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「教育資金の一括贈与に係る贈与税非課税措置」平成27年度改正における拡充要件の確認

「教育資金の一括贈与に係る贈与税非課税措置」 平成27年度改正における拡充要件の確認   ミレニア綜合会計事務所 代表税理士 甲田 義典   1 はじめに 教育資金の一括贈与に係る贈与税非課税措置(以下「本制度」という)は、祖父母世代から孫世代への世代間で資産移転を促進させ、子育て世代が将来必要となる教育資金を早期に確保し、消費を拡大させるための経済活性化策の一環として、平成25年度税制改正において創設された。 一般社団法人信託協会の調査によれば、本制度の信託契約による適用状況は、平成25年4月から平成27年3月までの3年間で、契約数119千件、信託設定金額で約8,030億円となっている。 平成27年度税制改正(以下「本改正」という)では、経済活性化のために本制度が一定の効果が期待されることから、現在までの適用実態を踏まえて、その適用期限が延長され、本制度の対象となる教育資金の資金使途の範囲について拡充し、領収書等に関して金融機関への提出などの手続の簡素化が図られた。 本稿では、これら拡充等された要件について確認していくこととする。   2 改正の概要 本改正では、以下3点の拡充が図られている。   3 改正の主な内容 (1) 適用期限の延長 本制度の適用期限は、平成31年3月31日(改正前:平成27年12月31日)まで3年3ヶ月延長された(新措法70の2の2①)。 (2) 教育資金の使途拡充 改正前の制度では、教育に直接要する費用が対象とされており、輸送の対価である定期券購入費用などはそれに該当しないと考えられるため、本制度の適用対象外とされていた。 本改正では、交通費の中でも教育を受けるためには不可欠であり、かつ、証明が可能と考えられる次の3つについて、教育資金の使途の範囲に追加された(平成27年3月文部科学省告示第89号による改正後の平成25年3月文部科学省告示第68号の第2項第6号及び第7号)。 なお本改正は、平成27年4月1日以後に支払われたものについて適用される。 なお、上記の各費用の詳細及び実務上必要となる証明書類などは、文部科学省が公表している『教育資金の一括贈与に係る贈与税非課税措置(『教育資金』及び『学校等』の範囲)に関するQ&A』(以下「Q&A」という)で明らかにされており、主なポイントをまとめると以下のとおりとなる。 【参考】 往路に関する交通費の支出に係る確認書 ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 (3) 手続の簡素化 本制度では、教育資金の支出を確認するため、領収書等を金融機関に提出する必要があり、金融機関はその領収書等の内容を確認することになっている。 そのため、領収書等の記載事項に不備があれば、受贈者は支払先へその不備を補うことが求められ、金融機関へ領収証等の再提出を要するといったケースが生じていた。そして、受贈者は少額の領収書等を含め大量の領収書等を提出しなければならないため、大きな負担となっていた。 そこで本改正では、課税上の弊害がないと考えられる少額の領収書等に関しては、受贈者において必要事項(教育資金の①支払金額、②支払年月日、③支払先の氏名又は名称、④支払先の住所又は所在地、⑤支払の内容)を記載した明細書を提出すれば、領収証等の提出は不要とされた(新措法70の2の2 ⑦)。 その対象となる「少額の領収証等」とは、具体的には、1回の支払について1万円以下の領収書等で、かつ、年間(暦年ベースで)24万円以下のものである(新措規23の5の3⑦)。 なお、この年間24万円以下の金額に関しては、契約初年および最終年(つまり30歳に達した年)は、その年における契約期間が12ヶ月に満たないことが考えられるため、2万円に、その年における契約締結日以後の月数または契約終了日以前の月数(1ヶ月に満たない端数は1ヶ月)を乗じて計算することとされた。 本改正は、平成28年1月1日以後に提出する領収書等から適用される(改正法附則97③)。 (了)

#No. 130(掲載号)
#甲田 義典
2015/07/30

ふるさと納税(平成27年度税制改正対応)のポイント 【第4回】「実務で気になる疑問Q&A」

ふるさと納税(平成27年度税制改正対応)のポイント 【第4回】 (最終回) 「実務で気になる疑問Q&A」   公認会計士・税理士 篠藤 敦子   (連載了)

#No. 130(掲載号)
#篠藤 敦子
2015/07/30

これだけ知っておこう!『インド税制』 【第1回】「税制の全体像と法人所得課税」

これだけ知っておこう! 『インド税制』 【第1回】 「税制の全体像と法人所得課税」   公認会計士・税理士 野瀬 大樹     1 インド税制の全体像 (1) インドの直接税 インドにおける直接税は、大きく分けて以下の4つ。 税率や課税対象については別の回で詳しく解説するが、インドでは、課税期間は法人も個人も4月1日~3月31日である。個人は1月1日~12月31日、法人ならその会計期間となっている日本の税制とは大きな違いがある。さらに全ての会社に会計監査が必要となるインドにおいては、確定した数値により連結財務諸表を作る際に、この会計期間が大きなハードルになる。 個人所得税の申告期限は7月末、法人所得税の申告期限は9月末のため、日本とは少し決算の繁忙期がズレる点にも留意が必要となる。 (2) インドの間接税 インドにおける間接税は大きく分けて以下の5つ。 関税を除くと日本ではなじみがないものばかりだが、「消費税が何種類もある」と考えていただければ分かりやすいのではないだろうか。 さらにこの各間接税の中でも対象やシチュエーションにより税率が変わるので、そのあたりが日系企業にとっては対応が難しいポイントと考えられる。 ここからは上記の直接税のうち「法人所得税」についてより詳しく解説する。   2 インドの法人所得税 考え方は日本と同じ。益金から損金を差し引いた税務上の利益に「税率」を乗じることで税金が計算される。 ただ細かいところには違いもあるので、ここでは日本の法人税との違いに注目しながら、インドの法人所得税の概要を以下に示すことにする。 (1) 税率 基本税率は内国法人、つまりインド国内の法人は30%、外国法人は40%となるが、教育目的税や課徴金をさらにとられるため、実質税率はこのようになる。特に内国法人は課徴金の変更により本年度から税率が変更されているので注意を要する。 他のアジアの新興国の中でも税率の高さが目立つため、高止まりする人件費とともに「インド進出にはコストがかかる」と日本企業が二の足を踏む理由と考えられる。 (2) 納税のための準備 特に大がかりな準備は必要ないが、納税者番号PANの取得は必須。ただこれも、そもそも会社設立時に必要になるので、インドに拠点を持つ事業体は必ず保持していると考えられる。 (3) 計算期間 日本の場合、会社の決算日をもって1年の会計を締め、その数字をもとに税金の計算をするのが通常だが、インドの場合、納税に関してはその計算期間が4月1日から翌年3月31日と法律によって決められている。 日本企業にとってはここが悩みどころであり、親会社と決算月を合わせるためにインドの現地法人の決算月を仮に12月にしたとしても、税金計算のための3月末でもう一度決算をする必要がある。 これは会社にとって決して小さくない負担となることが予想される。 (4) 申告のタイミング 申告の期限は9月末なので、決算より2~3ヶ月という日本よりは余裕がある。ただし、インドでは法人所得税の前払いが徹底されており、6月15日、9月15日、12月15日、3月15日と四半期ごとに予定納税が求められる税額の不足に関しては月利1%の延滞金がかかるので、うっかりするとあとで少なくない負担が生じることになる。 また前述のように全ての会社に会計監査が義務づけられているため、この申告期限までにこの監査を終わらせる必要がある点にも留意が必要。 (5) 繰越欠損金 少し前に日本でも改正により7年から9年に延長された繰越欠損金の繰越期間だが、インドは8年となる。 (6) その他 最近よく受ける質問の一つが「インドで連結納税制度はありますか?」というものだが、日本では存在するこの制度もインドでは現状存在しない。 (了)

#No. 130(掲載号)
#野瀬 大樹
2015/07/30

〈Q&A〉印紙税の取扱いをめぐる事例解説 【第11回】「税理士等が作成する文書」

〈Q&A〉 印紙税の取扱いをめぐる事例解説 【第11回】 「税理士等が作成する文書」   税理士・行政書士・AFP 山端 美德   税理士と顧客との間で作成する顧問契約書や、顧問料を受領した際に作成する受取書には印紙税がかかりますか。   税理士と会社等との間で顧問契約書を結ぶ場合、一般的には税務相談料、決算書・申告書作成、記帳代行などを定めて結ぶこととなるが、報酬については月次報酬のほかに決算等の費用がある。 単なる、税務相談のみを目的として契約を結んだ場合は、委任契約として課税文書には当たらないが、税務書類の作成を目的とし、それに対して一定額の報酬を支払うというような契約の場合であれば、第2号文書(請負に関する契約書)に該当することとなる(基通第2号文書17)。 したがって、事例の場合における顧問契約書は、第2号文書(請負に関する契約書)に該当する。 また、税理士がその業務上作成する受取書は、営業に関しない受取書と取り扱われ、非課税である(基通第17号文書26)。   [検討1] 顧問契約書等の所属 税理士が会社等との間で報酬等に関して結ぶ契約は顧問契約書、委嘱契約書など名称は様々であり、契約形態、記載事項についても作成者により相違している。 したがって、印紙税の課税文書か否かの判断は個々に文書を見て判断しなければ最終的な判断はできないが、税理士の顧問契約の場合、相談業務のほか、業務の中に決算・申告書作成業務が含まれている場合が多い。この場合、それに対して一定額の報酬を支払う契約となると、単なる委任に関する契約書として非課税ということではなく、第2号文書(請負に関する契約書)として課税対象となる。 また、税理士との間で業務上作成される文書において、第7号文書(継続的取引の基本となる契約書)に該当する場合がないかというと、税理士は営業者には該当しないため、継続的取引であっても第7号文書には該当しない。 なお、税理士法人については出資者以外の者との取引では営業者となることから、継続的取引の場合は第7号文書にも該当する場合がある。 [検討2] 受取書の取扱い 受取書については税理士がその業務上作成する受取書は、営業に関しない受取書と取り扱われ、非課税である。 また、税理士法人の場合、会社法第621条(利益の配当)及び第622条(社員の損益分配の割合)を準用していることから、法令の定めにより利益金の分配等をすることができるものに該当する。 したがって、税理士法人が出資者以外の者に交付する受取書は、第17号文書(金銭又は有価証券の受取書)非課税物件欄2のかっこ書の規定により、営業に関する受取書として課税文書に該当する。   ▷ まとめ   ◆税理士委嘱契約書 税理士委嘱契約書は、委任に関する契約書に該当することから課税文書には当たらないのであるが、税務書類等の作成を目的とし、これに対して一定の金額を支払うことを約した契約書は、第2号文書(請負に関する契約書)に該当するのであるから留意する(基通第2号文書17)。 ◆弁護士等の作成する受取書 弁護士、弁理士、公認会計士、経理士、司法書士、行政書士、税理士、中小企業診断士、不動産鑑定士、土地家屋調査士、建築士、設計士、海事代理士、技術士、社会保険労務士等がその業務上作成する受取書は、営業に関しない受取書として取り扱う(基通第17号文書26)。 ◆継続的取引の基本となる契約書の範囲 特約店契約書その他名称のいかんを問わず、営業者(法別表第1第17号の非課税物件の欄に規定する営業を行う者をいう)の間において、売買、売買の委託、運送、運送の取扱い又は請負に関する2以上の取引を継続して行うため作成される契約書で、当該2以上の取引に共通して適用される取引条件のうち目的物の種類、取扱数量、単価、対価の支払方法、債務不履行の場合の損害賠償の方法又は再販売価格を定めるもの(令26① 抜粋)。 (了)

#No. 130(掲載号)
#山端 美德
2015/07/30

連結納税適用法人のための平成27年度税制改正 【第7回】「地方拠点強化税制の創設(その1)」

連結納税適用法人のための 平成27年度税制改正 【第7回】 「地方拠点強化税制の創設(その1)」   公認会計士・税理士 税理士法人トラスト パートナー 足立 好幸   [8] 連結納税適用法人に係る地方拠点強化税制の創設 (1) 改正の概要 東京圏、中部圏中心部、近畿圏中心部にある本社機能等を地方に移転し、あるいは、地方にある本社機能等を拡充する企業の取組みを支援するため、オフィスに係る建物等の設備投資減税を創設するとともに、雇用促進税制を拡充する特例が創設された。 地方拠点強化税制は、「地域再生法の一部を改正する法律」(改正地域再生法)で定める次の2つの種類の地方拠点強化実施計画(地域再生法第17条の2第1項に規定する地方活力向上地域特定業務施設整備計画)について認定を受けた法人が対象となる。 ① 移転型計画 東京23区から地方(東京圏、中部圏中心部、近畿圏中心部を除く全地域のうち、国が認定した地域)へ本社機能(特定業務施設)を移転する計画(地方拠点強化実施計画で地域再生法第17条の2第1項第1号に掲げる事業に関するもの)をいう。 ② 拡充型計画 地方(東京圏、中部圏中心部、近畿圏中心部を除く一定の地域のうち、国が認定した地域。以下、「集中地域以外の地域」という)にある本社機能(特定業務施設)を拡充する計画(地方拠点強化実施計画で地域再生法第17条の2第1項第2号に掲げる事業に関するもの)をいう。 ここで、本社機能とは、経営意思決定、経営資源管理(総務、経理、人事)、各種業務統括(研究開発、国際事業等)などの事業所(工場及びその地域を管轄する営業所等は含まない)をいい、関係法令上は「特定業務施設」という。 地方拠点強化税制の詳細は次のとおりである。 なお、以下において、地域再生法の条文を記載している場合は、特段の断りのない限り改正地域再生法の条文を示している。   (2) 地方拠点建物等の取得費の特例措置(措法68の15の2、措令39の45の2) ① 地方拠点建物等の取得費の特別償却制度 連結親法人又は連結子法人で、改正地域再生法の施行日(平成27年8月10日:追記)から平成30年3月31日までの期間(指定期間)内に地方拠点強化実施計画について認定を受けたものが、認定日から同日の翌日以後2年を経過する日までの間に、集中地域以外の地域(注1)において、地方拠点強化実施計画に記載された特定業務施設に該当する建物、建物附属設備、構築物(一定規模以上のもの(注2)。特定建物等)(注3)を取得等して、事業の用に供した場合(貸付けの用に供した場合を除く)には、その事業の用に供した日を含む連結事業年度(供用年度)の特定建物等の償却限度額は、特定建物等の普通償却限度額と特別償却限度額(特定建物等の取得価額の15%(地方拠点強化実施計画が移転型計画である場合には25%)に相当する金額)との合計額とする(措法68の15の2①)。 以上より、この特別償却制度については、各連結法人ごとに適用可否を判断し、各連結法人ごとに適用することとなる。 なお、この特別償却制度は、連結確定申告書等に特定建物等の償却限度額の計算に関する明細書の添付がある場合に限り、適用する(措法68の15の2⑤)。 ② 地方拠点建物等の取得費の税額控除制度 【1】 概要 連結親法人又は連結子法人で、改正地域再生法の施行日(平成27年8月10日:追記)から平成30年3月31日までの期間(指定期間)内に地方拠点強化実施計画について認定を受けたものが、認定日から同日の翌日以後2年を経過する日までの間に、集中地域以外の地域(注1)において、地方拠点強化実施計画に記載された特定業務施設に該当する建物、建物附属設備、構築物(一定規模以上のもの(注2)。特定建物等)(注3)を取得等して、事業の用に供した場合(貸付けの用に供した場合を除く)には、その事業の用に供した日を含む連結事業年度(供用年度)の連結法人税額(注4)から連結親法人の税額控除限度額及び各連結子法人の税額控除限度額の合計額を控除する(措法68の15の2②)。 ただし、連結親法人又は各連結子法人ごとに、供用年度における税額控除限度額が連結親法人又は各連結子法人の供用年度の法人税額基準額を超えるときは、その税額控除限度額は、法人税額基準額を限度とする。 【2】 税額控除限度額 税額控除額となる連結法人の税額控除限度額は、その事業の用に供した特定建物等の取得価額に、認定を受けた日が次の各号に掲げる期間のいずれに含まれるかに応じ各号に定める割合を乗じて計算した金額の合計額をいう(措法68の15の2②)。 【3】 控除限度となる法人税額基準額 この税額控除制度は、各連結法人ごとに、税額控除額を計算することとなり、各連結法人ごとに、供用年度における税額控除限度額が供用年度の法人税額基準額を超えるときは、その税額控除限度額は、法人税額基準額を限度とする。 各連結法人の控除限度となる法人税額基準額は、次の①又は②のうちいずれか少ない金額となる(措法68の15の2②、措令39の45の2②)。 これにより、連結納税グループ全体の連結法人税額の20%のみならず、各連結法人の連結法人税個別帰属額の20%も税額控除限度額となる。 【4】 繰越控除制度 【2】税額控除限度額が【3】控除限度となる法人税額基準額を超える場合であっても、その超過額は翌連結事業年度に繰り越されない。 【5】 地方拠点建物等に係る税額控除制度の個別帰属額の計算方法 連結法人ごとに計算した税額控除限度額(法人税額基準額を限度とする)が、各連結法人の地方拠点建物等に係る税額控除額の個別帰属額となる(措法68の15の2⑦、措令39の45の2③)。 なお、この税額控除制度は、連結確定申告書等、修正申告書又は更正請求書に、控除の対象となる特定建物等の取得価額、控除を受ける金額及び当該金額の計算に関する明細を記載した書類の添付がある場合に限り、適用する(措法68の15の2⑥)。 また、この場合において、控除される金額は、連結確定申告書等に添付された書類に記載された特定建物等の取得価額を基礎として計算した金額に限るものとする(措法68の15の2⑥)。 【6】 地方法人税における地方拠点建物等の取得費の税額控除額の取扱い 法人税における地方拠点建物等の取得費の税額控除額は、地方法人税の課税標準となる基準法人税額の計算において連結法人税額から控除される(地方法6三)。 また、各連結法人の地方拠点建物等の取得費の税額控除額の個別帰属額に4.4%を乗じた金額が地方法人税個別帰属額の計算において減算される(措法68の15の2⑦、地方法15①)。 【7】 住民税における地方拠点建物等の取得費の税額控除額の取扱い 中小連結親法人又はその各連結子法人の各連結事業年度の個別帰属法人税額(道府県民税及び市町村民税の課税標準)の計算において、法人税における地方拠点強化税制に係る税額控除額の個別帰属額は個別帰属法人税額から控除される(連結法人税個別帰属額に加算しない。地方税法附則8④、地法23①四の三、292①四の三)。 中小連結親法人に該当しない連結親法人又はその各連結子法人については個別帰属法人税額から控除されない(連結法人税個別帰属額に加算する)。 (了)

#No. 130(掲載号)
#足立 好幸
2015/07/30

研究開発税制における平成27年度税制改正のポイント 【第3回】「事業年度ごとの別表6(6)及び新設別表6(8)の記載方法」

研究開発税制における平成27年度税制改正のポイント 【第3回】 (最終回) 「事業年度ごとの別表6(6)及び 新設別表6(8)の記載方法」   税理士法人山田&パートナーズ 税理士 吉澤 大輔   最終回となる今回は、研究開発税制の適用を受ける際に添付する法人税申告書(別表)の記載方法を紹介したい。 申告書の作成に当たっては、研究開発税制の適用を受ける事業年度が、「平成27年4月1日前に開始する事業年度(平成27年4月1日以後終了事業年度に限る)」か「平成27年4月1日以後に開始する事業年度」かによって、使用する別表及び金額の記載欄が異なるため、注意してほしい。 なお、今回紹介する別表は、特に変更点の多い別表6(6)と新たに追加された別表6(8)の2種類の別表とする(別表6(7)については別表6(6)と類似するため本稿では割愛する)。   〈記載例〉 平成27年4月1日前に開始する事業年度 (平成27年4月1日以後終了事業年度に限る)の場合 別表6(6):試験研究費の総額等に係る法人税額の特別控除に関する明細書 ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 (※) アミカケ部分は記載不要。   〈記載例〉 平成27年4月1日以後に開始する事業年度の場合 別表6(6):試験研究費の総額等に係る法人税額の特別控除に関する明細書 ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 (※) アミカケ部分は記載不要。   別表6(8):特別試験研究費の額に係る法人税額の特別控除に関する明細書 ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 * * * 上記のように、事業年度の開始が平成27年4月1日の前後で使用する申告書の様式及び書き方が異なるため、申告実務に当たっては留意しておきたい。 (連載了)

#No. 130(掲載号)
#吉澤 大輔
2015/07/30

貸倒損失における税務上の取扱い 【第48回】「法人税基本通達9-6-1(2)(3)の具体的内容」

貸倒損失における税務上の取扱い 【第48回】 「法人税基本通達9-6-1(2)(3)の具体的内容」   公認会計士 佐藤 信祐   前回では、法人税基本通達9-6-1(1)に規定する「更生計画認可の決定又は再生計画認可の決定」について解説を行った。 本稿においては、同通達9-6-1(2)及び9-6-1(3)について解説を行う。   2 特別清算に係る協定の認可の決定 (1) 基本的な取扱い 特別清算には、協定型と和解型の2つがあり、法人税基本通達9-6-1(2)で直接的に規定しているのは「特別清算に係る協定の認可」とあるので、協定型であることは言うまでもない。 協定型の特別清算は債権者の多数決によって協定を成立させるものであり、本来型と称されることもある。和解型の特別清算は清算会社と債権者の和解契約を締結するものであり、対税型と称されることもある。 実務上、協定型の特別清算が行われるケースはほとんどなく、破産法に規定する破産手続により行われるケースがほとんどである。なお、破産手続を行った場合には、第44回で解説したように、法人税基本通達9-6-1(2)ではなく、同通達9-6-2で処理することになる。 そのため、「特別清算」というと、和解型の特別清算を想定する実務家が多く、その場合における法人税基本通達9-6-1(2)が適用されるのかどうかが問題となるが、前述のように、「対税型」と称されることがあり、この場合の「税」とは、当該通達の規定のことをいうため、貸倒損失を認識するための手法として、和解型の特別清算が利用されているという実態は否定できない。これは、協定型を選択したとしても、和解型を選択したとしても、債権者の損失負担の額が大きく変わらないことが原因であると推定される。 これに対し、通常清算を行った場合の取扱いであるが、法人税基本通達9-6-1(2)ではなく、同通達9-6-1(3)(4)又は9-4-1で処理するというのが一般的な実務のようである。 この点については、あくまでも通達は法令の解釈に過ぎないため、法令の趣旨を考えると、特別清算を選択した場合と損失負担の額が変わらないのであれば、同通達9-6-1(2)に準じて処理を行うべきであると考えられるが、実務上は、硬直的に取り扱われているというのが一般的である。 そのため、法人税基本通達9-6-1(2)の射程は、特別清算に限られると考えた方が無難であると思われる。 (2) 第2会社方式における特別清算の活用 第2会社方式とは、事業譲渡又は会社分割により赤字子会社の資産とそれに相当する負債を受皿会社に対して譲渡し、残った赤字子会社の負債について清算手続により切り捨てさせる手法である。 第38回で解説したように、平成10年度法人税基本通達改正前において第2会社方式が生み出されており、当時の根拠通達は法人税基本通達9-4-1であった。その後、第41回で解説したように、平成10年度法人税基本通達の改正により、根拠通達が同通達9-4-2に移ったものと考えられる。そして、第41回で解説したように、第2会社方式でも通常清算ではなく、特別清算を選択するようになり、現在、行われている第2会社方式のほとんどは特別清算である。 しかしながら、第38回で解説したように、平成10年度法人税基本通達改正前は、赤字子会社と受皿会社との間において、持株関係、商号、所在地、役員構成、従業員、資産内容、事業内容、事業形態などを総合的に勘案して、同一性のない場合について、損金の額に算入することができるとしていたため、この趣旨は尊重すべきであろう。実務的には、商号の変更、名ばかり役員の解任、従業員に対する退職金の打切支給をするとともに、主要な固定資産を親会社に譲渡し、受皿会社は当該資産を賃貸したうえで事業を行う会社に代えることで同一性を薄めていくことになると考えられる。 また、特別清算を行う前の赤字子会社の貸借対照表には、負債サイドには租税債務と親会社からの債務だけを残し、資産サイドには租税債務の支払いと清算費用の支払いに相当するだけの預金だけを残すことにより円滑に清算手続を行うことが一般的であると考えられる。そのため、特別清算を行う前に、他の債務者からの債務については、親会社から借入れを行うことにより、事前に弁済しておく必要がある。   3 法令の規定による整理手続によらない関係者の協議決定 法人税基本通達9-6-1(3)では、「法令の規定による整理手続によらない関係者の協議決定」として、以下のものを定めている。 (イ) 債権者集会の協議決定で合理的な基準により債務者の負債整理を定めているもの (ロ) 行政機関又は金融機関その他の第三者のあっせんによる当事者間の協議により締結された契約でその内容が(イ)に準ずるもの しかしながら、第45回で解説したように、実務上の射程については、法人税基本通達9-4-2が別途規定されていることから、極めて曖昧である。 かつては、特定調停法が該当するのではないかという見解(※)もあったが、平成26年6月25日に、日本弁護士連合会、日本税理士会連合会が行った事前照会(特定調停スキームに基づき策定された再建計画により債権放棄が行われた場合の税務上の取扱いについて)において、法人税基本通達9-4-2に従って処理することとしているため、今後は、同通達9-6-1(3)に該当するケースは極めて稀であろう。 (※) 稲見誠一・佐藤信祐『ケース別にわかる企業再生の税務』205-206頁(中央経済社、第2版、平成22年) そうなると、どのようなケースについて法人税基本通達9-6-1(3)に該当するのかが興味のあるところであるが、いわゆる任意整理と言われるものが該当すると考えるべきである。 さらに、東日本大震災の影響によって生じているいわゆる「二重債務問題」を解決するために設けられた「個人債務者の私的整理に関するガイドライン」に基づいて債権放棄を行った場合には、個人債務者の私的整理に関するガイドライン研究会が平成23年8月11日に行った事前照会(「個人債務者の私的整理に関するガイドライン」に基づき作成された弁済計画に従い債権放棄が行われた場合の課税関係について)において、法人税基本通達9-6-1(3)で処理することが明らかにされている。 しかしながら、「個人債務者の私的整理に関するガイドライン」はかなり限定的な事案を前提としたものであり、さらに、このような事前照会を行っているということは、そもそも法人税基本通達9-6-1(3)の要件を満たすことのハードルが高いことを意味している。 また、筆者の個人的な経験としても、任意整理を行った場合において、同通達9-6-1(4)で処理したことはあるものの、同通達9-6-1(3)で処理したことはない。しかしながら、「個人債務者の私的整理に関するガイドライン」が法人税基本通達9-6-2ではなく、同通達9-6-1(3)で処理している理由としては、債務者が法人ではなく、個人であることから、「合理的な再建計画」に該当させることに無理があったからであると推定され、今後、個人債務者を対象とした任意整理において、複数の債権者が存在する場合には、同通達が適用される事案が出てくると思われる。 なお、法人税基本通達9-6-1(3)に規定する「合理的な基準」については、同通達9-4-2と同様の考え方を採用することになると思われる。 次回では、法人税基本通達9-6-1(4)の取扱いについて解説を行う予定である。 (了)

#No. 130(掲載号)
#佐藤 信祐
2015/07/30

〔会計不正調査報告書を読む〕【第33回】株式会社東芝「第三者委員会調査報告書(平成27年7月21日付)」(前編)

  〔会計不正調査報告書を読む〕 【第33回】 株式会社東芝 「第三者委員会調査報告書(平成27年7月21日付)」 (前編)   税理士・公認不正検査士(CFE) 米澤 勝   株式会社東芝(以下「東芝」という)は、平成27年7月20日に第三者委員会調査報告書を受領した旨、及びその要約版(以下「要約版」という)を公表し、翌21日には約300ページの大部となった調査報告書全文(以下「全文」という)を公表するとともに、取締役代表執行役社長である田中久雄氏以下8名の取締役と相談役で元社長の西田厚聰氏の辞任が伝えられた。 この問題を、東芝が初めて公表したのは4月3日「特別委員会の設置に関するお知らせ」と題するリリースであった。それから3ヶ月半。特に7月に入ってからは、加熱するマスコミ報道、これを打ち消すような会社側のリリースが連日のように出されてきた。 本稿では、公表された調査報告書に基づき、まず前編として、東芝社内で行われてきた会計不正の手口、第三者委員会による原因分析などを概説することとし、後編(8月6日公開)では、再発防止策と調査報告書でも明らかにならなかった問題点について、検討することとしたい。 【第三者委員会調査報告書受領に至るまでの経緯】   【第三者委員会の概要】   【株式会社東芝の概要】 株式会社東芝は、1875(明治8)年創業。日本を代表する総合電機メーカー。売上高6兆5,000億円余。営業利益2,900億円余、総資産額6兆2,400億円、純資産額1兆6,500億円を超える企業規模を誇り、連結子会社は598社に上る。従業員数約20万名(平成27年3月期)。本店所在地は東京都港区。東証、名証1部上場。   【調査報告書により判明した事実】 1 発覚の経緯 東芝は、2015年2月12日、証券取引等監視委員会から金融商品取引法第26条に基づく報告命令を受け、工事進行基準案件等について開示検査を受けた。3月下旬、2013年度の一部インフラ関連の工事進行基準案件に係る会計処理について、調査を必要とする事項が判明し、4月3日、取締役会長を委員長とする特別調査委員会を設置した。 特別調査委員会による調査の過程で、工事進行基準案件の問題以外にも、更なる調査を必要とする事項が判明したため、5月8日、調査結果に対するステークホルダーからの信頼性をさらに高める必要から、東芝と利害関係を有しない中立・公正な外部の専門家から構成される第三者委員会による調査を行うことを決めたものである。 なお、証券取引等監視委員会の開示検査のきっかけは、東芝関係者による告発であったとする一部報道もあったが、調査報告書では触れられていない。   2 連結会計年度別修正額 第三者委員会が認定した連結会計年度別修正額は、次のとおりである(単位:億円。全文p.20、要約版p.15)。 注目すべき点は、2009年度(2010年3月期)の公表されている利益金額と修正すべき金額との関係である。 前期、リーマン・ショックによる大幅な赤字の計上を余儀なくされた東芝であったが、当期も円高と景気低迷の影響から減収となったものの、営業損益は大幅に増益又は改善し、「特に半導体事業がメモリの好調により大幅に改善し黒字化(有価証券報告書より抜粋)」した結果、約250億円の継続事業税引前損益を計上した。 ところが、第三者委員会による調査の結果、約400億円の利益の水増しが判明したことから、東芝は2期連続の赤字決算を回避するため、巨額の粉飾決算をせざるを得なかったのではないかという推測が働くが、当然のことながら、そうした記述は調査報告書には存在しない。   3 主な会計不正の内容 (1) 工事進行基準について(全文p.31以下、要約版p.16以下) 東芝の社内カンパニーである電力システム社、社会インフラシステム社では、工事進行基準適用商談において、各工事の原価総額を過少に見積もることによって、 という不正が繰り返されており、第三者委員会では15の案件について、その不適切な会計処理が進められたプロセスを詳述しており、その分量は調査報告書(全文)の約2分の1に達している。 修正すべき金額は、売上ベースで128億円、利益ベースで477億円と巨額ではあるものの、工事が完成した案件の損失隠しを行っていたわけではなく、工事進行基準を適用する場合の一般的なリスクが顕現化しただけの不正であるといえよう(※)。 (※) 監査・保証実務委員会実務指針第91号「工事進行基準等の適用に関する監査上の取扱い」では、「5.工事進行基準では、一般的に会計上の見積りの不確実性の程度が大きく、会計上の見積りに関する重要な虚偽表示リスクが高くなることが多い。この重要な虚偽表示リスクには、会計上の見積りの判断を誤ることによる誤謬のみならず、意図的に工事原価総額の見積りを調整することや、発生した工事原価を意図的に異なる工事契約に係る認識の単位に計上すること(以下「原価の付替え」という。)による、決算日における工事進捗度の調整を通じた工事収益の操作などの不正によるものも含まれる。」と記されており、監査上も、こうした不正リスクへの対応が求められている。 (2) 映像事業における経費計上等に係る会計処理(全文p.179以下、要約版p.40以下) 東芝、東芝ライフスタイル株式会社の映像事業部門では、損益目標値を達成する前の施策として「キャリーオーバー」と総称する、経費計上の先送り、在庫評価の増額、仕入先からの未実現の仕入値引の計上などを行っていたものである。 (3) パソコン事業における部品取引等に係る会計処理(全文p.206以下、要約版p.47以下) 東芝がPCの設計、開発、製造を委託している海外のODM先に対して有償支給する主要部品の支給価格について調達価格を上回る価格とし、東芝の原価計算においては、調達価格との差額を、製造原価のマイナス、つまり利益計上として会計処理を行うものである。 部品を有償でODM先に支給して完成品を買い戻す取引(Buy-Sell取引)を行うに際して、ODM先に対して実際の調達価格を明らかにしないために、調達価格を上回る一定額(マスキング価格)で支給すること自体に問題があるわけではないが、マスキング価格が調達価格の5倍を超える水準であること、四半期末のたびに、ODM先に対して部品の押し込み販売が行われ、その結果として、2012年9月期以降の四半期決算においては、PC事業において単月の売上高を上回る営業利益が計上されていた(全文p.232、別紙3のグラフ参照)。 (4) 半導体事業の在庫の評価に係る会計処理(全文p.245以下、要約版p.57以下) 社内カンパニーであるセミコンダクター&ストレージ社(S&S社)では、2013年に約80億円の在庫廃却を行っているが、滞留在庫の評価減ルールが不適切なものであったことが認められた。 また、工程別総合原価計算において、前工程の標準原価の改訂が後工程の標準原価に反映されていないことから、発生した原価差額の配賦計算において、後工程における原価差額が前工程期末在庫にも配賦されることとなるため、売上原価に対する原価差額の配賦額が過少になり、利益の嵩上げが行われていた。   4 会計不正の発生原因 第三者委員会は「原因総まとめ」として、直接的な原因7項目、間接的な原因8項目を列挙している(全文p.276以下、要約版p.63以下)。 まず、直接的な原因として 次いで、間接的な原因として 項目は多いものの、原因分析が十分に行われていると評価するには、第三者委員会の記述はあまりにも表層的である。例えば、直接的な原因の筆頭に挙げられている「経営トップらの関与を含めた組織的な関与」には、以下のような記述がある。 確かに粉飾決算を止めることは「事実上不可能であった」かもしれないが、それは「原因」ではなく、「第三者委員会による評価」であろう。「原因」を究明するためには、「なぜそのような経営判断をするに至ったか」を解明することが不可欠であるはずだが、残念ながら、第三者委員会調査報告書にはそこまでの-なぜ解明できなかったということも含めて-記述はない。 *  *  * 以下、「後編」(8月6日公開)に続く。 ◆【再発防止策】 ◆【調査報告書によっても明らかになったと言えない事実】 (了)

#No. 130(掲載号)
#米澤 勝
2015/07/30

『繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針(案)』への対応ポイント 【第5回】「企業の分類ごとの繰延税金資産の回収可能性(その2)」

『繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針(案)』への 対応ポイント 【第5回】 (最終回)  「企業の分類ごとの繰延税金資産の回収可能性(その2)」   公認会計士 阿部 光成   前回に続き、「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針(案)」(企業会計基準適用指針公開草案第54号。以下「公開草案」という)における企業の分類ごとの繰延税金資産の回収可能性について解説する。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅰ 企業の分類と繰延税金資産の回収可能性(分類3~分類5) 公開草案は、要件に基づき企業を分類し、当該分類に応じて、回収が見込まれる繰延税金資産の計上額を決定すると規定している(公開草案15項)。 企業の分類の要件と繰延税金資産の回収可能性をまとめると次のようになる(アンダーラインは、筆者が記載。公開草案22項から31項)。   Ⅱ (分類3)に関する留意点 前述のように、(分類3)の企業については、5年を超える見積可能期間においてスケジューリングされた一時差異等に係る繰延税金資産が回収可能であることを合理的に説明できる場合、繰延税金資産は回収可能性があるものとされている(公開草案24項)。 企業は、この合理的な説明を行うであろうし、監査人においては、その説明の適切性を判断することになるので、次のことが公開草案を実務に適用した際のポイントになると考えられる。 公開草案は、上記事項に関する例として次のものをあげているので、今後の実務への適用に際して、参考になるものと考えられる(80項)。 (連載了)

#No. 130(掲載号)
#阿部 光成
2015/07/30

会計上の『重要性』判断基準を身につける~目指そう!決算効率化~ 【第8回】「連結と個別、「重要性の基準値」は同じ?」

会計上の『重要性』 判断基準を身につける ~目指そう!決算効率化~ 【第8回】 「連結と個別、「重要性の基準値」は同じ?」   公認会計士 石王丸 周夫   今回は、連結決算と個別決算における「重要性の基準値」の関係について解説します。 まず手始めに、以下の問題にチャレンジしてみてください(解答は問題のすぐ下にあります)。 いかがでしたか。正解できたでしょうか。 重要性の判断基準は、連結と個別、期末と四半期で、それぞれ大小関係が決まっています。 以下、この解答について触れながら、解説していきます。   《連結と個別では重要性の金額は異なる》 「連結」は企業グループの決算、「個別」は法人としての単独の決算です。 同じ企業、同じ年度であっても、連結と個別の数字はもちろん違います。一概には言えませんが、多くの場合、同じ財務諸表項目を比べた場合、連結の数字の方が個別の数字より大きくなります。 連結決算における重要性の金額は、個別決算における重要性の金額より大きいのだろうということは、直感的にもわかると思います。イメージとしてはそれで合っています(⇒したがって、問題8のアの記述は誤りです)。 重要性の基準値は、連結であれ個別であれ「指標×割合」によって求めます。 例えば同じ「税引前利益」という指標でも、連結と単体ではもちろん違う数字なので、これらの異なる数字によって重要性の基準値をそれぞれ求めます。当然、異なる重要性の基準値が算定されます。 そしてその数値は、普通、連結の方が個別より大きくなるわけです。   《「連結≧個別」とする理由》 仮に、連結上の重要性の基準値が個別上のそれよりも小さくなってしまった場合のことを考えてみます。 例えば、こんな具合です。 この場合、少々面倒なことが起こります。 個別決算において、何らかの会計処理誤りがあったとします。税引前利益に与えるその影響額が90百万円だったとします。そして、これ以外には何ひとつ誤りはなかったとするなら、個別決算上、この90百万円の会計処理誤りは、金額的には重要性の基準値を下回ります。 つまり、この誤りを修正しないことも許容されます。 では、この誤りを修正せずに済ませたとき、連結ではどんなことが起きるでしょうか。 この会計処理誤りが親子間の取引等ではなく、連結上も消去されることなく同様に誤りとして認識されるならば、連結上においても重要性の判断がなされます。今、連結上の重要性の基準値を80百万円としたわけですから、90百万円の誤りはこれを超えてしまいます。 つまり、この誤りを修正しなければ、連結財務諸表には重要な誤りがあると判定されてしまいます。 これが、連結上の重要性の基準値が個別上のそれよりも小さい場合に起きる問題です。 個別上において修正を見送った誤りが、連結上では見過ごすことができないのです。 その結果、個別決算をやり直すか、もしくは連結仕訳として修正仕訳を入れる必要が生じるのです。 〈【連結上の重要性 < 個別上の重要性】の場合〉 上の例のように会計処理誤りが1つだけなら対応も可能ですが、個別決算で修正を見送った事項がいくつもあるような場合、もはや対応は困難です。 こうした事態を回避するにはどうしたらよいか、もうおわかりだと思います。 重要性の基準値を「連結≧個別」という関係が成立するように決めておくことです。 上の例で言えば、個別上の重要性の基準値を80百万円まで引き下げるのです。 〈個別上の重要性を80百万円まで引き下げた場合〉   《連結と個別で指標が異なってもよいか》 連結と個別の重要性の基準値について、もう1つ触れておくべきことがあります。 同じ企業で同じ年度の決算である場合、重要性の基準値の算定に使用する「指標」は、連結と個別とで同じでなければならないのか、という点です。 【第6回】で述べたとおり、「指標」として最も一般的な財務諸表項目は「税引前利益」です。連結も個別も税引前利益をベンチマークにして重要性の金額を求めていれば、特に問題にはなりません。 しかしながら、連結が赤字で個別が黒字というケースも少なからずあります。あるいは、親会社が持株会社である「〇〇ホールディングス」という会社の場合、個別上の利益は子会社からの配当金収入がほとんどであって、連結上計上されている本業の利益とは内容が異なるということもあります。 そのような場合、連結と個別を「同じ指標」に基づいて重要性の基準値を求めることは、必ずしも適切ではないかもしれません。 例えば、連結は「税引前利益」、個別は「純資産」に基づいて重要性の基準値を算定するといったことも考えられます(⇒したがって、問題8のイの記述は誤りです)。   《期末決算と四半期決算の関係も同じ》 連結と個別の関係はご理解いただけたと思います。 実はこの関係、期末決算と四半期決算にもそっくりそのまま当てはまります。 〈【期末の重要性 < 四半期の重要性】の場合〉 上の図から明らかように、期末における重要性の基準値と四半期における重要性の基準値の関係は、「期末≧四半期」としておく必要があります(⇒したがって、問題8のウの記述は正しいです)。   (了)

#No. 130(掲載号)
#石王丸 周夫
2015/07/30
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