ予定されているスケジュールから考えると、本稿公開日時点(2015/1/8)において、「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」(平成25年5月31日法律第27号、最終改正:平成26年6月25日法律第83号、以下本連載において「番号法」という。)の施行まで1年を切った。 個人番号の通知、法人番号の通知・公表まで残すところ9か月と僅か、である。 読者が関係する各社では、順次対応が進められているであろうか。 ある調査によれば、番号法等によって整備されるマイナンバー制度の認知状況は極めて低く、中堅・中小企業に対するマイナンバー制度の早急な啓蒙活動が必要との提言がみられた。実際、自社で対応すべき事項を把握していない、あるいは対応すべき事項をある程度は把握しているもののまだ実際の実務への落とし込みには至っていないというケースも多いのではないだろうか。 そこで、本連載では「〔2015年からできる!〕企業が行うマイナンバー制度への実務対応」と題し、2015年の1年間で、民間企業(金融機関を除く)が番号法にどう対処していくべきか、残された期間から逆算して、どのような手順で何をすべきか、解説していきたい。 今回も含めて計4回シリーズとし、およそ次のとおりの内容を予定している。 第1回となる本稿では、マイナンバー制度について改めて振り返るとともに、企業対応が必要となる理由について確認する。さらに制度対応を図るうえで必ず知っておくべき情報(資料)について「情報の発信元(情報源)」と「情報(法令・資料・Q&A・その他)」という対比で整理をしていきたい。   1 マイナンバー制度について改めて確認 (1) マイナンバー制度とは何か、なぜ企業対応が必要か 番号法等によるマイナンバー制度については、既にさまざまな箇所で説明がなされているが、制度全体を所管する内閣府の概要資料(下記参照)が最もわかりやすくコンパクトにまとまっていると思われる。まずはこの30ページほどの概要資料を参考に、概要の把握に努められたい。 マイナンバー制度とは、端的に(現状においては)「マイナンバーにより、行政組織間の情報連携を可能にする仕組み」であり、マイナンバー制度対応とは、すべての民間企業にこの仕組みの整備と運用に協力する法令上の義務が課せられていることから、この仕組みに対処可能な社内体制を整備する、ということである。 要するに、すべての民間企業は、行政組織からの求め、あるいは法令上の義務規定によって、マイナンバーとこれに関連した情報(※)を提供しなければならないことから、法令で規定された必要な範囲でマイナンバーを入手し、厳格に情報管理を行わなければならなくなる。また、そのための社内体制の整備を行わなければならない。 (※) これらが一般的には法定調書や各種の届出書・申請書として一体化されている。 なお、この「社内体制」とは、主には「管理面」(マイナンバーの確認・入手・保管記録・情報管理・廃棄など)と「出力面」という2つの側面があるが、この点は次回以降で解説する。 このように、企業は法定調書等を適切に出力し提出するために、社内の事務フロー、情報システムを修正・改修する必要に迫られているのであり、これら一連の作業が「マイナンバー制度対応」と呼ぶべきものである。 これらに内包され、さらに実務をややこしくするのが、新たに必要となる『本人確認』という手続であるが、この点についても次回以降で解説する。 なお、インターネットでは『内閣府 マイナンバー』と入力して検索すれば、内閣府の該当サイトが最も上位にヒットする。後ほど紹介するが、まずは当該サイトから情報を入手することが肝要である。 補足であるが、平成27年1月5日、政府は預金口座にマイナンバーを付番することを決定した。税制調査会における平成26年4月8日の提言を受けてのことだが、筆者の個人的な感想として、異例ともいえるスピードでの決定であった。 これにより、マイナンバーを活用しさらなるICT化が進められていくであろうことは、誰にとっても疑いのない状況になったといえる。 (2) マイナンバー制度の今後のスケジュール マイナンバー制度の今後のスケジュールについては、下記参考図①②(前出の「概要資料」23ページ及び25ページ)を参照されたい。 【参考図①】 【参考図②】 現状の予定では、キーとなる起点としては、個人番号が通知され、法人番号が通知・公表される「平成27年10月」、個人番号カードが交付され、また、順次マイナンバー(個人番号及び法人番号)が利用され始める「平成28年1月」がある。 そこで、このスケジュールを所与のものとし、マイナンバー制度対応のためのスケジュール・手順・方法等をよくよく考えていかねばならない。 なお、よくある質問に対し先行して回答しておくと、マイナンバーを用いた年末調整の時期についてであるが、初回は「平成28年12月(末)」である。 その結果、マイナンバーを記載した源泉徴収票や給与支払報告書の提出は「平成29年1月末(期限)」となる。 これらの点に関連して注意したいのは、平成28年度の源泉徴収や年末調整にあたって必要となる扶養控除等(異動)申告書の提出期限は、「平成28年1月度の給与支払日の前日まで」であるという点である。   2 実務対応に必須の情報(資料) 前出した概要資料も含め、企業がマイナンバー制度対応を行っていくうえで確認し、参照すべき情報は、既に各行政機関等からたくさん公開されている。 そこで、次回以降の実務対応について考えていく前提として、これらの情報・資料をまず整理しておきたい。   3 本稿のまとめ 以上のように、マイナンバー制度対応とは、 以上の一連の作業をいう。 また本稿では、これらの実務上の対応を図っていくうえで必要となる情報の整理を行った。 次回以降、具体的に企業はどのように対応を図っていく必要があるのか、解説を行っていきたい。 (了)

#No. 101(掲載号)
#岡田 健司
2015/01/08

〔小説〕『東上野税務署の多楠と新田』~税務調査官の思考法~ 【第4話】「追及」

〔小説〕 『東上野税務署の多楠と新田』 ~税務調査官の思考法~ 【第4話】 「追及」 税理士 堀内 章典     オーバーラップ 多楠は赤羽のスナック「かわばた」でビールを飲んでいる。 多楠の隣では、さっきまでカラオケを熱唱していた新田が、また黙って水割りを飲んでいる。 前回ここに来たのは異動直後だったから、2ヶ月ほど前。 京子ママの話では、新田はその間にもちょくちょく顔を出していたようだ。 (黙って酒を飲んでカラオケを歌うだけなら、何も僕を連れてくる必要はないだろうに・・・) 今日は9月20日。7月からスタートした調査事務も第一四半期がそろそろ終りというタイミングで、署長、副署長以下東上野署幹部を相手に「事案報告会」が行われた。 その報告が無事終了したことで、田村の発案で部門全体の「ご苦労さん会」が行われ、そのあと前回と同じように新田に誘われ、スナック「かわばた」に来たのだ。 今回事案報告をしたのは三浦上席チームと、新田調査官チームであった。三浦チームの報告事案はこの間から大騒ぎしていた仏具屋の売上除外1,000万円事案、結局不正計算もあったが、もともと帳簿がズサンで経費のもれが出てきて、プラスマイナスの不正所得200万円で終結していた。 一方、新田チームの事件は、例の金杉商店の不正事案。 不正所得で3,000万円は、東上野署でもそう多くはない大型不正事案に発展していた。 ご苦労さん会での田村統括官の喜びようといったらない。 「皆さんのおかげで私の勤務成績も良くなる! ありがとう!」 定年まであと何年もないのに今さら勤務成績でもないだろうと、部下職員一同は新田を除いて苦笑した。2つの事案は共に、今年最初に着手した事案で調査1年目の新人調査官が不正の端緒を見つけたとして、田村統括官が署の幹部に報告。調査部門の先陣を切って鼻高々といった様子である。 隣の特別調査部門である法人課税第4部門では、1つの事案に大量の調査官を投下した合同調査を実施したり、無予告調査を盛んに行い、今日も遅くまで残業をしている。しかしながら、まだ大きな不正計算を見つけたという話は聞いていない。 多楠はちびちびビールを飲みながら、また熱唱をはじめた新田の姿を横目で見ているうちに、すっかり秋めいた今では信じられない暑さのなか行われた、金杉商店での熱い調査場面がオーバーラップしてきた。 ▼   ▲   ▼ 「売上急増、所得低調の・・・理由?」 前回の調査にも立ち会っており、調査とはどういうものか経験済みの森本社長も、手強そうな調査官からの素朴な質問を受け、明らかに動揺していた。 「え~と、あの、その・・・」 口ごもる森本社長をじっと見つめていた新田であったが、それ以上追及しなかった。 調査はいったん昼食のため中断。暑いなか東上野署に戻るのは嫌だったが、新田が署に戻るというので、2人は署内の地下食堂で昼食をとった。 向かい合って黙々と食事をとる多楠と新田。 多楠は準備調査のときに新田に聞かれ厳しい言葉を投げられた「売上急増、所得低調の理由」という答えを、なぜ新田は森本社長に質問したのか尋ねたかったが、どうせ答えは返ってこないと承知していたので、あえて聞くことをやめた。 食事を終えたあと新田は自席に戻ると、自販機で買ったホットコーヒーをすすりながら、机の中からおもむろにノートを出し、じっと見つめていた。 隣の席でそれを見ていた多楠は「何のノートとだろう」と興味がわいたものの、一時の緊張から解き放たれたのか、放心状態のまま・・・。 「・・・おい、時間だぞ。」 新田の声で目が醒めた多楠、いよいよ後半戦の開始、2人は調査会社へ向かった (次ページへ) (前ページへ) 反面調査 社長の森本はすっかり気を取り直したのか、何事もなかったかのように多楠たちを迎え入れ、2人の調査官が求める帳簿書類を提示した。 多楠が調べたのは売上帳、新田が求めたのは給与台帳であった。 会社に来る途中、新田から「売上を見るように」と指示を受けた多楠は売上帳を、何か不審な点はないかと懸命に調べ始めた。 驚いたことに一方の新田は、午前とは一転して多弁。 給与についての詳細な説明を求め、帳簿書類を確認、そしてまた質問を繰り返した。 その質問は調査1年目の多楠でも理解できるほど極めて簡潔明瞭、多楠と話すときとはまるで別人である、まさに的確な仕事をこなす優秀な調査官の姿であった。 その新田の姿に少しのあいだ見とれていた多楠は、気づいた。 “そしてどうやら新田さんは、給与にポイントを絞ったようだ。” 新田は給与台帳を見ながら、森本社長に質問を続けた。 「社長さん、御社はここ4年間毎年決算期末の12月に2回社員にボーナスを支払っていますね。10日は銀行振込で25日は現金支給のようですが。」 森本 「新田さんも先ほど作業場をご覧になったでしょう。あんな汚くてうるさい作業場で、それも夏暑く、冬は極寒。 ウチみたいな小さな会社で一生懸命働いてもらうには、せめて儲かった時くらいボーナスを払うことぐらいしかできないんです。」 すかさず尾崎 「ここ数年アルミやステンレスの相場も活況で売上が右肩上がり、森本社長の頑張りもあってけっこう利益が出ました。でも社長は、利益が出たからといって独り占めにしないで従業員にも還元するという方です。いわば決算賞与、本当に従業員思いの社長ですよ。」 うなずきながら得意げに森本 「ボーナスを現金で払うと従業員たちも喜ぶんですよ。中には奥さんに内緒にしているヤツもいるんじゃないかなぁ。でも暮れなんで飲んだ勢いで落としたり、すられたりしないか心配なんですけどネ。」 しきりに森本をフォローする尾崎 「そうそう現金支給のボーナスの源泉所得税もしっかり徴収しているはずですよ。ウチの事務員が森本社長からなかなか支給額の連絡が来ないので年末調整の入力ができないって毎年のようにぼやいていますから、確認してみてください。」 それを聴いていた多楠は (そうか、この社長ならあり得ない話ではないな。) さっき社長が動揺したこともすっかり忘れ、半ば感心していた。 ▼   ▲   ▼ 調査は4時半ごろまで続いた。多楠は売上帳を黙々と確認したり、これはおかしいと思うところを書き写したりしていた。 新田は、一度トイレに立った以外は、従業員の5年分の給与台帳から、源泉所得税、社会保険の加入状況、通勤費の支給状況、それ以外ではタイムカードなどを丹念に確認しては森本社長に何度も質問をしていた。 時間になり、2人は会社を辞した。 100メートルほど歩き路地を曲がったところで、新田がポツリと言った。 「裏は取れた。」 夕方のまだ真夏の熱風が収まらないなか、2人の調査官は署へ戻った。 ▼   ▲   ▼ 翌朝9時。新田は「銀行に行く」と言って1人で署を出て行った。 「私はどうすれば」と新田に尋ねる多楠には 「昨日の続きをやれ。」 と言っただけであった。 昨日は三浦上席も仏具屋の調査で不正1,000万円を見つけたと鼻息荒く署に戻ってきたあと、淡路調査官に様々な説明や指示を熱心に行っていた。指導役なら「その日何を調べたか」「不審な点はあったか」「今後どう展開するのか」といったことを調査1年目の調査官に投げかけ、「次の日にはこうするように」と指示をするのが通常のはずである。 しどろもどろな概況聴取やひたすら売上帳も見ているだけであった多楠に対し、もっと指導があっていいはずだが、新田からはそれについてもまったくない。 内心“僕は相手にされていないんだな・・・”と多楠が思っても不思議ではない新田の言動であった。 結局何の指示もないまま、多楠は一人、金杉商店に向かった。 新田が調査に現れず不審に思う森本と尾崎を相手に、昨日に続き売上帳を、午後から仕入帳と在庫表を、ほとんど質問することなく、ひたすら確認する多楠であった。 ▼   ▲   ▼ 2日目以降の新田の動きは素早かった。 多楠を置いて例の定期預金の預入先である信用金庫の支店に調査に入った新田は、行員からの聴き取りと過去4年間の12月25日の金庫に保管してある現金出金伝票を丹念に追った結果、過去4年間とも源泉所得税を天引き後の現金で支払われた8名分のボーナスが、すべて各人名義の定期預金に、合計で3,000万円になっている事実を把握した。 しかも預金の届出印は、社長森本の個人印鑑になっていた。 その翌日、新田は従業員個人の収入状況を確認すべく、3つの区役所を回った。 彼らの収入は給与のみで、金杉商店は住民税の特別徴収(国税の源泉所得税と同じ手続)をしていないので、彼らの給与収入の申告を確認したのである。 確認の結果、8名すべてが25日のボーナスを含まない金額で給与の申告をしていた。 従業員たちは定期預金のことを知らされていないようだ。 かくして各4年間、12月に支払われていた2回のボーナスうち、25日に現金支給した分は架空(水増し)給与であり、8名分の定期預金32口3,000万円の証書は、森本の手の届くところに、厳重に保管されているものと想定された。 ▼   ▲   ▼ さすがにその翌日からは別件の調査が入っていたため、2週間ほど経ったある日、新田は森本社長と尾崎税理士に会社で面接、新田がつかんだ不正計算の証拠をもとに、新田の追及が始まった。 新田の傍らで会話に入り込む余地もなく、ただやり取りを聴いている多楠。 森本もさすがに簡単には事実を認めようとはしない。 尾形税理士は不正の事実を知らないのか必死になって「悪いことをするような社長ではない。」と言って森本をかばう。 次第に「そんなことは絶対にない!」と顔を真っ赤にして激怒する森本、それを見てオロオロする尾崎、一片の動揺もなく冷静かつ丁寧な口調ながら厳しい追及をする新田。 どれくらい3人のバトルが続いたろうか。 やがて観念したのか、森本がポツリポツリと真実を語り始めた。 「売上代金のほとんどが手形決済なので、銀行への信用や手形が不渡りになった時のために使えるようにと、従業員名義で定期預金にしたもの。結局は事業を存続するためにやむを得ず行った・・・」 そして問題の定期預金の証書は、会社事務所の2階にある自宅に保管されていているとのことで、確認に行く2人の調査官と・・・。 ▼   ▲   ▼ 「タクちゃん! 起きなさい!」 多楠が目を覚ますと、カウンター越しに京子ママ。 「新田チャン、もう帰ったわよ。」 (何だ、夢? だったのか。) 多楠が見ていたのは夢ではない。 新田の見事な調査は、現実の出来事。 (新田さん・・・いったい何者なんだ。) まだよく醒めていない頭で、多楠は考えをめぐらせていた。 (続く)

#No. 101(掲載号)
#堀内 章典
2015/01/08
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