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《速報解説》 名古屋局、職務発明制度の導入に伴い発明者たる使用者に支払われる「相当の利益」に係る税務上の取扱いについて文書回答事例を公表

 《速報解説》 名古屋局、職務発明制度の導入に伴い発明者たる使用者に支払われる 「相当の利益」に係る税務上の取扱いについて文書回答事例を公表   公認会計士・税理士 鯨岡 健太郎   1 はじめに 平成29年1月27日、名古屋国税局より文書回答事例『職務発明による特許を受ける権利を使用者に原始的に帰属させる制度を導入した場合の「相当の利益」に係る税務上の取扱いについて』が公表された。 これは、平成27年の特許法の改正により設けられた職務発明制度に関して「使用者原始帰属制度」を採用する場合において、「相当の利益」として使用者が職務発明を行った従業者等に支払う各種補助金に係る税務上の取扱いについて、事前照会者の求める見解に対して回答されたものである。 本稿では、この文書回答事例について紹介する。   2 使用者原始帰属制度の概要 「使用者原始帰属制度」とは、従業者等がした職務発明について、契約、勤務規則その他の定めにおいてあらかじめ使用者等に特許を受ける権利を取得させることを定めたときは、その特許を受ける権利は、その発生したときから使用者等に原始的に帰属することとされる制度をいう(特許法35③)。 このとき、職務発明をした従業者等は、使用者等から「相当の利益」の支払を受ける権利を有することとされている(特許法35④)。 なお、平成27年改正前の特許法では、職務発明によって生ずる特許を受ける権利は自然人である発明者(従業者等)に帰属することを前提に、使用者等は、従業者等に帰属する特許を受ける権利について、事前に定めた契約・勤務規則等により、従業者等から承継することができるものとし、従業者等は、使用者等から「相当の対価」の支払を受ける権利を有することとされていた。   3 事前照会者の職務発明規程等 事前照会者は「使用者原始帰属制度」を導入することとし、職務発明規程等を見直した上で、以下のとおり、事前照会者の従業員等がした職務発明に係る特許を受ける権利は事前照会者に原始的に帰属することとし、特許法第35条第4項の規定により「相当の利益」の内容として以下の(ハ)の区分に応じた各補償金(以下「本件各補償金」という)を支払うこととする。 なおこれ以後、特に断りのない限り、事前照会者のことを単に「会社」と称する。 (イ) 定義 職務発明とは、発明がその性質上会社の業務範囲に属し、かつ、その発明をするに至った行為が会社における従業員等の現在又は過去の職務に属する発明をいう。 (ロ) 権利の帰属 職務発明は会社が特許を受ける権利を取得する(ただし、会社がその権利を取得する必要がないと認めたときは、この限りではない)。 なお、会社が取得するに当たっては当該職務発明の発明者に対し相当の利益を付与するものとし、次の(ハ)の区分に応じ、本件各補償金を支払うものとする。 (ハ) 補償金の支払 (ニ) 退職等したときの補償 本件各補償金の支払を受ける権利は、当該権利に関わる発明者(従業員等)が退職した後も存続し、また、当該権利に関わる発明者(従業員等)が死亡したときは、当該権利は、その相続人が承継する。   4 事前照会の要旨 本件各補償金について、支給を受けた従業員等及び会社における税務上の取扱いは、それぞれ以下の通りで差し支えないか、照会する。   5 本件各補償金の支給を受けた従業員等に係る所得税の取扱い   6 本件各補償金を支給した会社に係る法人税の取扱い   7 事前照会に対する回答(名古屋国税局審理課長) (了)

#No. 205(掲載号)
#鯨岡 健太郎
2017/02/14

《速報解説》 東証、決算短信・四半期決算短信の様式に関する自由度の向上のため有価証券上場規程を一部改正~施行は2017.3.31~

《速報解説》 東証、決算短信・四半期決算短信の様式に関する自由度の向上のため 有価証券上場規程を一部改正 ~施行は2017.3.31~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 平成29(2017)年2月10日、株式会社東京証券取引所は、「決算短信・四半期決算短信の様式に関する自由度の向上のための有価証券上場規程の一部改正について」を公表した。 これは、金融審議会ディスクロージャーワーキング・グループから、会社法、金融商品取引法、上場規則に基づく3つの制度開示について、全体としてより適時に、よりわかりやすく、より効果的・効率的な開示が行われるよう、開示に係る自由度を向上させるという提言を受けたものであり、決算短信・四半期決算短信の様式について使用強制をとりやめることで、自由度を高めるものである。 決算短信・四半期決算短信の様式に関する自由度の向上については、平成28年10月28日から意見募集されていた。意見募集の結果に関して、「「決算短信・四半期決算短信の様式に関する自由度の向上について」に寄せられたパブリック・コメントの結果について」が公表されている。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 内容 改正の概要は次のとおりである。 平成29(2017)年2月10日、「決算短信・四半期決算短信作成要領等」についても、決算短信・四半期決算短信の開示の自由度を高めるとともに、速報としての役割に特化するため、改定されている。 具体的な内容については、「決算短信・四半期決算短信作成要領等」(2017年2月版)をご覧頂きたい。 なお、2017年2月版の作成要領は、平成29(2017)年3月末日以後に終了する連結会計年度又は四半期連結累計期間の決算又は四半期決算に係る決算短信又は四半期決算短信から適用する(早期適用はできない)。 前述の「パブリック・コメントの結果」では、次のことが述べられている。   ① 【コメントの概要】 短信の様式(サマリー情報)に関する自由度の向上について 【コメントに対する考え方】 当取引所としては、サマリー情報の様式の使用は、元来、強制ではなく、要請してきたものであるという経緯も踏まえ、今後も引き続き、当取引所の定める参考様式に基づいて決算短信等の作成・開示を行っていただくよう、要請いたします。   ② 【コメントの概要】 通期の決算短信に連結財務諸表を添付する義務がなくなることについて 【コメントに対する考え方】 従来、連結財務諸表等は決算短信等の添付資料としてサマリー情報等と同時に開示することを要請しているだけで、開示を義務付けてはおりません。今後も、原則として、サマリー情報等との同時の開示を要請してまいります。 金融審議会ディスクロージャーワーキング・グループの提言では、それぞれの企業の状況に応じたより早期の決算発表を可能とするため、投資判断を誤らせるおそれがない場合には、サマリー情報等を連結財務諸表に先行して開示ができるようにし、そうした場合でも連結財務諸表は開示ができるようになった時点で直ちに開示を要請することとしています。 通期決算において、連結財務諸表が速やかに提供されることが株主総会における議決権行使のためにも重要であるというご指摘は、上場会社にも周知いたします。   Ⅲ 適用時期等 (了)

#No. 205(掲載号)
#阿部 光成
2017/02/14

記事部分だけ印刷できるようになりました!~印刷機能改善のお知らせ~

記事部分だけ印刷できるようになりました! ~印刷機能改善のお知らせ~

#Profession Journal 編集部
2017/02/09

プロフェッションジャーナル No.205が公開されました!~今週のお薦め記事~

2017年2月9日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.205を公開! プロフェッションジャーナルのリーフレットは 全国のTAC校舎で配布しています! -「イケプロが実践するPJの活用術」「第一線で活躍するプロフェッションからPJに寄せられた声」を掲載!-   - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。

#Profession Journal 編集部
2017/02/09

酒井克彦の〈深読み◆租税法〉 【第50回】「限られた租税行政資源と『税務に関するコーポレートガバナンス』(その2)」

酒井克彦の 〈深読み◆租税法〉 【第50回】 「限られた租税行政資源と『税務に関するコーポレートガバナンス』(その2)」   中央大学商学部教授・法学博士 酒井 克彦     3 国税庁における「税務に関するコーポレートガバナンスの充実に向けた取組」 (1) 事務運営指針 限られた税務行政資源の中で適正公平な課税を担保するため、特に悪質な、あるいは大口な納税者に対して資源を集中している昨今の税務行政の傾向は前回述べたとおりである。すなわち、国税庁は、税務に関するコーポレートガバナンスが良好である納税者と、そうでない納税者について、「メリハリ」をつけて対応していくこととしているのである。 以下では、平成28年7月1日より本格的に運用が開始されている、国税庁による「税務に関するコーポレートガバナンスの充実に向けた取組」について概観することとしよう。 税務に関するコーポレートガバナンスの取組みは、平成23年ころから始まったものであるが、5年の試行期間を経たのち、平成28年6月14日に「税務に関するコーポレートガバナンスの充実に向けた取組の事務実施要領の制定について」として事務運営指針が制定された。 同指針は、「税務に関するコーポレートガバナンスの充実に向けた取組の事務実施要領」に加えて、「税務に関するコーポレートガバナンスの確認項目の評価ポイント」(別紙1)、「自主開示について」(別紙2)と、様式編として、「税務に関するコーポレートガバナンス確認表」(様式1)、「税務に関するコーポレートガバナンス評価書」(様式2)、「自主開示事項確認事績整理票」(様式3)から構成されている。 (2) 事務実施要領における評価の流れ 事務実施要領では、調査の機会を利用した働きかけとして、(ア)税務に関するコーポレートガバナンスの確認、(イ)税務に関するコーポレートガバナンスの判定を行った上、(ウ)トップマネジメントとの面談を通じて、(エ)その判定結果の活用をすることとされている。 判定の結果、税務に関するコーポレートガバナンスの状況が良好であり、調査結果に大口・悪質な是正事項がなく調査の必要度が低いと判定された法人については、調査省略対象とする事業年度の申告書審理を行う際に、一般に国税当局と見解の相違が生じやすい取引等を自主的に開示し、当局がその適正処理を確認することを条件に次回調査までの調査間隔を延長することとしている(例えば2年から3年の延長)。 このように、確認と判定の結果、「良好」と判断された企業には、調査間隔の延長というインセンティブが与えられるのであるが、あくまでも「一般に国税当局と見解の相違が生じやすい取引等を自主的に開示し、当局がその適正処理を確認することを条件に」認められるものであることに留意しておく必要があろう。 この自主開示については後述するが、判定の結果のみで調査間隔の延長が認められるものではない。 (ア) 税務に関するコーポレートガバナンスの確認 税務に関するコーポレートガバナンスの確認項目として、事務運営指針では次の5つが掲げられている。 これらの項目につき、調査を担当する国税局特別国税調査官(担当特官)は、調査着手後の早い段階で、この取組みの趣旨を調査法人に説明した上で、上記(ⅰ)ないし(ⅴ)が示された「税務に関するコーポレートガバナンス確認表」の作成を依頼する。 この確認表の作成は、行政指導として依頼するものであるが、作成について調査法人の協力を得られなかった場合には、当然のことながら、(イ)以下の判定手続等には進まず、調査間隔延長を受けることはできない。 (イ) 税務に関するコーポレートガバナンスの判定 調査法人から提出された上記確認書について、担当特官は、「税務に関するコーポレートガバナンスの確認項目の評価ポイント」(別紙1)に基づき、前掲の確認項目について、法人の取組みが形式的なものではなく、実効性が確保されているかなどの観点から、評価・判定を行う。 なお、判定の際の基本方針として、事務運営指針では次のように述べられている。 担当特官は、確認表に記載がない場合や、取組みに係る運用状況が明確でないものについては、法人にその状況を聴取するとともに、税務調査に対して適切に対応しているか、帳簿書類等が適切に保存されているかなどを勘案し、「税務に関するコーポレートガバナンス評価書」(様式2)を作成する。 具体的な評価ポイントとして、例えば、「(ⅰ) トップマネジメントの関与・指導」項目については、①税務コンプライアンスの維持・向上に関する事項の社訓、コンプライアンス指針等への掲載の有無、②税務コンプライアンスの維持・向上に関する方針のトップマネジメントによる発信の有無やその浸透具合、③税務調査の経過や結果、社内監査結果のトップマネジメントへの報告の状況、④問題が把握された時の再発防止策に対するトップマネジメントの指示の的確性などが挙げられている。 紙幅の都合上すべてを掲載することはできないが、そのほかにも上記(ⅰ)ないし(ⅴ)の確認項目に対して、それぞれ具体的な評価ポイントが設けられており、例えば「(ⅴ) 不適切な行為の抑制策の整備・運用」については、仮装・隠ぺいを行った社員に対する懲戒処分などのペナルティ制度の整備と運用等が評価のポイントとされている。 これらに基づき作成された評価書は、実地調査検討会等の際に、国税局の調査(査察)部長又は次長(以下、「部次長」という)に調査法人の税務に関するコーポレートガバナンスの状況として報告される。この際、部次長は、必要に応じ、判定結果や所見等について指導・指示を行うこととされている。 (ウ) トップマネジメントとの面談 税務に関するコーポレートガバナンスの充実に向けた実効性ある取組みを促進する上で、トップマネジメントとの面談は極めて重要であると解されるため、国税局調査部の部次長は、トップマネジメントがリーダーシップを発揮しガバナンスの充実に取り組むことを促すため、トップマネジメントと意見交換を行う(面談は、原則として、部次長が担当することとし、担当特官が同席する)。 面談においては、調査結果の概要を説明するとともに、その是正事項の再発防止に向けた取組みを含め、評価が低かった事項について、効果的な取組事例を紹介しつつ意見交換を行うこととされている。 なお、事務運営指針において、トップマネジメントとは、「法人の代表取締役、代表執行役のほか、法人の業務に関する意思決定を行う経営責任者等」と定義されている。 これらの者が率先してガバナンスの充実に取り組むことこそ、税務に関するコーポレートガバナンスの実効性担保に資するものとなるといえよう。 (エ) 税務に関するコーポレートガバナンスの判定結果の活用 上記の流れで確認された調査法人の税務に関するコーポレートガバナンスの判定結果は、調査法人の調査必要度の重要な判断材料の一つとして活用することとされている。 (3) 自主開示 (ア) 自主開示への同意と調査間隔の延長 前述のとおり、税務に関するコーポレートガバナンスの状況が良好であり、調査結果に大口・悪質な是正事項がなく調査必要度が低いと判断される法人については、調査省略対象とする事業年度の申告書審理を行う際に、一般に国税当局と見解の相違が生じやすい取引等を自主的に開示し、当局がその適正処理を確認することを条件に、次回調査までの調査間隔が延長される。 上記条件に同意するか否かについては、トップマネジメントとの面談時において確認を行うこととされているが、その際、自主開示は、調査間隔を延長した結果、1回の調査の事務負担が法人及び国税当局双方にとって過重とならないために行うものであり、当局の確認の結果、処理に誤りがあると思料される場合は、行政指導として自発的な見直しを要請するものであることを説明することとされている。 このような、自主開示に同意した法人には、次回調査までの間隔を前回調査と今回調査の間隔より、1年延長することを説明する。 すなわち、前回調査の間隔が2年であった場合には3年に、3年であった場合には4年に延長されることになるが、更正期限が5年間であることを考慮して、延長される調査間隔は、当面の間最大4年とすることとされている(したがって、現時点では、4年が5年に延長されることはない)。 もっとも、後発的な事情などにより、緊急を要する場合は、調査が実施されることがある。 加えて、調査間隔延長後の実地調査において、ガバナンスの状況が良好でなくなったと判断された場合や、調査結果に大口・悪質な是正事項があった場合並びに自主開示の履行状況が不十分であった場合には、調査間隔を延長する直前の調査間隔に戻すこととされている。 (イ) 自主開示の内容 調査間隔の延長を受けるためには、「一般に国税当局と見解の相違が生じやすい取引等を自主的に開示」することとされているが、対象となる取引等として、例えば次のようなものが挙げられている。 もっとも、自主開示は「一般に国税当局と見解の相違が生じやすい取引等」が対象とされていることから、上記事項に該当する場合であっても、「国税当局に事前相談を行い、事実関係に変更がないもの」については見解の相違が生じるおそれがないため、自主開示の範囲から除外されている。 そのほか、前回調査で是正された事項の再発防止や申告調整等の状況についても自主開示が求められている。 (ウ) 自主開示事項の確認 担当特官は、自主開示された事項について、適正に処理されているか否かを確認し、それらの判断結果を取りまとめ、必要に応じて国税局の調査審理課等と協議を行う。 自主開示事項の適否判断に必要な資料が提出されない場合や、深度ある調査、取引先等への反面調査など事実認定を要する場合は、延長対象法人に対し、当該事項は次回調査で確認する旨連絡することとされている。 自主開示事項の確認の結果、処理に誤りがあると思料される場合は、延長対象法人に対し、自発的な見直しを要請した上で、修正申告書又は更正の請求書の自発的な提出を要請することとされている。 なお、あくまでもこの確認は行政指導であって、調査ではないから、加算税賦課要件である「更正の予知」の判定には影響しないと解される。 他方で、上記の連絡をするにあたり、自主開示事項を次回調査で確認した結果、追徴税額が生じることとなった場合には、加算税が賦課決定されることを併せて説明することとされている。 すなわち、自主開示がなされていたからといって、その内容について非違が発見された場合は、加算税が免除されるわけでないことに注意が必要であろう。 (4) 小括 このように、国税庁による「税務に関するコーポレートガバナンスの充実に向けた取組」は、「確認⇒判定⇒面談⇒結果の活用⇒自主開示⇒判定」といった一連の流れを繰り返すことによって、トップマネジメントのリーダーシップを通じた企業の自主的取組みに期待を寄せる手続であるといえよう。 繰り返しになるが、「税務に関するコーポレートガバナンスの充実に向けた取組」では、企業の自主的取組みが良好であると判断された場合に、調査間隔の延長というインセンティブが与えられることとしている。 調査間隔の延長は、調査対象法人にとって事務負担の軽減などのメリットになることはもちろんであるが、前回確認したとおり、我が国の限られた税務行政資源を最も効率的かつ効果的に分配すべきという文脈において、税務当局サイドにも十分なメリットがあるのである。 適正公平な課税の実現のために、税務当局の監視監督の目が一定程度必要であることも事実であるが、限られた税務行政資源を、特に大口・悪質な納税者に集中させることは、我が国全体にとって非常に有益であることは間違いない。 現時点では、「税務に関するコーポレートガバナンスの充実に向けた取組」が適用される企業は、おおむね資本金が40億円超の大企業であって、数で見れば、まだ500社程度しかその対象にはなっていない。 しかしながら、かかる取組みが、企業にとっても税務当局にとってもWin-Winの関係になるものであることからすれば、現在の我が国の財政状況や、国際間取引・ITC化による経済状況の複雑化等に鑑みると、今後、その対象企業の範囲が広げられていく可能性もあるのであって、租税専門家はこうした国税庁の取組みを十分注視しておくべきであろう。 (続く)

#No. 205(掲載号)
#酒井 克彦
2017/02/09

特定居住用財産の買換え特例[一問一答] 【第1回】「「買換えの特例」の譲渡価額要件(1億円以下)の判定①(居住用の家屋等の一部を前々年に贈与している場合)」-譲渡価額要件の判定-

特定居住用財産の買換え特例[一問一答] 【第1回】 「「買換えの特例」の譲渡価額要件(1億円以下)の判定① (居住用の家屋等の一部を前々年に贈与している場合)」 -譲渡価額要件の判定-   税理士 大久保 昭佳   Q X(夫)は、本年6月に居住用の土地家屋(所有期間が10年超で居住期間は10年以上)を、その共有者であるY(妻)と共に1億2,000万円(Xが1億円、Yは2,000万円)で譲渡しました。 Yが譲渡した土地及び建物の持分(1/6)は、前々年3月にXから贈与により取得したものであり、その贈与のときにおける時価額は2,000万円でした。 この場合、X及びYは、「特定の居住用財産の買換えの特例(措法36の2)」の譲渡価額要件(1億円以下)を満たすこととなるのでしょうか。 なお、X及びYも、上記の贈与以外には、当該譲渡した土地及び家屋と一体としての居住の用に供されていた他の建物又は土地に係る譲渡はありません。 A Xは、持分(5/6)に係る譲渡対価の額1億円と当該譲渡年の前3年以内の譲渡(贈与を含む)に係る対価の額2,000万円との合計額が1億円を超えることから、譲渡価額要件を満たさないことになります。 Yについては、居住の用に供している部分に対応する譲渡に係る対価の額はYの持分(1/6)に対する2,000万円であり、1億円を超えないことから、譲渡価額要件を満たすこととなります。 ●○●○解説○●○● 特定の居住用財産の買換えの特例(以下「買換えの特例」という)は、その譲渡資産の譲渡に係る対価の額が1億円以下であることが、その要件の1つとされています(措法36の2①かっこ書)。 そして、この譲渡に係る対価の額が1億円を超えるかどうかについては、譲渡年と譲渡年の前年若しくは前々年に、当該譲渡資産と一体として当該個人の居住の用に供されていた家屋又は土地等の譲渡(収用交換等による譲渡を除く。以下「前3年以内の譲渡」という)がある場合は、「前3年以内の譲渡に係る対価の額」と「当該譲渡資産の譲渡に係る対価の額」の合計額により判定することとされています(措法36の2③)。 また、譲渡年の翌年若しくは翌々年に、当該譲渡資産と一体として当該個人の居住の用に供されていた家屋又は土地等の譲渡(収用交換等による譲渡を除く。以下「翌年と翌々年の譲渡」という)がある場合には、「前3年以内の譲渡に係る対価の額」と「当該譲渡資産の譲渡に係る対価の額」と「翌年と翌々年の譲渡に係る対価の額」の合計額により判定することとされています(措法36の2④)。 そして、上記の「前3年以内の譲渡」及び「翌年と翌々年の譲渡」が、贈与(著しく低い金額の譲渡を含みます)による場合には、当該贈与等の時における価額に相当する金額(時価(=通常の取引価額))をもって、譲渡価額要件の判定を行うこととされています(措令24の2⑨、措規18の4③、措通36の2-6の4(居住用財産の一部を贈与している場合))。 また、「買換えの特例」の適用に係る譲渡資産が共有である場合、譲渡価額要件の判定に当たっては、所有者ごとの譲渡対価の額により判定することとされています(措通36の2-6の2(譲渡に係る対価の額が1億円を超えるかどうかの判定)(1))。 (1) Xの譲渡に係る対価の額について Xは、前々年に、当該譲渡資産と一体としてXの居住の用に供されていた家屋及び土地の持分(1/6)をYに対し贈与しているため、また、譲渡資産が共有である場合は、各所有者ごとの譲渡対価により判定することとされていることから、譲渡価額要件の判定における譲渡に係る対価の額は次の算式のとおりとなり、譲渡価額要件を満たさず、特例を受けることができません。 (2) Yの譲渡に係る対価の額について Yには、「前3年以内の譲渡」がないことから、「当該譲渡資産の譲渡に係る対価の額」のみで判定を行うこととなり、また、譲渡資産が共有である場合は、各所有者ごとの譲渡対価により判定することとされているので、次の算式のとおりとなり、譲渡価額要件を満たし、特例を受けることができます。 (了)

#No. 205(掲載号)
#大久保 昭佳
2017/02/09

〔平成29年3月期〕決算・申告にあたっての税務上の留意点 【第3回】「「減価償却の見直し」「少額減価償却資産の特例の延長」「生産性向上設備投資促進税制の縮減・終了」「環境関連投資促進税制の見直しと延長」」

〔平成29年3月期〕 決算・申告にあたっての税務上の留意点 【第3回】 「「減価償却の見直し」 「少額減価償却資産の特例の延長」 「生産性向上設備投資促進税制の縮減・終了」 「環境関連投資促進税制の見直しと延長」」   公認会計士・税理士 新名 貴則   平成28年度税制改正における改正事項を中心として、平成29年3月期の決算・申告においては、いくつか留意すべき点がある。【第2回】は、「企業版ふるさと納税の創設」、「欠損金の繰越控除限度額の見直し」及び「所得拡大促進税制」について解説した。 【第3回】は、「減価償却の見直し」、「少額減価償却資産の特例の延長」、「生産性向上設備投資促進税制の縮減・終了」及び「環境関連投資促進税制の見直しと延長」について、平成29年3月期決算において留意すべき点を解説する。   1 減価償却の見直し 従来、建物附属設備や構築物については定額法だけでなく定率法も選択可能であった。しかし、平成28年度税制改正において次の理由から、平成28年4月1日以後に取得した建物附属設備及び構築物については、定率法を廃止し償却方法を定額法に限定することとされた。 建物附属設備は建物と一体的に整備されるため 構築物は建物と同様に長期安定的に使用されるため また同様に、平成28年4月1日以後に取得する鉱業用減価償却資産(建物、建物附属設備及び構築物のみ)についても定率法を廃止し、定額法又は生産高比例法に限定することとされた。 平成29年3月期決算申告においては、平成28年4月1日以後に取得した資産について、適切な償却方法を選択するよう注意が必要である。 【平成28年4月1日以後に取得するもの】   2 少額減価償却資産の特例の延長 取得価額10万円以上の減価償却資産でも、中小企業者等においては、30万円未満であれば取得時に全額損金算入できる特例が設けられている。ただし、年間総額300万円が上限となっている。 この特例は、平成28年3月31日で廃止される予定だったが、平成28年度税制改正により、2年間(平成30年3月31日まで)延長された。また同時に、平成28年4月1日以後は、中小企業者等から「常時使用する従業員の数が1,000人を超える法人を除外」することとされた。 したがって、平成29年3月期決算申告においても中小企業者等は引き続きこの特例を適用できるが、従業員数が1,000人を超える法人は適用できなくなるので、注意が必要である。   3 生産性向上設備投資促進税制の縮減・終了 青色申告法人が「生産性向上設備」を取得等して国内の事業の用に供した場合に、特別償却又は税額控除を適用できる特例がある。 ここでいう「生産性向上設備」とは、次の設備を指す。 (※) 「器具備品」のサーバー用電子計算機と「ソフトウエア」は中小企業者等の場合のみ対象 当初の予定通り、この特例は平成29年3月31日をもって終了する(平成29年3月31日までに取得等及び事業供用したものまで適用)。また、平成28年4月1日から平成29年3月31日までに取得等及び事業供用したものについては、それ以前と比較して特別償却と税額控除の割合が縮減される。 平成30年3月期からはこの特例の適用はないので注意が必要である。 【生産性向上設備投資促進税制の縮減】   4 環境関連投資促進税制の見直しと延長 青色申告法人が新品のエネルギー環境負荷低減推進設備等の取得等をして、1年以内に国内事業の用に供した場合、事業供用年度において30%の特別償却(風力発電装置は即時償却)が認められる。また、中小企業者等においては特別償却(又は即時償却)と7%の税額控除を選択適用できる。 この制度は、平成28年3月31日までに取得等及び事業供用をした設備まで適用されることになっていたが、平成28年度税制改正により、対象設備の見直しを行った上で、2年間(平成30年3月31日まで)の延長が行われている。 【環境関連投資促進税制の見直しポイント】 (了)

#No. 205(掲載号)
#新名 貴則
2017/02/09

平成28年分 確定申告実務の留意点 【第4回】「質問の多い事項Q&A」

平成28年分 確定申告実務の留意点 【第4回】 (最終回) 「質問の多い事項Q&A」   公認会計士・税理士 篠藤 敦子   本シリーズ最終回は、筆者が実際に確定申告実務で質問を受ける事項等について、過去に取り上げていないものを中心に、Q&A方式でまとめることとする。 (1) 所得計算関係 【Q1】 取締役として在職している会社の経営状況が悪化し、役員退職慰労金制度が廃止された。平成28年において、取締役就任時から制度廃止日までの期間に係る分として、株主総会で決議された金額が役員退職慰労金として支払われた。 支払いを受けた前後で取締役としての職務内容に変化はないが、この役員退職慰労金は退職所得として取り扱われるのか。 【A1】 在職中に支払いを受けており、役員退職慰労金の支払いを受ける前後で職務の内容や地位等に変化がないことから、退職所得ではなく給与所得となる。 -解説- 退職を原因として一時に受ける給与等は、退職所得に区分される(所法30)。よって、役員を退任した事実がなければ役員退職慰労金は退職所得とならない。ただし、実際に退任していなくても、分掌変更等、役員の退任に準ずる一定の事実がある場合には退職所得として扱われる(所基通30-2(3))。 本件のように取締役からの退任や分掌変更等の事実が認められない場合には、役員退職慰労金として支給されたとしても、その金額は役員就任日から退職慰労金制度廃止までの期間にわたる職務執行の対価として賞与の支払いがあったものと取り扱われる(所法28①)。   【Q2】 平成28年中の株式取引の状況は、次の通りである。これらの株式取引により納付すべき平成28年分の所得税及び復興特別所得税の額はいくらになるか。 【A2】 ◆一般株式等(非上場株式)の譲渡に係る所得:900,000円 ⇒一般株式等の譲渡に係る所得税等:900,000円×15.315%=137,835円 ◆上場株式等の譲渡に係る所得 ・上場株式の譲渡損失 △1,000,000円・・・① ・特定公社債等の利子   100,000円(※)・・・② ・①②を損益通算⇒△900,000円 →翌年以後3年間繰越控除可 (※) 特定公社債等の利子から源泉徴収された15,315円(15.315%)は、納付すべき税額から控除される。 -解説- 平成28年1月1日以後、公社債等は「特定公社債等」と「特定公社債等以外の公社債等(以下、「一般公社債等」という)に区分され、課税方法の見直しが行われている。 公社債等の課税方法の見直しについては、本シリーズ【第3回】をご参照いただきたい。 平成28年分以後の所得税計算においては、一般株式等の譲渡損益と上場株式等の譲渡損益の通算ができなくなった(措法37の10、37の11)。一方、特定公社債等の利子について申告分離課税を選択した場合には、上場株式等の譲渡損失との損益通算が可能となっている(措法37の12の2)。 したがって、非上場株式の譲渡益900,000円に対しては、申告分離課税により15.315%(復興特別所得税含む)の税率で課税され、上場株式等の譲渡損失1,000,000円は申告分離課税を選択した特定公社債等の利子100,000円と損益通算の後、翌年以後3年間にわたって繰越控除することができる。   (2) 人的控除関係 【Q3】 私には生計を一にする父(個人事業主、青色申告)と母(父の事業に従事する青色事業専従者)がいる。両親の平成28年分の所得が下記のとき、私は父と母を扶養親族とすることができるか。 また、私と両親が生計を一にしていない場合、取扱いに違いはあるか。 【A3】 ◆両親と生計を一にしている場合 ⇒父を扶養親族とすることはできるが、母を扶養親族とすることはできない。 ◆両親と生計を一にしていない場合 ⇒父、母ともに扶養親族とすることができる。 -解説- 青色事業専従者に該当し青色事業専従者給与の支払いを受ける者(本ケースでは母)を、その事業を営む者(本ケースでは父)の控除対象配偶者又は扶養親族とすることはできない。また、青色事業専従者給与の支払いを受ける者を、その事業を営む者と生計を一にする居住者(本ケースでは私)の控除対象配偶者又は扶養親族とすることもできない(所法2①三十三・三十四、所基通2-48)。 したがって、両親と生計を一にしている場合、父(合計所得金額38万円以下)を扶養親族にすることはできるが、父から青色事業専従者給与の支払いを受けている母を扶養親族とすることはできない。 一方、両親と生計を一にしていない場合には、両親(共に合計所得金額38万円以下)を扶養親族とすることができる。 なお、以上の取扱いは、父が白色申告の個人事業主で、母がその事業の白色事業専従者である場合も同様である(所法2①三十三・三十四、所基通2-48)。   【Q4】 妻は平成28年4月に出産し、その後年末まで育児休業中であった。妻は平成28年において給与収入90万円の他、育児休業給付金を105万円受け取っている。 平成28年分の確定申告において、妻を控除対象配偶者とすることはできるか。 【A4】 妻を控除対象配偶者とすることができる。 -解説- 育児休業給付金は、雇用保険法に基づいて支給される給付であり、同法により所得税は非課税とされている(雇用保険法10、12)。控除対象配偶者や扶養親族に該当するかどうかを判定するときの合計所得金額には、所得税法やその他の法令で所得税が非課税とされているものは含まれない。 したがって、妻の本年の合計所得金額は、給与所得25万円(給与収入90万円-給与所得控除65万円)のみとなり、妻は控除対象配偶者に該当する(所法2①三十三)。 なお、出産に際して支給される出産育児一時金や出産手当金も、所得税は非課税とされているため、合計所得金額には含まれない(健康保険法62)。   (3) 所得控除関係 【Q5】 医師の指導によりサプリメントを購入し服用している。 このサプリメント代は、医療費控除の対象となるか。 【A5】 サプリメントは医薬品に該当しないため、その購入費用は医療費控除の対象とならない。 -解説- 医療費控除の対象となる医療費とは、「医師又は歯科医師による診療又は治療の対価」、「治療又は療養に必要な医薬品の購入の対価」、「医療又はこれに関連する人的役務の提供の対価」である(所法73②、所令207)。 また、医薬品とは、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」第2条第1項に規定する医薬品をいい、医薬品に該当するものでも予防や健康増進のために購入するものは含まれないとされている(所基通73-5)。 サプリメントは、医薬品に該当しないため、医師の指導によって購入したものであっても医療費控除の対象とならない。 医薬品等の購入費用が医療費控除の対象になるかを判断するポイントは、次の2点である。 (注) 丸山ワクチンのように、医薬品に該当しなくても、医師による治療のために必要なものは、医療費控除の対象となる。   【Q6】 夫の入院費用を妻が支払い、後日、夫が契約している生命保険会社より入院費給付金が支給された。妻が医療費控除の適用を受けるとき、この給付金を差し引く必要はあるか。 【A6】 妻の医療費控除の額を計算するとき、支払った入院費用から入院費給付金を差し引く必要がある。 -解説- 医療費控除の対象は、自己又は自己と生計を一にする配偶者その他の親族に係る医療費で、その年中に支払った金額のうち保険金や損害賠償金等により補填される部分を除く金額とされている(所法73①、所基通73-8(2))。 入院費給付金は、医療費を補填する目的で支払われる給付金であるため、医療費控除の計算上、支払った医療費から差し引くことになる。 なお、医療費を支払った者と保険金等の支払いを受ける者が同一でない場合でも、医療費の補填を目的として支払いを受ける保険金等であれば差し引く必要がある(国税庁 質疑応答事例「医療費の支払者と保険金等の受領者が異なる場合」)。 (連載了)

#No. 205(掲載号)
#篠藤 敦子
2017/02/09

金融・投資商品の税務Q&A 【Q31】「外国のパートナーシップからの分配金の取扱い」~法人該当性の判断~

金融・投資商品の税務Q&A 【Q31】 「外国のパートナーシップからの分配金の取扱い」 ~法人該当性の判断~   PwC税理士法人 金融部 パートナー 税理士 箱田 晶子   ●○ 検 討 ○● 1 外国パートナーシップの税務上の位置づけ 外国においては、複数の出資者による投資ビークルとして、各国の法律に基づき設立されたパートナーシップが多く活用されています。パートナーシップは設立国ごとの法律及び諸規則に基づき、様々な性格を有しています。 日本の税務上、外国のパートナーシップがどのように取り扱われるかについて、明示的な規定はありません。税務上、パススルー課税が適用される事業体として、「任意組合、投資事業有限責任組合、有限事業責任組合並びに外国におけるこれらに類するもの」が挙げられています。 「外国におけるこれらに類するもの」とは、 とされています(『所得税基本通達逐条解説』大蔵財務協会)。 すなわち、外国のパートナーシップについては、共同事業性及び財産の共同所有性を有すると想定されるものは任意組合等に類するものとして一般的にはパススルー課税が適用されるものの、個々の実態等により外国法人と認定される場合は除く、ともされていることから、一概には言えず、設立国における法的取扱い、経済的実態等を検討し、日本の法律上、どの形態にもっとも類似しているのかを個別に判断する必要があると考えられます。 外国のパートナーシップの税務上の取扱いについては、判例等もいくつか出されていますが、個々の事例により任意組合等に類するものとして取り扱われるものもあれば、外国法人として取り扱われるものもあり、異なる取扱いとなっています。   2 税務上の取扱い 日本の税法上、パートナーシップ等が法人として取り扱われるのか、任意組合等に類するものとして取り扱われるかにより、税務上の取扱いについては以下の通り差異があります。 (1) 任意組合等であると判定される場合 任意組合等は構成員課税が適用されるため、パートナーシップ等の投資対象について投資家が直接投資している場合と基本的には同様の取扱いとなります。 投資家の課税関係は、(毎年1回以上、一定時期においてパートナーシップ損益が計算される等の条件下で)パートナーシップ等の計算期間の末日が属する事業年度の益金又は損金として認識されます。利益の分配だけでなく、損失の分配もあるものとして取り扱われます(なお、一定の組合損失額については、投資家において損失として認識できません)。 詳細については【Q28】を参照ください。 (2) 外国法人と判定される場合 投資家は外国法人(パートナーシップ)の発行する株式等に対して投資しているものとして取り扱われます。 パートナーシップからの利益の分配は外国法人からの配当として取り扱われ、原則として配当確定日の属する事業年度における収益として認識されます。パートナーシップ等において損失が認識されていたとしても、損失は投資家には分配できません。 なお、パートナーシップが外国法人とされる場合、投資家が主として日本法人、個人であれば、パートナーシップそのものにタックス・ヘイブン税制の適用の可能性があります(【Q22】参照)。     (了)

#No. 205(掲載号)
#箱田 晶子
2017/02/09

裁判例・裁決例からみた非上場株式の評価 【第25回】「租税法上の評価⑨」

裁判例・裁決例からみた 非上場株式の評価 【第25回】 「租税法上の評価⑨」   公認会計士 佐藤 信祐   前回では、国税不服審判所平成11年2月8日裁決について解説を行った。本稿では、国税不服審判所平成22年9月2日裁決について解説を行う。本事件は、外国子会社合算税制について争われた事件である。   9 国税不服審判所平成22年9月2日裁決・裁決事例集80号97頁 (1) 事実の概要 本事件は、原処分庁が、外国子会社合算税制を適用して、請求人が株式を保有する外国法人に係る課税対象留保金額に相当する金額を請求人の雑所得の総収入金額に算入する等の所得税の各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分を行ったのに対し、請求人が、当該外国法人は外国子会社合算税制の適用除外の要件を満たし同税制が適用されないなどとして、同各処分の全部の取消しを求めた事件である。 本事件の争点は、①外国子会社合算税制の適用除外要件をいずれも満たすか否か、②課税対象留保金額の算定における、本件増資に係るJ社の株式の評価方法等は適法か否か、の2つであるが、非上場株式の評価についての連載であることから、本稿では、②についてのみ解説を行う。 (2) 審判所の判断 (3) 評釈 このように、国税不服審判所は納税者の主張を認めず、国側の課税処分を認めた。なお、具体的な純資産価額方式による計算についても、J社が保有する出資金の邦貨換算、建物及び建物付属設備の評価につき、原処分庁の課税処分に誤りがあったことから、その部分は修正されているが、修正をしたとしても、「本件各年分の総所得金額は、本件各更正処分の金額をいずれも上回るから、本件各更正処分はいずれも適法である。」という結果になっている。そのため、結果として、原処分庁の判断をそのまま認める結果となっている。 本事件は、外国子会社合算税制の事件であるため、非上場株式の評価についての部分だけ解説を行ったが、外国子会社合算税制であっても、法人税基本通達9-1-13、9-1-14の内容を重視していることが分かる。 なお、傍論というべきところであるが、J社が保有する出資金の評価につき、配当還元方式を採用することができるかどうかについても、 と判断している。 すなわち、J社はR社の議決権の1.2%しか有していないものの、原則的評価方式を採用すべきとしており、本連載でいくつかご紹介した特例的評価方式を採用することができない事案と比較すると当然の判断であるということが言える。 本連載ではここまで、【第2回】から【第16回】までは会社法の裁判例、【第17回】から【第25回】までは租税法の裁判例、裁決例について紹介した。気づかれた読者も多いと思われるが、それぞれ目的が異なることから、全く異なる視点での判断が下されている。しかしながら、会社法において少数株主にとっての株式価値で評価をするかどうかの判断において、租税法における特例的評価方式を採用することができない特段の事情というものを参考にすることができるため、わずかながらも共通するところは存在する。 次回では、会社法、租税法の裁判例の傾向についてまとめ、実務上の留意事項について検討する予定である。 (了)

#No. 205(掲載号)
#佐藤 信祐
2017/02/09
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