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経理担当者のためのベーシック会計Q&A 【第89回】金融商品会計⑪「破産更生債権等における貸倒引当金」

経理担当者のための ベーシック会計Q&A 【第89回】 金融商品会計⑪ 「破産更生債権等における貸倒引当金」   仰星監査法人 公認会計士 上村 治 日本公認会計士協会準会員 永井 智恵     〈事例による解説〉   〈会計処理〉(単位:千円) 【破産更生債権等に係る貸倒引当金の計上】 B社に対する売掛金1,000千円-B社の親会社による債務保証額300千円=700千円   〈会計処理の解説〉 金融商品会計基準では、破産更生債権等については、財務内容評価法により貸倒見積高を算定することとしており、具体的には、債権額から担保の処分見込額及び保証による回収見込額を減額し、その残額を貸倒見積高とすることとされています(金融商品会計基準 第28項(3))。 本事例において、当社はB社と営業取引を行うにあたり、B社の親会社と300千円を上限とする債務保証の契約を締結しています。 そのため、B社に対する売掛金のうち、契約によりB社の親会社から支払が保証される部分を控除した残額の700千円を貸倒見積高とします。 なお、B社は手形交換所において取引停止処分を受けており、経営破綻に陥っていると考えられます。これにより、B社の親会社による保証部分を除き、回収可能性がほとんどないと判断された場合には、貸倒見積高700千円を債権から直接減額することになります(会計制度委員会報告第14号「金融商品会計に関する実務時指針」(以下、「金融商品実務指針」)第123項)。 B社に対する売掛金1,000千円-B社の親会社による債務保証額300千円=700千円 また、貸倒見積高を債権から直接減額した後に、B社から500千円の入金があった場合、B社に対する売掛金の帳簿価額300千円を上回る200千円については、原則として営業外収益として入金のあった期に認識します(金融商品実務指針 第124項)。 ※8月は連結会計を取り上げます。 (了)

#No. 129(掲載号)
#上村 治、永井 智恵
2015/07/23

中小企業事業主のための年金構築のポイント 【第9回】「65歳から支給される老齢厚生年金」

中小企業事業主のための 年金構築のポイント 【第9回】 「65歳から支給される老齢厚生年金」   特定社会保険労務士 佐竹 康男   1 老齢厚生年金 65歳になると、老齢基礎年金に上乗せされる形で「老齢厚生年金」が支給される(下図参照)。ただし、在職中は、特別支給の老齢厚生年金と同様に在職老齢年金により、年金額の全部又は一部が停止される場合がある(前回参照)。  (1) 受給するための要件 特別支給の老齢厚生年金のように1年以上厚生年金保険に加入している必要はなく、1ヶ月でも加入していれば、老齢基礎年金を受けることができるようになったときに支給される。受給するためには次の3つの要件が必要である。 〈事例1〉 公的年金の加入期間は30年6ヶ月あり、厚生年金保険の加入期間が6ヶ月あるため、上記要件②③は満たしている。平成27年8月7日に65歳になれば要件①も満たすことができるため、老齢厚生年金が受給できる。 (2) 老齢厚生年金の額 老齢厚生年金の額は、報酬比例部分と経過的加算額を合算した額となる。 ① 報酬比例部分 報酬の高低によって支給される部分で、過去の標準報酬月額等を平均した額(平均標準報酬額)に一定の率及び被保険者期間を乗じて計算する。 特別支給の老齢厚生年金の報酬比例部分と同じ計算式になる(【第7回】「4 特別支給の老齢厚生年金の受給額」②参照)。 ② 経過的加算額 特別支給の老齢厚生年金を受けていた人が65歳から受ける老齢基礎年金は、特別支給の老齢厚生年金の定額部分に代えて受けることになるが、老齢基礎年金は、20歳未満や60歳以上の厚生年金保険の被保険者期間については年金額の計算に反映しない。そうすると、定額部分の額のほうが、老齢基礎年金の額より高くなることがある。 そこで、その差額分の額を補てんするものとして経過的加算が支給される。したがって、20歳未満や60歳以上で厚生年金保険に加入した期間があれば、老齢厚生年金に経過的加算額がプラスされる場合がある。   2 在職老齢厚生年金 老齢厚生年金も60歳台前半に支給される特別支給の老齢厚生年金と同様、在職中はその年金が全部又は支給停止になる。「在職中」とは、厚生年金保険に加入していることをいう。 その者の報酬(総報酬月額相当額(※1))と年金額(基本月額(※2))が47万円を超えた場合がその対象になる。老齢基礎年金はこの調整の対象にならないので、減額されることなく支給される。 (※1) 総報酬月額相当額=標準報酬月額+(その月以前に受けた標準賞与額の12分の1) (※2) 基本月額=年金額の12分の1 総報酬月額相当額と基本月額を合計した額が47万円を超えた場合に、その超えた額の2分の1に相当する額が停止される。 [計算式] A=総報酬月額相当額+基本月額 〈事例2〉 基本月額=144万円÷12=12万円・・・① 総報酬月額相当額=36万円+60万円÷12=41万円・・・② ①+②=53万円となり、支給額は 12万円-{(53万円-47万円)÷2}=9万円になる。           ↓      停止される額は3万円   3 老齢厚生年金の繰下げ受給 老齢厚生年金は、老齢基礎年金と同様に、65歳で請求せずに66歳以降の任意の時点で請求をして、一定額を加算することができる繰下げ制度もある(【第6回】参照)。   4 老齢厚生年金の請求 特別支給の老齢厚生年金を受給している人には、65歳前にハガキ形式の年金請求書が、年金機構から送られてくる。それに必要事項を記入して投函する。 特別支給の老齢厚生年金を受給していない人(厚生年金の加入期間が1年に満たない人)は、65歳前に通常の年金請求書の用紙が年金機構から送られてくる。戸籍謄本等を添付して、年金事務所に提出する。いずれも、老齢基礎年金の請求も同時に行うことになる。   《おさらいQ&A》 (了)

#No. 129(掲載号)
#佐竹 康男
2015/07/23

養子縁組を使った相続対策と法規制・手続のポイント 【第4回】「特別養子縁組の手続」

養子縁組を使った相続対策と 法規制・手続のポイント 【第4回】 「特別養子縁組の手続」   弁護士・税理士 米倉 裕樹   [1] はじめに 前回は普通養子縁組の手続を取り上げたが、今回は特別養子縁組の手続について解説を行う。なお、「普通養子」と「特別養子」の相違点については本連載【第1回】を参照されたい。 特別養子縁組は、家庭裁判所の審判によって成立する。審判対象は、養子となる者の要保護性、養親となる者の適格性、養子となる者と養親となる者との適合性である。 申立人は、申立に際し、申立の趣旨及び実情、養子となる者の父母(実父母)の同意の有無、同意がないときはその具体的事情、養親となる者が監護を開始した日時等を明確にしなければならない(家則93①)。 また、児童相談所または養子縁組を斡旋する事業を行う者の斡旋の有無、斡旋ある場合には当該児童相談所等の名称、住所も申立書に記載しなければならない(家則93①)。 調査は原則として家庭裁判所の調査官が行うが、判断が適確になされるよう、児童相談所等との連携([4]参照)を図りながら、6ヶ月以上の期間を要する試験養育([3]参照)と実父母の事情聴取([2]参照)が行われる。 申立は、養親となるべき者の住所地を管轄する家庭裁判所に対して行う(家法164①)。   [2] 養親及び実父母の意見聴取 家庭裁判所は、養親となる者、養子となる者の父母(実父母)らの意見を必ず聞かなければならない(家法164③)。特に実父母の同意がないのに縁組を成立させる場合には、実父母の陳述を審問期日に必ず聞かなければならない(家法164③第2文)。 もっとも、実父母が行方不明などその意思を表示することができない場合、または実父母による虐待、悪意の遺棄、その他養子となる者の利益を著しく害する事由がある場合には、実父母の同意を必要としない(民817の6但書)。 なお、平成24年3月2日神戸家庭裁判所審判では、性別の取扱いを女から男に変更する旨の審判を受けた夫、及びその妻と、第三者から精子の提供を受けて妻が出産した子との間に、特別養子縁組が申し立てられた事案において、精子提供者の同意はないが、精子提供者は、子本人を認知しておらず、法律上、子の父とはいえないから、その同意は不要であるとして、申立を認容している。   [3] 試験養育 家庭裁判所は、養親となる者が養子となる者を6ヶ月以上の期間監護した状況を考慮して、縁組の相当性を判断しなければならない(民817の8①)。 相当性の判断は、養親となる者の養子となる者に対する現実の監護状況を客観的に観察した結果を資料とし、主として についてなされる。 具体的には、 を中心に検討がなされる。 審理には、家庭裁判所が適確な判断資料を得るために6ヶ月以上の期間を必要とする。その期間は、審判の申立時、または申立後に監護が開始された場合はその時から起算して6ヶ月以上とされる。 家庭裁判所は、個々の申立内容に応じ、どの程度の期間が必要かを具体的に決定する。ただし、養親となる者が申立以前から里親として監護しており、児童相談所等によって客観的な観察資料が作成され申立前の監護の状況が家庭裁判所に明らかであれば、その期間を試験養育期間に算入することができる(民817の8②)。   [4] 児童相談所(社会福祉機関)との連携 特別養子は、原則として、保護を要する6歳未満の児童を対象とすることから、社会福祉的観点に従い、司法機関である家庭裁判所と行政機関である児童相談所(社会福祉機関)とは密接に情報交換を行うこととなる。養子縁組の斡旋を寄付行為または定款に定める目的または事業に含む社会福祉法人、財団法人、または社団法人の場合も同様である。 特別養子は、児童の福祉について専門的能力を有する児童相談所等の斡旋を経て申し立てられるのが望ましいとされている。そこで家庭裁判所は、児童相談所等と連携を図りながら審理を進める。家庭裁判所は、縁組に対する養子の処遇に一貫性を持たせるために、児童相談所等を経由した申立については、観察の資料を取り寄せ意見を求める。 児童相談所等の斡旋を経ずに特別養子縁組の申立が行われた場合についても、家庭裁判所は、調査の結果、養子となる者が児童福祉法上の保護を要すべき児童であると判断されるときには、養親となる者に対して児童相談所に相談を行うよう指導するとともに、引き続き調査を行い、必要に応じて児童相談所に対しても調査結果を添付して調査嘱託を行うことがある。   [5] 審判・戸籍記載 家庭裁判所は、特別養子縁組の申立が不適法または理由がないときは却下する。申立に理由があるときは、特別養子縁組を成立させる審判を行う。 申立却下に対しては、申立人のみが即時抗告を行うことができる(家法164⑧二)。他方で、縁組を成立させる審判に対しては、養子となる者の父母、後見人らが即時抗告を行うことができる(家法164⑧一)。 申立人は、審判が確定した日から10日以内に、審判の謄本を添付して戸籍の届出をしなければならない(戸法68の2・63①)。 なお、養親の戸籍には、できるだけ実子と同様の記載をするとの配慮から、「特別養子縁組」、「養父母」、「養子」等の字句は戸籍に使用されないが、「 年 月 日民法817条の2による裁判確定」との記載がなされることから、間接的に特別養子縁組がなされたことは判明する。 (了)

#No. 129(掲載号)
#米倉 裕樹
2015/07/23

現代金融用語の基礎知識 【第20回】「ラップ口座」

現代金融用語の基礎知識 【第20回】 「ラップ口座」   事業創造大学院大学 准教授 鈴木 広樹   1 ラップ口座とは ラップ口座とは、金融機関が個人に対して提供するサービスの一つであり、個人が金融機関に資産運用を包括的に委ねるというものである。乱暴な言い方をすれば、個人が金融機関にお金を渡して、「後は任せるから、これを運用して増やしてくれ」と頼むのが、ラップ口座である。ちなみに、ラップとは、英語のwrapで、「包む」という意味である。 このラップ口座の残高がこのところ急速に増えており、今年の3月末時点では前年同期の約3倍になっている。その中心は、投資先を投資信託に絞るファンドラップというものであり、最低投資額が300万円から500万円程度で、金融機関が個人から運用方法について相談を受けて、それをもとに適当な投資信託を選んで投資するというものである。   2 なぜ拡大? ラップ口座の残高がこのところ急速に増えているのは、特に証券会社がその販売に力を入れるようになったからである。野村ホールディングスは、今年中にラップ口座の運用新会社を設立する予定である。 証券会社がラップ口座に力を入れるようになったのは、それが経営の安定化に資するという判断による。これまで証券会社は、投資信託については、それを販売して販売手数料を得ることに力を入れてきた。しかし、そうした手数料収入の額は、株式相場の変動の影響を受けるため、安定しない。 それに対して、ラップ口座の場合、残高に応じた維持・管理手数料が得られるため、収入の額が安定するのである。株式相場の変動の影響を受けることなく、安定した手数料収入を得られるようにしたい。そうした証券会社の思いが、ラップ口座の急拡大につながっているのである。   3 おすすめの金融商品か? ラップ口座は、「投資先選びを証券会社に任せられるので、楽だ」といった理由から、投資初心者にウケているようである。証券会社のラップ口座の売り文句も、「投資初心者が多くの投資信託から適当なものを見つけるのは困難」、「投資のプロである我々が投資をサポート」といったものである。しかし、ラップ口座は本当に、投資初心者におすすめの金融商品なのだろうか? 必ず儲かるという話はなく、ラップ口座の場合も、その残高が必ず増え続けるとは限らない。ラップ口座にかかる費用は、口座の維持・管理手数料と投資信託の信託報酬で、通常、合計で残高に対して年2%程度かかる。したがって、年2%以上の運用益を得られなければ、残高が増えるどころか、減ってしまうのである。年2%以上の運用益を出し続けられる証券会社の担当者など、ほとんどいないのではないだろうか。 投資をしようと思ったら、先ず行うべきことは、投資についての知識を身に付けることだろう。ラップ口座などに頼らず、自分の知識で適当な投資信託を選べるようにするのである。くれぐれも証券会社に利用されることなく、あくまで証券会社は利用するようにしてほしい。   (了)

#No. 129(掲載号)
#鈴木 広樹
2015/07/23

《速報解説》 非居住者を扶養控除等の対象とするときに必要な「親族関係書類」「送金関係書類」の取扱い詳細が明らかに~平成27年度税制改正に係る所得税基本通達の一部改正が公表~

 《速報解説》 非居住者を扶養控除等の対象とするときに必要な 「親族関係書類」「送金関係書類」の取扱い詳細が明らかに ~平成27年度税制改正に係る所得税基本通達の一部改正が公表~   公認会計士・税理士 篠藤 敦子   平成28年分以後の所得税及び平成29年度分以後の個人住民税について、国外に居住する親族を扶養控除等の対象とするときには、「親族関係書類」「送金関係書類」を扶養控除等申告書や確定申告書に添付等することが義務付けられる。 所得税法等の一部を改正する法律(平成27年法律第9号)等の施行に伴い、このほど所得税法基本通達の一部が改正され、「親族関係書類」「送金関係書類」の範囲や取扱いが明らかにされた。 なお、「親族関係書類」「送金関係書類」の添付義務化に関する改正概要については、下記の拙稿をご参照いただきたい。 (1) 親族関係書類について 「親族関係書類」とは、次のいずれかの書類で、国外居住親族(※)が納税者の親族であることを証明するものをいう(所令262②一、所規47の2④)。 (※) 「国外居住親族」とは、国外に居住する親族のうち、控除対象配偶者及び配偶者特別控除に係る配偶者、控除対象扶養親族、障害者控除に係る障害者に該当する人をいう。 ①又は②いずれかの書類ではなく、①又は②に該当する2以上の書類によって納税者の親族に該当することが証明される場合には、当該2以上の書類も親族関係書類に該当することが明らかにされた(※)(改正所基通(新設)120-7)。 (※) ②に該当する書類2以上で証明できる場合にも、当該2以上の書類は親族関係書類に該当する。   (2) 送金関係書類について ① 送金関係書類の範囲 「送金関係書類」は、国外居住親族の生活費又は教育費(以下、生活費等という)に充てるための支払いを、必要の都度、各人に行ったことを明らかにするものでなくてはならない(所規47の2⑤)。 したがって、ある1人の国外居住親族に対して、他の国外居住親族分の生活費等も含めて支払いが行われている場合には、当該支払いに係る送金関係書類は、他の国外居住親族に係る送金関係書類には該当しないものとして取り扱うこととなる(改正所基通(新設)120-8)。 〈例〉 ② 生活費等を1年に3回以上送金している場合 同一の国外居住親族に対し、生活費等の支払いを年に3回以上行っている場合には、すべての送金関係書類を提出又は提示することに代えて、一定の事項を記載した明細書(※)を提出し、その年の最初と最後の支払いに係る送金関係書類を提出又は提示すればよいこととされた(改正所基通(新設)120-9)。 (※) 明細書には、次の事項を記載する。 ① 納税者の氏名及び住所 ② 支払いを受けた国外居住親族の氏名 ③ 支払日(送金日、クレジットカード利用日) ④ 支払方法(例:国外送金、クレジットカード利用) ⑤ 支払額   (3) 扶養控除等申告書が遅れて提出された場合 給与所得者の扶養控除等申告書が所定の期日後に提出された場合には、その提出後最初に支払う給与から、国外居住親族を反映したところにより徴収税額を計算する(改正所基通194・195-1)。   (4) 年末調整後に送金関係書類の提出があった場合 年末調整後、その年分の源泉徴収票が作成されるときまでに送金関係書類が提出された場合には、所得税基本通達190-5に示されている「年末調整後に所得控除に異動があった場合の再調整」に準じた再計算を行うことができる(改正所基通(新設)190-7)。 (了)

#No. 128(掲載号)
#篠藤 敦子
2015/07/22

プロフェッションジャーナル No.128が公開されました!~今週のお薦め記事~

2015年7月16日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.128が 公開されました。 プロフェッションジャーナルのリーフレットは 全国のTAC校舎で配布中!   - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》については随時公開します。

#Profession Journal 編集部
2015/07/16

日本の企業税制 【第21回】「BEPS行動12:義務的情報開示ルール」

日本の企業税制 【第21回】 「BEPS行動12:義務的情報開示ルール」   一般社団法人日本経済団体連合会 常務理事 阿部 泰久     1 はじめに 行動12は、アグレッシブなタックス・プランニングを立案した段階で、納税者あるいは立案者(プロモーター=会計事務所、法律事務所、コンサルタント等)から税務当局に報告する義務を課すことにより、法令・執行上の早期対応、ひいてはスキームの販売・利用を抑止することを意図するものである。 報告されたスキームが必ずしも租税回避となるわけではなく、また個別案件に係る事前確認制度とは異なり、報告されたスキームに対して当局からの対応がないことをもって、取引の有効性・容認を意味するものでもない。このような義務的情報開示は、既にアメリカ、イギリス、カナダ、ポルトガル、アイルランド、南アフリカ等で導入されている。 OECD租税委員会は、本年3月31日に「公開討議草案 BEPS行動12:義務的情報開示ルール」を公表しており、これに対し経団連では4月28日付けでコメントを提出している。そこで本稿では、公開討議草案の主要点と経団連コメントの概要を紹介することとしたい。   2 公開討議草案の概要 行動12全体では、以下の3点が検討課題とされている。 今回の公開討議草案は、このうち①②について具体的な提案を行うものであり、以下、その概要を紹介する。 (1) 報告義務者 現在の各国のレジームでは、プロモーターと納税者の両方に義務を課しているか、プロモーターまたは納税者のどちらかに第一義務を課しているか、のどちらかである。 公開討議草案では、各国は自由選択が可能だが、プロモーターに第一開示義務を課す場合は、プロモーターが①オフショアの場合、②プロモーターが存在しない(自己開発のケース等)、③プロモーターが開示できない場合、はその義務を納税者に転嫁すべきとする。 (2) 報告すべき取引の範囲 報告すべき取引の範囲を定義するためのアプローチとして、2つのアプローチが提示されている。どちらが良いか特にリコメンドされていないが、メインベネフィットテストとデミニマステストを結び付けるべきではないと結論付けている。 (3) 報告基準 ① 一般報告基準(プロモートされたスキームに共通する特徴) 2つのアプローチが提示されており、どちらが良いかは特にリコメンドされていない。 ほとんどの国は客観的報告基準のほうが良いと表明したが、開示義務の迂回を防ぐために主観的テストの役割があると考える国もある。 ② 特定報告基準 特定の取引や取引の特定要素をターゲットに設計されたものであり、現行の義務的情報開示レジームに見られるものには、損失取引、リースアレンジ、雇用スキーム、所得分類転換スキーム、低税率国の事業体を含むレジーム、ハイブリッド手法を含んだアレンジ、等がある。 義務的情報開示には、一般報告基準と特定報告基準を組み合わせることが必要である。 特定報告基準はその国の特定リスクや問題を反映すべきで、その設計や選択はその国の租税政策や優先順位を考慮して各国に委ねられるべきである。各国は開示量を制限するために特定報告基準にデミニマスの金額をリンクさせるかどうか自由に選択できる。 開示を要求するに十分な一つの報告基準を、スキームや取引を捕捉するトリガーにすることが必要である。 (4) 報告時期 プロモーターに開示義務がある場合には、開示のタイミングはスキームの利用可能性にリンクさせるべき。報告期限は税務当局の能力を最大化することを目的とすべき(スキームが利用可能となってから報告期限までを短く設定することで達成される)。 納税者が開示をしなければならない場合には、開示はスキームの利用可能性よりも実行をトリガーとすべき。納税者のみが開示する場合(プロモーターがいない又はオフショアの場合)は、報告期限は税務当局の能力を最大化することを目的とすべき。 (5) プロモーターまたはユーザーに課される他の義務 スキームのユーザーを特定することは義務的情報開示レジームの不可欠な部分であり、現行レジームでは2つの方法で特定している。 第一報告義務をプロモーターに課す場合には、スキームリファレンスナンバーと顧客リストの導入が必要(国内法が認めれば、顧客リストは自動的に税務当局へ提供されることとすべき)。 プロモーターと納税者の両方に報告義務を課す場合には、スキームリファレンスナンバーと顧客リストは不可欠なものではないが、クロスチェックの一助となる。 (6) 遵守と不遵守の結果 各国は、開示レジームのもとスキーム又は取引を報告することの結果について「スキームの開示はスキーム又はそこから得られると予想される便益の承認を暗示するものではない」ことを国内法において明確にすべき。 義務的情報開示ルールのコンプライアンスを強化するために、各国は導入された義務を遵守しなかった場合に適用される財務的な罰則を導入すべき。各国は国内法制と首尾一貫した罰則条項(非金銭的罰則を含む)を自由に導入すべき。 (7) 国際的スキーム 行動12の作業の1つの焦点は、国際的観点において義務的情報開示をより効果的にするにはどうしたら良いかということにある。 クロスボーダースキームは異なる国の異なる当事者から複合的な税の便益を創出するが、スキームから生じる国内の税の便益は全体アレンジから隔離すれば注目に値しないものに見えてしまう。開示レジームが国内納税者の国内税効果にフォーカスしただけでは、多種類のクロスボーダータックスプランニングを捕捉できない。 公開討議草案では、以下の点を考慮した国際税務スキームに対する情報開示レジームの設計についての多くのリコメンデーションを提示している。 (8) 向上された情報共有モデルの設計・実行 税務当局はこの証明(内国法人が報告対象となる国際税務スキームに関し当局が必要とする情報を有しない状況において、その内国法人がその情報を有していると思われる者に対し情報請求を行った場合のその請求の事実を示す証明)を既存の他の租税法域との情報交換合意(租税条約、徴収共助条約、情報交換協定)のもとで情報要求の基礎として用いることができるであろう。 その得られた情報は、これら情報交換規定のもとでの他の租税法域との自発的情報交換のトリガーとして使用されるかもしれない。 税務当局間の効率的な情報交換を促進するための向上された情報交換モデルの設計・実行に係る作業は、行動12のもとでさらに行われることになるであろう。   3 経団連のコメント 公開討議草案に対し、経団連では4月28日付けでコメントを提出している。 以下、その基本的な考え方ならびに具体的なコメントの概要を紹介する。 (1) 基本的考え方 (2) 具体的コメント   4 おわりに―包括的租税回避否認規定の必要性 わが国には、国際租税に限らずそもそもこのような仕組みはなく、現時点でその導入の是非を判断することは難しい。しかし、行動12の提案するような義務的情報開示ルールを導入するのであれば、まず何が租税回避行為に当たるのかを明確に示す包括的租税回避行為否認規定を整備することが前提となるはずである。 現行税法では、法人税法132条のような個別的租税回避行為否認規定はあるが、要件が不明確であり、事実上、税務当局の恣意的な判断に委ねられているに等しい状況である。また、近年の訴訟事例を見ても、たとえば、IBM事件とヤフー事件の結論の違いなど、納税者から見て予見可能性があるとは言い難い状況にある。 包括的租税回避行為否認規定は、義務的情報開示ルールを持つアメリカ、イギリス、カナダをはじめ、ドイツ、イタリア、オーストラリアなどで導入されている。その内容は様々であるが、いくつかの要件のもとに、どのようなものが租税回避行為に該当するのかを明らかにしている。 わが国でも、義務的情報開示ルールの導入の前に包括的租税回避行為否認規定の必要性を真剣に議論すべき時期にあると考える。 (了)  

#No. 128(掲載号)
#阿部 泰久
2015/07/16

《平成27年度改正対応》住宅取得等資金の贈与税非課税特例 【第1回】「改正前後の特例内容の確認」

《平成27年度改正対応》 住宅取得等資金の贈与税非課税特例 【第1回】 「改正前後の特例内容の確認」   税理士 齋藤 和助   1 はじめに 平成27年度税制改正において、住宅取得等資金に係る贈与税の非課税特例が、適用期限を延長した上で拡充された。改正の必要性に関しては税制改正大綱の前段で次のように記載されている。 本稿は、特例改正後の取扱いについて、改正前の制度や平成28年10月前後の適用関係を含めて全5回にわたって詳解していく。 第1回目の今回は特例の内容を概観し、改正点を整理しておく。   2 改正前の内容 (1) 特例の概要 平成24年1月1日から平成26年12月31日までの間にその直系尊属からの贈与により住宅用家屋の新築、取得又は増改築等に充てるための金銭(以下「住宅取得等資金」という)の取得をした一定の受贈者(以下「特定受贈者」という)が、住宅用家屋の新築、取得又は増改築等について、原則として贈与の翌年3月15日までに住宅用家屋を取得等して、居住するなど一定の要件を満たすときは、その贈与により取得した住宅取得等資金のうち以下の金額(既にこの特例の適用を受けた金額を除く)までは、贈与税の課税価格に算入しない。 なお、この贈与税の非課税特例(以下「非課税制度」という)は、暦年課税の基礎控除(110万円)、相続時精算課税の特別控除又は住宅取得等資金の贈与を受けた場合の相続時精算課税の特例(2,500万円)と併せて適用が可能である。 (注) 上記の「省エネ等住宅」とは、省エネルギー対策等級4又は耐震等級2以上若しくは免震建築物に該当する住宅用家屋をいう。 (2) 特定受贈者 非課税制度の適用を受けることができる特定受贈者は、以下の要件を全て満たす者をいう。 (3) 住宅用家屋 非課税制度の対象となる住宅用家屋とは、特定受贈者の居住の用に供する家屋でその床面積が50㎡以上240㎡以下(2分の1以上が居住用)のものをいう。なお、その家屋が新築でない場合にはその取得の日以前20年以内(耐火建築物である場合25年以内)に建築されたもの又は新耐震基準を満たすものに限られる。 (4) 増改築等 非課税制度の対象となる増改築とは、特定受贈者が所有する居住用家屋について行う以下の工事で、工事用費用が100万円以上であるものに限られる。 (5) 申告要件 非課税制度は、その適用を受けようとする者の期限内申告書に、その適用を受けようとする旨を記載し、計算の明細書等の書類を添付した場合に限り適用される。   3 平成27年度税制改正の内容 (1) 適用期限の延長 非課税特例について、その適用期限を平成31年6月30日まで延長する。 (2) 非課税限度額 非課税限度額を次のとおりとする(カッコ内は東日本大震災の被災者に係る特例措置)。 ① 特別住宅資金非課税限度額(住宅用家屋の取得等に係る対価の額又は費用の額に含まれる消費税等の税率が10%である場合) ② 住宅資金非課税限度額(上記①以外の場合) (3) 再適用 平成27年1月1日から平成28年9月30日までに住宅を取得等して上記②により特例の適用を受けた者が、平成28年10月以降にも消費税率10%が適用される者として新たに住宅を取得等した場合には、上記①により再び特例の適用を受けることができる。しかし、平成26年以前に改正前の旧法で特例の適用を受けている者は、平成28年10月以降に新しく住宅を取得等しても、消費税率10%が適用される者として特例の適用を受けることはできない。 (4) 省エネ等住宅の範囲の拡充 上記(2)の「省エネ等住宅」に以下の住宅用家屋が加えられた。 (5) 増改築等の範囲の拡充 適用対象となる増改築等の範囲に以下の工事が加えられた。 (6) 適用時期 上記の改正は、平成27年1月1日以後に贈与により取得する住宅取得等資金に係る贈与税について適用する。 *   *   * 次回以降は上記非課税特例の内容のうち、ポイントとなる事項や注意すべき事項を詳解していく。 (了)

#No. 128(掲載号)
#齋藤 和助
2015/07/16

法人事業税に係る平成27年度税制改正事項~外形標準課税の拡大、所得拡大促進税制の適用など~ 【第3回】「「資本金等の額」の取扱い・負担軽減措置」

法人事業税に係る平成27年度税制改正事項 ~外形標準課税の拡大、所得拡大促進税制の適用など~ 【第3回】 (最終回) 「「資本金等の額」の取扱い・負担軽減措置」   公認会計士・税理士 鯨岡 健太郎   1 資本割の課税標準となる「資本金等の額」 事業税資本割は、資本金等の額によって法人の行う事業に対して課する事業税をいい(地法72二)、資本割の課税標準となる各事業年度の資本金等の額は、各事業年度終了の日における「資本金等の額」(法法2十六)に「一定の調整」を加えたものである(地法72の21①)。事業年度が1年に満たない場合には、調整後の資本金等の額に事業年度の月数を乗じて12で除した金額が課税標準となる(地法72の21③)。 (1) 法人税法における「資本金等の額」の定義 「資本金等の額」とは、法人が株主等から出資を受けた金額として、以下の算式により計算された金額をいう(法法2十六、法令8①)。なお「増加調整額」及び「減少調整額」は法令上の用語ではなく、本稿の説明の便宜のために筆者が設けたものであるので、留意されたい。 「増加調整額」及び「減少調整額」は、前期末まで(過去事業年度)の増減額と当事業年度の増減額を合計したものであり、具体的な調整項目は、以下の通りである(号数は法人税法施行令第8条第1項におけるものである)。なお、黄色でハイライトしている項目は、本稿において特に関連のあると考えられるものである。 (2) 事業税における「一定の調整」について ① 無償減資・無償増資における調整 資本割の課税標準となる「資本金等の額」は、納税者の便宜等を考慮して、事業税で独自に設定するのではなく、原則として法人税の「資本金等の額」をそのまま用いることとされたのであるが、企業再生等の目的で会計上の資本金等(資本金及び資本剰余金)の額を減少して損失処理に充てた場合(無償減資等)において、会計上の資本金等の額が減少するにもかかわらず税務上の資本金等の額は減少しない(法令8①十二)ことから、事業税資本割について企業実態と乖離した課税が生じ、応益課税の考え方にそぐわない(課税の公平を損なうおそれがある)という問題があった。 そこで、欠損填補目的で実施された無償減資等の額については、制度創設当初から、資本割の課税標準となる資本金等の額から控除するという特例措置が講じられていた(無償減資特例。平成22年度税制改正前・地法附則9④⑫)。 その後、この措置は実際の事業活動の規模に応じて課税するという外形標準課税の趣旨に基づき講じられているものであるとして、平成22年度の税制改正で地方税法本則の措置として規定されることとなった(地法72の21①二、三)。これと合わせ、無償増資(準備金・剰余金の資本組み入れ)についても、資本金等の額に加算する措置が設けられた(地法72の21①一)。 なお、これらの調整も、法人税の資本金等の額の調整と同様、「過去事業年度」及び「当事業年度」における調整が反映されることとなる。 ② 持株会社特例 総資産の帳簿価額のうち特定子会社株式(発行済株式総数の過半数を直接・間接に保有する会社の株式)の帳簿価額の占める割合(A)が50%を超える場合には、資本割の課税標準となる資本金等の額(上記①の調整後)から、これに(A)の割合を乗じた金額を控除する(持株会社特例。地法72の21⑥)。 これは、持株会社のように、資本金等の額の大半が子会社株式の取得に充当されているような状況下では、親子会社の双方で資本割が課税されるのは企業グループとして「二重課税」されているようなものであり、これを調整するための措置と考えられる(連結会計の投資・資本の相殺消去に近い考え方であろう)。 出典:総務省「法人事業税の外形標準課税について」p2 ③ 大規模法人特例 資本割の課税標準となる資本金等の額(上記①及び②の調整後)が1,000億円を超える法人については、租税負担に配慮して以下の通り課税標準の圧縮措置が定められている(大規模法人特例。地法72の21⑦)。 ▷ 1,000億円超5,000億円以下:50% ▷ 5,000億円超1兆円以下:25% ▷ 1兆円超:ゼロ(課税標準に算入しない) 出典:同上 ④ その他の特例 上記のほか、特定の事業者を対象とした資本割の課税標準の特例が定められているが(地法附則9①~⑫)、本稿では説明を省略する。   2 平成27年度税制改正の内容 (1) 資本割の課税標準の見直し等 ところで、法人税法における「資本金等の額」は正数概念ではなく、減算調整額が大きい場合にはマイナスになることもある。たとえば、適格合併に際し合併法人が抱合株式を有している場合には、加算調整額の計算に際して抱合株式の合併直前の帳簿価額を「減算」することとされているが(法令8①五)、被合併法人の株価が高い等の理由で抱合株式の帳簿価額が十分に大きい場合、合併法人の資本金(出資金)の額を超える減算調整が織り込まれることとなり、その結果、資本金等の額がマイナスになるのである。 このことは、資本金等の額を課税標準として用いる税目(法人住民税均等割、法人事業税資本割)において不都合な状況である。言うまでもなく課税標準は「正数」の概念であるから、これがマイナスの場合にはゼロとして取り扱わざるを得ない。この結果、均等割の税率区分は最低レベルが適用され、資本割の税額はゼロとなり、応益課税の目的を十分に達成できない状況が続いていたところである。 かかる状況を是正し、応益課税の性質を一層明確化するために、平成27年度の税制改正によって、資本割の課税標準と均等割の税率区分の基準に用いる「資本金等の額」については、会計上の資本金及び資本準備金の合算額を下限とすることとされた(地法52④、72の21②、312⑥ほか)。 なお、下限の判定対象となるのは会計上の資本金及び資本準備金の合算額であるから、その他資本剰余金は含まれないことにも留意が必要である。 これと合わせ、これまで事業税独自に定めのあった「無償減資・無償増資の調整」(1(2)①)について、法人住民税(均等割)の税率区分の基準にも適用することとされた(地法23①四の五、52④、292①四の五、312⑥等)。 この結果、資本金等の額がマイナスになっている法人はもとより、自己株式を保有しているために「税務上の資本金等の額」が「会計上の資本金+資本準備金」の金額を下回っている法人については、住民税均等割及び事業税資本割の税負担が増加する可能性がある。 逆に、欠損填補目的の無償減資を行っている企業については、住民税均等割の税負担が減少する可能性があるため、留意が必要である。 なお、無償減資・無償増資の調整計算を行った場合には、その加減算の態様に応じて、申告書に以下の書類を添付する必要がある。 (2) 事業税の負担軽減措置(経過措置) ここまで説明してきたとおり、平成27年度の税制改正では、外形標準課税の拡大を中心として、事業税の課税標準及び税率の見直しが織り込まれた。 これらの改正は、平成27年4月1日以後開始事業年度より適用されるが、改正後の税率を適用することによって、外形標準課税の割合が拡大することに伴い、所得水準次第ではむしろ税負担が増加する可能性があることから、経過的に負担軽減措置が定められたところである。 具体的には、平成27年度及び平成28年度の2事業年度に限り、適用年度の付加価値額が30億円以下である企業については、適用年度の前年度の税率で計算した事業税額(所得割+付加価値割+資本割)との差額(税率見直しによる税負担の増加額)について、その2分の1相当額について納付すべき事業税額から控除するというものである(地方税法平成27年改正法附則8②~⑤)。 この経過措置は、付加価値額が40億円未満の企業まで段階的に適用される。付加価値額が30億円超40億円未満の企業については、段階的に控除割合が引き下げられ、付加価値額40億円のとき控除率がゼロとなる(同9②~⑤)。 図解すると以下の通りとなる。 負担軽減措置の適用に関しては、「適用年度の前年度の税率」の取扱いに留意が必要である。これは、平成27年度においては、「平成27年3月31日現在における税率」であり、平成28年度については「平成28年3月31日現在における税率」を指す。特に平成27年3月31日現在の税率は、地方法人税の導入にあわせて平成26年10月1日付けで改正された税率になっているので留意が必要である(下記に【第1回】に掲載した「事業税率の推移」の表を再掲する)。 〈事業税率の推移〉 ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 (注) 外形標準課税適用法人に適用される税率。標準税率かつ軽減税率不適用法人を前提とする。 具体的には、以下の税率が適用されることとなるが、超過税率の定めがある場合にはその税率による必要があるため、合わせて留意されたい。 いささか余談になるが、事業税(所得割)の税率の定めについては、条文の読み方に注意が必要である。地方税法のほかに、「地方法人特別税等に関する暫定措置法」も合わせて確認する必要があるためである。 法人事業税に関する標準税率は地方税法第72条の24の7で定められているが、この税率テーブルが、地方法人特別税等に関する暫定措置法第2条で読み替えられている(下表参照)。   3 おわりに 平成27年度の税制改正によって、外形標準課税の重要性が増加するとともに、事業税が応益課税の思考に基づく地方税であるということが一層明確化された。 所得との関連で算定される法人実効税率は、ここ数年の税制改正で徐々に引き下げられており、今後もさらなる引下げを目指すとされている。その一方、事業税(外形標準課税)をはじめとした地方税は、応益課税の性質強化や地方自治体の財政力格差の縮小という目的に照らしても適合的であることから、課税ベースの拡大の手段として注目されている。 平成27年度税制改正大綱では、今後の検討課題として、法人事業税の損金不算入化をはじめ、事業税に係る検討事項がいくつかオープンになっている状況である。しばらくは事業税の改正もホットな話題になるであろう。 そのような時期に、今回の連載によって、事業税についてかなり詳細な説明を加える機会を得られたのは喜ばしい。読者の参考になれば幸いである。 (連載了)

#No. 128(掲載号)
#鯨岡 健太郎
2015/07/16

連結納税適用法人のための平成27年度税制改正 【第5回】「受取配当等の益金不算入制度の見直し」

連結納税適用法人のための 平成27年度税制改正 【第5回】 「受取配当等の益金不算入制度の見直し」   公認会計士・税理士 税理士法人トラスト パートナー 足立 好幸   [6] 連結納税適用法人に係る受取配当等の益金不算入制度の見直し 1 改正内容 (1) 受取配当等の益金不算入制度の見直し 連結納税制度に係る受取配当等の益金不算入制度について、次の見直しを行う(法法81の4①④⑤⑥⑦)。 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 (注1) 「株式等」とは株式又は出資をいう(以下、[6]で同じ) (注2) 「公社債投資信託以外の証券投資信託の収益の分配の額」については、その全額を益金算入(改正前は、収益の分配の額の2分の1又は4分の1の金額の50%相当額を益金不算入)とする(法法23①、旧法法23①、旧法令19①)。 (注3) 平成27年4月1日以後に受ける「投資信託及び投資法人に関する法律第137条(金銭の分配)の金銭の分配(出資総額等の減少に伴う金銭の分配として財務省令で定めるもの(出資等減少分配)を除く)の額」を益金不算入の対象となる配当等の額とする(法法23①、平成27年所法等改正法附則23)。   (2) 株式等の区分の定義 完全子法人株式等、関連法人株式等、その他の株式等、非支配目的株式等の定義は次のとおりである(法法81の4①⑤⑥⑦、法令155の9①②、155の10①②、155の10の2)。 なお、連結納税適用法人については、単体納税と異なり、連結法人全体で持株割合の判定を行うこととなる。 ① 完全子法人株式等 完全子法人株式等の定義は改正前と変わっておらず、完全子法人株式等とは、配当等の額の計算期間の初日からその計算期間の末日まで継続して配当等の額を受ける連結法人と配当等の額を支払う他の内国法人との間に完全支配関係があった場合の当該他の内国法人の株式等をいう。 また、その支払を受ける配当等の額が法人税法第24条第1項のみなし配当の額であるときは、完全子法人株式等とは、その支払に係る効力が生ずる日の前日においてその連結法人と当該他の内国法人との間に完全支配関係があった場合の当該他の内国法人の株式等とする。 ここで、計算期間とは、その配当等の額の支払を受ける直前にその配当等の額を支払う他の内国法人により支払われた配当等の額(適格現物分配に係るものを含む)の支払に係る基準日の翌日(次の各号に掲げる場合には、各号に定める日)からその支払を受ける配当等の額の支払に係る基準日までの期間をいう。 ② 関連法人株式等 関連法人株式等は改正によって新たに区分された株式等であるが、関連法人株式等とは、連結法人(その連結法人との間に連結完全支配関係がある他の連結法人を含む)が、他の内国法人の発行済株式又は出資(当該他の内国法人が有する自己の株式等を除く。「発行済株式等」という)の総数又は総額の3分の1を超える数又は金額の当該他の内国法人の株式等を、その連結法人が当該他の内国法人から受ける配当等の額の計算期間の初日から計算期間の末日まで引き続き有している場合おける当該他の内国法人の株式等(完全子法人株式等を除く)をいう。 ここで、計算期間とは、その配当等の額の支払を受ける直前にその配当等の額を支払う他の内国法人により支払われた配当等の額(適格現物分配に係るものを含む)の支払に係る基準日の翌日(次の各号に掲げる場合には、各号に定める日)からその支払を受ける配当等の額の支払に係る基準日(法人税法第24条第1項のみなし配当(同項第3号に規定する資本の払戻しに係る部分を除く)の額であるときは、その支払に係る効力が生ずる日の前日)までの期間をいう。 ③ その他の株式等 その他の株式等は、完全子法人株式等、関連法人株式等及び非支配目的株式等のいずれにも該当しない株式等をいう。 ④ 非支配目的株式等 非支配目的株式等は改正によって新たに区分された株式等であるが、非支配目的株式等とは、連結法人(その連結法人との間に連結完全支配関係がある他の連結法人を含む)が他の内国法人の発行済株式又は出資(当該他の内国法人が有する自己の株式等を除く)の総数又は総額の100分の5以下に相当する数又は金額の当該他の内国法人の株式等を、連結法人が当該他の内国法人から受ける配当等の額の支払に係る基準日(法人税法第24条第1項のみなし配当(同項第3号に規定する資本の払戻しに係る部分を除く)の額であるときは、その支払に係る効力が生ずる日の前日)において有する場合における当該他の内国法人の株式等(完全子法人株式等を除く)をいう。 この点、完全子法人株式等及び関連法人株式等は、計算期間中の継続保有が要件となるが、この非支配目的株式等は基準日時点での保有が要件となる。 (3) 受取配当金の益金不算入額の計算 連結納税は、法人ごとに株式等の区分ごとの益金不算入額を計算する単体納税と異なり、連結グループ全体で株式等の区分ごとに益金不算入額の計算を行い、各連結法人の配当発生額に基づき個別帰属額を計算することとなる(法法81の4①④⑨、法令155の8、155の11)。 【1】 株式等の区分ごとの受取配当金の益金不算入額の計算方法 【2】 負債利子控除額の計算 受取配当金の益金不算入額の計算において、負債利子を控除するのは、改正前は関係法人株式等及びその他の株式等であったが、改正後は関連法人株式等のみが負債利子を控除することとなる。 そして、連結納税では、各法人ごとに計算する単体納税と異なり、連結納税グループ全体を1つの法人として各連結法人の数値を合計して負債利子控除額を計算することとなる。 また、単体納税と異なり、負債利子には連結法人へ支払った負債利子は含めず、総資産の帳簿価額からは他の連結法人に支払う負債利子の元本である負債を控除して計算する。 上記のうち、分母及び分子の「前連結事業年度」は、最初連結事業年度以後の連結事業年度に限る。つまり、単体納税の事業年度は該当せず、連結納税開始事業年度においては、当連結事業年度末の金額のみで分母及び分子を計算することとなる。 また、上記のうち、分母となる「当連結事業年度末及び前連結事業年度末の連結グループ全体の総資産の帳簿価額の合計額」は、各連結法人の確定した決算に基づく貸借対照表に計上されている総資産の帳簿価額を合計したものをいい、次の①及び②の金額を減算することとなる。 ① 他の連結法人に支払う負債の利子の元本である負債の額に相当する金額 ② 固定資産の積立金、特別償却準備金、土地再評価差額金等 この点、改正前は、「その他有価証券」の「評価益等相当額」については総資産の帳簿価額から減算し、「評価損等相当額」については加算することとしていたが、改正後の関連法人株式等の負債利子控除額の計算においては、この加減算が不要となる。 さらに、上記のうち、分子となる「期末関連法人株式等」とは、連結法人が他の内国法人の発行済株式等の総数又は総額の3分の1を超える数又は金額の当該他の内国法人の株式等を、連結事業年度終了の日の6月前の日の翌日(当該他の内国法人がその翌日後に設立された法人である場合には、当該他の内国法人の設立の日)からその連結事業年度終了の日まで引き続き有している場合の当該他の内国法人の株式等(期末完全子法人株式等を除く)をいう。 ここで、期末完全子法人株式等とは、連結法人が他の内国法人との間に連結事業年度開始の日(当該他の内国法人がその連結事業年度の中途において設立された法人である場合には、当該他の内国法人の設立の日)からその連結事業年度終了の日まで継続して完全支配関係があった場合の当該他の内国法人の株式等をいう。 (4) 受取配当金の益金不算入額の個別帰属額の計算 連結納税では、連結グループ全体を一つの法人として全体計算を行った受取配当金の益金不算入額を、株式等の区分ごとに各連結法人の受取配当金の金額を基準に各連結法人へ配分する(法法81の4⑨、法令155の11)。 この点、改正によって計算方法に変更はなく、次のように、改正後の株式等の区分ごとに、各連結法人の配当発生額に基づき個別帰属額を計算することとなる。   2 適用時期 連結親法人事業年度が平成27年4月1日以後に開始する連結事業年度について適用される(平成27年所法等改正法附則29)。 (了)

#No. 128(掲載号)
#足立 好幸
2015/07/16
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