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企業の香港進出をめぐる実務ポイント 【第6回】「香港の労務制度・市場環境」

企業の香港進出をめぐる実務ポイント 【第6回】 「香港の労務制度・市場環境」   アースタックス税理士法人 アースタックス・ビジネスコンサルティング(香港)有限公司 税理士 白水 幹範   香港の労務制度 1) 雇用関係 香港における労働者の権利義務については、雇用条例(Employment Ordinance)においてその基本的な事項が規定されている。 雇用条例における重要な事項については、以下のとおりである。 ① 雇用契約 雇用契約とは、使用者と労働者との間で締結される契約である。 契約の形態は、口頭でも書面でも有効とされているが、トラブル防止のためにも雇用契約書を作成するのが一般的である。 雇用契約書には、通常以下のような項目が含まれる。 ② 休息日 労働者は、7日ごとに少なくとも1日の休息日が与えられる。 ③ 法定休日 勤続期間にかかわらず、労働者は以下の法定休日が与えられる。 ④ 年次有給休暇 年次有給休暇の権利日数は、労働者の勤続年数に応じて7日から最高14日まで定められている。 ⑤ 傷病手当 継続的契約に基づき雇用される労働者は、有給傷病日を累積することができ、条件を満たす傷病休暇をとった場合、平均日額賃金の5分の4の傷病手当を受給することができる。 ⑥ 母性保護 産前産後休暇は連続10週間を基本とし、条件を満たす場合、平均日額賃金の5分の4の産前産後休暇手当を受給することができる。 ⑦ 年末手当 継続的契約に基づき雇用される労働者で、雇用契約において年末手当を受給する権利を持つ者は、雇用契約に従って年末手当を受給することができる。 ⑧ 雇用契約の解除 雇用契約は、使用者がしかるべき予告をする又は予告手当を支払うことにより解除することができる。なお、労働者が正当かつ合理的な命令に故意に従わないなどの一定の場合には、使用者は予告又は予告手当なしに労働者を懲戒解雇できる。 ⑨ 雇用の保護 労働者は、不当解雇・雇用契約の条件の不当な変更などがあった場合で一定の条件に該当するときは、復職又は再雇用命令あるいは雇用終止金などの救済の請求ができる。 ⑩ 解雇補償金及び長期服務金 以下の条件に該当する場合、労働者は解雇補償金又は長期服務金を受給できる。なお、労働者は、両方を受給することはできない。 〈解雇補償金〉 〈長期服務金〉 〈解雇補償金及び長期服務金の金額〉 ⅰ (最終月額給与(又は直近12ヶ月の平均給与)×2/3)×就業年数 ⅱ (22,500香港ドル×2/3)×就業年数 上記のいずれか少ない金額となる。   2) 社会保障制度 ① 強制退職積立金制度(MPF:Mandatory Provident Fund) MPFとは、退職に備えるための確定拠出型の強制積立年金制度で、使用者と労働者がそれぞれ月額給与の5%(1,250香港ドルを上限)ずつを信託会社(Trustee)に拠出する。 雇用契約に基づき60日以上勤務する18歳から65歳までの労働者が加入する義務があり、拠出した積立金は原則として65歳まで受給することができない。 ② 労働者災害補償制度 使用者は、労災保険への加入が義務付けられている。 労災保険の保険料は、全額使用者が負担することとされており、労働者の給与から控除することはできない。   3) VISA 香港において就労する場合には、以下のような就労可能なビザの取得が必要となる。 また、香港に180日以上滞在する場合には、身分証明として香港IDカードの取得及び所有が義務付けられている。   香港の市場環境 1) 為替管理 ① 為替相場 為替相場は、1982~83年にかけての相場の大暴落を契機として、1983年から1米ドル=7.8香港ドルの米ドルペッグ制が採用されていたが、2005年5月からは1米ドル=7.75~7.85香港ドルの間での小幅な変動が認められている。 ② 外貨管理 香港においては、中国にみられるような厳格な外貨管理制度は存在せず、外貨の流出入に対する規制はない。   2) 貿易 ① 輸出入管理 香港は自由貿易港であるため関税もなく、輸出入に際し規制のある一部の品目(危険な薬物、戦略物資など)を除き、自由に輸出入することが認められている。 ② CEPA(Closer Economic Partnership Arrangement) 2003年6月29日、中国本土と香港間における自由貿易協定である「経済貿易緊密化協定」が締結された。中国本土と香港における経済融合、経済協力の強化を目的としており、毎年その内容は更新されている。 CEPAの具体的なメリットとしては、貨物貿易における香港製品の中国輸入関税ゼロ、サービス貿易における中国参入の規制緩和などの優遇措置、貿易投資の手続の効率化の促進などがある。 外国企業にとっては、香港に会社を設立した上で中国本土に投資することで、CEPAのメリットを享受しながら中国本土におけるビジネスチャンスの拡大を図ることができる。   3) 香港上場 2012年8月6日、株式会社ダイナムジャパンホールディングスが、香港証券取引所に上場した。 日本では認めてこられなかったパチンコホール業界の上場ということもあり、大きな話題となった。 日本企業にとって、中国本土、アジア地域に成長機会を求める動きが活発となる中、アジアにおける成長戦略の一環として、日本企業の香港上場に対する関心は今後もますます高まってくるものと考えられる。 ① 上場主体 以前は、香港証券取引所への上場主体として、香港、中国本土、バミューダ及びケイマンが明文にて認められていたのみであったが、2010年の改正により、日本企業も上場主体として認められることとなった。 それまで日本企業の香港上場といえば、イオングループ現地子会社のように現地法人を通じてのものであったが、当該改正により、2011年4月14日にはSBIホールディングス株式会社が日本企業として第1号の上場を果たしている。 ② 株式市場 香港証券取引所には、一般的な市場である「メインボード」と新興企業向けの「GEM」(Growth Enterprise Market)の2つの株式市場がある。 ③ 上場基準(財務基準)   (連載了)

#No. 23(掲載号)
#白水 幹範
2013/06/13

〔知っておきたいプロの視点〕病院・医院の経営改善─ポイントはここだ!─ 【第10回】「週末の病床利用率と救急医療」

〔知っておきたいプロの視点〕 病院・医院の経営改善 ─ポイントはここだ!─ 【第10回】 「週末の病床利用率と救急医療」   東京医科歯科大学医学部附属病院 特任講師 井上 貴裕   1 病床利用率の意義 病院経営を語る際に、病床利用率は切り離すことができない。固定費が多くを占める医療機関の財務特性から考えて、一定の患者数の存在は不可欠である。 しかし、この病床利用率は、治療終了後に在院日数を引き延ばして維持すべきものではない。実際に、延べ入院患者数と医業利益率には正の相関がほとんどみられず、少しくらい入院期間を延ばしたからといって抜本的に業績が良くなることがないことを意味している。 新入院患者の獲得こそが業績向上につながるのであり、治療終了後はすみやかに退院させることが期待される。   2 延べ入院患者数を重視すべきではない3つの理由 延べ入院患者数を重視して治療終了後の入院を引き延ばすことは、患者にとって不利益をもたらすことはもちろん、病院経営にもマイナスの影響を及ぼす。 まず1つ目は、入院診療単価が下落することである。 DPC/PDPSという環境下では、特に入院期間Ⅱ以降は単価の下落が著しい。診断群分類による特性はあるが、入院期間Ⅲ以降の点数設定では固定費の回収もおぼつかないであろう。 2つ目は、DPC/PDPSでは機能評価係数Ⅱに効率性係数があり、在院日数が長いことはDPC対象病院の中で相対的に低い係数評価が行われる。 3つ目は、看護必要度が低下する可能性があるからだ。 2012年度改定で、7対1入院基本料を算定する場合には、看護必要度15%以上に引き上げられた。ホテル代わりに患者を置くのではなく、一定の重症者が入院患者の前提になっていることを忘れてはならない。政府は、想定よりもはるかに設置された7対1入院基本料の絞込みを考えている。 今後も看護必要度の高低が診療報酬における評価に用いられることが予想されることから、7対1入院基本料を算定するならば、20%以上に引き上げられても対応できる運営を行うことが望ましい。   3 週末の救急一泊入院と救急搬送患者地域連携紹介加算 入院期間を意図的に引き延ばさない方針を貫くと、新入院患者を獲得できないなど、病床利用率が低下する現象がみられる可能性は否定できない。特にクリニカル・パスが普及した昨今、平日は入院患者が多いが、週末には病床利用率が著しく低下するのが一般的である。平日には90%を超えるが、週末だけで集計すると60%台の前半に下落してしまうことも少なくない。月曜日の予定入院が多く、金曜日には退院する患者が多いことと関係している。 この状況を改善するために、入院日を水曜日にずらして、週末の病床利用率を維持するなどの姑息な手段はお勧めできない(治療上、また患者にとってそれが便益をもたらすのであれば問題はない)。つまり、週末の病床利用率低下は、予定入院が多い今日の急性期病院にとって不可避な性格があり、甘受すべきであるともいえる。 しかし、対策は存在する。 それは、週末に救急医療に注力することであり、一泊二日の経過観察入院等を励行することである。 地域の医療機関等にとって、週末は人手が少なく医療資源が不足するときでもある。ここで、救急をしっかりと受け、地域の医療を支えることは極めて重要な意義がある。ただし、月曜日には入院予約が入っており、病床が埋まる予定なのであろう。ここで満床として断ってしまうのではなく、月曜日の朝には転院できる仕組みを地域を巻き込んで構築していくことが期待される。 その際に有効なのが、「救急搬送患者地域連携紹介加算及び同受入加算」である。 緊急入院後7日以内にあらかじめ連携する他の医療機関に転院する場合の評価であり、今回改定で要件が緩和され、また点数が2倍になった。当該加算を用いて地域で救急の連携を強化していけば、月曜日の朝に転院という仕組みを整えることができる可能性が広がる。 《救急搬送患者地域連携紹介加算・受入加算》 救急搬送患者地域連携紹介加算については、今後、DPC/PDPSにおける地域医療係数の1項目として評価されるものと、筆者は予想している。脳卒中の連携パスと似た性格を有しており、地域で救急医療を完結する際の評価として捉えることができる。加算点数の多寡ではなく、地域に対する貢献という評価軸で当該加算を捉えることが望ましい。 (了)

#No. 23(掲載号)
#井上 貴裕
2013/06/13

会計事務所 “生き残り” 経営コンサル術  【第6回】「『誰だって簡単に経営計画書が作成できますよ』という甘い言葉に誘われて・・・」

会計事務所 “生き残り” 経営コンサル術 【第6回】 「『誰だって簡単に 経営計画書が作成できますよ』 という甘い言葉に誘われて・・・」   株式会社 経営ステーション京都 代表取締役 京セラ株式会社 元監査役 公認会計士・税理士 田村 繁和   前回も書かせていただきましたが、その昔、経営計画シミュレーションが話題になりました。 これが出現する以前は、経営コンサルティングのブームがありました。つまり、「記帳代行の時代はもう古い。これからはコンサルができなければ生きていけないよ」と叫ばれ始めたのでした。 しかし、全国の会計事務所は、この業務ができなくて、コンサルは急速に萎んでいきました。 これに代わって出現したのが、経営計画のシミュレーションだったのです。 謳い文句としては「コンサルは難しくて会計事務所では無理がある。しかし経営計画は本業だ。一定の事項を入力していけば、素人だって簡単に3年先の経営計画書が作れます」というものでした。 コンサルに失敗した事務所は、この謳い文句に飛びつきました。 私も飛びついたのですが、1,000万円のお金がなかったので途中でリタイヤしました。 上場会社の監査役になって、この言葉の矛盾が解けてきました。 まずおかしいことは、「一定事項を入力すれば誰だってできる」ということです。 経営計画書は、それぞれの部署の責任者が、これから1年間の自分の思いを数字で刻み込むものです。そのためには、時間をかけ、考え抜いて、計画の数字を出していきます。 そして、出した数字を検討会で事前に叩いてから発表します。 現実の会社では、こんなふうに数字を出してくるのです。それなのに、簡単に入力すれば経営計画の数字が出てくるということ自体、とんでもない話なのです。 私はこの現実が分からないために、コンピュータで出てきた3年先の経営計画の数字を頭から信じ込んでしまったのでした。 次におかしいと思ったことは「現場が作れないから会計事務所が作ってあげる必要がある」という販売会社の主張です。 本来、経営計画は、会計事務所が数字をいじくり回して作るのではありません。現場の責任者が作るものなのです。 現場が作ることによって、自分の所はどのような経費が支払われているのかが分かってきます。経費を節約することも、利益を出すことも、すべて現場でしか分からないことなのです。 それを会計事務所が、現場も知らないで作れるはずがないのです。 再上場を果たした日本航空の新聞記事を読んでいますと、まさにこのような話が書いてありました。 今回はたまたま経営計画についてですが、何事も、会計業界の中の机上の話ではなく、実際の企業の生の話をベースに物事を考えていくことが、経営コンサル成功への第一歩であろうかと思います。 (了)

#No. 23(掲載号)
#田村 繁和
2013/06/13

NPO法人 “AtoZ” 【第11回】「NPO法人の資金調達」

NPO法人 “AtoZ” 【第11回】 「NPO法人の資金調達」   税理士 岩田 聡子   1 NPO法人が事業を継続するために NPO法人は非営利活動を目的とするため、その活動が社会貢献である以上、収益を上げてはいけないという考え方がある。 ただ、NPO法人であっても、会員のため、従業員のため、サービスの提供を受けている方々のため等、事業を継続していかなければならない。 事業を安定させるためには、ある程度の資金を法人内に積み立てておくことも必要である。 NPO法人の収益は分配されることがないため、社会貢献活動を通じて社会に還元されていくことから、収益を上げることは必ずしも悪いことではなく、事業を継続し、より一層の公益に資していくためにも必要な活動となる。 社会貢献だからといって、資金繰りを考えず、理事長や理事からの借入れで事業を続けることは、NPO法人がどんなにすばらしい活動をしていても、その活動が長く続かないこととなる可能性が高いと思われる。 また、NPO法人の活動に付随する施設の取得、建設等のためにまとまった資金が必要となる場合があることも考えなければならない。 そのため、金融機関の融資を受けることもNPO法人の活動のためには必要な活動なのである。   2 NPO法人が融資を利用するために NPO法人であっても、金融機関の融資を受けることができる。 そのためには、一般の企業と同様、金融機関の審査を受けなければならない。 また、金融機関の審査には、一般企業同様の経営計画、財務体質が要求される。 認定NPO法人の申請の時もそうであったが、一般企業と同様の複式簿記による正確な財務諸表の作成が必要とされる。 また事業計画についても、NPO法人の活動予算書等をもとに中期、長期の計画を立てなければならない。 このことはNPO法人にとっても事業の内容を見直す良い機会になるはずである。 昨今、企業数が減少していることもあり、金融機関の中にはNPOに目を向け、NPOに対する融資実績が増加している金融機関も存在する。 以下、NPOが利用可能な融資の一例である。 上記は一例なので、融資を受ける場合には、銀行・信用金庫等へ相談に行くことから始めなければならない。   3 NPO法人のこれから~継続性・将来性 平成24年のNPO法の改正により、NPO法人を取り巻く環境も徐々に整備され、NPO法人にはより一層の公益活動、社会貢献が期待されている。 これらの期待に応えるためには、NPO法人も、安定した事業基盤に基づいた健全な管理運営、情報公開等をしていかなければならない。 市民に期待されるNPO法人であるからこそ、会計ルールに従った正確な会計帳簿による財務諸表等を作成し、会計的にも、法律的にも、しっかりとした活動をしていくことが必要である。 現在、普通法人数は不況のため、減少している反面、NPO法人数は増加しており、これからは、NPO法人も競争の時代となっていくことが考えられる。 現に、介護業界等は、大手FCの進出も相次いでいる。 社会貢献活動、地域の相互扶助という大切な活動を継続していくために、事業内容の分析や財務、内部管理等、NPO法人も経営力を付けていくことが最も重要なことである。 〈NPO法人向けの年間融資実績の推移〉 (日本政策金融公庫ホームページより)   (了)

#No. 23(掲載号)
#岩田 聡子
2013/06/13

《速報解説》 企業内容等の開示に関する留意事項について(企業内容等開示ガイドライン)の改正ポイント

《速報解説》   企業内容等の開示に関する 留意事項について (企業内容等開示ガイドライン)の 改正ポイント   宝印刷総合ディスクロージャー研究所 顧 問  小谷  融 (大阪経済大学教授) 研究員 増田 美和   Ⅰ 改正されたガイドライン 「企業内容等の開示に関する留意事項について(企業内容等開示ガイドライン)」の改正が、平成25年6月11日に金融庁より公表された。   Ⅱ 主な改正内容等 平成25年3月26日に公表された「監査における不正リスク対応基準」の設定に伴う環境整備等のため、有価証券報告書等(有価証券報告書、四半期報告書、半期報告書)の提出者が「やむを得ない理由」により有価証券報告書等を既定の期間内に提出できないと認められる場合における、有価証券報告書等の提出期限の延長に係る承認(金融商品取引法第24条第1項等)の取扱いが明確化された。 企業内容等開示ガイドラインにおいて24-13(有価証券報告書等の提出期限の承認の取扱い)が新設され、24の4の7-7(四半期報告書における有価証券届出書等に関する取扱いの準用)及び24の5-7(半期報告書における有価証券届出書等に関する取扱いの準用)の規定が改正された。 企業内容等開示ガイドライン24-13においては、原則として、下記の理由により有価証券報告書等を提出期限までに提出することができないと認められる場合には、提出期限延長の承認を行うこととされた。 また、承認を受けようとする場合に提出する承認申請書の添付書類である「理由を証する書面」は、例えば、報道、適時開示等、承認を必要とする理由が発生したことが客観的に明らかになるもので、提出期限の延長の必要性を判断するために必要な事項を明瞭に記載した書面でなければならないことを明らかにしている。 なお、新たに承認する提出期限の設定に当たっては、金融商品取引所及び発行者の監査法人等とも連携し、個々のケースにおける提出期限の承認を必要とする理由の発生時期、復旧可能性、発行者の事業規模、事案の複雑性などを考慮したうえで、公益又は投資者保護のため必要かつ適当な期限を定める必要がある。 この場合において、長期間にわたり企業情報が開示されないことによる不利益と、正確な企業情報が開示される利益とを比較考量の上、判断することに留意するものとするとしている。   Ⅲ 適用時期 平成25年6月11日から適用する。 (了)

#No. 22(掲載号)
#小谷 融、増田 美和
2013/06/13

《速報解説》 「所得税法等の一部を改正する法律」(平成25年法律第5号)の一部改正規定の内容について(平成25年5月30日 財務省公開情報)

《速報解説》 「所得税法等の一部を改正する法律」 (平成25年法律第5号)の 一部改正規定の内容について (平成25年5月30日 財務省公開情報)   公認会計士・税理士 篠藤 敦子   (1) 情報の概要 5月30日付で財務省より次の情報が公開され、本年3月29日に可決・成立した「所得税法等の一部を改正する法律」(平成25年法律第5号)の改正規定の一部に、税制改正大綱等との齟齬があることが公表された。 毎年の税制改正は、税制改正大綱の内容に基づいており、本来であれば税制改正大綱と改正規定の内容は一致しているはずである。しかし、税制改正関係の政令の策定作業中に、租税特別措置法41条の19の3(いわゆる「バリアフリー改修に係る投資減税」)の一部に、経過措置の規定もれがあることが発覚した。 この規定もれにより、投資減税の対象となる改修工事限度額の一部について、税制改正大綱等の内容と法律の規定が齟齬を来した状態となっている。   (2) 税制改正大綱の内容と租税特別措置法の規定 「平成25年度税制改正の大綱」(平成25年1月29日閣議決定)等において、「バリアフリー改修に係る投資減税」における改修工事限度額と控除率については、入居時期に応じて、次のように説明されている。 (表1) 税制改正大綱等における記載内容 経過措置の規定もれが生じたのは、居住年が「平成25年1月~平成26年3月」の部分である。 租税特別措置法41条の19の3第1項1号では、投資減税の対象となる改修工事限度額を「・・・(当該金額(筆者注:改修工事等に要した費用の額)が200万円を超える場合には200万円とし、平成24年分については、当該金額が150万円を超える場合には150万円とする。)・・・」と規定している(下線:筆者)。 この規定内容によると、平成24年分の改修工事限度額は150万円となるが、平成25年分以後の限度額は200万円となる。 本来であれば、改正税法の附則等において、経過措置として、「平成25年1月から平成26年3月入居分の改修工事限度額150万円」が規定されるべきであったが、この経過措置の規定もれにより、上記の条文(租税特別措置法41条の19の3第1項1号)に従い、平成25年1月から平成26年3月入居分の改修工事限度額は200万円となり、当該金額を150万円とした税制改正大綱等の内容と整合していないこととなる。   (3) 取扱い このように現状の改正規定は、税制改正大綱等の内容と齟齬を来しているが、 から、平成25年1月から平成26年3月までの入居分については、改修工事限度額を現行の条文通り「200万円」とすることとなった。 このため、上記(表1)を租税特別措置法の規定に従って修正すると、下記(表2)の通りとなる。 (表2) 実際の取扱い (了)

#No. 22(掲載号)
#篠藤 敦子
2013/06/12

《速報解説》 「訂正報告書に含まれる財務諸表等に対する監査上の留意事項について」(公開草案)の解説

《速報解説》 「訂正報告書に含まれる 財務諸表等に対する 監査上の留意事項について」 (公開草案)の解説   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 平成25年5月31日付けで、日本公認会計士協会は、「監査・保証実務委員会研究報告「訂正報告書に含まれる財務諸表等に対する監査上の留意事項について」(公開草案)を公表した。 意見募集期間は、平成25年6月20日までである。 公開草案の本文は、日本公認会計士協会のホームページから入手できる。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 公開草案の内容 1 公開草案の趣旨 公開草案は、近年における、上場会社において不適切な会計処理が発覚しそれを原因として訂正報告書が提出されることになった場合の事例を基に、監査人として、監査業務の受嘱、監査計画の策定と監査手続の実施、第三者委員会又は内部調査委員会の調査報告書の利用の可否等の判断、監査人が交代している場合の対応、監査意見の表明等において監査上留意すべき事項を取りまとめ、実務上の適切な対応に資することとしたものである。 公開草案に関連するものとして、次のものがある。 2 監査人の留意点 公開草案は、監査人に対して、訂正報告書に含まれる財務諸表の監査を行う場合においても、職業的専門家としての正当な注意を払い、懐疑心を保持、発揮して監査業務を遂行することとなるが、本研究報告に記載されている留意事項を踏まえて対応することが望まれると述べている。 公開草案は、監査基準委員会報告書等に触れながら、監査上留意すべき事項を述べているが、訂正後の財務諸表等に対する監査の受嘱は、新規の監査契約の受嘱であり、財務諸表全体の監査が必要であるため、すべての監査基準委員会報告書等に準拠することになると述べられている。 また、財務諸表監査に当たっては、一般に公正妥当と認められる監査の基準に準拠することが求められることから、訂正後の財務諸表に対する監査においても、監査契約受嘱の可否の決定から監査報告書提出までの業務の品質管理について、通常の財務諸表監査と同様、適切に行われる必要があると述べられている。 訂正後の財務諸表に対する監査は、通常の財務諸表の監査と同様、監査対象は訂正箇所だけでなく、それを含んだ財務諸表全体である。実務上、訂正後の財務諸表を開示する方法として、訂正した部分だけを開示する方法も見受けられるが、監査人は、通常の財務諸表と同様に、訂正後の財務諸表全体に対し、監査意見を表明することに留意する必要がある。 このため、訂正後の財務諸表等について監査を実施する際には注意が必要と思われる。 3 公開草案が扱っている項目 公開草案では、次の事項を取り扱っている。 全体として46ページからなる大部のものであり、また、詳細に説明がなされているので、訂正後の財務諸表等に対する監査の実務において、有益な内容であると思われる。 (了)

#No. 22(掲載号)
#阿部 光成
2013/06/11

《速報解説》 平成25年度税制改正法に係る政省令の公布(5/31)について

《速報解説》 平成25年度税制改正法に係る 政省令の公布(5/31)について   弁護士 木村 浩之   1 はじめに 平成25年5月31日付けで、平成25年度税制改正法(平成25年3月30日付けで公布された所得税法等の一部を改正する法律)の施行に伴う関係政省令の改正について、公布がなされた(官報:平成25年5月31日付(特別号外第15号))。 例年であれば、法律の改正と時期を同じくして政省令の改正についても公布がなされるところ、平成25年度税制改正では、平成24年末における政権交代等の影響から、法案の提出時期が遅くなり、それに伴って、一部の政省令について改正法の公布までに改正が間に合わず、先送りとなっていたものである。 今般、残りの政省令の改正がなされたことにより、平成25年度税制改正に伴う規定の整備がひととおりなされたことになる。   2 改正の概要 今回改正がなされた政省令は、主に改正された法律(特に租税特別措置法)の施行に伴う用語の整備や必要な細目の制定が中心となっている。 中でも、租税特別措置法の改正として大幅な見直しがなされた金融・証券税制のうち、①金融所得課税の一体化の拡充に関連する用語の整備が多くみられ、そのほか、重要なものとしては、②事業承継税制の見直しに関する租税特別措置法施行規則(省令)の改正がなされている。 以下では、これら①②の改正について簡潔に解説することとする。   3 金融所得課税の一体化の拡充に関連する改正 平成25年度税制改正では、金融所得課税の一体化の拡充の一環として、公社債等及び株式等に係る所得に対する課税について見直しがなされた。 すなわち、従前の公社債等の利子等に対する課税方式(一律源泉分離課税)及び公社債等の譲渡所得等に対する非課税措置を改め、公社債等を国債や公募公社債等の特定公社債等とそれ以外の一般公社債等に分けた上で、特定公社債等に対しては、利子等についても、譲渡所得等についても、一律20%(国税15%、地方税5%)の申告分離課税とされた。 その上で、特定公社債等に係る所得等(利子等及び譲渡所得等)については、上場株式等に係る所得等(配当等及び譲渡所得等)との損益通算が可能とされ、金融所得課税の一体化が拡充されている。 今回の政省令の改正では、この公社債等及び株式等に係る所得に対する課税の見直しに伴い、関連する政省令において用語の整備及び必要な細目の制定がなされている。   4 事業承継税制の見直しに係る改正 いわゆる事業承継税制(非上場株式等に係る相続税等の納税猶予制度)については、その適用要件が厳格であったことから、利用の低迷が指摘されていた。そこで、平成25年度税制改正では、より多くの中小企業経営者が利用しやすい制度に改めるために、適用要件の緩和等が図られている。 すなわち、改正法では、適用要件の緩和として、①後継者の親族要件の廃止(従前は親族間での承継が必要であったものが、親族に限らず、親族以外の従業員を後継者とすることも可能とされた)、②雇用確保要件の緩和(事業承継後、毎年8割以上の従業員の雇用確保が必要であったものが、5年間平均で8割以上であればよいとされた)などの改正がなされている。 さらに、今回の省令改正により、③先代経営者の役員退任要件の緩和(従前は役員から退任する必要があったものが、代表者を退任すれば、役員として残留することも可能とされた)などの改正がなされている。 なお、これらの適用要件の緩和に係る改正については、平成27年1月1日以降の贈与等に適用されることになる。  (了)

#No. 22(掲載号)
#木村 浩之
2013/06/06

monthly TAX views -No.5-「金融所得一体課税、次の課題は「金融所得」の創設」

monthly TAX views -No.5- 「金融所得一体課税、 次の課題は「金融所得」の創設」   中央大学法科大学院教授 東京財団上席研究員 森信 茂樹   日本版ISA(NISA)や教育資金一括贈与非課税措置の創設などに注目が集まる平成25年度税制改正だが、金融所得の一体課税が平成28年1月から大きく進むことが決定されたことも忘れてはならない重要事項である。 平成16年6月、旧政府税制調査会が「金融所得課税の一体化についての基本的考え方」と題する報告書を公表して以降、自民党政権下の平成21年から上場株式等の譲渡損と配当の損益通算が可能になり大きな一歩を踏み出したが、それ以来の進展である。 筆者が重要と考える点は、公社債の利子所得が含まれることになった点と、債権についてもリーマン債のように価値を喪失した場合、それを損失とみなして損益通算、繰越控除の対象とすることができるようにした点である。 価値喪失のような損失を、特定口座で管理されていれば損益通算可能としたことは、「損失」の概念を広げることであり、資産の運用がリスクを帯びる中で、リスク軽減を図るためには大変重要な話だと考えている。 これにより、金融所得と一括りにされる株式譲渡損益、配当と並んで、利子所得までカバーされることになったわけで、残るは、大口定期の利子所得やデリバティブなどだけとなった。これらの対応についても、順次進んでいくものと思われる。 以下、残された課題について上げてみたい。 多くの金融商品・金融所得が一体課税になり相互に損益通算されるようになると、法律の規定ぶりが大変複雑になる。 そこで、筆者は、「金融所得」という概念(いわば「箱」)を税法に設けて、そこに金融取引・商品を一つずつ指定していく方式をとっていくことを提言している。そうすれば、複雑な損益通算規定もすっきりしたものになるはずだ。 もう一つ重要な提案がある。 それは、「金融所得」の経費・損失の取扱いである。 現行制度では、利子所得には経費が認められず、配当所得には負債利子控除のみが認められ、株式譲渡所得の損失の取扱いも制限的である。 しかし、投資信託における投資顧問料、口座保管手数料などは、金融所得を得るために「直接必要な費用」であるので、所得税の考え方に沿って経費性を認めるべきではないか。 諸外国の事例を調べると、ドイツでは、年間801ユーロの定額控除が経費として認められている。スウェーデンでも資本所得の利子についての控除が認められている。 金融所得は人為的に損失を発生させやすく、租税回避に使われることもある。そこで損失の取込みについては何らかの制限をすることはやむを得ないが、そもそも金融所得一体課税のもとでは、金融所得と勤労所得との損益通算は原則認められていない。それによって、租税回避は基本的に防止されているとはいえ、金融所得の中での経費・損失については、もっと前向きに考えてもよいのではなかろうか。 そして、将来の金融所得一体課税化に向けた具体的な手順を、工程表としてあらかじめ公表すれば、納税者や市場関係者の法的安定性や予測可能性が増加し、スムーズに一体化が進むものと考えている。 1,500兆円の金融資産をどう活用していくかという点は、アベノミクスで株価が上昇する中で、わが国経済政策としても重要なポイントだ。新たな発想で、金融所得一体課税を進めていくことが、高齢社会を迎え、貯蓄を運用する時代にふさわしいと考えている。 (了)

#No. 22(掲載号)
#森信 茂樹
2013/06/06

消費税に関するシステム構築思想と税率引上げへの対応 【上】「消費税に関するシステム構築の基本的考え方」

消費税に関するシステム構築思想と 税率引上げへの対応 【上】 「消費税に関するシステム構築の 基本的考え方」   株式会社クロスフィールド 取締役 税理士法人あおやま 代表社員 公認会計士・税理士 松元 良範   今回の消費税増税に関するシステム対応の話をする前に、まずはこれまでの消費税に関するシステム構築の基本思想について、いくつか述べることにする。 基本思想としては、例えば以下のような点があげられる。 以降、上記の各点について述べることにするが、いずれも現時点で優等生的なシステムの場合であり、必ずしも世の中に存在するすべてのシステム(企業が自社で開発したシステム、市販の会計パッケージなどを問わず)がこのようになっているわけではない、という点には注意が必要である。   1 消費税率などの情報は商品毎ではなく各商品に共通の消費税マスタとして保持する 商品毎にシステム上保持している代表的な項目として、商品コード、商品名、売価、などがあげられるが、売価に含まれる消費税額やその計算の根拠となる消費税率は、商品毎では保持しないのが通常である。 商品毎に消費税額(率)を持たせてしまうと、税率改定になった場合、売価と消費税額の両方を商品毎に変更しなければならず、メンテナンス作業が膨大になってしまうからである。3%から5%となった1997年の税率改定の経験を踏まえ、一般的に優良なシステムでは、消費税マスタとして情報を保持するのが通常である。 図1   2 消費税マスタは適用開始日別に税率を設定できるようにする 1997年の増税を踏まえ、消費税マスタは将来の税率変更に対応できるよう適用開始日別に税率を設定できるようになっている。実際の取引が発生した時に、その取引日付と消費税マスタの適用開始日との関係から、適用すべき消費税率を判定するのである。 図2   3 同時期に複数の税率を設定できるようにする 1997年の増税時に適用された経過措置(一部の取引に関する旧税率の適用)や、増税前後の返品や貸倒れへの旧税率適用などの経験をもとに、同時期に複数の税率を設定できるようになっているシステムも少なくない。 具体的にどのような設計になっているかはシステムによって異なるが、考えられる対応パターンは以下の通りである。 ① 個々の取引に適用する税率を手動で個別に選択する システムで自動的に判定するのではなく、個々の取引へ適用する税率を人が個別に判断して選択設定する。会計システムで仕訳毎に消費税の課税区分を選択するのと同じようなイメージである。 図3   ② システムで自動適用した税率を必要に応じて他の税率に手動で変更 消費税マスタの適用開始日と個別取引の取引日とから自動的に適用すべき消費税率を判定するが、必要に応じてその結果を人の手で変更することができるようになっている。 下図は、システム上は取引日によって一旦、取引AもB も5%が自動的設定されたが、取引Aについては手動で3%に変更した例である。 図4   ③ 契約日及び取引日等によって適用する税率を取引毎に自動判別 経過措置などの例外的な適用税率について、システムで自動判定させる。例えば、取引日以外に契約日情報なども見ながらシステム的に自動判定を行う。 下図は、取引Aの例外的な税率適用についてもシステムで自動的に行う例である。 図5 なお、この機能の重要性は業種によって差が大きく、実際に対応しているシステムは少ないと思われる。企業のメインビジネスにおいて契約日と取引日が異なる会社(リース会社など)や貸倒れ・返品が多い会社にとって本機能の重要性は高いが、該当する取引ボリュームや金額が僅少な場合には、わざわざお金をかけてシステム対応するよりは人手で対応してしまうのも現実的な考え方である。   4 消費税は商品1個1個でなく決済単位(レシート等)でも計算できるようにする 近所のスーパーやコンビニで商品棚を眺めると、各商品は税込で価格表示されている。これは2004年から適用された消費税の総額主義によるものだが、そこに含まれる消費税の計算はどのようになっているのだろうか。 レシートをよく見ると分かることだが、購入した商品1個毎に消費税が計算されているとは限らない。通常は一度の買い物で購入した商品の合計単位、すなわち1枚のレシートの合計金額に5/105を乗じ、切捨てした金額が消費税額として内訳表示されている(消費税を明示していない場合もあるが)。 下図は、スーパーでミルクとチョコレートを購入した場合のレシートイメージである。 内消費税10円はミルクとチョコレートの合計代金(税込)215円から計算されている。 図6 レシートイメージ ただし、このようにレジでの税額計算をレシート単位で行う場合でも、商品分類別の税抜売上集計の必要性等から、後続する工程において、別途、商品明細毎の税額を計算し、その合計額とレシート単位で計算された合計額との差額はレシートの中で最も金額の大きい商品に寄せるなどの処理を行うケースもある。 なお、消費税申告時の計算単位については税法で定められているものの、上記のような取引時の計算単位については、「課税標準額に対する消費税額の計算の特例」を適用しない限り企業の任意である。したがって、システム上どのような単位で計算するかは企業の方針に従うことになる。 以上、消費税に関するシステム構築の際の基本思想についていくつか簡単に述べたが、次回はこれらの内容を踏まえ、2014年以降の消費税改正に向けたシステム対応について触れることにする。 (了)

#No. 22(掲載号)
#松元 良範
2013/06/06
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