《速報解説》 大阪国税局より(文書回答事例)「相続があった年に遺産分割協議が行われた場合における共同相続人の消費税の納税義務の判定について」が公表 ~被相続人の基準期間の課税売上高への遡及は不要と判断~ 税理士 齋藤 和助 大阪国税局に対して「相続があった年に遺産分割協議が行われた場合における共同相続人の消費税の納税義務の判定について」事前照会があり、平成27年3月24日付で文書回答がなされ、その内容が国税庁ホームページに掲載された(掲載日:4月16日)。 1 事前照会に係る取引等の事実関係 2 照会の内容 その年において相続があった場合において、その年の基準期間における課税売上高が1,000万円以下である相続人が、当該基準期間における課税売上高が1,000万円を超える被相続人の事業を承継したときは、当該相続のあった日の翌日から納税義務を免除しないとされている(消法10①)。 この場合において、2以上の相続人があるときには、相続財産の分割が実行されるまでの間は、各相続人が共同して被相続人の事業を承継したものとして取り扱うこととされており、各相続人のその課税期間に係る基準期間における課税売上高は、当該被相続人の基準期間における課税売上高に法定相続分等の割合を乗じた金額とされている(消基通1-5-5)。 これに基づき、納税義務の判定を行うと①のようになる。 しかし、民法第909条の規定によれば、遺産の分割は相続開始の時に遡ってその効力を生ずるとされていることから、平成26年中に行った遺産の分割により、照会者は相続開始時に被相続人から3分の2の財産を相続により承継したこととなり、これに基づき、納税義務の判定を行うと②のようになる。 照会者は、消費税法第10条の適用に当たっては、事業者が、判定時点での適正な事実関係に基づき消費税関係法令等の規定に従って納税義務が判定されたものである場合にはその判定が認められるものと解するのが相当であるとして、上記①の判定で差し支えないかを事前照会していた。 3 大阪国税局の回答 これに対し、大阪国税局は、照会者の上記①の判定で差し支えないとしている。 つまり、相続開始年分に遺産分割協議が行われた場合には、その遺産分割の効力は、被相続人の基準期間の課税売上高にまで遡及しなくてよいということである。 これは、短期間に課税事業者となる納税者に対する配慮であると思われるが、以下の3要件を満たす必要があることから、実務における適用事例は限定的になると思われる。 (了)
《速報解説》 法人税率の引下げにより 純資産価額方式における法人税額等相当額を38%とする改正通達が公表 ~取引相場のない株式等の評価明細書様式も一部改正~ 税理士法人オランジェ 代表社員 税理士 小幡 修大 平成27年度の税制改正において平成27年4月1日以後開始事業年度より法人税の本則税率が23.9%に引き下げられたのに伴い、4月17日に国税庁ホームページにおいて「財産評価基本通達の一部改正について(法令解釈通達)」が公表され、純資産価額方式における「評価差額に対する法人税額等に相当する金額」の算定に用いる「法人税(地方法人税を含む)、事業税(地方法人特別税を含む)、道府県民税及び市町村民税の税率の合計に相当する割合」が「40%」から「38%」に改正された(評基通186-2)。 1 従来の取扱い 取引相場のない株式等を評価する場合の純資産価額方式は、次の算式により計算することとしている。 (算式) この場合の「評価差額に対する法人税額等に相当する金額」は、「相続税評価額による純資産価額」から「帳簿価額による純資産価額」を控除した残額に「法人税(地方法人税を含む)、事業税(地方法人特別税を含む)、道府県民税及び市町村民税の税率の合計に相当する割合」として「40%」を乗じて計算した金額としていた。 2 改正通達の概要 (1) 法人税の税率の改正等 平成27年度税制改正により、法人税の本則税率が現行の25.5%から23.9%に引き下げられ、平成27年4月1日以後に開始する事業年度から適用することとされた。 (2) 通達改正の概要 上記(1)のとおり、法人税の本則税率の引下げにより、「法人税率等の合計相当割合」の根拠となる税率が変わることから、「法人税率等の合計に相当する割合」を「40%」から「38%」に改正することとなった。 (3) 評価明細書様式の改正 上記の改正に伴い、「「相続税及び贈与税における取引相場のない株式等の評価明細書の様式及び記載方法等について」の一部改正について(法令解釈通達)」が合わせて公表され、次の評価明細書における「評価差額に対する法人税額等相当額」欄の記載が変更されている。 ◆「第5表 1株当たりの純資産価額(相続税評価額)の計算明細書」 ◆「第8表 株式保有特定会社の株式の価額の計算明細書(続)」 (4) 適用時期 平成27年4月1日以後に相続、遺贈又は贈与により取得した財産の評価に適用されることとなった。 (了)
2015年4月23日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル No.116が 公開されました。 プロフェッションジャーナルのリーフレットは 全国のTAC校舎で配布中! - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》については随時公開します。
〔巻頭対談〕 川田剛の“あの人”に聞く 「村井 正 氏(関西大学名誉教授)」 【後編】 〔語り手〕村井 正(関西大学名誉教授) (写真/右) 〔聞き手〕川田 剛(税理士) (写真/左) (次ページへ進む) (前ページへ戻る) (2015年2月27日東京都内にて収録) (了)
山本守之の 法人税 “一刀両断” 【第10回】 「「違法支出金」をどう考えるか」 税理士 山本 守之 税務会計を専攻する多くの学者が「違法支出金は必要経費(損金)に算入できない」としている論文が多く、税務の第一線でもこのような執行をしている例を見受けますが、この処理は正しいのでしょうか。 最近の国税不服審判所の裁決例(平成25年6月6日、非公開裁決、情報公開法第9条第1項により情報公開事例)で考えてみることにしましょう。 この事例で学者や課税庁が「違法支出金は必要経費(損金)にならない」としたのは、平成18年度税制改正において、公務員への賄賂の税控除を認めてはならないとする腐敗防止国連条約の国内法制の担保措置として法人税法及び所得税法が整備され、法人税法第55条(不正行為等に係る費用等の損金不算入)及び所得税法第45条第2項(公務員に対する賄賂)が整備され、所得税法においても賄賂については必要経費に算入されない旨が明文化されたからでしょう。 念のため、所得税法第45条第2項及び法人税法第55条第1項と第5項を示してみると次のようになっています。 注意したいのは、法人税法第55条と所得税法第45条の範囲が異なる点です。これは、法人税法は損金の範囲が広くなっているのに対して、所得税法では必要経費を収入を得るために直接要したものと規定した第37条の規定から家事関連費を必要経費から除外する規定(第45条)があるからです。 国税不服審判所における国と納税者の争点は次のとおりです。 本稿では、上記のうち【争点①】についてのみ述べることにします。 実は、納税者が保険契約者に払った「販売促進費」(保険料の割引分を納税者の報酬から保険契約者に払った分)は次の規定に違反している(違法支出金だ)というのです。 確かに、納税者が保険契約者に払った金は保険業法に違反するものですから課税庁が保険契約者に反面調査しても「そんな金はもらっていない」と答弁し、領収書も出さなかったのでしょう。 これに対して、納税者は販売促進費が次のように必要経費になると主張しました。 これに対して国税不服審判所の裁決では、このように述べています。 この事例について、筆者は税理士としての所見を述べてみましょう。 原処分庁の主張のうち「販売促進費の支払の事実は認められない」については、この費用は保険業法で禁止する違法な支出金ですから、保険契約者は「受け取っていない」とし、領収書も発行してなかったのです。 課税庁はこの事実を反面調査で取り上げて支払の事実はないとしています。 しかし、支出した甲の記録から支出の1時間前に甲の預金から引き出されていることが明らかであり、引出額が支出額と同額であることから支払の事実は容易に推認できたはずです。 また、保険料の値引分(販売促進費の支出)がなければ、保険契約をしないとしていた相手方の言動もあり、相手方はその後も保険契約を継続していたのですから、販売促進費(保険契約報酬から支払われた保険料の割引分)の支出を課税庁は推認できたはずです。 それを反面調査の契約相手方の答弁だけ取り上げ「支出の事実はない」と判断した原処分の判断は余りにも平面的であると非難されても仕方がありません。この点は原処分庁の調査能力が疑われても仕方がないでしょう。 次に、原処分庁で必要経費としない理由のひとつについて、「本件販売促進費の支払は、保険業法第300条第1項第5号で禁止されている行為であり、業務の遂行上、通常かつ一般的に必要であると客観的に認められるものではなく、業務関連性があるものとは認められない。」としています。 しかし、この販売促進費はバックリベート(保険料の割引分-生命保険の外務員が受ける報酬の中からの支払)という性格上、領収書もとれていないのです。 国税不服審判所の裁決では、「具体的かつ客観的な複数の間接証拠により支払の事実が推認され、かつ、業務関連性を有し、業務の遂行上必要であるものと認められるから、請求人の事業所得の金額の計算上、これを必要経費に算入することができるとした」事例です(平成25.6.6裁決)。 わが国の課税当局が平成18年改正を「違法支出金は必要経費とはならない」と誤解したのは、アメリカにおける「公序の理論」がわが国にも通用できると考えたからでしょう。 租税法の世界でも、アメリカでは、「通常かつ必要な経費」(both ordinary and necessary expenses)を損金の額に算入しますが、わが国ではこのような基準によらず、法人税法の損金は会計基準に委ねているだけです。 アメリカでは、支出自体が不法であるものとして支出を禁止する連邦又は州の政策が法律によって示されているものについては、公序に反する結果が生ずるので控除が認められないとしており、これを公序の理論(パブリック・ポリシー)といいます。 しかし、日本では「公序の理論」は適用されず、損金不算入とするためには法律に別段の定めをおかなければならないことになっており、平成18年度の改正は「別段の定め」です。 この点については金子宏教授も次のように述べています。 (『租税法(第19版)』274頁) (了)
マイナンバー制度と 税務手続 【第2回】 「マイナンバーの利用範囲」 税理士 坂本 真一郎 前回は、マイナンバー制度導入の目的と、前提となる事項について述べたが、今回はマイナンバーを利用できる範囲について見ていきたい。 【マイナンバーの利用範囲】 来年1月から、社会保障・税・災害対策等において利用が始まるマイナンバーの利用範囲は、番号法第9条の別表第一(表1「マイナンバーの利用範囲」参照)に掲げられている行政機関等の業務のみに限定されており、番号法の施行時点においては民間での利用は予定されていない。 (番号法附則第6条1項により、番号法施行後3年を目処として法律の施行状況等を勘案し、利用範囲の拡大等を検討することとされている。) 表1 マイナンバーの利用範囲 (出典:内閣官房「社会保障・税番号制度」ホームページ『番号制度の概要』P12) マイナンバーは上記表1のとおり、税務署やハローワークなどの国の機関や地方公共団体等において、社会保障・税・災害対策の分野の事務で個人を特定し、各行政機関で情報連携できるよう利用される。 行政機関等(個人番号利用事務実施者)といえども、勝手に個人番号を収集することができないため、民間事業者は個人番号関係事務実施者として、取引先等や従業員及びその扶養親族等のマイナンバーを収集し、支払調書、給与所得の源泉徴収票、社会保険の被保険者資格取得届などに記載して、行政機関等に提出する必要がある。 【税理士業務におけるマイナンバーの利用場面】 税理士は、従業員を雇用している場合や、顧客から個人番号関係事務を委託される場合には、税理士自身が個人番号関係事務実施者となる。 「特定個人情報(※1)の適正な取扱いに関するガイドライン(事業者編)」によれば、税理士のように委託に基づいて個人番号関係事務を業務として行う事業者は、たとえ従業員が100人以下であっても中小規模事業者(※2)には該当しないため、特定個人情報の取扱いについて大企業並みの安全管理措置が求められるので注意が必要である。 (※1) 特定個人情報とは、マイナンバーをその内容に含む個人情報をいう。 (※2) 中小規模事業者とは、事業者のうち従業員の数が100人以下の事業者であって、次に掲げる事業者を除く事業者をいう(中小規模事業者は、特定個人情報の安全管理措置について特例的に簡易な対応方法が認められている)。 ・個人番号利用事務実施者 ・委託に基づいて個人番号関係事務又は個人番号利用事務を業務として行う事業者 ・金融分野の事業者 ・個人情報取扱事業者(下記「脚注(※4)」参照) マイナンバーは、法定調書・申告書・申請書等の様々な税務書類の作成に当たり記載が必要となることから、税理士は他人のマイナンバーを日常的に取り扱うこととなる。したがって、これまで行われてきた顧客情報の管理よりも厳格に、特定個人情報に係る安全管理を行うこととなる。 法人の確定申告書や申請書等に記載する「法人番号」についてはインターネット上で公表されるため、税理士自らが同サイトで法人名や本店所在地により検索して収集することが可能である。一方、個人事業主等や顧客に雇用されている従業員等のマイナンバー(個人番号)については、各税務手続等を行うまでに収集しておく必要がある。 マイナンバーは平成27年10月以降に通知され、平成28年1月から利用が開始されるが、顧客が行う従業員や取引先等からのマイナンバー収集方法等については、税理士自らが顧客に対しマイナンバー制度について解説、指導を行うことが必要である。 また、マイナンバーの利用開始は平成28年1月以降となっているが、平成27年の年末調整時において翌年分(平成28年分)の扶養控除等申告書を従業員から提出してもらう場合には、本年中にマイナンバーの収集を行うこととなる(※3)。 (※3) 内閣官房マイナンバーHP「事業者による個人番号の事前収集について」(平成27年2月17日付) なお、主な税務手続におけるマイナンバーの記載開始時期は以下のとおりとなっている。 表2 主な法定調書の提出時期 (出典:国税庁ホームページ『社会保障・税番号制度(税務関係書類への番号記載時期)』) 【利用目的を超えたマイナンバーの利用禁止】 マイナンバーは、番号法があらかじめ限定的に定めた事務の範囲の中から、具体的な利用目的を特定した上で利用するのが原則となっている。個人情報保護法とは異なり、本人の同意があったとしても例外として認められる場合を除き、これらの法令で定められた利用範囲の事務以外でマイナンバーを利用してはならないとされている。 利用目的を超えてマイナンバーを利用する必要が生じた場合には、当初の利用目的と相当の関連性を有すると合理的に認められる範囲内であれば、利用目的を変更して利用することができる。 また、個人情報保護法の適用対象となる事業者(以下「個人情報取扱事業者」(※4)という)が利用目的を変更した場合には、本人への通知等を行うことにより、変更後の利用目的の範囲内でマイナンバーを利用することができる(個人情報保護法第15条第2項、第18条第3項)。 (※4) 個人情報取扱事業者とは、個人情報データベース等を事業の用に供している者(行政機関等を除く)であって、個人情報データベース等を構成する個人情報によって識別される特定の個人の数(個人情報保護法施行令で定める者を除く)の合計が過去6ヶ月以内のいずれの日においても5,000件を超えない者以外の者のことをいう(個人情報保護法第2条第3項、同施行令第2条)。ただし、本稿執筆日現在、個人情報保護法の改正案が国会において審議中であり、改正法案が公布されればすべての取扱事業者が対象となる。 例えば、次の事例の場合には、当初の利用目的の範囲内としてマイナンバーを利用できる。 また、当初の利用目的の範囲内ではないが、利用目的の変更が認められる場合としては、 雇用契約に基づく給与所得の源泉徴収票作成事務のために提供を受けたマイナンバーを、雇用契約に基づく健康保険・厚生年金保険届出事務等に利用しようとする場合などがあげられる。 個人情報取扱事業者は、従業員等からマイナンバーの提供を受けるに当たっては、マイナンバーを利用するすべての事務を利用目的として特定して本人への通知等を行うことにより、利用目的の変更をすることなくマイナンバーを利用することができる。 なお、通知等の方法としては、従来から行っている個人情報の取得の際と同様に、社内LANにおける通知、利用目的を記載した書類の提示、就業規則への明記等の方法で行うことができる。 【例外的なマイナンバーの利用】 番号法では、次に掲げる場合に、例外的に利用目的を超えたマイナンバーの利用を認めている。 (了)
〈Q&A〉 印紙税の取扱いをめぐる事例解説 【第4回】 「外国法人との間で作成される契約書」 税理士・行政書士・AFP 山端 美德 当社は、ドイツのA社との間で不動産の売買契約を締結することとなりましたが、契約の締結を日本国内で行う場合と国外であるドイツで行う場合とでは、印紙税の取扱いに違いがありますか。 契約書は、2通作成し双方署名押印等を行った後、各1通ずつ所持することとしています。 印紙税法は日本の国内法であり、その適用地域については日本国内に限られることとなる。したがって、契約書の作成が国内で作成されたのか、国外での作成かにより、課税かどうかを判断することとなる。 [検討1] 「作成」とは、「作成の時」とはどの時点をいうのか? 課税文書を作成した時に印紙税を納める義務を課しているが、この「作成」とは課税文書となるべき用紙等に課税事項を記載し、これを文書の目的に従って行使することをいう。 また、「作成の時」とは、文書の目的に従って行使する時であり、相手方に交付する目的で作成される課税文書は交付の時、契約当事者の意思の合致を証明する目的で作成される課税文書については証明の時が作成の時とされる(基通44)。 したがって、質問の契約書は契約当事者の意思の合致を証明する目的で作成される課税文書であるため、契約当事者双方の署名がなされた時に課税文書が作成されたことになる。 [検討2] 契約書の署名押印を従業員の名義で作成した場合、作成者は誰になるか? 法人等の役員、法人等や個人事業者の従業者の行為は、その法人等や個人事業者に直接的に帰属する(法人または個人事業者が作成者としての責任を負う)ことから、法人等または個人事業者の業務または財産に関して、役員や従業員の名義で作成する文書については、法人等や個人事業者が作成者となる(基通42)。 したがって、質問の契約書は法人の従業員の名義で作成したとしても、法人に直接帰属するものであり、法人が作成者となる。 (了)
「税理士損害賠償請求」 頻出事例に見る 原因・予防策のポイント 【事例25(消費税)】 税理士 齋藤 和助 《事例の概要》 設立事業年度である平成X5年12月期を11ヶ月としたため、設立事業年度が特定期間に該当することとなり、結果として「特定期間における課税売上高による納税義務の免除の特例」により、2期目から消費税の課税事業者となってしまった。 これにより、設立2期目から課税事業者となった当初申告と、設立事業年度を7ヶ月以下の短期事業年度として2期目も免税事業者とした場合との差額につき損害が発生し、賠償請求を受けた。 《賠償請求の経緯》 平成X4年12月 法人設立の相談を受け、関与開始。免税事業者である期間が最も長くなるように課税期間を区切るよう依頼される。 平成X5年1月 資本金900万円で法人設立。免税事業者である期間が最も長くなるように12月決算法人に決める。 平成X5年6月 設立2期目の特定期間の課税売上高及び給与等の支給合計額が1,000万円超となり、特例により設立2期目が課税事業者になることが確定。 平成X7年1月 設立2期目の決算作業中に、特例により消費税の納税義務があること及び、設立事業年度を7ヶ月以下の短期事業年度にすれば、2期目は免税事業者でいられたことに気づく。 平成X7年2月 設立2期目の消費税申告書を提出。関与先に報告し、賠償請求を受ける。 《基礎知識》 ◆特定期間(消法9の2④) 特定期間とは、法人の場合は原則として、その事業年度の前事業年度(7ヶ月以下の短期事業年度を除く)開始の日以後6ヶ月の期間をいう。 ◆特定期間における課税売上高(消法9の2③) 特定期間における課税売上高については、法人が特定期間中に支払った所得税法231条1項(給与等、退職手当金等又は公的年金等の支払明細書)に規定する支払明細書に記載すべき給与等の金額に相当するものの合計額とすることができる。 ◆特定期間における課税売上高による納税義務の免除の特例(消法9の2①) 法人のその事業年度の基準期間における課税売上高が1,000万円以下である場合において、その法人のその事業年度に係る特定期間における課税売上高が1,000万円を超えるときは、その法人のその事業年度における課税資産の譲渡等については、納税義務は免除されない。ただし、その事業年度の前事業年度が7ヶ月以下の短期事業年度である場合には、この特例は適用されない。 平成23年度の税制改正により、免税事業者の判定について、基準期間の課税売上高に加えて前年の上半期の課税売上高も加味されることとなった。本事例のように、法人の特定期間の課税売上高が1,000万円超であり、かつ、給与等支給額の合計額が1,000万円超である場合には、設立2期目から課税事業者となる。なお、この免税事業者の判定の改正は平成25年1月1日以後に開始する事業年度から適用される。 《税理士の落とし穴》 《税理士の責任》 税理士は法人設立の相談を受けた際、免税事業者である期間が最も長くなるように課税期間を区切るよう依頼されていた。依頼者は複数の関与先が共同で立ち上げた法人であり、その実績から、当初より特定期間の課税売上高及び給与等支給額の合計額が1,000万円を超えることは明らかであった。にもかかわらず、この特例の適否を考慮せず、設立初年度を11ヶ月としたため、設立初年度が特定期間に該当してしまい、結果として2期目から課税事業者となってしまった。設立初年度を7ヶ月で区切り、短期事業年度とすれば、2期目は特例の適用を受けず、免税事業者でいられたことから、税理士に責任がある。 ただし、税賠保険の観点からは、決算期日の決定は、本来、法人自らが行うべきものであることから、保険金支払いの対象となるのは、税理士主導で行われた事実が客観的に確認できる場合等、特定の場合に限られる。 《予防策》 [ポイント①] 改正項目の確認 今回の事例は税制改正の内容を正しく理解していなかったことにより起きている。税制改正は毎年必ずあることから、改正により関与先で影響のあるところがないかどうかをその都度具体的に確認すること。また、担当者だけでなく、所内や税理士法人全体でどのように確認し、チェックするかのルール作りも必要である。 [ポイント②] 設立2期目の納税義務に注意 以前は資本金1,000万円未満で法人を設立すれば、基準期間のない設立当初2年間は必ず免税事業者であった。しかし平成25年以降は、本事例のように、設立当初より半年で課税売上高及び給与等支給額の合計額が1,000万円を超えることが明らかな場合には、特例の適用により設立2期目から消費税の納税義務が発生することを念頭に、法人設立のアドバイスを行わなければならない。 [ポイント③] 決定のプロセスや責任の所在を明らかにしておく 法人設立の際の資本金額や決算期等は依頼者法人が決めるべき事項である。したがって税理士のアドバイスによってこれらの事項が決定された場合であっても、税賠保険の対象となる税理士業務とはみられないこともあることを念頭に、決定のプロセスや責任の所在を書面に残し、明らかにしておくことが重要である。 (了)
贈与実務の頻出論点 【第8回】 (最終回) 「親からの借入れと贈与の関係」 税理士法人チェスター 解 説 [1] 贈与とみなされる場合 夫と妻、親と子、祖父母と孫等特殊の関係がある者相互間で金銭等の授受が行われた場合には、実際は贈与であるにもかかわらず、賃借に仮装して贈与税課税回避を図ろうとする例があります。そのため、これらの特殊関係がある者相互間で金銭の貸与等において、実質的に贈与であるにもかかわらず、貸借の形式をとっている場合、「ある時払いの催促なし」または「出世払い」等の貸借の場合には、贈与として取り扱われます(相基通9-10)。 [2] 貸借とするには 特殊の関係がある者相互間での金銭等の授受が、贈与ではなく貸借として認められる場合には、主に次の点に注意することが必要です。 ① 契約書を作成する 金銭消費貸借契約書を作成し、借入金額、利息、返済期間等の条件を明示します。返済方法は、長期の据置期間をおかずに、毎月定額を返済するようにしましょう。 ② 借入金の返済証拠を残す 借入金の返済は、現金の手渡しではなく、預金通帳を通して返済し、返済の客観的証拠を残すようにしましょう。 ③ 無理のない借入金の返済計画を立てる 借入金が賃借人である子の所得から判断して返済可能な金額であるか、賃貸人の親の年齢等を考慮した返済期間が設けられているかなど考慮し、無理のない返済計画を立てるようにしましょう。 [3] 借入金の利子について 事実上貸借であることが明らかとなった場合においても、無利子で貸与があった場合には、利子に相当する金額の利益を受けたものとして、その利益相当額は、贈与として取り扱われる場合があります。ただし、その利益を受ける金額が少額である場合または課税上弊害がないと認められる場合には、強いて贈与税の課税をしなくてもよいこととされています(相基通9-10)。 (連載了)
法人税に係る帰属主義及び AOAの導入と実務への影響 【第12回】 「内国法人の法人税③」 税理士法人トーマツ パートナー 税理士 小林 正彦 3-2-1-3 控除限度額の計算 控除限度額は、内国法人の各事業年度の所得金額のうちにその事業年度の調整国外所得金額の占める割合を乗じて計算した金額とする(法令142①)。「調整国内所得金額」とは、内国法人の各事業年度において生じた国外所得金額から非課税国外所得の金額を控除した金額をいう(法令142③)。 なお、非課税国外所得の6分の5を除外することとする経過措置は平成26年3月31日までであるため、平成26年4月1日以降は全額が除外される(平成23年12月改正法令附則9②)。 3-2-1-4 外国税額控除の対象とならない外国法人税の額 外国税額控除の対象にならない外国法人税について法人税法第69条第1項に定めがあるが、今回の改正で以下のものが新たに追加された。 3-2-1-5 文書化 (1) 国外事業所等帰属外部取引に関する事項 外国法人については、外国税額控除における国外所得金額を計算するうえで国外事業所等に帰せられる所得を計算する場合に、外国法人のPE帰属所得に係る所得の金額の計算と同様に、機能・事実分析によって取引から生ずる所得の帰属を判定することされている。 そこで、外国法人と同様に、外国税額控除の適用を受ける内国法人は、他の者と行った取引のうち、国外所得の金額の計算上、その取引から生ずる所得が国外事業所等に帰せられるもの(国外事業所等帰属外部取引)については、次の事項を記載した書類を作成しなければならないこととされた(法法69⑲、法規30の2)。 (2) 内部取引に関する事項 文書化は機能・事実分析を行う上での有用な出発点であるが、内部取引は私法上の取引でないため、企業内部におけるヒト・モノ・カネ等の動きがどのような内部取引を構成することになるかを明確にするための文書化の役割は、より一層大きなものになる。 納税者にとっては内部取引に関する自身の認識を表した文書を作成することで、税務リスクを軽減し、予見可能性を高めることが可能になる。税務当局にとっても、納税者の作成した文書を出発点として機能・事実分析を行うことで事務の効率化が図られるとともに、税務執行の明確化に資するものと考えられる。 そこで、外国税額控除の適用を受ける内国法人は、本店等と国外事業所等との間の内部取引に関し、次の書類を作成しなければならないこととされた(法法69⑳、法規30の3)。 3-2-1-6 適格合併等が行われた場合の繰越控除限度額等 内国法人が適格合併、適格分割又は適格現物出資(適格合併等という)により事業の移転を受けた場合には、被合併法人等の過去3年分の控除限度額及び控除対象外国法人税の額等のうち、当該内国法人が移転を受けた事業に係る部分の金額を当該内国法人の過去3年分の控除限度額及び控除対象外国法人税の額とみなして外国税額控除を行うこととされているが、今回の改正で、被合併法人等には外国法人が含まれない旨が規定された(法法69⑪)。 内国法人と外国法人では課税の対象となる所得の範囲や控除対象外国法人税額が異なることから、外国法人に係る外国税額控除の控除限度額や控除対象外国法人税額の内国法人への引継ぎは行わないこととされたものである(「平成26年度税制改正の解説」(財務省)780頁)。 3-2-2 連結事業年度における外国税額の控除 (1) 国外源泉所得 内国法人の外国税額控除に係る控除限度額の計算における国外源泉所得については、「国内源泉所得以外の所得」という規定の仕方を改め、積極的に「国外源泉所得」を定義することとされた(法法69④)。 連結納税制度における外国税額控除に係る連結控除限度額の計算における国外源泉所得については、単体納税における場合と同一とされている(法法81の15①)。 (2) 国外所得金額の計算 ① 概要 外国税額控除の連結控除限度額の計算の基礎となる連結国外所得金額とは、国外源泉所得に係る所得についてのみ法人税を課すものとした場合に課税標準となるべき当該連結事業年度の連結所得の金額とされ、国外事業所等に帰せられるべき資本に対応した利子の損金不算入相当額等について加減算の調整を行う必要がある(法法81の15①、法令155の27の2①)。 ② 国外事業所等帰属所得の認識時期等 国外事業所等帰属所得の認識時期、国外事業所等が内部取引により取得した資産の取扱い、内外共通費用の配分、国外事業所等に帰せられるべき自己資本に対応する負債利子の加算調整、銀行等の国外事業所等に帰せられるべき自己資本に対応する資本性負債に係る利子の減算調整及び保険会社の国外事業所等に帰せられるべき投資資産に係る収益の額の減算調整については、単体納税における場合と同様に計算することとされ、単体納税制度における各規程を準用することとされている(法令157の27の2②)。 ③ 明細書の添付 連結法人が外国税額控除の適用を受ける場合には、単体納税と同様に明細書の添付を要するとされた(法令157の27の2③)。 (3) 連結控除限度額の計算 連結事業年度における外国税額控除における連結控除限度額が、連結法人の各連結事業年度の連結所得に対する法人税の額に、その連結事業年度の連結所得金額のうちにその連結事業年度の調整連結国外所得金額の占める割合を乗じて計算した金額とするとされた(法令155の28①)。「調整連結国外所得金額」とは、連結法人の各事業年度において生じた連結国外所得金額から非課税国外所得の金額を控除した金額をいう(法令155の28③)。 なお、非課税国外所得の6分の5を除外することとする経過措置は平成26年3月31日までの間に開始する事業年度に係るものであるため、平成26年4月1日以後に開始する各連結事業年度については、非課税国外所得の全額が連結国外所得金額から除外される(平成23年12月改正法令附則17②)。 (4) 文書化 ① 国外事業所等帰属外部取引に関する事項 連結法人についても、単体納税におけると同様に、外国税額控除における連結国外所得金額を計算するうえで、国外事業所等に帰せられる所得を計算する場合に機能・事実分析によって、取引から生ずる所得の帰属を判定することとされている。 このため、外国税額控除の適用を受ける連結法人は、他の者と行った取引のうち、国内所得の金額の計算上、その取引から生ずる所得が国外事業所等に帰せられるものについては、一定の事項を記載した書類を作成しなければならないこととされた(法法81の15⑫、法規37の7の2)。具体的な書類は、単体の納税の場合と同様である。 ② 内部取引に関する事項 外国税額控除の適用を受ける連結法人は、単体納税におけると同様に、本店等と国外事業所等との間の内部取引に関し、国外事業所等との間の内部取引に関し、一定の書類を作成しなければならないとされた(法法81の15⑬、法規37の7の3)。具体的な書類は、単体納税における場合と同様である。 (5) 国外所得金額の計算の特例(独立企業原則の適用) ① 概要 外国税額控除の適用を受ける内国法人の本店等と国外事業所等との間の内部取引の対価とした額が独立企業間価格と異なることによる外国税額控除の控除限度額の計算における国外所得金額が過大となる場合には、当該国外所得金額の計算については、その内部取引は独立企業間価格によるものとされた(措法67の18①)。 ② 独立企業間価格の算定 内部取引に係る独立企業間価格は、移転価格税制における独立企業間価格と同様に算定することとされた(措法67の18②)。 ③ 比較対象企業に対する質問検査等 内部取引に係る独立企業間価格を算定するために必要と認められる書類又はその写しが遅滞なく提示又は提出がない場合における同業者に対する質問検査(措法67の18③)等についても移転価格税制と同様とされた(措法67の18⑩)。 ④ 文書化 移転価格税制と同様に、内部取引に係る独立企業間価格の算定に必要と認められる書類で、提示又は提出が遅滞なく行われない場合に推定課税がなされる要件となる書類について関連取引に準じて規定された(措規22の19の4①一・二)。 ⑤ 連結納税制度 連結納税制度の場合についても、①から④までと同様の改正が行われている(措法68の107の2)。 (了)