2023年8月24日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル No.532を公開! - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。
日本の企業税制 【第118回】 「リース会計基準の見直しと税制上の取扱い」 一般社団法人日本経済団体連合会 経済基盤本部長 小畑 良晴 企業会計基準委員会(ASBJ)が、本年5月2日に、企業会計基準公開草案第73号「リースに関する会計基準(案)」等を公表した(コメント募集期間は8月4日まで)。 この基準案等に対しては、多くの団体・個人から意見が寄せられている。 今回の基準の見直しは、平成28年に、IFRS(IFRS第16号「リース」)及び米国会計基準(Topic842「リース」)が公表され、借手の会計処理に関して、主に費用配分の方法が異なるものの、両基準とも、オペレーティング・リースも含むすべてのリースについて原資産の引渡しによりリースの借手に支配が移転した使用権部分に係る資産(使用権資産)と当該移転に伴う負債(リース負債)を計上する使用権モデルにより、資産及び負債を計上することとされ、わが国の会計基準の国際的整合性が問われる状況が生じていたことが背景にある。ASBJでは、平成31年から4年の議論を重ね、今回の提案に至った。 〇リース取引とは リース取引とは、特定の物件の所有者(貸手)が、当該物件の借手に対し、合意された期間(リース期間)にわたりこれを使用収益する権利を与え、借手は、合意されたリース料を貸手に支払う取引である。リース取引は、ファイナンス・リース取引とオペレーティング・リース取引とに大別される。 このうちファイナンス・リース取引は、リース契約に基づくリース期間の中途において当該契約を解除することができないリース取引又はこれに準ずるリース取引(中途解約不能のリース取引)で、かつ、借手が、リース物件からもたらされる経済的利益を実質的に享受することができ、かつ、当該リース物件の使用に伴って生じるコストを実質的に負担するリース取引(フルペイアウトのリース取引)であり、それ以外のリース取引がオペレーティング・リース取引である。 さらに、ファイナンス・リース取引は、「所有権移転ファイナンス・リース取引」(リース契約上の諸条件に照らしてリース物件の所有権が借手に移転すると認められるもの)と、「所有権移転外ファイナンス・リース取引」(所有権移転ファイナンス・リース取引以外のファイナンス・リース取引)とに分類されている。 〇現行の会計処理 現行のリース会計基準は、ASBJが平成19年3月30日に公表した企業会計基準第13号「リース取引に関する会計基準」及び企業会計基準適用指針第16号「リース取引に関する会計基準の適用指針」である。 オペレーティング・リース取引については、通常の賃貸借取引に係る方法に準じた会計処理を行う。 一方、ファイナンス・リース取引については、リース取引開始日に、リース物件とこれに係る債務を、リース資産及びリース債務として計上し、その計上額は、原則として、リース契約締結時に合意されたリース料総額からこれに含まれている利息相当額の合理的な見積額を控除する方法による。 利息相当額の総額は、リース期間にわたり利息法により配分するが、所有権移転外リース取引については、例外処理として、①リース料総額から利息相当額の合理的な見積額を控除しない方法、②利息相当額の総額をリース期間にわたり定額法で配分する方法が認められている。 リース資産の減価償却費については、所有権移転ファイナンス・リース取引においては、自己所有の固定資産に適用する減価償却方法と同一の方法によりリース資産の減価償却費を算定し、この場合の耐用年数は、経済的使用可能予測期間である一方、所有権移転外ファイナンス・リース取引においては、原則として、リース期間を耐用年数とし、残存価額をゼロとして算定し、償却方法については自己所有の固定資産に適用する減価償却方法と同一である必要はなく、企業の実態に応じたものを選択することとされている。 〇新会計基準案の概要 今回の会計基準案等では、連結財務諸表のみならず個別財務諸表も含め、借手のリースの費用配分の方法について、IFRS第16号と同様に、リースがファイナンス・リースであるかオペレーティング・リースであるかにかかわらず、すべてのリースを金融の提供と捉え使用権資産に係る減価償却費及びリース負債に係る利息相当額を計上する単一の会計処理モデルによることを提案している。 借手が使用権資産及びリース負債の計上額を算定するにあたっては、使用権資産について、リース開始日に算定されたリース負債の計上額にリース開始日までに支払った借手のリース料及び付随費用を加算して算定し、リース負債の計上額を算定するにあたっては、原則として、リース開始日において未払である借手のリース料からこれに含まれている利息相当額の合理的な見積額を控除し、現在価値により算定することを提案している。 リース開始日における借手のリース料とリース負債の計上額との差額は、利息相当額として取り扱い、当該利息相当額を借手のリース期間中の各期に配分する方法は利息法によるが、使用権資産総額に重要性が乏しいと認められる場合は、現行の例外処理を踏襲することを提案している。 借手の使用権資産の償却については、原資産の所有権が借手に移転すると認められるリースに係る使用権資産の減価償却費は、原資産を自ら所有していたと仮定した場合に適用する減価償却方法と同一の方法により算定する。この場合の耐用年数は、経済的使用可能予測期間とし、残存価額は合理的な見積額とする。一方、それ以外のリースに係る使用権資産の減価償却費は、定額法等の減価償却方法の中から企業の実態に応じたものを選択適用した方法により算定し、原則として、借手のリース期間を耐用年数とし、残存価額をゼロとする。 〇法人税の取扱い 税制においては、平成19年の会計基準の見直しを契機として、所有権移転外ファイナンス・リース取引は経済的実態が売買取引と同様であるという認識に相違はないことから、平成19年度税制改正で、所有権移転外ファイナンス・リース取引についても売買があったものとされる取引(「リース取引」)に追加されるとともに、根拠規定が法律事項とされた(法法64の2①)。税法上の「リース取引」は中途解約不能かつフルペイアウトの要件を満たすファイナンス・リース取引のみが該当する(法法64の2③)。 平成19年度税制改正以前にあっては、リース資産の耐用年数とリース期間との乖離などによる、借手又は貸手における課税上の弊害を防止する観点から「リース取引」の取扱いが整備されてきたところ、平成19年度税制改正において、「リース取引」の経済的実態に応じて取り扱う観点から、売買取引又は金銭貸借取引として取り扱うこととされた。 現行制度では、借手は、所有権移転外リース取引のリース資産について、「リース期間定額法」により減価償却を行う(法令48の2①六)。リース期間定額法とは、リース資産の取得価額をそのリース資産のリース期間の月数で除して計算した金額に当該事業年度におけるリース期間の月数を乗じて計算した金額を各事業年度の償却限度額として償却する方法をいう。償却費として損金経理をした金額は、償却額の計算に関する明細書を確定申告書に添付する必要がある。 一方、所有権移転リース取引のリース資産については、「リース期間定額法」の適用が認められず、自己所有の資産に適用する減価償却方法と同一の方法により、法定耐用年数にわたり減価償却を行う。リース資産の取得価額は、原則的取扱いでは、利息相当額も含め計算するが、特例的取扱いでは、利息相当額を控除して各期に配分する①利息法又は②定額法の2つの方法が認められている(法基通7-6の2-9(注)3) なお、中小企業は、リース会計基準を適用しないで、「中小企業の会計に関する指針」又は「中小企業の会計に関する基本要領」を適用して、所有権移転外ファイナンス・リースを賃貸借処理することができるが、会計処理にかかわらず、税務上は売買があったものとして取り扱われ、借手がリース料として損金経理をした金額は、償却費として損金経理をした金額に含まれるものとされ(法令131の2③)、なお、償却費として損金経理をした金額に含まれるものとされる金額については、確定申告書における明細書添付義務が課されない(法令63①)。 今回の会計基準の見直しを契機として、オペレーティング・リース取引についても税制上「リース取引」として位置付けるかどうかは、経済的実態が売買取引と同様といえるかどうか次第である。 〇消費税の取扱い 法人税の取扱いのみならず、消費税の取扱いにも留意が必要である。 「リース取引」の実質判定は、法人税の課税所得の計算における取扱いの例によることとされており(消基通5-1-9)、売買又は金銭貸借があったものとして取り扱うこととされている。 売買とされる「リース取引」は、リース資産の引渡しの時に資産の譲渡があったものとされ(消基通5-1-9(1))、その取扱いは①原則的取扱いと②例外的取扱いに分けられる。 また、「リース取引」の利息相当額(消費税制では利子保険部分)については、法人税とは異なり、利子保険部分が契約に明示されている場合には、その部位は非課税売上又は非課税仕入れとし、明示されていない場合には、その部分は課税売上又は課税仕入れとして取り扱うこととされている(消令10③十五)。 なお、所有権移転外ファイナンス・リース取引の借手については、「賃貸借処理をしている場合で、そのリース料について支払うべき日の属する課税期間における課税仕入れ等として消費税の申告をしているときは、これによって差し支えありません」(※)とされている。 (※) 国税庁質疑応答事例「所有権移転外ファイナンス・リース取引について賃借人が賃貸借処理した場合の取扱い」(平成20年11月21日) (了)
暗号資産(トークン)・NFTをめぐる税務 【第24回】 東洋大学法学部准教授 泉 絢也 (4) 国会における議論②:資産ではあるが、譲渡所得の基因となる資産ではない? 暗号資産は譲渡所得の基因となる資産に該当しないという資産性否定説の立場を国税庁が採用していることは、平成31年3月20日の参議院財政金融委員会におけるやりとりによって、ようやく明らかになる。 同委員会において、藤巻健史議員は、所得税法の建付け上、暗号資産を雑所得として国税当局が主張している限り、譲渡所得や一時所得該当性を否定するロジックを国税当局自身が説明しなければならないことを指摘する。 その上で、国税当局の主張は「要は、暗号資産というのは支払手段であり、資産ではない、だから譲渡所得ではないよと、こういう主張かと思いますが、いかがでしょうか」と確認している。 これに対して、並木稔国税庁次長は、要旨次のとおり答弁している。 上記答弁では、暗号資産が「資産」であることを認めた上で、「譲渡所得の基因となる資産」には該当しないと明言している点が注目される。 上記答弁を受けた、藤巻議員は、「暗号資産というのは支払手段でもあるというふうにおっしゃっていましたけれども、支払手段というのはキャピタルゲイン、値上がり益とか値下がり損というのは生じるんでしょうか。」と質問している。 これに対して、星野次彦財務省主税局長は、要旨次のとおり答弁している。 上記のようなやりとりを通じて、現行法令を踏まえれば、暗号資産については、外貨と同様に本邦通貨との相対的な関係の中で換算上のレートが変動することはあっても、それ自体が価値の尺度とされており、資産の価値の増加益を観念することは困難である、というところまで譲渡所得該当性を否定する国税庁の見解の根拠が明らかにされたことになる。 国税庁のFAQ「2-2 暗号資産取引の所得区分」は、暗号資産取引により生じた利益は所得税の課税対象になり、原則として雑所得に区分されるとしており、暗に譲渡所得に区分されることを否定しているといえる。 雑所得とは、「利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得及び一時所得のいずれにも該当しない所得」であるから(所法35①)、国税庁は暗号資産取引により生じた利益が雑所得以外の9種類の所得に該当しない理由を説明する必要があったところ、暗号資産の譲渡による所得は譲渡所得ではなく、原則として雑所得となり、譲渡所得には該当しないという国税庁の見解の根拠が、国会でのやりとりを通じて、より具体化されてきたのである。 また、藤巻議員は、平成31年度税制改正案(平成31年3月27日に成立)では所得税法上の棚卸資産から(資金決済法上の)「仮想通貨」を除外する規定が織り込まれていること(所法2①十六)を踏まえて、質問を続けている。 すなわち、法令上、暗号資産は棚卸資産ではないと明言しているということは資産であることを認めている証左であると解されることからすると、国税当局は、譲渡所得の基因となる資産であるかどうかは別として、暗号資産が資産であることは確実に認めたと解してよいか、という趣旨の質問を行っている。 これに対して、星野氏は、要旨次のとおり答弁している。 上記答弁では、財務省及び国税庁は、暗号資産は資産ではあることを認めるが譲渡所得の基因となる資産には該当しないと解しており、暗号資産が資産であることは平成31年度の改正法からしても明らかであるとしている。 この部分だけを見る限りでは、①暗号資産の譲渡による所得が譲渡所得に該当する余地を認めるものであるか、②なぜ暗号資産の譲渡による所得が原則として雑所得となるのかという本連載第22回で示した2つの疑問に関して、国税庁は資産性否定説を採用していることが明らかになり、同説をとる帰結として譲渡所得に該当する余地を否定する立場であるという本連載第23回の推察が正しかったことが判明した。 これによって、暗号資産の譲渡による所得の譲渡所得該当性を否定する国税庁の見解の妥当性に関して、議論すべき点が絞られる。すなわち、重点的に検討すべきは、暗号資産が譲渡所得の基因となる資産に該当するか否かという点であることが明らかになったのである。 もっとも、上記各答弁からすると、暗号資産の譲渡による所得は、一般論として、譲渡所得に該当しないと述べており、場合によっては譲渡所得に該当することもありうることを示唆しているようにも読める。資産性否定説を採用する場合の論理的帰結として譲渡所得に該当する余地はなくなるはずであるが(本連載第22回)、この点に関する国税庁の立場は明らかでない。 実際、政府は、令和4年4月15日付けで、暗号資産モナコインの譲渡等に係る税務上の取扱いに関する質問主意書に対する答弁書において、「支払手段としての性質や資産の価値の増加益が生ずる性質を複合的に有する資産」が譲渡所得の基因となる資産に該当するか否かについて、「個別具体的な資産の性質により判断される」と述べている。 支払手段としての性質を有する暗号資産の中には資産の価値の増加益を生ずる性質を複合的に有するものもあることを認めた上で、そのようなものが譲渡所得に該当する余地を認めているように見える。 このような見方が正しいとすると、政府(国税庁)は、無数に存在する暗号資産の中で、どれがそのような譲渡所得の基因となる暗号資産に該当すると考えているかという点に関心が寄せられる。 ただし、政府は、上記の回答に続いて、同月28日付けで、「現時点では、御指摘の『モナコイン』を含む暗号資産について、仮に、支払手段としての性質のほかに、資産の価値の増加益が生じる性質があるとしても、当該性質については、一般に独立した経済的価値が認められて取引の対象にされているとは考えていない」と回答しており、譲渡所得への扉は事実上、あるいは少なくとも現時点では、固く閉ざされているようにも見える。 複合的な性質を有する暗号資産について、「一般に独立した経済的価値が認められて取引の対象にされている」かどうかをどのように判断しているのか、どのように判断すべきであるのかという点については明らかではない。 その後、上記に引き続いて提出された同年5月11日付けの質問主意書においては、沖縄のサッカークラブであるFC琉球が発行する独自トークン(暗号資産)であるFCRコイン(FC Ryukyu Coin)を例に挙げて、トークンを保有することにより特典(例えば特別席で観戦する権利、すなわち優先的施設入場権など)を受けることができる性質を有するファントークンは、暗号資産に該当するものの、価値の増加益が生じる性質があり、当該性質について、独立した経済的価値が認められて取引の対象とされている可能性も否定できないという質問者の見解が示された。 このFCRコインは、支払手段のみならず、試合に招待される権利、ロゴや名前の掲載権を得ることができるようなトークンパートナーとしての権利、選手への投げ銭機能、サッカークラブ運営における投票決議への参加権利などが付与されている暗号資産又は付与される予定の暗号資産であるが、これに対して、政府は、同月20日付けで上記と同様の答弁を繰り返している。筆者には、国税庁の苦しい答弁が続いているように見える。 (了)
相続税の実務問答 【第86回】 「内縁の配偶者の生活費の負担」 税理士 梶野 研二 [答] 扶養義務者相互間において生活費又は教育費に充てるための贈与により取得した財産のうち、通常必要と認められるものについては、贈与税の課税価格には算入されません。すなわち、このような財産は贈与税の非課税財産とされているわけですが、内縁の配偶者は、扶養義務者ではありませんので、この非課税規定の適用はありません。 しかしながら、内縁の夫婦相互間においても、婚姻関係にある夫婦と同様に、日常生活の保持義務がありますので、あなたが甲から受けた経済的な利益についても、この生活保持義務の履行として行われたものであるならば、そもそも贈与税の課税対象となる贈与にはあたらず、したがって、その価額を相続税の課税価格に加算する必要はないと解する余地があります。 ● ● ● ● ● 説 明 ● ● ● ● ● 1 内縁関係にある夫婦間の相互扶助義務 内縁関係とは、社会的には夫婦共同生活体の実態を備えているものの婚姻の届出がされていないために法律上の夫婦とは認められない事実上の夫婦関係をいい、このような関係にある配偶者を内縁の配偶者といいます。 ところで、戸籍法第74条(婚姻届)に定める婚姻の届出がされている法律上の夫婦間においては、夫婦は同居し、互いに協力して扶助しなければならないと定められています(民法752)。 この扶助義務は、いわゆる生活保持義務であり、夫婦の一方(義務者)は、相手方に対して自分の生活と同質、同程度の生活を確保しなければならない義務であると解されています。なお、民法は、直系血族及び兄弟姉妹について互いに扶養する義務があると定めています。親が未成年の子に対して負う義務は、夫婦間の義務と同じく生活保持義務であると解されていますが、そのほかの直系血族及び兄弟姉妹間等の扶養義務は生活扶助義務、すなわち扶養者の生活に余裕がある場合に、その限度で困窮している要扶養者を扶助する義務であると解されています。 ところで、内縁関係の夫婦間においても、内縁関係を婚姻に準じた関係と捉え、婚姻に関する民法の諸規定のうち生活保持義務など夫婦としての共同生活に関係するものについては、内縁関係にも適用されると解されているところです(昭和33年4月11日最高裁判決、昭和43年12月10日東京地裁判決など)。 〇昭和33年4月11日最高裁第二小法廷判決(最高裁判所民事判例集12巻5号789頁) 〇昭和43年12月10日東京地裁判決(家庭裁判月報21巻6号88頁) 2 配偶者に対する生活保持義務の履行と贈与税の課税 相続税法第21条の3第1項第2号は、贈与税の非課税財産として、「扶養義務者相互間において生活費又は教育費に充てるためにした贈与により取得した財産のうち通常必要と認められるもの」を掲げています。この場合の「扶養義務者」とは、配偶者並びに民法第877条(扶養義務者)の規定による直系血族及び兄弟姉妹並びに家庭裁判所の審判を受けて扶養義務者となった三親等内の親族をいいます(相法1の2一、民法877①②)が、三親等内の親族で生計を一にする者については家庭裁判所の審判がない場合であってもこれに該当するものとして取り扱われています(相基通1の2-1)。税法における「配偶者」には、原則として、内縁の配偶者は含まれないものと解されています(【第85回】「居住用宅地を内縁の配偶者が遺贈により取得した場合の小規模宅地等の特例の適用」参照)。相続税法第1条の2第1号に規定する配偶者についても、内縁の配偶者は含まないと考えられており、このため内縁の夫婦間においては同法21条の3第1項第2号の非課税の規定は適用されないということになります(令和2年4月16日裁決(非公表))。 〇令和2年4月16日裁決(名裁(諸)令元-24)(非公表) しかしながら、上記1のとおり、内縁の夫婦間においても、法律上の夫婦間と同様に、生活保持義務が存するものと解されており、内縁の夫婦の一方が、他方に対してこの生活保持義務を履行する場合、その行為は贈与又は同法第9条に規定する「対価を支払わないで、又は著しく低い価額の対価で利益を受けた場合」には該当しないと考えることもできると考えます。このような考え方は、離婚に伴い夫婦の一方が他方に対して財産分与義務の履行として財産の移転を行った場合に、この財産の移転を贈与とは捉えない(相基通9-8本文)ことにも符合するものです。 3 ご質問の場合 あなたが亡くなられた内縁の夫甲さんから、生活費又は教育費に充てるために贈与により取得した財産(経済的利益)については、贈与税の非課税規定の適用はありません。しかしながら、あなたと甲さんとの関係において、生活保持義務の履行として受けた財産(経済的利益)があるとすれば、それは贈与により取得した財産ではないといえます。贈与により取得した財産(経済的利益)と生活保持義務の履行として受けた財産(経済的利益)の区別は必ずしも明確ではありませんが、甲さんの相続開始前3年以内に甲さんがあなたのために支払った金額のうち、生活保持義務の履行として行われたと認められる部分については、相続税の課税価格に加算する必要はないと思われます。 (了)
〈ポイント解説〉 役員報酬の税務 【第52回】 「事前確定届出給与の判定単位と届出書の記載誤り」 税理士 中尾 隼大 ○●○● 解 説 ●○●○ (1) 事前確定届出給与の判定単位 賞与支給の時期は夏季と冬季の2度に分けて支給することが日本の慣習として一般的であり、役員においてもこれを念頭に事前確定届出給与制度を活用するケースが多いといえる。 つまり、その役員の職務執行期間中に事前確定届出給与を2度支給することとなるが、事前確定届出給与の損金算入要件について、その判定単位が問題となる。換言すれば、仮に2度目の支給だけ届出書記載の通りに支給しなかった場合に、1度目の支給について事前確定届出給与の要件を満たしているといえるのかどうかという問題である。 この点、法人税法その他関連法規上において、その取扱いは明記されていない。しかし、国税庁が「複数回の支給がある場合には、原則として、その職務執行期間に係る当該事業年度及び翌事業年度における支給について、その全ての支給が定めどおりに行われたかどうかにより、事前確定届出給与に該当するかどうかを判定する」と見解を示しており(※1)、あくまで職務執行期間全体で判断するという立場を示している。 (※1) 国税庁「役員給与に関する質疑応答事例(平成18年12月)」問7。 (2) 事前確定届出給与の判定単位が争われた事例 ここで、このような点が争点となった事例として、東京地裁平成24年10月9日判決がある(※2)。以下にこの事例の概要を紹介したい。 (※2) 税務訴訟資料262号順号12060、TAINS:Z262-12060。本件は、納税者側が控訴しているが、高裁は地裁を支持し確定している。地裁判決の評釈として、拙稿「事前確定届出給与を届出どおり支給しなかった場合における判定単位」税務事例51巻(2019)7号97頁。 本件は、事前確定届出給与を届出書通りに支給したかどうかの判定において、特別の事情がない限り、職務執行期間の全期間にて判定する旨が示されたものであり、これは上記の国税庁の見解と同様である。しかし、国税庁は、事前確定届出給与を複数回支給する場合の判定単位について、事業年度をまたいで既に支給済みである先行事業年度がある場合において、当該支給した事前確定届出給与の損金算入が認められる余地もあり得るとも説明している(※3)。 (※3) 平成19年3月13日付課法2-3ほか1課共同「法人税基本通達等の一部改正について」(法令解釈通達)の趣旨説明。 納税者は、この見解を根拠に、国税庁の見解に矛盾がある等と主張したが、裁判所は、当該見解は納税者の事務負担を考慮して納税者に有利な取扱いを認めたことによるものであると示して退けた。 すなわち、納税者が主張した上記国税庁の見解は、12月と6月に役員賞与を支給する3月決算法人につき、6月支給分を確認するまでは当該確定申告期限内に12月支給分の損金算入が認められるかどうかの判断ができないという実務上の都合であると説くものがあることからも(※4)、事業年度をまたいだ場合に限り、1度目の支給だけで届出書通りの支給かどうかの判断が認められると解することが妥当であるといえる。 (※4) 例えば、12月と6月に役員賞与を支給する3月決算法人において、6月支給分が届出内容に準拠しているか否かの判定が求められた場合、確定申告期限内に12月支給分が事前確定届出給与に該当するか否かの判断ができないという実務上の都合を理由とする(植田卓「複数回支給される事前確定届出給与に係る損金不算入額」税研30巻4号(2014)139頁)。 さらに、その判定は、役員個々の職務執行期間にて判定を行うため、仮に役員の1人に対して異なる支給を行ったが、その他の役員は届出書通りの支給の場合、当該その他の役員に対する支給については損金算入が認められることとなる(※5)。 (※5) 国税庁HP質疑応答事例「『事前確定届出給与に関する届出書』を提出している法人が特定の役員に当該届出書の記載額と異なる支給をした場合の取扱い(事前確定届出給与)」 もっとも、本件の場合、事前確定届出給与に関する変更届出書の提出によって損金算入が認められた可能性も高いことから、支給額の変更を考える場合には業績悪化改定事由等に該当するかどうかについて検討すべきであることに変わりない。 (3) 事前確定届出給与に関する届出書の記載を間違えた場合 また、事前確定届出給与に関する届出書への記載を間違えてしまった場合、形式的には当該届出書に記載した支給額と実際に支給した額が異なることとなり、その相違は勘定科目内訳明細書の記載によって浮き彫りとなる。 このような場合、実際に支給し、本来は事前確定届出給与に関する届出書に記載すべきだった金額について損金算入が認められるか否かについて、その取扱いは明らかにされておらず、筆者が調査した限り裁判例も見当たらなかった。そもそも、上記(2)で触れた事例以外に、参考になるような事例はほとんどない。 この点、一般的な税務届出書において、その提出期限内に届出書の提出自体の判断誤りや、その内容に記載誤りがあることに気が付いた場合、実務上は当該届出書の提出を取り下げた上で(※6)、後者の場合には修正した届出書の再提出を求められたというケースも見聞するところである。 (※6) なお、いわゆる取下書に関しては法的な根拠はなく、実務家等により実務上の慣例として説明されるものが多く見られる。このような背景から取下書について公の言及はないと考えていたところ、消費税簡易課税制度選択届出書を例に財務省が言及したものがあったため、ここで触れておきたい。これによると、消費税簡易課税制度選択届出書は提出期限内の取下げが可能であることを示すとともに、取下書の様式について「取下書の書式は定められておりませんので、取下対象となる届出書が特定できるよう、提出⽇、届出書の様式名(表題)、提出⽅法(書⾯⼜は e-Tax)、届出者の⽒名・名称、納税地及び提出した届出書を取り下げる旨の記載をし、署名の上、所轄の税務署までご提出ください。」と示されている。財務省HP「インボイス制度の負担軽減措置のよくある質問とその回答(令和5年3月31日時点)」問7。 そして、事前確定届出給与に関する届出書については、確定した支給額等を記載することが求められている(法令69④、法規22の3②)。これらに鑑みると、確定した支給額の記載を誤ったことで、確定した支給額を記載したとはいえない事前確定届出給与に関する届出書を提出した後、それを取り下げずに提出期限を徒過した場合、その提出の有効性自体が問題となる可能性を完全に否定することはできないとも考えられる。仮に記載誤りがあるために届出書の提出が無効となった場合、法人税法施行令69条7項の宥恕規定の適用があるかどうか検討がなされるべき場面となるが、災害その他の事情ではなく、人為的要因による単なる記載誤りであるならば、宥恕規定の適用は見込めないだろう。 これに対して、記載誤りに気が付いた時点で直ちに修正すれば問題がないとする見解も存在する(※7)。これによれば、実務上の運用に鑑みて、当初の届出書に株主総会議事録等を添付していれば、単なる記載ミスにすぎない点を主張立証することができるとされている。また、株主総会議事録等を添付していない場合にも、気が付いた時点で直ちに所轄税務署に申し出て株主総会議事録等を添付して訂正することで問題ない旨が示唆されている。 (※7) 衛藤政憲「事前確定届出給与に関する届出書付表記載金額とその届出書に添付された株主総会議事録記載金額が相違していた場合の支給額等」国税速報6531号(2018)9頁。 このように、この論点に関しては公に明らかにされておらず、多様な考え方が可能である。いずれにしても、提出期間徒過後に記載誤りに気が付いた場合、所轄税務署に対して真摯に説明を行うべきであると思われるし、【第17回】等で触れているように、届出書の記載誤りに気が付いた後で、バックデートによる議事録等を準備することは論外であるといえる。 (了)
基礎から身につく組織再編税制 【第55回】 「適格株式分配を行った場合の申告調整」 太陽グラントソントン税理士法人 ディレクター 税理士 川瀬 裕太 今回は、適格株式分配を行った場合の申告調整について具体例を用いて解説します。 1 適格株式分配を行った場合の現物分配法人の処理 (1) 前提条件 (2) 会計処理 現物分配法人A社の会計処理は、下記のとおりです。 (3) 税務処理 現物分配法人A社の税務処理は、下記のとおりです。 ① 資産の譲渡 適格株式分配により現物分配法人の株主に完全子法人株式の移転を行った場合には、完全子法人株式を現物分配法人の株主に帳簿価額で譲渡したものとされ、譲渡損益は生じません(法法62の5③)。 現物分配法人A社は、A社の株主にB社株式を帳簿価額で譲渡したものとされ、譲渡損益は生じません。 ② 適格株式分配により減少する資本金等の額 現物分配法人の適格株式分配の直前の完全子法人株式の帳簿価額に相当する金額は、資本金等の額から減算されます(法令8①十六)。 現物分配法人A社において減少する資本金等の額は、適格株式分配の直前のB社株式(完全子法人株式)の帳簿価額に相当する金額である2,000となります。 ③ 適格株式分配により減少する利益積立金額 適格株式分配が行われた場合には、現物分配法人A社の利益積立金額は減少しません。 ④ 源泉徴収 適格株式分配が行われた場合には、利益積立金額は減少せず、みなし配当が認識されないため、現物分配法人A社において源泉徴収を行う必要はありません。 (4) 会計処理と税務処理の調整 会計処理と税務処理を比較すると、差異が生じているため、調整する必要があります。 調整仕訳は、次のとおりです。 この調整仕訳には損益項目が含まれないため、別表4での申告調整は行わず、別表5(1)のみで調整することとなります。 (5) 別表5(1)の処理 別表5(1)の処理については、次のとおりです。 (注) ※印は調整仕訳により生じたものであることを表示するために記入しています。 ◆ポイント◆ 現物分配法人A社において減少する利益積立金額が0、減少する資本金等の額が2,000となっているかを別表5(1)で確認することが重要です。 2 適格株式分配を行った場合の現物分配法人の株主の処理 (1) みなし配当 適格株式分配があった場合には、現物分配法人の株主であるC社においてみなし配当は計上されません。 (2) 譲渡損益 適格株式分配を行った場合には、現物分配法人の株主は、現物分配法人株式のうち、完全子法人株式に対応する部分の譲渡を行ったものとみなされます。 金銭等が交付されない(完全子法人株式のみ交付される)場合の譲渡損益の計算については、譲渡対価と譲渡原価が、いずれも完全子法人株式対応帳簿価額となり、譲渡損益は生じません(法法61の2⑧、法令119の8の2①)。 現物分配法人の株主であるC社は、適格株式分配によりB社株式のみの交付を受けているため、A社株式のうちB社株式に対応する部分の譲渡を行ったものとみなされますが、譲渡損益は生じません。 (3) A社株式の取得価額 完全子法人株式の取得価額は、完全子法人株式対応帳簿価額となります(法令119①八)。 現物分配法人の株主であるC社は適格株式分配によりB社株式のみを交付されているため、B社株式の取得価額は、完全子法人株式対応帳簿価額である40となります。 (4) 会計処理 現物分配法人の株主C社の会計処理は、次のとおりです。 (5) 税務処理 現物分配法人の株主C社の税務処理は、次のとおりです。 (6) 会計処理と税務処理の調整 会計処理と税務処理を比較すると、差異が生じているため、調整する必要があります。 調整仕訳は、次のとおりです。 会計上は、受取配当が収益に計上されているため、別表4にて所得を減算する処理が必要となります。 その他の調整仕訳については、別表4で申告調整が必要なものはなく、別表5(1)のみで調整することとなります。 (7) 別表4の処理 別表4の処理については、次のとおりです。 (8) 別表5(1)の処理 別表5(1)の処理については、次のとおりです。 (注) ※印は調整仕訳により生じたものであることを表示するために記入しています。 ◆ポイント◆ 現物分配法人の株主C社において減少する利益積立金額が0となっているかを別表5(1)で確認することが重要です。 (了)
〈一角塾〉 図解で読み解く国際租税判例 【第23回】 「住友銀行外税控除否認事件 -受益者条項からみたケース別否認類型の検討- (地判平13.5.18、高判平14.6.14、最判平17.12.19)(その2)」 ~法人税法69条ほか~ 税理士 畠山 和夫 5 S銀二事件のケース別の租税条約・外国法令に対する違反性 (1) 外税控除と租税条約(矢内一好「外国税額控除事案の最高裁判決」税務弘報54巻4号、158頁より引用、括弧内は筆者追記) (2) ケースⅠ(受益者条項付き租税条約適用:S銀行R事件) ① 条文 (ⅰ) OECDモデル租税条約 ※本田光宏編『租税条約関係法規集(平成7年版)』納税協会連合会(1995)より抜粋。 (ⅱ) OECDモデル租税条約コメンタリー ※川田剛・徳永匡子『2017 OECDモデル租税条約コメンタリー逐条解説(第4版)』税務研究会出版局(2018)より筆者要約。 (ⅲ) 日豪租税条約 ※本田光宏編『租税条約関係法規集(平成7年版)』納税協会連合会(1995)より抜粋。 ② 租税条約違反性の検討(木村弘之亮「住銀のトリーティショッピング事件」税務弘報50巻1号158頁以下を筆者要約) ③ 1977年OECDモデル租税条約4条の改定及び10条の受益者条項の導入(阿部雪子「租税条約上の受益者条項の意義とその適用範囲」国際取引法学会6号(2021)67頁以下を筆者要約) ④ 本件S銀行R事件への当てはめ S銀行R事件については、オーストラリア国内法の税率と租税条約の限度税率が10%と同じであるため、S銀行はいずれの税率を適用してK社からの利子源泉税を納付し、オーストラリア税務当局から源泉税納付証明書を取得したかは、本事件の判決文からは不明である。 もし、S銀行が、原則通り租税条約(限度税率10%)を適用し、オーストラリア税務当局から源泉税納付証明書を取得したならば、上記③のとおり受益者条項が源泉課税の濫用防止規定であることを踏まえると、S銀行は単なる利子の受領者にとどまり受益者ではないから、この行使は日豪租税条約8条に違反し、条約上の特典を濫用したことになる。 (3) ケースⅡ(受益者条項付き国内法適用:S銀行P事件) ① 条文:メキシコ国内所得税法(2021年(令和3年)時点)より筆者要約 (ⅰ) 152条:国外の金融機関以外の源泉税率 1.92%~35.00%の税率(超過累進方式)で課税。 2006年時点は3.00%~28.00%の税率であった。 (ⅱ) 166条:国外の金融機関の源泉税率(2006年も同様) (ⅲ) 本件S銀行P事件への当てはめ 本件事案でS銀行がメキシコ国に支払った源泉税は、判決文によれば10%ではなく15%の軽減税率の適用であった。この差異の理由は税率の変更とも思われるが確認できなかった。 ② 源泉地国法令違反性の検討(前記(2)②の(ⅰ)「役務の提供契約」の内容❶及び❷について) (ⅰ) ❶についての違反性 メキシコ国の税制上一般では源泉税35%(累進限界税率)が課されるべきところ、S銀行は金融機関に適用される軽減源泉税15%(現在の所得税では10%)の減免申請を行った。しかし、S銀行はR事件と同様に利子の受領者であっても「利子の実際の受益者」ではないことから、本来は源泉税減免申請を行うことができないため、S銀行は第三国の企業P社と謀って源泉税減免申請権をメキシコ国から詐取したことになると思われる。 (ⅱ) ❷についての違反性 前記(2)ケースⅠの②租税条約違反性の検討(ⅲ)と同様に、公序良俗に反し、権利の濫用に該当するおそれがある。 (4) ケースⅢ(受益者条項無し国内法適用:S銀行R事件) ① オーストラリア税務当局の解説文より筆者要約 (※2) beneficial owner(受益者)でなく、Recipient(受領者)となっている。 ② 本件S銀行R事件への当てはめ 以上から、S銀行R事件の場合、租税条約の税率と国内法の税率が同じであり、いずれを適用したかは不明であるが、納税者の選択を許すものと思われる。本ケースでは、S銀行は単なる利子の受領者であることを認識したため、受益者条項の規制がある租税条約ではなく、規制のないオーストラリア国内法による源泉税の支払を選択した場合について、違反性の検討を行う。 ③ 源泉地国法令違反性の検討(前記(2)②の(ⅰ)「役務の提供契約」の内容❶及び❷について) 銀行の源泉税納付行為は、オーストラリア国の税務当局との関係では、同国内法に則った適法な源泉税の納付行為となる。したがって、❶については違法性は認められない。❷については、前記(2)ケースⅠの②租税条約違反性の検討(ⅲ)と同様に、公序良俗に反し、権利の濫用に該当するおそれがある。 ((その3)へ続く)
〈注記事項から見えた〉 減損の深層 【第13回】 「太陽光発電事業が減損に至った経緯」 -建設仮勘定の減損は予測できたか- 公認会計士 石王丸 周夫 〈はじめに〉 【第12回】で、減損損失の発生を予測することができるのかというテーマを扱いました。そこでの結論は、減損処理というのは段階を踏んで慎重に行われるものであり、ある時点において、どの段階まで進んでいるかがわかれば、その資産グループについて、減損が将来実施されるかどうかを感じ取ることができると述べました。そして、その情報源としては、「重要な会計上の見積り」の注記があることを紹介したところです。 本稿でも、同様のアプローチが当てはまる事例を取り上げます。太陽光発電事業に関する減損事例です。 さっそく事例を見ていきましょう。 〈今回の注記事例〉 (出所:第105期(2022年度)四半期報告書(第2四半期)) (※) 下線は筆者 上記事例において、減損損失が発生したのは太陽光発電事業に係る建設仮勘定等とのことです。減損の要因は、事業の見通しが不透明になったためだと記載されています。 建設仮勘定は、現在建設中の未完成の固定資産のことなので、減損損失の認識の判定及び測定に当たっては、今後完成までに要する支出を考慮に入れるところが特徴的なところです。 すなわち、建設仮勘定の将来キャッシュ・フローについて、今後完成までに要する支出、完成後に得られるキャッシュ・イン・フロー、そして完成後の利用や処分に要するキャッシュ・アウト・フローを合理的に見積もることになります。本事例の太陽光発電事業に係る固定資産についても、概ねそのようにして減損損失計上に至ったものと考えられます。 では、この減損損失が過年度の開示書類から予測できたかどうかを確認していきます。 〈重要な会計上の見積りの注記〔前年度〕〉 事例の会社について、本事例の前年度の有価証券報告書で、「重要な会計上の見積り」の注記を見ていきます。 (出所:2022年3月期有価証券報告書) (※) 下線は筆者 上記の注記内容を要約すると、減損の兆候はあったものの、割引前将来キャッシュ・フローの総額が建設仮勘定の帳簿価額を上回っている状況であり、減損損失の計上は不要であった、となります。 ただし、この資産を取り巻く状況は厳しいとみられ、注記の前半部分で、計画の遅れと事業環境の著しい悪化に言及しています。注記の末尾でも、「環境影響評価や周辺住民への対応など、運転開始に向けて解決すべき課題がある」と記載されており、資産の収益性について、不確実性の高い状態になっていることが示唆されています。 〈重要な会計上の見積りの注記〔前々年度〕〉 さらに1年さかのぼります。 減損実施の前々事業年度における有価証券報告書の「重要な会計上の見積り」の注記です。 (出所:2021年3月期有価証券報告書) (※) 下線は筆者 この注記は、前掲の2022年3月期の注記とほとんど同じ内容となっています。すなわち、減損の兆候はあったものの減損損失の計上は不要であるという結論ですが、ここで注目すべきは下線を引いた対象資産の帳簿価額です。「建設仮勘定の帳簿価額9,300百万円」とあります。この金額が前掲の2022年3月期の注記と同額なのです。 ピンときた読者の方もいると思いますが、この点こそ、「運転開始に向けて解決すべき課題がある」と記載している真の意味を理解するヒントであったといえます。 帳簿価額に変化がなかったということは、単純に判断して、当該建設仮勘定の資産は1年間増加しなかったというわけです。つまり、建設が止まっているか、そうでなければ、完成しているが稼働できない状態ではないかと推測できます。もちろん、何かやむを得ない事情があって、設備の完成から稼働に至るまで一定の時間を要することも考えられますが、建設仮勘定の残高に1年間動きが見られないことは、通常、見過ごしてよい現象ではありません。この注記をリアルタイムで読んだ時にそう気がつくことができたかといえば、なかなか難しかったかもしれませんが、これは大事な点ではないかと考えられます。 〈重要な会計上の見積りは注意深く読む〉 太陽光発電事業をめぐっては複雑な背景もあるようなので、本稿ではこれ以上立ち入らないこととしますが、以上を整理すると次のようになります。 (注) 2023年3月期第2四半期で減損実施 「重要な会計上の見積り」は2021年3月期から始まった注記なので、それより前の期についてはわかりませんが、本事例の資産は、減損実施の2期前から減損の兆候「あり」となっており、記載内容も楽観できるようなものではなかったことから、2023年3月期の減損実施は予期しうることだったといえそうです。 以上のように、「重要な会計上の見積り」で減損について言及がある場合、将来における減損損失発生の可能性を予測しうるケースもあるので、注意深く読む必要があります。 (了)
〔会計不正調査報告書を読む〕 【第145回】 KNT-CTホールディングス株式会社 「調査委員会調査報告書(開示版)(2023年8月8日付)」 税理士・公認不正検査士(CFE) 米澤 勝 【KNT-CTホールディングス株式会社調査委員会の概要】 【KNT-CTホールディングス株式会社の概要】 KNT-CTホールディングス株式会社(以下「KNT-CT」と略称する)は、1941年10月、有限会社関急旅行社として創業。1955年9月、前身である近畿日本ツーリスト株式会社設立。2013年1月、純粋持株会社体制に移行して、現商号に変更。旅行業を単一のセグメントとし、連結子会社21社及び関連会社1社を有する。売上高252,152百万円、経常利益12,058百万円、資本金100百万円。従業員数3,343名(2023年3月期連結実績)。近鉄グループホールディングス株式会社が議決権の67%を有する大株主である。本店所在地は東京都新宿区。東京証券取引所スタンダード市場上場。会計監査人は有限責任あずさ監査法人東京事務所。 新型コロナウイルスワクチン接種に係る業務において過大請求を行っていたことが発覚した近畿日本ツーリスト株式会社(以下「KNT」と略称する)は、KNT-CTが議決権の100%を所有する完全子会社。売上高159,505百万円、経常利益11,300百万円(2023年3月期実績)。 【調査委員会による調査報告書の概要】 1 調査委員会の設置経緯 (1) 過大請求の発覚 KNTの西日本支社管内の支店が、大阪府東大阪市(調査報告書上は「A地方自治体」と表記)から受託している新型コロナウイルスワクチン接種に係るコールセンター業務について、日によって約定した席数を下回る数でコールセンター業務を再委託していたにもかかわらず、東大阪市に対しては、約定した席数を基準に報酬を請求していたことが、東大阪市によるコールセンターでの再委託先従業員の勤務状況に関する照会によって指摘され、約2億9千万円の過大請求を行っていたことが発覚した。 (2) 調査委員会の設置 KNT-CTは、上記(1)の事案に係る請求差異の発覚を受け、請求差異があった他の事案の有無及び当該事案の事実関係の調査、請求差異が存在する事案においてKNT及びKNT-CTが行った企業活動の適否の評価並びに、仮に不適切な企業活動等であると評価されるものがあるとすれば、請求差異が発生した原因の分析を行い、KNT及びKNT-CTがとるべき再発防止策を含めた必要な対策をとりまとめること等を目的として、4月17日に、利害関係を有しない外部の弁護士2名及びKNT-CT社外取締役(独立役員)2名の計4名により構成される調査委員会を発足させた。 (3) 緊急社内点検 KNT-CTは、KNTにおける過大請求の発覚を受けて、2023年3月期連結決算等の企業会計に与える影響の検証等を行うことを目的として、調査委員会発足に先立つ4月12日から、KNTが関与してきた受託業務として登録されている案件2,924件に加えて、実質的に受託業務とみなされ得る案件209件、社内基幹システムに登録されていない案件19件を合わせて3,152件について緊急社内点検を実施している。 調査委員会は、事実関係の解明及びKNT及びKNT-CTにおけるコンプライアンスを中心とするガバナンスの実態を把握し分析するという観点から、KNTの受託事業の全体像を把握する必要があるため、KNT及びKNT-CTとの間で、社内点検の結果を調査の事実認定の一助として参照することを合意し、また、その前提として、社内点検のプロセスの妥当性を検証しその評価を行うことを、別個の委嘱事項として合意している。 2 緊急社内点検の結果及び調査委員会による評価 (1) 緊急社内点検の概要 社内点検では、3,152件の点検対象案件を次の4種類に分類した。 (※1) 委託元への請求数量が再委託先の稼働数量より少なく、結果として実際の委託元への請求金額が、稼働数量を基に算定された請求金額よりも少なくなっている等の場合に関して、請求内容には齟齬があるものの、委託元に損害を与えるものではない案件のこという。 (2) 調査委員会による評価 調査委員会は、社内点検により分類された案件についてのサンプル調査に基づき、委託元との交渉状況を踏まえての結論として、その目的や趣旨を没却するような問題があるとまでは認められなかったと結論づけた。 その理由として、調査委員会が行ったサンプル調査の結果として算定された請求差異の金額と、対応する事案について本社内点検により算定された請求差異の金額とが相違するところがあるものの、その差の金額規模、割合、KNTにおいて委託元である地方公共団体等と返還金額につき事実上の合意に至っている案件もあることに鑑みれば、請求差異の最終的な金額が、社内点検において算定されている請求差異の金額から大きく乖離する可能性が高いとはいえないことから、今後の委託元との協議状況を注視する必要はあるものの、現状において、社内点検は、請求差異の生じた事案の広がりや大枠の金額といった面を中心に本事案の全体像を把握するうえで、本調査の一助として活用し得るものと評価することができるとした。 3 調査委員会による事実関係の総括と評価 (1) 請求差異を発生させた行為に対する評価 調査委員会は、本事案における一連の不当・不適切な行為は、もとより、民事的には、KNTの委託元に対する債務不履行又は不法行為に基づく損害賠償責任が問題となり得る行為であり、このような問題行為がKNTの日常的な営業活動の中で発生していたということ自体、そもそも企業の業務として甚だ不適切であったと言わざるを得ないと断じたうえで、こうした問題行為は、税金を原資とする地方公共団体が管理する公金を喪失させる結果を招いており、委託元に対する契約違反等の問題にとどまらず、地方公共団体に対して損害を与えることを通じて、民間に委託されて実施される公益性の高い事業に対する市民ないし納税者の信頼をも損なうものであると強く非難している。 そのうえで、調査委員会は、本事案において請求差異を生じさせ公金の喪失を招いた行為は、当該地方公共団体に損害を与えた点で不当・不適切な行為であったのみならず、企業倫理の観点からも著しく不穏当であり、KNTの組織としてのレピュテーションを強く毀損するものであったと言わざるを得ないと締め括った。 (2) 本事案において請求差異を発生させる行為が複数の支店で同時的に行われたことに対する評価 調査委員会は、本事案では、KNTの複数の支店において、しかも同時期に、BPO事業を始めとする受託事業に関して請求差異が発生しているところ、本調査によっても、これらがKNTの組織としての意思決定に基づく指示によるものであったことや各支店間での通謀等により行われたものであったとの事実は確認されなかったとして、組織的な不正ではなかったとしている。 その一方で、調査委員会は、KNTの職員は、公益に関わる社会的にも重要なBPO事業に係る受託業務に携わる自覚に欠けるとともに、会社の利益追求を優先するあまり、契約の内容を正しく理解したうえでこれを誠実に履行するという業務の基本をないがしろにし、コンプライアンスに関する意識が後退していたと評されてもやむを得ないこと、単に特定の地域の支店やそこに所属する職員ら特定の個人に特有の問題が顕在化した事案に過ぎないとして本事案を矮小化するのは相当ではなく、むしろ、KNTの企業体質に関わる根深い問題が本事案の根底にあると見るべきであると評価している。 さらに、調査委員会は、社内点検において、資料等に不備がある等、証憑類が必ずしも整理されていないといったKNTの問題状況が明らかになっていることが、本事案のような行為の発生・継続・拡大に一定程度影響していたことは否定し難いと考えられ、そうした問題状況が、個別調査対象事案に係る支店にとどまらず、その多寡はともかく、その他の支店等にも認められたことからすると、こうした事情も、KNTの全体に通底するその体質に関わる問題状況を考えるうえで、無視することはできないと評価した。 4 原因分析(報告書59ページ以下) 調査委員会は、上記3の問題点を踏まえて、KNTにおいて、広範な地域で、かつ、同時並行的に発生し、長期間にわたって継続した不正請求につき、以下の3点を指摘した。 各項目についての具体的な内容は次のとおりである。 (1) 利益追求への強い指向の中で、各人の行為の妥当性及び適法性に対する意識が希薄化していたこと 調査委員会は、本事案が発生した直接的な原因について、2020年以降の新型コロナウイルス感染症の蔓延に伴い受注が激減した旅行業に代わり、KNTの事業上重要な位置を占めるようになったBPO事業に関して、KNTの方針として利益の追求が強く打ち出され、各事案の担当者が、利益を増やす方策として再委託先へ発注する人員数を削減しつつ、委託元へは契約どおりの人員数に基づき請求をするといった業務手法をとるようになり、この手法の妥当性の検証や是正がなされないまま、継続されてきたと指摘した。その背景として、次のような実態を挙げている。 (2) 適切な業務遂行を担保するための管理態勢が極めて脆弱であったこと 調査委員会は、KNT及びKNT-CTにおいては、BPO事業におけるコンプライアンスの徹底を目的としたガイドライン等の整備や周知徹底をはじめとした法務機能、相互の監視・牽制機能、コンプライアンス違反事象の早期発見といった観点からの管理態勢が整備されていたとは言い難い状況にあったとして、次のように指摘した。 (3) 社内組織の各階層間における正確な意思疎通が欠如し、現場の問題を躊躇なく経営陣に進言する風士が醸成されていなかったこと 調査委員会は、KNTの企業体質について、次のように概括している。 そのうえで、KNTの企業風土を次のように評価した。 (4) 総括 調査委員会は、原因分析の最後に、①利益追求の指向、②各人の行為の妥当性及び適法性に対する意識の希薄化、③管理態勢の脆弱性、④階層間の正確な意思疎通や現場の問題を進言する風土の欠如により構成される企業風土(全社的な企業カルチャー)は、本事案の根本的な原因とも位置付けられるとしたうえで、こうした原因が複合的に影響し合うことで、不当な請求行為が、複数の地域で同時多発的に発生し、かつ長期間にわたって継続し是正もされなかった、という事態を招いたと結論づけた。 そのうえで、本事案の原因については、一部の職員層のコンプライアンス意識の低さ等の部分的・局所的なものとして捉えるのは適切ではなく、全社的な体質や制度設計といったより根源的な問題として捉える必要があると考えられると締め括っている。 5 再発防止策の提言(報告書74ページ以下) 調査委員会は、再発防止策の提言として、以下の項目を挙げた。 ここでは、調査委員会による再発防止策の提言における最後の項目、「内部監査部門の強化と社内での地位向上」について、具体的に見ておきたい。 調査委員会は、不正請求が発覚しなかった原因の1つとして、KNTの内部監査において、BPO事業が内部監査対象から外され、又はBPO事業における契約の業務遂行過程の適正性が監査対象となっていなかったことから、その業務遂行過程の適正性を確保できなかったと指摘したうえで、是正するために、BPO事業に限らず、業務遂行の役割分担のうち、全社的に統一すべき部分は統一的な業務遂行がなされているか(現場担当者の裁量で決定されていないか)という点を含め、業務遂行過程の適正性について的確な監査が可能となるよう、社内における内部監査部門の地位を向上させ、権限を強化することが肝要であると提言している。さらに、KNTの内部監査は、社内ルールが遵守されているかどうかを確認することに主眼が置かれ、社内ルールが存在しない場合は、そもそも監査対象としないという運用をしていた点でも不備があったと指摘している。 そのうえで、調査委員会は、内部監査部門を強化し、社内での地位を向上させることは、不正を発見することを会社全体として積極的に期待するという強い意思を示すこととなり、不正の芽を発見した場合には内部監査部門に相談、報告、通報等すれば適切に調査がなされるという期待を全社的に共有させ、逆に有耶無耶にされるのではないかという懸念や諦観を低減させるという効果も有し得るのであり、レポートライン及び内部通報制度の強化の一環ともいえると結んでいる。 【調査報告書の特徴】 本件は、KNTの不正請求が連日報道され、警察の捜査が入り、従業員4名が、詐欺容疑で逮捕・起訴されるという異常事態の中で進められた調査であり、開示された調査報告書にも黒塗りが目立ち、さらに「第4 本事案における個別調査対象事案等の事実関係」(調査報告書45ページ)には、次のような記述がある(同様の記述は、「第6 本委員会の把握したその他の事実関係」(調査報告書58ページ)にも見られる)。 1 代表取締役内定の取消 KNT-CTは、3月24日付で、「代表取締役の異動に関するお知らせ」をリリースして、代表取締役社長の米田昭正氏が代表権のない取締役会長となり、後任の代表取締役社長に代表取締役専務である小山佳延氏が就任することを公表していたが、本事案発覚後の4月25日に、「代表取締役内定の取消に関するお知らせ」をリリースして、これを取り消した。 その理由は次のとおりである。 なお、6月26日開催のKNT-CT第86回定時株主総会で、米田昭正氏、小山佳延氏はともに取締役に選任されて、株主総会後の取締役会で、米田昭正氏が引き続き、代表取締役社長となっている(※2)。 (※2) 「第86回株主総会決議ご通知」参照。 2 緊急社内点検によって判明した過大請求額の推移 KNT-CTが緊急社内点検の進捗に応じて、経過報告として公表した過大請求額の推移をまとめておきたい。 緊急社内点検が進むにしたがって、「十分な証憑が整わないことから過大請求の疑義がある」とした事案について、疑義が晴れて「過大請求ではない」と判断した事案が増加していることがうかがえるとともに、KNTと委託元である地方公共団体等と返還金額について合意に至っている案件も増加した結果、過大請求の見積額が減少しているようである。 3 KNT-CTによる再発防止策の策定方針 KNT-CTは、調査委員会による調査報告書受領の公表とともに、再発防止策の策定方針を公表した。その骨子は以下のとおりである。 (了)
給与計算の質問箱 【第44回】 「最低賃金と給与の設定」 税理士・特定社会保険労務士 上前 剛 Q 2023年10月以降に最低賃金が上がる見通しですが、当社も最低賃金を下回らないよう給与を設定しなければなりません。具体的な設定方法をご教示ください。 なお、当社の情報は以下のとおりです。 A 東京都の最低賃金は、2023年10月以降に1,113円になると見込まれる。 時給制はもちろんのこと、日給制や月給制においても時給に換算して最低賃金である1,113円を下回らないように給与を設定しなければならない。 以下、時給制、日給制、月給制のそれぞれの場合について解説する。 * * 解 説 * * 1 時給制の場合 時給1,113円以上に設定しなければならない。 2 日給制の場合 最低賃金を下回らないための日給設定の計算は、次のとおりである。 以上より、日給8,904円以上に設定しなければならない。 3 月給制の場合 最低賃金を下回らないための月給設定の計算は、次のとおりである。 (※) 1ヶ月の平均所定労働時間 =(365日-年間休日125日)× 1日の所定労働時間8時間 ÷ 12ヶ月 = 160時間 以上より、月給178,080円以上に設定しなければならない。 なお、以下の賃金等は最低賃金の対象外となっているため、178,080円に含まれない。 以上を踏まえると、月給を基本給160,000円、職務手当10,000円、通勤手当20,000円とした場合、これらの総額は190,000円となるが、通勤手当20,000円は最低賃金の対象外であるため、170,000円となってしまい178,080円を下回るため、月給として設定できない。 一方で、月給を基本給160,000円、職務手当20,000円、通勤手当10,000円とした場合、上記と同様に総額は190,000円となるが、最低賃金の対象外である通勤手当10,000円を除いても180,000円となり178,080円を上回るため、月給として設定できる。 (了)