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#Profession Journal 編集部
2023/09/21

《速報解説》 上場承認前届出書にかかる改正として「企業内容等の開示に関する内閣府令」等が公布される~IPOの公開価格設定プロセス等について見直す~

《速報解説》 上場承認前届出書にかかる改正として 「企業内容等の開示に関する内閣府令」等が公布される ~IPOの公開価格設定プロセス等について見直す~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2023(令和5)年9月15日、「企業内容等の開示に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令」(内閣府令第66号)が公布された。これにより、2023(令和5)年6月30日から意見募集されていた案が確定することになる。 「「企業内容等の開示に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令(案)」等に対するパブリックコメントの概要及びコメントに対する金融庁の考え方」も公表されている。 これは、新規公開(IPO)の公開価格設定プロセス等について見直すものであり、上場日程の短縮化や日程設定の柔軟化の課題に対する改善策として、あらかじめ上場承認前に有価証券届出書(以下「承認前届出書」という)を提出することが考えられ、その際の承認前届出書の記載事項について改正するものである。 「企業内容等の開示に関する留意事項について(企業内容等開示ガイドライン)」も改正する。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 日程関連の記載(「企業内容等開示ガイドライン」5-8-2-3) 承認前届出書において、上場日に紐づく次の日程について、一定の幅を持った期間での記載を可能とする改正を行う。   Ⅲ 株式数関連の記載(「企業内容等の開示に関する内閣府令」9条9号) 承認前届出書において、発行数や売出数について「未定」と記載することを可能とする改正を行う。   Ⅳ 価格関連の記載(「企業内容等の開示に関する内閣府令」9条9号、「企業内容等開示ガイドライン」5-8-2-2及び5-8-3) 承認前届出書において、価格関連の次の項目について記載しないことを可能にする改正を行う。 上記のほか、承認前届出書の位置づけに関連した事項として、承認前届出書に、上場承認前の募集又は売出しの相手方に関する記載を求める等の改正を行う。   Ⅴ 施行期日等 「企業内容等の開示に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令」(内閣府令第66号)は、2023(令和5)年9月15日に公布され、2023年10月1日から施行する。 「企業内容等開示ガイドライン」は、2023年10月1日に改正され、同日から適用する。 (了)

#阿部 光成
2023/09/20

《速報解説》 会計士協会、意見募集を経て「倫理規則に基づく報酬関連情報の開示に関するQ&A(研究文書)」等を確定~インボイス制度導入で想定される立替経費の取扱いについても言及~

《速報解説》 会計士協会、意見募集を経て「倫理規則に基づく報酬関連情報の開示に関するQ&A(研究文書)」等を確定 ~インボイス制度導入で想定される立替経費の取扱いについても言及~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2023年9月7日付で(ホームページ掲載日は2023年9月13日)、日本公認会計士協会は、倫理規則実務ガイダンス第1号「倫理規則に関するQ&A(実務ガイダンス)」の改正、倫理規則研究文書第1号「倫理規則に基づく報酬関連情報の開示に関するQ&A(研究文書)」及び「公開草案に対するコメントの概要及び対応」を公表した。これにより、2023年6月15日から意見募集されていた公開草案が確定することになる。 2022年7月25日改正の倫理規則では、会計事務所等は、監査業務の依頼人が社会的影響度の高い事業体である場合、報酬関連情報に関する透明性の確保の観点から、監査役等とのコミュニケーションとともに、依頼人又は会計事務所等による報酬関連情報の開示が求められている。 上記は、会計事務所等が改正倫理規則に基づいて報酬関連情報の集計、算定及び開示を行う際の実務上の参考となる考え方を示すものである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 倫理規則に関するQ&A(実務ガイダンス)関係 Q410-13-1の補足において、依頼人と会計事務所等のそれぞれが法令等又は倫理規則に基づく開示のために報酬に関する情報を集計し、算定する際、報酬の集計範囲や算定プロセスの相違等により、両者の間に差分が生じることがあると記載している。 これらの情報は、いずれも同一の会計事務所等及びネットワーク・ファームに係る報酬に関する情報であるため、依頼人の監査役等を含む利害関係者に対して会計事務所等の独立性の評価に関連すると合理的に考えられる情報を整合的に提供する観点から、次の(1)及び(2)を満たす場合には、依頼人が算定した報酬に関する情報を、倫理規則R410.31項に基づく報酬関連情報として取り扱うことができるものと考えられるとしている。   Ⅲ 倫理規則に基づく報酬関連情報の開示に関するQ&A(研究文書)関係 次の事項について、取扱いを示している。 1 金融商品取引法及び会社法に基づく監査の監査報告書における報酬関連情報の開示(Q1) 社会的影響度の高い事業体である監査業務の依頼人が、金融商品取引法に基づく監査及び会社法に基づく監査の両方を受け、報酬関連情報の開示を行っている場合には、金融商品取引法又は会社法に基づくいずれかの監査報告書において報酬関連情報を開示することで足りるとされている(倫理規則に関するQ&A Q410-13-4)。 したがって、金融商品取引法に基づく監査の監査報告書において報酬関連情報を開示する場合には、会社法に基づく監査の監査報告書では、その開示を省略することが考えられる。 ただし、依頼人は、会社法施行規則に基づいて、事業報告において会計監査人の報酬を開示することが求められているため(会社法施行規則126条2号及び8号)、会計事務所等は、会社法に基づく監査の監査報告書において開示を省略する場合であっても、会社法に基づく監査の際に、依頼人が開示する報酬に関する情報について検討することが考えられる。 2 比較年度に関する報酬関連情報の開示(Q2) 「過年度の比較情報―対応数値と比較財務諸表」(監査基準報告書710)に基づいて、監査報告書における監査意見が対応数値方式で表明される場合、通常、過年度の比較情報に関連する報酬関連情報の開示は求められないものと考えられる。 3 四半期レビュー及び中間監査における報酬関連情報の開示(Q3) 社会的影響度の高い事業体の年度の財務諸表の監査業務において報酬関連情報を開示する場合には、四半期レビュー及び中間監査において報酬関連情報を別途開示することまでは求められない。 四半期レビュー及び中間監査に対する報酬は、当該年度の監査業務における報酬関連情報に含めて開示すれば足りるものと考えられる。 4 臨時計算書類及び訂正報告書に関する監査における報酬関連情報の開示(Q4) 訂正報告書に関する監査報酬について、過年度の訂正報告書の財務諸表の対象期間にそれぞれ按分計算し、訂正報告書の対象期間に係る報酬に加えて開示することが考えられる。 ただし、訂正報告書に関する監査報酬を、例えば、当該訂正報告書に関する監査業務を実際に実施した会計年度の監査報酬に含めて開示することも考えられる。 このほか、臨時計算書類の監査に関する報酬関連情報の開示についても記載している。 5 投資法人に関する報酬関連情報の開示(Q5) 投資法人に関しては、「財務諸表等の監査証明に関する内閣府令」4条10項において、金融商品取引法に基づく監査の監査報告書において報酬関連情報は記載しないことができるとされている。 会計事務所等は、法令等及び倫理規則のいずれも遵守することが求められているため(倫理規則R100.6項、R100.7項、R100.7 JP項及び第100.7 A1項)、両者の規定に相違がある場合は、法令等により禁止されている場合を除いて、いずれか厳しい規定を遵守することになる。 したがって、投資法人が社会的影響度の高い事業体に該当する場合は、報酬関連情報を開示することとなる(Q5のAのなお書きにも注意する)。 6 報酬関連情報の集計範囲及び算定基準(Q6) 報酬関連情報の集計範囲及び算定基準については、財務諸表の対象期間における契約金額、支払額、発生額又は請求額のいずれか、また、当年度末をまたいで次年度にかけて提供する単独の非監査業務の場合、業務完了時の年度の報酬に含めてよいのかなどの論点がある。 報酬関連情報の集計範囲及び報酬金額の算定基準(契約金額、支払額、発生額又は請求額)は、次のとおりとすることが考えられるが、継続して採用することを前提として、他の合理的と考えられる集計方法によることも認められるものと考えられる。 なお、依頼人のグループ内において一貫した集計範囲及び算定基準を用いることが考えられる。 監査業務及び監査以外の業務のいずれについても、業務報酬単価と業務提供時間に基づいて報酬額が決定される契約の場合には請求額とする等、倫理規則R410.31項の要求事項を踏まえ、業務契約の形態に応じた合理的と考えられる報酬額を報酬関連情報の集計範囲に含めることが考えられる。 7 非連結子会社の報酬関連情報(Q11) 非連結子会社に関する報酬の開示は、当該報酬が会計事務所等の独立性の評価に関連することを知っている場合又はそのように信じるに足る理由がある場合に開示が求められる(倫理規則R410.31項(3))。 このため、例えば、会計事務所等の独立性を評価する上で影響しないと想定され、報酬関連情報の開示が求められないと判断した場合等には、当該非連結子会社に係る報酬を集計範囲に含めないことが考えられる。 一方、監査の過程等で入手可能な情報から、非連結子会社に関連して会計事務所等の独立性の評価に影響を与える可能性がある情報(例えば、非保証業務の事前了解の過程において、会計事務所等やネットワーク・ファームが、依頼人の企業グループの規模に対して重要な契約金額の業務を受嘱する等の情報)を捕捉した場合には、会計事務所等の独立性の評価への影響を慎重に判断し、当該非連結子会社に係る報酬を集計範囲に含めることが考えられる。 8 親事業体及び関連会社の報酬関連情報(Q12) 報酬関連情報の集計範囲については監査業務の依頼人及びその子事業体(連結又は非連結を問わない)のみであり、親事業体や関連会社に関する情報は含まれないという理解でよいかについては、報酬関連情報の集計範囲には、親事業体や関連会社は含まれない(倫理規則R410.31項)とのことである。 9 連結計算書類を作成していない場合の報酬の集計範囲(Q14) 監査業務の依頼人が連結計算書類を作成していない場合(会計事務所等の監査対象が計算書類等のみである場合)であっても、倫理規則に準拠して開示する報酬関連情報は、子事業体を含む連結ベースの開示となるのか、また、ネットワーク・ファームに係る報酬も集計範囲に含めるのかについては、次のように記載している。 社会的影響度の高い事業体である監査業務の依頼人が連結計算書類を作成していない場合、連結子会社は存在しない。 一方、非連結子会社に関する報酬の開示は、当該報酬が会計事務所等の独立性の評価に関連することを知っている場合又はそのように信じるに足る理由がある場合に開示が求められる(倫理規則R410.31 項)。 したがって、これに該当する非連結子会社からの報酬が存在する場合には、ネットワーク・ファームが受領している報酬も含めて報酬関連情報の集計範囲に含めることになるものと考えられる。 10 決算期の異なる子事業体の取扱い(Q16) 決算期の異なる子事業体に係る報酬については、Q6のAを踏まえ、次のとおりとすることが考えられるが、継続して採用することを前提として、他の合理的な集計方法によることも認められるものと考えられる。 11 立替経費の取扱い(Q17) インボイス制度導入に伴い立替経費を報酬に含めるようになった場合であっても、開示する報酬金額には、立替経費や消費税等を含めないことが適当と考えられるので、立替経費を報酬金額に含める形式の契約であっても、監査業務の依頼人との間で経費相当額として合意している金額については、開示する報酬金額から控除することが考えられる。 また、立替経費を報酬に含めて請求することが継続して行われている場合には、継続して採用することを前提として、開示する報酬金額から控除しないことも認められるものと考えられる。 12 倫理規則が求める報酬関連情報の監査業務の依頼人による開示(Q18) 依頼人が有価証券報告書において倫理規則で求められている報酬関連情報を開示している場合であっても、法令等に基づいて、監査報告書において報酬関連情報を記載することが金融商品取引法に基づく監査における監査報告書において求められる。 13 報酬関連情報の開示に係る工数(Q26) 会計事務所等による報酬関連情報の集計及び算定又は依頼人による開示情報の検討には一定の工数を要することが想定される。 これらの手続によって発生が予想される関連工数については、倫理規則の要求事項に基づく開示に関連する業務であることから、依頼人の財務諸表に対する監査業務の一環として、倫理規則に基づく報酬関連情報に含めて開示することが考えられる。 (了)

#阿部 光成
2023/09/15

《速報解説》 国税庁、「高速道路利用料金に係る適格簡易請求書の保存方法」について「お問合せの多いご質問」へ掲載~クレジットカード利用明細書は適格請求書に該当しないとの見解~

《速報解説》 国税庁、「高速道路利用料金に係る適格簡易請求書の保存方法」について「お問合せの多いご質問」へ掲載 ~クレジットカード利用明細書は適格請求書に該当しないとの見解~   Profession Journal編集部   国税庁は9月15日付でインボイス制度に関する「お問合せの多いご質問」を更新(前回更新は8月21日)、以下2つの問答を追加問として掲載した。 このうち問④(高速道路利用料金に係る適格簡易請求書の保存方法)では、ETCシステムを利用し、後日、クレジットカードにより料金を精算している場合で、クレジットカード会社から受領するクレジットカード利用明細書の保存により仕入税額控除を行うことはできるかとの問いに対し、「クレジットカード利用明細書は、そのカード利用者である事業者に対して課税資産の譲渡等を行った他の事業者が作成及び交付する書類ではなく、また、課税資産の譲渡等の内容や適用税率など、適格請求書の記載事項も満たしませんので、一般的に、適格請求書には該当しません。」と回答したうえで、この場合の対応について、通行料金確定後、高速道路会社が運営するホームページ(ETC利用照会サービス)を通じて適格簡易請求書の記載事項に係る電磁的記録(「利用証明書」)をダウンロードし、それを保存する必要があるとしている。 また、高速道路の利用が多頻度にわたるなどの事情により、すべての高速道路の利用に係る利用証明書の保存が困難なときは、クレジットカード会社から受領するクレジットカード利用明細書(個々の高速道路の利用に係る内容が判明するものに限る。また、取引年月日や取引の内容、課税資産の譲渡等に係る対価の額が分かる利用明細データ等を含む)及び、利用した高速道路会社及び地方道路公社などの任意の一取引(複数の高速道路会社等の利用がある場合、高速道路会社等ごとに任意の一取引)に係る利用証明書をダウンロードし併せて保存することで、仕入税額控除を行って差し支えないとしている。 (了) ↓お勧め連載記事↓

#Profession Journal 編集部
2023/09/15

プロフェッションジャーナル No.535が公開されました!~今週のお薦め記事~

2023年9月14日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.535を公開! - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。

#Profession Journal 編集部
2023/09/14

酒井克彦の〈深読み◆租税法〉 【第123回】「節税商品取引を巡る法律問題(その17)」

酒井克彦の 〈深読み◆租税法〉 【第123回】 「節税商品取引を巡る法律問題(その17)」   中央大学法科大学院教授・法学博士 酒井 克彦     Ⅻ まとめ 1 金融リテラシー教育との親和性 これまで、この連載では、節税商品過誤訴訟の実態などを通して、節税商品取引における投資者保護の必要性を論じてきた。既述のとおり、そこには特別の議論が待っていると思われる。 なぜなら、①節税商品には特殊構造が認められるにも関わらず、②説明者の専門的知識の欠如という問題が所在するからであった。節税商品取引においては税理士の役割が期待されるところ、投資者と税理士を繋ぐためにも、税理士でない者に係る消極的説明義務の議論が欠かせないことを指摘した。 また、投資者サイドのレベルを引き上げることも重要である。一般の投資者は租税法について不知であったり、誤解をしていることが多々あるため、租税リテラシーが重要になるといえよう。本稿で論じてきたことの出発点はここにあったといってよい。 具体的にいえば、節税商品取引に係る情報提供すなわち広報活動の重要性と、積極的な成人向け租税リテラシー教育の展開である。金融教育の領域では、多くの議論を経由して、しっかりとした金融リテラシー教育が展開されつつあるが、それに比して、租税リテラシー教育はどうであろうか。 もっとも、金融リテラシー教育と租税リテラシー教育を分断して議論する必要はなく、広い意味での金融リテラシー教育として租税に関する情報提供をも包摂させる仕組みが構築されてもよいであろう。 OECDは、金融教育一般を次のように定義している(OECD, “OECD/IFNE HIGH-LEVEL PRINCIPELS ON NATIONAL STRATEGIES FOR FINANCIAL EDYCATION”, 2012.8. 金融経済教育研究所「OECD/IFNE 金融教育のための国家戦略に関するハイレベル原則(仮訳)」5頁(2012)(金融広報中央委員会HP「知るぽると」))。 ここに租税リテラシー教育が包摂される余地は十分にあると考えている(※)。 (※) ともすると、金融リテラシー教育について、いわば個人の金儲けのための教育であるとか、証券市場の活性によって特定の団体が潤うというような特定の私的利益獲得のためのものであるという批判があるが、租税リテラシー教育をも包摂することによって、金融リテラシー教育に対する上記のような疑問や批判論は溶解されることにもなり得るであろう(金融リテラシー教育への疑問として、それが金融商品選択教育、マネーゲーム教育にすぎないと指摘する見解として、例えば、稲本滋「金融教育の再編成が急務」New finance45巻4号42頁(2015)など参照。他方、再反論として、観音寺命「日本の金融教育の現状とこれからの課題-各国との比較を通じて」レファレンス790号117頁(2016))。 2 納税環境整備への道 租税法研究領域では、従来、「国」と対峙する「納税者」という関係を前提として、いわば行政救済的視角からその手続法や納税環境整備の議論が展開されてきたきらいがあるが、ここでは、むしろ租税行政と国民が同じ方向をみて、あるべき納税環境の整備、あるべき投資環境の整備に努力すべきではなかろうか。 高齢化社会が到来して、多くの国民が老後資金への不安を抱えているなかにあって、政府は自助努力の必要性を唱え、金融リテラシー教育を展開しようとしているが、その際に、誤った節税情報に振り回されてしまうことのないように、行政指導を徹底するとともに、国民の側のリテラシーレベルの向上に尽力すべきではなかろうか。 前述したとおり、研究会報告書が、「『生活スキルとしての金融リテラシー』を身に付けることが金融経済教育の目的の一つであり、金融や経済についての知識のみならず、家計管理や将来の資金を確保するために長期的な生活設計を行う習慣・能力を身に付けること、保険商品、ローン商品、資産形成商品といった金融商品の適切な利用選択に必要な知識・行動についての着眼点等の習得、事前にアドバイス等の外部の知見を求めることの必要性を理解することが重要である」と指摘している点を想起すれば、そこに租税制度の知識が欠落していいはずはないのである。 (了)

#No. 535(掲載号)
#酒井 克彦
2023/09/14

谷口教授と学ぶ「国税通則法の構造と手続」 【第18回】「国税通則法38条(36条~40条)」-繰上請求の意義と位置づけ-

谷口教授と学ぶ 国税通則法の構造と手続 【第18回】 「国税通則法38条(36条~40条)」 -繰上請求の意義と位置づけ-   大阪学院大学法学部教授 谷口 勢津夫   国税通則法38条(繰上請求)   1 国税通則法上の国税徴収規定 既に第1回の2で述べたように、国税通則法はその制定の経緯からして国税徴収法の延長線上で制定されたとみるべきものであり、両法は「実は[手続の]実体的には一本のやつを、便宜主義的に二本に分かれている」(研究会「国税通則法をめぐって」ジュリスト251号(1962年)10頁、14頁[志場喜徳郎発言])というようにみることができる。 このような見方によれば、国税通則法と国税徴収法との関係を整序する規定が必要になるように思われるが、そのような規定のうち国税通則法の側の規定を以下では「国税通則法上の国税徴収規定」ということにすると、これに該当するのは、国税通則法「第3章 国税の納付及び徴収」のうち特に「第2節 国税の徴収」に定められた同法36条ないし40条の規定である。また、国税通則法41条ないし45条は、「第3節 雑則」に規定されているが、それらの内容の大半は実質的には同法上の国税徴収規定を構成するとみてよい。 こうしてみると、国税通則法上の国税徴収規定には内容的には雑多なものが含まれているように思われる。この点については、国税通則法の性格や国税徴収法との関係を明らかにするためにも、検討しておく必要があると思われるので、国税通則法の制定の経緯も含め、長くなるが次の解説(志場喜徳郎ほか共編『国税通則法精解〔令和4年改訂・17版〕』(大蔵財務協会・2022年)18-19頁。下線筆者。同516頁も参照)を引用しておくことにしよう。 さて、国税通則法上の国税徴収規定のうち同法36条が定める納税の告知については、前回の1で国税の納付(同法第3章第1節)の方式を検討する際に、自主納付方式と並ぶ納付方式である納税告知方式に関連して、その内容をごく簡単にみたところである。また、前回は主として申告納税方式による国税等の納付について検討したが、その納付の方式である自主納付方式については、国税通則法上の国税徴収規定は、基本的には、督促について規定する同法37条と滞納処分について規定する同法40条によって構成される。 督促に関する国税通則法37条は、自主納付方式における納税の請求の基本規定である。督促は「滞納処分の前提となるもの」であり「国税に関する法律に基づく処分」(税通75条1項)に該当すると解されるが(最判平成5年10月8日訟月40巻8号2020頁)、そうすると、納税の告知(徴収処分。前回1参照)も含め、国税の請求は行政処分として取消争訟の対象となるものと解される。 国税通則法38条は納税の請求について特殊な形態の措置を定めている。繰上請求(税通38条1項・2項)と繰上保全差押え(同条3項・4項)がこれであるが、後者は強制換価手続消費税等徴収特例(同39条)と同じく(理由は異なるが)、国税通則法上の国税徴収規定として規定することが妥当かどうか疑問に思われるので、この点については、項を改めて検討することにする。   2 繰上請求と繰上保全差押え等 私法上の債権については、契約自由の原則により、期限の利益の放棄を約定することができるが(民法136条2項)、租税法律主義(合法性の原則)の下ではそのような約定は許容されないので、繰上請求は、納期限の利益の剥奪及びその要件を法定することによって国税債権の保全を図り国税の徴収を確保するための措置である。 国税通則法38条は、同法制定前の国税徴収法上のいわゆる繰上徴収の制度(43条)を引き継いだものである。この制度は次のようなものであった(志場ほか共編・前掲書503頁。下線筆者)。 繰上徴収の制度については、「未確定の国税について、法定申告期限前に繰り上げて課税するいわゆる繰上賦課ができるかどうか、またできるとすれば、どの範囲でできるのか、というような点が、必ずしも明らかでなく、講学上においてのみならず、実務の上でも、多くの問題を惹起せしめていたのである」(中川一郎=清永敬次編『コンメンタール国税通則法』(税法研究所・加除式[1989年追録第5号加除式])F204/1-F205頁[中川一郎/吉良実執筆])が、国税通則法の制定により、納税義務の「成立」と「確定」とが明確に区別されたこと(15条1項。第10回参照)に伴い、「租税債権の成立した租税については繰上徴収ができるとすることが適当である」とされ、かつ、「『繰上徴収』という語は、その内容からみて適切ではないので、この際『繰上請求』とすることが望ましい」とされた(税制調査会『国税通則法の制定に関する答申の説明(答申別冊)』(昭和36年7月)60頁。下線筆者)。 繰上請求は、一定の事由に該当する場合において「納付すべき税額の確定した国税(・・・・・・)でその納期限までに完納されないと認められるものがあるとき」、税務署長がその納期限を繰り上げて納付を請求することができるようにする措置である(税通38条1項)。確かに、繰上請求に係る期限までに任意に納付がされないときは、徴収職員は督促を要しないで直ちに滞納処分を開始し滞納者の財産を差し押さえなければならないこととされているが(税徴47条1項2号括弧書)、しかし、繰上請求それ自体は、納税義務の確定した国税に係る本来の納期限に代えて別の納期限を設定する処分である以上、納税の請求の枠内に位置づけることができる「一種の請求行為」(志場ほか共編・前掲書508頁)である。 これに対して、繰上保全差押えは、繰上請求ができる一定の事由に該当する場合(税通38条1項各号)において、納税義務の成立した国税等で「その確定後においては当該国税の徴収を確保することができないと認められるものがあるとき」、税務署長が繰上保全差押決定をすることができるようにする措置である(同条3項)。繰上保全差押決定は、「その国税の法定申告期限(・・・・・・)前に、その確定すると見込まれる国税の金額のうちその徴収を確保するため、あらかじめ、滞納処分を執行することを要すると認める金額を決定すること」(税通38条3項柱書)であることから、繰上保全差押えは、「保全のためにする直接的な処分権限それ自体」(志場ほか共編・前掲書508頁)を税務署長に授権する措置であり、その意味では、「滞納処分の一環として位置づけられるべきもの」(拙著『税法基本講義〔第7版〕』(弘文堂・2021年)【154】)といえよう。 そうすると、繰上保全差押えは、繰上請求と同じ条文で規定するのが(税制調査会・前掲答申別冊60頁の言葉を借りると)「その内容からみて適切でない」と考えられ、むしろ、国税通則法の制定前の国税徴収法上の繰上賦課と同じ性格の措置(これより対象国税の範囲を拡大した点では、徴収法的性格がより強い措置)とみて、国税通則法の制定後も「繰上徴収」の名称のまま国税徴収法で規定することにした方が妥当であったように思われる。もっとも、これを保全差押え(税徴159条)と相前後して規定するのであれば、繰上保全差押えという名称の方がよいかもしれない。保全差押えは、法定申告期限後にされる点で繰上保全差押えとは異なるが、「未確定の国税の保全措置」(志場ほか共編・前掲書508頁)という点では基本的には同様の措置とみることができるからである。 なお、国税通則法39条は、国税通則法制定前の国税徴収法で繰上徴収(43条)の次の条文(44条)で定められていた規定であるが、現行国税徴収法11条(強制換価の場合の消費税等の優先)と一体となって初めて消費税等の徴収を確保することができるのであるから、やはり国税徴収法で規定することにした方が妥当であったように思われる。 以上のようにみてくると、次の見解(中川=清永編・前掲書F54-F55頁[吉良実執筆])も強ち不当とはいえないように思われる。 (了)

#No. 535(掲載号)
#谷口 勢津夫
2023/09/14

〔疑問点を紐解く〕インボイス制度Q&A 【第30回】「勘定科目別に確認するインボイス制度準備のチェックポイント」

〔疑問点を紐解く〕 インボイス制度Q&A 【第30回】 「勘定科目別に確認するインボイス制度準備のチェックポイント」   税理士 石川 幸恵   【Q】 インボイス制度開始まで1ヶ月を切りました。準備に漏れがないか確認したいのですが、どうすればよいでしょうか。 〔ポイント〕 一般的なB to Bの事業を例に、インボイス制度への準備が必要な事項を勘定科目ごとにチェックしてみましょう。 *  *  * 【A】 (1) 売上 ① 売上 ② 売上値引き   (2) 売上原価 ① 仕入れ、外注費 ② 棚卸資産   (3) 販売費及び一般管理費 ① 経費立替、精算 ② 記帳 ③ 地代家賃など継続的な契約、サブスクリプション支払い   (4) 資産の取得 *  *  * 以上、事業内容を問わず共通して必要と考えられる準備のチェックポイントを列挙しました。このほか、自社の事業内容に応じた準備が必要です。   (了)

#No. 535(掲載号)
#石川 幸恵
2023/09/14

〔徹底解説〕名古屋国税不服審判所令和4年3月25日裁決~取引相場のない株式の評価に対し総則6項の適用が争われた事案~

〔徹底解説〕 名古屋国税不服審判所令和4年3月25日裁決 ~取引相場のない株式の評価に対し総則6項の適用が争われた事案~    公認会計士・税理士 佐藤 信祐   1 事案の概要 本事案は、納税者(請求人)が、株式移転により設立された法人の株式を財産評価基本通達に定める方法により評価したところ、原処分庁が、当該株式の価額は、当該財産評価基本通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められるとして、国税庁長官の指示を受けて評価した価額により相続税の更正処分等をしたのに対し、納税者が、原処分の全部の取消しを求めた事案である。本事案は、最判令和4年4月19日判タ1499号65頁が公表されてから最初の裁決例であり、かつ、土地ではなく、取引相場のない株式の評価についての裁決例であることから、実務上も注目度が高いように思われる。 本事案では、被相続人が、株式移転の約3ヶ月後に当該株式約24百万株を1株当たり67円、総額1,608百万円で関係会社に譲渡した。その翌年、被相続人は、7,300百万円を借り入れ、当該株式移転により設立された法人が自己株式として保有していた約95百万株を、1株当たり76円、総額7,279百万円で取得した。 上記の結果、相続税の評価において、当該法人が保有する子会社株式に対して類似業種比準方式を適用したところ、著しく低い評価額(※1)となったため、特別の事情があると判断されたものである。 (※1) 裁決文では黒塗りされているが、裁決文全体を閲覧する限り、1株当たり18円に近い金額であると推定される。 なお、67円又は76円という評価額で売買されたのは、法人税又は所得税の問題が生じないように時価純資産価額で売買したことが原因である。また、株式の異動については、遺留分対策のためになされたという納税者側の主張もある。そうなると、そもそも法人税基本通達若しくは所得税基本通達による評価額と財産評価基本通達による評価額に乖離がなければ、このような問題は生じなかったといっても過言ではない。財産評価基本通達では、大会社に該当すれば類似業種比準方式による評価が認められているのに対し(財基通179)、法人税基本通達若しくは所得税基本通達による評価額では、原則として、時価純資産価額又は小会社による評価額を準用した価額となることから(法基通4-1-5(4)、4-1-6、所基通23~35共-9(4)ニ、59-6)、そもそも両者の評価額には乖離がある。 すなわち、現預金や時価純資産価額が反映されないことに特別の事情があるというのであれば、そもそも財産評価基本通達における取引相場のない株式の評価において時価純資産価額が反映される仕組みを導入すべきであり、例えば、会社規模を問わずに全ての会社に対して、類似業種比準価額と時価純資産価額を1対1で折衷するといった評価方法を財産評価基本通達が導入していれば(※2)、法人税基本通達若しくは所得税基本通達による評価額との乖離が生じなかったといえるため、そもそも通達の改正により対応すべき事案であったといえる。 (※2) 財産評価基本通達の改正を提言した論文(加藤浩「今後の取引相場のない株式の評価のあり方」税大論叢96号281-407頁(令和元年))に対して、短期的な改正として、類似業種比準価額と時価純資産価額を1対1で折衷することにより対応すべきとしたものとして、佐藤信祐『改訂版 会社法・租税法からアプローチする非上場株式評価の実務』161-162頁(日本法令、2021年)参照。   2 国税不服審判所の判断 (1) 財産評価基本通達に定める評価方法によらないことが相当と認められる特別の事情があるかどうか そのような背景がありながらも、国税不服審判所は、「類似業種比準方式を大会社に適用するのが一般に合理的であるのは、上記・・・のとおり、大会社の株式が、必ずしも常に会社の総資産価値の割合相当額で取引されるわけではないからである。しかし、本件で問題になるのは、本件2銘柄株式自体を取引した場合の価額ではなく、本件2銘柄株式を財産として所有する本件会社の純資産価額である。そして、上記・・・のとおり、本件会社が本件2銘柄株式を100%保有し、割合的持分を超えて会社全体を財産として保有していたことからすると、本件株式について、不特定多数の当事者間で自由な取引が行われる場合に、本件2銘柄株式についても純資産の価値を反映させた価額を基に取引が成立することは、極めて自然で合理的なことというべきである。そうすると、本件相続開始日において、上記のような取引が行われた場合には、本件2銘柄株式を類似業種比準方式により評価した1株当たり■■より相当高い水準の価額が成立するのが通常と推認するのが自然で合理的であって、逆に1株当たり■■という水準の価額が通常成立すると認めることは困難である〔かい離が全くないとの請求人の主張が採用できないことは、下記・・・のとおりである。〕。」と判示した。しかし、本件2銘柄株式自体を取引した場合の価額を問題にせず、かつ、割合的持分を超えて株式を保有していたことを問題にされてしまうと、大会社に分類される株式のかなりの比率を保有していた全ての事案に対して、総則6項が適用されるリスクがあるということになってしまう。 もちろん、国税不服審判所は、大会社に分類される株式の全部を保有していたことだけを問題視しているのではなく、相続が近い将来発生することを予想して、借入れをしてまで株式を異動させ、その結果、相続税評価額が著しく下がったということを問題視しているのである。そのため、国税不服審判所は、「本件は、評価通達の評価方法を画一的に適用するという形式的な平等を貫くことによって、富の再分配機能を通じて経済的平等を実現するという相続税の目的に反し、かえって、相続発生を見越して本件借入れ及び本件取得に相当するような行為を行わなかった納税者との間での実質的な租税負担の公平を著しく害することが明らかであるといえるから、他の合理的な評価方法により、本件相続株式の適正な時価を評価すべき特別の事情があると認められる。」と判示している。 ただし、そもそもの問題は、大会社に分類される株式のかなりの比率を保有している場合には、純資産価値を反映させた価額を基に取引が成立することが、極めて自然で合理的なことであると判示されているにもかかわらず、大会社に分類される株式のかなりの比率を保有している場合であっても、相続税評価額に純資産価額が反映されないような通達になっているという点である。すなわち、本事案において、納税者が勝訴するのか、敗訴するのかという点においては、借入れをして株式を購入したということが重要な問題なのかもしれないが、課税の公平を図るという立法論の観点では、そのようなことを問題視すべきではない。法人税基本通達若しくは所得税基本通達による評価額と財産評価基本通達による評価額に乖離があったことで、上記のような相続税評価額の引下げが起きてしまったことを考えると、そもそも本事案のような問題は通達改正により対応すべきであったといえる。 (2) DCF法に基づく評価額の問題 さらに本事案で問題視すべきは、DCF法、類似会社比準法及び修正簿価純資産法を折衷することで評価がなされているという点である。他の納税者が類似業種比準方式、純資産価額方式又はこれらの折衷方式で評価したうえで相続税額又は贈与税額を算定していることを考えると、評価方法の公平性の観点から問題視されるべきであろう。 しかし、それ以上に問題とされるべきは、原処分庁が外部専門家に依頼してなされた評価に問題がありながらも、国税不服審判所がその評価方法を容認しているという点である。この点については、東京地裁において是正されると思われるが、以下では、裁決書からわかる範囲内で解説を行うものとする。 まず、非流動性ディスカウントが20%とされているが、納税者は30%~40%であると反論している。確かに原処分庁及び国税不服審判所のいうように、非流動性ディスカウントを20%にすることを否定する強い根拠はない。しかしながら、他の納税者との公平性の観点からは、著しく不利な評価にすべきでもない。そして、類似業種比準方式において0.7~0.5を乗じていることからも、30%~50%を非流動性ディスカウントとすることに公平性が認められる。この点については、「請求人の指摘する『しんしゃく率』とは、評価通達180に定める類似業種比準方式により評価額を算出する際、1株当たりの配当金額、利益金額及び純資産価額という3要素で比準した価額に乗じられる率(大会社は0.7、中会社は0.6、小会社は0.5)であるが、これは、上記3要素以外に計数化が困難な株価構成要素があることや、評価会社の規模が小さくなるに従って上場会社との類似性が希薄となることなどから、評価の安全性のため用いられるものであり、非流動性ディスカウントの割合を30%ないし40%とする根拠となるものではない。また、本件ガイドラインにおいても、合意された減価の水準がないとされる中で、非流動性ディスカウントを30%ないし40%とする評価実務が成立しているとも認められない。」と判示されている。しかしながら、本事案において、非流動性ディスカウントを40%とするのは難しかったのかもしれないが、30%とする余地はあったように思われ、国税不服審判所の判断は、特定の納税者に対して不利な取扱いをすることを容認しかねないものとなっている(※3)。 (※3) 国税不服審判所の判断を支持するのであれば、株主資本コストの算定においてサイズリスクプレミアム(3.8%)が考慮されており、非流動性ディスカウントと合算すると、特定の納税者に対して極端に不利な取扱いをしているわけではないという主張も考えられる。 さらに、原処分庁側の鑑定人は現金預金の全額を非事業資産としたのに対し、納税者側の鑑定人は14,513百万円を運転資金等事業用資産としている。このうち、10,000百万円については、リスク対策のための資金であり、ここまで事業用資産に含めるのは原処分庁及び国税不服審判所の納得が得られるはずがない。残りの4,513百万円についても、その全額が認められるとは思えないが、それでも相当程度は事業用資産とすべきだったと思われる。少なくとも、原処分庁が主張するように「適切に算定することが困難」であるとか、国税不服審判所が判示したように、「客観的に区分できない現預金を非事業資産として扱うことは、やむを得ないことであり、客観性・合理性を欠くとはいえない」という理由で、特定の納税者に不利な取扱いをすべきではない。この点についても、東京地裁で是正されることが期待される。 さらに、細かな評価のところも、原処分庁側も納税者側も鑑定人に依頼したうえで争っており、租税法の裁決としては極めて珍しいものになっている。租税法の裁判においてDCF法による具体的な評価方法が争われるのは稀であるが、会社法における非上場株式の評価で争われることは、それほど珍しいことではない。しかしながら、それぞれの裁判所では、評価方法の大枠について理解はしているようであるが、ディスカウント率やWACCといった細かい内容に踏み込んではいないようである。その場合には、裁判所が依頼した鑑定人による評価が行われ、かつ、裁判所がそれを追認するというやり方になることが多いように思われる。 もちろん、民間における非上場株式の評価についての争いであれば、そういったやり方でも構わないと思われるが、公平性、客観性が強く問われる租税法において、そのようなやり方を採用することは望ましいことではない。本事案では、財産評価基本通達に規定されていないDCF法と類似会社比準法を持ち出していながら、評価方法の細部については、納税者の主張に一理あるものが見受けられるという点で(※4)、公平性、客観性の観点から非常に問題があったといえる。 (※4) もちろん、国税不服審判所が指摘するように、納税者の主張には、評価額を引き下げるために、客観性、合理性を欠いてしまったものが見受けられる。だからといって、その主張の全てで客観性、合理性が欠けているというわけでもないことから、東京地裁では、より合理性のある評価がなされることが期待される。   3 むすび このように、そもそも財産評価基本通達に定める評価方法以外の評価方法により相続税評価額を計算すべき事案だったのかという問題もあるが、具体的な評価方法についても納税者との間で争われており、かつ、原処分庁側の鑑定にも瑕疵が見受けられることから、公平性、客観性の観点から問題があったように思われる。 この点については、本来であれば財産評価基本通達の改正により対応すべきである。そして、類似業種比準方式を採用してしまうと、現金預金や純資産価額が十分に反映されない評価額になるというのであれば、公平性の観点からは、すべての取引相場のない株式に対して、純資産価額方式又は折衷方式を採用すべきであったといえる。 いずれにしても、本事案については、東京地裁で争われているということなので、東京地裁において、さらに深い議論がなされることが期待される。 (了) ↓お勧め連載記事↓

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#佐藤 信祐
2023/09/14

Q&Aでわかる〈判断に迷いやすい〉非上場株式の評価 【第30回】「〔第4表〕持株会社が複数の事業を行う場合の業種区分の判定」

Q&Aでわかる 〈判断に迷いやすい〉非上場株式の評価 【第30回】 「〔第4表〕持株会社が複数の事業を行う場合の業種区分の判定」   税理士 柴田 健次   Q 持株会社であるA社の直前期末以前1年間の取引金額の内訳は下記の通りとなりますが、この場合における類似業種比準価額の計算で使用する業種目は取引金額の割合が50%を超える「不動産賃貸業」の業種で考えればいいのでしょうか。 【A社の直前期末以前1年間の取引金額の内訳】 (※) 不動産賃貸収入は、貸事務所、賃貸マンション、駐車場収入がありますが、取引金額のうち、150,000千円については、子会社からの収入に基づくものとなります。 A A社の業種目は、「その他の産業」に該当することになります。 類似業種比準価額の計算で使用する業種目の判定は、本連載【第17回】の類似業種比準価額の計算で使用する業種目の判定手順をご確認下さい。   ① 直前期末以前1年間の取引金額を日本標準産業分類に基づき区分 直前期末以前1年間の取引金額を「日本標準産業分類(平成25年10月・第13回改定)」に基づき区分する必要があります。この場合における取引金額とは、直前期末以前1年間における評価会社の目的とする事業に係る収入金額(金融業・証券業については収入利息及び収入手数料)をいいます(取引相場のない株式(出資)の評価明細書の記載方法等の第1表の1)。したがって、損益計算書において営業外収益に表示されていたとしても評価会社の目的とする事業に係る収入金額であれば、取引金額に含める必要があります。 日本標準産業分類に基づき、取引金額を区分すると下記の通りとなります。 (1) 不動産賃貸収入の日本標準産業分類の区分 A社の不動産賃貸収入については、「小分類番号691」、「692」及び「693」に該当し、主に下記の通り記載がされています。 (2) 子会社からの配当収入等の日本標準産業分類の区分 子会社からの配当収入等は、純粋持株会社は「細分類番号7282」に該当し、下記の通り記載がされています。 7282 純粋持株会社 日本標準産業分類上は、子会社からの収益を得ることは事業活動とはみなされず、子会社の事業活動を支配する業として考えられていますので、子会社からの配当収入、経営指導料収入、不動産賃貸収入は、いずれも純粋持株会社の業として取り扱われることになります。 もっとも、本問の場合にはA社は、子会社以外からの不動産賃貸収入もあり純粋持株会社には該当しないため、A社の不動産賃貸収入は、純粋持株会社の業ではないとする意見もあるかと思います。ただし、業種区分は、取引を細分化した上で日本標準産業分類のどの区分に該当するかを検討する必要があり、持株会社については、子会社と子会社以外の収入に区分して考える必要があります。そして、子会社からの配当金収入、経営指導料、不動産賃貸料を1つの取引としてグルーピングした場合には、その取引は純粋持株会社としての業として取り扱われることが相当かと考えられます。 実務上は、売上のグルーピングの仕方が難しいことも少なくないですが、持株会社の場合には、あくまでも会社を支配している業がありますので、子会社からの収入をグルーピングして考える必要があります。 したがって、日本標準産業分類に基づき区分をすると下記の通りとなります。   ② 対比表を基に業種目を確認 「日本標準産業分類の分類項目と類似業種比準価額計算上の業種目との対比表(平成29年分)」の区分に当てはめると下記の通りとなります。 「不動産賃貸業(691)」、「貸家業・貸間業(692)」及び「駐車場業(693)」は、「不動産賃貸業・管理業(業種目番号94)」に該当します。 純粋持株会社は、「専門サービス業(純粋持株会社を除く)」と記載されており、純粋持株会社を除くとされていますので、「専門サービス業(業種目番号97)」には該当しないことになります。他の業種目において純粋持株会社に該当する記載がありませんので、分類不能となり、「その他の産業(業種目番号113)」に該当することになります。 【日本標準産業分類の分類項目と類似業種比準価額計算上の業種目との対比表(平成29年分)(一部抜粋)】 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 ※赤色の下線は筆者による。   ③ A社の業種目 業種目別の取引金額の割合が50%を超える業種目がある場合には、その50%を超える業種目が評価会社の業種目となりますので、本問の場合には、「その他の産業(業種目番号113)」がA社の業種目となります(評価通達181-2)。   ☆実務上のポイント☆ 持株会社の場合には、子会社からの収入とそれ以外の収入に区分して、日本標準産業分類の区分を行う必要があります。 (了)

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