〔疑問点を紐解く〕 インボイス制度Q&A 【第12回】 「電子インボイスとデジタルインボイスの違い」 税理士 石川 幸恵 【Q】 電子インボイスとデジタルインボイスの違いは何ですか。 〔ポイント〕 (1) 電子インボイスは、データそのもののほか、PDF保存したファイルや、紙をスキャンして画像データ化したものを含みますが、デジタルインボイスは電子インボイスのうちデータそのもののみを指します。 (2) 日本のデジタルインボイスの標準仕様「Peppol BIS Billing JP」のドラフト版(ver.0.9)が2021年12月にデジタル庁のホームページで公開されました。2022年秋以降には、インボイス制度導入に先駆けてサービス提供が始まる可能性があります。 * * * 【A】 (1) 電子インボイスとは? 「電子インボイス」とは、インボイス制度の下で紙のインボイスに代わって提供される電磁的記録を指します。したがって、下記(2)で解説するデジタルインボイスのほか、適格請求書発行事業者が電子メールに添付して送るPDF形式のインボイスも「電子インボイス」に含まれます。 PDFによるやり取りでは、売り手(インボイスの発行者)がPDFファイルを電子メールで送ったとしても、買い手(インボイスの受け手)で内容の確認や購買システムへの入力などのために紙に印刷することも多く、必ずしもペーパーレスにつながっていないと考えられます。 (2) デジタルインボイスとは? 売り手が、自社の請求システムからインボイスのデータをインターネット経由などで送信し、送られてきたデータを買い手が購買システムに取り込めば、紙に印刷することなく処理を進めることができます。このようにデータそのものでやり取りするインボイスがデジタルインボイスです。 PDF形式のインボイスはディスプレイで表示したり、プリンターで印刷すれば人が読めるものですが、デジタルインボイスはコンピュータが取り込んで処理するための符号であり、人が見て読めることは求められていません。 (3) 標準化とは? デジタルインボイスのようなデータを事業者間でやり取りできるようにするためには、電子メールのやり取りのようにデータ中継の仕方やデータの並び方などを取り決めておく(=標準化)必要があります。日本では、デジタル庁が官民連携でデジタルインボイスの標準化策定を進めており、昨年12月に「Peppol BIS Billing JP」のドラフト版(ver.0.9)が公表されました。 (4) デジタルインボイスの実用化にあたって ① 中小企業は利用可能か? 会計・業務システムベンダーが自社のソフトやシステムにPeppol対応サービスを組み込んで、事業者に提供することが想定されています。事業者は、Peppolの仕組みを意識することなく、データのやり取りが可能になると考えられます。 (出典) 電子インボイス推進協議会ホームページ「電子インボイスとは」の図を参考に筆者作成。 ② インボイスとしての保存要件を満たすか? データセットを電子帳簿保存法に準じた方法で保存すれば、仕入税額控除のインボイス保存の要件を満たします。 ③ 実用化の時期 2022年秋にはPeppol対応サービスが各システムベンダーから提供される可能性があります。 (了)
金融・投資商品の税務Q&A 【Q73】 「前年に確定申告をしなかった譲渡損失がある場合の繰越控除の可否」 PwC税理士法人 金融部 ディレクター 税理士 西川 真由美 ●○ 検 討 ○● 1 上場株式等に係る譲渡損失の繰越控除 (1) 繰越控除の概要とその対象となる上場株式等の範囲 上場株式等に係る譲渡損失について、その年分の上場株式等に係る譲渡所得等の金額の計算上、控除してもなお控除しきれない部分の金額は、一定の要件のもと、翌年以降3年間にわたって繰り越す特例が認められています。 過去3年以内に生じた上場株式等に係る譲渡損失の金額を控除する場合において、その年分の上場株式等に係る譲渡所得等の金額及び上場株式等に係る配当所得等の金額(申告分離課税を選択したものに限ります)があるときは、まず譲渡所得等の金額から控除し、なお控除しきれない損失の金額があるときは、配当所得等の金額から控除します。 本特例の対象となる上場株式等に係る譲渡は、証券会社(金融商品取引業者)等への売委託によるものや証券会社等に対する譲渡など一定のものに限られていますので、上場株式等の譲渡であっても、相対取引によるものや外国の証券会社に対して直接譲渡するものは対象にはなりません。 (2) 必要な手続き 上場株式等に係る譲渡損失の繰越控除の特例を適用するためには、以下の手続きが必要となります。 また、上記の確定申告書には、期限後申告書を含むこととされています。したがって、確定申告書の提出期限後に提出したものであっても、本特例の適用を受けるための手続きとして認められることになります。 2 本件へのあてはめ 上場株式等に係る譲渡損失が生じた年分(つまり、2020年分)の確定申告書が提出されていないことから、上記1(2)①の手続き要件を充足していないようにも考えられます。しかしながら、ここでいう確定申告書には期限後申告書も含むこととされているため、2021年分の確定申告書を提出するまでに、必要書類を添付した2020年分の申告書を提出すれば、譲渡損失の繰越控除が適用されるものと考えられます。 具体的には、2020年分の申告書に、「上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除用の確定申告書付表」及び「株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書」を添付して、2021年分の確定申告書の提出より前にこれを提出し、2021年分の確定申告書にも当年分の確定申告書付表及び計算明細書を添付することで、A株式について2020年に生じた譲渡損失(1,000,000円)は、2021年のB株式に係る譲渡所得等の金額から控除されるものと考えられます。 また、控除しきれない金額(1,000,000円-600,000円=400,000円)は、翌年以降2年間にわたって、2023年まで繰越控除の対象となるものと考えられます。 (了)
〔事例で解決〕小規模宅地等特例Q&A 【第27回】 「区分登記がされていない場合の特定居住用宅地等の特例の適用 (同居親族と別居親族の「居住していた」の要件の留意点)」 税理士 柴田 健次 [Q] 被相続人である甲(相続開始日:令和4年3月1日)は、下記の土地及び家屋を所有していました。土地建物の生前の利用状況は、下記の通り、1階部分は甲が居住の用に供し、2階部分は長女である乙家族が居住の用に供しています。区分登記はされていませんが、建物の各階ごとに玄関があり、構造上区分された建物で甲は1階で1人で生活をしていました。また、甲は乙から賃料を収受していませんでした。 【相続発生前の利用状況】 甲の相続発生に伴い、甲の所有していた土地及び建物を乙及び長男である丙が1/2ずつ取得した場合には、乙及び丙が適用できる特定居住用宅地等に係る小規模宅地等の特例の適用面積は何㎡でしょうか。 相続人は乙と丙の2人です。乙は甲と生計を別にしており、相続後は引き続き上記の土地家屋に居住しています。丙は甲と生計を別にしており、相続開始前10年間の間は会社の社宅に居住し、相続後も引き続き会社の社宅に居住しています。 [A] 乙及び丙は取得した宅地等の面積の1/2相当である165㎡についてそれぞれ特定居住用宅地等に係る小規模宅地等の特例(以下単に「特例」という)を受けることができます。 ◆ ◆ ◆[解説]◆ ◆ ◆ 1 特定居住用宅地等の意義 被相続⼈⼜は当該被相続⼈と⽣計を⼀にしていた当該被相続⼈の親族(以下「被相続人等」という)の居住の⽤に供されていた宅地等(当該宅地等が2以上ある場合には、政令で定める宅地等に限る。「第19回で解説」)で、当該被相続⼈の配偶者⼜は一定の要件を満たす当該被相続⼈の親族(当該被相続⼈の配偶者を除く)が相続⼜は遺贈により取得したものをいいます(措法69の4③二)。 一定の要件を満たす被相続人の親族は、下記の(1)~(3)のいずれかを満たす親族をいいます。 (1) 同居親族 当該親族が相続開始の直前において当該宅地等の上に存する当該被相続⼈の居住の⽤に供されていた⼀棟の建物(当該被相続⼈、当該被相続⼈の配偶者⼜は当該親族の居住の⽤に供されていた部分として政令で定める部分に限る)に居住していた者であって、相続開始時から申告期限まで引き続き当該宅地等を有し、かつ、当該建物に居住していること。 政令で定める部分とは、次に掲げる場合の区分に応じてそれぞれに定める部分をいいます(措令40の2⑬、措通69の4-7の4)。 (2) 別居親族 当該親族が次に掲げる要件の全てを満たすこと(措令40の2⑭⑮、措規23の2④)。 (3) 生計一親族 当該親族が当該被相続⼈と⽣計を⼀にしていた者であって、相続開始時から申告期限まで引き続き当該宅地等を有し、かつ、相続開始前から申告期限まで引き続き当該宅地等を⾃⼰の居住の⽤に供していること。 2 一棟の建物で区分登記がされていない二世帯住宅の場合の特定居住用宅地等の範囲 被相続人の居住の用に供されていた建物が一棟の建物(区分所有建物である旨の登記がされている建物を除く)である場合には、その一棟の建物の敷地の用に供されていた宅地等のうち被相続人の親族の居住の用に供されていた部分は、被相続人の居住の用に供されていた宅地等として取り扱います(措令40の2④、措通69の4-7)。 3 本問への当てはめ 本問の場合には、入口の要件として被相続人等の居住の用に供されていた宅地等に該当するのか、出口の要件として取得者の要件を確認することになります。 入口の要件としては、1階部分については、被相続人の居住の用に供されていた宅地等に該当し、2階部分についても上記2の取扱いにより被相続人の居住の用に供されていた宅地等に該当することになりますので、入口の要件は満たしていることになります。続いて取得者の要件ですが、取得者ごとに確認すると下記の通りとなります。 〔乙について〕 乙は上記1(1)に記載されている「被相続⼈の居住の⽤に供されていた⼀棟の建物に居住していた者」であり、かつ、「相続開始時から申告期限まで引き続き当該宅地等を有し、かつ、当該建物に居住していること」の要件を満たします。したがって、取得者の要件を満たすことになりますので、他の要件を満たせば特例の対象になります。 〔丙について〕 上記1(2)の③の要件である「相続開始の直前において被相続人の居住の用に供されていた家屋に居住していた被相続人の相続人(相続の放棄があった場合には、その放棄がなかったものとした場合の相続人)がいないこと」が問題になります。 すなわち、乙が被相続人の居住の用に供されていた家屋に居住していた相続人に該当するか否かについて検討を行う必要があります。租税特別措置法関係通達69の4-21(被相続人の居住用家屋に居住していた親族の範囲)においては、下記の通り記載されています。 本問の場合には、1階と2階は構造上区分されており、甲は独立して1階部分に1人で居住していますので、甲の居住の用に供されていた家屋に居住していた者はいなかったことになります。したがって、上記1(2)の③の要件も満たされることになりますので、他の要件を満たせば特例の適用を受けることができます。 ★実務上のポイント★ 区分登記がされていない一棟の建物で構造上区分されている建物である場合には、同居親族の要件である「⼀棟の建物に居住していた」と別居親族の要件である「被相続人の居住の用に供されていた家屋に居住していた」の意味がそれぞれ異なる点については、十分に注意する必要があります。 (了)
事例でわかる[事業承継対策] 解決へのヒント 【第39回】 「受益者連続型信託における登録免許税及び不動産取得税」 太陽グラントソントン税理士法人 (事業承継対策研究会) シニアマネジャー 公認会計士・税理士 岩丸 涼一 相談内容 私Aは個人事業主として不動産賃貸事業をしていますが、80歳を迎え最近は物忘れが多くなりました。また、私の二男Cは障害があり(配偶者・子供なし)、将来、経済的に安定した生活を過ごせるか不安を感じています。賃貸事業は会社Xを経営している長男Bに承継してほしいと考えています。 こうしたなか、認知症対策として最近「家族信託」というものがあり、受益者連続型信託とすることで二男の将来の生活不安も解消できる可能性があることを知りました。 そこで、私Aが所有する賃貸不動産を信託し、私が委託者兼第1受益者となり、第2受益者を二男C、第3受益者を長男Bとし、最終的には長男Bの子供(私Aの孫D)を帰属権利者とする受益者連続型信託を組成したいと思っています。受託者は長男Bの経営する会社Xに依頼しようと考えています。 しかし、不動産の時価がとても高く、受益者連続型信託の場合の信託終了時の流通税(登録免許税及び不動産取得税)の適用がわからず困っています。 〈信託のスキーム〉 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 ■ □ ■ □ 解 説 □ ■ □ ■ [1] 流通税を考慮すべき場面 [2] 信託開始時・受益権相続時の流通税 信託開始時は、固定資産税評価額に対して登録免許税が0.4%(※1)生じ、不動産取得税は非課税です。受益権相続時は不動産1件当たり1,000円の登録免許税が必要となります。 (※1) 建物について令和5年3月31日までは0.3%。 [3] 信託終了時の登録免許税の取扱い 信託が終了して不動産を受託者から帰属権利者に移す場合であって、下記の要件を満たす場合、相続による財産権の移転と同様に登録免許税が減免(2%→0.4%)されます(登録免許税法第7条②)。 [4] 登録免許税に関する文書回答事例 国税庁ホームページの文書回答事例(※2)では、信託の終了に伴い帰属権利者が受ける所有権の移転登記時の登録免許税の適用について、上述[3]の要件①(信託の効力が生じた時から引き続き委託者のみが元本受益者である信託)の継続状況をどのように考えるかが問われています。 (※2) 国税庁文書回答事例「信託の終了に伴い、受託者兼残余財産帰属権利者が受ける所有権の移転登記に係る登録免許税法第7条第2項の適用関係について」(平成30年12月18日 名古屋国税局) 背景としては、信託法では、信託が終了した場合においても、その清算が結了するまで信託はなお存続するものと擬制され(信託法176条)、帰属権利者は、当該清算中は受益者とみなされる旨(信託法183条⑥)が規定されているためです。 文書回答事例では、「本件信託に係る委託者の地位は、帰属権利者(受益者)として指定されている者が取得し、委託者の権利については、相続により承継されることなく消滅します」とし、上述[3]の要件①の委託者兼受益者の状況が信託期間中、常に継続するように信託契約を作成することにより、上述[3]の要件①が満たされることが示されています。 受益者連続型信託についても、信託契約で「委託者の地位」を「受益者」が常に引き継いでいくことにより、上述[3]の要件①を満たすと考えます。 [5] 信託終了時の不動産取得税の取扱い 受託者から受益者(帰属権利者)に信託財産を移す場合における不動産の取得について下記の要件を満たす時は、相続による財産権の移転と同様に不動産取得税は非課税(4%→0%)とされています(地方税法第73条の7四ロ)。 [6] 不動産取得税に関する実務担当官の見解 上述「[5] 信託終了時の不動産取得税の取扱い」について、「月刊税(2011年8月号)ぎょうせい」のP75~79において、東京都主税局資産税部担当官が、信託受益権の相続が複数回生じた事例について、相続の場合は所有権取得による課税関係は非課税であるので、信託財産の引継ぎにおいても相続による所有権移転の規定との均衡を重視した解釈をするべきである見解を私見として記載しています。 すなわち、信託受益権の相続が複数回生じた場合で上述[5]の要件②(受益者(帰属権利者)が信託の効力が生じた時における委託者から相続(包括遺贈等含む)をした者)に該当しない場合、文理解釈上は非課税規定の適用はないことになりますが、立法趣旨を鑑みた行政担当官の見解はこの場合も非課税とすべきとしています。 [7] 結論 信託終了時に残余財産の給付として、受託者XからDに不動産が移転する場合を前提とすると、上述の[3]の要件①及び[5]の要件①は、いずれの流通税でも委託者兼受益者の状況が常に継続するような信託契約を作成することで満たすことができます。 しかし、上述の[3]の要件②及び[5]の要件②について、登録免許税は信託終了時に所有権を取得する帰属権利者であるDが信託の効力発生時の委託者であるAの相続人でないため満たしません。また、不動産取得税についても信託の効力が生じた時における委託者Aから相続するのは相続人のBとCですのでDは満たしません。 したがって、文理解釈上は登録免許税及び不動産取得税について、相続同様の減免・非課税措置は適用されないものと考えます。 一方で、不動産取得税の実務担当官の見解によると、AからCへ受益権の相続、CからB(Cの唯一の相続人)へ受益権の相続、そして信託終了によるBからDへの経済的利益の移転(信託終了による受託者からの残余財産給付)について非課税適用することは、相続による不動産の所有権移転を非課税としていることとの均衡を図るという趣旨に合致することとなりますので非課税となります。 しかしながら、これは都道府県での統一見解ではなく、実務を行う担当官による取扱いの違いも想定できるところ、当該見解のみによることはリスクがあると考えます。 以上より、不動産取得税の実務担当官の見解(不動産取得税の非課税措置の立法趣旨)を踏まえたうえで、最終的には条文の文理解釈を採用するべきと考えます。 今後、受益者連続型の信託における流通税の取扱いが整備される可能性はありますが、信託終了時の課税関係については、帰属権利者Dにも情報共有しておくべきでしょう。 具体的な対策については、税理士等の専門家と相談の上、実行されることをお勧めします。 (了)
〔顧問先を税務トラブルから救う〕 不服申立ての実務 【第11回】 「原処分庁からの答弁書には何が書かれているか」 公認会計士・税理士 大橋 誠一 1 答弁書要求 審査請求書が提出されて、形式審査の結果、それが適法のものである(却下事件ではない)と確認した場合、各地域国税不服審判所長(首席審判官)は、原処分庁に対して答弁書の提出を要求する。 期限については、再調査の請求を経ない(直接審査請求)事件である場合には4週間以上の期間を、再調査の請求を経ている事件である場合には、既に再調査決定書の起案段階で原処分庁としての内容整理を事実上終えていると考えられることから、それよりも短い期間をそれぞれ指定することが多い。 しかし、審査請求人による審査請求書と比較して、原処分庁による答弁書は、起案者から各段階の担当官の審査、最終的には原処分庁本人である税務署長に対する報告及び決裁を経る必要があることから、年末年始・ゴールデンウィークその他の決裁ラインの者が揃わない時期については、弾力的に期限を伸長することもあり得る。 2 答弁書の様式 (1) 答弁書のひな形 ある法人税(地方法人税)の審査請求事件の答弁書の様式は以下のとおりである。 (2) ページ数 審査請求人の主張がおおよそ課税要件から離脱しているような苦情事案でない限り、本文のみで10ページ以上に及ぶことが通常であり、事実関係が複雑な事案や国際事案などは100ページ以上に及ぶこともある(裁決書も同様である)。 (3) 作成過程 原処分庁である税務署長所属の不服申立担当者が各課税第1部門に配属されており、答弁書案はその者によって起案されるのが通常である。 次に、国税局課税部審理課の税目別の不服申立担当の主査(税務署統括官級)及びその部下である実査官のレビューを受けて、場合によっては証拠評価の再検討がなされる(起案者である税務署の不服申立担当者の能力や経験によっては主査・実査官が肩代わりして起案することもある)。 審理課のレビューを終えた答弁書案は、担当副署長を経て署長に説明して決裁を得た上で正本と副本が作成され、各地域国税不服審判所に送付される。 正本は各地域国税不服審判所(担当審判官)が保管し、副本が「反論書」の提出依頼と併せて審査請求人に送付される。 3 答弁書の吟味 (1) 記載された「事実」の認否 上記のひな形の2(1)に記載されている事実が審査請求人にとって真実であるか否かを慎重に吟味する必要がある。 仮に、記載された事実が真実ではない場合には、その旨及び審査請求人が真実と考える事実を反論書に記載した上で、それを裏付ける証拠書類を「証拠説明書」とともに担当審判官に提出することになる。 (2) 閲覧謄写請求の検討 答弁書に事実として記載された事項が、必ずしも審査請求人から提出された証拠に基づくものでなく、原処分庁による職権調査によって収集されたものであることも考えられる。 その場合、担当審判官に対して、原処分庁が任意に提出した証拠及び担当審判官が職権で収集した証拠について、閲覧及び写しの交付を請求することを検討すべきであろう。 なお、閲覧を請求するといっても、どのような証拠を担当審判官が保管しているかわからないことが通常であり、あらかじめ、担当審判官から以下の各リストの提供を受けて、これを基に閲覧を求める証拠の特定を行うことになる。 (3) 審査請求の理由に対する答弁であるか 国税通則法第93条第2項は、「前項の答弁書には、審査請求の趣旨及び理由に対応して、原処分庁の主張を記載しなければならない」旨規定されている。 これは、答弁書の記載が原処分通知書の「処分の理由」の引き写しにすぎないケースや、審査請求書における審査請求人の主張内容を無視して独りよがりの結論を導いているケースがなくはないことから、審査請求人と原処分庁との主張の対比を明確にして、担当審判官による争点整理に資するために存在する規定であると考えられる。 したがって、上記のようなケースが認められる場合には、反論書を通じて、原処分庁側の追加対応を求めることが想定される。 4 反論書起案上の留意点 前述のとおり、答弁書は相応のボリュームがあり、原処分通知書と比較してより争訟の色彩を帯びた様式となっている。 これを争訟の経験の薄い審査請求人又は代理人が表面的に見ると、いかにも隙のない内容の書面との印象を受けるようである。 しかし、答弁書の起案者である税務署の不服申立担当者や国税局の審理課職員は、 といった本音を隠して、さも、 という姿勢が表面上だけでも滲み出るように工夫して起案しているケースもあると仄聞する。 答弁書のボリュームが多いといっても、それを丁寧に読み下した上で分析を加え、 といった事項が識別されれば、それらを中心に積極的に反論を加えていくことになるだろう。 (了)
さっと読める! 実務必須の [重要税務判例] 【第73回】 「都市計画法による土地の買取と長期譲渡所得の特別控除事件」 ~最判平成22年4月13日(民集64巻3号791頁)~ 弁護士 菊田 雅裕 (了)
2022年3月期決算における会計処理の留意事項 【第1回】 史彩監査法人 公認会計士 西田 友洋 Ⅰ 税制改正等 1 2022年3月期における税率 2022年3月期に適用される税率は、2021年3月期と変更はない。また、令和4年度税制改正大綱においても、変更は予定されていない。そのため、法定実効税率は、前期と同様である。 なお、各地方公共団体で超過税率が改正された場合、法定実効税率が変わる可能性があるため、超過税率については、地方自治体のホームページ等で確認する必要がある。 【設例①】 東京都で外形標準課税適用法人の場合 【設例②】 東京都で外形標準課税「不」適用法人の場合 2 欠損金の繰戻し還付 青色欠損金の繰戻し還付制度とは、欠損金額を前1年以内に開始した事業年度に繰り戻して、法人税の還付を請求できる制度(前期に支払った法人税額を還付してもらう制度)である。還付を請求するか、欠損金を繰り越すかは、各法人の任意選択である。 従来は、資本金又は出資金の額が1億円以下の中小企業者だけに認められていた。現在は、2020年4月の緊急経済対策により、「2020年2月1日から2022年1月31日までの間に終了する事業年度に生じた欠損金」については、資本金又は出資金の額が1億円超10億円以下の法人についても認められている。 ただし、大規模法人(資本金又は出資金の額が10億円超の法人等)による完全支配関係がある法人、100%グループ内の複数の大規模法人に発行済株式等の全部を直接又は間接に所有されている法人は除かれる。資本金が10億円以下、10億円超の判定については各事業年度終了の時点で行う。 会計処理への影響 欠損金の繰戻し還付は、国税のみの制度のため、欠損金の繰戻し還付を請求した場合、法人税と地方法人税については、還付が行われるが、法人事業税や法人住民税の地方税は欠損金の繰戻し還付の制度がないため、還付は行われない。 そのため、欠損金の繰戻し還付の適用を受けた場合、法人税部分の欠損金の残高は減少するが、法人住民税及び法人事業税部分の欠損金は、使用していないため、残高は減少しない。 (※1) 法人住民税率/(1+ 事業税率(超過税率)+ 事業税率(標準税率)× 特別法人事業税率) (※2) (事業税率(超過税率)+ 事業税率(標準税率)× 特別法人事業税率)/(1 + 事業税率(超過税率)+ 事業税率(標準税率)× 特別法人事業税率) * * * 3 繰越欠損金の控除上限の特例 令和3年度税制改正において、一定の要件を満たした場合、繰越欠損金の控除上限を引き上げる特例が創設された。 【投資額と控除上限のイメージ】 (出所:経済産業省「「繰越欠損金の控除上限」の特例ガイドライン」P.2) (出所:経済産業省「「繰越欠損金の控除上限」の特例ガイドライン」P.7) 会計処理への影響 上記制度を利用した場合、繰越欠損金の解消時期が変わるため、繰延税金資産の回収可能性に影響する可能性がある。 * * * 4 令和4年度税制改正大綱 令和4年度税制改正大綱(以下、「税制改正大綱」という)のうち、主要な改正案として、以下が挙げられる。 ① グループ通算制度の見直し 税制改正大綱において、グループ通算制度について、以下の見直しが予定されている。適用時期は、税制改正大綱上、明記されていない。 (ⅰ) 投資簿価修正制度の見直し グループ通算制度からの離脱時において、のれん相当額が損金(譲渡原価)に含まれるように改正が予定されている。 (※) 資産調整勘定等対応金額とは、通算子法人の通算開始・加入前に通算グループ内の法人が時価取得した子法人株式の取得価額のうち、その取得価額を合併対価としてその取得時にその通算子法人を被合併法人とする非適格合併を行うものとした場合に資産調整勘定又は負債調整勘定として計算される金額に相当する金額をいう。 (ⅱ) 離脱時の時価評価制度の見直し グループ通算制度からの離脱時の時価評価制度について、以下のとおり、改正が予定されている。 (ⅲ) 通算税効果額の範囲の見直し 通算税効果額の範囲について、以下のとおり、改正が予定されている。 (ⅳ) 支配関係5年継続要件の見直し 現行上、開始・加入時の欠損金等の制限を検討する際の「支配関係5年継続要件を満たす場合」とは、以下のいずれかに該当する場合をいう。このうち、(b)について、改正が予定されている。 (ⅴ) 認定事業適応法人の欠損金の損金算入の特例 事業競争力強化法の認定事業適応法人の欠損金の損金算入の特例を受ける場合の非特定超過控除対象額の配賦方法について、以下の改正が予定されている。 会計処理への影響 税効果会計に影響する可能性がある。 * * * ② 外形標準課税対象法人の事業税の所得割軽減税率の見直し 外形標準課税対象法人の事業税の所得割軽減税率について、以下のとおり、改正が予定されている。適用時期は、2022年4月1日以後に開始する事業年度からである。 ③ 完全子法人株式等の配当に係る源泉徴収の見直し 完全子法人株式等の配当に係る源泉徴収について、以下のとおり、改正が予定されている。適用時期は、2023年10月11日以後に支払を受けるべき配当等からである。 ④ みなし配当の計算の見直し みなし配当の計算について、以下の改正が予定されている。過去に遡って適用されるため、法定申告期限から5年以内であれば、更正の請求を行うことができる。 ⑤ 貸付け用少額資産の損金算入制度の見直し 少額資産の損金算入制度について、「貸付け用の資産(主要な事業(リース業等)として行われるものを除く)」を除くように改正が予定されている。少額資産の損金算入制度を利用できない場合は、通常の減価償却計算を行う。税制改正大綱では、適用時期は明記されていない。 ⑥ インボイス制度の見直し 2023年10月1日以後、免税事業者が適格請求書発行事業者の登録を柔軟に行えるように、期の途中でも登録手続が行えるように改正が予定されている。 【期の途中での登録】 ⑦ 電子帳簿保存制度の経過措置 令和3年度税制改正について、申告所得税・法人税に係る保存義務者は、2022年1月1日以後に行われた電子取引(請求書・領収書等の授受を電子データで行う取引)の取引情報(請求書・領収書等)を、電子データのまま保存しなければならないとされた。 しかし、対応に間に合わない事業者が多いため、2022年1月1日から2023年12月31日までの間に行われた電子取引は、保存要件にしたがって保存できなかったことについてやむを得ない事情がある場合には、引き続きその出力書面(紙)による保存が可能である。 Ⅱ 連結納税制度からグループ通算制度への移行に係る税効果会計の適用に関する取扱い 2020年3月31日にASBJより実務対応報告第39号「連結納税制度からグループ通算制度への移行に係る税効果会計の適用に関する取扱い(以下、「グループ税効果」という)」が公表された。 グループ通算制度の適用を前提として繰延税金資産の回収可能性の会計処理についてまとめたものである。 1 会計処理 改正法人税等の成立日以後に終了する事業年度の決算(四半期含む)についてグループ通算制度の適用を前提とした税効果会計における繰延税金資産及び繰延税金負債の額については、実務対応報告第5号「連結納税制度を適用する場合の税効果会計に関する当面の取扱い(その1)」及び実務対応報告第7号「連結納税制度を適用する場合の税効果会計に関する当面の取扱い(その2)」に関する必要な改廃が行われるまでの間は、グループ通算制度への移行及びグループ通算制度への移行にあわせて単体納税制度の見直しが行われた項目について、企業会計基準適用指針第28号「税効果会計に係る会計基準の適用指針」第44項の定めを適用せず、改正前の税法の規定に基づいて会計処理することができる(グループ税効果3)。 2 注記 繰延税金資産及び繰延税金負債の額について、追加情報として、改正前の税法の規定に基づいている旨を注記する(グループ税効果4)。また、計算書類においても重要性に応じて記載するかどうかを検討する必要がある。 【事例】 東北電力(株) 2021年3月期 有価証券報告書 3 適用時期 公表日以後適用する。 Ⅲ グループ通算制度を適用する場合の会計処理及び開示に関する取扱い 2021年8月12日にASBJより、実務対応報告第42号「グループ通算制度を適用する場合の会計処理及び開示に関する取扱い(以下、「グループ実務報告」という)」が公表された。 1 会計処理及び開示 詳細は、下記の拙稿を参照されたい。 2 適用時期 適用時期は、以下のとおりである(グループ実務報告31、65、66)。 なお、上記Ⅱで解説した実務対応報告第39号「連結納税制度からグループ通算制度への移行に係る税効果会計の適用に関する取扱い」については、本実務対応報告の適用により、当該実務対応報告を適用する企業が存在しなくなった段階で廃止される(グループ実務報告34)。 (了)
〔まとめて確認〕 会計情報の月次速報解説 【2022年2月】 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 2022年2月1日から2月28日までに公開した速報解説のポイントについて、改めて紹介する。 具体的な内容は、該当する速報解説をお読みいただきたい。 Ⅱ 新会計基準関係 日本公認会計士協会から「ソフトウェア制作費等に係る会計処理及び開示に関する研究資料~DX環境下におけるソフトウェア関連取引への対応~」(公開草案。会計制度委員会研究資料)が公表され、意見募集が行われている。 これは、DX環境下におけるソフトウェア関連取引に係る会計処理等の課題を抽出し検討したものであり、ソフトウェアに関連する会計処理などが詳細に検討されている。 Ⅲ 記述情報の開示関係 金融庁から、「記述情報の開示の好事例集2021」の更新が公表されている。 これは、経営方針、経営環境及び対処すべき課題等・事業等のリスク・MD&Aの開示に関する好事例を追加するものである。 Ⅳ 監査法人等の監査関係 監査法人及び公認会計士の実施する監査に関連して、次のものが公表されている。 ① 「EDINETで提出する監査報告書へのXBRLタグ付けについて(お知らせ)」(内容:「その他の記載内容」に関するXBRLタグ付けの追加」など) ② 「IT委員会研究報告第27号「監査人のためのIT教育カリキュラム」の改正」(内容:IT環境において監査を実施する公認会計士の育成を図る上で参考となるIT教育カリキュラムの例などを記載) ③ 「公益法人会計基準を適用する公益社団・財団法人及び一般社団・財団法人の理事者確認書に関するQ&A」(非営利法人委員会研究報告第22号)などの改正(内容:監査基準委員会報告書580「経営者確認書」の改正に対応) Ⅴ 知財・無形資産関係 「知財投資・活用戦略の有効な開示及びガバナンスに関する検討会」から、「知財・無形資産の投資・活用戦略の開示及びガバナンスに関するガイドライン(略称:知財・無形資産ガバナンスガイドライン)Ver1.0~知財・無形資産の投資・活用戦略で決まる企業の将来価値・競争力~(投資家や金融機関等との建設的な対話を目指して)」が公表されている。 2021年6月のコーポレートガバナンス・コードの改訂を受けたものであり、知財・無形資産の投資・活用などについて述べている。 (了)
ハラスメント発覚から紛争解決までの 企 業 対 応 【第24回】 「取引先からのパワハラに関する会社の責任」 弁護士 柳田 忍 【Question】 当社の従業員Aが取引先の部長Bからパワハラを受けているという申告がありましたが、社内のパワハラと同様に、いわゆる「パワハラ防止法」や「パワハラ指針」に沿って調査等を行う必要があるでしょうか。 【Answer】 取引先からのパワハラは、「パワハラ防止法」や「パワハラ指針」における措置義務の対象とされていませんので、「パワハラ防止法」や「パワハラ指針」に沿った調査等を行わなくても措置義務違反にはなりません。 しかし、会社が適切な調査や是正措置、再発防止措置の実施等を怠った場合には、会社は従業員Aに対して民事上の損害賠償責任を負う可能性があります。 ● ● ● 解 説 ● ● ● 1 取引先からのハラスメントと会社の措置義務 会社は、セクハラやパワハラ等のハラスメント防止のための雇用管理上の措置義務等を負っている(※1)。では、会社は、取引先の従業員等から自社の従業員等へのハラスメントに関しても当該措置義務を負うのであろうか。 (※1) パワハラについては、労働施策総合推進法(パワハラ防止法)第30条の2、「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」(令和2年1月15日厚生労働省告示第5号・パワハラ指針)参照(なお、中小企業については令和4年3月31日までは努力義務)。セクハラについては、男女雇用機会均等法第11条及び「事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」(平成18年厚生労働省告示第615号・セクハラ指針)参照。 (1) セクハラについて まず、セクハラについては、「セクハラ指針」が以下のように定めるとおり、取引先からのセクハラについても措置義務の対象となる(下線は筆者による)。 また、男女雇用機会均等法第11条第3項は、事業主に対して、他の事業主から当該事業主の講ずるセクハラ防止措置の実施に関して必要な協力を求められた場合には、これに応ずるよう努めなければならないと定めている。かかる規定により、取引先と取引先からセクハラを受けた企業とが協力して取引先によるセクハラの事案解明や是正措置・再発防止措置の策定を行うことが期待される。 (2) パワハラについて 一方、取引先からのパワハラは、パワハラの措置義務の対象とはされておらず、「パワハラ指針」において、あくまで、取引先等の他の事業主が雇用する労働者又は他の事業主からのパワハラによって、その雇用する労働者が就業環境を害されることのないよう、相談に応じ、適切に対応するために必要な体制を整備するなどの取り組みを行うことが「望ましい」とされているに留まる(パワハラ指針「7.事業主が他の事業主の雇用する労働者等からのパワーハラスメントや顧客等からの著しい迷惑行為に関し行うことが望ましい取組の内容」参照)。 その理由として、「検討会報告書」(※2)の「5.顧客や取引先からの著しい迷惑行為」は、顧客や取引先からの悪質な著しい迷惑行為への対応は、職場のパワーハラスメントへの対応と次の点で異なることなどを挙げている。 (※2) 厚生労働省「職場のパワーハラスメント防止対策についての検討会」による「職場のパワーハラスメント防止対策についての検討会報告書」(平成30年3月) 一般に、パワハラについては、セクハラとは異なり、業務上の適正な指導との境界線が明確ではないことなどから、どのような行為がパワハラに該当するかの判断が難しいと言われているが、取引先からのハラスメントについて、パワハラとセクハラとで扱いが異なるのも同様の理由であると思われる。 2 取引先からのハラスメントと会社の法的責任 以上のとおり、会社は、取引先からのパワハラ防止のための措置等を講じなくてもパワハラ防止法・パワハラ指針上の措置義務違反の責任を負わないが、民事上の損害賠償責任を負う可能性がある点について注意が必要である。 会社は、労働者の生命・身体等の安全に配慮する義務(安全配慮義務・労働契約法第5条)及び職場の環境に配慮する義務(職場環境配慮義務・労働契約法第3条第4項)を負い、これらに違反した場合、労働者に対して損害賠償責任を負担する。措置義務はあくまで国家に対する義務であり、パワハラについてこれを課されていないからといって、安全配慮義務や職場環境配慮義務が免除されるわけではない。 したがって、会社は、取引先からのパワハラについても調査の実施や是正措置の実施、再発防止策の策定等を行う必要がある。上記検討会報告書が「③ 顧客の要求に応じないことや、顧客に対して対応を要求することが事業の妨げになる場合がある」と指摘するとおり、会社にとって重要な取引先からのパワハラについては、当該取引先に対して対応をとりにくく、是正措置・再発防止策の策定や実施が難しいという側面もあろうが、取引先との接触はただでさえ従業員に精神的負担を課すものである。 よって、取引先に対応を求めることが難しい場合であっても、最低限、会社は、当該従業員の業務負担等を減らし、当該従業員の精神的負担を軽減するよう努めるべきである。 (了)