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常識としてのビジネス法律 【第7回】「契約に関する法律知識(その3)」

常識としてのビジネス法律 【第7回】 「契約に関する法律知識(その3)」   弁護士 矢野 千秋   1 予約、仮契約、手付金、内金、契約保証金 (1) 予約とは 「予約」とは、商品や当事者の都合ですぐに確定的な契約を結べないとき、将来一定の契約を結ぶことをあらかじめ約束する契約をいう。 予約に基づいてなされた契約を「本契約」という。 予約という用語が使われていても、内容的に完全な合意が当事者間に成立していれば、実質上は本契約である。 また、予約を本契約にする条件を明瞭に相互理解しておく必要がある。 (2) 仮契約とは 「仮契約」という言葉は、法律用語ではない。したがって、「仮」とする趣旨を相互確認する必要がある(予約、条件付、細目的事項未定、使用人の契約等、種々の場合がある)。 また、上記、「予約」にも記したが、「仮」と付されていても内容的に完全な合意が当事者間に成立していれば、実質上は本契約である。 (3) 手付金とは 「手付金」は手金ともいい、契約成立の際に授受される金銭で、最終的に代金の一部に充当されるのが通常である。 手付金には3種類あり、契約成立の証拠として授受されるのが「証約手付」であり、手付を交付した側に債務不履行があった場合に違約金として手付を没収されるのが「違約手付」であり、解約権の留保として授受されるのが「解約手付」である。 そして特段の意思表示、慣習等がないときは解約手付と推定され、相手方が履行に着手するまで、手付金を受け取った側は手付金の倍額の金銭を返還し(手付倍返し)、手付金を交付した側は手付金を捨てて(手付流し)契約を解除することができる。 これは不動産売買などの重要な契約で解除権を留保して、再考の機会を保持するためのものである。 (4) 内金とは 「内金」とは、厳密には解約手付などとは異なり(解除権留保などの法効果を伴わない)、単に代金の一部として授受されるものをいい、授受は契約成立時点に限らない。 契約成立時点などに交付されるものを「前金」などと呼ぶこともある。 ただし、実務では不正確に使用されており、解約手付を兼ねている場合もあるので、確認が必要である。 そして解約手付などであるならば、契約書の条文中に手付倍返し・手付流しなどの法効果を書き込んでおくのが明確である。 (5) 契約保証金とは 「契約保証金」とは、賃貸借や代理店契約などの締結にあたり、債務不履行時の損害を担保する目的で授受されるものをいう。 契約が無事終了すれば返却されるが、一部償却される例もある。 これも敷金、権利金等の種々の用語が使用されており、内容的な確認が必要である。   2 契約の効力の瑕疵(かし) (1) 契約の不成立 契約成立に至る前の状態をいう。 申込みに対して条件を付加したり、内容を変更した承諾などの場合は未だ契約不成立である。 これらは新たな申込みと見られるので、これに対して別途旧申込人の承諾があって初めて契約が成立することになる。 では、条件付加や内容変更がわずかな場合はどう判断するか。 一般的には、当事者の意思解釈や取引慣行から、その程度の条件付加や内容変更を暗黙に了解しているようなときは承諾に当たり契約が成立することとなろう。 しかし契約成立に関して争いになる可能性が大きいので、契約書を作成して未然に紛争を予防しておくことが賢明である。 契約不成立の場合は、当事者間になんらの債権債務は発生しておらず、一方的に契約交渉を打ち切っても債務不履行にはならない。 しかし、一般的に契約交渉段階で当事者は契約成立を見越して債務履行の準備に入ることも多いことから、そのような当事者の保護も必要である。 契約当事者は契約の交渉段階から信頼関係に立ち、しかも「契約締結」という目的に向かって協力関係に立つわけであるから、契約締結に至る過程は信義則の適用を受けるものと解せる。 一方的な交渉打切りは、この信義則上の保護義務違反として損害賠償義務を課されることがある。 ただし、この場合の損害賠償の範囲は、契約が成立すると信じたために実際に被った実損の範囲に限られる。これを「契約締結上の過失」と呼ぶ。 (2) 契約締結後で説明が不十分だと分かったら 相手方の説明が全くの虚偽情報ならば、詐欺に当たる。相手方の詐欺を立証できれば、契約は取消しが可能である(民法96条)。 また、詐欺は不法行為に当たるので、不法行為に基づく損害賠償請求ができる(民法709条)。 しかし、このためには相手方に当初からダマす意思があったことを立証しなければならない。 これは相手方の内心の問題であるから、立証が困難である。また実際には若干オーバーなセールストークなどで、詐欺とまではいえない場合が多いと思われる。 こうした場合は、前述した契約当事者間の信義則上の保護義務違反になる可能性があり、相手方の情報の不正確さが証明できれば損害賠償を請求できる場合もある。ただし、過失相殺をされる可能性がある。 信義則という一般条項によるので、具体的な諸事情を総合考慮したうえで認められることになる。 判例では、クリーニング店のフランチャイズ契約の勧誘に関して認められたものがある。 しかし勧誘を受けた側にも判断のミスがあったことは明らかであり、その過失割合を考えて過失相殺により7割の減額をした。この損害賠償の範囲も実損の範囲である。 (3) 契約の無効・取消し 契約は一応成立したものの、契約としての法律効果が完全には発生しない場合がある。 これには無効と取消しがあり、一般的には瑕疵が重大であれば「無効」、瑕疵が軽微であれば「取消し」といわれるが、さほど正確ではなく、無効と取消しのいずれによるかは立法政策の問題と言ってよいであろう。 「無効」とは、最初から当然に効力がないことをいう。そしてすべての人が効力のないものとして取り扱うことになる。 また、時の経過によっても無効であることは変わらない。 具体的には、意思能力のない者の契約、内容不能な契約、強行規定違反の契約、公序良俗違反の契約、虚偽表示、錯誤などである。 「取消し」とは、特定人(取消権者)の取消しの意思表示があって初めて効力がなくなることをいう。 したがって、取り消されるまでは一応有効として取り扱われる。 また、不安定な状態を長期間継続させるのは法的安定性を害して好ましくないので、一定期間を過ぎると有効に確定させる。 具体的には、詐欺、強迫、行為無能力者などである。 (4) 契約の解除 契約当事者の一方の意思表示により、契約が初めから存在しなかったものとすることをいう。 取消しが契約成立時に意思表示の瑕疵(かし)があって不完全であったのに対し、解除の場合、契約は一旦完全に有効に成立しており、後発的原因で契約を白紙に戻すことである。 解除には、「法定解除」(債務不履行、クーリングオフなど)と「約定解除」がある。 賃貸借契約の告知(解約)とは異なる概念である(後述)。 (5) 法定解除 「法定解除」とは、法律上の要件により解除権が発生する場合における解除である。 ① 債務不履行 履行遅滞(民法541条)、定期行為の遅滞(民法542条)、履行不能(民法543条)がある。 いずれも債務を履行しない者の過失が必要である。 ②  各種契約特有の解除原因によるもの 売買契約で売主の担保責任と買主の解除(民法563条ないし570条)、賃貸借契約で賃借権の無断譲渡、無断転貸による賃貸人の解除(民法612条)などがある。 ③ 事情変更の原則 契約締結後の社会的経済的事情の重大な変動に際して、信義誠実の原則の一適用として契約の消滅あるいは契約内容の変更を認める原則である。 判例法上確立した法理であり、契約内容改定権(例えば代金増額請求権)と契約解除権(内容改定を拒絶されたり、内容改定が不可能な場合などである)がある。判例法理であり、容易に認められない欠点がある。 (了)

#No. 52(掲載号)
#矢野 千秋
2014/01/16

顧問先の経理財務部門の“偏差値”が分かるスコアリングモデル 【第31回】「経費管理のKPI(その⑤ 概算計上)」

顧問先の経理財務部門の “偏差値”が分かる スコアリングモデル 【第31回】 「経費管理のKPI (その⑤ 概算計上)」   株式会社スタンダード機構 代表取締役 島 紀彦   はじめに 今回は、経費管理を構成する複数のKPIから、経費計上における「概算計上」のサービスレベルを評価するKPIを取り上げる。 経費の支出に対する物品や役務の反対給付は受けているため、経費の発生を認識しているが、金額が確定しないまま決算を迎える場合に、例外的に、経費を見積もって計上することがある。このような経費の概算計上は、おのずから経費計上の正確性の観点で課題が残る。 そこで、今回は、経理財務部門が経費の概算計上を行う場合にその正確性に与える影響を評価するKPIを紹介しよう。   KPIが設定された業務プロセスの確認 まず、経済産業省スタンダードで整理された業務プロセスを引用しながら、このKPIに対応する業務プロセスを押さえておこう。 経済産業省スタンダードでは、経費管理において、会社が担う一般的な機能を、「年度予算管理」と「日常管理」に分けている。 このうち、「日常管理」を構成する機能は、「通常経費処理」、「仮払決済」、「差額決済」である。 今回解説するKPIは、「日常管理」における「通常経費処理」に関連する業務プロセスにおいて設定されている。 〈経済産業省スタンダード:経費管理で会社が担う機能〉 (経済産業省「経理・財務サービス スキルスタンダード」より)   ただ、経済産業省スタンダードでは、「通常経費処理」に関連して、「処理指導」と「大口経費申請検証」という2個の業務プロセスのフローチャートを作成しているが、今回のKPIに対応する概算計上という業務プロセスをフローチャートとしてまとめていない。 スコアリングモデルの開発では、経費の概算計上は、経費を計上するにあたりその金額の測定の仕方が、確定金額によるか、見積金額によるかの問題に過ぎず、それが該当する業務プロセスは通常経費処理であると考えている。 いったん見積金額で経費計上されて決算を締めた後、主管部門が取引先から請求書等の証憑を受領すれば、その後は、金額が確定した通常の経費計上の流れにつながる。すなわち、勘定科目、取引日、取引金額、取引先等を明記した支払依頼書を作成する。支払依頼書の内容が承認されれば、概算計上金額との差額が経費として計上される。 今回のKPIは、このような経費の概算計上金額と経費確定額の乖離に着目し、その精度を問うものである。   定義を理解する 調査項目の文言から、KPIの定義を確認しよう。以下、KPIの項目を再掲する。 「概算経費計上」とは、経費の発生を認識しているが、金額の測定に必要な請求書等の外部証憑が入手できていないため、経費金額を見積計上することをさす。 このような概算計上は、決算期に決算早期化の要請で行われることが多い。 もっとも、月次決算や四半期決算で採用される概算計上と呼ばれるすべての処理が「概算経費計上」に該当するわけではない。 例えば、減価償却費の按分計上、年間広告費の前払費用の繰延計上、家賃や賃借料の未払費用の見越計上も、慣用的に概算計上と呼ばれることがあるが、これらはいずれも発生金額が測定できる経費確定額を期間配分しているに過ぎず、決算期末に金額そのものを見積計上する必要はない点で「概算経費計上」には該当しない。 「経費確定額」とは、請求書等の外部証憑に基づき測定された経費金額をさす。 なお、KPIの算出式の分子にあたる|直前決算期末の経費確定額(A)-直前決算期末の概算経費計上額(B)|は、(A)と(B)の差の絶対値をさす。「概算計上」していない場合は、(A)(B)に同じ数値を記入する。   KPIの背景にある価値判断 スコアリングモデルでこのKPIを設定したのはなぜか。 このKPIは、経費の発生額を適正に財務諸表に反映するため、概算と実績の乖離を小さくし、期間費用の見積の精度を高めることが望ましいという価値判断に基づいて設定されている。 そこで、スコアリングモデルでは、経費概算計上が経費計上の正確性に与える影響度を比較するため、乖離が経費確定額に対して占める割合をKPIとした。割合は%で表されるが、この数値が小さい会社が大きい会社よりも相対的に望ましいと考えている。 乖離を小さくするには、概算計上を廃止するのが最適である。その場合、取引先に締め日の前倒しを要請し請求書の発送を早めることや、主管部門を教育し、請求書と経費伝票等の社内回付の迅速化を啓蒙する等の業務改善が必要となる。 そのような取り組みをしても、決算の早期化の要請から、決算財務報告の業務の締め切り日までに経費の金額を確定できない場合、合理的に見積もって計上を行い、確定金額との差額を翌期に計上するとともに、法人税申告の別表四で申告調整することになる。 その場合、乖離を小さくするには、過去の経費実績による財務データの分析や、経費を発生させる要因として説明変数となる非財務データの多角的分析に基づき、経費発生の傾向を把握し、見積の精度を高めることが必要である。 このようなKPIを設定した価値判断が共有されず、未払経費の概算計上金額と経費確定額の乖離が大きい会社では、見積の合理的裏付が不足している可能性が高く、経費計上金額の正確性が低下するだけでなく、財務諸表監査において許容できる監査差異を超えた場合、決算修正を迫られるリスクがある。   顧問先のKPIを測定してみる では、実際にどのような手続でKPIを測定するのか。 まず、読者は、顧問先の経理財務業務を観察し、経費計上において決算期に概算計上する業務プロセスの有無を確認していただきたい。仮に、概算計上していない場合、(A)と(B)に同じ数値を記入し、0%となる。 概算計上していることを前提に、例えば、期末に計上した概算金額の根拠資料、対応する証憑、確定申告書別表四を閲覧し、試査によらずに、概算計上額と確定金額の比率を算出していただきたい。 さて、読者の顧問先において、未払経費の概算計上金額と経費確定額の乖離が経費確定額に対して占める割合は何%になったであろうか。 *  *  * 次回も、引き続き「経費管理」を構成する複数のKPIから、経理財務部門が行う「経費分析」のサービスレベルを評価するKPIを取り上げる。 (了)

#No. 52(掲載号)
#島 紀彦
2014/01/16

税理士・公認会計士事務所[ホームページ]再点検のポイント 【第13回】「ネットの世界の取組みでホームページへの訪問者を増やす(その1)」~お金をかけずに広告効果を上げる

税理士・公認会計士事務所 [ホームページ]再点検のポイント 【第13回】 「ネットの世界の取組みで ホームページへの訪問者を増やす(その1)」 ~お金をかけずに広告効果を上げる   データライズ株式会社 代表取締役社長 公認会計士・税理士 河村 慎弥   前回は、現実の世界で何をすれば事務所ホームページの訪問者が増えるのか、というお話でしたが、今回からはインターネットの世界で訪問者を呼び込む方法についてお話しましょう。 *  *  * ネットの世界であなたの事務所のホームページを見つけて訪れた人は、Google(グーグル)やYahoo(ヤフー)といった大手検索サイトで、検索結果に表示されたあなたの事務所のホームページ名をクリックして来た人が多いはずです。 1つの検索例を使って考えてみましょう。 東京在住で相続にあたり税理士に相談したい人が、「相続 税理士 東京」というキーワードで検索したとしましょう。 読者の皆さんも、実際にこのキーワード(相続 税理士 東京)で、GoogleやYahooで検索してみてください。 そうすると、検索結果として税理士事務所のホームページ名がいくつも表示されますね。 次の画像は、この原稿を書きながら、Googleで「相続 税理士 東京」を検索した結果の画面です(掲載の都合上、モザイク処理をしています。見づらくなっている点はご容赦ください)。 〈Googleで「相続 税理士 東京」を検索したら・・・〉 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。   検索結果と言いつつ、実はこの画面には、「検索結果」と「広告」が混じって表示されているのですが、おわかりでしょうか? ★  ★  ★ 【②】の部分に表示されているのが「検索結果」で、【①】と【③】の部分に表示されているのは「広告」です。 今回は【②】の「検索結果」を利用する方法についてご説明し、次回以降で【①】と【③】の「広告」を使った方法をご説明していきます。なお、【④】はページを切り替えるための表示です。 *  *  * 【②】の検索結果については、GoogleやYahooといった検索サイトが、登録されているホームページの中から、そのキーワードを含むページについて独自に順位付けをして、順位の高い順に表示しています。 そのため、検索結果に表示されるためには、まず検索サイトに登録する必要があります。検索サイトは無料で登録を受けつけており、通常はホームページ制作会社がホームページ公開時に登録してくれているはずです。 また、登録をしなくとも、検索サイトは、インターネットの世界を巡回して新しいホームページを発見すると自動的に登録するシステム(クローラーと呼ばれます)を稼働させていますので、月日が経過すればいつの間にか登録されていることもあります。 そして、ホームページの「順位付け」は、そのホームページの社会的な有用性を基準として行っているとのことなのですが、具体的なルールについては公表されていません。 そのホームページの内容や、被リンク(他のホームページからリンクされていること)の数などをクローラーにより解析して、順位付けしていると推測されています。 さらに、検索結果が10件を超えると1ページに収まりきらなくなり、表示画面の下の方でページの切替えができるようになります(上の【④】がこれにあたります)。 2ページ目、3ページ目と続いていくのですが、今お話している「相続」にあたり「税理士」を「東京」で探しているというだけの人なら、わざわざ2ページ目以降を見ることはないでしょう。1ページ目に10件の税理士事務所が表示されていますので、そのうちのいくつかのホームページを訪れれば事足りてしまうはずです。 このことから、 などと極端なことも言われています。 ばかばかしいと思うかもしれませんが、ちょっと考えてみてください。 検索結果の1ページ目(上位10件)に表示されるために、検索サイトに広告料を支払う必要は?・・・ありませんね。 それでいて検索結果の1ページ目に表示されれば、多くの人の目に留まり、多くの人が事務所のホームページを訪れ、そこから受注に結びつく可能性があります。 つまり、自分の事務所のホームページ名が検索結果の1ページ目に表示されることは、それほどお金をかけずに大きな広告効果を得られる可能性を有しているのです。 先ほどの極端な言い回しは、このことを反対の視点から言い表しているものともいえます。 そうしたことから、ホームページを公開した事務所や会社は、GoogleやYahooといった大手検索サイトで、自らの商材をキーワードとした検索結果の1ページ目に、自らのホームページ名が表示されることを望むようになります。 そのための対策もいろいろと考えられていて、総称してSEO(エス・イー・オー)と呼びます。 SEOのノウハウを有料サービスとして提供する会社も多数あり、ホームページを公開している事務所であれば、そのような会社からの営業電話や営業メールを受けたことは何度もあることと思います。 ◆  ◆  ◆ 次回からはこの「SEO」についてお話します。 (了)

#No. 52(掲載号)
#河村 慎弥
2014/01/16

《速報解説》 単体開示の簡素化に関する財務諸表等規則等の改正(公開草案)

《速報解説》 単体開示の簡素化に関する財務諸表等規則等の改正(公開草案)   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 平成26年1月14日、金融庁は「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則等の一部を改正する内閣府令(案)」等を公表した。 次のものの改正が予定されている。 公開草案は、企業会計審議会の「国際会計基準(IFRS)への対応のあり方に関する当面の方針」(平成25年6月20日掲載)を踏まえ、単体開示の簡素化を図るためのものである。 意見募集期間は平成26年2月14日までである。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 財務諸表等規則に関する主な改正事項 1 特例財務諸表提出会社の新設 「特例財務諸表提出会社」として次の規定を新設する。 これにより、特例財務諸表提出会社の個別財務諸表の開示については、いわゆる経団連モデル(「会社法施行規則及び会社計算規則による株式会社の各種書類のひな型」)と同様の開示とすることが可能となり、貸借対照表や損益計算書の様式、重要な会計方針の注記、関係会社に対する資産の注記及び関係会社に対する負債の注記などについて、会社計算規則と同様の注記とすることが可能となる。 2 連結財務諸表を作成している会社の個別財務諸表の開示の簡素化 従来から、連結財務諸表を作成している会社については、個別財務諸表における記載を要しない規定があった。 公開草案では、リース取引に関する注記、資産除去債務に関する注記、研究開発費の注記、減損損失の注記など多くの項目について、財務諸表提出会社が連結財務諸表を作成している場合には、個別財務諸表において記載することを要しないとの規定が設けられている。 3 規定の削除等 4 重要性基準の緩和   Ⅲ 企業内容等の開示に関する内閣府令の主な改正事項 1 配当政策 「配当政策」において、会社法以外の法律の規定又は契約により、剰余金の配当について制限を受けている場合には、その旨及びその内容を注記するとの規定を設けている(第二号様式 記載上の注意(54)d、第三号様式 記載上の注意(34)c)。 2 合併により消滅した会社の財務諸表 従来、合併により消滅した会社の財務諸表の記載が求められていたが、当該規定を削除している(第二号様式 記載上の注意(67)e、第三号様式 記載上の注意(47)e、第三号の二様式 記載上の注意(27)d)。 3 製造原価明細書の記載 最近2事業年度の製造原価又は売上原価について、製造原価明細書又は売上原価明細書を掲げて比較し、原価の構成比を示し、かつ、会社の採用している原価計算の方法を説明するとの規定は従来と同様である。 ただし、連結財務諸表において、連結財務諸表規則15条の2第1項に規定するセグメント情報を注記している場合にあっては、製造原価明細書を掲げることを要しないとの規定が設けられている(第二号様式 記載上の注意(69)b)。 4 主な資産及び負債の内容 貸借対照表のうち最近事業年度のものについて、科目の内容又は内訳をおおむねそれぞれに掲げるところに従い記載するとの規定は従来と同様である。 ただし、連結財務諸表を作成している場合又は附属明細表に掲げた科目については、記載を省略することができるとの規定が設けられている(第二号様式 記載上の注意(73))。   Ⅳ 適用時期等 平成26年3月期決算から適用することが予定されている。 (了)

#No. 51(掲載号)
#阿部 光成
2014/01/14

Profession Journal No.51 公開のお知らせ

2014年1月9日(木)AM10:30、Profession Journal  No.51 が公開されました。 Profession Journalの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》については随時公開してまいります。 Web情報誌 Profession Journalは、プロフェッションネットワークのプレミアム会員専用の閲覧サービスです。 Profession Journalについての詳細はこちら。 バックナンバー一覧はこちら。

#Profession Journal 編集部
2014/01/09

monthly TAX views -No.12-「インボイスなき軽減税率は可能か」

monthly TAX views -No.12- 「インボイスなき軽減税率は可能か」   中央大学法科大学院教授 東京財団上席研究員 森信 茂樹   1  ねじれている議論 与党税制改正大綱の決定寸前まで、自民党と公明党との間で、軽減税率の問題が議論された。 軽減税率反対論には、財源の問題や線引きの難しさといった課題があげられるが、最大の理由は、「(軽減税率に必要な)インボイスが導入されると事務が面倒」という点に集中していた(「軽減税率についての議論の中間報告」(平成25年11月12日、与党税制協議会)。 つまり、軽減税率というより「インボイスの導入」に反対なのだ。 そこで公明党側は、インボイスを導入しなくても軽減税率は可能と議論を展開し、現行の帳簿保存方式のもとでの軽減税率を主張した。 結果、「必要な財源を確保しつつ、関係事業者を含む国民の理解を得た上で、税率10%時に導入する」(平成26年度税制改正大綱)こととされ、結論は先送りされた。   2  インボイスの機能 このような議論の展開は、「そもそもインボイスとは何か」という本質論から考えると、非常に不可解な議論・論理といえる。 そこで、あらためてインボイスについて整理してみたい。 そもそも消費税(欧州の付加価値税)は、転々流通する取引のそれぞれの段階で、売り手(納入側)が買い手(仕入側)に、その取引価格に消費税額を上乗せし、買い手はその消費税額を(仕入税額)控除する、という仕組みをとっている。 これにより、「事業者は、納税義務者ではあるが税の負担者ではない」という消費税の間接税の仕組みが完結することになる。 その際重要なことは、納入側(売り手)と仕入側(買い手)の税額の認識を一致させることである。 このことを納税される国家の側から見ると、売り手から納税される消費税額と買い手側から控除される消費税額が一致していることを確認するということになる。 このようにして、事業者自らは消費税額の負担をせず、最終消費者まで負担を先送りしていく。 そしてこの一連の過程を、手間をかけずに可能にするツールがインボイスである。 つまりインボイスは、事業者間取引において、正確かつ簡便に税額計算のやり取りを行う、結果として国家へ正確に納税されるために考え出されたものである。 こういう認識に立つと、冒頭の「インボイスが導入されると事務負担が増加する」という認識は、どこか違和感がある。 このような認識がまかり通るのは、わが国の現行消費税制度が、「請求書等保存方式」という世界に類を見ない簡便法を採用しており、「売上から仕入を差し引いた差額に105分の5を乗じて」計算して消費税額を納付していることによる。 これが、インボイスの導入により、本来の消費税(付加価値税)の姿に戻るということである。   3 軽減税率とインボイス 軽減税率を導入した場合には、商品やサービスごとに税率が異なる場合が生じる。 その際、インボイスを発給することにより、仮に適用税率の判断に誤りがあったとしても、支払税額と仕入税額控除の額が一枚のインボイスによってつながっている(一致している)ので、相手側に請求した税額だけが仕入税額控除されることになり、国家税収には影響を与えないことになる。 国家(税収を受け取る側)にとってみれば、納税される金額(売り手が買い手に求める税額)と控除される金額(買い手が控除を受ける全額)が同じであることを確認することが重要で、それがインボイスを通じて可能になるのである。 つまり、軽減税率の適用税率にたとえ誤りがあったとしても、インボイスを通じて納税額と控除税額が等しくなるので、誤りは治癒されることになる。インボイスがクロスチェックの機能を持つといわれる所以である。 いずれにしても、軽減税率の導入の是非を今後1年かけて議論することになる。 軽減税率の導入は、事業者・消費者・納税者の3者にとって多大なコストがかかる。筆者は、できるだけ先送りにすべきという考えである。 しかし、これが政治的決断で導入となった際には、「インボイスがなければ納税事務はもっと大変になり、正確な納税を期待することはできなくなる」ということだけは、しっかり認識しておきたい。 (了)

#No. 51(掲載号)
#森信 茂樹
2014/01/09

平成26年度税制改正における前年度への遡及適用(経過措置)について

平成26年度税制改正における 前年度への遡及適用(経過措置)について   公認会計士・税理士 鯨岡 健太郎   1 はじめに 平成25年12月12日、与党(自由民主党及び公明党)より「平成26年度税制改正大綱」が公表され、同24日に閣議決定された。これに先立ち、平成25年10月1日には「民間投資活性化等のための税制改正大綱」(以下「秋の大綱」という)が公表されており、これも合わせて平成26年度税制改正大綱として取り扱われる。 秋の大綱に盛り込まれている改正項目については、本誌においてもそれぞれ詳細な解説が行われており、具体的な内容についてはそれらを参照していただきたいが、一部の項目については、経過措置として適用が前年度(すなわち平成25年度)に遡及するものがあるので留意が必要である。 すなわち、改正項目のうち「産業競争力強化法の施行の日」から適用されるものについては、結果的に平成26年度を待たずして適用されるものがあるということである。 なお、「産業競争力強化法」は平成25年12月2日に成立し、現在はその施行令(案)についてe-GOVにて「パブリックコメントの募集」が行われているところである。 この施行令(案)によれば、平成26年1月中旬ないし下旬からの施行が予定されている(こちらを参照)。 そこで以下では、前年度に遡及適用される制度の取扱いについて取りまとめておきたい。   2 秋の大綱に盛り込まれた改正項目 秋の大綱は、企業等の投資行動を加速化させる等の観点から、日本再興戦略(平成26年6月14日閣議決定)に盛り込まれている民間投資を活性化させるための税制措置等について、通常の年度改正から切り離して前倒しで決定されたものである。 この中で決定された改正項目は、以下の通りである(詳細は論末の【参考記事】を参照されたい)。   3 遡及適用の概要 (1) 生産性向上設備投資促進税制 平成26年4月1日前に終了する事業年度において、産業競争力強化法施行日から平成26年3月31日までの間に、対象資産の取得等をした場合には、平成26年4月1日を含む事業年度において、特別償却相当額又は税額控除相当額の償却又は控除ができる。 すなわち、事業年度が平成26年3月31日以前に終了する法人であっても、適用期間中に対象資産の取得等をした場合には、その事業年度では特別償却又は税額控除の適用を受けることはできないが、翌事業年度(平成26年4月1日を含む事業年度)において特別償却又は税額控除の適用を受けることができるということである。 (2) 中小企業投資促進税制(中小企業者が機械等を取得した場合の特別償却又は税額控除制度) 平成26年4月1日前に終了する事業年度において、産業競争力強化法施行日から平成26年3月31日までの間に、特定機械装置等のうち生産性向上設備等に該当するものの取得等をした場合には、平成26年4月1日を含む事業年度において、特別償却相当額又は税額控除相当額の償却又は控除ができる。 内容的には生産性向上設備投資促進税制の取扱いと類似しており、特別償却に関してはいずれの税制の適用を受けても取得価額相当額までの特別償却が可能であるが、税額控除を適用する場合には、税額控除限度超過額の1年間の繰越しが認められる分、当税制のほうが有利であると考えられる。 (3) 事業再編促進税制 平成26年4月1日前に終了する事業年度において、産業競争力強化法施行日から平成26年3月31日までの間に、特定株式等の取得をした場合には、平成26年4月1日を含む事業年度において、その準備金積立相当額の損金算入ができる。 (4) 所得拡大促進税制 改正後の制度は平成26年4月1日以後に終了する適用年度について適用されるが、平成25年4月1日以後に開始し、平成26年4月1日前に終了する事業年度で改正前の所得拡大促進税制の適用を受けていない事業年度(経過事業年度)において、改正後の要件のすべてを満たすときは、その経過事業年度について改正後の規定を適用して算出される税額控除相当額を、改正後税制の適用年度において、その税額控除額に上乗せして法人税額から控除できることとされた。 例えば、平成26年3月期決算法人が【改正前の】所得拡大促進税制の適用要件を満たしておらず、当税制の適用を受けていない場合であっても、【改正後の】所得拡大促進税制の適用要件を満たしている場合には、【改正後の】規定により算出された税額控除相当額を翌事業年度(平成27年3月期)にて追加的に控除できるというものである。 (了)

#No. 51(掲載号)
#鯨岡 健太郎
2014/01/09

まだある!消費税率引上げをめぐる実務のギモン 【第1回】「前払費用の取扱いについて(その1)」

まだある!消費税率引上げをめぐる実務のギモン 【第1回】 「前払費用の取扱いについて(その1)」   アースタックス税理士法人 税理士 島添  浩 (監修) 税理士 小嶋 敏夫(執筆)   いよいよ平成26年4月1日より、消費税率が8%に引き上げられるが、税率引上げに伴う実務上の問題点については国税庁ホームページやその他の情報でも未だフォローしきれていない問題も残されているため、本連載では税率引上げ後の誤りやすい点又はあらためて注意喚起したい点について、Q&A形式で確認していくこととする。 第1回及び第2回は、消費税率引上げと短期前払費用の特例の適用関係について、以下の具体的な事例を交えて解説することとする。 消費税の計算上、前払費用については、その役務の提供を受けていないことから、原則としてその支出した課税期間において仕入税額控除を行うことはできないが、一定の要件を満たした短期前払費用につき所得税法又は法人税法の規定により必要経費又は損金としている場合には、その支出した課税期間において仕入税額控除を行うことを認めている。 この短期前払費用の特例を適用している場合において、当該前払費用の支出をした日が施行日前でその対象期間が施行日以後にかかる場合に、どのように取り扱うかが問題となる。 【解 説】 それぞれのケースにおける処理方法は、以下のとおりである。 ◆ケース①(消費税においても短期前払費用の特例の適用を受ける場合) 《平成26年3月期》 支払対価12,870,000円のうち5%分を仮払消費税として処理する。 (*1) 12,870,000 × (100/105) 《平成27年3月期》 仕訳なし 新税率(8%)は平成26年4月1日以後に行う課税仕入れについて適用されるため、平成26年3月31日までに新税率を適用した税込対価を支払った場合において、当該対価につき短期前払費用の特例の適用を受けるときは、支払対価の5%相当額である612,857円が平成26年3月期における仕入税額控除の対象となる。 ◆ケース②(新税率対応分について仮払処理する方法) 《平成26年3月期》 法人税については1年分の家賃全額につき短期前払費用の特例を適用する。一方消費税については平成26年1月から3月までの3ヶ月分につき、平成26年3月期において仕入税額控除をする。なお、新税率適用分である4月から12月分に係る消費税については仮払金として処理し、翌期に仕入税額控除を行う。 《平成27年3月期》 前期において仮払金処理した消費税額については、平成27年3月期において仕入税額控除を行う。 ◆ケース③(新税率対応分について、翌期に仕入れに係る対価の返還等を受けたものとして処理する方法) 《平成26年3月期》 ケース①と同様に、課税仕入12,870,000円のうち5%分612,857円を仮払消費税として処理し、平成26年3月期の仕入税額控除の対象とする。 《平成27年3月期》 (*2) 9,720,000 × (100/108) (*3) 9,720,000 × (100/105) 前期において旧税率5%で仕入税額控除の適用を受けた平成26年4月から12月分の税込賃料9,720,000円について、当期において仕入れに係る対価の返還等を受けたものとして処理し、当該賃料について改めて新税率8%で仕入税額控除の適用を受ける。 *   *   * ケース①及びケース③のように、施行日前に支払った新税率対応分について、施行日前の課税期間である平成26年3月期において仕入税額控除の適用を受けるときは、当該課税期間が施行日前の課税期間であるため、新税率での仕入税額控除は行えないことに留意されたい。 (了)

#No. 51(掲載号)
#島添 浩、小嶋 敏夫
2014/01/09

提出前に確認したい「国外財産調書制度」のポイントQ&A 【第1回】「調書の提出対象者」

提出前に確認したい 「国外財産調書制度」のポイントQ&A 【第1回】 「調書の提出対象者」   公認会計士・税理士 前原 啓二   Q 国外財産調書の提出の対象者とは、どのような者ですか。所得税法上の『居住者』と同じですか。また、所得税の課税所得の範囲がどのような者ですか。 A (1) 国外財産調書の提出の対象者 国外財産調書の提出の対象者は、次の①②いずれも満たす者である(調書法5①)。 ただし、上記①②のいずれも満たす者であっても、その年の翌年3月15日までの間に当該国外財産調書を提出しないで死亡し、又は出国をしたときは、提出する必要はない(調書法5①但書)。 ここでの「出国」とは、居住者については、納税管理人(通法117②)の届出をしないで国内に住所及び居所を有しないこととなることをいう(所法2①四十二)。   (2) 所得税法上の個人の区分における『居住者』 所得税法では、個人を居住者と非居住者に区分し、さらに居住者を非永住者と非永住者以外の居住者(ここでは「永住者」とする)に細分して、次のようにそれぞれを定義している。   (3) 国外財産調書提出対象の「居住者」とは 国外財産調書提出対象の「居住者」とは、所得税法第2条第1項第3号に規定する『居住者』(国内に住所を有し、又は現在まで引き続いて1年以上居所を有する個人。以下「所得税法上の『居住者』」とする)をいい、同項第4号に規定する非永住者(所得税法上の『居住者』のうち、日本の国籍を有しておらず、かつ、過去10年以内において国内に住所又は居所を有していた期間の合計が5年以下である個人)を除く(調書法5①)。 所得税法上の『居住者』にはその非永住者を含むが、国外財産調書提出対象の「居住者」は、非永住者を含まない。国外財産調書提出対象の「居住者」は、所得税法上の永住者(非永住者以外の個人)に該当する。 なお、国外財産調書提出対象の「居住者」であるかどうかの判定は、その年の12月31日の現況によることとされている(調書通5-1)。   (4) 国外財産調書の提出の対象者に対する所得税の課税所得の範囲 所得税法の個人の区分に応じて、所得税の課税所得の範囲が、次のように異なる。 国外財産調書提出対象の「居住者」は、所得税法上の永住者に該当するので、国内源泉所得と国外源泉所得すべてに対して、日本の所得税が課される。 (了)

#No. 51(掲載号)
#前原 啓二
2014/01/09

平成25年分 確定申告実務の留意点 【第1回】「平成25年分の申告から適用される改正事項①」

平成25年分 確定申告実務の留意点 【第1回】 「平成25年分の申告から適用される改正事項①」   公認会計士・税理士 篠藤 敦子   平成25年分の確定申告の受付は、平成26年2月17日(月)から3月17日(月)まで行われる。還付申告については、2月16日以前であっても行うことができる。 これから4回にわたり、平成25年分の確定申告における実務上の留意点を解説する。第1回目は、今回の確定申告から適用される改正事項の中から、給与所得に関係するものを取り上げる。 なお、給与所得者の確定申告に関する基本的事項については、拙稿「平成24年分 確定申告実務の留意点【第1回】『確定申告の種類と給与所得者の申告』」をご参照いただきたい。   (1) 給与所得控除の上限設定 給与等の収入金額が1,500万円を超える場合の給与所得控除額は、一律245万円となった(所法28③)。 改正内容の詳細については、拙稿「〈平成25年分〉おさえておきたい年末調整のポイント【第1回】『給与所得控除の上限設定』」をご覧いただきたい。 改正前は、給与等の収入金額が増加すると比例的に給与所得控除額も増加する仕組みとなっていたが、今回の改正により給与等の収入金額が1,500万円を超える場合には、給与所得控除額が245万円で固定される。 したがって、給与等の収入金額が1,500万円を超える者については、下記の通り給与等の収入金額が増加するにつれ、改正前に比べ所得税額が増加することとなる。 *所得控除額の合計額を340万円と仮定し試算している。復興特別所得税は考慮していない。   (2) 特定支出控除の見直し 給与所得者の特定支出控除について、適用の判定基準及び適用対象となる支出の範囲に見直しが行われた。 ① 制度の概要 給与所得者が一定の支出(以下「特定支出」という)をし、1年間の特定支出の合計額が一定金額(以下「判定基準額」という)を超える場合には、その超える部分の金額を給与所得控除後の給与等の金額から差し引くことができる(所法57の2①)。 つまり、特定支出控除を適用した場合の給与所得の金額は、次のように計算される。 特定支出控除の適用を受けるためには、確定申告をする必要がある。申告書には、「給与所得者の特定支出に関する明細書(平成25年分以降用)」及び給与等の支払者の証明書を添付し、特定支出について支出の事実及び金額を証明する書類(領収証等)を添付又は提示しなければならない(所法57の2③、④、所令167の5、所規36の5)。 ② 改正点:その1(判定基準額の引下げ) 改正前は、特定支出の合計額が給与所得控除額を上回った場合に限り、その超過額を追加で控除することができた。 改正後は、特定支出の合計額が給与所得控除額の2分の1相当額(給与等の収入金額が1,500万円を超える場合は125万円)を上回れば、その超過分を追加で控除できることとなり、改正前に比べ制度を利用できる機会が拡大した。 〈改正前と改正後の判定基準額の比較〉   例えば、給与等の収入金額500万円、特定支出の合計額100万円の場合、改正前と改正後の給与所得を比べると次の通りとなる。 ③ 改正点:その2(特定支出の範囲の拡大) 特定支出の範囲は、次の6つに限定されている(所法57の2②)。 このうち、平成25年分の申告から、(エ)資格取得費の範囲が拡大され、(カ)勤務必要経費が新たに追加された。 【資格取得費の範囲の拡大】 平成25年分以後は、資格取得費の範囲に、人の資格を取得するための支出(弁護士、公認会計士、税理士等の資格を取得するために専門学校に通った場合の支出等)が含まれることとなった(所法57の2②四)。 【勤務必要経費の新規追加】 平成25年分以後は、職務と関連のある書籍や新聞、雑誌等の購入費(図書費)、制服や事務服、作業服の購入費(衣服費)、交際費や接待費(交際費等)が新たに特定支出として扱われることとなった(所法57の2②六、所令167の3⑤⑥)。 ただし、勤務必要経費については65万円が限度となる。 なお、特定支出については、次の点にも注意が必要である。 *   *   * 次回は、給与所得以外の所得に関係する改正事項を取り上げる予定である。 (了)

#No. 51(掲載号)
#篠藤 敦子
2014/01/09
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