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経理担当者のためのベーシック会計Q&A 【第36回】消費税に関する会計処理②「期末決算時の会計処理」

経理担当者のための ベーシック会計Q&A 【第36回】 消費税に関する会計処理② 「期末決算時の会計処理」   仰星監査法人 公認会計士 大川 泰広   〈事例による解説〉 〈会計処理〉 ① 中間納付時 ② 期末決算時 (*1) 中間納付80,000 (*2) 仮受消費税等250,000-仮払消費税等100,000-仮払消費税等(中間納付)80,000=70,000 〈会計処理の解説〉 消費税の仕組みについて、前回、以下の図を用いて解説しました。 上図のとおり、事業者が消費者に代わって納付すべき消費税額は「預かった消費税」と「支払った消費税」の差額で求められます。 税抜方式を採用している場合、預かった消費税は「仮受消費税等」、支払った消費税は「仮払消費税等」で処理していますので、期末決算時においては、「仮受消費税等」と「仮払消費税等」の差額を求めることにより、納付すべき消費税額を算定することができます。 納付すべき消費税額は、「未払消費税等」として負債に計上します。計上した「未払消費税等」は消費税を納付したときに取り崩します。ちなみに、消費税の納付期限は事業年度終了の日の翌日から2ヶ月以内とされています。 消費税を中間納付している場合には、納付すべき消費税額の一部を既に払っていることになりますので、期末決算時に計上する「未払消費税等」から中間納付額を控除する必要があります。会計処理上は、納付時に中間納付額を「仮払消費税等」として処理しておき(「①中間納付時」の仕訳)、期末決算時にこれを含めて「仮受消費税等」と「仮払消費税等」を相殺することで、納付すべき消費税額が算定されます(「②期末決算時」の仕訳)。 なお、税込方式を採用している場合には、納付すべき消費税額を全額「租税公課」等の費用で処理します。 *   *   * 次回は、控除対象外消費税額について解説します。 (了)

#No. 60(掲載号)
#大川 泰広
2014/03/13

内定・採用に関する「よくある質問」 【第1回】「履歴書等の虚偽記載による採用取消しは認められるのか」

内定・採用に関する「よくある質問」 【第1回】 「履歴書等の虚偽記載による採用取消しは認められるのか」   社会保険労務士 菅原 由紀   採用内定取消しの法的性格 新規学卒者については「学校を卒業」するという条件や入社日の到来という始期が付いていることから、最高裁(大日本印刷事件 昭和54年7月20日 最高裁二小判決)では採用内定について、就労の「始期付解約権留保付労働契約」が成立したものとその判断を示している。 一般的には、会社が採用選考の結果、学生に対して、内定通知書と誓約書等を交付し、学生が会社に誓約書等を提出した段階等で採用内定となると解されている。 採用内定取消しが認められるのは、上記の最高裁判決においても と判示している。   誓約書の記載事項 採用内定時に学生が会社に提出する誓約書等には、所定の時期に間違いなく入社することのほかに、次のような内定取消事由が列挙され、これに該当する場合には、採用が取り消される旨が記載されているケースがほとんどだと考えられる。 前述の通り、「始期付解約権留保付労働契約」とは、採用内定によって労働契約の効力は発生しているとはいうものの、採用取消事由が生じた場合には、会社はこの労働契約を解消する権利を留保していることになる。 したがって、誓約書等に記載されている採用内定取消事由が発生した場合、会社は留保されていた解約権を行使することができるとされている。   「客観的に合理的と認められる正当な事由」とは しかし、会社側からの内定取消しについては、誓約書等の内定取消事由のすべてが直ちに適用されることが許されるわけではなく、「客観的に合理的な理由が存在し、社会通念上相当と是認される場合」に限られる。 具体的には、卒業予定だった内定者が単位不足で卒業できず、4月1日からの就業が不可能な場合には、内定取消しもやむなしとなるであろう。 つまり、採用内定の取消しは、会社が、採用内定当時には知ることができず、また知ることが期待できないような事実であって、これを理由として採用内定を取り消すことが、留保解約権の趣旨・目的に照らして客観的・合理的と認められ、社会通念上相当と認められるものに限られているのである。   偽りの履歴書の記載への対応 虚偽記載については、事案ごとに判断されるものであるが、例えば、実際には取得していないMBAを取得していると偽ることは経歴詐称であり、一般的には「採用試験時に提出した書類に重大な偽りがあったとき」に該当し、内定取消しの事由に該当するのではないかと考えられる。 (了)

#No. 60(掲載号)
#菅原 由紀
2014/03/13

常識としてのビジネス法律 【第9回】「契約に関する法律知識(その5)」

常識としてのビジネス法律 【第9回】 「契約に関する法律知識(その5)」   弁護士 矢野 千秋   1 公正証書 契約によく関係するものに、公正証書がある。 (1) 公正証書の効力 公正証書とは、公証人が当事者の嘱託を受け、契約等について作成した証書である。適法かつ有効な内容で、無能力による取消しのおそれのない契約であれば、いかなる内容の契約でも公正証書にすることは可能であるが、その内容を公正証書にするだけの実益がなければ意味がない。 「実益がある場合」とは公正証書の効力をうまく利用している場合をいうため、まずは公正証書の効力について述べる。 ① 債務名義としての効力 最も重要な効力であり、裁判所の判決なしに強制執行ができるということである。 これには2つ条件がある。 まず、一定の金額の支払い又は他の代替物若しくは有価証券の一定の数量の給付を目的とするものに限られる。公証役場で1時間程度で作成して判決の代わりになるのであるから、シンプルな金銭等に限られる。 次に、債務不履行の場合直ちに強制執行に服する旨の記載、執行認諾文言が必須である。私的自治の例外である公証人の前で認めたのであるから証明力は抜群、しかも「強制執行されてもいい」と言ったわけであるから、私的自治でその通りの効力を与えよう、となるわけである。 ② 証書の信用力を高める効力 作成手続の厳格性から、証書としての信用力が高く、後日紛争が生じても十分な証明力を有することになる。 ③ 第三者に対する効力 公正証書には確定日付の効力が認められているので、外観からは明確でなく、第三者から疑いを受けやすい法律行為の存在を明らかにするために公正証書が利用される。 (2) 公正証書の作成手続 公正証書を作成するには公証役場(全国どこの公証役場でもよい)へ当事者が出頭する必要がある(代理人に依頼することも可能)。 本人が出向く場合は本人の印鑑証明書(発行後3ヶ月以内のもの)、代理人に依頼する場合は、本人の委任状、印鑑証明書と、代理人の印鑑と印鑑証明書が必要である。なお、本人が法人の場合は、法人の代表者の資格証明書(商業登記簿謄本など)と代表者印が必要である。 前もって公証役場と連絡をとり、雛型などを入手して文書にしておき、公証人とアポイントをとって約束の日時に出頭することになる。費用、印紙代なども聞いて用意していく。 公証役場では原本を保管し、正本を交付してくれる。   2 契約書の用語、見出しなど (1) 及び、並びに、かつ、又は、若しくは ① 1段階の場合 「及び」と「並びに」は、英語でいうと一応「and」を意味し、同じ単語や事柄を単純に1段階でつなげるときには「及び」を用いる。「無効及び取消」などである。 3つの場合は、前のほうは読点「、」でつないで、最後に「及び」を使用する。つまり、「A、B及びC」となる。3つ以上あるときで限定しないときは「A、B、C等」と記載する。 ② 2段階の場合 小さなくくりの「無効及び取消」(意思表示に瑕疵がある場合)と「解除及び解約」(意思表示に瑕疵がない場合)を大きなくくりでつなげたいのであるが、ここで再び「及び」を使用すると、「無効及び取消及び解除及び解約」となり、大小の段階的な意味がわからなくなってしまう。 そこで、「並びに」という接続詞を使い、「無効及び取消並びに解除及び解約」とする。これにより前2者は瑕疵のあるくくり、後2者は瑕疵のないくくりであることが表せる。 このように、「並びに」は、大小2段階以上ある場合に大きなグループを結びつける接続詞である。 ③ かつ 「無効及び取消は意思表示に瑕疵がある場合の法効果である」という場合、「無効又は取消」としてもいいようにも感じる。このように「及び」が接続した双方を条件的に充たすのか否か必ずしも明瞭ではないので、連結される語が互いに密接不可分で、双方を充たすことを明瞭にしたいような場合に、「かつ」が用いられる。「東京23区内在住で、かつ、日本人に限る」などである。 ④ 又は、若しくは 「又は」「若しくは」は、英語でいうと「or」を意味する。1段階の場合は、「又は」を使用する。複数の内容を並べるときは、「A、B又はC」となるのは「及び」と同じである。2段階の場合は、大きな段階に「又は」を使用し、小さな段階に「若しくは」を使用する。「無効若しくは取消又は解除若しくは解約」となるわけである。 (2) 直ちに、速やかに、遅滞なく 急迫の程度に応じて、ニュアンスの違いがある。一番急迫性が強いのは、「直ちに」である。逆に一番急迫性が弱いのは、「遅滞なく」で、正当な理由又は合理的な事情による遅延は許されると解される。 「直ちに」と「遅滞なく」の中間の急迫性で使用されるのが、「速やかに」である。特に同一の契約書の中などでは急迫性に応じて使い分けられたい。 (3) 以上、超える、以下、未満 「以上」「以下」では、その数字に該当する場合を含み、「超える」「未満」では、その数字に該当する場合を含まない。「以」という文字が入っていたら、「含む」と考えればよい。 「我が国では20歳以上の者が成年者であり、19歳以下の者が未成年者である」「我が国では19歳を超える者が成年者であり、20歳未満の者が未成年者である」などである。 (4) 以前、以後、前、後 ① 「以前」「以後」と「前」「後」 「以前」「以後」も同じである。例えば、「平成23年3月31日以前は」「平成23年3月31日を含んで、それよりも前」を意味し、「平成23年10月1日以後」は「平成23年10月1日を含んで、それよりも後」を意味する。 そして「前」(まえ)「後」(ご)は、基準となる時点を含まない。 ② 「から」「まで」「より」 「以前・前」「以後・後」に類似した用語に「から」「まで」がある。これらはいずれも、基準となる時点を含む。「我が社の事業年度は、4月1日から(より)翌年の3月31日までである」などである。 「から」は方向を示すこともあり、「より」は方向や比較級を示すことがある。同一の契約書の中などでは使用法を一貫されたい。 (5) 場合、とき、時 ① 条件を表す場合 「~の場合は」「~のときは」という表現は、仮定的な条件を表すときに用いられる(予定外の事態の発生)。 「場合」と「とき」の使い分けについては、仮定的な条件が2つ出てくるときは、大きい方(前提となる条件)に「場合」を、小さい方に「とき」を用いる。 「セミナー申込キャンセルの場合で、セミナー開講日の3日前までにその旨を申し出たときはセミナー料金の半額を返還し、3日前までにその旨を申し出ないときは一切の払い戻しには応じられない」などである。 大小関係がなければ「単独で使うときは」、「単独で使う場合は」、このようにいずれも使われている。ただし、同一の契約書の中などでは使用法を一貫されたい。 ② 時点を表す場合 「とき」に関連して、漢字の「時」(とき)があるが、「時」とした場合は仮定的な条件ではなくて、時点を意味する(予定している事態の発生)。 「乙の倉庫に本件商品を納入した時、甲から乙に本件商品の所有権が移転するものとする」などである。ストレートに「時点」とする例もある。 (6) 同、前、次 ① 同 1つの「条項号」の中で、同じ法令名や同じ条項号が繰り返し出てくることがある。このとき、直前の法令名や条項号を指す場合に、「同」を使用する。「民法105条1項には・・・同法106条には・・・」「民法105条1項には・・・同条2項には・・・」などである。 ② 前 「前」は、直前の条項号を指す。「前条第1項には・・・」などである。第3条で第1条に言及したいときは「前々条」とはいわず、「(本契約)第1条」という。第3条で第1条及び第2条をまとめて指すときは「前2条」という。 ③ 次 「次」は、直後の条項号を指す。「次条第1項には・・・」などである。第1条で第3条について言及したいときは「次々条」とはいわず、「(本契約)第3条」という。第1条で第2条及び第3条をまとめて指すときは「次2条」という。 (7) 数字 一般的な分量の契約書では、「第1章」「第1節」などのグループ分けに使う「章」や「節」は、あまり使われていない。大分量の契約書になる場合には、「第1章 契約の成立」「第2節 当事者」などと章分けや節分けするものもある。 通常の分量の契約書は「条」が最大の単位であり、「第1条」「第2条」と通し番号にして表記する。 条の中で分ける、いわば次の小さい単位が「項」である。これもその条の中で「第1項」「第2項」と通し番号になる。表記は「第1項」と書いてもいいのであるが、単に「1」「2」と算用数字を書くのが通常である。そして第1項、つまり「1」は省略されるのが普通である(法律の条文の記載方法である)。 項の中でさらに細分する単位が「号」である。表記は「(1)(2)」としたり「①②」とするものが多い。 (8) 条文の見出し 見出しは付けても付けなくても構わない。ただ、付けるならすべての条文に付ける、付けないならすべてに付けないと、一貫させる。付ける場合、見出しは条文毎に付けるのが通常である(項や号には付けない)。見出しは、条文の内容がハッキリしているような場合に、その内容を変える力はない。その意味では内容に無関係である。 しかし、条文内容が不明瞭なような場合、内容の解釈判断を補う力(補充的効力という)を持つことはある。 (9) 句読点 まず句点(。)は、文章の終わりに必ず付ける。ただし、号などが名詞で終了する場合には付けない。「①当事者の破産」「②当事者の死亡」などである。 しかし、「こと」や「とき」で終わる場合には、句点を付けるのが原則である。「①当事者が破産したこと。」「②当事者が死亡したとき。」などである。 次に読点(、)はある意味自由度が高く、書き手の個性が反映され、はっきりしたルールはないが、主語の後(「甲は、」などである)、目的語の後(「乙に対して、」などである)、条件や期限を示す場合(「・・・の場合は、」「・・・までに、」などである)などに付けるのが通常である。 (了)

#No. 60(掲載号)
#矢野 千秋
2014/03/13

《速報解説》 「リース手法を活用した先端設備等投資支援スキームにおける借手の会計処理等に関する実務上の取扱い(案)」(公開草案)について

《速報解説》 「リース手法を活用した先端設備等投資支援スキームにおける 借手の会計処理等に関する実務上の取扱い(案)」(公開草案)について   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 平成26年3月7日付で、企業会計基準委員会は、「リース手法を活用した先端設備等投資支援スキームにおける借手の会計処理等に関する実務上の取扱い(案)」(実務対応報告公開草案第40号)を公表した。 これは、経済産業省が制定した「リース手法を活用した先端設備等導入促進補償制度推進事業事務取扱要領」(平成26年3月3日制定)3条7号におけるリース契約に基づくリース取引について、借手の会計処理等に関する実務上の取扱いを示したものである。 公開草案は、基本的に、「リース取引に関する会計基準」(企業会計基準第13号。以下「リース会計基準」という)及び「リース取引に関する会計基準の適用指針」(企業会計基準適用指針第16号。以下「リース適用指針」という)に従って会計処理及び開示を行うことを提案している。 意見募集期間は、平成26年5月7日までである。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 主な内容 1 特徴 本スキームでは、リース期間中のリース料総額の現在価値が、リース事業者(貸手)におけるリース対象物件の取得価額の90パーセント未満とされ、当該リース期間は、リース対象物件の経済的耐用年数の75パーセント未満とされる。 リース物件について、事業会社(借手)に移転しないリスク及び便益は、リース事業者(貸手)及び基金設置法人が負担又は享受することとなる。 事業会社(借手)がリース期間終了後にリース対象物件をリース事業者(貸手)に返却し、当該リース期間終了後の翌日から起算して1年以内に、リース事業者(貸手)が当該リース対象物件について、見積残存価額を下回る金額で処分した場合、基金設置法人はその下回った金額の一部をリース事業者(貸手)に対して補塡する。 事業会社(借手)は第三者委員会による審査の結果を入手することを通じて、リース事業者(貸手)の計算利子率等の内容を入手できる立場にある。 2 範囲 経済産業省が制定した「リース手法を活用した先端設備等導入促進補償制度推進事業事務取扱要領」(平成26年3月3日制定)3条7号におけるリース契約に基づくリース取引であり、「リース手法を活用した先端設備等導入促進補償制度推進事業実施要領」(平成26年3月3日制定)第4の4に基づき基金設置法人とリース事業者(貸手)により締結された先端設備等導入支援契約に基づくものに係る借手の会計処理等を対象としている。 3 会計処理 ① ファイナンス・リース取引の判定基準は、他のリース取引と同様に、リース適用指針に基づいて行う。 ② 再リースに係るリース期間又はリース料を解約不能のリース期間又はリース料総額に含めるかどうかについても、他のリース取引と同様に、リース適用指針に従う。 ③ リース取引開始日後にリース取引の契約内容が変更された場合、ファイナンス・リース取引かオペレーティング・リース取引かの判定を再度行う(これ以外の場合、当該判定をリース期間中に再度行うことは要しない)。 ④ 変動リース料については、リース取引開始日において、借手により示されている合理的な想定稼働量を基礎とした金額により、リース会計基準及びリース適用指針に定めるリース料総額に含めて取り扱い、次のような場合に考慮されることになる。 ファイナンス・リース取引の判定 ファイナンス・リース取引と判定された場合の、リース資産及びリース債務として計上する価額の算定 リース料は、以下のいずれかとして設定される。 なお、公開草案に定めのない事項については、リース会計基準及びリース適用指針の定めに従って会計処理する。 4 開示 変動型又はハイブリッド型について、オペレーティング・リース取引と判定された場合、リース会計基準22項に定める解約不能のものに係る未経過リース料の注記に、貸借対照表日における借手による合理的な見積額に基づく変動リース料の未経過分を含める。 なお、公開草案に定めのない事項については、リース会計基準及びリース適用指針の定めに従って開示する。   Ⅲ 適用時期 適用時期は、公表日以後適用の予定である。 (了)

#No. 59(掲載号)
#阿部 光成
2014/03/10

Profession Journal No.59が公開されました!

2014年3月6日(木)AM10:30、Profession Journal  No.59 が公開されました。 Profession Journalの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》については随時公開してまいります。 Web情報誌 Profession Journalは、プロフェッションネットワークのプレミアム会員専用の閲覧サービスです。 Profession Journalについての詳細はこちら。 バックナンバー一覧はこちら。

#Profession Journal 編集部
2014/03/06

monthly TAX views -No.14-「配偶者控除の改組は実現するか」

monthly TAX views -No.14- 「配偶者控除の改組は実現するか」   中央大学法科大学院教授 東京財団上席研究員 森信 茂樹   少し気は早いが、来年度税制改正の課題となりそうなテーマとして、配偶者控除の取扱いがある。 安倍政権は、第3の矢「日本再興戦略─JAPAN is BACK」(2013年6月14日公表)において、女性が活躍できる環境整備の推進を目標として掲げ、「男女が共に仕事と子育て等を両立できる環境の整備」をうたっている。 これに関連して、政府や自民党のさまざまな場で、配偶者控除の改組や廃止に関する議論が始まりつつあり、筆者もその一つに巻き込まれている。 配偶者控除は、「専業主婦」は家計に追加的な生計費がかかるので担税力が落ちることや「内助の功」への配慮という理由から設けられたものである。最近では、「子育てのために専業主婦は必要」という少子化対策税制として主張されることが多くなった。 *  *  * しかし、少子化と女性の就労との関係には、最近大きな変化がみられている。 先進諸国の女性就業率と出生率の関係を、OECD統計で比較してみよう。 1980年には、女性就業率と出生率は女性の就業率が高いほど出生率は低いという「負の相関関係」にあった。ところが、2000年にはこの関係が逆転、女性の就業率と出生率は「正の相関関係」となった。 つまり、女性の就業率が高い国ほど出生率も高い、これが先進諸国で起きている現実である。 このような中で、わが国はこの20年間、女性就業率は若干上昇したが出生率は大きく低下しているのである。 もっとも、女性就業率と出生率の相関関係がどうして変化したのか、双方にどのような因果関係があるのかという点は必ずしも明確でなく、踏み込んだ分析が必要である。 しかし、わが国を除く先進諸国では、女性が就労しつつ子育てをしやすい条件が整備されてきたこと、それを職場や家庭(つまり夫)で支える環境も変化してきたことが容易に想像できる。 女性パワーの活用を政策目標として掲げるのであれば、わが国もこのトレンドに乗るよう諸条件を大きく変えていく必要がある。その意味では、女性の就労に中立的ではない配偶者控除は、3号被保険者の問題と並んで見直すべき制度ということになる。 *  *  * では、配偶者控除をどう改組するべきなのか。 単に廃止するというのでは、政治的には通らない。未だ専業主婦家庭は多く残っており、高齢世帯も増税になる。そこで、代替案を示しながら廃止・縮小していくことが現実的な道筋となる。 考えられる代替案としては、配偶者控除を廃止して児童税額控除にする、児童手当の拡充や子供子育て支援に活用することが挙げられる。 支援対象を「専業主婦家庭」から「子育て家庭」へと変えるのである。 もう一つ、自らの控除と夫の控除の2つを受けることができる二重控除の現状を手直しする観点から、「移転的基礎控除」に衣替えするという考え方も出されている。 個人が就労し所得を得るとひとつの基礎控除を取得し、結婚した場合には、夫婦の働き方如何にかかわらず、夫婦それぞれが基礎控除を持つ。妻が使いきれない場合には夫が使うことを可能にする、という制度である。 この結果、現行の控除額のままでは、パートの主婦が65万円から141万円の収入を得る家庭では増税になるが、「103万円の壁」への意識はなくなり、就労の中立化を図ることができる。 【移転的基礎控除のイメージ図】 ※控除額は現行のままとした。 *  *  * 配偶者控除の廃止には、政治的に困難がつきまとう。 安倍総理の周りの有識者には、専業主婦の役割を評価し、配偶者控除を残すべきという意見が多いとも言われている。 しかし、女性パワーの活力を引き出すことがアベノミクス第3の矢の数少ない手段であると考えられる中で、議論は活発化せざるを得ない、つまり何らかの改正が行われる予感がする。 (了)

#No. 59(掲載号)
#森信 茂樹
2014/03/06

[個別対応方式及び一括比例配分方式の有利選択を中心とした]95%ルール改正後の消費税・仕入税額控除の実務 【第1回】「仕入税額控除の仕組み」

[個別対応方式及び一括比例配分方式の有利選択を中心とした] 95%ルール改正後の 消費税・仕入税額控除の実務 【第1回】 「仕入税額控除の仕組み」   国際医療福祉大学大学院准教授 税理士 安部 和彦   1 なぜ今「仕入税額控除」なのか 本連載ではこれから消費税の仕入税額控除の実務についてみていくこととなるが、第1回となる今回は、消費税制度の根幹をなす仕入税額控除の仕組みについて解説する。 それでは、なぜ今「仕入税額控除」について確認する必要があるのだろうか。 この直接のきっかけは、平成23年度の税制改正にある。すなわち、平成23年度の税制改正において、消費税に関してはいわゆる「95%ルール」の見直しが行われたが、これにより改正前は課税仕入れに係る税額が全額控除できた事業者であっても、改正後は実額控除方式である「個別対応方式」又は「一括比例配分方式」のいずれかの選択適用が強いられるところが大幅に増えた。そのため、課税事業者の仕入税額控除制度への関心が大幅に高まったというわけである。実際、新たな事務量負担の増加と不慣れな経理処理に頭を悩ませている企業の経理担当者も少なくないものと思われる。 ところで、消費税の仕入税額控除については、2種類の実額控除方式のうち、一般的には個別対応方式の方が一括比例配分方式よりも有利と考えられている。なぜなら、多くの企業においては、個別対応方式の方が一括比例配分方式よりも仕入控除税額が多くなる傾向にあるからである。 しかし、事業規模の小さい課税事業者であれば、事業計画の内容の変更により、年度ごとの極端な課税仕入れの増加等の現象も起きやすい。また、一括比例配分方式を一度選択すると、2年間の継続適用が求められることから、仕入税額控除に関する有利不利の選択には将来の事業計画を見越した検討が必要となる。 したがって、単年度の仕入控除税額の計算だけで、両者の有利不利が導き出せるというような単純な問題でもないのである。 また、個別対応方式は課税仕入れの分類(用途区分という)が必須であり、手間がかかる。 さらに、本年4月には8%、来年10月には10%に消費税率が引き上げられる予定であり、個別対応方式と一括比例配分方式の選択による有利不利の差はより一層広がることとなる。そのため、両者の選択の重要性は今後益々高まることが容易に想像されるところである。 そこで本連載では、企業の経理実務に役立ててもらおうという趣旨で、「95%ルール」見直し後の仕入税額控除制度につき、個別対応方式及び一括比例配分方式の有利選択を中心に、多角的に解説していきたい。   2 95%ルール改正後の仕入税額控除 (1) 消費税増税と仕入税額控除の意義 消費税法を巡ってはここ数年重要な改正が続いている。一つは平成23年度の95%ルールの改正であり、もう一つは平成24年度の消費税率引き上げを柱とした大改正である。 いずれの改正も実務に与える影響は大きいが、事業者及びそれを支える税理士としては、当該改正により自衛の策として、消費税のプランニングが今後重要性を増すことを心に留めるべきであろう。 もちろん消費税についてこれまでもいわゆる「自動販売機節税スキーム」のようなプランニングが一部で実行されてきたわけであるが、どちらかというと法の不備を突く租税回避的なものが中心であったように思われる。しかし、租税回避スキームは基本的に課税庁に穴をふさがれて以後実行不能となる運命にあるものであり、賞味期限は意外に短い。 本稿で提案したいのはそのような短期的な利益を求めるものではなく、中長期的な観点からのプランニングである。すなわち、仕入税額控除制度の本質を理解し、本来あるべき姿に近づける方法を模索することで、仕入控除税額を最大化するという姿勢である。 税率が上昇しそれにつれて納付税額が増加すれば、それが事業者のキャッシュフローに与える影響は無視できない。そこで消費税のプランニングが重要性を増すわけであるが、その際留意すべきは以下の2点であろう。 ①についてであるが、仕入控除税額の最大化を図るプランニングは、個別対応方式を採用することが前提となる。 そのため、用途区分の判定が必須となるが、これを手間と感じるようでは残念ながら成果を得ることはできない。導入当初は確かに負担に感じることもあろうが、当該経理処理が軌道に乗りルーティンワークにしてしまえば、負担感は大幅に解消されるであろう。さらに副次的な効果として、経理の効率化・高度化も望めるところである。 無論、小規模の事業者はコスト・ベネフィットを十分考慮して実行するかどうかを決定すべきであり、闇雲に進めるべきではないことは言うまでもない。 ②についてであるが、仕入控除税額の最大化を図るプランニングにおいては、適用要件を満たしているか否かが成果を得られるかどうかの大きな分かれ目となり得る。 適用初年度において満たしていることは当然のことであるが、その後も適用を受けている限り継続して要件を満たしている必要がある。しかし、往々にして、適用を受けた課税期間以降の課税期間について(油断して)チェックが甘くなり、適用要件を満たしていなかったり、適用を満たすための裏付け資料が不十分であったりすることが税務調査で指摘され、否認されるケースが少なくない。また、時間の経過とともに法令が改正され、導入時とは適用要件が変更されている可能性があることも十分考えられる。 適用要件を満たしているか適宜かつ継続的にチェックすること、すなわちタックスプランニングの「メンテナンス」が肝要である。 なお、当該メンテナンスは、税務調査を受ける前に、外部の専門家(顧問税理士など)に依頼すると効果的であろう。 【消費税のプランニング~仕入控除税額の最大化】   (2) 95%ルールとは 消費税は、欧州諸国で既に導入されていた付加価値税(VAT, Value Added Tax)に倣い、課税の累積を避けるため、前段階の業者から仕入れた物品・サービスにかかる前段階の仕入税額を控除(仕入税額控除)し、ネットの付加価値に対して課税される仕組み(前段階税額控除型付加価値税)となっている。 ここで控除できる税額は原則として課税売上に対応する仕入税額のみであるため、課税仕入税額の仕分け(用途区分)が必要となる。 しかし、従来は、国内における総売上に占める課税売上の割合(いわゆる「課税売上割合」)が95%以上である場合には、課税売上以外の収入についてそれが非課税売上であるのか、それとも課税対象外売上であるのか、厳密に区分する必要がなかった。なぜなら、課税売上割合が95%以上であれば、課税仕入れ等の税額を全額控除できるものとされていたためである。 これを一般に「95%ルール」といい、少額不追及(de minimis rule)の一形態と解されてきた。業種にもよるが、わが国の企業の大半はこの95%ルールの適用を受け、課税仕入れ等の税額を、対応する売上ごとに仕分けすることなく、全額控除していたところである。 ところが、95%という水準で一律に全額控除を認めるというのは、特に大企業の場合少額不追及の基準としては緩すぎることから、結果として生じる益税の額は無視できない規模であり、また、そのような大企業は事務処理能力が高いため益税を許容する意義が乏しいと考えられる。 そのため、平成23年度の税制改正により、平成24年4月1日以降に開始する課税期間から、95%ルールの適用が受けられるのは進行年度の課税売上高が5億円以下の事業者に限定されることとなった(消法30②)。 ただし、当該改正による増収額は財務省の見積りで約29億円と小規模であり、益税是正の方法としてはそれほど大きなインパクトのある措置ではない(※1)。一方で、特に個別対応方式対応のため事業者が負担すべきコンプライアンスコストは少なくないものがある。 仕入税額控除の本来のあり方からすると、今回の改正は是認できるが、これと併せて不必要な制限である一括比例配分方式の「2年縛り」を廃止すべきであったのではないかと考えられる。 (※1) 財務省編『平成23年度改正税法のすべて』754頁。 (3) 仕入税額控除制度 消費税においては、課税の累積を排除するために、前段階の税額である仕入に係る税額(input tax)の控除が認められている。これを仕入税額控除(前段階税額控除)制度という。 消費税法によれば、事業者が国内において課税仕入れを行った場合又は保税地域から課税貨物を引き取った場合には、これらの日の属する課税期間における売り上げに係る消費税額から、課税仕入れに係る消費税額及び課税貨物に係る消費税額を控除することとなっている(消法30①)。なお、課税仕入れに係る消費税額とは、支払対価の額に105分の4を乗じて算出した金額である(消法30①、地方消費税を含めれば105分の5となる)。なお、当該割合は税率引き上げに伴い以下の通り変更されることとなる。 【税率引き上げと課税仕入れに係る消費税額】 消費税の仕入税額控除の特徴は、そのタイミングにある。すなわち、所得税や法人税の場合と異なり、いわゆる「費用収益対応の原則」は適用されず、ある課税期間に仕入れた物品やサービスに含まれる消費税額は、その物品やサービスと当該課税期間における売上との対応関係にあるかどうかとは関係なく、原則としてその課税期間(課税仕入れを行った日)において控除されるのである(即時控除の原則)(※2)。その差は減価償却のケースにおいて顕著である。 (※2) 金子宏『租税法(第十八版)』(弘文堂・2013年)653頁。  (4) 仕入税額控除の計算方法 仕入税額控除の具体的な計算方法は、以下の区分により行う。 (※3) ②③は進行年度の課税売上高で判定するのであり、「基準期間」の課税売上高で判定するわけではないことに留意すべきである。 上記における「課税売上割合」とは、課税期間中の国内における資産の譲渡等の対価の額の合計額に占めるその課税期間中の国内における課税資産の譲渡等の対価の額の合計額の割合をいう(消法30⑥、消令48①)。これを算式で示すと以下の通りとなる。 「課税資産の譲渡等」とは、資産の譲渡等から非課税取引を除いたものをいうことから(消法2①九)、上記算式中の分子・分母の違いは非課税取引の金額ということになる。そのため、非課税取引(収入)の割合が高い医療機関や福祉施設、持株会社などは、一般に課税売上割合が低い水準となる。 上記の①~⑤の区分により仕入税額控除の計算方法を示すと以下の表のようになる。 【課税仕入れ等に係る仕入税額控除の計算方法】 このように、課税売上割合が「95%以上か否か」で仕入税額控除の取扱いが大幅に変わってくる。 95%ルールとの関連では、上記③について平成23年度の税制改正で、平成24年4月1日以降に開始する課税期間においては全額控除が認められなくなった点が重要である。 なお、上記のうち、①~④により仕入税額を計算する方法を、⑤を「簡易課税」ということとの対比で「原則課税」ということがある。   3 個別対応方式 上記表中の③及び④に該当する事業者は、仕入税額控除の計算に関し、個別対応方式又は一括比例配分方式のいずれかを選択適用することが求められている。 このうち、課税仕入れ等に係る消費税額について、以下の3つの区分に分類し仕入控除税額を計算する方法を「個別対応方式」という(消法30②一)。 (※4) 実質的に「非課税資産の譲渡等を行うためにのみ必要な課税仕入れ等」と同義である。 これを算式で示すと以下の通りとなる。 また図解すると以下の通りとなる。 【個別対応方式による場合の仕入控除税額】 個別対応方式を選択する場合には、必ず上記ア~ウに区分しなければならない(消基通11-2-18)。このような区分を一般に「用途区分」という。 なお、上記ウ「両方に共通して要する課税仕入れ等」であっても、例えば原材料、包装材料、倉庫料、電力料等のように生産実績その他の合理的な基準により上記ア及びイに区分(按分計算)することが可能な場合には、その区分により個別対応方式を適用することができる(消基通11-2-19)。   4 一括比例配分方式 課税仕入れ等に係る消費税額について、課税売上割合で按分計算した金額を仕入控除税額とする方法を「一括比例配分方式」という(消法30②二、④)。 課税売上割合が95%未満の事業者及び課税売上割合が95%以上でその課税期間の課税売上高が5億円超の事業者は、個別対応方式と一括比例対応方式とを選択することができるが、課税仕入れ等に係る消費税額について前述3におけるア~ウの用途に区分していない事業者は、必然的に一括比例配分方式によることとなる。 一括比例配分方式における仕入控除税額の計算は次の算式により行う。 なお、一括比例配分方式を選択した場合には、2年間以上継続適用した後でない限り、個別対応方式へ変更することができない(消法30⑤)。一方、個別対応方式を選択した場合には、いつでも一括比例配分方式へ変更することができる。   5 課税売上割合に準ずる割合 個別対応方式により仕入控除税額を計算する場合には、原則として前述3のウ「両方に共通して要する課税仕入れ等」に課税売上割合を乗じることとなるが、所轄税務署長の承認を受けた場合には、課税売上割合に代えて、その他の合理的な割合(これを「課税売上割合に準ずる割合」という)により計算することも可能である(消法30③)。 ここでいう「合理的な割合」とは、通達によれば以下のような基準をいう(消基通11-5-7)。 課税売上割合に準ずる割合は、個別対応方式により課税仕入れ等に係る消費税額の計算を行っている事業者についてのみ適用され、一括比例配分方式により課税仕入れ等に係る消費税額の計算を行っている事業者には適用がないことに留意すべきである。したがって、用途区分を行っていない事業者は課税売上割合に準ずる割合の適用を受けることができないこととなる。 課税売上割合に準ずる割合は、事業全体について同一の基準・割合を適用する必要はなく、それぞれについて税務署長の承認を受けている限り、事業の種類ごと、費用ごと、事業上ごとに別の基準・割合を適用することが可能である(消基通11-5-8)。したがって、例えば、病院における部門を入院部門、外来部門、管理部門に分け、それぞれ異なる基準の「課税売上割合に準ずる割合」を適用することも、そのすべてが合理的と税務署長が認める限り、可能である。 課税売上割合に準ずる割合を適用する場合には、所轄税務署長に「消費税課税売上割合に準ずる割合の適用承認申請書」を提出する(消令47①)。当該申請書の審査後税務署長から承認を受けた日の属する課税期間から適用することができる。 一方、当該適用をやめる場合には、所轄税務署長に「消費税課税売上割合に準ずる割合の不適用届出書」を提出すれば、その提出のあった日の属する課税期間から適用されないこととなる。   6 簡易課税制度 消費税における仕入控除税額の算定の方法は、これまで説明したような実額による場合(個別対応方式又は一括比例配分方式)と、概算による場合(簡易課税制度)とに分けられる。 簡易課税制度は、一般に、中小企業者の事務負担を考慮して導入された制度であると説明される(※5)。すなわち、基準期間における課税売上高が5,000万円以下の課税期間について、所轄税務署長に「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出した場合に、その課税期間の課税標準額に対する消費税額(課税売上に係る消費税額)から売上対価の返還等の金額に係る消費税額の合計額を控除した金額にみなし仕入率を乗じた金額を、控除する課税仕入れ等に係る消費税額の合計額(仕入れに係る消費税額)とみなすものである(消法37)。 (※5) 「納税者の混乱を避けその協力を期待するために」採用されたと説明される。水野忠恒『租税法(第五版)』(有斐閣・2011年)768頁。 「消費税簡易課税制度選択届出書」の効力は、原則としてその提出のあった日の属する課税期間の翌課税期間以後の課税期間から生じる(消法37①)。ただし、新設法人の場合や、事業を営んでいなかった個人が事業を開始した場合には、その提出のあった日の属する課税期間以後の課税期間(要するに提出のあった日の属する課税期間)からその効力が生じる(消法37①、消令56)。 また、一旦当該制度の適用を選択した場合、事業を廃止した場合を除き、届出書を提出した日の属する課税期間の翌課税期間の初日から2年を経過するまで取りやめることはできないことに留意する必要がある(「2年間継続適用要件」消法37③)。 簡易課税制度においてみなし仕入率が適用される事業区分は以下のとおりであり、平成26年度の税制改正で一部変更されていることに留意すべきである(消法37①、消令57①⑤⑥)。 【事業区分とみなし仕入率(新旧対照表)】 (注) 網掛けは平成26年度の税制改正項目を示す。 平成26年度の税制改正により、金融保険業及び不動産業のみなし仕入率がそれぞれ10%ずつ引き下げられた。当該改正は平成27年4月1日以降に開始する課税期間から適用される。 なお、業種の分類は原則として事業者の課税資産の譲渡等ごとに、日本標準産業分類(総務省)等を参考に行う(消基通13-2-1)。 *   *   * 次回は、個別対応方式と用途区分について解説を行う。 (了)

#No. 59(掲載号)
#安部 和彦
2014/03/06

〔税の街.jp「議論の広場」編集会議 連載55〕 所得拡大促進税制の経過措置(平成26年度税制改正)-3月決算法人の場合-

〔税の街.jp「議論の広場」編集会議 連載55〕 所得拡大促進税制の経過措置(平成26年度税制改正) -3月決算法人の場合-   税理士 竹内 陽一   1 経過措置の概要 平成26年度税制改正における所得拡大促進税制(措法42の12の4)の経過措置(税制改正法案附則82条関係)は下記のとおりである。 (1) 個人 個人は、平成25暦年が基準年度となり、適用1年目が平成26暦年で、特に経過措置はない。 (2) 法人 法人で経過措置が適用されるのは3月決算法人である。3月決算法人以外では平成25年度において事業年度を変更し、平成26年4月1日前に事業年度が終了する場合である。 3月決算法人においては、平成24年度決算が基準年度、増加率2%の適用初年度は平成26年度決算となり、平成26年3月31日に終了する平成25年度決算については、翌事業年度である平成26年度が、2%要件をクリアして適用がある場合に限り、その平成26年度に、平成25年度増加額と平成26年度増加額の合計額の10%の税額控除の適用がある。 なお、この場合の控除限度額は、両事業年度が12月決算である場合、平成26年度の20%が控除上限となる(中小企業者の場合は40%が上限となり、他の税額控除を受ける場合の上限は90%となる)。   2 所得拡大促進税制の基準事業年度と2%適用年度 所得拡大促進税制の本来の基準事業年度に平成26年度改正を織り込むと、下図のようになる。 【平成26年度改正後の基準事業年度・2%適用年度・3%適用年度】 (※) 「3月締め以外の会社」とは、平成24年4月1日開始の4月決算法人から、平成25年3月1日開始の2月決算法人となる。 (※) なお、2月決算法人は、この税制の適用が最も遅い法人となり、基準事業年度は平成25年3月1日開始平成26年2月28日終了事業年度となる。 (※) 個人の基準事業年度は平成25年である。   3 3月決算法人の経過措置の適用事例 【数値例1】 (平成26年度が適用の場合) (※) 各年度において ① 給与等支給額の総額:前期以上 ② 継続雇用者給与等支給額の平均:前期超 (※) 上記【数値例1】では、平成25年度と平成26年度の2年間の増加合計額450万円について、平成26年度での税額控除額=45万円(他の要件を満たしていたとする)が可能となる。 【数値例2】 (平成26年度が不適用の場合) (※) 上記【数値例2】では、平成25年度分は、平成26年度の控除となり、平成26年度が適用要件を満たしていないため、適用不可となる。この場合、平成25年度改正法に戻って、5%以上の場合しか適用がない。   4 まとめ 所得拡大促進税制に係る平成26年度税制改正は、原則として平成26年4月1日以後に終了する事業年度について適用される(税制改正法案附則82①)。 なお、法人が同日を含む事業年度(特例事業年度)に改正後の制度を適用する場合において、経過事業年度(平成25年4月1日以後に開始し、平成26年4月1日前に終了する事業年度で、改正前の制度の適用を受けていない事業年度)において改正後の要件のすべてを満たすときは、その経過事業年度について改正後の規定を適用して算出される税額控除相当額を、その2%特例適用年度(平成27年4月1日前に開始する事業年度)において、その税額控除額に上乗せして法人税額から控除(=平成26年度も適用の場合には、加算して控除)できることとされている(税制改正法案附則82②)。 控除上限額についても、経過事業年度の期間に応じて上乗せされる(※)。 (※) この経過措置の適用を受ける場合の控除上限額は、次の算式により計算する。 (了)

#No. 59(掲載号)
#竹内 陽一
2014/03/06

居住用財産の譲渡所得3,000万円特別控除[一問一答] 【第21問】「2棟の建物が一の家屋と認められない場合」-一の家屋-

居住用財産の譲渡所得 3,000万円特別控除 [一問一答] 【第21問】 「2棟の建物が一の家屋と認められない場合」 -一の家屋-   税理士 大久保 昭佳   Q Xは、隣接した家屋A及び家屋B並びにその敷地全体を所有しており、家屋AにはX夫婦が、家屋Bには娘夫婦(生計は別)がそれぞれ居住していました。 なお、X及びYの敷地使用割合は土地全体の各々2分の1です。 このほど、家屋A及び家屋B並びにその敷地全体を一括して売却しました。 この場合、Xの譲渡所得の全部について「3,000万円特別控除」の特例の適用を受けることができるでしょうか? A 家屋Aとその敷地(土地全体の2分の1)については「3,000万円特別控除」の特例の適用を受けることができるが、家屋B及びその敷地(土地全体の2分の1)については同特例の適用を受けることができない。 〈解説〉 隣接する2棟以上の建物が一体として一構えの家屋としての機能を有する場合には、その2棟以上の建物は「一の家屋」に該当するものと考えるが、それぞれの建物が独立して居住用家屋としての機能を有しており、それぞれの建物に生計を異にする者が居住している場合には、これらの2棟以上の建物は一構えの家屋と認められない。 したがって、本事例の場合、Xと生計を異にする娘夫婦が居住していた家屋B及びその敷地(土地全体の2分の1)は、Xの居住用財産には該当しない。 (了)

#No. 59(掲載号)
#大久保 昭佳
2014/03/06

まだある!消費税率引上げをめぐる実務のギモン 【第5回】「旅客運賃等・公共料金の取扱いについて」

まだある!消費税率引上げをめぐる実務のギモン 【第5回】 「旅客運賃等・公共料金の取扱いについて」   アースタックス税理士法人 税理士 島添  浩 (監修) 税理士 小嶋 敏夫(執筆)   第5回である今回は、施行日をまたぐ旅客運賃等・公共料金の取扱いのうち以下の具体例について確認をすることとする。 施行日以後に乗車する旅客運賃等については、その支払日が施行日前であれば旧税率を適用し、施行日以後であれば新税率を適用することとなる。また、電気、ガス、水道料金等については施行日以後最初の検針等で確定した公共料金は、旧税率が適用されることとなる。 なお、これらの経過措置は、あくまで税率に関するものであり、旅客運賃等を支払った場合には、支払日(施行日前)に前払費用として資産計上し、乗車した日(施行日以後)に旧税率で費用計上することになるので注意が必要である。さらに、会計ソフトで入力する場合には、費用として計上する日が施行日以後である場合には、自動的に新税率で処理される可能性があるため、当該経過措置の適用を受ける取引には注意が必要である。 【解 説】 事業者が、旅客運賃、映画、演劇を催す場所等への入場料金を施行日前に領収している場合において、当該対価の領収に係る課税資産の譲渡等が施行日以後に行われるときは、当該課税資産の譲渡等については、旧税率が適用される(改正法附則5①)。 よって、電車、バス、航空機などの旅客運賃や料金で、平成26年3月31日までに代金を領収しているものについては、実際に乗車する日が施行日以後であっても、消費税は旧税率5%が適用される。 なお、定期券については、会社で定期券を購入して従業員に支給するケースと定期券相当額を従業員に支給するケースがある。前者の場合には会社が施行日前に購入した定期券購入代金につき経過措置が適用されることになる。 一方、後者の場合には従業員に支給する定期券相当額が施行日前である3月中に購入することを前提とした金額を支給する場合には経過措置の適用を受けることとなるが、施行日以後である4月1日以後に購入することを前提とした金額を支給する場合には経過措置の適用を受けることはできないので注意されたい。 【解 説】 ICカードに現金がチャージ(入金)された時点では、乗車券を購入したことにはならないため、旅客運賃等の税率等に関する経過措置の適用はない。 したがって、ICカードにチャージした金額のうち、平成26年3月31日時点の残高は前払費用として計上され、4月1日以後に乗車した分については新税率となるので注意が必要である。 このICカードは、短期前払費用の適用はないので、支払った時点で処理をしないように注意しなければならない。 【解 説】 ディナーショーの料金は、改正附則法5条1項に規定する「映画、演劇、音楽、スポーツ等を不特定多数かつ多数の者に見せ、又は聴かせる場所への入場料金」に該当することから経過措置の対象となる。 ただし、ディナークルーズや屋形船などのように遊覧航行しながら飲食を提供する場合には、当該サービスは飲食の提供を主目的とするものであるため経過措置の対象とはならないことから注意が必要である。 【解 説】 事業者が継続的に供給し、又は提供することを約する契約に基づき、施行日前から継続して供給し、又は提供される電気、ガス、水道水及び電気通信役務で、平成26年4月30日後に初めて料金の支払いを受ける権利が確定するものにあっては、当該確定した料金のうち、次の算式により算出した部分について旧税率が適用される(改正法附則5②、改正令附則4③④)。 *月数は暦に従って計算し、1月に満たない端数を生じたときは1月とする。 ご質問の場合、上記算式に当てはめると、以下のとおり5,000円の全額が経過措置の対象となる。 【解 説】 改正法附則5条2項に規定する経過措置の適用を受ける電気通信役務は、事業者が継続的に提供することを約する契約に基づき、施行日前から継続して提供し、かつ、施行日から平成26年4月30日までの間に検針等により料金が確定するものが経過措置の対象となる。 したがって、インターネットの定額の通信量のように、使用量の多寡にかかわらず毎月一定額を支払うものに係る料金については経過措置の対象外となる。 上記のように、電話料金等においては、経過措置の適用を受けるものと受けないものが混在する可能性があるため、4月分から5月分の電話料金等については、請求書の内容を詳細に確認する必要がある。 (了)

#No. 59(掲載号)
#島添 浩、小嶋 敏夫
2014/03/06
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