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会計事務所 “生き残り” 経営コンサル術  【第10回】「名刺にコンサルって書いてますが、本当にコンサルをやっているの?」

会計事務所 “生き残り” 経営コンサル術 【第10回】 「名刺にコンサルって書いてますが、 本当にコンサルをやっているの?」   株式会社 経営ステーション京都 代表取締役 京セラ株式会社 元監査役 公認会計士・税理士 田村 繁和   若手の会計人が開業されますと、かなりの方の名刺に“コンサルティング”という文字が入っています。 そして「これからの時代は、税務よりコンサルの時代だ」と言われます。 30年前の私たちも同様のことを口にして、差別化を主張していました。しかし、コンサルの意味が全くといっていいほど分かっていませんでした。 私が若手の方に意地悪と思いつつも「じゃあ先生は、どんなコンサルの仕事をやっているのですか?」とよく聞きます。 すると、案の定、経営計画、決算前検討会、決算報告会、さらにはデューデリと言われる方もおられました。 本当にこれらの業務は、コンサルティングなのでしょうか。 このような業務は、いろんな会社が“コンサル”と称して会計人にアドバイスされています。そのため、会計人はこれらをコンサルティングだと思い込んでいる方がたくさんおられます。 本当のコンサルタントの方に聞きますと、「これらのものはコンサルティングじゃない」と断言する方がおられます。 私も同感です。経営者が悩んでいることは、「経営計画は作った。しかし、利益は出てこない。どうしたら利益が出てくるのか、一緒になって考えてくれ」というものです。 もっと具体的に言いますと「社長、外注費を5%下げたら利益が出ますよ」と話をするのではなく、「こうすれば外注費が5%下がって利益が出ます」と指導していくのが本当のコンサルなのです。 利益を出すためには、経理的手法だけでは無理なのです。全社員の気持ちをまとめあげて、利益に向かって走り出すシステムをつくることが必要なのです。 そのためには、まず経営理念を毎朝の朝礼で唱和し、全社員の気持ちを1つの方向に向けさせることです。 次に、全社員が利益に向かって走り出すような経営システムをつくることなのです。 経理的発想だけで利益を出そうとするのは、本当のコンサルではありません。会社全体のシステムを根本的に変えていき、利益が生まれるようにしていくのが本当のコンサルだと思います。 (了)

#No. 39(掲載号)
#田村 繁和
2013/10/10

〔知っておきたいプロの視点〕病院・医院の経営改善─ポイントはここだ!─ 【第18回】「救命救急センター~機能と実態~」

〔知っておきたいプロの視点〕 病院・医院の経営改善 ─ポイントはここだ!─ 【第18回】 「救命救急センター~機能と実態~」   東京医科歯科大学医学部附属病院 特任講師 井上 貴裕   1 はじめに 高次の救急医療を担う救命救急センターは三次救急医療機関として、地域の救急医療の最後の砦としての役割が期待されている。 現状では、全国で370病院、6,603床が救命救急入院料を算定しているが(平成24年7月1日現在)、新設される救命救急センターがある一方で、救急医療における豊富な実績を有する医療機関が指定されないケースもあり、その配置及び承認の状況には地域差が存在する。 本稿では、主に公表データを用いて救命救急センターの実態に迫っていく。   2 救命救急センターの配置状況 図表1は、都道府県別の救命救急センターの設置状況である。 図表1 都道府県別 救命救急センターの設置状況 救命救急センターは人口100万人に最低1つ以上設置されることになっているが、過小な地域がある一方で充実した地域も存在する。 一般的に救命救急センターは1施設当たり30床程度を承認するケースが多いが、充実した地域では各施設に10床程度の新型救命救急センターを配置し、地域特性に適合した医療提供体制を整備する傾向がある。 実際に30床以上の救命救急センターの運用は看護師をはじめとする職員配置が容易ではなく、今後新たに新設される場合には新型救命救急センターのような病床数が少ない形態が主流になるものと予想される。 図表2は、東京都の救命救急センターの設置状況である。 図表2 救命救急センターの設置状況(東京都) 区中央部には救命救急センターが4つあり(いずれも新型救命救急センターではない)、二次医療圏を単位とした際に1施設がカバーする人口は17.8万人と一見すると過剰にみえる。 しかし、隣接する区東部及び区東北部には救命救急センターがそれぞれ1つしかなく、そのカバー人口は120万人を超え、人口100万人に1つ以上設置するという最低要件を満たしていない。 つまり、二次医療圏の境界を越えた患者流入・流出状況を考慮した実態に応じた判断を行っているものと考えられ、行政にもこのような柔軟な対応が期待される。   3 救命救急入院料 算定の実態 救命救急入院料は1~4で構成されており、2及び4は常時2対1、1及び3は常時4対1の看護師配置が求められている。手厚い人員配置で集中治療を行ういわゆるICU(Intensive Care Unit)やHCU(High Care Unit)としての役割が期待される。ただし、大手術後等のいわゆる院内転床の患者は仮に救命救急センターに入室したとしても、救命救急入院料を算定することができず一般病棟入院基本料を算定することになる。 そこで、術後のSurgical ICUとして特定集中治療室管理料(常時2対1の看護師配置、重症者等が9割以上)やハイケアユニット入院医療管理料(常時4対1の看護師配置、重症度等が8割以上)を別に設置する病院もある。特定集中治療室は集中治療が必要な心臓外科や脳神経外科の患者を中心に入室させ、ハイケアユニットはその他外科系の診療科で使うケースが多い。 今後、急性期病院において集中治療を行うユニットの存在は重要性がさらに増すであろうから、これらを戦略的に活用する視点は極めて重要である。 また、救命救急入院料の1及び3については、従来看護師配置が明確に規定されていなかったが、2012年度改定で常時4対1以上が求められることになった(2013年3月末まで経過措置があった)。 1日10万円近くもする救命救急入院料にもかかわらず、実質的には7対1の看護師配置を行う病院が多く、ハイケアユニット入院医療管理料の方が厳しい施設基準であった。このことから、救命救急入院料1・3を救急患者の受け入れ病床として、軽症者であろうともすべて収容する病院も存在するのが現実である。 病院としては、夜間は一般病棟には原則として入室させず、救急病棟で受け入れた方が運用がしやすいであろうし、高い診療報酬を期待することもできる。しかし、救命救急センターの本来の役割である重症患者の受入れとは相反するものといえ、コンプライアンスの観点から適切な入室基準を設けることが望ましいであろう。 図表3は、救命救急センターのICU・HCUに入室した脳卒中患者の入院時のJCS(Japan Coma Scale)の状況である。 図表3 救命救急入院料を算定した脳卒中患者のJCSの状況 JCS0や一桁のような意識レベルがクリアな患者が全体の8割程度になる病院も存在するようである。 これらの病院では救急患者の受け皿として救命救急センターを使っていることが予想され、入室基準を再検討することが期待される。   4 救命救急センターに求められる機能 救命救急センターの指定を受けるために、必須の機能としては脳卒中、心筋梗塞、外傷に対する診療実績が豊富なことは言うまでもないが、地域特性もあり救命救急センターがすべての重症症例を抱え込む必要はなく、そのことが機能を低下させるわけではない。 救命救急センターの評価については、厚生労働省が、「救命救急センターの評価結果(平成24年度)について」を公表しており、病院ごとに評価結果が明らかにされている。 その中に、救命救急センターには循環器疾患、産婦人科、そして精神科等の診療体制が評価されている項目があり、救命救急センターの指定を受けるためには心臓外科、産婦人科、精神科などのあらゆる診療領域を網羅していることが求められている。 確かに地域の救急医療の最後の砦としてあらゆる機能を有することが期待されることは否定しない。しかし、心臓外科や産婦人科で救命救急入院料を算定するケースは極めて稀であり、必ずしも必須ではないと筆者は考えている。 地域に循環器に特化した専門病院がある場合には、その病院と強固な連携を構築すればいいのであって、無理に心臓外科を標榜して症例を分散させることは限られた医療資源の効率的利用を阻むことにつながる。ただし、精神科については標榜していることが望ましい。 今後、せん妄等の精神系疾患に罹患した患者は増加することが予想される。 がん患者において頻度の高い精神症状であって、術後の30~40%、高齢入院患者の10~40%、終末期患者の30~90%程度に認められ、精神系疾患への対応は極めて重要である。実際に救命救急センターを有する病院の約54%は精神病棟を有していることも見過ごせない。 救命救急センターだからすべての領域を網羅することが必須ではなく、地域の医療提供体制を見据えて自らが何をするのか、何をしないのかを冷静に判断することが期待される。 (了)

#No. 39(掲載号)
#井上 貴裕
2013/10/10

顧問先の経理財務部門の“偏差値”が分かるスコアリングモデル 【第18回】「棚卸資産管理のKPI(その② 実地棚卸)」

顧問先の経理財務部門の “偏差値”が分かる スコアリングモデル 【第18回】 「棚卸資産管理のKPI (その② 実地棚卸)」   株式会社スタンダード機構 代表取締役 島 紀彦   はじめに 今回は、棚卸資産管理を構成する複数のKPIから、「実地棚卸」のサービスレベルを評価するKPIを取り上げる。 一般的に、財務報告における実地棚卸の役割は2つある。 まず、数量の確認である。 実際の数量と帳簿の数量を照合し、差異があれば、棚卸減耗費又は売上計上等で帳簿を修正する。 次の役割は、品質の確認である。 棚卸資産の品質を確認し、汚れ、破損、物理的陳腐化、機能的陳腐化、経済的陳腐化、長期滞留品が発見されれば、正味売却価額を切り下げて、収益性の低下を帳簿に反映する。 今回は、実地棚卸で発見された数量差異に関連して、実地棚卸業務の効率性を評価するKPIを取り上げる。   KPIが設定された業務プロセスの確認 まず、経済産業省スタンダードで整理された業務プロセスを引用しながら、このKPIに対応する業務プロセスを押さえておこう。 前回述べたとおり、経済産業省スタンダードでは、棚卸資産管理において、会社が担う一般的な機能として、「残高管理」、「受払管理」、「適正在庫管理」という3つの機能を挙げている。 今回解説するKPIは、「残高管理」に関連する業務プロセスにおいて設定されている。 〈経済産業省スタンダード:棚卸資産管理で会社が担う機能〉 (経済産業省「経理・財務サービス スキルスタンダード」より)   さらに、経済産業省スタンダードでは、「残高管理」に関連する業務プロセスとして、実地棚卸検証を次のようにまとめている。 〈経済産業省スタンダード:3.1.1実地棚卸検証〉 (経済産業省「経理・財務サービス スキルスタンダード」より)   実地棚卸検証では、まず、棚卸資産の現物を実際に数える実地棚卸を行う。そして、実地棚卸結果を「受払管理」で記録された帳簿残高と照合する。照合の結果、両者に乖異があった場合には、原因を究明し、帳簿残高を実際の残高に修正する。 今回のKPIは、実地棚卸によって判明した実際の残高と帳簿残高の差異を認識してから、最終的に帳簿残高を修正して会計処理を確定するまでの業務処理の日数に着目して、その効率性のレベルを問うものである。   定義を理解する 調査項目の文言から、KPIの定義を確認しよう。以下、KPIの項目を再掲する。 「実地棚卸における差異認識日」とは、実地棚卸で数量差異を認識した結果の報告日をさす。実在庫の数量と帳簿の数量に差異が発生してしまう原因は、現物管理上の原因と会計上の原因に概念上分類できる。しかし、実務では前者と後者が因果の流れになっていることが多い。 現物管理上の原因には、実地棚卸における現品の数え間違いやたな札集計間違いといった実地棚卸作業自体の不備、入出庫伝票の作成漏れや誤記入等の棚卸資産の受払検証における不備、盗難や紛失が発生する保管上の不備、自然現象としての目減りの看過等が考えられる。 会計上の原因には、入出庫伝票の二重転記や誤転記、入出庫伝票の紛失による転記漏れ、帳簿の誤集計等に起因する売上と仕入の誤計上、架空計上、計上漏れ等が考えられる。 このように、数量差異の原因を分類することは可能であるが、実務では現物管理と会計処理は一連の作業の流れでつながっており、現物管理に問題があるから会計処理に問題が起こると評価することも可能である。したがって、棚卸差異の原因を究明する場合は、個別の業務の連携を総体として捉える全体観を持って、原因の本質的な所在を付き止めることが必要となる。 「会計処理確定日」とは、帳簿の数量を実在庫の数量と整合させるため、差異原因に応じて適正に売上や仕入の修正計上、棚卸減耗費の計上を完了した日をさす。 「平均」とは、実地棚卸差異が複数ある場合、各差異について、「実地棚卸における差異認識日」から「会計処理確定日」までの日数を合算して、それを実地棚卸差異件数で割った平均をさす。平均の算出が煩雑ならば、前回行った実地棚卸の実績データに基づいて、最初に発見した「実地棚卸における差異認識日」から最後に解決した「会計処理確定日」までの日数を記入すればよい。   KPIの背景にある価値判断 スコアリングモデルにおいて、このKPIを設定したのはなぜか。 このKPIは、棚卸差異が発見された場合に、差異原因を早期に究明し、会計処理を完了することが望ましいという価値判断に基づいて設定されている。 そのためには、日常的な取引で発生する受払を正確に帳簿に反映すること、盗難や紛失が起こらない現物管理を行うこと、そして、実地棚卸自体の適正さを確保するという様々な管理が必要となる。 特に、実地棚卸の適正さを確保するため、職務分掌上、単独で実地棚卸担当者となるのが不適切なのは、次のような者である。 まず、倉庫担当者のように日常的に棚卸資産に接する者は、単独で実地棚卸を担当してはならない。なぜなら、その者が行った棚卸資産に対する不正行為が隠蔽され、発生している棚卸差異が認識されなくなってしまうからである。 他方、主管部門担当者、営業部門担当者等、利益によって業績評価される収益部門に所属する者も、単独で実地棚卸を担当してはならない。なぜなら、その者が利益を水増しするために行った棚卸資産の架空計上が隠蔽され、発生している棚卸差異が認識されなくなってしまうからである。 結局、経理財務部門、倉庫担当者、主管部門や営業部門を管理する上位の事業部管理者等が、複数名で現物を確認し、在庫集計表を作成する承認手続、職務分掌が必要となる。 この価値判断が共有されず、棚卸差異が発見されてもなかなか会計処理が確定しない会社は、次のような問題を抱えている可能性がある。 まず、日常的な会計処理の誤りの発見が遅れる場合、取引の正確な記帳を行う会計処理が適正に行われていないとか、その証憑が整理されていないことが考えられる。 また、盗難や紛失の発見が遅れる場合、日常の現物管理が適正に行われず、その記録が残っていないことが考えられる。 実地棚卸作業自体に問題がある場合、その能力、職務分掌に問題がある可能性がある。 このような問題が山積していると、棚卸差異の原因の究明作業が効率的に行うことができなくなり、決算を確定するのが遅れてしまう。 そこで、スコアリングモデルでは、棚卸差異の原因究明の効率性を比較するため、実地棚卸における差異認識日から会計処理確定日までの日数をKPIとした。そして、この日数が短い会社が長い会社よりも相対的に望ましいと考えている。   顧問先のKPIを測定してみる では、実際にどのような手続でKPIを測定するのか。 まず、読者は、顧問先の経理財務業務を観察し、一定の頻度で適正な実地棚卸検証が行われていることを確認していただきたい。 例えば、実地棚卸規程を閲覧し、職務分掌や承認手続の整備を確認することが考えられる。 それを前提に、例えば、実地棚卸結果報告書と棚卸差異の会計処理を確定した振替伝票を閲覧し、棚卸差異が報告された日から振替伝票の会計処理日までの日数を合計し、報告書数や伝票数で除して平均日数を確認していただきたい。 さて、読者の顧問先において、実地棚卸における差異認識日から会計処理確定日までの平均日数は何日になったであろうか。 *  *  * 次回は、「棚卸資産管理」を構成する複数のKPIから、「在庫管理」に関連する業務プロセスを評価するKPIを取り上げる。 (了)

#No. 39(掲載号)
#島 紀彦
2013/10/10

《速報解説》 研究開発税制の延長・拡充~民間投資活性化等のための税制改正大綱~

 《速報解説》 研究開発税制の延長・拡充 ~民間投資活性化等のための税制改正大綱~   税理士法人山田&パートナーズ 税理士 吉澤 大輔   1 はじめに 消費税率の引上げに伴い、経済対策と成長力強化のための総合的な対策として、日本再興戦略に盛り込まれている「民間投資を活性化させる税制措置等」を例年12月にまとめる平成26年度税制改正大綱から切り離して、前倒しで決定することになった。   2 改正の趣旨 日本再興戦略の日本産業再興プランにおける「科学技術イノベーションの推進」には、重点的に推進する施策の一つに「官・民の研究開発投資の強化」がある。 この施策には、「民間研究開発投資を今後3年以内に対GDP 比で世界第1位に復活することを目指し、研究開発税制の活用促進など企業の研究開発投資環境を整備する」と掲げられており、これを受けて「民間投資活性化等のための税制改正大綱」において、研究開発税制の改正が挙げられたのである。 なお、平成25年度税制改正事項を含む研究開発税制の留意点については、本誌既掲載の拙稿「〔理解を深める〕研究開発税制のポイント」(全4回)をご参照いただきたい。   3 改正の内容 平成25年度の税制改正において大幅な拡充が行われたが、研究開発投資を一層加速させるため、「試験研究費が増加した場合等の税額控除制度」における「増加型」について、増加率に応じて控除率を引き上げる措置に改められた。 また、「試験研究費が増加した場合等の税額控除制度」の適用期限を平成29年3月31日までに開始する事業年度に延長された。 青色申告書を提出する法人の増加試験研究費の額が比較試験研究費の額の5%を超え、かつ、試験研究費の額が基準試験研究費の額を超える場合には、増加試験研究費の額に30%(増加割合が30%未満の場合には、増加割合)を乗じて計算した金額の税額控除ができることとされた。 ① 増加型 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 (※1) 増加試験研究費の額とは、試験研究費の額から比較試験研究費の額を控除した残額をいう。 (※2) 増加割合とは、増加試験研究費の額の比較試験研究費の額に対する割合という。   ② 高水準型 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。   上記の内容を図で示すと、下記のようになる。 ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 (了)

#No. 38(掲載号)
#吉澤 大輔
2013/10/10

《速報解説》 生産性向上設備投資促進税制の創設~民間投資活性化等のための税制改正大綱~

 《速報解説》 生産性向上設備投資促進税制の創設 ~民間投資活性化等のための税制改正大綱~   税理士法人オランジェ 代表社員 税理士 石田 寿行 1 生産性向上設備投資促進税制の概要 ① 創設の背景 消費税率の引き上げに伴う駆け込み需要や反動減リスクに対応するとともに、民間投資を活性化し、経済の持続的な成長につなげるため「民間投資活性化等のための税制改正」(平成25年10月1日与党税制改正大綱)により生産性向上設備投資促進税制が創設された。 創設された背景には、企業の設備投資の水準が長期にわたり減価償却費やキャッシュフローの範囲内に留まったことにより設備が老朽化・劣化し、生産性が伸び悩んだことがある。こうした状況に対応するため、生産性の高い先端的な設備への投資や、生産ラインやオペレーションの改善のための設備への投資を対象に、特別償却(即時償却)又は税額控除できる制度を創設したものである。 ② 制度の概要 青色申告書を提出する法人が、産業競争力強化法(仮称)施行の日から平成29年3月31日までに生産等設備を構成する先端設備(後述2①)及び生産ラインやオペレーションの改善に資する設備で一定の規模(後述2②)以上のものの取得等をして、国内にあるその法人の事業の用に供した場合には、特別償却又は税額控除の選択適用ができる。ただし、税額控除における控除額は、当期の法人税額の20%を上限とする。 特別償却の割合、税額控除の割合は以下の通りである。 (注) 平成26年4月1日前に終了する事業年度において産業競争力強化法施行日から平成26年3月31日までの間に対象資産の取得をした場合には、平成26年4月1日を含む事業年度において特別償却又は税額控除ができる。   2 対象設備の具体的内容 対象となる先端設備及び生産ラインやオペレーションの改善に資する設備とは以下のものをいう。 ① 先端設備 ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 (注1) 中小企業者等に限る。 (注2) 販売開始年度が取得等をする年度及びその前年度であるモデルを含む。 (注3) 機械装置のうち中小企業者等が取得等をするソフトウェア組込型機械装置については10年以内に販売が開始されたもので最新モデル及び最新モデルの1つ前のモデルを最新モデルであるための要件とする。   ② 生産ラインやオペレーションの改善に資する設備 生産ラインやオペレーションの改善に資する設備とは、機械装置、工具、器具備品、建物、建物付属設備、構築物及びソフトウェアで、上記の取得価額が一定金額以上ある要件を満たすもののうち投資計画における投資利益率が15%以上(中小企業者等にあっては、5%以上)であることについて経済産業局の確認を受けたものをいう。   3 中小企業投資促進税制の拡充 中小企業投資促進税制の適用期限を平成29年3月31日まで3年間延長し、生産性向上設備投資促進税制の対象設備等に該当するものについては、即時償却又は7%(資本金3,000万円以下の特定中小企業者等であれば10%)の税額控除ができる。 (了)

#No. 38(掲載号)
#石田 寿行
2013/10/08

《速報解説》 民間企業等によるベンチャー投資等の促進措置(新事業開拓事業者投資損失準備金の損金算入及び登録免許税の軽減措置)~民間投資活性化等のための税制改正大綱~

 《速報解説》 民間企業等によるベンチャー投資等の促進措置 (新事業開拓事業者投資損失準備金の損金算入及び登録免許税の軽減措置) ~民間投資活性化等のための税制改正大綱~   弁護士 木村 浩之   1  はじめに 昨年(平成24年)12月の安倍政権の発足後、日本経済の再生に向けて、円高・デフレから脱却し、強い経済を取り戻すために必要な経済対策や成長戦略の策定をすることを目的として、官邸主導の下、内閣に日本経済再生本部が設置された。 そして、この日本経済再生本部で議論された内容を踏まえて、平成25年6月14日には、「日本再興戦略」(新たな成長戦略)が閣議決定されている。 今般、日本経済再生本部では、この新たな成長戦略の実現に向けて、臨時国会における産業競争力強化法案の提出などを予定しているところであるが、成長戦略の一つの柱として、産業の新陳代謝を促すことを目標とする日本産業再興プランが策定されている。 この日本産業再興プランには、民間投資の活性化、ベンチャー投資の促進、事業再編の促進などが具体的な政策目標として掲げられており、その一環として、企業によるベンチャー投資等を促進するための税制の創設が提言され、それが今回の「民間投資活性化等のための税制改正大綱」に盛り込まれた形になっている。 以下、新たに創設される予定のベンチャー投資等の促進税制について解説する。   2 ベンチャー投資促進税制(投資損失準備金の損金算入) ベンチャー企業が大きく成長するためには、設立から調査研究を経て、事業としての拡大を図る時期(事業拡張期)において、専門的なノウハウを有するベンチャーファンドからの資金調達等が重要であるとされている。そして、ベンチャーファンドを活性化するためには、ファンドに投資する企業(法人投資家)が必要不可欠である。 そこで、今回の税制改正では、この投資を促進するために、ベンチャーファンドに資金を供給する法人に対して、税制面での優遇措置が講じられることになる。 具体的には、投資先が新規性を有する事業を行う中小企業であり、事業拡張期にあることといった一定の要件を満たすベンチャーファンド(投資事業有限責任組合)を通じてベンチャー企業に出資して株式等を取得した法人は、その投資の失敗による損失に備えて、株式等の帳簿価額の80%までを損失準備金(仮称:新事業開拓事業者投資損失準備金)として損金算入することが認められることになる(適用は平成26年4月1日以後終了事業年度)。   3 創業促進のための登録免許税の緩和 日本では(特に地方において)企業の開廃業率が低迷しており、それによって地域経済が停滞していることが指摘されている。これを打開するためには、地域に密着した企業の創設を促進することで、地域経済の活性化を図ることが重要であるといえる。 そこで、今回の税制改正では、創業手続に係るコストを低減することで創業を促進するために、会社設立時の登録免許税を緩和する措置が講じられることになる。 具体的には、国の認定を受けた市区町村において、その支援を受けて株式会社の設立をする場合は、その設立登記に係る登録免許税の税率が通常の2分の1である1,000分の3.5(最低税額75,000円)に軽減されることになる(適用は産業競争力活性化法(仮称)の施行日より平成28年3月31まで)。 (了)

#No. 38(掲載号)
#木村 浩之
2013/10/04

monthly TAX views -No.9-「デジタル財の消費税課税の検討を急げ」

monthly TAX views -No.9- 「デジタル財の消費税課税の検討を急げ」   中央大学法科大学院教授 東京財団上席研究員 森信 茂樹   消費税率の引上げが決まると、平成26年度税制改正を決める党税調の議論が始まる。それに合わせて、政府税制調査会も議論を始める。 この場での主要議題は、番号制度(マイナンバー)と国際課税だ。国際課税分野での課題といえば、総合主義・帰属主義の問題とBEPSの問題にわが国がどう対応していくかという点だが、忘れてならないのは、デジタル財の国境を越えた取引への消費税をどう課税するのかという問題である。 実はこれについては、昨年の秋口に、筆者も加わって、財務省で研究会が開催され、その成果をまとめてある。OECDのパブコメ部分を加えた上で公表ということなので、未だ公表されていないが、筆者の個人的見解は以下のとおりである。 *  *  * まず現状の認識である。わが国消費税法では、デジタル財のようなサービスの取引については、サービスの供給地で課税することとされている(消費税法4条3項2号等)。そこで、日本の消費者が海外の事業者から音楽の配信など直接デジタル財を購入する場合には、事業者は海外にいるので課税されない(不課税)。 この結果、電子書籍の配信事業を例にとると、アマゾンや楽天koboなど外国の事業者を通じてサービスを購入する場合と、ソニーなど国内事業者を通じて購入する場合との間に課税の公平性の問題が生じていることになる。 これは、公平性を損なうだけでなく、税収にも不測の影響を及ぼすことになる。最終的には、国家間の税収配分という問題にも発展していきかねないので、消費税率の引き上がるこの機会をとらえて対策を講じる必要がある、これが今日の状況である。 *  *  * この問題の対応に当たって参考になるのは、EUの課税制度である。EUは、OECDの検討を経て、2003年7月より、e-VATと称する新たな消費税(付加価値税)制度を導入し、国境を越えるデジタル財の取引に課税することに成功した。 具体的には、デジタル財の課税地について、サービス提供地から消費者がサービスを受ける場所に変更することによって、EU各国が課税地となり、外国の事業者の納税義務が発生することとなった。 次に、BtoB取引の場合には、輸入事業者自身が申告をするリバースチャージ方式を導入した。輸入事業者は、消費税申告時に納税と同時に仕入税額控除になるので、これまで以上に税負担が増えるわけではない。 BtoCについては、外国の事業者をEU域内1ヶ国に登録させ、そこに納税させる方式(登録制)をとった。外国の事業者がEUの1ヶ国(例えばルクセンブルク)に登録する義務を課し、彼らがサービスを提供する国(例えばドイツ、フランス、英国・・・)の消費税を、代金に上乗せして徴収させることとした。 徴収した税額は、登録した国(ルクセンブルク)に納付され、納付を受けた国は、そのVATを、取引額に応じて消費国(ドイツ、フランス、英国・・・)ごとに配分するのである。 これらの税務執行は、おおむね適切に運営されているようだ。 すでにわが国では、先に述べたような内外の配信サービス業者のイコールフッティングの問題を生じさせており、事業者間取引(BtoB取引)についてはリバースチャージ方式、対消費者取引(BtoC取引)についてはわが国の消費者にサービスを提供する事業者を登録させる登録制を軸として議論を進める必要がある。 もっとも、わが国ではリバースチャージ方式は初めての経験であり、うまく導入できるかという問題がある。そこで、BtoBについても登録制で対応すべきだという考え方もある。 一方で登録制については、日本の消費者を相手に直接デジタル財の取引をする外国の事業者をどう把握し、登録させるか、登録しない事業者はどうするのか、徴収漏れがあった場合にはどうするのか、といった執行面での問題がある。完全な制度は望むべくもないが、何とか知恵を出して乗り越えていく必要がある。 この問題は、事業者間の不公平、課税の公平性という問題だけでなく、わが国の課税権の確保という観点から、しっかり議論を行っていくことが求められる。 (了)

#No. 38(掲載号)
#森信 茂樹
2013/10/03

法人・個人の所得課税における実質負担率の比較検証 【第2回】「実質負担率の比較と有利不利の境界線」

法人・個人の所得課税における 実質負担率の比較検証 【第2回】 「実質負担率の比較と有利不利の境界線」   (株)よつばコンサルティング 税理士 石渡 晃子 税理士 青木 岳人   はじめに 第1回では、法人の所得に対する課税制度と個人の所得に対する課税制度を整理した。そのうえで、どちらの形態をとるのが有利なのか、これは実質負担率を計算しなければ、比較できないことも述べた。 税理士業務を行うなかでしばしば遭遇するのが、法人の所得に対する税と個人の所得に対する税、いずれが有利なのか、という問題である。 いわゆる「法人成り」を行うにあたって有利となるラインはどこか、という問題もそのひとつである。これは個々人の家族体系や事業規模形態にも左右されるため、一概にラインを示すことは難しいが、「所得1,000万円」を超えるか超えないかがひとつの目安とされることが多い。 では、その1,000万円という数字は、何を根拠に導き出した金額であろうか。 そこで本連載の第2回では、実際に課税所得が①500万円の場合、②1,000万円の場合、③2,500万円の場合、④5,000万円の場合、⑤1億円の場合、について実質負担率を計算し、比較と検討を行うこととする。   1 実質負担率の計算 前回は「課税所得が1,000万円」の場合について、簡単に実質負担率の計算を行った。今回は、もう少し細かい設定で計算してみよう。 前提として、①個人の所得はすべて事業所得(物品販売業)かつ青色申告を行うものとし、②法人の規模は資本金2,000万円、従業員数は50人とし、③個人と法人、いずれの場合も東京都23区内に納税地を置き、④事業税については1年目と仮定して翌年の費用効果は考慮外とする。また、⑤個人の所得に対する税額の計算においては、課税所得から青色申告特別控除65万円のみを控除し、各種所得控除については考慮外とする。   同様に、いくつかの課税所得パターンによる実質負担率を下記に示す。 現況税制下での実質負担率 ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 【実質負担率のシミュレーション】 個人の所得の場合 法人の所得の場合 【実質負担率の推移】   2 実質負担率の比較と検討 個人であろうと法人であろうと、営む事業の内容は何ら変わらない。しかし、「個人」と「法人」、課税所得の入る箱が変わるだけで、つまり、税の種類が異なるだけで、上記のように実質負担率にはこれほどの差が生じる。 課税所得が500万円の場合、個人の実質負担率のほうが8.12%低く、課税所得1,000万円でもまだ個人の実質負担率のほうが1.57%低い。 一般的に言われる「1,000万円」のラインで実質負担率を比較してみると、個人の実質負担率の方が低い。 ただし、仮に法人で得た1,000万円の利益すべてを個人へ給与として分配した場合、個人に対する税においては給与所得控除の控除があるため23%の税率までの適用となり、事業所得として得た場合より一段階下のブラケットまでの税率で済む。また、給与所得であるため事業税が課されない。実質負担率のみを比較すれば個人の形態をとるほうが若干有利なものの、1,000万円が有利なラインとされる所以であろう。 さて、話を実質負担率の比較に戻そう。 課税所得2,000万円のラインで、個人と法人の有利不利が完全に入れ替わり、課税所得2,500万円では5.17%、課税所得5,000万円では8.22%、課税所得1億円では10.32%もの開きが出てくる。単に法人形態をとるだけで、である。 これは、所得税は超過累進税率により最高40%まで所得税が課されるのに対し、法人税は比例税率により25.5%で頭打ちになることが大きな理由である。 所得税の場合、課税所得500万円の場合を1とすると、課税所得が1億円となると、所得ベースは20倍であるにもかかわらず、税額は83.5倍にもなる。課税所得1,000万円で3.5倍(2倍※カッコ内倍数は課税所得の倍率を示す。以下同様)、2,000万円で11.2倍(4倍)、2,500万円で15.7倍(5倍)、5,000万円で38.3倍(10倍)と、超過累進税率を採用するがゆえ、課税所得の伸び以上に税額が大きく伸びる。 一方、法人税の場合、課税所得500万円の場合を1とすると、課税所得が1億円となると、所得ベースは20倍であるのに対し、税額は32.9倍となる。課税所得1,000万円で2.3倍(2倍)、2,000万円で5.7倍(4倍)、2,500万円で7.4倍(5倍)、5,000万円で15.9倍(10倍)であり、比例税率を採用するため、課税所得の伸びと税額の伸びは比例関係に近くなる。800万円以下の所得については15%の軽減税率が適用されるため、完全な比例関係にはならないが、所得税と比較すれば、かなり比例関係に近いものとなる。 他の税目もみてみよう。 事業税(法人の場合は暫定措置のため地方法人特別税もあわせて考える)をみると、法人の所得に対する課税のほうが倍ほど大きい。 しかし住民税については、個人住民税は10%の比例税率だが、法人住民税(法人税割額)は課税標準を法人税額とするため、その税率は約2.6%(*1)~約5.3%(*2)であり、均等割額を除いて比較すれば、個人の所得に対する課税のほうが倍ほど大きい。 (*1) 法人税15%(軽減税率)×都民税17.3% (*2) 法人税25.5%×都民税20.7%(超過税率)   個々の税のみを比較すれば、個人のほうが有利、法人のほうが有利、と分かれるが、全体としてみれば、課税所得2,000万円のラインで法人で課税所得を得るほうが実質負担率は低くなる。 このように、事業を行い経済的利益を獲得しその経済的利益を課税所得として税が課される、という実態そのものは同じであっても、それを個人として獲得するのか、法人として獲得するのか、により税額が異なり、実質負担率は大きく変わることとなる。 その仕組みの是非はさておき、これをうまく利用して節税へつなげたいのは言うまでもない。 今回のシミュレーションの場合、課税所得500万円では、実質負担率は8%程度個人が有利であり、その税額には40万円ほどの乖離がある。これが課税所得1億円ともなると、実質負担率は10%程度法人が有利となり、その税額には1,000万円以上もの乖離があるのである。 最後に、平成28年1月1日時点における上記同様のシミュレーションを行ってみよう。 平成28年1月1日時点税制下(予定)での実質負担率 ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 【実質負担率のシミュレーション】 個人の所得の場合 法人の所得の場合 【実質負担率の推移】   平成28年1月1日現在では、現況の税制とは①所得税の最高税率は45%(所得4,000万円超のブラケット追加)となる点、②復興特別法人税課税の適用期間は終了となる点が異なる。 つまり、個人の所得に対する課税は強化され、法人の所得に対する課税は下がる傾向にある。 この場合、まず、個人と法人の有利不利が入れ替わるラインが変化する。 また、課税所得が大きくなるに従い、その負担率の乖離も現況より大きくなる。1億円の課税所得の場合、現況では10%程度の差であるが、平成28年1月1日にはその差が約16%にまで大きくなる。 このように、個人で所得を得るか法人で所得を得るかの有利不利は、その時代によって変化するのである。 *  *  * 以上第2回では、同じ“事業を行い獲得した所得”であっても、個人・法人、どちらの形態で獲得したのかにより、税金の実質負担率が異なることについて比較と検討を行った。 では、個人に対する所得について、同じ課税所得であれば必ず同じ実質負担率となるのであろうか。 また、超過累進税率をとる以上、課税所得が大きくなればなるほど、実質負担率は最高税率に限りなく近づくのであろうか。 両者とも、答えは否である。 本連載の最終回となる第3回では、所得税に焦点をあて、一部分離課税を採用するが故の超過累進税率の矛盾点について考察する。 (了)  

#No. 38(掲載号)
#石渡 晃子、青木 岳人
2013/10/03

〔しっかり身に付けたい!〕はじめての相続税申告業務 【第6回】「相続財産を確定し評価することの意義」

〔しっかり身に付けたい!〕 はじめての相続税申告業務 【第6回】 「相続財産を確定し 評価することの意義」   税理士法人ネクスト 公認会計士・税理士 根岸 二良   〔相続税の課税対象は民法上の相続財産とは異なる〕 法律上、相続人になるは誰なのか(相続人の範囲)、その確定手続については、本連載の第3回から第5回にかけて説明してきた。 今回からは、相続の対象となる財産(*1)にどのようなものがあり、その評価をどうするか、という点について説明を行う。 まず、相続の対象となる財産であるが、基本的には、他界した人の所有するすべての財産が対象となる(民法896条)。 なお、死亡保険金、死亡退職金は、法律上は基本的には相続の対象とならないため、遺産分割協議の対象にはならない。また、生前に贈与した財産は、他界した人の財産ではなくなっているため、これも相続の対象とはならない。 ただし、相続税の計算上は、法律上の相続財産だけではなく、死亡保険金・死亡退職金(相続税法3条)、暦年課税制度を適用した相続前3年以内贈与(相続税法19条)(*2)、相続時精算課税制度を適用した贈与(相続税法21条の15)は、相続税の対象となる。   〔申告実務における財産評価の重要性〕 相続の対象となる財産が「確定」できたら、次に、その「評価」を行う必要がある。 相続財産の評価を行う目的は、遺産分割協議(どの相続人がどの財産を相続するかという話合い)を行う上で、どの財産がいくらの価値があるかわからないと意思決定ができないためである。 また、相続税の計算を行う上で、対象となる財産の評価がわからないと、相続税申告が必要か否か、また必要な場合、相続税がいくらになるのか、計算ができない。 このように相続対象となる財産について、「遺産分割協議」、「相続税申告」という2つの観点から評価を行う必要がある。 なお、遺産分割協議における財産評価は、通常、取引価額を意味し、相続税申告においては財産評価基本通達における評価を通常意味するため、評価額が異なる可能性がある。 具体的には、土地の相続税評価は、多くの場合、路線価を基礎にして評価を行う。一方、遺産分割協議における土地評価は、取引価額であるため、通常、路線価を基礎にして評価した金額よりも大きくなる(*3)。 実務上、家庭裁判所で争いになっているような場合でなければ、相続税評価額を遺産分割協議における評価額とみなして進める場合や、相続税評価額について一定の調整を行い(土地については相続税評価額を80%除することにより公示価格ベースに引き直すなど)、調整後評価額をもって遺産分割協議における評価額として協議を行う場合が多いと思われる。   〔相続税申告の有無を把握しスケジュールを立てる〕 相続税申告が必要か否かでスケジュールが異なるため(*4)、相続税申告業務の依頼を受けた初期の段階で、相続税の対象となる財産の範囲と評価がおおよそ把握できたら、相続税の基礎控除と比較することで、相続税申告の必要の有無、及び相続税の概算額について、依頼者に伝えた方がよいであろう。 ただし、その後に相続税の対象となる財産が発見されたり、評価が異なる結果となった場合には、相続税申告の必要の有無、相続税の概算額について、異なる結果となる可能性があるため、慎重に対応することが必要である。 (了)

#No. 38(掲載号)
#根岸 二良
2013/10/03

交際費課税Q&A~ポイントを再確認~ 【第10回】「法人税申告書[別表15]記載のポイント」

交際費課税Q&A ~ポイントを再確認~ 【第10回】 (最終回) 「法人税申告書[別表15]記載のポイント」   公認会計士・税理士 新名 貴則   1 交際費課税の改正と別表15の様式変更 平成25年度改正により、交際費課税(平成25年度末まで)は次のとおりに改正された。 【改正後の中小企業の特例のイメージ】   これに伴い、法人税申告書別表15「交際費等の損金算入に関する明細書」の様式も変更されている。 平成25年4月1日以後終了事業年度分の別表15の様式は、次のとおりである。 【法人税申告書別表15「交際費等の損金算入に関する明細書」】 ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます(国税庁ホームページへ)。 新しい別表15では、上記の改正に対応するため、下記のように(2)と(3)の文言が変更されている。   2 別表15のケーススタディ 次の事例に基づいて、別表15の記載上の留意点を解説する。 ◆ケースⅠ◆ 資本金5億円の場合 資本金が1億円を超えているため、交際費等は全額が損金不算入となる。これは平成25年度税制改正の前後で変更はない。また、別表15の記載の仕方も変更はない。 この場合、交際費等の10,000,000円に対して定額控除限度額はゼロであり、10,000,000円全額が損金不算入となる。 (別表15の記載例)   ◆ケースⅡ◆ 資本金1億円の場合 (資本金5億円以上の大法人の完全子会社ではない) 資本金が1億円以下であるため、一定の控除額が認められる。ただし、上記で述べたとおり平成25年度税制改正により控除額が改正されており、その適用のタイミングによって次のとおり控除額に違いが生じるため、注意が必要である。 ① 平成25年3月31日以前に開始した事業年度の場合 この場合は交際費課税に係る改正の適用前であるため、定額控除限度額は600万円となる。 また、交際費等の支出額と定額控除限度額のうち少額の方に90/100を乗じた金額が、損金算入限度額となる。 (別表15の記載例) ② 平成25年4月1日以後に開始した事業年度の場合 この場合は交際費課税に係る改正の適用後であるため、定額控除限度額は800万円となる。 また、交際費等の支出額と定額控除限度額のうち少額の方の全額が、損金算入限度額となる。 (別表15の記載例)   (連載了)

#No. 38(掲載号)
#新名 貴則
2013/10/03
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