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[子会社不祥事を未然に防ぐ]グループ企業における内部統制システムの再構築とリスクアプローチ 【第6回】「グループ企業管理に関わる基本的方針(その3)」~早期不正対処の重要性~

[子会社不祥事を未然に防ぐ] グループ企業における内部統制システムの再構築とリスクアプローチ 【第6回】 「グループ企業管理に関わる基本的方針(その3)」 ~早期不正対処の重要性~   公認会計士・公認不正検査士 松澤 公貴   会社組織を人間の身体に例えるならば、不祥事は身体に侵入した新種の「ウイルス」と言っても過言ではない。すなわち、子会社で不祥事が発覚した場合には、ウイルスの感染活動は本当に収まったのか、ウイルスの活動の痕跡の確認を行って、早期の点検と被害低減に取り組む必要がある。 本稿では、筆者の経験上、子会社の不祥事の発生につき、どのように早期の対処を実施するのかをご紹介したい。   1 子会社の経営者の目線 例えば、ある子会社のある支店・事業所で不祥事が発覚した場合、子会社の経営者は、必ず他の支店・事業所でも同様の不祥事が発生していないかを調査する必要がある。これは、子会社の経営者として当然の行為であり、不祥事が発覚した支店・事業所と同じ深度で調査を実施することで、自社の「ウイルス」が全滅したことを確認することとなる。 【図表1】   2 親会社の経営者の目線 親会社の経営者としては、ある子会社のある支店・事業所で不祥事が発覚した場合、同一環境に置かれている他の子会社にも同様の不祥事が発生していないかを検討する必要がある。この場合、子会社だけに目を向けがちであるが、親会社においても同一環境にある部門・事業において、子会社不祥事と同じことが発生していないかを検証する必要がある。不祥事対策の確立の程度、内部監査の頻度、資産・売上高の規模を勘案して、濃淡をつけて調査を実施することで、「ウイルス」の転移、二次感染がないかを検証する。 また、経営のグローバリゼーションが叫ばれる昨今、親会社の目の届きにくい海外子会社では大小様々な不祥事が発生しており、海外子会社で発生した不祥事が時として連結財務諸表に重大な影響を及ぼすことがある。これは、特に海外展開する日本企業は、グループ子会社における不祥事対策の取組み状況について詳細を把握していないことが要因であると言われている。 不祥事の調査だけでなく再発防止策として、米国、EU、中国、ASEANと事業展開しているならば、それぞれの国・地域の不祥事対策についてマニュアルを用意し、研修機会を設けることが望まれる。各国の法制度の特徴を踏まえた柔軟な不祥事対策が必要であり、日本の不祥事対応とは異なる外国法違反への不祥事対応のあり方を踏まえたリスク管理が望ましいであろう。 【図表2】 3 親会社の関与の有無 親会社の株主の目線で考えると、親会社と傘下グループ会社は一体として対応することが求められるであろう。よって、子会社で発覚した不祥事に親会社が関与しているか否かを検証することは非常に重要である。特に当該不祥事に親会社の役員が関与したか否かを、取締役の監視義務のある監査役や社外役員を含む監査委員会が主体となり、株主の目線で再検証する必要がある。 親会社の関与状況によっては、他の子会社も同様に「ウイルス」感染している可能性があり、その場合は「ウイルス」が全身に転移していることを意味し、役員の総退陣以外、手の施しようがないという事態に陥る可能性もあるであろう。   4 執行当局間の連携 上述した事例の数々は、極端な事例かもしれないが、特にグローバルコンプライアンスという分野では、その必要性は顕著である。なぜならば、各国の執行当局が密室に連携しているからである。例えば、日本企業は、競争法違反に関し米国司法省(DOJ)に制裁を受けた米国外企業の中で、またEU競争当局(EC)に制裁を受けたEU外企業の中で最高の割合を占めている状況にある。 海外展開する日本企業におけるコンプライアンス体制の脆弱性は、世界各国で指摘されている。日本企業が支社・事業所等の名目を問わず事業拠点が所在している国・地域、また当該拠点を通して又は通さずに事業活動を行っている国・地域に関しても、その全ての国・地域の不祥事対策をとるように努力する必要があると言える。 (了)

#No. 150(掲載号)
#松澤 公貴
2015/12/24

社外取締役の教科書 【第14回】「士業が社外取締役に就任する際の注意点(その2)」

社外取締役の教科書 【第14回】 (最終回) 「士業が社外取締役に就任する際の注意点(その2)」   クレド法律事務所 駒澤大学法科大学院非常勤講師 弁護士 栗田 祐太郎   連載最終回となる今回は、前回から引き続いて、士業が社外取締役に就任する際の注意点につき説明する。さらに連載のまとめとして、社外取締役をめぐる今後の動向について取り上げることとする。   1 「就任後の活動」において注意すべきポイント 「その会社がどのような企業活動を行っているのか」は、業種(どのような事業か)、業態(顧客は企業か一般消費者か等)、企業規模、その業界における商慣習、企業風土等により、各社それぞれ千差万別である。 たとえ社外取締役に就任しようとする者がその会社と同じ業界の出身であっても、それだけでその会社の企業活動のすべてを把握していることにはならない。企業経営の現場には縁遠い士業が社外取締役に就任しようとする際には、尚更である。 そのため、社外取締役が適切な役割を果たし得るためには、その会社の企業活動全般につき、具体的な業務フローまでを含めて熟知するよう努める必要がある。 この点に関しては、【第4回】において、モニタリングの3つのフェーズのうちの『【フェーズ1】経営にまつわる情報の入手・収集』として、各種情報の入手方法につき説明した。また、そのための取り組みの具体例については、【第6回】にて紹介した。 この重要性は、【第4回】におけるモニタリングの3つのフェーズのうちの『【フェーズ2】取締役会等を通じた監督・意見反映』において説明した。その他、具体的な取り組み例については、【第6回】でも紹介した。 社外取締役を含めた「取締役」は取締役会の構成員であり、そこでの多角的な議論を経て、経営に関する意思決定がなされる。また、取締役会での議論を通じて、コンプライアンス上の問題点が浮かび上がってくる場合も多い。 取締役にとっては、取締役会に参加することがまずもって最重要な職務といえる。したがって、社外取締役に就任した者は、原則として毎回の取締役会等に参加すべきである。 この点、会社法施行規則は、社外取締役に関する開示事項として、株主総会の招集通知における「事業報告」において、社外取締役の取締役会への出席状況や発言の状況等を記載すべきものとしている。 よって、そもそも取締役会への出席率が低い社外取締役は、その再任につき株主から反対される可能性も高まる。 実際に、機関投資家が各自で定める議決権行使基準においては、直近1年間の取締役会への出席率が50%~75%を切る場合、当該社外取締役の再任に反対するとの基準を設けている場合が多い。 企業が社会的な存在である以上、市場や一般消費者の動向を無視することはできない。世間の“トレンド”に敏感になり、自社への取り入れ・振り返りに思いを馳せることができる習慣ということも重要である。 たとえば、近年、特に学習塾や飲食業等においてはいわゆる「ブラック」な労働環境が発生しやすいと報道されているが、「では、自社の場合は大丈夫なのか? 重大な問題へと発展する兆しはないのか?」という問題意識を持てるかということである。 その意味では、世間の“トレンド”に敏感になっておくことが必要である。 そのための一環として、役員セミナーや業界セミナー等にも出席し、絶えず自己研鑚を続けていくことが求められよう。 前記の【注意点6】及び【注意点7】の事項に留意したとしても、取締役会ないしは各種会合において、担当部署や他の役員からの提案事項や報告事項等について内容が理解できない、あるいは、その内容にいまいち納得がいかないということも起こり得る。 このような時こそ、安易にスルーしてしまうのではなく、自分自身が得心できるまで、説明の補充や資料提出を求めるべきである。 なぜならば、「社外」取締役の立場で内容が理解できない/内容に納得がいかないということは、会社外部の存在である取引先や一般消費者の立場においても、同様の感想を持たれる可能性が高いからである。そして、そのことに、会社内部の人間は気づいていないというケースも多い。 したがって、社外取締役としては、上記のような場合に「物わかりが悪い」ことがかえって会社にとってプラスとなるのだという信念を持ち、行動すべきである。 【第10回】でも触れたところであるが、社外取締役が関与した重要な意思決定が結果的に成果を挙げられなかった場合、株主や第三者から善管注意義務違反に基づく損害賠償責任を追及される可能性が生じる。 その際、裁判においては、いわゆる「経営判断の原則」に則った適切な意思決定を経ていたかが争点となる。 その際、社外取締役としては、決定にあたって考慮した諸事情や、どの点にどれだけ重きをおいて評価し結論を出したのかという判断過程・理由、判断の際に裏付けとした各種資料等につき事情を整理し、主張していくことになる。 そのときに、何よりも重要なポイントは、「自らの主張を裏付ける証拠があるのか」という観点である。民事訴訟においては、裏付け証拠無き主張は、裁判官にとっては「単なる1つの意見」としか受け取られない。 そこで、普段より、上記を裏付ける各種資料や議事録、手控えを作成し、関係者間でメール等により情報を共有しておく等といった「証拠化」を心がけるべきである。 このようにして、「自らの身は自らで守る」努力をしていかなければならない。   2 社外取締役制度の今後の動向について-連載を終えるにあたって- 以上、本連載では、社外取締役制度をめぐって問題とされる内容や注意点につき、幅広く取り上げてきた。 社外取締役に関する解説記事や公的機関のプレスリリースも多数公開されている状況にある。この先も、社外取締役をめぐる議論はより複雑となり、法改正も重ねられていくことであろう。 実際に、会社法平成26年改正法の附則第25条においては、平成27年5月1日の施行後2年を経過した後に、社外取締役の選任状況その他の社会経済情勢の変化等を勘案し、必要があると認めるときは、社外取締役を置くことの義務付け等所要の措置を講ずることとされている。 今後の議論のなかで常に立ち返るべきは、社外取締役制度の役割、すなわち、①ガバナンスの強化と②社外の知見・ノウハウの取り入れという2つの視点である。 今後の議論も、このような役割をいかに効果的に果たさせるか、そのための環境整備や運用上の工夫が主たる内容となることは間違いない。 そのような骨太の理解を前提に、今後の様々な議論や動向のフォローを続けていただきたい。 (連載了)

#No. 150(掲載号)
#栗田 祐太郎
2015/12/24

税理士ができる『中小企業の資金調達』支援実務 【第10回】「金融機関提出書類の作成ポイント(その2 損益計算書)」~簡潔明瞭が一番~

税理士ができる 『中小企業の資金調達』支援実務 【第10回】 「金融機関提出書類の作成ポイント(その2 損益計算書)」 ~簡潔明瞭が一番~   公認会計士・中小企業診断士・税理士 西田 恭隆   金融機関に提出する決算書のポイントとして、今回は損益計算書について述べる。ポイントは全部で3つである。   損益計算書のポイント①:黒字がのぞましい 会社の融資返済能力は、簡易キャッシュフロー(=当期純利益+減価償却費)で判定される。黒字で利益額が大きいほど返済能力は高いと評価され、融資を得やすい。返済は数年に渡って行われるので、安定して利益を獲得する能力が重視される。したがって、多額の特別損益項目が発生している場合、返済能力は当期純利益ではなく、営業利益または経常利益を使って判定される。 本来は黒字だったけれども、節税目的で赤字にした場合はどうなるかというと、実質黒字で評価してもらえる。例えば、期末近くで中古車両を購入し、減価償却費を多く計上した場合などである。実質黒字で扱われるけれども、翌期に資金調達を考える場合、当期は節税を抑え、黒字にしておいた方が無難である。決算前に社長と打ち合わせしておく。 やむを得ず赤字で終わった場合は、次善の策として、融資申し込み直前までの合計残高試算表を提出する。前期の損益計算書が赤字であっても、それはあくまで前期末時点での話である。直近現在が黒字なのであれば、合計残高試算表を提出し、最新の融資返済能力で判定してもらう。金融機関から求められなくても、積極的に出す。通帳の入金記録も一緒に提出すると説得力が上がる。   損益計算書のポイント②:減価償却費を計上する 黒字にする方法として、すぐに思いつくのが、減価償却費を計上しないという方法である。しかし、会社の融資返済能力は、当期純利益+減価償却費で判定される。減価償却費を計上せずに、当期純利益を黒字にしても、結局、それらの合計額である融資返済能力には大きな違いはない。 また、減価償却費が未計上の決算書では、本業の実力や会社の実態を正確に把握できない。このため、会社側が計上していない場合は、金融機関側で、減価償却費を加味した決算書に作り変えられてしまう。 減価償却費を計上せず、無理に黒字化しても意味はない。損金算入額が減り、減価償却費×税率分の税負担が増えるだけである。最初から実態に合わせて会計処理すべきである。   損益計算書のポイント③:勘定科目を増やさない 販売費及び一般管理費の勘定科目は増やさない方が良い。販売費及び一般管理費内訳書を見る側は、「会社の特徴的な経費項目は何か」、「経営判断に影響を与える重要な経費項目は何か」という視点で見る。金額が大きい勘定科目は、基本的に特徴的または重要といえる。勘定科目数を絞ることによって内訳書が簡潔明瞭になり、経費の特徴が際立つ。会社の実態を把握しやすい。 勘定科目を絞るには、少額で類似の性質を持つ科目をまとめる。例えば、事務消耗品費や新聞図書費を消耗品費にまとめたり、通勤旅費交通費と出張旅費交通費を旅費交通費1本にまとめたりする。 ただし、決算書は、経営者が会社の実態を把握する道具であるから、勘定科目の整理にあたっては、経営者の意向を確認しておく。先ほどの例でいえば、「通勤旅費交通費と出張旅費交通費を別々に表示させたい、経営判断に影響する重要な科目である」と経営者が考えるのであれば、少額であっても、そのように細分化すべきである。 しかし通常、少額科目は「重要でない」として、まとめることが多い。 会計士税理士の中には、経営者の意向に関係なく科目を細分化する者がいる。詳細な科目分類=精度の高い経理処理=顧客満足とは限らない。先述の通り、細分化は会社経費の特徴を見えづらくするし、見慣れない特殊な科目が含まれていると、金融機関の質問を呼び込むことになる。会計処理も煩雑となり、記帳代行を行っている場合、自身の首を絞めることになる。経営者のためにも、税理士自身のためにも、自己満足的細分化は避けるべきである。 *   *   * 損益計算書のポイントは以上である。次回は、貸借対照表について解説する。 (了)

#No. 150(掲載号)
#西田 恭隆
2015/12/24

現代金融用語の基礎知識 【第25回】「日本版スクーク」

現代金融用語の基礎知識 【第25回】 (最終回) 「日本版スクーク」   事業創造大学院大学 准教授 鈴木 広樹   1 日本版スクークとは まずスクークとは、利子を生じさせる社債を取り扱うことができないイスラム社会の企業や投資家でも取り扱うことができる、イスラム法(シャリア)に沿った金融商品であるが、実質的には社債と同様の性質を有するものである。 そして、日本版スクークとは、日本企業がイスラム社会の投資家に対して発行するスクークである。 【第7回】の「イスラム金融」で触れたように、イスラム金融においては利子の受け取りを禁じているため、こうした金融商品が考え出されたのである。   2 日本版スクークの仕組み スクークは、利子が発生しないもののはずであるが、実質的には社債と同様の性質を有するものである。それはどういうことか? イスラム金融において、銀行は顧客から利子を受け取ることができないとされているが、顧客から実質的に利子に相当するものを受け取り、それを利子には当たらない形のものにしている。スクークにおいても、実質的に利子に相当するものが発生するが、それを利子には当たらない形のものにしているのである。 日本版スクークには様々な形態があるが、一例として下図のようなものがある(「資産の流動化に関する法律」に規定される「特定目的信託」の「社債的受益権」を活用する)。 まず企業が所有する不動産を特定目的信託の受託者に信託したうえで(①)、投資家が日本版スクークの発行代わり金を企業に支払い(②)、企業が日本版スクークを投資家に発行する(③)。 そして、企業は信託した不動産を受託者から賃借し(④)、受託者に賃料を支払い(⑤)、その賃料を原資とする分配金が受託者から投資家に支払われる(⑥)。 日本版スクークの償還時は、企業が信託した不動産を受託者から買い戻し(⑦)、受託者に代金を支払い(⑧)、その代金を原資とする償還金が受託者から投資家に支払われる(⑨)。 なお、ここでは、日本企業が日本版スクークを発行する場合を想定して説明しているが、外国政府や外国企業が日本で日本版スクークを発行する場合もあり得る。そうした日本版スクークは「サムライ・スクーク」といわれる(外国政府や外国企業が日本で発行する円建ての債券を「サムライ債」という)。 また、イスラム社会の投資家だけでなく、日本の投資家が日本版スクークを購入することも可能である。   3 税制上の取扱い 税制上、投資家が受ける日本版スクークの分配金(上図⑥)は、社債の利子と同様に取り扱われる。 また、企業と受託者の間で行われる不動産の信託(上図①)と買戻し(上図⑦)は、法人税法及び消費税法上、不動産の譲渡として取り扱われないほか、その移転登記に係る登録免許税と不動産取得税も非課税とされている(不動産の買戻しに当たっては、一定の要件を満たした場合に非課税)。   4 日本版スクークの将来 【第7回】の「イスラム金融」において、「近い将来、イスラム金融は、決して特殊ではない普通の金融取引の一つとなるのかもしれない」と述べたが、現在ではイスラム金融という言葉をよく耳にするようになり、イスラム金融が普通の金融取引の一つとなりつつあるように思われる。 海外投資家に対する日本版スクークの分配金に係る非課税措置や、日本版スクークの発行に伴う不動産の買戻しに係る不動産免許税の非課税措置は、平成28年3月31日が適用期限とされているのだが、おそらく延長されることになるだろう。 日本版スクークも、近い将来、決して特殊ではない普通の金融商品の一つとなるだろう。 (連載了)

#No. 150(掲載号)
#鈴木 広樹
2015/12/24

実務家による実務家のためのブックガイド -No.1- 井ノ上陽一 著『ひとり税理士の仕事術』

実務家による実務家のための ブックガイド -No.1- 井ノ上陽一 著 『ひとり税理士の仕事術』   〈評者〉 税理士・公認不正検査士(CFE) 米澤 勝   私も「ひとり税理士」である。職員を雇う予定もなければ、規模を拡大する気持ちもない。おそらく、本書の著者である井ノ上陽一氏に、考え方はかなり近い。とはいえ、共感できない部分も少なくはない。 たとえば、著者は、「はしがき」の中で、「ひとり税理士を提唱する理由」として、次の3つを挙げている。 1 お客様のため 2 税理士業界のため 3 自分自身のため わが身に置き換えて考えてみると、「3 自分自身のため」という理由が最も近いのではあるが、その中身は、著者の主張する「人件費をまかないきれなくなる可能性もある」ことではなく、「一人でいることがもっとも楽だ」ということに尽きる。「お客様」や「税理士業界」のことを思って、「ひとり税理士」という形態を選んだわけではない。 そうした相違点もまた、読んでいて面白いところである。 著者の文章の特徴を一言で表せば、センテンスが短く、難しい言葉を使わないで、どんどん読ませるという点にある。本書は250ページ余りの体裁であるが、私は、90分くらいで読んでしまった。それだけのスピードで読んでいても、記憶に残るフレーズが随所に現れる。 130項目にわたる仕事術+「独立を後押しするナインストーリー」の中で、印象に残ったフレーズをいくつか。 「仕事」ではなく、「人」=「自分」で評価されることを目指す 季節性のない仕事を増やす努力 「徹夜明けの医者に手術をしてもらいたか?」 税務会計ソフトを使う=IT化と考えてはいけない 勉強にならない仕事はさけるべき 基本的には税理士業務に直接結びついた「仕事術」が多く紹介されているのだが、会社員の読者にとっても、仕事をするうえで参考になる考え方も数多く示されている。また、読み進むうちに、著者のストイックさに驚かされる場面も少なくない。 最後に、「税理士事務所の経験なしに独立できる?」という項目について、私の見解を少し。 著者は、この問いに対し、「税理士事務所に勤務しないと経験できないことがある」ことをデメリットとして挙げたうえで、「変なクセ」「古い慣習や固定観念」にとらわれないだけゼロベースで独立した方がいい部分も多い、と説明する。私も税理士事務所勤務経験がない状態での独立だったため、実務はまったくの手探りでスタートした。とはいえ、1年もすれば、たいていの経験はできるものである。そうした実感からも、著者の「仕事を必死にこなすことで、独立後に経験を積むことができる」という解説には大いに頷けるのであった。 試験勉強中の税理士志望者のみなさんがこの本を読めば、合格後の自分の生き方が具体的に見えてくることは間違いなく、それが勉強を続けるモチベーションになるのではないだろうか。また、組織で仕事をしている方(必ずしも税理士とは限らない)にとっては、自分の生き方を考え直すきっかけになるのではないだろうか。 ITの進化は、働き方をどんどん多様化している。税理士業界もまた、大きな変動期を迎えている。 そうした変動期に相応しい実務書として、本書をとりあげた次第である。 (了) 〔書籍情報〕 ひとり税理士の仕事術―雇われない・雇わない働き方 仕事も人生も楽しむ税理士 井ノ上 陽一 大蔵財務協会、2015年7月 ISBN:978-4754722388 Amazonで詳しく見る  

#No. 150(掲載号)
#米澤 勝
2015/12/24

《速報解説》 外国人旅行者向け消費税免税制度、対象下限額の引下げ等さらに拡充へ~平成28年度税制改正大綱~

 《速報解説》 外国人旅行者向け消費税免税制度、 対象下限額の引下げ等さらに拡充へ ~平成28年度税制改正大綱~   税理士 石田 修朗   1 概要 平成27年12月16日に公表された「平成28年度税制改正大綱」(与党大綱)において、好調に拡大する外国人旅行者による旅行消費の経済効果を地方に波及させる観点から、平成26年度・27年度改正に続き、外国人旅行者向け消費税免税制度の拡充が決まった(大綱P86)。 改正項目は次の通りである。 上記の改正は、平成28年5月1日以後に行われる課税資産等又は輸出物品販売場の許可申請について適用される。   2 国家戦略としての背景 政府は「2030年には訪日外国人旅行者数3,000万人を超えることを目指す。」(2012年:836万人、2014年:1,341万人)としており、2015年6月30日に閣議決定された「日本再興戦略」改訂2015-未来への投資・生産性革命-では、「2,000万人が訪れる年に、外国人観光客による旅行消費額4兆円を目指す」、「地方の免税店数を約6,600店(2015年4月)から、2017年に12,000店規模、2020年に20,000店規模へと増加させる」などを目標としている。 その具体的施策として、免税手続カウンター制度を活用した「免税商店街」の実現に向けて自治体、商工会議所、商店街関係者に強く働きかけを行うこと、商店街が「免税商店街」化にあわせて行うキャッシュレス決済に必要な端末、免税システム、Wi-Fi機器の導入等への支援を拡充し、地方において外国人旅行者が快適に買い物できる環境づくりを進めること、などが挙げられる。   3 免税店を取り巻く環境 平成26年10月改正における免税対象品目の拡大、平成27年4月改正における免税手続カウンター制度やクルーズ埠頭における臨時の免税店届出制度の導入により、免税店数はこの1年で約3倍(平成26年10月1日:9,361店、平成27年10月1日:29,047店)と順調に増加している。 しかし、その内訳をみると、平成26年10月1日現在の三大都市圏の免税店数の全体に対する比率は66.9%、平成27年4月1日現在のそれは65.1%となっており、都市圏にその多くが集中している状況は改善されていない。地方においてよく売れている民芸品・伝統工芸品等は、少額な販売が多く、現行の最低購入金額である1万円に満たないことが多いこともその要因の一つであろう。 また、現行の免税手続カウンター制度は、「特定商業施設」内の店舗が免税販売手続を他の事業者である免税販売手続事業者に委託できるという制度であり、商店街なら商店街内に設置する必要があり、近接するショッピングセンターと共同で免税手続カウンターを設置することは認められていない。 免税販売の現場では「購入記録票の作成」や「購入物品の包装」など、手数のかかることも多く、商店街内に免税手続カウンターを設置することの障壁にもなっている。   4 改正の与える影響 免税対象物品の購入下限額が「5,000円以上」に引き下げられたことで、従来の電化製品だけでなく、民芸品や伝統工芸品等が対象物品として扱われることになり、地方都市においても免税店が増加し、免税販売の流れが加速するであろう。 また、ショッピングセンター運営事業者が商店街振興組合法上の組合の組合員である場合等には、そのショッピングセンターとその組合に係る地区又は地域を一の「特定商業施設」として、免税手続カウンターを共同で設置することが認められることになるため、中小商店街における免税販売への障壁が下がり、外国人旅行者の中小商店街での消費が拡大するものと予想される。 さらに、外国人旅行者が免税対象物品を購入した場合に、その物品を免税店から海外へ直送するときは、「購入記録票の作成」の省略が可能になること、また、外国人旅行者から提出を受けた「購入者誓約書」の保存について電磁的記録によることが可能になることが決定し、外国人旅行者および免税販売事業者双方にとって手続が簡素化される。   5 実務上の対応 免税対象物品の最低購入金額が「5,000円以上」に引き下げられたことにより、地方都市においても「輸出物品販売場許可」を申請するケースが増加するものと思われる。 それに伴い、従来は「課税売上」が売上のほぼすべてを占めていた地方都市の民芸品や土産品を扱う店舗において、消費税法上の「免税売上」が発生する可能性が高まることが予想される。 【参考図】 ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 (※) 財務省ホームページより (了)

#No. 149(掲載号)
#石田 修朗
2015/12/24

《速報解説》 空き家に係る譲渡所得の特別控除の特例(3,000万円控除)が創設~平成28年度税制改正大綱~

 《速報解説》 空き家に係る譲渡所得の特別控除の特例 (3,000万円控除)が創設 ~平成28年度税制改正大綱~   税理士 内山 隆一   平成27年12月16日、平成28年度税制改正大綱が公表された。 近年社会問題となっている空き家問題について、地域住民の生活環境を整備し、より住みやすい環境を確保する観点から、適切な管理が行われない空き家の増加を抑制するため、相続により取得した一定の家屋で旧耐震基準しか満たしていないものを、耐震改修して売却した場合や、建物を取り壊してその敷地を売却した場合の譲渡所得について3,000万円の特別控除を適用することができる制度を導入することが盛り込まれており、その内容は次のとおりである。   1 空き家に係る譲渡所得の特別控除の内容 相続開始の直前において被相続人のみが居住の用に供していた家屋(昭和56年5月31日以前に建築されたものに限り、マンション等の区分所有家屋を除く。以下「被相続人居住用家屋」という)及びその敷地の用に供されていた土地等を相続により取得した個人が、平成28年4月1日から平成31年12月31日までの間に、次の2のいずれかの譲渡をした場合で、次の要件を満たすときは、その譲渡に係る譲渡所得について、居住用財産の譲渡所得の3,000万円特別控除を適用することができる。   2 特別控除の対象となる譲渡 〔追記(2015/12/24)〕 (※) 財務省ホームページより   3 特例を受けるための手続 この特例は、確定申告書に、その被相続人居住家屋及びその敷地の用に供されていた土地等が上記2(1)又は(2)の要件を満たすことを地方公共団体の長等が確認した旨を証する書類等の添付をすることを要件として適用する。   4 その他 今回の大綱では、本特例を相続財産に係る譲渡所得の課税の特例(相続税額の取得費加算)との選択適用とするほか、居住用財産の買換え等の特例との重複適用など所要の措置を講ずる旨が盛り込まれている。 【参考図】 ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 (※) 国土交通省ホームページより (了) ↓お薦め連載記事↓

#No. 149(掲載号)
#内山 隆一
2015/12/22

《速報解説》 役員給与税制、譲渡制限付株式による給与やROE連動型報酬等、「攻めの経営」への対応を図る~平成28年度税制改正大綱~

 《速報解説》 役員給与税制、譲渡制限付株式による給与やROE連動型報酬等、 「攻めの経営」への対応を図る ~平成28年度税制改正大綱~   公認会計士・税理士 鯨岡 健太郎   1 はじめに 平成27年12月16日、与党(自由民主党及び公明党)より平成28年度税制改正大綱が公表された。本年度においても、経済の「好循環」を確実なものとするため、企業が収益力を高めて前向きな国内投資や賃金引き上げに一層積極的に取り組んでいくよう促す観点から、引き続き成長志向の法人税改革が盛り込まれている。 その中で、企業の「稼ぐ力」の向上に向けた「攻めの経営」を促すべく、企業経営者に適切なインセンティブを付与するため、役員給与をめぐる税務上の取扱いについても改正されることとなった。 本稿では、平成28年度税制改正大綱に含まれた役員給与税制の見直しについての解説を行う。   2 改正前の制度の概要 法人の役員給与については、以下の区分のいずれかに該当するものは損金の額に算入される(法法34①)。   3 現行制度の問題点 法人税における役員給与の取扱いは、もともと、役員給与の支給の恣意性を排除して適正な課税を実現するという観点で整備されたものである。 平成18年度の税制改正において、それまで「報酬」か「賞与」という形式的な基準で損金算入の可否を定めていた取扱いを改め、「支給額に恣意性があるかどうか」との観点から損金算入の可否を判断することとされた。 この中で、恣意性の排除された「事前確定届出給与」及び「利益連動給与」について損金算入が認められることとなったとはいえ、特に利益連動給与については、法人の利益と連動して設定されるため課税上の弊害が最も大きいと考えられ、損金算入のための厳格な要件が付されている(法令69⑥~⑩)。 このことがネックとなって、経営者のインセンティブを確保するための柔軟な報酬設計が困難な状況となっているとの指摘がなされていた。 この点、平成27年8月25日に経済産業省より公表された「平成28年度税制改正に関する要望」においても、『役員報酬税制に関する上場企業の声』として、以下のような意見が紹介されていたところである。   4 改正の概要 平成28年度税制改正大綱では、わが国企業の「稼ぐ力」向上に向けた「攻めの経営」を促すべく、企業経営者に適切なインセンティブを付与するため、役員給与における多様な株式報酬や業績連動報酬の導入促進等を図る観点から、事前確定届出給与及び利益連動給与の取扱いについて、以下の2点の改正が行われることが盛り込まれた。 (1) 事前確定届出給与に係る改正事項 役員報酬として付与された一定の譲渡制限付株式(リストリクテッド・ストック)による給与について、事前確定の届出を不要とすることで損金算入の対象とすることとされた。 この点に関し、法人が、個人(役員及び使用人)から受ける将来の役務の提供の対価として一定の譲渡制限付株式を交付した場合には、その役務の提供に係る費用の額は、原則として、その譲渡制限付株式の譲渡制限が解除された日の属する事業年度の損金の額に算入することとされた。 すなわち、役員に対して一定の譲渡制限付株式を交付した場合には、その譲渡制限付株式の譲渡制限が解除された日の属する事業年度において、役員給与として損金算入できるということになる。 この改正は、平成28年4月1日以後に交付の決議がされる譲渡制限付株式について適用される。 (2) 利益連動給与に係る改正事項 利益連動給与の算定指標の範囲にROE(自己資本利益率)その他の利益に関連する一定の指標が含まれることを明確化することとされた。 (了) ↓お勧め記事↓

#No. 149(掲載号)
#鯨岡 健太郎
2015/12/22

《速報解説》 不動産登記に係る登録免許税の軽減措置の延長等、登録免許税に係る主な改正事項~平成28年度税制改正大綱~

 《速報解説》 不動産登記に係る登録免許税の軽減措置の延長等、 登録免許税に係る主な改正事項 ~平成28年度税制改正大綱~     税理士・行政書士・AFP 山端 美德   平成27年12月16日、与党(自由民主党と公明党)による「平成28年度税制改正大綱」が公表された。 大綱で明らかとなった登録免許税に係る主な改正事項は、次のとおりである。 1 復興支援のための税制上の措置 ▷新設 復興整備事業(被災市町村が集団移転促進事業により取得した土地を利用する事業に限る。)が実施される一定の区域内の土地に関する権利を有する者が、平成28年4月1日から平成33年3月31日までの間に復興整備事業の用に供するためにその土地に関する権利を被災市町村に対して交換により譲渡し、交換により区域外の土地の所有権を取得した場合における土地の所有権の移転登記に対する登録免許税を免税とする措置を講ずる。 ▷延長 株式会社商工組合中央金庫が受ける抵当権の設定登記等に対する登録免許税の税率の特例に係る適用期間の延長の特例の適用期限を、平成33年3月31日まで延長する。 ① 不動産等の抵当権の設定の登記又は登録(本則:1,000分の4) ② 航空機等の抵当権の設定の登記又は登録(本則:1,000分の3) ③ 工場財団等の抵当権等の設定の登記又は登録(本則:1,000分の2.5)   2 租税特別措置等 ▷延長・拡充 (1) 特定創業支援事業による支援を受けて行う株式会社の設立の登記に対する登録免許税の税率の軽減措置について、適用期限を2年延長する。 ① 適用対象に次に掲げる会社の設立の登記に加え、登録免許税の税率を下記のとおり軽減する。 ② 事業を開始した日以後5年を経過していない個人が特定創業支援事業による支援を受けた場合における会社の設立の登記を適用対象に加える。 (2)  特定認定長期優良住宅の所有権の保存登記等に係る登録免許税の税率について、下記の軽減税率を平成30年3月31日まで2年間延長する。 (3) 認定低炭素住宅の所有権の保存設定登記等に係る登録免許税の税率について、下記の軽減税率を平成30年3月31日まで2年間延長する。 (4) 特定の増改築等がされた住宅用家屋の所有権の移転登記に対する登録免許税の税率の軽減措置の適用期限を平成30年3月31日まで2年間延長する。 ▷廃止 信託会社等が地方公共団体との信託契約に基づき建築する特定施設に係る土地等の所有権の信託登記に対する登録免許税は適用期限をもって廃止されることとなった。 (了)

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《速報解説》 史上初、固定資産税での設備投資減税が創設、赤字中小企業にも節税効果~平成28年度税制改正大綱~

 《速報解説》 史上初、固定資産税での設備投資減税が創設、 赤字中小企業にも節税効果 ~平成28年度税制改正大綱~   税理士法人オランジェ 代表社員 税理士 石田 寿行   平成27年12月16日に公表された「平成28年度税制改正大綱」(与党大綱)により、中小企業者等が新たな機械装置の投資をした場合の固定資産税の特例措置が創設されることとなった。 ローカルアベノミクスのさらなる浸透による地域経済の活性化に向けて、地域の中小企業による設備投資の促進を図ることが目的である。   1 制度の概要 「中小企業の生産性向上に関する法律(仮称)」(※1)の制定を前提に、中小企業者等(※2)が、この法律の施行日から平成31年3月31日までの間において、「認定生産性向上計画(仮称)」に記載された「生産性向上設備(仮称)」(2を参照)のうち一定の機械装置(新品)の取得をした場合には、その機械装置に係る固定資産税(償却資産税)について、課税標準を最初の3年間、価格の2分の1とする。 (※1) 「中小企業の生産性向上に関する法律(仮称)」は、平成28年1月に召集される第190回通常国会に提出される予定。 (※2) 「中小企業者等」とは、次の法人又は個人をいう。 ① 資本金の額又は出資金の額が1億円以下の法人 ② 資本若しくは出資を有しない法人の場合、常時使用する従業員の数が1,000人以下の法人 ③ 常時使用する従業員の数が1,000人以下の個人   2 対象となる機械装置 対象となる機械装置は、次の①から③までのいずれにも該当するものとなる(※3)。 (※3) 既存の設備投資減税(生産性向上設備投資促進減税)の支援要件(①160万円以上、②生産性1%向上(10年以内に販売開始)、③最新モデル)から、中小企業への配慮から、③の最新モデル要件が除外されている。 【参考図】 (※) 経済産業省ホームページより   3 期待される効果 史上初の固定資産税での設備投資減税であり、赤字法人にも課される固定資産税を軽減することで、赤字比率の高い中小企業の設備投資意欲を高める効果が期待される。 (了)

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2015/12/22
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