企業予算編成上のポイント 【第3回】 「『売上関係の予算財務諸表作成』を 理解する」 公認会計士 児玉 厚 今回は「売上関係の予算財務諸表作成」について、簡潔に考察したい。 まずは図1の流れに従って、予算作成の手順の例を見てみよう。 図1 売上関係の予算財務諸表作成 手順1:「目標利益の算定」(予算帳票1参照) 「(5)次期税引後利益」は、「(1)次期配当額」「(2)次期役員賞与額」「(3)次期借入金元本返済額」「(4)次期目標内部留保組入額」から構成される。 (3)の有利子負債により、目標利益が異なる点は留意を要する。 「(5)次期税引後利益」=(1)1,216千円+(2)―千円+(3)10,000千円+(4)4,864千円=(5)16,080千円 下記のように次期の税率を調べ、「法定実効税率(12)36.56%」を算定する。 「(14)次期税金負担額」={(5)16,080千円+加算・流出予算額等(13)401千円}÷(100%-(12)36.56%)×(12)36.56%=(14)9,498千円 「(15)次期(税引前)目標利益」=(5)16,080千円+(14)9,498千円=(15)25,578千円 手順2:「目標売上高の算定」(予算帳票2参照) 「(22)計算上の次期目標売上高」 ={次期固定費予算額(18)29,755千円+次期目標利益(15)→(21)25,578千円}÷次期目標限界利益率(20)49% =(22)112,924千円 「(25)目標販売個数」 =(22)112,924千円÷(23)次期平均単価@90千円 =1,255個→(1桁目切上げ)(25)1,260個 「(26)次期目標売上高」 =(23)@90千円×(25)1,260個 =(26)113,400千円 手順3:「担当者別相手先別販売計画表の算定」(予算帳票3参照) 担当者別相手先別に月次次期売上高を計算する。 【担当者:○○○○】(相手先:W社) 4月 :次期販売個数(30)30個× 次期平均単価(33)90千円=(35) 2,700千円 …略…: …略… 翌3月:次期販売個数(31)100個×次期平均単価(34)90千円=(36) 9,000千円 年度累計:次期販売個数(32)860個 (37)77,400千円 担当者別相手先別に月次の売上高を計算する。 【担当者:△△△△】(相手先:Z社) 4月 :次期販売個数(41)20個×次期平均単価(44)90千円=(46) 1,800千円 …略…: …略… 翌3月:次期販売個数(42)50個×次期平均単価(45)90千円=(47) 4,500千円 年度累計:次期販売個数(43)400個 (48)36,000千円 手順4:「販売計画書の算定」(予算帳票4参照) 「担当者別相手先別販売計画表【担当者:○○○○】(相手先:W社)」と「担当者別相手先別販売計画表【担当者:△△△△】(相手先:Z社)」を集計する。 4月 : (30)30個+(41)20個=(52)50個 (35)2,700千円+(46)1,800千円=(57)4,500千円 …略…: …略… 翌3月: (31)100個+(42)50個=(53)150個 (36)9,000千円+(47)4,500千円=(58)13,500千円 年度累計: 次期販売個数:(32)860個+(43)400個=(54)1,260個 次期売上高:(37)77,400千円+(48)36,000千円=(59)113,400千円 目標販売個数(25)と目標売上高(26)〈予算編成方針〉を満たしていることを確認する。 手順5:「予算損益計算書」(予算帳票5参照) 「販売計画書」の「売上高(59)113,400千円」を「予算損益計算書」の「売上高(60)」欄へ転記する。 売上高に関する仮受消費税等を計算する。 (60)×消費税等率(64)5%=(65)5,670千円 売上高に関する仮受消費税等 =(60)113,400千円×消費税等率(64)5%=5,670千円・・・(65) 手順6:「担当者別相手先別売上代金回収計画表の算定」(予算帳票6参照) 「担当者別相手先別販売計画表【担当者:○○○○】(相手先:W社)」と同表の「決済条件:末締翌月末振込入金(1ヶ月後入金)」より、下記の記入を行う。 4月 : ・「月初売上債権残高」欄に、当期実績予想貸借対照表の売掛金内訳より記入する。 [当期の決済条件:末締翌々月末振込入金(2ヶ月後入金)] ・当期2月分(66)3,885千円+当期3月分(67)2,015千円=(68)5,900千円 「当月発生売上債権」欄には下記の金額を記入する。 4月売上高(35)2,700千円×(1+(64)0.05〈消費税等率〉)=(69)2,835千円 ・「月末売上債権残高」欄に、下記の金額を記入する。 3月分(67)2,015千円+{4月分売上債権発生額(69)2,835千円} =(70)4,850千円 ・「次期売上代金回収収入(71)」欄には、「当期の決済条件:末締翌々月末振込入金(2ヶ月後入金)」なので、2月分売掛金発生額(66)3,885千円を記入する。 →(71)3,885千円 …略…: …略… 翌3月: ・「月初売上債権残高」欄には、「次期の決済条件:末締翌月末振込入金(1ヶ月後入金)」なので、翌2月分(73)4,725千円を記入する。 ・「当月発生売上債権」欄には下記の金額を記入する。 翌3月売上高(36)9,000千円×(1+(64)0.05〈消費税等率〉) =(74)9,450千円 ・「月末売上債権残高」欄に、「次期の決済条件:末締翌月末振込入金(1ヶ月後入金)」なので、3月分売掛金発生額(74)9,450千円を記入する。 →W社に対する売掛金(75)9,450千円 ・「次期売上代金回収収入(76)」欄には、「次期の決済条件:末締翌月末振込入金(1ヶ月後入金)」なので、翌2月分売掛金発生額(73)4,725千円を記入する。 →(76)4,725千円 年度累計:「次期売上代金回収収入」欄には、4月から翌3月までの値を集計する。 (77)77,720千円 ※注1:当期は「末締翌々月末振込入金」(2ヶ月後入金) 「担当者別相手先別販売計画表【担当者:△△△△】(相手先:Z社)」も上記と同様に記入する。 ※注1:当期は「末締翌々月末振込入金」(2ヶ月後入金) 手順7:「売上代金回収計画書の算定」(予算帳票7参照) 「担当者別相手先別売上代金回収計画表【担当者:○○○○】(相手先:W社)」と「担当者別相手先別売上代金回収計画表【担当者:△△△△】(相手先:Z社)」を集計する。 4月 : ・「月初売上債権残高」=(68)+(80)=(90)8,000千円 ・「当月発生売上債権」=(69)+(81)=(91)4,725千円 ・「月末売上債権残高」=(70)+(82)=(92)7,790千円 ・「次期売上代金回収収入」=(71)+(83)=(93)4,935千円・・・★1 …略…: …略… 翌3月: ・「月初売上債権残高」=(73)+(85)=(94)9,450千円 ・「当月発生売上債権」=(74)+(86)=(95)14,175千円 ・「月末売上債権残高」=(75)+(87)=(96)14,175千円・・・★1・★2 ・「次期売上代金回収収入」=(76)+(88)=(97)9,450千円・・・★1 年度累計:「次期売上代金回収収入」=(77)+(89)=(98)112,895千円・・・★1 ★1:「月次資金計画書」へ転記 ★2:「予算比較貸借対照表」へ転記 手順8:「月次資金計画書」(予算帳票8参照) 「売上代金回収計画書」の「次期売上代金回収収入」金額を「月次資金計画書」の「売上代金回収収入」欄へ転記する。 4月 :(93)より記入→(99)4,935千円 …略…: …略… 翌3月:(97)より記入→(100)9,450千円 年度累計:(98)より記入→(101)112,895千円 手順9:「予算比較貸借対照表」(予算帳票9参照) 「売上代金回収計画書」の「翌3月:月末売上債権残高」金額を「予算比較貸借対照表」の「売掛金」の「次期末残高」欄へ転記する。 (96)→(103)14,175千円 売掛金の「当期末残高(予想)」欄には、当期実績予想貸借対照表より転記する。 →(102)8,000千円 売掛金の「増減差額」欄には、(103)14,175千円-(102)8,000千円 =(104)6,175千円を計算・記入する。 手順10:「予算キャッシュ・フロー科目組替仕訳【直接法】」(予算帳票10参照) ・借方の「売上高」欄へ「予算損益計算書」より転記 (60)→(105)113,400千円 ・借方の「仮受消費税等」欄へ「予算損益計算書」より転記 (65)→(106)5,670千円 ・「借方合計」欄へ縦計算・記入する。 (105)+(106)=(107)119,070千円 ・貸方の「貸方合計」欄へ「借方合計(107)」を記入する。 (108)119,070千円 ・貸方の「売掛金増加額」欄へ「予算比較貸借対照表」の「増減差額(104)」を記入する。 →(109)6,175千円 ・貸方の「営業収入」欄へ下記の差額計算結果を記入する。 (108)119,070千円-(109)6,175千円=(110)112,895千円 「月次資金計画書」の「売上代金回収収入」の「年度累計(101)112,895千円」と一致することを確認する。 手順11:「予算キャッシュ・フロー計算書【直接法】」(予算帳票11参照) 上記の「予算キャッシュ・フロー科目組替仕訳【直接法】」の「営業収入(110)」金額を「予算キャッシュ・フロー計算書【直接法】」の同科目金額へ転記する。 →(111)112,895千円 手順12:「予算キャッシュ・フロー科目組替仕訳【間接法】」(予算帳票12参照) ・借方の「税引前当期純利益」欄へ「予算損益計算書」より転記 (61)→(112)25,578千円 ・「借方合計」欄へ縦計算・記入する。 (112)=(113)25,578千円 ・貸方の「貸方合計」欄へ「借方合計(113)」を記入する。 (114)25,578千円 ・貸方の「税引前当期純利益」欄へ借方の同科目金額(112)を記入する。 (112)=(115)25,578千円 ・貸方の「売掛金増加額」欄へ「予算比較貸借対照表」の「増減差額(104)」を記入する。 →(116)6,175千円 ・貸方の「売上債権の増減額」欄へ下記の差額計算結果を記入する。 (114)25,578千円-(115)25,578千円-(116)6,175千円 =(117)△6,175千円 手順13:「予算キャッシュ・フロー計算書【間接法】」(予算帳票13参照) 上記の「予算キャッシュ・フロー科目組替仕訳【間接法】」の「税引前当期純利益(115)」及び「売上債権額の増減額(117)」を「予算キャッシュ・フロー計算書【直接法】」の同科目金額へ転記する。 「税引前当期純利益」(115)→(118) 25,578千円 「売上債権の増減額」(117)→(119) △6,175千円 (了)