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さっと読める! 実務必須の[重要税務判例] 【第78回】「デンソー事件」~最判平成29年10月24日(民集71巻8号1522頁)~

さっと読める! 実務必須の [重要税務判例] 【第78回】 「デンソー事件」 ~最判平成29年10月24日(民集71巻8号1522頁)~   弁護士 菊田 雅裕   (了)

#No. 481(掲載号)
#菊田 雅裕
2022/08/10

〔顧問先を税務トラブルから救う〕不服申立ての実務 【第16回】「請求人面談の留意点(その2)」

〔顧問先を税務トラブルから救う〕 不服申立ての実務 【第16回】 「請求人面談の留意点(その2)」   公認会計士・税理士 大橋 誠一   1 釈明陳述録取書と質問調書 (1) 主張と証拠は別々の書面に著される 担当審判官は、質問採取手続の結果を可視化するために、審査請求人の主張に関する回答については釈明陳述録取書に、主張を裏付けるための証拠としての回答については質問調書に分けて作成することになる。 このうち、釈明陳述録取書は主張書面であることから、相手方である原処分庁に送付して反論の機会を与えることになる。 一方、質問調書は国税不服審判所の判断のために用いるものであり、原処分庁に内容が共有されることはない。 たとえ原処分庁から閲覧請求があったとしても、質問調書は担当審判官の職権による質問(国税通則法第97条第1項第1号)をもとに作成された書面であり、同号は同法第97条の3第1項の閲覧対象から除外されているためである。 (2) 質問調書と質問応答記録書 質問調書に類する書面に質問応答記録書がある。 質問応答記録書は質問てん末書ともいわれるが、これは、税務署の調査官が質問採取手続の結果を可視化するために作成するものであり、作成目的、作成過程、様式については両者に大きな相違点はない。 この点、質問応答記録書は、税務調査において客観的な証拠資料が十分でない場合に、納税者の過少申告の意図を可視化することを事実上の目的として作成されることが多いようであり、これが影響してか、質問応答記録書に安易に署名することについて警鐘を鳴らす専門家が少なくない。 一方、質問調書は、不利益処分を受けた納税者の権利救済の場面で作成され、口頭による答述を可視化することで、合議体(担当審判官及び参加審判官)、ひいては裁決する各地域審判所長にまで審査請求人の回答内容を共有するための書面である。 質問採取手続が質問応答記録書と同様であることから、その作成と署名に警戒感を持つこともやむを得ないだろうが、自己が経験した真実をできるだけ調書に反映させて原処分の取消しを手繰り寄せる機会でもあることから、担当審判官の求めには誠実に対応しておきたいところである。   2 質問調書のまとめ方 質問調書のまとめ方には大きく2つの方法がある。 ひとつは、担当審判官による質問と審査請求人による回答のキャッチボールをできるだけ忠実に再現するように取りまとめた形式であり、「1問1答形式」ともいわれる。 もうひとつは、担当審判官の質問を概括的なもの(たとえば、「当時の経緯を教えて下さい。」など)とし、それに対して審査請求人がまとめて回答した上で、適宜担当審判官が補足的な質問を加え、その追加の回答を織り込んで取りまとめられた、「少ない設問に対して1問当たりの回答が長文になる」形式である。 いずれが採用されるか否かは担当審判官の個性や事案の特性にもよるが、一般的には、後者の方が取りまとめる側の文言整理の余地が介在し、ややもすると、回答した審査請求人のニュアンスから遊離する可能性を孕むようである。   3 釈明陳述録取書・質問調書の作成 (1) 文章に起こす作業 担当審判官による質問と審査請求人による回答がひと通り終了すると、休憩を挟むとともに、担当審判官と補佐をする分担者(国税審査官)は、口頭による回答を文章に起こす作業を行うことになる。 しかし、真っ新な状態で一から文章を作成することは時間的に至難の業であるため、形式的な記載(人定質問の回答)や過去の主張書面等から想定される回答内容をあらかじめ入力しておき、当日の回答内容によって加除をして完成させることで時間の短縮を図る場合が多いようである。 文章に起こす作業の過程において、担当審判官又は分担者から適宜補足の質問がなされることがある。 担当審判官がまとまった時間を要すると判断した場合には、例えば「1時間後に再度ご来所ください」などと一時解散を促すこともある。 (2) 回答の確認 釈明陳述録取書・質問調書の文章作成が終了すると、担当審判官が文案を答述者に一時交付して目視で確認させるか、読み聞かせるかのいずれかによって、答述内容の確認をさせることになる。 そこで、答述者から訂正の依頼があればその依頼を反映した上で再度確認させる。 最終的に、答述者が文案に納得すれば、末尾に、 という奥書を添えて、答述者(陳述者)の欄に署名を求めることになる。 そして、調書(行政文書)としては、これに「質問調書(又は釈明陳述録取書)」というタイトルの表紙を付けて、これを取りまとめた公務員(担当審判官と分担者)が記名押印して完成する。 (3) 控えの交付は受けられるか 答述者(審査請求人)の立場からすれば、今回の請求人面談において自己がどういった答述をしたかの記録を得たいのは当然の要望であり、質問調書の控えを担当審判官に求めたいところである。 しかし、質問調書は、担当審判官が審査請求事件の処理のための職務(公務)として作成した行政文書であり、答述者又は代理人に交付することを目的に作成したものではないことから、たとえ答述者に対してといえども、作成時に写しを交付してはならない(撮影させてはならない)取扱いになっている。 また、たとえそれが署名前のものであっても同様である。 答述者が答述内容を確認する手段としては、以下の術が考えられる。 (注) 上記の記述は、国税庁課税総括課「質問応答記録書作成の手引」(平成29年6月)ⅢFAQ 問43の回答に基づいているが、実際の請求人面談の場においては、担当審判官の裁量によって、署名前のものを(例えば)Wordファイルに複写し、それを印刷したものを答述者に交付するといった弾力的な運用をしているケースもあるため、著者の個人的意見としては、まずは諦めずに担当審判官に要請してみることを勧めたい。 (4) 後日の提出としたい場合 確かに自らの答述が記載されているが、ニュアンスを含めて代理人とともに慎重に検討し、郵送等の手段で後日改めて提出したい場合、担当審判官は、その日に投下した労力に対する成果が得られなくなるため難色を示す可能性が高いと思われる。 しかし、質問採取手続自体が答述者の協力に基づく任意の手続であり、答述者がその意向を崩さない以上、担当審判官としては無理に調書を録取することまではできない。 (5) 調書完成後 最後に、以後のスケジュールなどについて担当審判官から説明がある場合があるが、審査請求人又は代理人としても不明な点はできるだけ明らかにしておきたい。   4 信頼関係を構築する機会 請求人面談は、主張の確認や審査請求人しか知り得ない事実関係の録取といった直接の目的に加え、 がある程度推察できることにより、信頼関係を構築する機会でもある。 実際に、電話又は書面だけのやりとりでは相手が見えず疑心暗鬼になっていた状況が、請求人面談を機に改善することもある。 国税不服審判所は税務行政の自己反省機能であるから、原処分庁と「同じ穴のムジナ」という先入観を持つことなく、担当審判官と直接コミュニケーションを取る絶好の機会である請求人面談に臨まれることを願う。 (了)

#No. 481(掲載号)
#大橋 誠一
2022/08/10

収益認識会計基準と法人税法22条の2及び関係法令通達の論点研究 【第84回】

収益認識会計基準と 法人税法22条の2及び関係法令通達の論点研究 【第84回】   千葉商科大学商経学部准教授 泉 絢也     〈Q9〉 収益認識会計基準の履行義務充足基準との関係 法人税法22条の2第1項の引渡基準と収益認識会計基準の履行義務充足基準との関係はどのように考えるべきか。 〈A9〉 引渡基準と収益認識会計基準の履行義務充足基準は完全にイコールの関係にあるものではないが、両者の親和性を認めることができる。 ● ● ● 解 説 ● ● ● 1 収益認識会計基準における履行義務充足基準 法人税法22条の2第1項創設の契機となった収益認識会計基準は、収益の認識時期のルールについて、履行義務充足基準ともいうべき基準を採用している。 収益認識会計基準では、収益を認識するために5つのステップが設けられており、そのステップ5では、履行義務の充足による収益の認識配分の作業を行う。すなわち、約束した財又はサービスを顧客に移転することにより履行義務を充足した時に又は充足するにつれて、充足した履行義務に配分された額で収益を認識する(基準17(5)、35、46)。 資産(収益認識会計基準において、顧客との契約の対象となる財又はサービスについて「資産」と記載することもあるため注意)が移転するのは、顧客が当該資産に対する支配を獲得した時又は獲得するにつれてである(基準35)。 この場合の「資産に対する支配」とは、「当該資産の使用を指図し、当該資産からの残りの便益のほとんどすべてを享受する能力(他の企業が資産の使用を指図して資産から便益を享受することを妨げる能力を含む。)」をいい、このことを考慮して、「資産に対する支配を顧客に移転」した時点を決定する(基準37、40前段)。 支配の移転を検討する際には、例えば、次の(1)~(5)の指標を考慮する(基準40後段)。 上記のうち(1)については、現時点で対価に関する企業の権利が無条件であること(IFRS・2010ED 30(a))、すなわち対価を受け取る期限が到来する前に必要となるのが時の経過のみであるものをいい(基準150)、企業が対価を収受する現在の権利を有しない場合には、顧客が確定期限の未到来以外に対価の支払を拒絶できる法律上の抗弁(停止条件の未成就、不確定期限の未到来(先履行義務の未履行)、同時履行の抗弁)を有すると説明されることがある(片山智裕『ケーススタディでおさえる収益認識会計基準』233~235頁(第一法規2019)参照)。 支配の移転は、財又はサービスを提供する企業、あるいは当該財又はサービスを受領する顧客のいずれの観点からも判定でき、企業が支配を喪失した時又は顧客が支配を獲得した時のいずれかとなる。 通常、両者の時点は一致するが、企業が顧客への財又はサービスの移転と一致しない活動に基づき収益を認識することがないよう、顧客の観点から支配の移転を検討する(基準132)。 財又はサービスは、瞬時であるとしても、受け取って使用する時点では資産である。資産に対する支配とは、当該資産の使用を指図し、当該資産からの残りの便益のほとんど全てを享受する能力(他の企業が資産の使用を指図して資産から便益を享受することを妨げる能力を含む)であり、資産からの便益とは、例えば、財の製造又はサービスの提供のための資産の使用、他の資産の価値を増大させるための資産の使用、負債の決済又は費用の低減のための資産の使用、資産の売却又は交換、借入金の担保とするための資産の差入れ、資産の保有といった方法により直接的又は間接的に獲得できる潜在的なキャッシュ・フロー(インフロー又はアウトフローの節減)である(基準133)。   2 履行義務充足基準と引渡基準 履行義務充足基準と引渡基準の関係はどのように考えられるのか。 同異点を深掘りして考察する余地はあるものの、実現主義、権利確定主義及び民法上の引渡しと調和する可能性のある引渡基準を念頭に置くと(本連載第77回、第78回、第82回参照)、両者の内容や適用結果は相当程度接近するのではないか、という見立てが有力である。 例えば、履行義務充足基準は、資産に対する支配の顧客への移転に着目するものであり、同じく支配の移転を観念する民法上の引渡しと親和性があるという予想はつくし、ひいては、法人税法上の引渡しに接近していく道のりも見えてくる。 これまでにも、法人税法上の収益計上時期が争われた事案において、引渡しを履行義務(給付義務)という視点で表現する裁判例(東京地裁昭和53年5月19日判決・判タ416号187頁)や、支配の移転をもって引渡しと捉えているような裁判例(東京地裁平成9年10月27日判決・行集48巻10号778頁など)が存在した。 より精細な照合作業を行うべきではあるが、法人税法上の引渡し(通達上のものを含む)と収益認識会計基準の履行義務充足基準との親和性を認めることができそうである。 (了)

#No. 481(掲載号)
#泉 絢也
2022/08/10

〔まとめて確認〕会計情報の月次速報解説 【2022年7月】

〔まとめて確認〕 会計情報の月次速報解説 【2022年7月】   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2022年7月1日から7月31日までに公開した速報解説のポイントについて、改めて紹介する。 具体的な内容は、該当する速報解説をお読みいただきたい。   Ⅱ コーポレート・ガバナンス関係 経済産業省が「コーポレート・ガバナンス・システムに関する実務指針(CGSガイドライン)」を改訂し公表している。 取締役会による「監督」、社外取締役、ガバナンス体制などについて記載している。   Ⅲ 監査法人等の監査関係 監査法人及び公認会計士の実施する監査などに関連して、次のものが公表されている。 ① 学校法人先端教育機構 社会構想大学院大学による研究報告書「公認会計士の社会的認識の分析を通じた監査の現場力強化に向けた提言」(内容:企業及び公認会計士の双方の視点から「公認会計士による監査がどのように見られているか」について定量(量的)・定性(質的)の両面から調査したもの) ② サステナビリティ教育検討プロジェクトチーム報告書「公認会計士のサステナビリティに関する知見及び能力の育成に向けた検討」(内容:公認会計士のサステナビリティ教育の在り方について包括的な検討を行ったもの) ③ 「「倫理規則」の改正について(定期総会に付議する予定の改正案の公表)」(内容:倫理規則の体系及び構成等の見直しを行うもの。当該倫理規則は日本公認会計士協会の定期総会(2022年7月25日)に付議する予定の改正規定案であるが、7月25日に開催された第56回定期総会において、「倫理規則の一部変更案」として承認されている。なお、「倫理宣言」が公表されている) ④ 「「監査事務所検査結果事例集(令和4事務年度版)」の公表について」(公認会計士・監査審査会による監査事務所の検査で確認された指摘事例等を取りまとめたもの) (了)

#No. 481(掲載号)
#阿部 光成
2022/08/10

ハラスメント発覚から紛争解決までの企業対応 【第29回】「ハラスメントを認定できない場合の「被害者」の救済方法」

ハラスメント発覚から紛争解決までの 企 業 対 応 【第29回】 「ハラスメントを認定できない場合の「被害者」の救済方法」   弁護士 柳田 忍   【Question】 ある部署(XX部)の社員Aから、上司Bからパワハラを受けており、会社が上司をXX部から追い出してくれなければ退職したいとの申し出を受けました。当社は人手不足ですし、社員Aは優秀な社員でXX部に欠かせない人材なので、退職されると困るのですが、社員Aがパワハラであると主張する上司Bの言動は、パワハラと言えるかどうか微妙なものであり、上司Bの言動について、注意や指導、懲戒処分等がなされたことはありません。 また、社員Aは、社員Aが上司Bのパワハラを会社に相談したことが上司Bに知られると上司Bから報復される、と怯えています。どのように対応すべきでしょうか。 【Answer】 上司Bを「追い出す」方法としては解雇や配転が考えられますが、現時点では上司Bの解雇の有効性が認められる可能性は低いため、配転によるべきであると考えます。今後の上司Bの言動について、会社が責任を負わないためには、上司Bの言動について指導等を行うべきであると考えますが、これを配転後に実施することにより、社員Aを報復から守ることができるのではないかと思われます。 ● ● ● 解 説 ● ● ●   1 パワハラに該当するか否かが微妙な言動の問題点 パワハラとは、職場において行われる優越的な関係を背景として、業務上必要かつ相当な範囲を超えてなされる、労働者の就業環境を害する言動をいう(労働施策総合推進法第30条の2第1項)。パワハラ指針(※)において、これに該当する典型的な言動として6つの類型が挙げられており、それぞれの具体例もいくつか挙げられている。しかし、パワハラに該当する言動はこれらの6類型に該当するものに限られず、また、これらの類型に該当するか否かが明確でない言動も多い。 (※) 「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」(令和2年厚生労働省告示第5号) このような、パワハラか否かを認定することが困難な言動については、当該言動を根拠に懲戒処分等を実施して、その有効性が訴訟等で争われた場合に、当該言動がパワハラと認定されずに懲戒処分等が無効となる可能性があるという問題があり、かかる問題点を念頭に置いたうえで解決策を考える必要がある。   2 解雇の可能性 上司BをXX部から「追い出す」方法としては、まず解雇が考えられる。解雇は客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当であって初めて有効になるが(労働契約法16条)、パワハラを含む従業員の言動を理由とする解雇については、①当該従業員の言動の内容や頻度等に加えて、②当該従業員に対して注意、指導、懲戒処分等を科すなどして改善の機会を与えたかといった観点から解雇の有効性が判断されることになる。 本件のように、パワハラに該当するかどうか微妙な言動については、解雇が有効となるほどに①言動の内容や頻度が悪質であるとまでは言えないと判断される可能性があり、また、解雇の有効性が訴訟等で争われた場合に解雇が無効となり行為者が復職する恐れがあるため被害者が証言をしてくれない可能性があるという立証上の問題もある。更に、当該言動がパワハラに該当するか否かが明確でないことから、本件のように行為者に対して指導等がなされていないことも多く、②改善の機会を与えたと言えないと評価されることもありうる。 ②改善の機会の有無については、言動があまりに悪質であるような場合等、改善の機会を与えるまでもなく解雇が有効となる場合もありうる。しかし、本件においては、上司Bにおいても自分の言動が社員Aに不愉快な思いをさせていることに気づいていない可能性が高く、適切な指導等により上司Bの言動が改善する可能性を否定できないため、②改善の機会を与える必要がないとは言えないと思われ、よって、現状、解雇により上司Bを「追い出す」ことは難しいのではないかと思われる。   3 配転の可能性 上司BをXX部から「追い出す」もう1つの方法としては、配転(同一企業内で職務や勤務場所を変更すること)が考えられる。配転には懲戒処分として行われるものと人事上の措置として行われるものとがありうるが、懲戒処分は就業規則等に根拠がなければ実施することができず、懲戒処分として配転を定めている会社は多くはないと思われるため、ここでは人事上の措置としての配転の可能性について論じることにする。 人事上の措置としての配転については会社の広い裁量が認められるものであり、権利濫用にあたらない限りは有効となる。配転命令が権利濫用に該当するかは、①配転に業務上の必要性があるか、②不当な動機・目的をもってなされたものか、③本人に通常甘受すべき程度を越えて不利益を負わせるものであるか、④その他特段の事情(配転の手続等)等により判断される。 まず①の業務上の必要性については、東亜ペイント事件判決(最判昭和61年7月14日)において、「転勤先への異動が余人をもっては容易に替え難いといった高度の必要性に限定することは相当でなく、労働力の適正配置、業務の能率増進、労働者の能力開発、勤務意欲の高揚、業務運営の円滑化など企業の合理的運営に寄与する点が認められる限りは、業務上の必要性の存在を肯定すべきである。」と判示されている。 よって、本判決に照らすと、パワハラの加害者を異動することについては、職場の秩序維持等の観点から業務上の必要性が認められうることになるが、本件においては、上司Bに対する指導等は行われたことがなく、指導等を行うことにより上司Bの言動が改善する余地があることから、上司Bを配転する業務上の必要性が認められない可能性は否定できない。 もっとも、①の業務上の必要性自体が否定された裁判例は少なく、また、本件のように、②不当な動機・目的の存在を推測させるような特段の事情がないケースにおいては、配転が③本人に通常甘受すべき程度を越えて不利益を負わせるか否かが重要なポイントとなると考えられる。よって、ポジションや給与等の待遇面で不利益がないような場合には、配転が有効となる可能性は高まると思われる。 なお、上司Bが配転先においても同様の言動に及ぶ恐れがあるが、その結果、配転先の従業員等において被害が生じた場合、会社が職場環境配慮義務違反や安全配慮義務違反等の責任を問われる可能性があるので、会社は、上司Bが配転先において同様の言動を行わないよう、上司Bに対して指導等を行うべきである。また、上記のとおり、パワハラを理由に上司Bを解雇するためには、上司Bに対して改善の機会を与える必要があると思われるが、上司Bを解雇すべきときに解雇できるようにするためにも、上司Bに対して指導等を行っておく必要があると思料する。 この点、社員Aは、上司Bからのパワハラを会社に申告したことを上司Bに知られることを恐れているとのことであるが、上司Bに対して指導等を行う際には上司Bの社員Aに対する言動を挙げざるを得ず、そのため、(社員Aの氏名等を伏せたうえで言動だけを挙げて指導を行ったとしても)社員Aがパワハラの被害を会社に対して申告したことが上司Bに知れてしまう恐れがある。しかし、上司Bを配転した後であれば上司Bから社員Aに対して報復がなされる恐れは低くなると言えるであろう。 (了)

#No. 481(掲載号)
#柳田 忍
2022/08/10

《速報解説》 監査役協会、2022年版「監査役監査と監査役スタッフの業務」を公表~会社法改正及びCGコード適用開始後に定着した事例や実態を新たに反映~

《速報解説》 監査役協会、2022年版「監査役監査と監査役スタッフの業務」を公表 ~会社法改正及びCGコード適用開始後に定着した事例や実態を新たに反映~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2022年7月21日付で(ホームページ掲載日は2022年8月3日)、日本監査役協会 本部監査役スタッフ研究会は、「監査役監査と監査役スタッフの業務」(通称「オレンジ本」)を公表した。 これは、会社法改正及びコーポレートガバナンス・コード適用開始後に定着した事例や実態を反映したり、冗長な表現の見直しをしたりするなどの対応を行うものである。 オレンジ本は、「本体部分(業務マニュアル)」、「監査業務支援ツール」及び「アンケート調査」から構成されている。 以下では、「本体部分(業務マニュアル)」について解説する。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 期初業務 〇 監査方針及び監査計画の策定等 監査役会は、監査活動の開始に先立ち、監査方針及び監査計画を作成する。 監査方針及び監査計画は以下の手順で策定する。 事例として、監査方針及び監査計画に対する非常勤監査役の関与を高める一環として、非常勤監査役への事前説明の実施や決議前の監査役会において案を報告事項として付議する会社がある。   Ⅲ 期中業務 1 取締役会への出席・意見陳述 監査役は、会社法383条1項により、取締役会に出席し、必要があると認めるときは、意見陳述する義務がある。 監査役は、例えば、以下の点を確認することなどが記載されている。 2 代表取締役との会合 監査役は、代表取締役と意見交換を行うことにより、監査役の業務監査・会計監査に役立つ情報収集を行う。 また、経営上の懸念事項について監査役から代表取締役に伝達し対処を求める場でもある。 事例として、社外監査役の知見が活かされるようなテーマも含めるようにしている会社がある。 3 関連当事者との一般的でない取引の監査 関連当事者との取引は恣意性が入りやすいことから、注記表でその重要な取引の概要を開示するものとされている(会社計算規則112条1項)。 監査役は、取締役がこの記載義務を適法に履行しているかを監査し、もって会社に損害が生ずることを未然に防止する。 4 剰余金の配当の監査 分配可能額(会社法461条)を超える剰余金の配当は、会社財産維持、会社債権者保護の観点に鑑みて重大な違法行為のため、監査役は、剰余金の配当が法令・定款に従い適切な手続を経て実施されているかどうかを確認する。 違法配当の可能性がある場合、監査役は取締役会等において指摘し、差止権(会社法385条)をもってしても回避すべきであると記載されている。 違法な剰余金の配当があった場合は、任務懈怠があった監査役も会社に対して連帯して過失による損害賠償責任を負う(会社法423条、430条)。 事例として、取締役会開催前に必要な数字を執行側から入手し、監査役(会)においても配当金額が剰余金額の範囲内にあることを確認している会社がある。 5 社外取締役との連携 監査役にとっては社外取締役も監査役監査の対象であり、監査役は社外取締役の監督義務の履行状況の監査を行う必要がある。 そのような観点からも社外取締役との意見交換は重要である。   Ⅳ 期末業務 1 事業報告等の監査 事業報告等監査は、事業報告等が取締役の当該事業年度における職務執行のまとめとして株主に提供される書類であるという性質上、監査役監査の集大成として位置付けられるものである。 事例として、事業報告(案)の記載内容の説明のための監査役会を複数回開催し、執行側と質疑を行い、内容を確認している会社がある。 2 計算関係書類の受領及び監査 監査役設置会社においては、計算関係書類は、監査役の監査を受けなければならない(会社法436条1項・441条2項・444条4項)。 会計監査人設置会社においては、計算関係書類は会計監査人の監査も受けなければならない(会社法436条2項1号・441条2項・444条4項)。 監査役は、計算関係書類を作成した取締役から計算関係書類の提供を受ける(会社計算規則125条)とともに、会計監査人による会計監査報告の内容の通知を受け(会社計算規則130条1項)、監査を行う。 3 有価証券報告書開示(監査役監査の状況)への対応 有価証券報告書では、「監査の状況」の記載が求められている。 「監査の状況」の記載は、「監査役監査の状況」、「内部監査の状況」、「会計監査の状況」から構成されている。 監査役は、「監査役監査の状況」の記載に係る文章作成だけでなく、内部監査及び会計監査との連携状況についても、記載内容の確認が必要である。 事例として、監査役会の開催回数と各監査役の出席回数に加え、1回あたりの平均所要時間も記載している会社があった。   Ⅴ 非日常的活動に関する事項 例えば、次の事項について記載されている。 (了)

#阿部 光成
2022/08/08

プロフェッションジャーナル No.480が公開されました!~今週のお薦め記事~

2022年8月4日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.480を公開! - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。

#Profession Journal 編集部
2022/08/04

monthly TAX views -No.115-「「国の借金は国民の資産」というのは本当だろうか」

monthly TAX views -No.115- 「「国の借金は国民の資産」というのは本当だろうか」   東京財団政策研究所研究主幹 森信 茂樹   本年6月、経団連のシンクタンクである21世紀政策研究所は、「中間層復活に向けた経済財政運営の大転換」と題する、主に以下の内容の報告書を公表した。 わが国経済低迷の根本原因が需要不足にある。それが消費や貯蓄の不足を招き、中間層の衰退を引き起こしている。これはわが国の財政政策がプライマリーバランス黒字化目標にとらわれた財政運営をしてきたことにある。そこでこれを改め、わが国のGDPギャップ(38兆円)を埋めるべく、イノベーションの創設やインフラ整備のための長期計画に基づいて2030年に向けて100兆円の財政を活用した投資が必要だ。国が投資を拡大するためには、国の債務を増加しなければならないが、「債務と同額が国民の資産になるので財政は破綻しない。」仮にインフレが生じれば、政府はインフレが行き過ぎないように財政支出を抑制しなければならない。 「国の借金は国民の資産」という考え方は、明らかにMMT(現代通貨理論)に基づいており、それに対する筆者の考え方は本連載のNo,111で示したとおりであるが、ここでは本当に「国の借金は国民の資産」なのだろうかという点に注目して議論してみたい。 *  *  * 第1に、仮にそうだとしても、国民全員が国債という資産を持つわけではない。国債の大量発行により資産(国債)を持つ者と持たない者との格差が拡大することはどう考えているのだろうか。このような政策は、ますますわが国の所得・資産格差を拡大し、社会を二分化していく。 第2に、膨らんだ国の借金はいずれ(全額でなくとも)増税して返さなければならないと国民が考えれば、国民は、将来の増税に備えて消費を控え貯蓄に回すので、消費拡大にはつながらない。マクロ拡大政策を打ち消す力が働くのである。 第3に、これが筆者の最大の論点だが、国が主体となる投資は、民間に比べて非効率で、国債を発行して投資をしたものの、その後有効活用されず、その資産価値が毀損しているという例が多く見受けられるという点である。 バブル崩壊後1990年代のわが国は、総額60兆円の公共投資を実行してきた。その間行われた地方の高速道路建設や空港整備などの需要創出効果は少なく、維持費だけがかさむ結果となっている。このような有効活用されていない国の資産は、価値が毀損しているわけで、国の借金(国債発行)によって建設された国の資産は、借金に見合うだけの価値をもたらしていないのである。 さらなる問題は、GDPギャップを埋めるためのカンフル剤が常態化し、財政支出依存体質ができあがり、民間のアニマルスピリッツが低下し、潜在成長力の弱体化につながったという事実で、多くの経済学者が指摘している(例えば、河野龍太郎著『成長の臨界』(慶應義塾大学出版会・2022年))。 また、戦時下の隣組読本『戦費と国債』を見ると、「国債は国家の借金、つまり国民全体の借金ですが、同時に国民がその貸し手であります」という記述がある。国民に戦費を賄う国債の購入を奨励したが、戦後ハイパーインフレにより紙切れ同然になったという歴史的事実は重い。 *  *  * 資源高や円安を通じてわが国にも欧米のインフレが押し寄せている。怖いのは「財政破綻」ではなく「インフレーション」である。そのような中、100兆円規模の投資を奨励することがもたらすインフレ懸念への対応も書かれていないこの提言を、経団連は本気で担ぐつもりであろうか。 (了)

#No. 480(掲載号)
#森信 茂樹
2022/08/04

令和4年度税制改正における『グループ通算制度』改正事項の解説 【第1回】

令和4年度税制改正における 『グループ通算制度』改正事項の解説 【第1回】   公認会計士・税理士 税理士法人トラスト 足立 好幸   ~はじめに~ 令和4年度税制改正では、令和4年4月1日以後に開始する事業年度から適用されるグループ通算制度についても改正が行われている。 この改正については、グループ通算制度が施行される前の最後の手直し(一応できあがったあとで、不完全な部分を直すこと)といえる改正であるが、その中でも、特に、M&Aの障害になると懸念されていた投資簿価修正制度の見直しが行われたことはサプライズといえる。 そこで、本稿では、グループ通算制度に関する改正法令を読み解くことで、その内容と想定される実務への影響を解説したい。 また、本稿の意見に関する部分は、筆者の個人的な見解であることをあらかじめお断りする。   Ⅰ グループ通算制度改正の概要 令和4年度税制改正では、グループ通算制度の施行に伴い、次の見直しが行われている。 (※) 画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 次回以降、適用期限の延長で初めてグループ通算制度の取扱いが明確となった「交際費等の損金不算入制度」とグループ通算制度の実務に大きな影響を与える「投資簿価修正制度の見直し」について詳細を解説することとする。   (続く)

#No. 480(掲載号)
#足立 好幸
2022/08/04
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