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《速報解説》 平成28年度税制改正を受けた東京都の法人事業税・法人都民税の税率改正案が明らかに

《速報解説》 平成28年度税制改正を受けた 東京都の法人事業税・法人都民税の税率改正案が明らかに   公認会計士・税理士 八代醍 和也   Ⅰ はじめに 企業会計基準委員会による「税効果会計に適用する税率に関する適用指針」(企業会計基準適用指針第27号、以下「本適用指針」という)公表を受け、既にこれまで下記拙稿において適用する税率に関する改正点・留意点及並びに設例を用いた実際の取扱いについての解説を行った。 東京都では平成28年3月31日に公布された「東京都都税条例の一部を改正する条例(平成28年東京都条例第79号)」において、改正地方税法を受けた都税条例改正の第一弾として、上記《速報解説》で述べたとおり、平成28年4月1日以後開始事業年度の外形標準課税法人に係る法人事業税率を改正していたが、平成29年4月1日以後開始事業年度における税率改正、すなわち、地方法人特別税・譲与税の廃止及び法人住民税法人税割の税率引下げに伴う、法人事業税及び法人都民税の税率改正については、『平成28年第二回定例会以後の東京都議会に東京都都税条例の改正として提案する予定で』あるとして、改正後税率が決定されていなかった。 このたび、平成28年5月25日に改めて東京都主税局のホームページにおいて、平成29年4月1日以後開始事業年度における法人事業税(所得割・収入割)、法人都民税法人税割の税率の改正について、予定通り第2回東京都議会定例会に東京都都税条例の改正として提案する旨及びその改正内容がリリースされた。 こうした状況を受け、以下では改正後の条例を受けた実際の計算方法及び成立が決算・開示業務に与える影響について解説を行う。   Ⅱ 改正内容 東京都が今般公表した改正内容は以下のとおり。 【法人事業税】(平成29年4月1日以後に開始する事業年度について適用) (※) 東京都主税局ホームページより 【法人都民税】(平成29年4月1日以後に開始する事業年度について適用) (※) 東京都主税局ホームページより   Ⅲ 改正条例の税率による法定実効税率の計算と決算・開示業務に与える影響 Ⅱの改正案が成立した場合、以下の計算式に基づき、東京都の平成30年3月期、平成31年3月期の法定実効税率を計算すると以下のようになる。 【30年3月期】 前提:法人都民税10.4%(23区内・超過課税)として計算している。 【31年3月期】 前提:法人都民税10.4%(23区内・超過課税)として計算している。 成立が6月下旬頃と考えられるところ、仮にこの改正案が予定どおり成立した場合には、平成28年6月以後に決算を迎える会社からは、上記計算方法によって法定実効税率を算定することになる。 なお、上記計算式を見ると、地方法人税と法人都民税の合計値(20.7%)が改正前のそれと変わらず、また、地方法人特別税廃止後の法人事業税の税率が、改正前の超過税率適用法人における地方法人特別税考慮後の税率と変わらないことから、法定実効税率に与える影響はないことになる。【30年3月期】の計算結果が前回《速報解説》の東京都のそれと変わらないことを確認されたい。 また、平成28年5月以前に決算を迎えた会社について、財務諸表等規則では、決算日後に法人税等の税率の変更があった場合に、その内容及び影響を注記することが求められているが、上記よりこの税率改正が既に計上されている繰延税金資産及び繰延税金負債に与える影響はないことになる。 (了)

#No. 171(掲載号)
#八代醍 和也
2016/06/02

《速報解説》 会計士協会、「不正な財務報告及び監査の過程における被監査会社との意見の相違に関する実態調査報告書」を公表~上場企業の監査責任経験者へのアンケートに基づいた詳細な分析結果が明らかに~

《速報解説》 会計士協会、「不正な財務報告及び監査の過程における被監査会社との意見の相違に関する実態調査報告書」を公表 ~上場企業の監査責任経験者へのアンケートに基づいた詳細な分析結果が明らかに~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 平成28年5月30日、日本公認会計士協会は「不正な財務報告及び監査の過程における被監査会社との意見の相違に関する実態調査報告書」を公表した。 本文は表紙を含めて124ページにわたる大部なものであり、その要約版が25ページのものとして公表されている。 これは、平成26年4月期から平成27年3月期に係る1年間に上場企業の監査責任者として関与した公認会計士を対象に実施したアンケートに基づいて分析したものである(アンケート実施期間:平成27年10月19日~11月9日)。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 調査結果(主なもの) 以下では「要約版」をもとにして、調査結果の概要を記載する。 下記に記載した順位以下の回答については、要約版又は調査報告書本文をお読みいただきたい。 また、調査報告書では「監査人交代のプレッシャー等に関する実証分析」についても記載されている。 1 調査の対象と回収の状況 調査の対象と回収の状況は次のとおりである(「要約版」Ⅰの表Ⅰを一部修正)。 2 調査結果の概要   Ⅲ 監査会社(の経営者)との意見の相違 監査の過程で被監査会社(の経営者)との意見の不一致が特に起きやすいと考えられる項目については、「固定資産(のれんを含む)の減損」(73.9%)、「税効果会計の適用」(47.0%)、「債権の回収可能性、貸倒引当金の見積り」(34.2%)、「(工事)進行基準の適用(契約(工事)に係る損失引当金の計上を含む)」(23.6%)の順番である。 (了)

#No. 171(掲載号)
#阿部 光成
2016/06/02

プロフェッションジャーナル No.171が公開されました!~今週のお薦め記事~

2016年6月2日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.171を公開! プロフェッションジャーナルのリーフレットは 全国のTAC校舎で配布しています! -「イケプロが実践するPJの活用術」「第一線で活躍するプロフェッションからPJに寄せられた声」を掲載!-   - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。

#Profession Journal 編集部
2016/06/02

monthly TAX views -No.41-「アベノミクス失敗の反省なき財政出動は愚策」

monthly TAX views -No.41- 「アベノミクス失敗の反省なき財政出動は愚策」   中央大学法科大学院教授 東京財団上席研究員 森信 茂樹   予想通りというべきか、安倍総理はG7サミットの議論を材料に、来年4月からの消費増税を2年半延期する(2019年10月から)意向を示した。 2年前「増税を再び延期することはない」と明言し、「消費増税のできる経済環境を整える」と自らの口で語っていたので、リーマンショック並みの経済変動が起きているわけでもない今日の増税延期は、安倍政権の経済運営であるアベノミクスの失敗、そのよって立つリフレ派の考え方が間違いであったことが明らかになったといえよう。 2012年12月から始まったアベノミクスは、異次元の金融緩和により円安が起き、輸出企業の企業収益改善、株高、資産効果などから長年デフレにあったわが国経済の景色を一変させた。しかし、この成功体験が強すぎて、その後は金融政策による円安だけに頼り、必要な構造改革や成長戦略は全くといってよいほど行われず、経済はほぼゼロ成長のままである。 消費増税先送りを決定するなら、まずはアベノミクスの失敗に対する真摯な反省が大前提ではないのか。 とりわけ金融政策は、すでに「市場の期待の虜」になっており、袋小路に入り込んでいる。ヘリコプターマネーにつながるような追加緩和やマイナス金利の深堀りでは、何の効果も生まなくなっている。 *  *  * 筆者がアベノミクスに決定的に欠けていると考えるのは、以下の3点である。 第1点目は、現在のわが国経済や消費の停滞を消費増税のせいにして、本質的・構造的な問題を取り上げようとしない点である。 わが国経済の潜在成長力は1%弱というのが定説で、2%、3%の成長を行うためには、わが国経済の供給側(労働人口の増加や設備投資の増加)の環境を整備し、潜在成長力を高めていく必要があるということである。 これを行わず財政需要を追加しても、効果は一時的で、効果が切れれば元の経済に戻ってしまう。このことは、これまでのわが国の財政政策の結果を見れば自明である。 わが国経済は、「需要不足」ではない、「実力不足」なのである。 第2に、個人が消費しない背景には、人々の漠然とした不安がある。 非正規雇用のまま所得が伸びていかない、子どもを持ちたいが、保育所が不足し、教育費もいくらかかるかわからない、今の社会保障では老後の医療・介護費用も賄えるかどうかわからない、といった不安がのしかかっている。 これを払しょくすることは容易ではないが、結局、余裕のある者からの負担増で財源を作り、子ども子育てや低所得者向けの対策に回す、所得再分配政策を行い構造改革をしていくしかないであろう。 よくフランスが手厚い家族政策をとって出生率を2.0に保っているというニュースが出るが、フランスの国民負担率(国民所得比)は65.7%(2012年)で、わが国の40.5%(同年)と比べると、25%(6割)も高いのである。 金融政策・財政政策・構造改革がサミットでも3本の矢というようだが、究極の構造改革は、税・社会保障一体改革である。 第3に、金融政策や財政政策(追加財政需要)は、将来の需要の先食いであり、時間稼ぎの政策である。その間に、付加価値を生み出す唯一の主体である民間が成長できるような規制改革を行うこと、公的な分野にマーケットメカニズムを導入していくこと、これが必要である。 保育所不足も突き詰めていくと、さまざまな規制がある結果、需要と供給のメカニズムが働かず、低賃金がネックとなっている。IT時代、もう少し人々の創意工夫が可能な規制緩和が必要である。 (了)

#No. 171(掲載号)
#森信 茂樹
2016/06/02

「少額減価償却資産の取得価額の損金算入特例」平成28年度改正のポイント 【第2回】「改正後の適用対象法人の確認」

「少額減価償却資産の取得価額の損金算入特例」 平成28年度改正のポイント 【第2回】 「改正後の適用対象法人の確認」   税理士 伊村 政代   今回は適用対象法人の見直しについて、詳しく確認していきたい。   1 適用対象法人の制限 前回説明したとおり、今回の改正により、適用対象法人に制限が加えられた。改正前は、中小企業者のうち資本又は出資があるものについては、その資本金の額又は出資金の額が1億円以下の中小企業者であれば、この特例の適用を受けることができた。 しかし、改正後は、中小企業者のうち資本又は出資があるものについて、その資本金の額又は出資金の額が1億円以下であっても、常時使用する従業員の数が1,000人を超える法人は対象から外れることになる。 なお、資本又は出資を有しない法人、農業協同組合等に対するこの規定の適用は、改正による変更はない。   なおこの改正は、平成28年4月1日以後に取得又は製作若しくは建設をし事業供用した少額減価償却資産について適用され、同日前に取得又は製作若しくは建設をし事業供用した少額減価償却資産については、従来どおりの制度が適用される(改正法附則101条)。   2 対象となる中小企業者等 改正前後の適用対象となる中小企業者等についてまとめると、次の通りである。 (※) 中小企業者とは次の法人をいう。 ・資本金の額又は出資金の額が1億円以下の法人のうち大規模法人との間に一定の支配関係のないもの。 ・資本又は出資を有しない法人のうち常時使用する従業員の数が1,000人以下の法人。   3 従業員数の判定について (1) 常時使用する従業員の範囲 「常時使用する従業員」は、常用であると日々雇い入れるものであるとを問わず、事務所又は事業所に常時就労している職員、工員等の総数によって判定する。役員は従業員の数には含めない。 (2) 従業員数の判定時期 なお、従業員の数に含める従業員は、上記のように、常勤の労働者、季節ごとに雇い入れる労働者、日雇い労働者であることを問わない。 よって厳密には、事業年度の中途において、1,000人を超えたり下回ったりすることも想定されるが、その判定については、該当資産ごとに取得又は製作若しくは建設をして事業供用をした日のそれぞれの現況により判定することとなる。      4 適用できる中小企業者の判定フローチャート   (連載了)

#No. 171(掲載号)
#伊村 政代
2016/06/02

企業版ふるさと納税(地方創生応援税制)の制度解説 【第3回】「大法人・中小法人別の計算例」

企業版ふるさと納税(地方創生応援税制)の制度解説 【第3回】 (最終回) 「大法人・中小法人別の計算例」   辻・本郷税理士法人 税理士 安積 健   連載最終回の今回は、本制度を適用した際の具体的な税額控除計算について確認していく(計算方法については【第1回】を参照)。 なお以下では、(資本金1億円超の)大法人と中小法人に分け、それぞれ、法人事業税・法人住民税で引ききれるケースと、法人住民税では引ききれず法人税からも控除するケースの計4つの計算例を紹介する。   ▷計算例① 大法人(法人事業税・法人住民税で引ききれるケース) 【前提】 法人税・法人事業税の課税所得:200,000,000円 付加価値額:350,000,000円 資本金等の額:250,000,000円 特定寄附金の額:5,000,000円 税額(税額控除前) 〇法人税:200,000,000円×23.4%=46,800,000円 〇地方法人税:46,800,000円×4.4%=2,059,200円 〇法人事業税:200,000,000円×0.7%+350,000,000円×1.2%+250,000,000円×0.5%=6,850,000円 〇地方法人特別税:200,000,000円×0.7%×414.2%=5,798,800円 〇法人住民税 ・道府県民税:46,800,000円×3.2%=1,497,600円 ・市町村民税:46,800,000円×9.7%=4,539,600円 税額控除 〇法人事業税 (ア) 5,000,000円×10%=500,000円 (イ) 6,850,000円×20%=1,370,000円  (ア)(イ)の少ない方 ⇒ 500,000円 〇法人住民税 ・道府県民税 (ア) 5,000,000円×5%=250,000円 (イ) 1,497,600円×20%=299,520円  (ア)(イ)の少ない方 ⇒ 250,000円 ・市町村民税 (ア) 5,000,000円×15%=750,000円 (イ) 4,539,600円×20%=907,920円  (ア)(イ)の少ない方 ⇒ 750,000円 〇法人税 5,000,000円×20% < 46,800,000円×2.58%  ∴0   ▷計算例② 大法人(法人税額から控除するケース) 【前提】 法人税・法人事業税の課税所得:50,000,000円 付加価値額:250,000,000円 資本金等の額:150,000,000円 特定寄附金の額:5,000,000円 税額(税額控除前) 〇法人税:50,000,000円×23.4%=11,700,000円 〇地方法人税:11,700,000円×4.4%=514,800円 〇法人事業税:50,000,000円×0.7%+250,000,000円×1.2%+150,000,000円×0.5%=4,100,000円 〇地方法人特別税:50,000,000円×0.7%×414.2%=1,449,700円 〇法人住民税 ・道府県民税:11,700,000円×3.2%=374,400円 ・市町村民税:11,700,000円×9.7%=1,134,900円 税額控除 〇法人事業税 (ア) 5,000,000円×10%=500,000円 (イ) 4,100,000円×20%=820,000円  (ア)(イ)の少ない方 ⇒ 500,000円 〇法人住民税 ・道府県民税 (ア) 5,000,000円×5%=250,000円 (イ) 374,400円×20%=74,880円  (ア)(イ)の少ない方 ⇒ 74,880円 ・市町村民税 (ア) 5,000,000円×15%=750,000円 (イ) 1,134,900円×20%=226,980円  (ア)(イ)の少ない方 ⇒ 226,980円 〇法人税 (ア) 5,000,000円×20%-11,700,000円×2.58%=698,140円 (イ) 5,000,000円×10%=500,000円 (ウ) 11,700,000円×5%=585,000円  (ア)(イ)(ウ)のうち最も少ないもの ⇒ 500,000円   ▷計算例③ 中小法人(法人事業税・法人住民税で引ききれるケース) 【前提】 法人税・法人事業税の課税所得:50,000,000円 特定寄附金の額:1,000,000円 税額(税額控除前) 〇法人税:8,000,000円×15%+(50,000,000円-8,000,000円)×23.4%=11,028,000円 〇地方法人税:11,028,000円×4.4%=485,232円 〇法人事業税:50,000,000円×6.7%=3,350,000円 〇地方法人特別税:3,350,000円×43.2%=1,447,200円 〇法人住民税 ・道府県民税:11,028,000円×3.2%=352,896円 ・市町村民税:11,028,000円×9.7%=1,069,716円 税額控除 〇法人事業税 (ア) 1,000,000円×10%=100,000円 (イ) 3,350,000円×20%=670,000円  (ア)(イ)の少ない方 ⇒ 100,000円 〇法人住民税 ・道府県民税 (ア) 1,000,000円×5%=50,000円 (イ) 352,896円×20%=70,579円  (ア)(イ)の少ない方 ⇒ 50,000円 ・市町村民税 (ア) 1,000,000円×15%=150,000円 (イ) 1,069,716円×20%=213,943円  (ア)(イ)の少ない方 ⇒ 150,000円 〇法人税 1,000,000円×20%<11,028,000円×2.58%  ∴0   ▷計算例④ 中小法人(法人税額から控除するケース) 【前提】 法人税・法人事業税の課税所得:30,000,000円 特定寄附金の額:1,000,000円 税額(税額控除前) 〇法人税:8,000,000円×15%+(30,000,000円-8,000,000円)×23.4%=6,348,000円 〇地方法人税:6,348,000円×4.4%=279,312円 〇法人事業税:30,000,000円×6.7%=2,010,000円 〇地方法人特別税:2,010,000円×43.2%=868,320円 〇法人住民税 ・道府県民税:6,348,000円×3.2%=203,136円 ・市町村民税:6,348,000円×9.7%=615,756円 税額控除 〇法人事業税 (ア) 1,000,000円×10%=100,000円 (イ) 2,010,000円×20%=402,000円  (ア)(イ)の少ない方 ⇒ 100,000円 〇法人住民税 ・道府県民税 (ア) 1,000,000円×5%=50,000円 (イ) 203,136円×20%=40,627円  (ア)(イ)の少ない方 ⇒ 40,627円 ・市町村民税 (ア) 1,000,000円×15%=150,000円 (イ) 615,756円×20%=123,151円  (ア)(イ)の少ない方 ⇒ 123,151円 〇法人税 (ア) 1,000,000円×20%-6,348,000円×2.58%=36,222円 (イ) 1,000,000円×10%=100,000円 (ウ) 6,348,000円×5%=317,400円  (ア)(イ)(ウ)のうち最も少ないもの ⇒ 36,222円 (連載了)

#No. 171(掲載号)
#安積 健
2016/06/02

租税争訟レポート 【第28回】「馬券の払戻金の所得区分と外れ馬券の必要経費該当性(東京高等裁判所判決)」

租税争訟レポート 【第28回】 「馬券の払戻金の所得区分と外れ馬券の 必要経費該当性(東京高等裁判所判決)」   税理士・公認不正検査士(CFE) 米澤 勝   平成28年4月21日、東京高等裁判所は、原審である東京地方裁判所の判決を破棄、競馬の払戻金に係る所得について、「営利を目的とする継続的行為から生じた所得であるか否かは、文理に照らし、行為の期間、回数、頻度その他の態様、利益発生の規模、期間その他の状況等の事情を総合考慮して判断するのが相当である」として、所得区分を雑所得、外れ馬券の購入代金を必要経費に含めるという、平成27年3月10日の最高裁判所判決と同様の見解を示す判決を言い渡した。 なお、本高裁判決の原判決については、本連載【第24回】、【第25回】も合わせてご参照いただきたい。   【事案の概要】 本件は、馬券の的中による払戻金に係る所得(以下「競馬所得」という)を得ていた控訴人が、平成17年分から平成21年分の所得税に係る申告期限後の確定申告及び平成22年分の所得税に係る申告期限内の確定申告を行い、その際、原告が得た競馬所得は雑所得に該当するとして総所得金額及び納付すべき税額を計算していたところ、所轄税務署長の稚内税務署長から、本件競馬所得は一時所得に該当し、上記各年の一時所得の金額の計算において外れ馬券の購入代金を総収入金額から控除することはできないとして、平成23年3月14日付けで平成17年分から平成21年分の所得税に係る各更正及び各無申告加算税賦課決定を、平成23年3月30日付けで平成22年分の所得税に係る更正及び過少申告加算税賦課決定を、それぞれ受けたことから、これらの各処分(本件各更正処分については総所得金額及び納付すべき税額が確定申告額を超える部分)の取消しを求めた事案である。 原審である東京地方裁判所は、本件競馬所得は一時所得に該当し、外れ馬券の購入代金を一時所得に係る総収入金額から控除することはできず、本件各更正処分及び本件各賦課決定処分はいずれも適法であるとして、控訴人の請求をいずれも棄却した。 控訴人の主張は、原審から一貫して、①本件競馬所得は雑所得に該当し、上記各年の雑所得の金額の計算において外れ馬券の購入代金も必要経費として総収入金額から控除されるべきである、②仮に本件競馬所得が一時所得に該当するとしても、その総収入金額から外れ馬券を含む全馬券の購入代金が控除されるべきであり、本件各処分は違法であるとして、本件各更正処分のうち確定申告額を超える部分及び本件各賦課決定処分の取消しを求める、というものである。   【判示内容】 1 結論 控訴審判決は、「第3 当裁判所の判断」冒頭で、以下のように結論を述べ、控訴人の請求を認容する判断を示した。 2 争点①:競馬所得の所得区分 競馬所得の所得区分をめぐっては、国税不服審判所及び原審は、これを「一時所得」と判断していたが、控訴審では、最高裁判所平成27年3月10日判決(以下「別件最高裁判決」という。【第22回】を参照)を引用する形で、「雑所得」と判断した。 それぞれの判断要旨は次のとおりである。 (1) 原審の判断 (2) 控訴審の判断 控訴審では、別件最高裁判決を引用する形で、「営利を目的とする継続的行為から生じた所得」について、次のように解釈する。 そのうえで、控訴人の馬券購入について、以下のように要約し、別件最高裁判決の当事者との間に、「馬券の購入方法に本質的な違いはない」と認めた。 その結果、「本件競馬所得は、「営利を目的とする継続的行為から生じた所得」として、一時所得ではなく雑所得に該当するというべきである」として、原審の認定を覆したものである。 3 争点②:外れ馬券の必要経費該当性 本件高裁判決が、競馬所得が「一時所得」ではなく「雑所得」と認定し、「一連の馬券の購入は一体の経済活動の実態を有する」ことを認めた以上、外れ馬券が必要経費に該当するという別件最高裁判決と同じ結論が導き出されるのは当然のことである。 原審と控訴審の判決を比較しておきたい。 (1) 原審の判断 (2) 控訴審の判断   【解説】 1 最高裁平成27年3月10日判決を踏襲したものであり、常識的な判決 別件最高裁判決が出た後、国税庁は、所得税基本通達を改正し、34-1(一時所得の例示)に以下のような注書きを追記した。 原審判決は、この通達を文言どおりに解釈して、「営利を目的とする継続的行為から生じた所得に該当するということはできない』と判断したものであった。しかし、原審判決が公表された際には、別件最高裁判決との比較において、馬券の購入金額や払戻金の額がより大きい本件訴訟について、馬券購入記録が残っていないことやソフトウエアを利用していないことを理由に「一時所得」と判断したことに対する批判が多く見られたのも事実である。 また、基本通達34-1の改正にあたってのパブリックコメント等でも、その注書きがあまりにも限定であるとの意見が多くあった(本連載【第24回】、【第25回】をご参照いただきたい)。 一方、高裁判決は、「馬券を自動的に購入するソフトウエアを使用」、「独自に条件設定と計算式に基づいて」という、通達における限定条件にこだわることなく、網羅的な馬券購入の態様と「期待回収率が100%を超える馬券を有効に選別し得る独自のノウハウ」に着目して、別件最高裁判決の趣旨を生かしたものであると評価できよう。 2 所得税基本通達の再改正の必要性 国税庁は、本件高裁判決を不服として最高裁判所に上告受理の申立てを行ったため、判決は確定してはいないが、通達改正時に批判されてきた限定的すぎる「雑所得認定」が、早くも高裁によって否定されたことの影響は大きいのではないだろうか。「上告受理申立て」についても、通達再改正のための時間稼ぎととられても仕方ないかもしれない。 本件高裁判決が、あらためて別件最高裁判決を確認したように、「営利を目的とする継続的行為から生じた所得」に該当するか否かは、網羅的に大量の馬券を購入して利益を上げるという行為そのものから判断されるべきであって、「馬券を自動的に購入するソフトウエアを使用」すること、「独自に条件設定と計算式に基づいて」馬券を購入することといった条件は「営利を目的とする継続的行為」を構成する要素に過ぎないというべきであろう。 本連載【第25回】でも指摘したことであるが、別件最高裁判決が言い渡された翌日のリリースには、次のような「今後の対応」が明記されていた。通達の改正作業、本件訴訟での国税庁の主張を通じては、こうした対応方針が蔑ろにされてきているように思えてならない。   (了)

#No. 171(掲載号)
#米澤 勝
2016/06/02

理由付記の不備をめぐる事例研究 【第12回】「寄附金と営業権」~営業権の譲受代金の支払ではなく、寄附金に該当すると判断した理由は?~

理由付記の不備をめぐる事例研究 【第12回】 「寄附金と営業権」 ~営業権の譲受代金の支払ではなく、寄附金に該当すると判断した理由は?~   中央大学大学院商学研究科 博士後期課程 (酒井克彦研究室所属) 泉 絢也   今回は、青色申告法人X社に対して、X社が営業権の譲受代金債務と貸付金債権の相殺を行ったことについて、営業権の譲受代金ではなく、貸付金を免除する目的で贈与された寄附金に該当するものとした法人税更正処分の理由付記の十分性が争われた国税不服審判所平成3年3月27日裁決(裁決事例集41号219頁。以下「本裁決」という)を取り上げる。   1 更正通知書に記載された更正の理由(本件理由付記) (注)  素材とした本裁決の裁決文から読み取ることができる理由付記の一部を筆者が加工している。   2 本件理由付記から読み取ることができる関係図 (注)  X社は営業権の取得価額である20,000,000円について、2期にわたって減価償却費として損金の額に算入していたところ、課税庁及び本裁決はこの減価償却費の損金算入を認めなかった。しかしながら、理由付記に減価償却費に関する記載があったのか否かも含めて、本裁決においては、減価償却費の否認に係る理由付記の記載の十分性に関する判断がなされていないため、本稿でも、この点に関しては言及しないこととする。   3 本判決の判断 本裁決は、大要次のとおり、理由付記に不備はないと判断した。 (1) 求められる理由付記の程度 (2) 理由付記の十分性   4 私見 (1) 関係法令等の確認 本件更正処分は、X社がA社に対して有する貸付金と相殺した20,000,000円は、営業権の譲受代金ではなく、同社に対して有する貸付金を免除する目的で贈与された寄附金に該当するものである。そうすると、根拠条文は、法人税法37条であるといえる(法人税法37条の規定内容については【第11回】参照)。 (2) 求められる理由付記の程度 本件更正処分は、X社がA社に対して有する貸付金と相殺した20,000,000円は、営業権の譲受代金ではなく、私法上はともかく法人税法においては寄附金と評価するものであるという理解を前提とするならば、本裁決が述べるとおり、帳簿書類の記載自体を否認することなしに更正をする場合に該当すると考える。 この場合、理由付記の程度としては、更正通知書記載の更正の理由が、そのような更正をした根拠について帳簿記載以上に信憑力のある資料を摘示するものでないとしても、更正の根拠を更正処分庁の恣意抑制及び不服申立ての便宜という理由付記制度の趣旨目的を充足する程度に具体的に明示するものである限り、法の要求する更正理由の付記として欠けるところはないことになる(最高裁昭和60年4月23日第三小法廷判決・民集39巻3号850頁等参照)。 (3) 理由付記の十分性 次のとおり、本件理由付記は、法の求める理由付記として十分なものであると考える。 本件理由付記は、まず、X社とA社との間の追加契約に係る営業権について、これを営業権としては認めないこととしている。その理由として、「1 貴法人とA社との営業権譲渡契約は、×3年4月1日に有効に成立しています。」、「2 営業権の追加契約というのは、一般的にあり得ない行為であるとともに、当初契約から4年が経過したにもかかわらず、当該行為ができたのは、お互いに同族関係会社にあったからであります。」、「3 ×7年3月31日にA社に対して有する貸付金と相殺した20,000,000円は、営業権の譲受け代金ではなく、同社に対して有する貸付金を免除する目的で贈与された寄附金に該当します。」と記載している。 その判断の是非は別としても、これらによれば、本件理由付記は、×3年4月1日にX社とA社との営業権譲渡契約が有効に成立していることを前提として、営業権の追加契約というのは、一般的にあり得ない行為であるという経験則に基づいて、×3年4月1日の契約から4年が経過したにもかかわらず、事後的に追加契約ができたのは、お互いに同族関係会社であったからであって、他に合理的な理由があるとは認められないため、×7年3月31日にA社に対して有する貸付金と相殺した20,000,000円は、営業権の譲受けの対価ではなく、同社に対して有する貸付金を免除する目的で行われた対価性・経済合理性のない、寄附金に該当するという趣旨であると解することもできる。 このように、本件理由付記について、X社がA社に対して有する貸付金と相殺した20,000,000円は、営業権の譲受けの対価ではなく、私法上はともかく法人税法においては、対価性・経済合理性のない支出として、法人税法37条の寄附金と評価するという趣旨であることを読み取ることが可能であるとすれば、本件理由付記は、その記載内容から法令上の根拠が明らかになるものであり、かつ、法令上の要件に対応する具体的な事実を記載するものであり、これによって課税庁の判断過程が明らかとなるものであるから、更正処分庁の判断の慎重、合理性を担保してその恣意を抑制するとともに、更正の理由を相手方に知らせて不服申立ての便宜を与えるという理由付記の趣旨目的に適うものであると考える (4) 異なる視点 別の考え方として、本件更正処分は、実質的に、帳簿書類に記載のある「営業権」やその追加契約があったことを否定するもの、あるいはX社とA社間で締結したとされている本件追加契約の成立を私法レベルで否定して、本件金員は実際にはX社がA社に対して有する貸付金を免除する目的で行った贈与であると認定するものであるといえ、帳簿書類の記載自体を否認して更正する場合に該当するという見解があり得る。 そうすると、理由付記の程度としては、 ことになる(最高裁昭和60年4月23日第三小法廷判決・民集39巻3号850頁等参照)。 この場合、本件理由付記は、更正処分の根拠ないし資料を摘示したものであると理解できそうではあるが、営業権や追加契約に関する帳簿書類との関係で、本件理由付記をもって、更正処分の根拠を帳簿記載以上に信憑力のある資料を摘示することによって具体的に明示していると評価できるかが問題となり、場合によっては理由付記の十分性が否定される可能性もある。 ここでは、素材とした本裁決に係る審査請求において、課税庁は、本件追加契約に関して、「×7年2月10日に開催されたX社の取締役会の議事録によれば、本件追加契約に係る本件覚書を取り交わす理由が、『譲渡人から、清算事務遂行上著しく障害となる旨の異議の申入れがあったため』であるとされているが、A社の清算事務遂行上障害となるような具体的な事実はない」と主張しているが、このような内容が本件理由付記には記載されていないことを指摘しておこう。 (了)

#No. 171(掲載号)
#泉 絢也
2016/06/02

裁判例・裁決例からみた非上場株式の評価 【第8回】「募集株式の発行等⑦」

裁判例・裁決例からみた 非上場株式の評価 【第8回】 「募集株式の発行等⑦」   公認会計士 佐藤 信祐   前回は、大阪地裁平成2年2月28日判決、京都地裁平成4年8月5日判決について解説を行った。 【第8回】に当たる本稿では、東京地裁平成4年9月1日判決、東京地裁平成6年3月28日判決について解説を行うこととする。   10 東京地裁平成4年9月1日判決・判時1463号154頁 (1) 事実の概要 本事件は、株主総会の特別決議を経ないで発行価額50円とする30万株の新株を発行済株式の総数の約40%を保有する労働組合に対して割り当てたことにつき、取締役と引受人に対して損害賠償を求めた事件である。 (2) 裁判所の判断 (3) 評釈 このように本事件では、時価純資産方式を採用しながらも、7割の非流動性ディスカウントを行っている。ただし、本事件の原告は、時価純資産方式による譲渡を目論み、取締役会に承認を求めていたという特徴がある。すなわち、時価純資産方式での買取りを断念した労働組合が額面金額による第三者割当の引受けを行うという背景があったことから、時価純資産方式を採用するという裁判所の判断に繋がるのは自明のことと考えられる。 なお、非流動性ディスカウントの金額が多額であり、かつ、時価純資産方式に非流動性ディスカウントを行うというやや違和感のある判決となっているが、この点についても、時価純資産が割高になりやすいと裁判所が考えているからであろう。 そして、売買事例方式は極めて閉鎖的な会社であることから採用できないとし、配当還元方式は無配が継続していること、類似会社比準方式、類似業種比準方式は適切な標本会社、標本業種が見当たらないこと、利益還元方式は社内に留保された部分は直接株主に利益を与えるものではないことから、それぞれ採用されなかった。 このうち、利益還元方式を採用しなかった理由については、ファイナンス理論からすると大いに問題があるが、本事件では、労働組合が筆頭株主でありながら経営参加をしていないという特殊性があることから、社内留保を少数株主にとっての株式価値から除外するという現在の裁判例の傾向からするとやむを得ないのかもしれない。   11 東京地裁平成6年3月28日判決・判時1496号123頁 (1) 事実の概要 本事件は、発行済株式総数の13.1%を保有する筆頭株主が、第三者に対して行われた第三者割当が、①当該筆頭株主の発言権を低下させることを目的とした不当なものであること、②有利発行に該当することを理由として、新株発行の差止めを請求した事件である。 本連載は、非上場株式の評価についての連載であるため、後者についてのみ解説を行うこととする。 (2) 裁判所の判断 (3) 評釈 本事件で類似会社比準方式が採用されなかった理由は、子会社であるフジテレビジョンやポニーキャニオンを含めて連結すれば、東京放送や日本テレビ放送などと比準することが可能であるが、被告であるニッポン放送はフジテレビジョンの発行済株式の総数のうち51%しか保有しておらず、会社の規模も子会社の方が大きいことを理由として、一体的に捉えることが困難であるとしている。 また、子会社のフジテレビジョンが上場を意図しているという点についても、親会社である日本放送が上場をすることが決まっているわけではないことや、可能性があったとしても時期が未定であることから、類似会社比準方式を採用する理由にはならないとしている。 さらに、時価純資産方式、収益還元方式についても、支配株主にとっての株式価値を示すものであり、少数株主にとっての株式価値を示すものではないということで採用されなかった。 このように、少数株主にとっての株式価値を示す評価方法として最も優れている方式をゴードンモデル方式による配当還元方式とした点で非常に注目すべき事件であり、その後の裁判例でも同様の傾向が見受けられる。 なお、本事件における鑑定意見書は、河本一郎・濵岡峰也『非上場株式の評価鑑定集』(成文堂、平成26年)277-314頁に収録されているため、興味のある読者は一読されたい。 次回では、東京地裁平成9年9月17日判決、千葉地裁平成8年8月28日判決、大阪高裁平成11年6月17日判決について解説を行う予定である。 (了)

#No. 171(掲載号)
#佐藤 信祐
2016/06/02

税務判例を読むための税法の学び方【83】 〔第9章〕代表的な税務判例を読む(その11:「一時所得の計算における所得税法34条2項の「その収入を得るために支出した金額」の範囲①」(最判平24.1.13))

税務判例を読むための税法の学び方【83】 〔第9章〕代表的な税務判例を読む (その11:「一時所得の計算における所得税法34条2項の 「その収入を得るために支出した金額」の範囲①」(最判平24.1.13))   立正大学法学部准教授 税理士 長島 弘   1 はじめに この判例は、所得税法34条2項の「その収入を得るために支出した金額」の意義を巡って争われ、第一審・控訴審ともに納税者が勝訴したのにもかかわらず、最高裁で一転国側が勝訴した事案である。 この訴訟自体は、養老保険契約に基づいて受領した満期保険金の一時所得の計算にあたり控除し得る金額について争われた事案であるが、条文の読み方の姿勢として示唆するところは大きいものであるため、これを解説したい。   2  事案の概要 原告らは、その経営する法人が契約者となり、原告らと同法人が保険料を各2分の1ずつ負担した養老保険契約の満期保険金を受領した。そこで原告らは、同法人負担分も含む保険料全額を、所得税における一時所得の金額の計算上控除し得る「収入を得るために支出した金額」に当たるものとして、所得税に係る確定申告(平成13年分から平成15年分)をした。しかし税務署長は、同法人が負担した(保険料として損金処理した)2分の1の保険料は、「収入を得るために支出した金額」に当たらないとして、更正処分及び過少申告加算税賦課決定処分をなした。そこで原告らが、上記各処分の取消しを求めた事案である。 この保険契約は、従業員の福利厚生の一環として、全従業員を被保険者とし、死亡保険金の受取人を被保険者である従業員の遺族、満期の生存保険金(以下「満期保険金」という)の受取人を契約者である法人とした場合に、支払う保険料の半額を損金、半額を資産計上とする、いわゆる「ハーフタックス」類似の保険契約である。ただしこの「ハーフタックス」と異なり福利厚生目的ではなく、一部の役員を対象とし、死亡保険金の受取人を契約者である法人、満期保険金の受取人を被保険者である従業員(本件では役員)としたものである。 これまで、このような契約の場合の課税関係は明らかにされていなかったところ、死亡保険金と生存保険金は表裏の関係であるとして、ハーフタックスと同様(このハーフタックスの課税関係は、法人税基本通達9-3-4(3)に示されている)と見て、次の処理をしていた。すなわち、保険料の半額は法人で損金に算入し、この通達の但し書きに残りの半額は給与として課税されるということから、源泉徴収しない代わりに、この半額分は役員への貸付金として処理していた。これは源泉徴収はなされていないが、保険料の半額については、被保険者である満期保険金の受取人が負担していたという点では、給与課税されたものと同視し得よう。 そして原告らは、満期保険金を受領した際に、この貸付処理されていた金額を法人に返済したが、この満期保険金を一時所得として申告した際に、控除しうるのはこの貸付処理されて返済した受取人が実際に負担した保険料だけなのか、法人が支払った保険料も含むのかが争われたのである。   3  関係条文(平成13年~平成15年当時) この判例に関係する当時の法令・通達を挙げると次の通りである。 (1) 関連法令 (2) 関連通達   4 裁判所の判断(第一審(福岡地裁平成21年1月27日判決)の判断) これは裁判所ホームページや税務大学校の税務訴訟資料にて判決が公開されているため、これを入手し、読んでいただきたい。本稿では割愛するが、そこには当事者の主張も掲載されているため、ぜひ見てもらいたい。 (1) 一般的法命題 まず、以下の2点の内容を判示する。 すなわち、この判決は、法令解釈を争うものであるから、法令解釈の基本的あり方を一般的法命題(大前提)として挙げて、次の事実認定(小前提)も法令解釈となっている。 (2) 小前提 そこでは、まず所得税法34条2項の文言からは、所得者本人が負担した部分に限られるのか、所得者以外の者が負担した部分も含まれるのかは、必ずしも明らかでないとして、施行令の判断に移り、そこでは、「所得税法施行令183条2項2号本文は、生命保険契約等に基づく一時金が一時所得となる場合、保険料又は掛金の「総額」を控除できるものと定めており、この文言からすると、所得者本人負担分に限らず保険料等全額を控除できるとみるのが素直である。そして、同号ただし書イないしニは、控除が認められない場合を、包括的・抽象的文言を用いることなく、法律と条文を特定して個別具体的に列挙しており、他に控除が認められない場合が存することをうかがわせる体裁とはなっていない。」と指摘し、次の結論を導いている。 これに引き続き、所得税基本通達34-4も、明確に、控除し得る金額には「支払を受ける者以外の者が負担した保険料又は掛金の額(これらの金額のうち、相続税法の規定により・・・の金額を除く。)も含まれる。」と規定しており、括弧書きで除かれた部分以外に控除し得る金額が限定される場合があると読み取ることは困難であるとする。 次いで、補足的に国の主張に対して検討を加えている。すなわち国が、関連法令及び通達を合理的に解釈すれば、一時所得の計算上控除し得るのは、収入を得た本人が負担した保険料及び事業主が負担した保険料で使用人に対して給与課税された保険料に限られ、原告らが法人損金処理保険料を控除することは認められないと主張する点につき検討している。 ① 所得税法施行令183条2項2号と所得税基本通達34-4 そこでは、まず国の、所得税法施行令183条2項2号ただし書が、所得者において実質的な負担がない保険料等は控除しないことを例示的に定めたものであるとの主張に対しては、この例示から「上記法の趣旨ないし原則を直ちに導き得るものとはいえず、納税者の観点からしても、そのような解釈をすることは困難」と判示し、むしろこの規定が例示列挙ではなく限定列挙とみるのが相当であるとしている。 次いで、国の、所得者以外の者が負担した保険料等も控除できる旨の所得税基本通達34-4の規定は、所得者以外の者が保険料等を負担した場合原則として所得者(保険金受取人)に給与課税等されていることを前提としたものであるとの主張に対しては、「そのような背景があるとしても、何ら明文がないのに、所得者に給与課税等されていなければ控除できないと限定的に解釈することは困難」と判示し、むしろ、所得税法施行令183条2項2号、所得税基本通達34-4の文言からすると、誰が保険料等を支払ったか、所得者に給与課税等されたか否かにかかわらず、控除を認めることとしているとみる方が合理的であるとする。 ② 所得税基本通達34-4(同通達76-4との対比の点から) さらに他の通達との関連で、生命保険料等控除に関する同通達76-4が、本文において、役員又は使用人に給与課税されたか否かを明確に区別しているのに対し、この34-4本文ではその区別がされていないことから、給与課税の有無を問わず控除を認めることとしているものと解されるとする。 また国側が、34-4の注書きで、少額非課税とされた保険料が控除しうる保険料又は掛金の総額に算入できる旨を定めていることから、これが例外を定めたものであって、それには自己の負担した保険料以外は控除できないという前提がある旨主張する点について、少額非課税とされた生命保険料等については生命保険料控除の対象とならない(同通達76-4の注書き参照)ので、注書きがなければ一時所得の計算上も控除できないとの誤解を招くおそれがあることから、あえて原則(本文)どおり控除できることを規定した確認的なものであると解するのが相当であり、注書きが例外を定めたものという主張は採用できないとする。 ③ 所得税法76条1項と基本通達 国は、所得税法76条1項及び所得税基本通達76-4が、使用者が負担した保険料であっても使用人等に給与課税されていれば使用人等が支払ったのと同様であるという観点から、給与課税されている場合に限定して、生命保険料等控除を認めたものであり、この点からも、一時所得の計算上その保険料等を控除できないことを指摘するが、判決は、生命保険料控除と、一時所得の計算上の控除は、別の問題であって、前者に関する解釈から後者に関する解釈を導くことは相当でないとする。 ④ 法人税基本通達9-3-4 国は、法人税基本通達9-3-4における(1)~(3)の中で、(2)の死亡保険金及び生存保険金の受取人が被保険者又はその遺族である場合及び(3)の役員又は部課長その他特定の使用人のみを被保険者としている場合には、法人が負担した保険料については従業員等に給与課税等されることになっていることから、満期保険金が個人に対する一時所得となるのは、この(2)の場合のみと主張するが、このことから従業員等が一時所得の計算上控除できる保険料は法人が支払った保険料のうち従業員等に給与課税されたものに限られるとの法の趣旨ないし原則を読み取ることは相当とはいえないとする。 *   *   * 次いで、国の、法人損金処理保険料部分に対応する満期保険金(2分の1)については、原告らが法人から贈与によって取得したものとみるべきであるから、法人損金処理保険料は原告らの一時所得の計算上控除できないとの主張に対しては、保険金の受領を直ちに贈与と見ることはできないとする。 また、国の、本件養老保険契約は通常行われる保険契約と異なり、原告らがほとんど税負担を負うことなく法人から資金の移転を受けることを企図した不自然な契約形態であるとして、法人が損金処理をした保険料の控除を認めるべきではないとの主張に対しては、契約者を法人、被保険者を従業員等、死亡保険金の受取人を法人、満期保険金の受取人を従業員等とする契約形態は、必ずしも想定不可能なほど不自然・不合理なものとはいえないのであり、これにより、原告らがほとんど税負担を負わずに法人から資金の移転を受けることができることになるが、それは法令上許された契約を締結したことによる結果であって、これが直ちに租税の基本原則に抵触するとか、租税の公平性を害するものということはできないとする。 (3) あてはめ そしてこれらの検討を通して と結論付ける。 *   *   * 次回はこの事案の控訴審及び上告審について見ていく。 (続く)

#No. 171(掲載号)
#長島 弘
2016/06/02
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