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Q&Aでわかる〈判断に迷いやすい〉非上場株式の評価 【第43回】「外国会社株式等がある場合における法人版事業承継税制に係る贈与時における納税猶予税額の計算」

Q&Aでわかる 〈判断に迷いやすい〉非上場株式の評価 【第43回】 「外国会社株式等がある場合における 法人版事業承継税制に係る贈与時における納税猶予税額の計算」   税理士 柴田 健次   Q 先代経営者甲は令和5年10月16日に後継者乙にA社株式40,000株(発行済株式総数の全て)の贈与を行い、法人版事業承継税制(特例措置)に係る贈与税の納税猶予の適用を受ける予定です。A社株式の令和5年10月16日時点における取引相場のない株式の評価明細書の第4表「類似業種比準価額等の計算明細書」は、下記の通りとなります。 なお、A社は3月決算であり大会社に該当し、特定の評価会社に該当しませんので、類似業種比準価額で株式の価額を計算するものとします。 また、A社は出資比率が100%である外国子会社のB社から毎期10,000千円の配当金(うち外国源泉税等1,000千円)を受け取っており、外国子会社から受ける配当等の益金不算入制度により95%相当について益金不算入として法人税の計算を行っています。 B社は外国子会社合算税制の対象となる外国関係会社には該当しません。 B社の出資金額は200,000千円(帳簿価額)ですが、令和5年10月16日時点の相続税評価額は1,000,000千円です。 乙は、A社株式の贈与以外に贈与はなく、相続時精算課税贈与を受ける予定ですが、乙の贈与税の納税猶予税額及び贈与税の納付税額はいくらになりますか。 A 乙の贈与税の計算は下記の通りとなり、贈与税の納税猶予税額は155,528千円、贈与税の納付税額は13,024千円となります。  ◆  ◆  ◆ ① 法人版事業承継税制(特例措置)の概要 法人版事業承継税制(特例措置)は、贈与税の納税猶予制度と相続税の納税猶予制度があり、特例対象の株式等を有していた個人から後継者に贈与又は相続により取得させた場合において、一定の要件の下に特例株式等(特例措置の納税猶予の適用を受ける株式をいいます。以下同じ)に係る贈与税又は相続税を猶予する制度です(措法70の7の5、70の7の6)。 贈与税の納税猶予の適用を受けた後継者に係る贈与者が死亡した場合には、特例株式等(猶予中の贈与税額に対応する部分に限ります)は相続又は遺贈により取得したものとみなされます。この場合における相続税の課税価格の計算の基礎に参入すべき特例株式等の価額は、原則として贈与の時における価額を基礎として計算します(措法70の7の7)。一定の要件を満たした場合には、相続税の納税猶予の適用を受けることができます(措法70の7の8)。   ② 贈与税の納税猶予税額の基本的な計算構造 贈与税の納税猶予税額は、贈与を受けた財産が納税猶予の適用を受ける特例株式等のみであると仮定して計算した贈与税の額が猶予されます(措法70の7の5②八)。 したがって、贈与税の納税猶予税額などは、下記の3ステップにより求めることになりますが、ステップ2で計算される金額が贈与税の納税猶予税額となり、その金額が「ゼロ」である場合には、贈与税の納税猶予の適用を受けることはできません。 〈納税が猶予される贈与税などの計算方法〉 (出典) 国税庁ホームページ「非上場株式等についての贈与税・相続税の納税猶予・免除(法人版事業承継税制)のあらまし(令和5年6月)」5頁より抜粋   ③ 外国会社株式等を保有している場合の除外計算 贈与者又は被相続人が所有している外国会社株式、医療法人の出資持分又は上場株式は、法人版事業承継税制の適用対象にはなりませんが、承継会社が外国会社株式、医療法人の出資持分又は上場株式を有している場合には、要件を満たしていれば納税猶予の適用を受けることができます。 ただし、承継会社がこれらの株式等を保有している場合において納税猶予を無制限に認めてしまうと外国会社株式、医療法人の出資、上場株式についても納税猶予を認めてしまうことになるため、特例株式等の価額の計算上、これらの株式等については除外して計算することとされています。 具体的には、承継会社又は承継会社の特別関係会社(承継会社、代表者、代表者の特別関係者が有する他の会社(外国会社を含みます)の議決権の数の合計が当該他の会社に係る総株主等議決権数の100分の50を超える当該他の会社をいいます。以下同じ)であって承継会社との間に支配関係を有する法人が外国会社株式、医療法人の出資持分又は上場株式で一定の要件に該当するもの(以下「外国会社株式等」という)を所有している場合には、贈与税又は相続税の納税猶予税額の計算をする場合において、特例株式等の価額の計算上、外国会社株式等を有していなかったものとして計算します(措法70の7の5②八、70の7の6②八、措令40の8の2⑫)。 (1) 外国会社株式等の範囲 外国会社株式等とは、次に掲げる外国会社株式、医療法人の出資又は上場株式をいいます。 (注1) 資産保有型会社とは、一定の日における次に掲げる割合が100分の70以上となる会社をいいます(円滑化規則1⑰)。 (※) 特定資産とは、有価証券(事業実態のある子会社等一定のものを除きます)、会社が現に自ら使用していない不動産、ゴルフ会員権等、絵画、貴金属等、現預金その他これらに類する資産をいいます。 (注2) 資産運用型会社とは、一定の事業年度における次に掲げる割合が100分の75以上となる会社をいいます(円滑化規則1⑱)。 (※1) 特定資産の運⽤収⼊には、特定資産である株券の発⾏会社からの配当⾦、受取利息、受取家賃や特定資産の譲渡(譲渡価額そのものが運⽤収⼊となります)などが含まれます。 (※2) 総収⼊⾦額は、損益計算書上の売上⾼、営業外収益及び特別利益(資産の譲渡によるものについては、当該資産の譲渡価額に置き換えます)の合計額となります。 (2) 除外計算の対象になるかどうかの判定手順 除外計算に該当するかどうかは、下記の手順により判定を行います。 (3) 外国会社株式等がある場合の贈与時又は相続時における納税猶予税額の計算 贈与税又は相続税の納税猶予税額を計算する場合の後継者の課税価格とみなされる特例株式等の価額は、財産評価基本通達に基づき下記の通り計算します(措通70の7-14)。 なお、外国会社株式等との間に支配関係がある他の外国会社株式等については考慮する必要はないため、除外計算は1回のみとなります。 また、贈与税の納税猶予の適用を受けた後継者に係る贈与者が死亡した場合における相続税の納税猶予の計算において除外計算がある場合の特例株式等の価額の計算方法については、承継会社の相続開始時点における純資産価額を基に除外計算を行うことになりますが、詳細は次回解説します。   ④ 外国子会社からの配当金について (1) 外国子会社配当益金不算入制度 内国法人が外国子会社(外国法人の発行済株式等に対する内国法人の保有割合が25%以上であり、かつ、その状態が剰余金の配当等の額の支払義務が確定する日以前6月以上継続している外国法人をいいます)から受ける剰余金の配当等の額がある場合には、その剰余金の配当等の額からこれに係る費用の額に相当する額(剰余金の配当等の額の5%相当額)を控除した金額を益金の額に算入しないことができることとされています(法法23の2①、法令22の4①②)。 この外国子会社配当益金不算入制度の適用を受けた場合には、外国源泉税等の額は、外国税額控除の対象とならず(法法69、法令142の2)、損金算入もできません(法法39の2)。 (2) 類似業種比準価額の年利益金額の計算 類似業種比準価額の計算要素である年利益金額は、その法人の1事業年度の経常的な利益金額を算出することを目的としていますので、原則として外国子会社からの配当金も含めて計算することになります。 外国子会社配当益金不算入制度の適用を受けている場合には、外国子会社からの配当金については、95%相当部分が益金不算入とされ、法人税の課税所得金額が計算されていますので、益金不算入とされた外国子会社の配当金は加算する必要があります。 また、外国子会社配当益金不算入制度の適用を受けている場合には、外国源泉税等の額も損金不算入とされていますが、類似業種比準価額の計算要素である年利益金額を計算する際には、その外国子会社の配当金等に係る外国源泉税等の額は受取配当金から控除する必要があります。 したがって、年利益金額から外国子会社配当益金不算入額を加算し、外国源泉税等の額は控除することになります。そのため、本問の第4表「類似業種比準価額等の計算明細書」には、1株あたりの年利益金額の受取配当等の益金不算入額(⑬欄)に9,500千円と左の所得税額(⑭欄)に1,000千円と記載されています。   ⑤ 本問の場合における除外計算 B社からの受取配当金及び外国源泉税等の額については、年利益金額から除外する必要があります。本問の場合には、受取配当金(10,000千円)から外国源泉税等(1,000千円)を控除した金額(9,000千円)が年利益金額に含まれていることになりますので、これを除外する必要があります。 年利益金額の計算上のどの部分で調整を行うかについては明らかにされていませんが、法人税の課税所得金額(⑪欄)には、B社からの受取配当金の5%部分の500千円が含まれていますので、例えば、受取配当等の益金不算入額(⑬欄)に△500千円と記載することで年利益金額からB社からの受取配当金額を除外することができます。 なお、通常の株式の価額計算では、上記④(2)で解説の通り、受取配当等の益金不算入額(⑬欄)に9,500千円及び左の所得税額(⑭欄)に1,000千円が記載されますが、年利益金額に含める必要はありませんので、それぞれ記載しないように注意をする必要があります。 また、純資産価額(⑲欄)からB社株式を除外する必要があります。税務上における帳簿価額を除外することになりますので、相続税評価額1,000,000千円ではなく、帳簿価額200,000千円を減額することになります。どこで調整するかは明らかにされていませんが、1つの方法として利益積立金額(⑱欄)から200,000千円を減額すれば計算できます。 以上により具体的な除外計算がある場合の類似業種比準価額の計算は、下記の通りとなります。   ⑥ 本問の場合における贈与税の納税猶予税額と納付税額 相続時精算課税贈与の場合の贈与税の計算は、下記の通りとなります。   ☆実務上のポイント☆ 外国会社株式等の除外計算がある場合には、法人版事業承継税制を適用しても贈与税は発生することになりますので、あらかじめどれぐらいの贈与税が発生する予定であるかシミュレートをしておくことが重要となります。 (了)

#No. 573(掲載号)
#柴田 健次
2024/06/13

さっと読める! 実務必須の[重要税務判例] 【第98回】「共有不動産に係る不動産所得と事務管理事件」~最判平成22年1月19日(集民233号1頁)~

さっと読める! 実務必須の [重要税務判例] 【第98回】 「共有不動産に係る不動産所得と事務管理事件」 ~最判平成22年1月19日(集民233号1頁)~   弁護士 菊田 雅裕   (了)

#No. 573(掲載号)
#菊田 雅裕
2024/06/13

事例でわかる[事業承継対策]解決へのヒント 【第63回】「M&Aによる第三者承継に向けた株式の集約」

事例でわかる[事業承継対策] 解決へのヒント 【第63回】 「M&Aによる第三者承継に向けた株式の集約」   太陽グラントソントン税理士法人 (事業承継対策研究会) パートナー 税理士 梶本 岳   相談内容 私は、精密機器製造業を営む非上場会社L社を経営するAです。私も70歳を目前に控え、経営承継を強く意識するようになりましたが、私の親族の中には後継者として会社を任せられるものがいません。役員・従業員の中にもL社の経営を担ってもらえる人物は見当たらないため、M&Aによる第三者承継という形で事業承継を行いたいと考えています。 まだ金融機関やM&A仲介会社にも相談していない段階ですが、これから第三者承継を進めるにあたって懸念しているのは、親族や元従業員といった少数株主の存在です。彼らは私が会社を売却することに反対すると思いますし、M&Aが具体化しても株式を手放すことを容認しないかもしれません。 自分が買い手の立場であれば、オーナーの親族など少数株主が反対しているような会社を買いたいとは思えませんので、M&Aによる第三者承継が具体化する前に、少数株主から株式を買い戻しておきたいと考えています。まずは、私が少数株主から買い取るための相談から始めたいと思いますが、M&Aに反対する株主からも強制的に株式を取得できるような仕組みがあれば、ご提案いただけないでしょうか。 〈L社の資本関係〉 ■ □ ■ □ 解 説 □ ■ □ ■ [1] 株式を集約する方法の検討 少数株主から強制的に株式を集約するスクイーズ・アウトの方法としては、特別支配株主の株式等売渡請求、株式併合、全部取得条項付種類株式などの方法が考えられますが、今回の集約方法としては、A氏が保有するL社株式の議決権割合に応じて、株式等売渡請求又は株式併合を用いることが適切であると考えます。 A氏がL社の総株主の議決権の10分の9以上の株式を保有している場合には、平成26年の会社法改正で創設された「特別支配株主の株式等売渡請求」を選択し、A氏の議決権割合が10分の9に満たない場合は「株式併合」(※)を選択することをお勧めします。 (※) 全部取得条項付種類株式も少数株主の保有株式を1株に満たない株式にすることで排除する方法という点が共通していますが、平成26年の会社法改正により株式併合の手続きが整備され法的安定性が担保されたことから、実務においては全部取得条項付種類株式よりも手続きが簡便な株式併合を用いることが主流になっています。   [2] 特別支配株主の株式等売渡請求 特別支配株主の株式等売渡請求とは、株式会社の総株主の議決権の10分の9以上を保有している株主(特別支配株主)が、対象会社の株主全員に対し、その有する株式の全部を特別支配株主に売り渡すことを請求することができる制度です(会179)。 〈特別支配株主の株式等売渡請求の概要〉 株式等売渡請求は対象会社(L社)の取締役会決議で実行することができるため、株主総会の決議を必要としません。取締役会の承認が得られれば、特別支配株主と少数株主との間で個別に株式売買の合意を得ることなく株式を取得することが可能です。 また、株式併合や全部取得条項付種類株式による場合は、少数株主の保有株式を1株に満たない株式にすることで少数株主を排除しますが、株式等売渡請求による場合はその際発生する端株の処理(1株に満たない端数について、裁判所の許可を得て競売以外の方法により売却し、売却代金を交付)も必要ないことから、これらの手法を用いる場合よりも比較的短期間で手続きを完了することができます。 特別支配株主は、単独で総株主の議決権の10分の9以上(発行済株式の全部を保有する特別支配完全子法人を有する場合は、特別支配完全子法人の保有する議決権と合わせて10分の9以上)を保有している必要があります。したがって、議決権の10分の9以上の株式を保有していない場合には、本制度を活用することはできません。このような場合には、他の株主から株式を買い集めて、10分の9以上の議決権を取得したうえで株式等売渡請求を行うか、議決権の3分の2以上で実行できる株式併合など他の手法を検討する必要があります。   [3] 株式併合 株式併合とは、複数の株式を合わせて1株にするなど、より少数の株式にする会社の行為です(会180)。少数株主の保有する株式が1株未満の端数になるように株式併合を行い、売却代金を交付して少数株主を締め出す手法です(会234、235)。 〈株式併合の概要〉 議決権を集約するには、支配株主(A氏)だけは株式併合を実施した後も1株以上の株式となり、少数株主については1株未満の端数となる割合で株式併合を行います。 株式併合を行うには、株主総会の特別決議を経なければなりません。したがって、支配株主が総株主の議決権の3分の2以上の株式を保有していない場合には、本制度を活用することはできません。このような場合には、他の株主の協力を得て3分の2以上の承認を得るか、又は、他の株主から株式を買い集めて、総株主の議決権の3分の2以上を取得したうえで株式併合を行う必要があります。 株式併合は、株主総会の承認だけでなく、効力発生日後に1株未満の端数となった株式を裁判所の許可を得て売却し、株主に交付する手続きが必要となるため、特別支配株主の株式等売渡請求に比べると手続きが煩雑であり、手続き完了までに相応の時間が必要となります(会235)。   [4] 売買価格決定の申立て 株式の集約にスクイーズ・アウトの手法を用いる場合、強制的に株式を取得されてしまう少数株主には、裁判所に対して公正な価格で買い取ることを要請する、「売買価格決定の申立て」が認められています。 特別支配株主の株式等売渡請求を受けた少数株主は、取得日の20日前の日から取得日の前日までの間に、裁判所に対し、その有する売渡株式等の売買価格の決定の申立てをすることができます(会179の8①)。 一方、株式併合に反対した株主には、1株に満たない端数となる株式の全部を公正な価格で買い取ることを請求する「反対株主の株式買取請求権」(会182の4)が認められており、株式併合の効力発生日から30日以内に株主と対象会社との間で価格について協議が調わないときは、その期間の満了の日後30日以内に、裁判所に対し、価格決定の申立てをすることができます(会182の5)。 裁判所に価格決定の申立てが行われた場合において、裁判所が決定する株価は、税務上の評価額(少数株主の場合は配当還元価額)とは異なり、DCF法や純資産法を用いて算出された価格となることが一般的です。したがって、発行会社や支配株主が買取金額として想定していた価格よりも非常に高額となる可能性がある点に留意が必要です。   [5] 結論 少数株主から株式を集約する際に、最も簡便な手法は、売買契約を締結して任意に株式を取得することです。ただし、売買契約を締結するには少数株主の承諾が必要であるため、株式を手放したくない理由がある場合や譲渡対価に納得できない場合など、必ずしも交渉がスムーズに進むとは限りません。 中小企業の事業承継M&Aにおいては、買主が全株式の取得を望むことが多く、売主であるオーナー経営者が事前に分散株式の集約を行っておかなければ売買が成立しないケースも見受けられます。少数株主と合意できずに株式の集約が進まない場合には、少数株主をスクイーズ・アウトする方法を検討せざるを得ないこともあるでしょう。 ただし、少数株主から強制的に株式を取得するスクイーズ・アウトの手法には、株主とのトラブルや紛争の端緒となる可能性があることも事実です。対象会社や支配株主としては、少数株主からなるべく低廉な価格で株式を取得したいところですが、少数株主に対して提示する価格が低すぎると、裁判所に対して価格決定の申立てをされてしまうことにもなりかねません。少数株主の納得感が得られる客観的かつ公正妥当な方法で算定した価格を提示するなど、少数株主の権利保護にも留意する必要があるでしょう。 具体的な対策については、弁護士や税理士等の専門家と相談の上、実行されることをお勧めします。   (了)

#No. 573(掲載号)
#太陽グラントソントン税理士法人 事業承継対策研究会
2024/06/13

〔会計不正調査報告書を読む〕 【第156回】株式会社ラックランド「特別調査委員会調査報告書(公表版)(2024年4月12日付)」

〔会計不正調査報告書を読む〕 【第156回】 株式会社ラックランド 「特別調査委員会調査報告書(公表版)(2024年4月12日付)」   税理士・公認不正検査士(CFE) 米澤 勝   【株式会社ラックランド特別調査委員会の概要】   【株式会社ラックランドの概要】 株式会社ラックランド(以下、「ラックランド」と略称する)は、1970年2月、業務用冷凍・冷蔵庫の販売、設備工事及びメンテナンス業務を目的として設立。「食」に関わる商業施設・店舗の設計及び商空間制作を主たる事業とする。国内連結子会社15社、海外連結子会社9社を有する。売上高41,106百万円、経常利益143百万円、資本金3,943百万円(訂正前の2022年12月期実績)。従業員数1,392名(2024年3月31日現在)。本店所在地は東京都新宿区。東京証券取引所プライム市場上場。会計監査人は、PwC京都監査法人東京事務所(現:PwC Japan有限責任監査法人)。   【特別調査委員会による調査報告書の概要】 1 特別調査委員会設置の経緯 ラックランドは、2023年8月23日より東京国税局が実施していた2020年12月期から2022年12月期までを対象期間とした税務調査の過程において、2023年12月21日、東京国税局の指摘により、代表取締役社長望月圭一郎(以下、「望月社長」と略称する)が接待交際費等として精算申請を行った費用の一部について、科目処理の誤り等の不適切な会計処理の疑いが生じたため、管理本部による調査及び東京国税局との協議を進めていた。 2024年1月30日、より客観的な調査を行うため、監査等委員である取締役の中山礼子及び森幹晴による社内調査チームを組成し、不適切な会計処理が発生した経緯や原因、内部統制体制、2023年12月期及び過年度(2019年12月期から2022年12月期)の連結財務諸表等に与える影響等に関する調査を行った。 社内調査の結果、接待交際費等の一部について、望月社長が精算申請時に申告した情報に事実と異なる内容が含まれていたこと等が判明し、望月社長による精算申請を行った経緯等の事実関係及び2023年12月期及び過年度の連結財務諸表等に係る影響額の正確な把握が不可欠となる事態に至ったことから、本件事案に関する徹底した事実調査を実施するため、2月14日開催の取締役会において、当社から独立した中立かつ公正な外部専門家のみで構成される特別調査委員会を設置することを決議したものである。 2 特別調査委員会の構成の一部変更 特別調査委員会による調査の過程において、望月社長による経費精算事案における金銭との関係性が疑われる2018年12月期に計上された長期売掛金の回収資金等に関する問題及びこれに役職員の一部が関与している可能性が発覚したことから、ラックランドは、2024年3月末に予定していた第54回株主総会を延期すること及び特別調査委員会の構成を一部変更して2名の調査委員を追加したうえで調査を続行することとした。 3 特別調査委員会による調査結果の概要-1(望月社長による接待交際費等の不適切行為) 特別調査委員会は、調査の結果、望月社長による2019年度から2023年度までの接待交際費及び旅費交通費の支出金額が合計で706,692千円であったとしたうえで、このうち、不適切な経費精算として、1,917件、金額にして334,759千円を認定した。 特別調査委員会は、望月社長による不適切な接待交際費の支出について、下記の5類型に分類して、説明している。 4 特別調査委員会による調査結果の概要-2(長期売掛金の回収資金等に関する問題) 特別調査委員会は、デジタル・フォレンジック調査の過程で、2019年から2020年にかけて、ラックランドから仮払金として望月社長の個人口座に支払われた資金が、望月社長の資産管理会社である株式会社エイ・クリエイツ(報告書上の表記は「D社」。以下、「エイ・クリエイツ」と略称する)を経由して、ラックランドが物件X案件として売上計上した長期売掛金の返済原資に充てられている疑義を発見し、調査期間を延長するとともに副委員長2名を追加選任して、物件X案件の受注から売上計上に至るまでと売掛金の回収における事実関係を重点的に調査した。 特別調査委員会の調査によれば、ラックランドは、Y社から物件Xに係る工事4件を受注し、工事完了後の2018年3月に3,735百万円、同年12月に2,064百万円の合計5,800百万円を売上計上した。特別調査委員会は、収益認識要件の観点から事実を確認した結果、売上計上に関しては、再検討すべき事象はないと判断している。 一方、物件X案件に係る長期売掛金の回収について、特別調査委員会は、以下の問題点を指摘し、望月社長、取締役管理本部長鈴木健太郎氏(報告書上の表記は「鈴木取締役」)及び執行役員管理本部部長森川奈々氏(報告書上の表記は「A1氏」、以下「森川執行役員」と略称する)の3人が関与していることが判明したと報告している。 特別調査委員会は、これらの問題点について、ラックランドが物件X案件によって約22億円の長期売掛金を抱え、かつ、1回でもその入金が滞ったら貸倒引当金の計上を検討しなければならないという状況下で、望月社長、鈴木取締役及び森川執行役員が、債権回収に躍起となり、なりふり構わぬ行動に出たものであるという理解を示したうえで、ラックランドの内部統制の有効性及び取締役会・監査等委員会によるコーポレートガバナンスの有効性に重大な疑義を生じさせるものであると評価している。 5 特別調査委員会による原因分析(調査報告書109ページ以下) 特別調査委員会は、まず、望月社長による接待交際費の不適切な精算について、以下のとおり、原因を分析した。 次いで、物件X案件の売掛金回収問題については、以下のとおり原因を分析した。 特別調査委員会は、物件X案件におけるZ社の返済原資をエイ・クリエイツから提供するという不適切行為が、望月社長、鈴木取締役及び森川執行役員によって実行されたことについて、「多額の債権回収を実現するため」「会社を守るため」と自己正当化をし、罪悪感もないと批判したうえで、これらの不適切行為が、結果的には、売上及び長期売掛金の計上に対する会計監査人の疑念を招いていること、シンジケートローン調達や公募増資等におけるラックランドの説明について、金融機関の疑念を招くおそれを生じさせていることなど、重大な負の影響につながっていることを重く受け止めなければならないと指摘している。 最後に2つの事案に共通する原因分析として、特別調査委員会は、次の5項目を挙げている。 6 特別調査委員会による再発防止に向けた提言(調査報告書116ページ以下) 特別調査委員会は、上記の原因分析を踏まえて、下記のとおり再発防止に向けた提言を行った。 特別調査委員会は、再発防止策の最初に「上場会社であり続けることについての徹底的な議論」という項目を挙げ、取締役会において、なぜ上場会社であり続けるのか、それは誰のため・何のためなのか、上場会社が負うアカウンタビリティ(説明責任)を引き受ける覚悟が取締役会にあるのか、非上場という選択肢はないのかといった点について、徹底的な議論を行い、大きな方向性を打ち出す必要があると提言した。 さらに、「役員の経営責任及び法的責任の追及」としては、不適切行為に関与した役員のほか、内部統制やコーポレートガバナンスの不備を放置してきた取締役(監査等委員を含む)について、経営責任を明確化し、経営責任を負わせる必要性を提言するとともに、監査等委員会に対して、損害賠償請求を含む法的責任について検討する必要があると提言している。   【調査報告書の特徴】 2023年5月12日、ラックランドは、「特別調査委員会の設置に関するお知らせ」をリリースして、会計監査人から、会計監査の過程で、下請工事業者から受け取った見積書が変造されていることを発見し、内部監査室長に対して事実関係の調査依頼があったことをきっかけにして、特別調査委員会を設置したことを公表している。2023年5月設置の特別調査委員会の報告書を受領したのは同年7月25日であり、同月28日には、「特別損失の計上のお知らせ」をリリースして、同日時点で調査費用が約669百万円と見込まれることを公表した。 それからわずか7ヶ月足らず、ラックランドは、前回とは全く性質の異なる不適切行為によって、再度、特別調査委員会を設置することとなった。2024年2月に設置した特別調査委員会が、再発防止策の提言の最初に、ラックランドが上場会社であり続けるかも含めて、議論を行うべきであるという厳しい指摘をしている背景には、短期間に、不適切行為が連続して発覚していること、あるいは、過去の税務調査で指摘され追徴課税を受けた不適切な経費精算が全く改められることなく続けられていたことなどがあると考えられる。 特別調査委員会の調査報告書の特徴について、検討したい。 1 2023年5月に設置した特別調査委員会による調査結果の概要 ラックランドが、2023年8月25日に公表した「再発防止策及び関係者の処分に関するお知らせ」をもとに、2023年5月に設置した特別調査委員会による調査結果の概要をまとめておきたい。 (1) 調査の結果判明した不適切な会計処理 特別調査委員会は、ラックランドの工事進行基準案件等において、以下の不適切な会計処理があると報告した。 (2) 発生原因 特別調査委員会は、ラックランドにおいて不適切な会計処理が行われていた原因として、以下の7項目を挙げている。 (3) 再発防止策 特別調査委員会による調査結果を受けて、ラックランドが公表した再発防止策は次のとおりである。 (4) 関係者の処分 同じリリースの中で、ラックランドは、関係者の処分として、取締役については役員報酬の自主返納5ヶ月、監査等委員である取締役については役員報酬の減額5ヶ月を公表している。監査等委員である取締役について「自主返納」ではなく「減額」としている理由は説明されていない。 2 過去の税務調査での指摘事項 ラックランドは、2020年9月28日から翌年4月28日まで、東京国税局の税務調査を受けて、望月社長が個人的経費分を含む経費精算を行っていたことが指摘され、望月社長は個人的経費分を自主返納し、ラックランドは、費用から立替金に振替処理をしている。 特別調査委員会は、この税務調査の結果が、取締役会や監査等委員会に正しく伝達されていれば、関連規程の制定、予算の再検討や交際費の上限額の設定などを検討する十分な機会を得ることができたはずとして、取締役会等に報告することを怠った鈴木取締役について、「ことの重大性を全く認識していなかった」と批判している。 3 望月社長による自主返納誓約書 特別調査委員会は、調査進行中に、望月社長が、不適切な経費精算であると認定された金額を自主的に返納したいという意思を示しているとの情報を得て、ラックランドと協議を経て、2024年3月4日付「誓約書」をラックランドに提出し、特別調査委員会が不適切であると考えた経費精算の金額を自主返納することを約して、ラックランドから返納すべき金額の確定通知を受けてから14日程度の猶予ののち、可及的速やかに、自主返納額全額を返納するという意思を表明した。 上記2のとおり、過去の税務調査においても、望月社長は個人的経費について自主返納しており、それによって自らの責任を追及されることなしに事態を収拾できたと考えていることがうかがえるところである。 なお、本稿執筆時点までに、ラックランドが、望月社長に対して、個人的経費の自主返納を請求したというリリースは出ていない。 4 ガバナンス委員会の設置 2024年4月18日、ラックランドは、「ガバナンス委員会の設置に関するお知らせ」をリリースして、具体的な再発防止策を策定・実行し、内部統制及びガバナンス体制の強化に取り組むためガバナンス委員会を設置することを決議したことを公表した。 (1) ガバナンス委員会の目的及び委嘱事項 ガバナンス委員会は、内部統制及びガバナンス体制に対するステークホルダーからの信頼を回復することを目的とし、その委嘱内容は、取締役会の諮問機関として、①本件の原因並びに内部統制及びガバナンス体制上の問題点を分析し、②具体的な再発防止策を検討及び策定し、③再発防止策の運用に対するモニタリングを行い、④その他ガバナンス委員会が必要と認め取締役会が委嘱した事項を対応することにある。 (2) ガバナンス委員会の構成 ガバナンス委員会の構成は、以下のとおりである。 5 代表取締役の異動 2024年5月8日、ラックランドは、「代表取締役の異動に関するお知らせ」をリリースして、望月社長が、代表取締役社長兼設計本部長から取締役へと異動し、常務取締役営業部門管掌の野村裕之氏が代表取締役に就任することを公表した。異動の理由として、「本件の発生及び上記ガバナンス委員会の答申の内容を踏まえ」と説明しているが、4月18日に設置されたガバナンス委員会が、ラックランド取締役会に対して、どのような答申を行ったかは公表されていない。 (了)

#No. 573(掲載号)
#米澤 勝
2024/06/13

〔まとめて確認〕会計情報の月次速報解説 【2024年5月】

〔まとめて確認〕 会計情報の月次速報解説 【2024年5月】   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2024年5月1日から5月31日までに公開した速報解説のポイントについて、改めて紹介する。 具体的な内容は、該当する速報解説をお読みいただきたい。   Ⅱ 新会計基準関係 日本公認会計士協会は次のものを公表している。 〇 会計制度委員会報告第7号「連結財務諸表における資本連結手続に関する実務指針」の改正(内容:「中間財務諸表に関する会計基準」等を受けた改正) (了)

#No. 573(掲載号)
#阿部 光成
2024/06/13

ハラスメント発覚から紛争解決までの企業対応 【第50回】「ハラスメント相談窓口設置・運用のFAQ」

ハラスメント発覚から紛争解決までの 企 業 対 応 【第50回】 「ハラスメント相談窓口設置・運用のFAQ」   弁護士 柳田 忍   【Question】 ハラスメント相談窓口の設置及び運用に関して、よく聞かれる質問があれば教えてください。 【Answer】 相談者の同意がなければハラスメントの調査を行ってはいけないのか、相談窓口への相談件数がゼロ又は少ないがどうしたらよいか、人間関係のいざこざの相談などハラスメントとはいえない相談がなされないようにするためにはどうすればよいか、といった質問を受けることが多いです。 ● ● ● 解 説 ● ● ●   1 はじめに 事業者は、法令及び関連する指針等においてハラスメントの対策に係る体制整備を義務づけられており、その一環として相談窓口の設置・運用が挙げられている(※1)。更に、2024年11月1日施行予定のフリーランス新法においても、事業者は、特定受託業務従事者に対するハラスメントの対策に係る体制整備を義務づけられており、その一環として相談窓口の設置が含まれている(※2)。 (※1) 「事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」(平成18年厚生労働省告示第615号)4(2)、「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」(令和2年厚生労働省告示第5号)4(2)等 (※2) 「特定業務委託事業者が募集情報の的確な表示、育児介護等に対する配慮及び業務委託に関して行われる言動に起因する問題に関して講ずべき措置等に関して適切に対処するための指針」第4、5(2) このように、事業者の義務としての観点からもハラスメントの相談窓口の重要性は増しているところであるが、実務上、窓口を通じてハラスメントが発覚することが多いという観点からも、ハラスメント相談窓口の適切な設置・運用は極めて重要である。そこで、本稿においては、ハラスメント窓口の設置や運用に関して筆者がよく受ける質問と回答の一部を説明する。   2 調査につき相談者の同意が得られない場合 相談者の同意がなくても、事案が重大で、情報共有の必要性が高い場合には、調査を行うことが可能であると思われる。 会社が相談について調査を実施する必要があると判断した場合、原則として関係者や行為者に対してインタビューを実施することについて相談者から同意を得たうえで進めることになる。しかし、特に行為者のインタビューにおいて相談の内容を確認する過程で相談の内容等から相談者が会社に相談したことが推測されてしまうおそれがあることから、相談者が行為者による報復等を恐れて調査の実施に同意しないことがある。 会社は相談者だけでなく他の従業員に対しても安全配慮義務や職場環境配慮義務を負うことから、仮に相談内容が事実である場合、相談者1人の問題ではなく、よって、相談者が調査を嫌がるからといって調査を行わないわけにはいかないといった事情がある。このような場合に、会社が調査を行うことができるかは、情報の共有の必要性、事案の重大性、相談者の拒絶の程度などにもよるであろうが(※3)、会社としては、会社が行為者からの報復等から相談者を守る姿勢を示すなどして相談者の同意を得るよう努力を尽くすべきである。 (※3) 公益通報者保護法において、公益通報対応業務従事者(内部公益通報受付窓口において受け付ける内部公益通報に関して公益通報対応業務を行う者であり、かつ、当該業務に関して公益通報者を特定させる事項を伝達される者)又は公益通報対応業務従事者であった者は、正当な理由がなく、公益通報対応業務に関して知り得た事項で公益通報者を特定させるものを漏らしてはならないとされているが(法12条)、ここでいう「正当な事由」が以下のように解釈されていることも参考になる(公益通報者保護法に基づく指針等に関する検討会「公益通報者保護法に基づく指針等に関する検討会報告書」(令和3年4月)19頁脚注32)。   3 相談件数がゼロないし少ない場合 相談窓口への相談件数がゼロないし少ない場合は、相談窓口が機能していない可能性がある。対策として、相談窓口の存在自体の周知を図ること、相談を行ったことによる不利益取扱いは禁止されている旨を周知し、会社が相談者を報復等から守る姿勢を示すこと、相談窓口に相談がなされたケースの是正結果等を(プライバシーを侵害しない範囲で)社内で公表して相談窓口が機能していると示すことなどが考えられる。 (1) 相談件数がゼロ・少ないことの問題点と相談窓口を機能させることの重要性 相談窓口への相談件数が少ないことは、必ずしもハラスメントの問題がないことを示すものではない。ハラスメントは全ての業種・全ての職場において問題となり得るものであり、実際にハラスメントに該当するかどうかはともかく、いかなる職場においても従業員がハラスメントであると感じる出来事が生じていることが一般的である。それにもかかわらず、相談窓口への相談件数がゼロないし少ないということは、相談窓口が機能していない可能性が高い。 また、相談窓口に相談が来ることを好ましく思わない会社が少なくないが、相談窓口に相談が来るということは、問題を社内で解決する大きなチャンスを得られるという意味でむしろ有益なことである。ハラスメントの相談が外部機関になされる場合、会社のレピュテーション(評判)の毀損に繋がるリスクが高まるだけでなく、相談者においても大きな負担となることが多いことから、会社や相談者双方のためにも社内で適切に対応できることが望ましい。 この点、内部通報制度に関するものではあるが、消費者庁が実施したアンケート調査(以下「本アンケート調査」という)においては以下のとおりの回答が得られており、これらに照らすと、従業員の相談窓口への期待や信頼が失われた場合、相当程度の確率で従業員が外部機関に相談を行うであろうと予測されることに注意が必要である。 (出所) 消費者庁「内部通報制度に関する意識調査-就労者1万人アンケート調査の結果-〈全体版〉」(令和6年2月29日) (2) 相談件数がゼロないし少ない理由 上記のとおり、相談件数がゼロないし少ないことは相談窓口が機能していないことを示している可能性があるが、本アンケート調査の結果(概要は以下2つ目の枠内参照)に照らすと、その理由は以下のとおりであると考えられる。 以上より、相談窓口を機能させるためには、上記のような対策が効果的であると考えられる。 (出所) 消費者庁「内部通報制度に関する意識調査-就労者1万人アンケート調査の結果-〈全体版〉」(令和6年2月29日)   4 ハラスメントに当たらない相談が来る場合 そのような相談はハラスメント相談窓口の対象外である旨をハラスメント規程等に記載し、周知すべきである。 もっとも、ハラスメントの多くはコミュニケーション上の問題や人間関係のいざこざから生じるものであり、会社から見ると単なる人間関係のいざこざに過ぎず、ハラスメントには当たらないと思われるものであっても、法的に見るとハラスメントに該当するおそれがある場合が少なくない。よって、一見ハラスメントに当たらないように見える相談を受けた場合でも門前払いをすることなく、ハラスメントに当たる可能性がないかを慎重に検討すべきである。 (了)

#No. 573(掲載号)
#柳田 忍
2024/06/13

〈Q&A〉税理士のための成年後見実務 【第7回】「遠方に不動産を持っている場合の注意点」~管理責任も考慮が必要~

〈Q&A〉 税理士のための成年後見実務 【第7回】 「遠方に不動産を持っている場合の注意点」 ~管理責任も考慮が必要~   司法書士法人F&Partners 司法書士 北詰 健太郎   【Q】 顧客の成年後見人として活動することになりましたが、財産として先祖代々の土地や建物などが全国にあります。どのような点に注意すべきでしょうか。 【A】 成年後見人は、成年被後見人が遠方に所有しているような不動産でも管理していかなければなりません。管理業務は管理会社に委託することもできますが、所有者として負担する管理責任や固定資産税などのコストも無視はできません。ケースによっては売却も検討すべきでしょう。 ● ● ● ● 解 説 ● ● ● ● 1 遠方の不動産でも管理していく必要がある 成年後見人は、成年被後見人の所有する財産について管理していく必要があります。それが遠方にある不動産であっても同様です。管理業務自体は不動産会社に委託をすることもできますが、所有者には所有する不動産についての管理責任があり、固定資産税等の所有することによるコストも発生します。成年後見人としては、「この不動産を所有することが、本人の利益になるのか?」という観点は常に持っておく必要があります。   2 所有者としての管理責任 仮に成年被後見人である本人が遠方にある空き家を所有していたとします。空き家の瓦が落ちて、通行人にあたりケガをさせてしまったような場合には、損害賠償請求を受ける可能性があります。 令和6年4月30日に総務省が発表した「令和5年住宅・土地統計調査(住宅数概数集計(速報集計)結果)」によれば、日本の空き家数は900万戸と過去最多となり、空き家率も13.8%と過去最高を記録しています。社会全体として管理不全となっている空き家に対する問題意識が高まっており、成年後見人としてはこうした状況も理解をしておくべきでしょう。   3 所有するコスト 不動産を所有していれば固定資産税等の税金が発生します。利益を生まない不動産であれば、成年被後見人の財産を減らしていくだけであり、これにより成年被後見人の生活が苦しくなるような事態は避けるべきです。 令和5年12月13日に「空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律」が施行されました。「活用拡大」、「管理の確保」、「特定空家の除却等」の3つの観点から、空き家問題への対応を強化するものです。 この改正法のなかでは、放置すれば周囲に著しい悪影響を及ぼす「特定空家」になる可能性がある管理不全空家を対象に、是正するように市区町村長から指導・勧告を行い、勧告を受けた管理不全空家に対しては、固定資産税の住宅用地特例を解除するとされています。成年後見人としてはこうした法改正の動きについても注視をすべきでしょう。   4 不動産の売却 成年後見人には成年被後見人の財産の処分権限もあるため、必要のない不動産であれば売却を行うこともできます。売却にあたっては適正な価格で売却する必要がありますし、居住用の不動産であれば家庭裁判所の許可が必要になります(民法859条の3)。不動産の売却の手順については、また別の回で解説を行います。 (了)

#No. 573(掲載号)
#北詰 健太郎
2024/06/13

プロフェッションジャーナル No.572が公開されました!~今週のお薦め記事~

2024年6月6日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.572を公開! - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。

#Profession Journal 編集部
2024/06/06

monthly TAX views -No.136-「子ども・子育て支援金はなぜ評判が悪いのか」

monthly TAX views -No.136- 「子ども・子育て支援金はなぜ評判が悪いのか」   東京財団政策研究所研究主幹 森信 茂樹   6月5日、健康保険料に上乗せして国民と企業から徴収する子ども・子育て支援法が参議院で可決成立、2026年度の約6,000億円から段階的に増額され2028年度には約1兆円に達する仕組みができあがった。 3月29日に示された「子ども・子育て支援金制度における給付と拠出の試算」(こども家庭庁支援金制度等準備室)では、医療保険加入者1人当たり平均月額も示された。 しかし、国民の評判は芳しくない。少子化対策には財源が必要で、それは国民も認識しているにもかかわらず、なぜこの制度はここまで不評なのか、課題や問題点をあらためて指摘してみたい。 *  *  * 制度・規制改革学会(昭和女子大学特命教授八代尚宏代表理事)は、4月に以下の内容の「子育て支援金」制度の撤回を求める緊急声明を発出した。 撤回すべきとする理由の第1は、健康保険は、疾病のリスクに備える社会保険で、そこから取ることは保険の本来の目的から外れ、間違いであるということである。これは、子どもを産むことがなぜリスクなのか、という問題でもある。 次に、政府は「実質的な追加負担は生じない」と主張するが、この政策で保険料負担が増える以上詭弁である、と指摘する。 最後に、医療保険財政にとって、後期高齢者支援金、前期高齢者納付金、介護納付金負担が既に極めて重くなっている。子ども・子育て支援金は、医療保険財政を一段と圧迫する点を挙げ、このような欠陥のある「子ども・子育て支援金」提案を撤回し、財源のあり方について改めて議論し制度設計を改めるべきである、とする。 *  *  * 筆者は、以下のように考えている。 少子化対策の必要性は国民全員が認識しており、その施策の実施には財源の確保が不可欠だ。子ども・子育て政策の財源を、安易に赤字国債発行に頼らず、支援金制度を創設し財源を確保したことは、それなりに評価できる。防衛力強化のための増税がいまだ開始時期の決定など先送りにされていることと比べると、そのことがよくわかる。 一方で、支援金制度には多くの問題がある。 財源を求める方法としては、税財源と社会保険料負担増があるが、それぞれメリットとデメリットがあるので、議論した上でベストミックスを探るべきだった。社会保険料は、勤労者に負担増が偏るとともに、所得の低い人ほど負担割合が多くなる逆進性が消費税より大きいという大きな問題がある。 企業負担分は価格転嫁が難しく、国際競争力の観点からの問題が生じる。また企業は、支援金の負担増を避けようと非正規雇用を増やす行動をとったり、企業の賃上げの原資を奪うことにもつながりかねない。現にドイツやフランスは、ここ10年以上社会保険料の企業負担を軽減する政策をとってきた。 政治的に安易な社会保険料の負担増という手法を容認すると、今後もこのやり方で国民の負担増がなし崩し的に進んでいく。 筆者は、税で負担を求めることが本筋だと考える。そうすれば、より負担余力のある者をターゲットにすることも可能になるので、格差是正という問題への対応にもなる。 具体的には、金融所得が多い人への課税強化だ。政府は年間の合計所得が約30億円を超える「超富裕層」への課税を強化したが、200人から300人程度と言われている対象を広げれば増収が見込める。所得が1億円を超えると税負担率が下がる「1億円の壁」の是正にもつながり、国民の反対も少ないだろう。NISAの拡充が行われているので、株式相場への影響は限定的だ。 消費税の引上げという選択肢もある。経済への悪影響を懸念する向きもあるが、増税分の使途をすべて少子化対策に充てるのであれば、若者世代に還元されるので問題はないはずだ。税率引上げも、デジタル技術が発達した今0.5%(約1.5兆円)だけ引き上げるといった柔軟な対応も可能だ。 もっとも増税の前には、歳出改革をしっかり行う必要がある。少子化対策全体の規模は3.6兆円で、歳出改革で1.1兆円、支援金で1.0兆円、既定予算の活用で1.5兆円となっている。そこで、加速化プランと銘打った歳出改革を、2028年までに実現することがカギともいえる。行き詰まれば、別の財源が必要だということになる。子育て支援はさらに拡充する必要があるので、その時こそ、増税を含めた真正面からの議論を期待したい。 (了)

#No. 572(掲載号)
#森信 茂樹
2024/06/06

マンション評価通達の内容と実務への影響 【第2回】

マンション評価通達の内容と実務への影響 【第2回】   拓殖大学商学部教授 税理士 安部 和彦     3 マンション評価通達の意義とその適用 (1) 通達案に係るパブリックコメント マンション評価通達に関しては、令和5年7月21日に(案)の段階でパブリックコメント(意見公募手続)が実施された。パブリックコメントは同年8月20日に締め切られ、その結果が同年10月6日に公表された。意見は102通寄せられ、うち98通がインターネット経由(電子政府総合窓口(e-Gov)の意見提出フォームを使用)である。 筆者自身もインターネットを通じて意見を提出しているが、その内容(国税庁により他の意見と適宜統合等されている)とそれに対する国税庁からの回答(考え方)を以下で対比させてみたい。 〇 筆者の意見と国税庁からの回答(※9)との比較対象表 (※9) 表中最初の欄の「頁数」は、国税庁「『居住用の区分所有財産の評価について』の法令解釈通達(案)に対する意見募集の結果について」(令和5年10月6日)の「別紙1」の頁数を示す。 (※10) 拙稿前掲(※4)論文3(1)で指摘している事項であり、詳細は該当部分参照のこと(以下同じ)。 (※11) 拙稿前掲(※4)論文3(2)参照。 (※12) 拙稿前掲(※4)論文3(1)参照。 (※13) 拙稿前掲(※4)論文3(3)参照。 (※14) 拙稿前掲(※4)論文3(4)参照。 上記表の意見と回答とを見比べて、読者はどのように感じられただろうか。筆者は率直に言って、両者はあまり嚙み合っていない、すなわち、筆者の意見に対し国税庁はそれに(正面切って)回答するということを避けている、と感じたところである。 なお、筆者は別途「回帰式の正当性を検証するため、国民が統計データベースへアクセスできるようにすべきではないか(※15)」との意見も送付したが、残念ながらこの点に対する国税庁からの回答はなかった。国民から直接意見を聴取するというせっかくの機会であるので、課税庁はそれに対して誠心誠意答えるという対応をすれば、パブリックコメントの存在意義も上がり、通説(※16)とは異なり、それを経て発遣される通達は、国会審議を経た法令に勝るとも劣らぬ民主的統制を受けており、法源としての意義が認められる可能性にもつながるのではないだろうか。 (※15) 拙稿前掲(※4)論文3(5)参照。 (※16) 通達には法源性はないというもので、最高裁もタキゲン事件(最高裁令和2年3月24日判決・集民263号63頁)で宇賀・宮崎両裁判官が補足意見でその旨を改めて確認している。 (2) マンション評価通達の真意 筆者はパブリックコメントの際に、「居住用の区分所有財産の法的性格を踏まえれば、敷地利用権と建物の専有部分とを分けて評価する意義は乏しいのではないか(上記(1)の表中の最初の意見参照)」という旨を指摘したが、それに対する国税庁の回答はあまり要領を得ないものとなっている。 しかし、今回の通達をよく読めば、筆者の意図と国税庁の考え方には実際のところ齟齬はないように見える。すなわち、パブリックコメント別紙1の7頁で国税庁は、「敷地利用権と区分所有権に対する補正について」において、「分譲マンションは、建物の区分所有等に関する法律において、『区分所有者は、その有する専有部分とその専有部分に係る敷地利用権とを分離して処分することができない』(区分所有法22①)と規定され、土地と建物の価格は一体として値決めされて取引されており、それぞれの売買実例価額を正確に把握することは困難であるほか、評価乖離率(又は補正率)は一体として値決めされた売買実例価額との乖離率に基づくものであり、これを土地と家屋に合理的に分けることは困難であることから、一室の区分所有権等に係る敷地利用権及び区分所有権のそれぞれについて同一の補正率を乗ずることとしています。」という見解を示している。 国税庁も区分所有法の規定から、土地と家屋の価格をそれぞれ評価することは困難であると理解しており、その結果通達においても、敷地利用権と区分所有権のそれぞれに「同一の」補正率を乗ずることとしているのである。 要するに、国税庁も結局のところ、マンションに関しては、土地と家屋を別個に評価すべきではなく、一体で評価すべきと考えているのである。通達ではそれが明示されていないが、その規定ぶりからみると、通達の考え方は、マンションに関しては原則として、「敷地利用権と区分所有権は一体で評価する」としていると解するのが妥当といえよう。 (3) 通達の適用対象外となるマンション 今回公表されたマンション評価通達の適用対象外となるマンション(不動産)は、以下のものが挙げられる。 (※17) 国税庁資産評価企画官情報第2号「居住用の区分所有財産の評価に関するQ&A」(令和6年5月14日)別添問4も参照。 (※18) 国税庁前掲(※17)情報別添問4参照。 (※19) 国税庁前掲(※17)情報別添問3参照。 (4) マンションの評価事例 それでは、以下の事例につき新通達によりマンションを具体的に評価してみたい(※20)。 (※20) 国税庁前掲(※17)情報別添問10~12にも事例があるので参照されたい。 上記計算過程を国税庁の用意したエクセルの計算ツール(居住用の区分所有財産の評価に係る区分所有補正率の計算明細書(※21))にあてはめてみると、以下の表の通りとなる(該当箇所のみ抜粋)。 (※21) 区分所有補正率(評価乖離率)の算式が正しいという前提であればこの計算ツールは使いやすいといえるが、そもそもその検証を外部には「させない」という国税庁の頑なな姿勢は、極めて残念である。 (【第3回】に続く)

#No. 572(掲載号)
#安部 和彦
2024/06/06
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