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〔まとめて確認〕会計情報の月次速報解説 【2024年8月】

〔まとめて確認〕 会計情報の月次速報解説 【2024年8月】   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2024年8月1日から8月31日までに公開した速報解説のポイントについて、改めて紹介する。 具体的な内容は、該当する速報解説をお読みいただきたい。   Ⅱ 企業内容等開示関係 次のものが公布されている。 〇 「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則及び連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則の一部を改正する内閣府令」(内閣府令第70号)(内容:「グローバル・ミニマム課税制度に係る法人税等の会計処理及び開示に関する取扱い」(実務対応報告第46号)を受けたもの)   Ⅲ 監査法人等の監査関係 監査法人及び公認会計士の実施する監査などに関連して、次のものが公表されている。 ① 「上場会社等の監査を行う監査事務所の適格性の確認のためのガイドライン」の改正(内容:品質管理レビューの実績等を踏まえ、着眼点及び判断基準を新規追加又は拡充など) ② テクノロジー委員会研究文書第11号「監査におけるAIの利用に関する研究文書」(内容:監査において利用されるAIに関する理解を更新し、具体的な活用方法及び課題について改めて整理するもの) (了)

#No. 585(掲載号)
#阿部 光成
2024/09/12

従業員の解雇をめぐる企業対応Q&A 【第1回】「解雇をめぐる現状及び解雇に対する制約」

従業員の解雇をめぐる企業対応Q&A 【第1回】 「解雇をめぐる現状及び解雇に対する制約」   弁護士 柳田 忍   1 はじめに 解雇とは、使用者による一方的な労働契約の解約である。民法上は、期間の定めのない雇用契約(無期雇用契約)については、使用者・労働者はいつでも解約の申込みをなすことができること(解雇の自由)、この場合、解約の申込み後2週間の経過によって雇用契約が終了することが定められている(民法627条1項)。 しかし、民法の特別法である労働契約法は、使用者による解約(解雇)について、「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合には、その権利を濫用したものとして、無効とする」と定め、解雇の自由に制限を加えている(解雇権濫用法理。労契法16条)。 裁判所において、この「客観的に合理的な理由」や「社会通念上相当である」ことが容易に認められないことは広く知られており、仮に従業員の労務提供能力等に問題があったとしても解雇が現実的な選択肢にはならない場合が少なくないことから、企業は採用段階で慎重な態度を採らざるを得なくなっている。 しかし、昨今の人手不足等を受けて、企業が、従前であればおそらく採用しなかったであろう、採用段階で少し引っかかりを覚えた求職者の採用に踏み切ったところ、(案の定)当該従業員について労務提供能力や勤務態度等に関する深刻な問題が発覚し、解雇を真剣に検討せざるを得ない、という場面が増えているように思う。 そこで、本連載においては、従業員を解雇する場合に注意すべき点やよく相談を受けるポイントについて説明する。なお、本連載の前半では解雇に係る知識全般を確認したうえで、後半からは具体事例をもとにQ&A形式で解説を行う。   2 解雇の種類及び解雇権濫用法理 解雇には、大別して、労働者側に存する理由に基づく解雇と、会社側の経営上の事情等による解雇がある。前者については、懲戒解雇(企業秩序違反に対する制裁罰としての解雇)と、普通解雇(労働者側に存する理由に基づく解雇のうち懲戒解雇以外のもの)がある。 無期雇用契約について行われる解雇は、「客観的に合理的な理由」(客観的合理性)があり、「社会通念上相当である」(社会的相当性)と認められる場合でなければ、無効となる(解雇権濫用法理。労契法16条)。 一方、有期雇用契約については、「やむを得ない事由」がある場合に限り解雇が可能となる(労契法17条)。また、有期雇用契約は期間の満了により終了するのが原則であるが、無期雇用契約と実質的に異ならない状態となっている場合や労働者の雇用継続への合理的期待が認められる場合には、解雇権濫用法理が類推適用され、「客観的に合理的な理由」(客観的合理性)があり、「社会通念上相当である」(社会的相当性)と認められなければ、更新拒絶が無効となる。 解雇の客観的合理性及び社会的相当性が容易に認められないことは上記のとおりであるが、有期雇用契約の解雇については、期間を定めて雇用した以上、その期間は原則として解雇することはできないはずであるから、解雇が認められるための「やむを得ない事由」が認められるかは更に厳格に判断される。   3 解雇予告義務 使用者が労働者を解雇する場合、少なくとも30日前にその予告をするか、30日分以上の平均賃金(労基法12条)を支払わなければならず(労基法20条1項)、違反については罰則(6ヶ月以下の懲役又は30万円以下の罰金)が定められている(労基法119条1号)。 上記のとおり、民法上は使用者・労働者のいずれにおいても解雇予告期間は2週間で足りるはずだが、特別法である労働基準法により使用者からの解雇について上記義務が課されたものである。なお、この予告日数は平均賃金1日分を支払った日数分短縮することができる(労基法20条2項)。 また、日々雇い入れられる者、2ヶ月以内の期間(季節的業務の場合は4ヶ月以内の期間)を定めて使用される者、試用期間中の者については適用がない(ただし、いずれも労働基準法所定の期間を超えて引き続き使用される場合を除く)。 解雇予告義務に違反した場合、即時解雇としては効力が生じないが、使用者が即時解雇に固執する趣旨でない限り、通知後30日の期間を経過するか、又は通知の後に予告手当の支払をしたときは、そのいずれかのときから解雇の効力が生じるとされている(最判昭和35年3月11日(細谷服装事件))。 解雇予告義務との関係では、以下の点に注意する必要がある。   4 解雇制限 解雇については上記の解雇権濫用法理、解雇予告義務の他、労働基準法及びその他の各種個別法令上の制限が課されている(※1)。 (※1) 例えば、国籍・信条・社会的身分、性別を理由とする解雇(労基法3条、均等法6条4号)、女性労働者が婚姻、妊娠、出産、労働基準法65条の産前産後の休業を請求・取得したこと等を理由にした解雇(均等法9条2項、3項、均等法規則2条の2)、育児・介護休業の申出をしたこと、育児・介護休業をしたことを理由とする解雇(育児介護休業法10条、16条)など。 特に実務上よく問題となるのが、業務上の傷病による休業期間及びその後の30日間における解雇の禁止(労基法19条)である。①労働基準法81条に基づいて打切補償が支払われるか(※2)、②天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合を除き、使用者は当該制限に拘束される(労基法19条1項但書)。 (※2) 業務上の傷病により休業し、療養補償を受ける労働者が療養開始後3年を経過しても傷病が治癒しない場合に、平均賃金の1,200日分の打切補償を行うことにより上記解雇制限を免れることができるというもの(労基法19条1項但書)。 私傷病による休業期間及びその後の30日間における解雇は上記制限の対象外であるが、メンタル不全により休業する従業員が上司のパワハラやサービス残業の強要を傷病の理由として挙げて業務上の傷病であると主張することは少なくない。 私傷病が治癒しないことを理由に解雇した場合であっても、業務上の傷病であることが明らかになれば、労働基準法19条の制限に違反したものとして解雇が無効とされる。よって、特にメンタル不全で休業する従業員を解雇する場合には、傷病が業務上のものでないことを確認する必要がある。   (了)

#No. 585(掲載号)
#柳田 忍
2024/09/12

〈Q&A〉税理士のための成年後見実務 【第10回】「遺産分割協議が必要になった場合の注意点」

〈Q&A〉 税理士のための成年後見実務 【第10回】 「遺産分割協議が必要になった場合の注意点」   司法書士法人F&Partners 司法書士 北詰 健太郎   【Q】 顧客の家族に相続が発生し、遺産分割協議が必要になりました。相続人のなかに認知症を患っている方がおり、遺産分割協議を進めるために成年後見人の選任を進めることになりました。私が成年後見人候補者となる可能性もありますが、どのような点に注意すべきでしょうか。 【A】 相続が発生し、遺産分割協議を進めるために成年後見制度を利用するケースがあります。遺産分割協議は相続人全員が参加して合意をする必要がありますが、合意をするには意思能力が必要になるためです。成年後見人としては、成年被後見人となった本人の相続分については遺産分割協議において権利を主張していくことになります。 ● ● ● ● 解 説 ● ● ● ● 1 遺産分割協議が制度利用のきっかけに 筆者の実務上の経験では、遺産分割協議を行うことになったが相続人のうちに認知症を患っている方が存在するため、成年後見制度を利用することになるケースが増えているように思われます。特に高齢かつ子がいない方が被相続人である場合には、その方の親やきょうだいが相続人となるため、認知症を患っている方が相続人に存在する確率は高くなるようです。 遺産分割協議を進めるためには相続人全員が参加して遺産の分け方について合意をする必要がありますが、認知症により意思能力を喪失されている方については、有効な合意を行うことができません。そのため成年後見制度の利用を検討することになるのです。   2 成年後見人としては本人の権利を主張することになる 成年後見人が選任された場合、本人に代わって成年後見人が遺産分割協議に参加することになります。成年後見人としては、本人の相続分に相当する財産については、権利を主張していくことが求められます。 成年後見人の役割は被後見人の権利を守っていくことであるため、遺産分割協議においても本人の権利を主張していくのは当然のことではありますが、時として他の相続人が不満を持ってしまう場合があるようです。具体的な例として、以下のようなケースで考えてみます。 【配偶者のきょうだいが相続人であるケースの相続関係図】 この相続関係では被相続人の配偶者と、兄、姉(成年被後見人)が相続人となりますが、全員高齢です。このようなケースでは、きょうだいといえどもお互い独立して何十年も経過しており、きょうだいとしては被相続人の遺産の受取りを希望しないことが多い印象があります。 この場合でも、姉の成年後見人としては姉の相続分を主張していくことが基本的なスタンスとなります。配偶者としては、被相続人と自分が時間をかけて築き上げた財産に対して権利を主張されることに不満を覚えることもあるようです。予定していた資金計画に影響が出てしまうこともあるかもしれません。 税理士としても、成年後見人として遺産分割協議に参加する場合には、このような事態が生じうることは認識しておくべきでしょう。顧客との利害対立が起きる可能性もあることは十分に説明をしておく必要がありますし、トラブルになりそうな場合には就任を辞退することも選択肢の1つです。   3 遺言書の活用が重要 配偶者ときょうだいが相続人となるケースに実務で遭遇するたびに、遺言書作成の重要性を認識します。遺言書さえ作成しておけば遺産分割協議を行う必要がなくなり、きょうだいには遺留分もないため、配偶者に円滑に全財産を残すことが可能となるからです。 税理士としても遺産分割協議が難航しそうな顧客がいる場合には、遺言書の作成を提案していくとよいでしょう。 (了)

#No. 585(掲載号)
#北詰 健太郎
2024/09/12

《速報解説》 国税庁、予定納税・確定申告に係る定額減税Q&Aを更新~青色事業専従者等に係る定額減税の適用についての問答を追加~

 《速報解説》 国税庁、予定納税・確定申告に係る定額減税Q&Aを更新 ~青色事業専従者等に係る定額減税の適用についての問答を追加~   Profession Journal 編集部   既報のとおり、令和6年4月30日に国税庁は令和6年分所得税の定額減税のうち予定納税・確定申告に関するQ&Aを公表していたところ、8月30日に本Q&Aが改訂され、新たに1問が追加されたほか、既存問答2問が修正された。 今回追加された問答「1-5-2 青色事業専従者等に係る定額減税の適用」では、青色事業専従者等につき同一生計配偶者等として定額減税の対象にならないのかという問いに対し、青色事業専従者等は定額減税の対象となる同一生計配偶者等には含まれないため、定額減税の適用を受けることはできないとしたうえで、青色事業専従者等が所得控除の合計額以上の所得金額であることなどにより、定額減税前の所得税額がある場合には、青色事業専従者等が自身で定額減税の適用を受ける必要があることを明らかにしている。 また、既存問答のうち「1-1 令和6年分の所得税に係る納期等の特例」と「2-5 令和6年5月31日以前に準確定申告書を提出している場合の定額減税」の2問が修正されている。 問1-1では、令和6年分の所得税に係る予定納税の納期やその減額申請期限等をまとめた表が修正され、新たに「(第1期分及び第2期分の)振替日」の項目が追記されたほか、問2-5では、改訂前は「令和6年5月31日以前に準確定申告書を提出した方は、同年6月1日から令和11年6月1日(月)までに更正の請求を行うことにより、定額減税の適用を受けることができる」(下線部は編集部による)としていたところ、下線部の曜日につき正しくは金曜日だったことから、「令和11年6月1日(金)」に修正されている。 (了)

#Profession Journal 編集部
2024/09/09

プロフェッションジャーナル No.584が公開されました!~今週のお薦め記事~

2024年9月5日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.584を公開! - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。

#Profession Journal 編集部
2024/09/05

monthly TAX views -No.139-「わが国でも「タックス・ギャップ」の本格的な議論を」

monthly TAX views -No.139- 「わが国でも「タックス・ギャップ」の本格的な議論を」   東京財団政策研究所研究主幹 森信 茂樹   わが国の税制に関し、諸外国と比較して少ないと感じるのが「タックス・ギャップ」をめぐる議論である。そもそも「タックス・ギャップ」という言葉自体に対する定番の日本語訳が存在しないことが、その現状を物語っているといえよう。 *  *  * 政府は2015年2月に、「タックス・ギャップ」の推計を求める野党議員からの質問状に対し、要旨以下のとおり答弁書を提出している。 その理由として、下記の答弁が行われている。 (※) 第189回国会参議院答弁(答弁書第32号)(平成27年2月27日)より この答弁から10年が経過し、経済取引はグローバル化・デジタル化によってきわめて複雑化した。経済価値の多くを占める無形資産の評価の困難性、プラットフォームを経由した取引の増加、暗号資産(仮想通貨)の普及、Web3.0等の技術による経済変革など、変化を挙げればきりがない。それに伴い「タックス・ギャップ」も飛躍的に拡大していると考えられる。 *  *  * 筆者が数年前、欧州諸国の税務当局者を訪れ、意見交換をした際に、彼らの最大関心事の1つが、デジタル経済発達に伴う「タックス・ギャップ」であった。 また、OECDにおいて最も力を入れているプロジェクトの1つが、「タックス・ギャップ」防止のための方策である。 2020年にはOECD租税委員会で、不動産賃貸と個人サービスを対象として、シェアリングエコノミーやギグエコノミーにおいて売主となるプラットフォーム事業者による報告のモデルルールが公表され、2021年にはモデルルールに基づく自動的情報交換の実現に向けた国際的な情報交換のルール及び対象の拡大が公表された。これを受けEUでは2021年に指令(DAC7)が採択され、加盟各国で順次国内法が制定されている。 *  *  * わが国でも「こうした諸外国の取組みも踏まえつつ、検討を進めていく」(政府税制調査会答申「わが国税制の現状と課題-令和時代の構造変化と税制のあり方-」(令和5年6月30日)P255)とされているが、国民の理解を得てこのような改正を行うには、国税庁・財務省は、わが国のタックス・ギャップの状況を推計で示し、国民に現状を示す努力を行うことが必要だ。 先の政府答弁にある、「無作為に抽出した多数の納税者に対して『タックス・ギャップ』を推計する目的で調査等を行うことについては、そのコストや調査を受ける納税者の負担にも配慮する必要がある」という点については、2022年3月より国税庁の指導の下、申告所得税データを利用した学術研究が始まっており、「日本の所得税制に関する税務データに基づく分析の意義」(國枝繁樹、米田泰隆)という論文も公表されている。 条件は整いつつあるので、タックス・ギャップに関する本格的な議論を進めていく必要がある。 (了)

#No. 584(掲載号)
#森信 茂樹
2024/09/05

法人税の損金経理要件をめぐる事例解説 【事例66】「中古資産を事業の用に供した後においてその耐用年数を変更することの可否」

法人税の損金経理要件をめぐる事例解説 【事例66】 「中古資産を事業の用に供した後においてその耐用年数を変更することの可否」   拓殖大学商学部教授 税理士 安部 和彦   【Q】 私は、中部地方のある県庁所在地に本社を構え不動産賃貸業を営む株式会社X(資本金3,000万円で3月決算法人)において、経理部長を務めております。 よく知られている通り、わが国の経済は1980年代後半から1990年代前半にかけてのいわゆる「バブル経済」でピークを迎え、株式市場も不動産市場も大いに湧き立ったものですが、バブル崩壊後は長期不況に突入し、現在に至っております。それでも株式市場はバブル崩壊後何度か上昇機運に乗る時期がありましたが、不動産市場は全くもって鳴かず飛ばずで、ジリジリと下がり続ける厳しい時期が続きました。ようやくアベノミクスの効果が出て、株式市場のみならず不動産市場も上昇に転じ、地域的なバラつきはあるものの、都市部やインバウンド人気のリゾート地は不動産取引が活発となり、バブル期を上回る価格をつけるところも見られるようになってきました。 当社が保有する不動産は名古屋市内を中心に中部地方の県庁所在地や政令指定都市に立地しており、ここ数年は地価の上昇を背景に賃貸料についての値上げ交渉が可能となっているため、借入金利息の負担が依然重いものの、業績は持ち直しております。そんな中、先月から税務署の調査を受けており、当社が保有する賃貸物件(建物)の減価償却費について、議論のすれ違いが生じております。すなわち、当社が保有する建物の減価償却については、耐用年数を39年として定額法で計算しておりましたが、そのうち数棟は既存の建物を取得して賃貸物件として事業の用に供したことに気付いたことから、それ以後の事業年度については中古資産の耐用年数(簡便法)の適用により減価償却を行いました。 しかし、税務署の調査官は、中古資産の耐用年数の算定は、その中古資産を事業の用に供した事業年度において行うことができるものであり、その事業年度において耐用年数の算定をしなかったときは、その後の事業年度において耐用年数の算定をすることはできないと言い張っております。調査官の当該主張は不当であると考えるのですが、税法上はどのように考えるのでしょうか、教えてください。 【A】 企業の有する固定資産については、費用収益対応の原則から、その取得費につき減価償却費の計上を行うこととなりますが、当該固定資産が中古資産である場合には、その耐用年数は法定耐用年数ではなく、その事業の用に供した時以後の使用可能期間として見積もられる年数によるか、又はその見積りが困難であるときは、簡便法により算定した年数によることができます。ただし、中古資産の耐用年数の算定は、その中古資産を事業の用に供した事業年度においてすることができるもので、仮にその事業年度において法定耐用年数で減価償却を行った場合には、その後の事業年度において中古資産の耐用年数の算定をすることはできません。 ■ ■ ■ 解 説 ■ ■ ■ (1) 減価償却費と損金経理 企業等の有する固定資産のうち、使用又は時間の経過によって価値の減少するものを減価償却資産という。そのような減価償却資産は、当該企業において長期にわたり収益を生み出す源泉であるため、費用収益対応の原則から、その取得費につき使用又は時間の経過によって価値の減少する度合いに応じて徐々に費用化すべきといえる(※1)。このような企業会計の考え方に則って、資産の取得価額を一時の費用とするのではなく、徐々に費用化する手続きが減価償却である。 (※1) 金子宏『租税法(第24版)』(弘文堂・2021年)389頁参照。 減価償却費の計上は基本的に上記のような企業会計の考え方に準拠しているが、法人税法においては、納税者が選択した償却方法で計算した金額は償却限度額であり、減価償却費として損金に計上されるのは、法人が確定した決算において費用として経理した金額のうち、償却限度額に達するまでの金額(損金経理した金額)である(法法31①)。   (2) 中古資産の耐用年数 中古資産を取得して事業の用に供した場合には、その中古資産の減価償却に係る耐用年数は、法定耐用年数ではなく、その事業の用に供した時以後の使用可能期間として見積もられる年数によることができる(耐用年数省令3①一)。また、使用可能期間の見積りが困難であるときは、以下で示す「簡便法」により算定した年数によることができる(耐用年数省令3①二)。 〈簡便法による耐用年数の算定方法〉 ただし、その中古資産を事業の用に供するために支出した資本的支出の金額がその中古資産の再取得価額(中古資産と同じ新品のものを取得する場合のその取得価額をいう)の50%に相当する金額を超える場合には、使用可能期間の見積りや簡便法による耐用年数の算定をすることはできず、法定耐用年数を適用することになる(耐用年数省令3①)。   (3) 中古資産を事業の用に供した後においてその耐用年数を変更することの可否が争われた事例 それでは本件と同様に、中古資産を事業の用に供した後において、取得当初に見積もった耐用年数を変更することの可否が争われた事例(那覇地裁平成27年3月3日判決・税資265号-33(順号12616)、TAINSコード:Z265-12616)について、以下で確認してみたい。 ① 事案の概要 本件は、不動産賃貸業を営む原告が、法人税の申告に当たり、当初は、中古で取得した建物についても新築建物に係る法定耐用年数を適用して減価償却費の計算をしていたが、平成24年3月期になって、耐用年数を短縮して減価償却費の計算をしたところ、処分行政庁が、原告が適用した耐用年数には誤りがあるとして、平成24年12月25日付けで、原告に対し、法人税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分をしたため、その取消しを求める事案である。 原告は平成20年3月期、平成21年3月期及び平成23年3月期の各事業年度に関する当初申告においては、中古建物につき、いずれも法定耐用年数39年で減価償却を行っていた。しかし、平成24年3月期においては、当該中古建物の耐用年数を変更(短縮)して減価償却費の計算を行い、その償却限度額の金額を損金の額に算入した。当該経緯を示したものが以下の表である。 〇 各事業年度の建物の減価償却費の金額(一部抜粋) ところで、原告の主張によれば、本件各中古建物について、中古資産に係る見積耐用年数を適用して申告し直したいと考えて、税務相談室に相談したところ、 1)過去3年にわたって申告し直すことができる旨の回答を得、また、 2)原告は、北那覇税務署法人課税第二部門の統括国税調査官から、平成24年3月期以降の事業年度においては、中古資産に係る見積耐用年数を適用して損金経理をすることができる旨の回答を得た。 したがって、原告は、このような各回答に反して行われた本件各更正処分等は、信義則に反する違法なものとして取り消されるべきである、としている。 なお、原告は、本件各建物について、いずれも法人税法施行令第57条に規定する耐用年数の短縮に係る承認を受けていない。 ② 事案の争点 ③ 裁判所の判断 争点(1) 争点(2) なお、本件は控訴されず確定している。 ④ 本裁判例から学ぶこと まず本裁判例の争点(1)において、中古資産の減価償却は法定耐用年数によることが原則であり、例外的に見積耐用年数又は簡便法によることができるという点が問われている。減価償却に関しては法人税法施行令で償却方法の変更手続き(法令52)が定められているのであるから、取得年度に選択した方法と異なる方法により償却を行いたいのであれば、その手続きを経るべきであり、それによらず納税者が任意に変更することはできないという点を確認した裁判所の判断は妥当といえよう。 次に、本裁判例の 争点(2)において、「各更正処分等は信義則に反する違法なもの」か否かが問われたが、そもそも信義則は、民法第1条第2項の信義誠実の原則ないし禁反言の原則(法理)を指し、誤った言動を信じて行動した者の期待や信頼を保護する趣旨のもので、私法のみならず公法(租税法)でも適用されると解されている(※2)。 (※2) 金子前掲(※1)書143頁参照。 本裁判例において納税者側が問題にした信義則とは、「本件各中古建物について、中古資産に係る見積耐用年数を適用して申告し直したいと考えて、税務相談室に相談したところ、 1)過去3年にわたって申告し直すことができる旨の回答を得、また、 2)原告は、北那覇税務署法人課税第二部門の統括国税調査官から、平成24年3月期以降の事業年度においては、中古資産に係る見積耐用年数を適用して損金経理をすることができる旨の回答を得た」にもかかわらず、課税庁が当該回答に反するような更正処分を行ったことであり、納税者は、税務相談室等に相談しそこから得た回答に反するような処分を行うことは信義則に反する違法なものとして取り消されるべきであると主張したところである。 裁判所は、税務署が税務相談室等の回答に反するような処分を行うことについて、その是非につき直接言及しているわけではないが、「租税法律主義の原則が貫かれるべき租税法律関係においては、信義則の法理の適用については慎重でなければならず」という最高裁判例(最高裁昭和62年10月30日・訟月34巻4号853頁)に依拠して、本件は「租税法規の適用における納税者間の平等や公平という要請を犠牲にしてもなお当該課税処分に係る課税を免れさせて納税者の信頼を保護しなければ正義に反するといえるような特別の事情が存在する場合」に該当しないとして、納税者の主張を斥けている。 学説では、租税法律関係において信義則が適用されるためには、第1に、租税行政庁が納税者に対して信頼の対象となる公の見解を表示したこと、第2に、納税者の信頼が保護に値する場合でなければならないこと、第3に、納税者が表示を信頼しそれに基づいてなんらかの行為をしたこと、の3要件すべてが満たされることが必要とされている(※3)。本件に即してみれば、税務相談室等の回答は、第1の「信頼の対象となる一定の責任ある立場の者の(公の)正式な見解の表示」とは解されていないようである(※4)。 (※3) 金子前掲(※1)書145-147頁参照。 (※4) 金子前掲(※1)書145頁参照。   (4) 本件へのあてはめ 企業の有する固定資産については、費用収益対応の原則から、その取得費につき減価償却費の計上を行うこととなるが、当該固定資産が中古資産である場合には、その耐用年数は法定耐用年数ではなく、その事業の用に供した時以後の使用可能期間として見積もられる年数によるか、又はその見積りが困難であるときは、簡便法により算定した年数によることができる。ただし、中古資産の耐用年数の算定は、その中古資産を事業の用に供した事業年度においてすることができるもので、仮にその事業年度において法定耐用年数で減価償却を行った場合には、その後の事業年度において耐用年数の短縮に係る国税局長の承認を受けたケースを除き、中古資産の耐用年数の算定をすることはできないと解される。 (了)

#No. 584(掲載号)
#安部 和彦
2024/09/05

〈令和6年度税制改正〉暗号資産の期末時価評価課税に係る見直し

〈令和6年度税制改正〉 暗号資産の期末時価評価課税に係る見直し   弁護士 下尾 裕   令和6年度税制改正においては、活発な市場を有する暗号資産(市場暗号資産)の期末時価評価課税について、令和5年度税制改正で導入された「特定自己発行暗号資産」に加え、新たに「特定譲渡制限付暗号資産」に該当する類型が期末時価評価課税の対象から除外された。 本稿は、この暗号資産の期末時価評価課税に係る見直し(以下「本改正」という)について、解説を行うものである。   1 本改正に至る経緯 法人(外国法人については恒久的施設を有するもの。以下「内国法人等」という)が事業年度終了の時において有する市場暗号資産については、時価法に基づき、時価評価金額をもって、その時における評価額とするとともに(法法61②)、その暗号資産が自己の計算に基づく場合は、評価損益を損金又は益金に算入するのが原則とされている(いわゆる「期末時価評価課税」、法法61③)。 市場暗号資産において期末時価評価課税が適用されるのは、企業会計において、市場暗号資産の主な保有目的が「時価の変動により売却利益を得ることや決済手段として利用すること」であることを前提に、「活発な市場が存在する暗号資産は、いずれも暗号資産の時価の変動により保有者が価格変動リスクを負うものであり、時価の変動により利益を得ることを目的として保有するものに分類することが適当と考えられる」(「資金決済法における暗号資産の会計処理等に関する当面の取扱い」(平成30年3月14日企業会計基準委員会実務対応報告第38号)第36項)と整理されていたことによるものである。 その後、令和5年度税制改正において、市場暗号資産のうち自らが発行する暗号資産のうち一定の要件を満たす「特定自己発行暗号資産」に該当するものが除外されたが、自由民主党デジタル社会推進本部web3プロジェクトチーム「web3 ホワイトペーパー~誰もがデジタル資産を利活用する時代へ~」(2023年4月)においては、第三者発行暗号資産についても、短期売買目的であるもの以外は期末時価評価課税から除外するよう提言がなされ(6頁~7頁)、経済産業省からもこれに沿った税制改正要望がなされるなど(38-1参照)、さらなる改正が要望されていた。 本改正は、暗号資産について、当初想定された時価の変動により売却利益を得ることや決済手段として利用すること以外の目的が想定されるようになったことに加え、一定の移転制限が付された暗号資産について、暗号資産交換業者に情報提供義務及び公表義務を課すこととなったことも考慮して、これらの情報提供義務等が課される市場暗号資産についても、新たに期末時価評価課税の対象から除外したものとして説明されている。   2 本改正の枠組み (1) 「特定譲渡制限付暗号資産」の意義 「特定譲渡制限付暗号資産」とは、以下の要件にすべて該当する暗号資産を意味する。 実務的には、❶で定められた移転制限の具体的内容は「移転制限が付された暗号資産の情報提供及び公表に関する規則」(一般社団法人日本暗号資産取引業協会=JVCEA)に定められており、大綱、以下の2つの要件を充足するものとされている(同規則第3条及び同規則ガイドライン第3条関係)。 また、❷の具体的手続については、以下の図のとおり、自らが保有する暗号資産に当該規則に沿った移転制限を附した旨を暗号資産取引業者を通じて認定資金決済事業者協会(具体的にはJVCEA)に提供することで、公表等が行われることになる。 (財務省「令和6年度 税制改正の解説」337頁より抜粋) (2) 本改正を踏まえた暗号資産の評価方法 本改正を踏まえた暗号資産の事業年度末における評価方法は以下のとおりである。 内国法人等は、「特定譲渡制限付暗号資産」の取得をした場合、その時点で市場暗号資産であるかどうかにかかわらず、取得をした日の属する事業年度に係る確定申告書の提出期限までに、評価方法を書面により納税地の所轄税務署長に届け出なければならない(法令118の6⑤、118の9①)。 なお、本改正は第三者発行の暗号資産を一定の要件の下に期末時価評価から除外することを念頭においた改正であるが、第三者発行の場合のみならず、自己発行の場合でも前述の要件(2(1))を充足する限りは「特定譲渡制限付暗号資産」に該当することになる。また、仮に自己発行の市場暗号資産が特定自己発行暗号資産及び特定譲渡制限付暗号資産の両方に該当する場合は、後者に該当するものとして取り扱うこととなる(法令118の7④)。 (3) 暗号資産の区分変更等によるみなし譲渡 内国法人等の保有する暗号資産につき、区分の変更等が生じた場合には原則としてみなし譲渡が生じ、変更前後の区分に沿って、帳簿価格又はその時点での時価で譲渡したものとして譲渡損益を計算するものとされている(法法61⑥)。 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 (※1) 二号暗号資産とは、その事業年度開始の時から上記2の事実の生ずる直前の時(上記2(3)の事実である場合には、その事業年度終了の時)までの期間内のいずれかの時において市場暗号資産に該当するものをいう(法令118の11①二)。 (※2) 時価法選定特定譲渡制限付暗号資産とは、時価法により評価した金額をもって期末時における評価額とする特定譲渡制限付暗号資産をいう(法令118の11①二ロ)。 (※3) その事業年度において2以上の事実が生じた場合には、その生じた時のうち最も遅い時となる(法令118の11①四)。 (国税庁「令和6年度法人税関係法令の改正の概要」44頁を基に一部筆者改変)   3 適用関係 本改正は、内国法人等の令和6年4月1日以後に終了する事業年度の所得に対する法人税について適用し、法人の同日前に終了した事業年度の所得に対する法人税については、従前どおりである(改正法附則9①、改正法令附則6①②)。 なお、令和5年度税制改正におけるみなし特定自己発行暗号資産(令和5年改正事業年度終了の時において有する暗号資産でその時においてその全てに譲渡についての制限その他の条件が付されているものに該当するものとして、令和5年改正法附則第12条第2項の規定により特定自己発行暗号資産に該当するものとみなされた暗号資産)を継続保有している場合、当該暗号資産は引き続き特定自己発行暗号資産とみなされる(改正法附則9②、改正法令附則6③)。   (了)

#No. 584(掲載号)
#下尾 裕
2024/09/05

暗号資産(トークン)・NFTをめぐる税務 【第50回】

暗号資産(トークン)・NFTをめぐる税務 【第50回】   東洋大学法学部准教授 泉 絢也   20 ビットコインETFと分離課税(その4):本信託の概要 ビットコインETFの概要と仕組みについて具体性のある議論を行うために、【第47回】で紹介した11銘柄のうちBitwise Bitcoin ETF(銘柄又はファンドの名称であるとともに、信託の名称でもある。以下「本信託」という)を中心的に取り上げる。 以下の記述は、本信託の目論見書(2024.1.10)及び第1回修正リステイト信託契約(2023.12.27)に基づく。 なお、本信託が租税法上の信託に該当するか否かという論点もあることについては後述する。 (1) 本信託と本件持分 (2) 本信託の設立 (3) 本信託の投資目的等 (※) CME CF Bitcoin Reference Rate -New York Variant。ドル建てのビットコインのパフォーマンスを反映するように設計された標準化された参照レート (4) 本信託とビットコイン等 (5) その他   (了)

#No. 584(掲載号)
#泉 絢也
2024/09/05

〈判例・裁決例からみた〉国際税務Q&A 【第44回】「保険業に係る非関連者基準適用の可否」~日産自動車事件(最高裁令和6年7月18日判決)~

〈判例・裁決例からみた〉 国際税務Q&A 【第44回】 「保険業に係る非関連者基準適用の可否」 ~日産自動車事件(最高裁令和6年7月18日判決)~   公認会計士・税理士 霞 晴久   〔Q〕 本連載【第32回】で取り上げた「日産自動車事件」の最高裁判決が出たとのことですが、その概要を教えてください。 〔A〕 令和6年7月18日の最高裁第1小法廷判決では、再保険契約に係る保険は、関連者が有する資産である債権に係る経済的不利益を担保するものであるということができ、上記保険は、「関連者以外の者が有する資産又は関連者以外の者が負う損害賠償責任を保険の目的とする保険」には当たらないから、非関連者基準を満たさず、租税特別措置法68条の90第1項の適用が除外されることとはならないという判断が示され、控訴審判決は棄却されました。 ●●●〔解説〕●●● 1 日産自動車事件 (1) 事案の概要 連結法人である原告Xは、平成28年4月1日から平成29年3月31日までの連結事業年度及び課税事業年度(本件事業年度)に係る法人税等の確定申告をしたところ、処分行政庁から、Xがその株式の全てを間接保有する外国法人であるA社の個別課税対象金額に相当する金額が、当時の租税特別措置法施行令39条の117第8項5号括弧書き(本件括弧書き)にいう「関連者以外の者が有する資産又は関連者以外の者が負う損害賠償責任を保険の目的とする保険に係る収入保険料」に該当せず、外国子会社合算税制の適用除外要件のうちいわゆる非関連者基準を満たさないことから、Xの本件事業年度の連結所得の金額の計算上、益金の額に算入されるなどとして、上記法人税等の各増額再更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分を受けた。本件は、Xが、国を相手に、上記各処分の取消しを求める事案である。 A社は、英領バミューダ諸島で設立された保険業を主たる事業とする外国法人であり、本件事業年度におけるXに係る特定外国子会社等に当たる。一方、メキシコで金融業を営むXの関連者であるB社(※1)は、Xのグループ企業が製造する自動車を割賦で購入する顧客(本件各顧客)とクレジット契約(本件クレジット契約)を締結し、同契約には、B社を最優先の受益者(※2)とする保険契約を締結しなければならないとされており、B社は、メキシコの保険会社C社(非関連者)との間で「債務者の死亡と失業に関する保険契約(本件元受保険契約)」を締結し、本件各顧客が他の保険に加入しない場合は本件元受保険契約に加入させ、本件各顧客からは本件元受保険契約に係る保険料に相当する金額を徴収し、その保険料をC社に支払っていた。一方、C社は、A社との間で、本件元受保険契約で引き受ける全保険リスクの70%をB社が引き受ける内容の保険(本件再保険契約)を締結していた。 (※1) Xは、B社の発行済株式総数を間接保有していた。 (※2) 未回収のクレジット債権に係る損失を優先的に補填することを意味していると思われる。 2016年3月期のA社の収入保険料の総額は5億2,521万米ドル余であったところ、C社から受領した再保険契約に基づく収入保険料の総額(1,149万米ドル余)を、仮に関連者からのものとした場合には、A社の収入保険料(※3)のうちに占める非関連者からの収入保険料の割合は50%を下回り、非関連者基準を満たさないという状況であった。 (※3) A社のバミューダにおける所得に対する租税の負担割合は0%であった。 (2) 第一審及び控訴審の判決の要旨 ① 第一審 本件第一審である東京地裁(※4)は、主に以下のように判示して、本件再保険契約に係る収入保険料は「関連者以外の者が有する資産又は関連者以外の者が負う損害賠償責任を保険の目的とする保険に係る収入保険料」には該当しないとして、課税庁の処分を適法と判断した。 (※4) 東京地裁令和4年1月20日判決(令和2年(行ウ)第86号)、TAINSコード:Z272-13661 ② 控訴審の判断 上記の地裁判決を受け、これを不服としてXが控訴したところ、主に以下のとおり、東京高裁(※5)は一転、本件各処分は違法であるとしてXの請求を認容した。 (※5) 東京高裁令和4年9月14日判決(令和4年(行コ)第36号)、TAINSコード:Z272-13755   2 最高裁判決 《最高裁一小令和6年7月18日判決(令和4年(行ヒ)第373号)》(※6) (※6)  TAINSコード:Z888-2623 (1) 法令解釈 (2) 当てはめ (3) 結論   3 検討 筆者は、本連載【第32回】の解説において、控訴審が保険料の実質的負担者は本件各顧客であると認定し、本件元受保険契約は、本件各顧客の生命、身体等に対する保険危険を担保する保険であると判断したことにつき、「そもそもB社がC社と本件元受保険契約を締結した目的は、B社の債権回収リスクをカバーするためであって、本件各顧客の生命、身体等に対する保険危険というのは、本件元受保険契約に基づき、その給付が実行されるきっかけに過ぎないというべきである。したがって、控訴審の判旨はやや無理筋かと思われる。」と批判したが、最高裁も同様の判断をしたものと思われる。 控訴審のいう、「本件元受保険契約は、本件各顧客の生命、身体等に対する保険危険を担保する保険である」が事実ならば、保険金の給付は、本件各顧客及びその親族に対しなされることとなるが、本件はそのような契約とはならないのは明白であり、控訴審の事実誤認という他はない。 (了)

#No. 584(掲載号)
#霞 晴久
2024/09/05
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