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〈平成26年分〉おさえておきたい年末調整のポイント 【第3回】「『扶養控除等(異動)申告書』記載内容の検討」

〈平成26年分〉 おさえておきたい 年末調整のポイント 【第3回】 「『扶養控除等(異動)申告書』記載内容の検討」   公認会計士・税理士 篠藤 敦子     (1) 申告書の受領時期 給与所得者は、給与の支払者に対し、扶養控除等申告書を毎年最初に給与の支払いを受ける日の前日までに提出することとされている(所法194①)。また、申告内容に異動があった場合には、その都度異動内容の申告(以下、異動申告という)をしなければならない(所法194②)。 年末調整では、扶養控除等申告書に記載された内容に基づいて、人的な所得控除の金額を計算することになる。したがって、年末調整業務を始めるに当たり、年末調整の対象となる者(以下、従業員等という)から扶養控除等申告書が提出されているかどうか、また、異動申告が適切に行われているかどうかについて検討を行う必要がある。 平成26年中に、下記のような事情が生じた従業員等がいる場合には、異動申告が行われているか確認しておく。 なお、扶養控除等申告書を提出していない人や異動申告をしていない人がいる場合でも、年末調整を行う時までにそれらの書類が提出されれば、提出された申告書の内容に基づいて年末調整を行う。   (2) 記載内容の検討と注意点 ① 控除対象配偶者、扶養親族 控除対象配偶者と扶養親族を判定するための要件に、共通した次の2つがある(所法2①三十三・三十四)。 〈控除対象配偶者及び扶養親族判定の共通要件〉 「生計を一にする」とは、同居していることを要件とするものではない(所基通2-47)。 所得者が勤務地の関係で単身赴任している場合や、子が修学のため下宿している場合であっても、生活費や学資金を送金している等の事実があれば、「生計を一にする」ものとして扱われる(所基通2-47(1))。 次に、「合計所得金額38万円以下」の合計所得金額とは、1年間の各種所得金額の合計額(損益通算後、各種繰越控除適用前)をいう。 なお、合計所得金額には、①所得税が非課税とされる所得(非課税所得)、②源泉分離課税の対象となる所得、③確定申告をしないことを選択した配当所得や上場株式等の譲渡所得等は含まれない。 〈表1〉 合計所得金額に含まれない所得の例 【誤りやすい事例】 ② 障害者控除、寡夫(寡婦)控除、勤労学生控除 障害者控除、寡夫(寡婦)控除、勤労学生控除について制度の概要をまとめると、〈表2〉のとおりである。障害者、寡夫(寡婦)、勤労学生に該当するかどうかを判定する要件を、正確に理解しておくことが重要である。 〈表2〉 各制度の概要 【誤りやすい事例】 ③ 同居老親等、同居特別障害者 同居老親等と同居特別障害者に該当するかどうかを判定する要件は、〈表3〉のとおりである。 「老親等」及び「同居」の示す内容を正確におさえておくことが必要である。 〈表3〉 同居老親等、同居特別障害者の要件 【誤りやすい事例】   (3) 扶養控除等申告書の記載例 ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。   *  *  * 次回は、「保険料控除申告書 兼 配偶者特別控除申告書」を取り上げる予定である。 (了)

#No. 94(掲載号)
#篠藤 敦子
2014/11/13

貸倒損失における税務上の取扱い 【第30回】「判例分析⑯」

貸倒損失における税務上の取扱い 【第30回】 「判例分析⑯」   公認会計士 佐藤 信祐   相互タクシー事件において寄附金の認定がなされたものの、資本等取引であるとして債務免除益の認定はなされなかった。 そのため、本稿においては、現行法上、同様のスキームが行われた場合において、債務免除益が認定される可能性があるか否かについて解説を行うこととする。 ③ 債務免除益の認定可能性について 相互タクシー事件においては、第三者割当増資により払い込まれた金銭について、親会社からの借入金の弁済に充てられることから、疑似DESといわれる手法が行われたことになる。現行法上、親会社から子会社に対する貸付金を現物出資する手法、すなわち、DES(デット・エクイティ・スワップ)が行われた場合において、非適格現物出資として取り扱われるときは、子会社において債務消滅益課税が発生することになる。 なお、このような擬似DESについて、租税回避行為であるとして、実質的にDESと同様に取り扱うべきであるという考え方もある(八ッ尾順一『五訂版 租税回避の事例研究』(清文社)165頁)。そのため、以下では、擬似DESが租税回避行為であると認定され、債務消滅益(債務免除益)として課税されるか否かについて検討を行う。 第27回から第29回までで解説したように、相互タクシー事件、日本スリーエス事件のいずれにおいても、増資により新株を発行した子会社における受贈益課税は行われていない。この点については、当時の法人税法において、会計上の資本準備金と法人税法上の資本積立金がおおむね一致していたことから、受贈益課税までは課さなかったと推定されるため、両事件において受贈益課税が課されなかったといって、擬似DESを行った場合に債務消滅益課税(債務免除益課税)がなされないとは断定できないのかもしれない。そのため、両事件を参考にするのであれば、時価がゼロ円である株式9億円を発行し、対価として9億円の払込みを受けるような場合については、時価を超える金銭の払込みについて受贈益課税を課すというリスクが考えられる。 しかしながら、新株予約権を発行する場合において、その新株予約権と引換えに払い込まれる金銭の額がその新株予約権のその発行の時の価額に満たないときは、その満たない部分の金額に相当する金額は、発行法人の課税所得の計算上、損金の額に算入されないこととされており、新株予約権の発行の時の価額を超えるときは、益金の額に算入されないこととされている(法法54⑤)。法人税法上、発行法人において、新株予約権を負債として取り扱うことから、あえてこのような規定が設けられているが、この規定が設けられた趣旨としては、「平成18年版改正税法のすべて(大蔵財務協会)」349頁において、財務省主税局税制第三課課長補佐である佐々木浩氏、長井伸仁氏、一松旬氏が と解説している。 このように、資本等取引の類似取引である新株予約権の発行において、時価と異なる価額であったとしても、損金及び益金の額に算入しないと考えられているのであるから、株式の発行においては、時価を超える金銭の払込みであっても資本等取引と考えることにより、受贈益課税は課されないということが、法人税法の基本的な考え方であると考えられる。 したがって、これを超えて否認しようとするのであれば、極めて異常な取引に対してのみ、同族会社等の行為計算の否認を適用するという考え方になると思われるが、一般的に、疑似DESではなく、DESが行われる理由としては、疑似DESだと払い込んだ金銭が借入金の弁済に充てられないリスクがあるためであるのに対し、そもそも子会社に対する疑似DESにおいてはそのようなリスクがないことから、子会社に対する支援策としては擬似DESも一般的に行われているため、同族会社等の行為計算の否認を適用してまで、債務免除益を認定し、課税することまでは避けるべきであると考えられる。 ④ 総括 このように、相互タクシー事件においては、債権放棄を行った場合には法人税基本通達9-6-1(4)、9-4-2を適用することができないことから、「増資払込み+株式譲渡」というスキームを選択したものの、これを否認されている。 本連載における重要な論点の一つではあるが、そもそも法人税基本通達9-6-1(4)、9-4-2を適用するためのハードルが高く、実務上、これが認められる可能性がかなり低いという問題がある。 これは、第5回から第14回で解説したように、法人税基本通達9-4-1、9-4-2についての法人税法上の条文根拠が曖昧であるという点にも関連するが、それ以上に、法人税基本通達9-4-2に規定する「例えば業績不振の子会社等の倒産を防止するためにやむを得ず行われるもので合理的な再建計画に基づくものである等その無利息貸付け等をしたことについて相当な理由があると認められるとき」という内容が曖昧であるという点も挙げられる。また、いずれ本連載においても解説するが、法人税基本通達9-6-1(4)の適用についても、回収不能であることを立証することが必要であり、実務上、かなりハードルが高いという実態もある。 このような事情から、実務上、子会社の再生については、第2会社方式が選択されるようになった。「第2会社方式」とは、受皿会社に対して子会社の資産とそれに見合う負債のみを移転し、残った子会社を清算することにより、親会社において、子会社の債務超過に相当するだけの貸倒損失を認識するというスキームである。それでも、法人税基本通達9-4-1、9-4-2が改正された平成10年当時、筆者が税務の世界に入った平成13年当時では、通常清算を利用したスキームを選択し、法人税基本通達9-4-1、9-4-2の適用可能性を模索していたというのが個人的な感触である。 しかしながら、最近においては、特別清算を選択することにより、法人税基本通達9-6-1(2)の適用可能性を模索するようになったというのが個人的な感触である。なお、法人税基本通達9-6-1(2)においては、「特別清算に係る協定の認可の決定があった場合」において適用されるものであるから、いわゆる協定型(本来型)といわれる手法について直接的に規定されているが、実務上は、和解型(対税型)といわれる手法を選択することが一般的である。このような、和解型(対税型)であったとしても、債権者における損失負担の額が大きく変わることは考えにくいことから、法人税基本通達9-6-1(2)を適用することにより、損金の額に算入することができる場合が多いのが実態である。また、「対税型」という別名からも分かるように、法人税基本通達9-6-1(2)を適用し、貸倒損失として損金の額に算入するための手法として和解型の特別清算というものが利用されているという実態もあり、その一方で、「特別清算」という風評被害についても、筆者の経験した事案に限定すれば、通常清算と何ら変わるものではなかったということと考慮すると、子会社の再生については、和解型(対税型)の特別清算を利用した第2会社方式を選択することが望ましいのではないかと考えられる。なお、第2会社方式についての詳細な論点についても、本連載で触れていきたいと考えている。 次回においては、相続税の判例ではあるが、相続発生前に債権放棄を行うことにより、貸付金を消滅させ、相続財産全体についての相続税評価額を引き下げた行為について、同族会社等の行為計算の否認が適用されるか否かについて争われた事件について解説を行う。 (了)

#No. 94(掲載号)
#佐藤 信祐
2014/11/13

日本の会計について思う 【第11回】「のれんの会計処理をめぐる経緯」

日本の会計について思う 【第11回】 「のれんの会計処理をめぐる経緯」   関西学院大学教授 平松 一夫   修正国際基準公開草案第1号の公表 前回私は、「修正国際基準(公開草案)の意義と3つの疑問」というテーマで、修正国際基準に対して若干の疑問点を提示しつつも、戦略的な意味でこれを評価するコメントを書かせていただいた。 今回はその公開草案第1号が取り扱っている「のれんの会計処理」について、その経緯の概略を述べることとする。それは、のれんの会計処理を巡って、日本はこれまで欧、米、国際の思惑に翻弄されてきたとの思いを私自身が強く抱いているからである。その点で今回の国際修正基準の公表は、まだ公開草案の段階ではあるが、良い意味で一矢を報いる可能性を持つと考えるのである。それは公開草案第2号「その他の包括利益の会計処理」についても同様である。 もともと、連結会計が導入される前の日本では、旧商法がのれん(営業権)について5年内に均等額以上の償却をすると規定していた。実際にはこの規定ではいかようにでも償却ができたと考えられる。すなわち、5年内であるから償却期間は1年でも5年でもよいと解釈できる。また、均等額以上との定めであるから、金額もかなり恣意的に決めることができたと思われる。 このような規定が設けられた背景として、商法の理念である債権者保護思想がある。のれんは法律的な権利でもなく実体を伴わない無形の資産であるから、早く償却する方が、担保力のない資産を計上しておくよりも健全な貸借対照表を示すことができる。同時にそれは保守主義の原則にも合致するものであった。   1991年OECD(経済協力開発機構)での激論 のれんをめぐる会議で私が鮮明に記憶しているものがある。1991年春、パリのOECD(経済開発協力機構)で開催された会議である。各国の関係者が集い、今後ののれんの扱いを議論した。たまたま私は日本の状況を説明するよう要請され、上記のような5年内均等額以上償却について報告したのであった。 当時、アメリカではのれんを40年で償却することが普通であった。上記の会議の少し前、1989年にソニーがコロムビア映画を巨額で買収したが、それはソニーの在米子会社を通じた買収であった。親会社であるソニーが買収していたのであれば、巨額ののれんを5年以内に償却しなければならないから、さすがにソニーにとっても損益への影響が相当の額に上ったはずである。しかし、在米子会社は巨額ののれんを40年で償却することができたので、毎年の損益への影響はそれほど大きくなかった。 同じ頃、欧州のいくつかの国ではのれんを自己資本から直接控除していた。そのため、欧州企業はのれんの償却を気にする必要がなかったのである。先の会議では、アメリカが欧州を「卑怯である」と攻める構図が鮮明であった。たとえ40年とはいえ、アメリカでは償却によって損益に影響が出る。他の条件が同じならば、欧州企業の方が損益面で業績が良く見えることになる。とりわけアメリカでは、株主が毎期の損益動向を厳しくチェックし、経営者の評価につなげることになる。それが「欧州企業は卑怯である」というアメリカの悲痛な叫びになっていたのである。 だが、日本は5年である。日本ではのれんの償却を短期で負担しなければならず、経営者に対する評価がより厳しくなるはずである。しかし、現実にはそうはならない。そこがアメリカとの経営文化の違いである。短期的に毎期の損益で経営者を評価するアメリカと、長期的に企業業績をみて経営者の評価を行う日本との間には大いなる違いが認められるのである。   連結のれんの20年償却、さらに減損へ こうした議論が重ねられる中で、のれんは20年で償却するという方向が次第に固まっていった。欧州、アメリカ、国際も20年で決着させようとしたし、日本も連結のれん(連結調整勘定)を20年償却とした。ようやく長年の懸案事項が決着したかに見えた。少なくとも日本としては真剣に国際的動向に配慮し、これと協調して同じ会計処理にしたのである。 ところがアメリカと国際では早くも別の方向が模索されていた。それが減損である。減損についてここで詳しく述べる必要はあるまい。減損の場合、規則的な償却ではなく、場合によれば長期にわたり資産計上され続けるし、状況が変われば一気に損失に計上しなければならないのである。 のれんの減損が日本の経営者にとって受け入れにくいことは容易に想像できる。日本の経営者にとっては安定配当が望ましい実務であり、そのためには毎期の利益が安定することが大切である。20年償却はその方向に合致するが、減損はそうではない。アメリカでは配当性向が一定であることが好まれるが、日本では配当額が安定していることが望まれる。 のれんの会計処理を巡っては、とりわけ日米の会計思考の違いが典型的に露呈したといえる。今後、修正国際基準が国際的に受け入れられるかは分からないが、少なくとも日本の立場をきちんと説明するという意味では、世界に対して優れた情報を発信したと言ってよいであろう。  (了)

#No. 94(掲載号)
#平松 一夫
2014/11/13

IFRSの適用と会計システムへの影響 【第1回】「IFRSをめぐる現状」

IFRSの適用と会計システムへの影響 【第1回】 「IFRSをめぐる現状」   公認会計士 坂尾 栄治   IFRSとわが国におけるこれまでの流れ IFRSとは、世界的に承認され遵守されることを目的として国際会計基準審議会(IASB)により設定される会計規定の総称です。もっと、簡単にいえば、国際的に統一的な会計処理および表示のルールです。このIFRSは、2009年6月30日に金融庁-企業会計審議会から「我が国における国際会計基準の取扱いに関する意見書(中間報告)」が公表されると一躍脚光を浴びました。 なぜ脚光を浴びたかというと、2012年に上場企業を対象としてIFRSの強制適用の判断を行い、強制適用する場合には2015年または2016年に適用開始になるであろうとされていたためです。 そのため、上場企業はIFRSを適用した場合、現在自社で適用している会計基準(日本基準、一部米国基準)とどのような差があり、また適用するためにはいつまでに何をしなければいけないのかを知ろうと躍起になっていました。 システムベンダーや会計系のコンサルタントたちは、「現状のシステムではIFRSに対応できない」とか「IFRSへの対応を急がないと間に合わなくなる。」といって各社をあおっていました。 しかし2011年6月に金融庁の自見庄三郎担当大臣が会見でIFRSの強制適用を2017年以降にする考えを示したことにより、一気にトーンダウンしました。 米国においても、米国基準をIFRSに近づけていくコンバージェンスの作業から、コンバージェンスプロセスに加えて、2011年に承認手続きを経て個々の基準の受入を図るエンドースメントをあわせたコンドースメントアプローチを提唱し、一方的にIFRSに合わせていく方向性から、米国基準の存在感を強く打ち出す方向へと舵を切りなおしました。 そのため、日本の上場企業の多くはIFRSの強制適用は遠い将来の出来事だと考えるようになりました。   任意適用の状況 このように、多くの企業にとってIFRSは遠い将来考えればよいものになってしまったのですが、一方ではIFRSを任意適用する企業が出てきています。 連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則等の一部を改正する内閣府令により一定の要件を満たす会社について、2010年3月31日以後に終了する連結会計年度からIFRSの任意適用が認められることとなりましたが、いつ強制適用されるかも定かではないIFRSを任意適用する企業があるのか疑問に感じる人もいるのではないでしょうか。 しかし、実際に2014年9月現在でIFRSを任意適用している企業は36社あり、また任意適用を予定している企業が10社あります。この程度では、全上場会社のうちの2%にも満たないと思われるかもしれませんが、その多くが大企業であることから、時価や売上額から考えるともっと多くの割合を占めることとなりますし、加えて、ここにあげた企業以外にも水面下でIFRSへの対応を粛々と進めている企業は数多く存在していることを考えると、どうも遠い将来に考えればよいものではなさそうに思えてきます。 ではなぜこれらの企業は、強制されてもいないIFRSを自ら進んで任意適用するのでしょうか。   IFRSを適用するメリット IFRSを任意適用する企業は、当然IFRSを適用することに何らかのメリットがあるから、強制されてもいないIFRSを適用していると考えられます。 では、どのようなメリットがあるのでしょうか。メリットは各社毎に異なっていると思いますが、たいていの場合は以下の3つのどれかに当てはまるのではないでしょうか。 このうちの「1.グローバルマネーの呼び込み」と「3.連結財務諸表作成やグループ経営管理の効率化」については、グローバル化が急速に進む昨今の状況をかんがみると、多くの企業で真剣に検討する必要があるように感じられます。   修正国際基準について考える ASBJは2013年7月に開催した第268回委員会において、エンドースメントされたIFRSの開発に関するロードマップ「IFRSのエンドースメントと手続きに関する計画の概要(案)」を公表し、2014年7月31日に「修正国際基準(国際会計基準と企業会計基準委員会による修正会計基準によって構成される会計基準)」の公開草案が公表されました。 修正国際基準では、「のれん」や「その他の包括利益」の除外または修正が提案されていますが、これらの基準はIFRSの根幹を成すものであり、IASBとしてはそれらの基準を除外または修正した基準はたとえ日本版といえどもIFRSの名称を付すことは認めないとの見解を示しているとも聞きます。 このような基準が、今後多くの企業に適用されることとなるかは疑問を感じずにはいられません。システムベンダーや会計系のコンサルタントの間でも、修正国際基準の普及には疑問を呈する人が多いように感じます。 実際、ピュアIFRSとは異なり国際的には通用せず、また、日本基準とも比較可能性のない基準を適用するメリットが見出せません。しかしながら、修正国際基準の議論を通じて、再びIFRSに注目が集まっているのも事実であり、少なくともその一点では、修正国際基準がIFRSの適用促進に貢献するのではないかと感じています。   IFRSは強制適用されるのか 目下の目標は、2016年末までに300社程度の企業がIFRSを任意適用することであり、強制適用はそれ以降の話ということになってくると思われます。自民党の「日本再生ビジョン」では、2016年までにはIFRSの強制適用の是非や適用に関するタイムスケジュールを決定するように議論を進めるとしています。 IFRSの適用にあたっての準備期間に3年程度を見込むとすると、2016年中にIFRSの強制適用を決めたとしても強制適用の時期は2019年以降になりそうです。 となると、今は自社にとってIFRSを任意適用するメリットがあるのかどうかについて検討するにとどめ(メリットがあれば任意適用に向けて準備を進めるべきであるが)、IFRSの動向について定期的に情報を収集するというのが、多くの企業のとるべき方向ではないでしょうか。 *   *   * なお本文中、意見に関する部分は私見であることを申し添えます。  (了)

#No. 94(掲載号)
#坂尾 栄治
2014/11/13

経理担当者のためのベーシック会計Q&A 【第62回】包括利益②「その他有価証券における包括利益」―組替調整額

経理担当者のための ベーシック会計Q&A 【第62回】 包括利益② 「その他有価証券における包括利益」 ―組替調整額   仰星監査法人 公認会計士 石川 理一   〈事例による解説〉 〈会計処理〉 ① 前期末 (*1) 800×法定実効税率40%=320 ② 期首 ③ A社株式の売却時 (*2) 売却による組替調整額 400 ④ 期末 〈会計処理の解説〉 1 その他有価証券評価差額金 時価のある有価証券は時価をもって貸借対照表価額とします。そして、貸借対照表価額と取得価額との差額(評価差額)の一部又は全部は、税効果を調整の上、「その他有価証券評価差額金」として純資産の部に計上します(この連載の【第48回】参照)。 その他有価証券評価差額金の期中増減の税効果を控除した後の金額は、その他の包括利益の内訳項目として連結包括利益計算書に表示されます。 そして、その他の包括利益の各内訳項目別に税効果の金額及び次に解説する組替調整額の注記が求められています(基準8、9項)。 2 組替調整額の注記 連結包括利益計算書に表示されるその他有価証券評価差額金の金額は、連結貸借対照表のその他有価証券評価差額金(その他の包括利益累計額の内訳項目)の期首残高と期末残高の差額(期末残高420-期首残高480=△60)で求めることができます。 ただし、売却損益や減損処理した金額については、組替調整額として開示することが必要になります。したがって、組替調整額や当期発生額を把握するために上記のような期中増減表の作成が必要になります。 なお、期中に取得したその他有価証券を期中に売却した場合に発生した損益についても組替調整の対象となることに注意が必要です。 *   *   * 次回は包括利益の表示について解説します。 (了)

#No. 94(掲載号)
#石川 理一
2014/11/13

最新!《助成金》情報 【第6回】「雇用関連助成金の活用(その6)《事業縮小時に離職する労働者の再就職支援に関する助成金》」

最新!《助成金》情報 【第6回】 「雇用関連助成金の活用(その6) 《事業縮小時に離職する労働者の再就職支援に関する助成金》」   特定社会保険労務士 五十嵐 芳樹   《労働移動支援助成金》 この助成金は、事業縮小に伴い離職に至る労働者の再就職支援や労働者を受け入れた事業主を助成することで、早期再就職の実現を目的とするもので、次のA・Bの2種類がある。 ただし、いずれも1年前から資本的・経済的・組織的関連性が密接な再就職先は対象外となる。 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。   (1) 目的 この奨励金は、事業縮小に伴い離職に至る労働者に対して、民間職業紹介事業者(労働局に同意書提出済み)に委託して再就職支援を行う事業主を助成することで、早期再就職を目的とする制度で、支給対象となる措置は次のように区分される。 (2) 対象労働者 この奨励金の対象となるのは、次のすべてに該当する労働者である。 (3) 支給額 ① 基本の支給額 (※3) 中小企業の定義については【第1回】「雇用関連助成金の活用(その1)」の「6 中小事業主の範囲」を参照 (※4) 再就職実現時は、6ヶ月(45歳以上は9ヶ月)以内に再就職が実現した場合 (※5) 訓練・グループワーク加算の場合は「委託費用=総額-訓練・グループワーク加算」 ② 上乗せの支給額 上記「① 基本の支給額」と「② 上乗せの支給額」の合計支給限度額は1人当たり60万円、1年度1事業所当たり500人分である。 ③ 休暇付与支援の支給額 (4) 手続の流れ (5) 活用のポイント 事業縮小を粛々と達成するには、従業員の不安を取り除き納得と協力を得ることが欠かせないが、そのためには離職対象者に対する再就職支援の実施が重要であるため、事業縮小の達成にはこの奨励金は特に有効と思われる。   (1) 目的 この奨励金は、次のように雇い入れ又は受け入れた労働者に対してOff-JT又はOff-JTとON-JTを行った事業主へ助成することで、労働者の早期再就職を目的とする。ただし、受給資格認定申請書提出日前日の6ヶ月前から支給申請書提出日までに解雇(勧奨含む)や特定受給資格者を雇用保険被保険者数の6%を超えて、かつ4人以上出した場合は支給対象とならない。 (2) 対象労働者 この奨励金の対象となるのは、次のすべてに該当する労働者である。 (3) 支給額 この奨励金の支給額は、1つの職業訓練計画について対象者1人当たり次の額となる。 ただし、対象となる訓練には要件が定められているため、事前の確認が必要である。 (※7) 全体時間数のうちOFF-JTは1割以上、OJTは9割以下 (※8) 1年度1事業所当たり5,000万円を上限とする。 (4) 手続の流れ (5) 活用のポイント 事業所都合による事業縮小に伴い離職せざるを得ない人の中には、現役で活躍する人材も多いと思われるが、それら人材を雇い入れて新たな環境に適応できるよう訓練を実施し、従前事業所での技術技能や知識経験を活かし就労してもらいたい事業所には、特に有効と思われる。  (了)

#No. 94(掲載号)
#五十嵐 芳樹
2014/11/13

公的年金制度の“今”を知る 【第2回】「平成24年の年金改革に対する評価と課題」

公的年金制度の“今”を知る 【第2回】 「平成24年の年金改革に対する評価と課題」   特定社会保険労務士 大東 恵子   1 平成24年の年金改革の主な内容と評価 平成24年の通常国会において、社会保障と税一体改革関連法案8法が可決され、「年金機能強化法」と「被用者年金一元化法」が成立した。 年金財政の持続可能性の確保のため、税制抜本改革により確保される安定財源によって、平成26年度から基礎年金国庫負担1/2が恒久化される見通しになった。また、「被用者年金一元化法」の成立により、長年の懸案であった被用者年金の一元化が平成27年10月1日に実施されることにより、年金の官民格差が是正される見通しとなった。 このことから、抜本的な年金改革に向けて、これまで進まなかった改革項目に一定の決着がつき、一歩前進する見通しとなったことは評価できる。   2 「年金機能強化法」 「年金機能強化法」のうち、私たちの生活に直接関連する年金制度改革の主要5項目について解説し、その評価と課題を述べる。 (1) 基礎年金の国庫負担の割合1/2を恒久化 平成16年改正で導入された財政の枠組みを完成させるため、平成26年4月から消費税財源を用いて、基礎年金給付費の国庫負担の割合を1/2とすることを恒久化。 (2) 受給資格期間を10年に短縮(平成27年10月施行予定) 将来の無年金者の発生を抑え、より多くの人を年金受給に結びつけるため、受給資格期間を現在の25年から10年に短縮。また、寡婦年金(国民年金保険料の納付済期間と免除期間を合わせて25年以上ある夫が、年金をもらわずに死亡したとき、妻に給付される年金)の受給要件も10年と短縮される。 ただし、老齢基礎年金を受け取れる権利ができるということと、満額の年金を受け取れるということは別問題で、受給資格期間が10年では、満額の年金にはほど遠い年金額となる。 20歳から60歳になるまでの40年間、1ヶ月も欠けることなく年金を納めた場合に、老齢基礎年金は満額(平成24年度は786,500円)となる。仮に保険料納付済期間が10年であれば年額20万円足らずとなる。 この制度の目的はあくまでも無年金者の救済であり、保険料納付が10年で許されるという意味ではない。満額の年金を受け取るためには、従来どおり20歳から60歳になるまで40年間の保険料納付が必要であるという理解が不可欠である。 (3) 短時間労働者への厚生年金・健康保険の適用拡大(平成28年10月施行予定) これまで厚生年金・健康保険などの被用者保険のメリットを受けられなかった短時間労働者も、一定の条件を満たせば加入可能になる。現在の加入基準は、労働時間および労働日数が正社員の約3/4(目安として週に30時間)以上働く短時間労働者の場合は加入しなければならない。 この改正ではこの基準が緩和され、 という4要件を満たしていれば、厚生年金(健康保険も併せて)に強制加入となる。 中小企業では、法改正を見据え、短時間労働者の雇用形態を社会保険加入の有無による2つの雇用コースを設け、時間管理・賃金管理をしていく必要があろう。 (4) 産休期間中の保険料免除 次世代育成支援のため、育休中の社会保険料免除に加え、平成26年4月から、産休期間中も被保険者・事業者双方の社会保険料が免除に。また、「年金機能強化法」の附則には、国民年金第1号被保険者に対しても、産前産後期間の国民年金保険料の納付義務を免除する措置について検討が行われるようにする規程が設けられていることも紹介しておく。 (5) 遺族基礎年金の支給対象を父子家庭に拡大(平成26年4月1日施行) 平成26年4月からは、父子家庭にも遺族基礎年金が支給される(平成26年4月以降に死亡した方の遺族年金が対象)。これまでは、遺族基礎年金を受け取ることができる受給権者は、子ども(18歳年度末まで等の要件あり)のある妻、子どもに限定されており、夫は対象外であった。しかし、男女間の公平という観点から、遺族基礎年金の対象者を「子のある妻」から「子のある配偶者」に改め、施行日以降に発生した父子家庭は遺族基礎年金の対象となった。   3 「被用者年金一元化法」の主な内容 「被用者年金一元法」とは、年金の官民格差を是正するため、会社員の「厚生年金」と、公務員の「共済年金」を統合して一元化することである。共済年金制度は、平成27年10月から厚生年金へ統合され、被用者年金制度が一元化される。 これは、今後の少子高齢化に備え、年金制度の規模を拡大して財政の安定を図るとともに、民間企業の会社員と公務員(国立大学法人等職員、私学教職員)とが同一の年金制度に加入することで、公的年金制度全体での公平性を保つためである。 具体的には、次のような変更がなされる。   4 平成24年の年金改革の課題 当初の「年金機能強化法」に盛り込まれていた考えのうち、次の2点は原案から削除された。 「年金生活者支援給付金の支給に関する法律案」は新たな財源を伴うものであり、「年金生活者支援給付金の支給に関する法律案」は退職等により所得状況が急変した場合の対応については言及がないことなど、拙速な法改正を回避したものと思われるが、現役世代の将来の年金財源の確保や、世代間の公平、過剰給付をこれ以上拡大させないためにも、見送られた法案の早期成立が期待される。 *   *   * 次回(第3回)では、今後の年金制度はどうあるべきかについての考察を行う。 (了)

#No. 94(掲載号)
#大東 恵子
2014/11/13

常識としてのビジネス法律 【第17回】「独占禁止法《平成25年改正対応》(その2)」

常識としてのビジネス法律 【第17回】 「独占禁止法《平成25年改正対応》(その2)」   弁護士 矢野 千秋   第3 共同行為の規制 1 総説 共同行為の規制には、「不当な取引制限の禁止」(独3条後段)、「不当な取引制限または不公正な取引方法に該当する事項を内容とする国際的協定・契約の締結禁止」(独6条)、および「事業者団体の活動規制」(独8条)がある。 前回に説明した企業結合のような「固い結合」ではなく、契約、協定等による「ゆるい結合」である。   2 不当な取引制限 (1) 意義 「不当な取引制限」とは、経済学用語のカルテルであり、談合(入札談合)という呼称で報道されている共同行為を指す。事業者が「他の事業者と共同して対価を決定する等し」「相互にその事業活動を拘束し、又は遂行することにより」「公共の利益に反して」「一定の取引分野における競争を実質的に制限すること」と定義されている(独2条6項)。 (2) 共同行為 不当な取引制限が成立するためには、事業者が他の事業者と「共同して」対価(価格)の決定や数量制限等を行う行為=共同行為でなければならない。この共同行為は、単に外形的に一致した行為(客観的要件)があるだけでは不十分であり、進んでそれが当事者間の主観的な結びつきの要件(主観的要件)であることが必要である。 東芝ケミカル審決取消請求事件判決(東京高判平成7・9・25判タ906号136頁)は、相互の間に「意思の連絡」があったと認められることが必要とする。そして「意思の連絡」とは、明示の合意までは必要でなく(通常ないであろう)、相互に他の事業者の対価の引上げ行為を認識して暗黙のうちに認容することで足りるとする。 ただし、この「意思の連絡」を直接証拠によって立証するのは極めて困難である(通常そのような証拠は残さないであろう)。 そこで前記判決は と判示している。つまり、 ということである。 公取委も基本的に前記判決と同一の立場を採っている(協和エクシオ入札談合課徴金事件・審判審決平成6・3・30審決集40・49)。 (3) 行為要件「相互拘束・共同遂行」 「相互にその事業活動を拘束し、又は遂行すること」が不当な取引制限の行為要件として必要であり、前者を「相互拘束」、後者を「共同遂行」として説明される。しかし公取委も判例も、「相互拘束」に限定し「共同遂行」は独立の要件ではないという解釈を維持している。「相互拘束」のない「共同遂行」は「不当な取引制限」に該当しないということであろう。 価格カルテルや数量制限カルテルにみられるように、合意によって事業活動に対する制約を相互に課すことが、ここでいう「相互拘束」である。その制約を実効性のあるものにするための制裁等の定めは必要とされない。 石油価格カルテル刑事事件最高裁判決も、 と判示している。すなわち紳士協定であっても「相互拘束」の要件を充たす。 (4) 共同行為の種類・内容 ① 価格カルテルと数量制限カルテル カルテルの典型例が、価格カルテルである。単に共同で販売価格を決める場合に限定されず、最高価格や最低価格を設定する場合にも成立する。また、価格に一定の幅を持たせてその範囲を限定したり、価格の算定方式を共通にしたり、あるいは目標価格や標準価格を設定することによって価格を制限する場合にも成立する。 数量制限カルテルは、生産量を制限したり販売量を制限したりするカルテルである。数量を制限することによって、価格を一定に保ったり操作したりすることが可能になるので、結果的に価格カルテルと変わらない。一般的な方法は、全体の供給量(生産量)を決めておいて、それをカルテル参加者が生産の実績に合わせて割り当てられることである。これにより価格競争などがなくなる恐れがあり、価格制限と同じく厳格な規制がなされるハードコアカルテルである。 ② 顧客・販路制限カルテル・市場分割カルテル 共同して(相互に)取引先を制限する行為である。顧客や販路を制限することであり、いわゆる市場分割協定(カルテル)を意味する。 ③ 談合(入札談合)・官製談合 ほとんどの事例は、入札に関する受注調整である。受注を調整する話し合いが談合であり、不当な取引制限に該当する。談合によって価格が人為的にコントロールされるので、価格カルテルと同様である。 (5) 市場効果要件 ① 「公共の利益に反して」 通説・公取委は、「公共の利益=自由競争経済秩序」であるとして、「公共の利益に反して」の文言を重視しない立場である。この立場にたてば、価格カルテルや数量制限カルテルなどは自由競争経済秩序に反する行為であることから、当然に「公共の利益に反する」ことになる。 石油価格カルテル刑事事件における最高裁の判断は、公共の利益=自由競争経済秩序(通説・公取委)としつつ、カルテルの例外(究極の目的=一般消費者の利益の確保等)を認めた中間的なものであり、通説に近い解釈を示したものである。 ② 「一定の取引分野における競争の実質的制限」 「競争を実質的に制限する」とは、市場支配力を形成・維持・強化することをいう。すなわち相互拘束・共同遂行によって参加当事者間の競争を回避し、これによって競争的な価格ではなく、自由な価格設定のメカニズムを左右していると認められる場合に成立する。 競争の実質的制限に関する公取委の姿勢は、当該カルテルの内容と参加事業者の市場占拠率を判断基準の中心に据えている。共同行為に参加する事業者の市場占有率が50%を超えている場合には通常「競争を実質的に制限する」とされている。もっとも価格制限等のハードコアカルテルの場合は、その分野で実効性のある共同行為がなされている場合は、この要件を充たすものとされる。 (6) その他 ① 国際的協定・契約の規制(独6条) ② 事業者団体の規制(独8条)   第4 不公正な取引方法の禁止 1 総説 (1) 目的 独禁法の3つの規制のうち、私的独占および不当な取引制限は、市場における競争の実質的制限の禁止によって「自由な競争」を維持することを主たる目的としているのに対し、不公正な取引方法は「公正な競争を阻害するおそれがある」行為を規制している。 (2) 特殊指定と一般指定 独禁法2条9項では不公正な取引方法について定義している。「不公正な取引方法」とは、9項1号ないし5号に規定する行為および同項6号イ~へに該当する行為で、「公正な競争を阻害するおそれ(公正競争阻害性)」があるもののうち、公取委が指定するものとされる。 「指定」には特殊指定と一般指定の2種類がある。 「特殊指定」は事業分野を限った指定で、大規模小売業による納入業者との取引における特定の不公正な取引方法(不当な返品、不当な値引、特売商品等の買いたたき、などである)、新聞業(日刊新聞発行業者が、地域又は相手方により、異なる定価で販売する等である)、特定荷主が物品の運送または保管を委託する場合の特定の不公正な取引方法の3種が指定されている。 「一般指定」は、業種のいかんにかかわらずすべての事業者に一般的に適用されるものであり16項目からなっていたが、平成21年改正により下記の一部が独禁法2条9項1号ないし5号に規定された(排除措置命令だけでなく課徴金納付命令も課すためである)。 結果、現行では15項目となっている。 (3) 公正競争阻害性 「公正競争阻害性」が違法性の基本的な判断基準となる。独禁法2条9項1号ないし5号に規定する行為および同項6号イ~へに該当する行為で一般指定された各行為類型をみると、「正当な理由がないのに」、「不当に」、「正常な商習慣に照らして不当に」という用語が用いられているが、これらは公正競争阻害性を意味するものである。 ① 「正当な理由がないのに」が用いられている行為については、かかる文言を除いても残りの文言それだけで「公正競争阻害性」を有するので、かかる行為については、原則として「違法」とされる。例外的に「正当な理由」があれば適法となるということだからである。 ② 「不当に」、「正常な商習慣に照らして不当に」が用いられている行為については、かかる文言を除いた残りの文言だけでは「公正競争阻害性」を認めがたい。したがって、個別具体的に「公正競争阻害性」を判断する必要があり、かかる行為については、原則として「適法」とされる。例外的に「不当な事由」があれば違法となるということだからである。 この「公正競争阻害性」の概念は、独禁研報告(※)が①「競争の減殺」②「競争手段の不公正さ」③「競争基盤の侵害」の3種に分類し、これが通説になっている。   2 差別的取扱い(独2条9項6号イ) (1) 総説 独禁法2条9項6号イは「不当に他の事業者を差別的に取り扱うこと」と規定し、これに基づいて一般指定1項から5項が定められている。 平成21年改正により、1項「共同の取引拒絶」中の供給拒絶型が独禁法2条9項1号に規定され、3項「不当な差別対価」中の不当廉売型が独禁法2条9項2号に規定された。そして法定された行為に対しては課徴金が課されることになった(独20条の2)。 これらの差別的取扱いの公正競争阻害性は、独禁研報告の①「競争の減殺」に当たる。 (2) 共同の取引拒絶(一般指定1項) 共同の取引拒絶とは、正当な理由がないのに「自己と競争関係にある他の事業者と共同して」、ある事業者に対し取引を拒絶しまたは取引に係る商品もしくは役務の数量もしくは内容を制限すること(1号:共同の「直接取引拒絶」=一次ボイコット)と他の事業者に前号に該当する行為をさせること(2号:共同の「間接の取引拒絶」=二次ボイコット)である。 前者は、メーカーが共同して安売り業者との取引を拒絶したり、原料の仕入れ会社甲とは取引するが原料の仕入れ会社乙とは取引しないという場合などである。後者は、販売業者が共同してメーカーに安売り業者との取引を拒絶させることなどである。 共同の取引拒絶は、競争者が共同して特定の事業者を市場から排除する目的で行われるのが通常であるから、ある程度の実効性がある限り「競争の減殺」に当たり、原則として公正競争阻害性が認められる。独禁法2条9項1号でも一般指定1項でも「正当な理由がないのに」とされている。 これらの取引拒絶のうち「供給を拒絶しもしくは制限し、または供給を拒絶させもしくは制限させる」供給拒絶型の共同ボイコットが、平成21年改正により、独禁法2条9項1号に規定され課徴金の対象とされた。以下に条文を記す。 これにより「供給を受ける型」が一般指定1項に残された。 着うた事件は、着うた提供事業に必要な楽曲の原盤権を有しているレコード会社5社が共同出資会社を設立して、当該会社に着うた提供業務を委託する一方、着うた提供事業に参入しようとする者に対し、5社が有する原盤権の利用許諾を共同して拒絶する行為が不当な共同の取引拒絶に当たるとされた(東京高判平成22・1・29)。 (3) 単独の取引拒絶(一般指定2項) 単独の取引拒絶とは、「不当に、ある事業者に対し取引を拒絶し若しくは取引に係る商品若しくは役務の数量若しくは内容を制限し、又は他の事業者にこれらに該当する行為をさせること」である。 「不当に」と規定されている通り、原則として、事業者が誰と取引するかは事業者の取引先選択の自由であり適法である。しかし公正競争阻害性(競争の減殺)の観点から、単独の取引拒絶が違法となる場合がある。 単独の取引拒絶が、①独禁法上違法・不当な目的達成のための手段として用いられたり、②相手方の事業活動を困難に陥れる以外に、なんら理由がないのに用いられたり、③濫用的行為の場合などである(これらが「不当に」の内容である)。すなわち、取引拒絶を実行し、これによって取引を拒絶される事業者の通常の事業活動が困難となるおそれがある場合や、再販売価格の拘束、排他条件付取引などの独禁法上違法な行為の実行を確保するための手段として用いられる場合である。 (4) 不当な差別対価(一般指定3項) 不当な差別対価とは「不当に、地域又は相手方により差別的な対価をもって、商品若しくは役務を供給し、又はこれらの供給を受けること」である。 地域によって市場価格に対応する価格が設定され、また大口顧客に値引きをすることは当然に許容される。問題は地域的ダンピングなどや、安売り業者やアウトサイダーなどに高く売りつける場合である。 地域的差別対価の事例としては、全国展開している事業者が特定の地域に的を絞って、当該地域で事業展開している競争者よりも低価格を当該地域に設定した事例があり、相手方による差別対価の事例としては、組合への加入を促進するために取引価格に格差を設け、非組合員には組合員より高い価格で供給した事例がある。 不当な差別対価の公正競争阻害性は「競争の減殺」にあるとするのが通説である。 これら不当な差別対価は、実質的には「不当廉売」(独2条9項3号)に酷似している。そこで、これらの不当な差別対価のうち「商品または役務を継続して供給し」「他の事業者の事業活動を困難にさせるおそれがある」(不当廉売の2要件である)不当廉売型の不当な差別対価が、平成21年改正により、独禁法2条9項2号に規定され課徴金の対象とされた(独20条の3)。 以下に条文を記す。 第2次北国新聞社事件では、北国新聞社が石川県を主たる販売地域とする北国新聞を基に、富山新聞を新たに発行し、両新聞に大きな価格差を付けたことが、富山県にある競争誌の排除を図ったとされた。前提として両新聞が同一の商品(差別対価の前提条件)かが問題となり、本決定は地方的記事については差異があるが、全国的一般的記事についてはほとんど同一であり、同一新聞と認めて妨げないとした(東京高決昭和32・3・18行集8・3・443)。 (5) 不当な差別的取扱い(一般指定4項) 不当な差別的取扱いとは「不当に、ある事業者に対し取引の条件又は実施について有利な又は不利な取扱いをすること」である(対価以外の条件)。 加盟店を拘束する目的でリベート(割戻金)の交付、取引保証金の没収等の不利益を与える規定を規約・約定書に設けていた事例などがある。 不当な差別的取扱いの公正競争阻害性は「競争の減殺」にあるとするのが通説である。 (6) 事業者団体における差別的取扱い等(一般指定5項) 事業者団体における差別的取扱い等とは「事業者団体若しくは共同行為からある事業者を不当に排斥し、又は事業者団体の内部若しくは共同行為においてある事業者を不当に差別的に取扱い、その事業者の事業活動を困難にさせること」である。 「排斥」とは、加入拒否、除名、脱退勧告などであり、「差別的取扱い」とは、共同施設の利用制限や過大な負担の賦課などである。 事業者団体における差別的取扱いの公正競争阻害性は「競争の減殺」にあるとするのが通説である。  (了)

#No. 94(掲載号)
#矢野 千秋
2014/11/13

《速報解説》 ASBJが「修正国際基準(JMIS)」の公開草案に寄せられたコメントを公表

《速報解説》 ASBJが「修正国際基準(JMIS)」の公開草案に寄せられたコメントを公表   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 平成26年7月31日、 企業会計基準委員会は「修正国際基準(国際会計基準と企業会計基準委員会による修正会計基準によって構成される会計基準)(案)」を公表し、10月31日まで意見募集を行っていた。 平成26年11月7日(掲載日)、企業会計基準委員会は、修正国際基準の公開草案に寄せられたコメントを公表している。 本稿では、公開草案に寄せられたコメントのうち主なものを取り上げ、紹介することとする。寄せられたコメントには、提出された書面の冒頭などにおいて、コメントの趣旨を詳細に記載しているものもあるので、コメントの詳細については、原文をお読みいただきたい。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 主なコメント コメントの全体的な傾向としては、国際財務報告基準(IFRS)の任意適用の積み上げ及び国際会計基準審議会(IASB)に対する意見発信の観点から、修正国際基準に賛成する意見が多いように思われる。 ただし、以下に述べる個々の項目については様々な意見が寄せられており、今後の企業会計基準委員会の議論の動向に注意が必要と思われる。 1 修正国際基準を選択する企業の動向について 「修正国際基準」の任意適用が可能となることにより、「日本基準」、「米国基準」、「IFRS」及び「修正国際基準」の4つの会計基準が並存することとなる。 この場合、財務諸表の比較が複雑になる可能性や、修正国際基準導入のコストなどを考えると、修正国際基準を適用する企業がどれほどあるのかについて疑問を示すコメントもある。 2 「削除又は修正」の判断基準などについて 「削除又は修正」した箇所についてだけ、ASBJ が修正国際基準として公表する方式に賛成するコメントが多いように思われる。 ただし、すでにIFRS を任意適用している企業があることを考えると、「実務上の困難さ」を理由に削除又は修正を認めることに懸念を示すコメントもある。 3 のれんの会計処理 のれんの非償却に関する規定の「削除又は修正」について、基本的に同意するコメントが多いように思われる。 ただし、のれんの償却年数を20年に制限することや、耐用年数を確定できない無形資産の非償却を「削除又は修正」しないことに同意しないコメントも寄せられている。 4 その他の包括利益項目のノンリサイクリング処理 その他の包括利益項目のノンリサイクリング処理については、基本的に同意するコメントと、個別の項目について反対するコメントが寄せられている。 例えば、IFRS 第9号(完成版)が2018年1月1日から原則適用されるとIAS第39号は廃止され、IAS第39号の減損に関する定めもなくなることから、資本性金融商品についてリサイクリング処理とあわせて減損処理を導入することは適切でないとするコメントがある。 5 教育文書の開発 修正国際基準に対するガイダンスや教育文書が開発されることは、我が国におけるIFRSの適用拡大に役に立つ可能性があるとして、賛成するコメントが寄せられている。 ただし、IFRS に関する解釈や教育文書については、IASB やIFRS 解釈指針委員会とのコミュニケーションなどが必要と考えるコメントも寄せられている。 6 今後の日本基準の位置づけについて IFRS のエンドースメント手続に並行し、我が国会計基準の改善を進めることや、単体決算との関連も踏まえ「日本基準」の位置付けについて検討を要望するコメントも寄せられている。 (了)

#No. 93(掲載号)
#阿部 光成
2014/11/11

《速報解説》 「特別目的会社を活用した不動産の流動化に係る譲渡人の会計処理に関する実務指針」等の改正(確定)について~「監査・保証 実務委員会実務指針第90号」の改正にも注意~

《速報解説》 「特別目的会社を活用した不動産の流動化に係る譲渡人の会計処理に関する実務指針」等の改正(確定)について ~「監査・保証実務委員会実務指針第90号」の改正にも注意~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 平成26年11月4日付けで(掲載日11月7日)、 日本公認会計士協会は次の実務指針を公開した。 ①会計制度委員会報告第15号の21-2項は、公開草案に対するコメントを受けて、確定版では公開草案から修正されている。 ③については、「更新(リファイナンス)時の会計処理に関する留意点」を述べたQ16の削除である。 ①及び②については、平成26年8月18日に公開草案が公表されているが、③の改正については、公開草案を公表せずに行う改正であるので、適用に際しては注意が必要である。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 主な改正事項 1 会計制度委員会報告第15号関係 次の改正が行われている。 公開草案に寄せられたコメントの概要とその対応についても公表されているので、ぜひ、お読みいただきたい。 上記の会計制度委員会報告第15号の改正に伴い、「特別目的会社を活用した不動産の流動化に係る譲渡人の会計処理に関する実務指針についてのQ&A」の次のQ5が削除されている。 2 監査・保証実務委員会実務指針第90号関係 前述の会計制度委員会報告第15号の改正に伴い、「特別目的会社を利用した取引に関する監査上の留意点についてのQ&A」(監査・保証実務委員会実務指針第90号)の次のQ16が削除されている。   Ⅲ 適用時期 「会計制度委員会報告第15号「特別目的会社を活用した不動産の流動化に係る譲渡人の会計処理に関する実務指針」の改正について」(平成26年11月4日)及び「監査・保証実務委員会実務指針第90号「特別目的会社を利用した取引に関する監査上の留意点についてのQ&A」の改正について」(平成26年11月4日)は、平成27年4月1日以後開始する事業年度から適用する。 (了)

#No. 93(掲載号)
#阿部 光成
2014/11/10
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