平素は税務・会計Web情報誌「Profession Journal(プロフェッションジャーナル)」をご愛読いただき、厚くお礼申し上げます。 Profession Journalは毎週木曜日AM10:30に解説記事を公開しておりますが、1月2日号を休刊とさせていただきます。 1月9日(木)より通常の公開となりますので、ご了承くださいますようお願い申し上げます。
《速報解説》 ストックオプション課税の適正化 ~平成26年度税制改正大綱~ 税理士 内山 隆一 平成26年12月12日、自由民主党・公明党による「平成26年度税制改正大綱」が公表され、24日に閣議決定された。 デフレ経済の脱却と経済再生に向け、税制面からも「企業の投資活動の推進」、「課税の適正化」といったところに主眼をおいた措置が講ぜられることとなっており、ストックオプション課税について、次のような課税の適正化措置が織り込まれた。 新株予約権等については、譲渡制限が付されているものも少なくないが、利便性の観点から譲渡制限を付さず、権利者からの請求によって発行法人が公正な価額で買い取る場合もあるようである。 新株予約権等は「株式又は出資」ではないので、発行法人に譲渡してもみなし配当課税(所法25)の対象とならず、株式等に係る譲渡所得等の金額として所得税15%、住民税5%の税率により課税される(措法37の10①、②一)。 一方、新株予約権等の行使による経済的利益については、その付与者と権利者との関係に応じ、原則として事業所得、給与所得、退職所得、一時所得又は雑所得として課税される(所令84、所基通23~35共-6)が、このうち租税特別措置法第29条の2に規定する税制適格要件を充足するものについては、権利行使時における経済的利益を非課税とし、その権利行使によって取得した株式を譲渡した時にその経済的利益を含めた譲渡益に対して所得税15%、住民税5%の税率により課税されることになっている(【例示1】参照)。 【例示1】 下記の条件で株式10,000株を取得し、その後譲渡した場合 《株価》 通常、株式会社の取締役、執行役又は使用人に付与された新株予約権等が前述の税制適格要件を充足しないで行使された場合には、その経済的利益は賞与となり給与所得課税されるため、その者の給与所得の金額が増加し、超過累進税率を大きく引き上げ、その年の税負担が著しく増加する懸念がある。 このような場合に、公正な価額で発行法人に新株予約権等を買い取ってもらえば同様の利益を株式等の譲渡益として得ることができ、所得税15%、住民税5%の負担に抑えることができる(【例示2】参照)。 【例示2】 【例示1】の新株予約権を1株当たり2,500円で発行法人に譲渡した場合 今回の改正は、新株予約権等について「権利行使をした場合」と「発行法人に譲渡した場合」を同様の取扱いとすることにより、課税の適正化を図ろうとするものである。 (了)
《速報解説》 「扶養義務者(父母や祖父母)から「生活費」又は「教育費」の贈与を受けた場合の贈与税に関するQ&A」について ミレニア綜合会計事務所 代表税理士 甲田 義典 国税庁は、平成25年12月13日に、「扶養義務者(父母や祖父母)から「生活費」又は「教育費」の贈与を受けた場合の贈与税に関するQ&A」について(情報)(以下「情報」という)を公表した。 現行の税法では、扶養義務者相互間において生活費又は教育費に充てるためにした贈与により取得した財産のうち、通常必要と認められるものは贈与税の非課税財産とされている(相法21の3①二)。 一方、相続税法基本通達では、同通達21の3-3及び3-4で「生活費」と「教育費」(以下「生活費等」)の意義を示したうえで、その非課税対象となる財産は、生活費等として必要な都度直接これらの用に充てるために贈与によって取得した財産をいい、生活費等の名義で取得した財産を預貯金した場合や、株式の買入代金若しくは家屋の買入代金に充当したような場合のものは対象外として取り扱うことが示されている(相基通21の3-5)。 また、生活費等で通常必要と認められるものの範囲は、被扶養者の需要と扶養者の資力その他一切の事情を勘案して社会通念上適当と認められる範囲の財産であることが示されている(相基通21の3-6)。 以上が生活費等の非課税財産に関する現行の税法と通達の主な概要であるが、その具体的な内容については不明確であった。 そのような中で、今年1月以降の平成25年度税制改正をめぐる、自民党、公明党及び民主党の3党間で協議が重ねられた過程において、贈与税については、高齢者が保有する資産の若年世代への早期移転を促し、消費の拡大を通じた経済の活性化を図る観点、格差の固定化の防止等の観点から、結婚、出産又は教育に要する費用等の非課税財産の範囲の明確化を含め検討することが、平成25年度税制改正法附則108条に規定されたところであった。 このような背景の下、本件情報が公表されている。 情報では、以下の5つの費用負担ごとに解説がされている。 なお、情報の内容に関しては、あくまで非課税財産となる範囲について解説されているが、具体的にいくらまでが非課税となるかは明確とされていない。 これは、生活費等の贈与を行う各家庭の生活水準が異なるため、一律に非課税枠を決めることが難しいという事情があると思われるが、実務上は、特に高額な贈与に関しては、その贈与に至った経緯など個別の事情を十分検討し、税務当局とのトラブルに発展しないように留意する必要がある。 (了)
《速報解説》 「種類株式の評価事例」の公表について 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 平成25年11月6日付けで、日本公認会計士協会(経営研究調査会)は「種類株式の評価事例」(経営研究調査会研究報告第53号)を公表した。 研究報告は、比較的よく使われている権利を付した種類株式の評価について、実務の参考となるように、その評価の基本概念や発行事例、評価例を取りまとめたものである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 主な内容 1 研究報告の利用上の留意点 種類株式についてはいまだ評価実務が成熟段階には到っていないため、研究報告は種類株式評価のガイドラインではなく、評価例としている。 種類株式については、次のものにも関連する記述がある。 研究報告は、種類株式の価値評価の「基準」、「マニュアル」又は「指針」といった位置づけではなく、実務を拘束するものではないと述べられている。 2 我が国の種類株式及び類似の効果をもたらす契約等 我が国の種類株式及び類似の効果をもたらす契約等として、次の記載がある。 出所:研究報告5ページ、【図表Ⅱ-1 我が国の種類株式及び類似の効果をもたらす契約等】 3 種類株式の評価例 種類株式の評価例として次のものを取り上げ、具体的な評価例を、数値を用いて説明している。 4 主な目次 研究報告の主な目次は次のとおりである。 (了)
《速報解説》 経営研究調査会研究報告第41号 「事例に見る企業価値評価上の論点」について 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 平成25年11月6日付けで、日本公認会計士協会(経営研究調査会)は「経営研究調査会研究報告第41号『事例に見る企業価値評価上の論点-紛争の予防及び解決の見地から-』の改正について」を公表した。 これは平成24年7月に改正された、「企業価値評価ガイドライン」(経営研究調査会研究報告第32号)の内容を一部参照していることから、該当箇所を中心に見直しを行ったものである(参考記事はこちら)。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 主な内容 1 研究報告の利用上の留意点 「本研究報告の利用に当たって」において、本事例分析は、会社側の主張及び株主側の主張について批判することを目的とするものではないこと、裁判所の判断を批評するものでもないこと、両当事者において中立な立場での検討であることなどの留意点が述べられている。 研究報告の利用に際しては注意が必要である。 2 研究報告の対象 企業価値評価を巡る紛争は、次の4つの局面で行われる。 研究報告の事例分析が対象としているものは、上記の④裁判局面に関する分析である。裁判局面は、裁判所において「公正な価格」について会社側と株主側が主張を行い、最終的に裁判所が判断を行う局面である。 3 研究報告の目的 後述する3件の事例については、既に最高裁判所の抗告等の棄却等により高裁の決定が確定している。 一連の裁判事例を通じて、企業価値評価を巡る紛争がなぜ生じたのか、予防や解決の方策を検討することが研究報告の事例分析の目的である。つまり、前述の裁判局面の分析をすることで、M&Aにおける交渉局面でどのような配慮が必要であったのかを分析・検討することにある。 4 分析対象の事例 (了)
12月26日(木)AM10:30、Profession Journal の No.50 が公開されました。 Profession Journalの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》については随時公開してまいります。 Web情報誌 Profession Journalは、プロフェッションネットワークのプレミアム会員専用の閲覧サービスです。 Profession Journalについての詳細はこちら。 バックナンバー一覧はこちら。
〔税の街.jp「議論の広場」編集会議 連載49〕 平成26年度税制改正の概要と留意点 税理士 竹内 陽一 1 法人実効税率の引下げの見送りと復興特別法人税の1年前倒し廃止 今回の改正においてもっとも重要な課題は、我が国競争力強化の観点からの法人実効税率の引下げであったが、財務省の抵抗によって見送りとなり、代わりとして復興特別法人税の1年前倒し廃止が実現した。 法人税率は、基本の国税分は平成23年度改正において4.5%減額されたが、平成24年度改正において、10%の付加税として2.55%増加し、差引2%の減少にとどまった。この2.55%の増加が廃止となる。 法人実効税率は、平成23年度改正前の40.69%から、平成24年度改正において38.01%となっていたが、今回の前倒し廃止により、平成23年度改正で予定された35.64%となる。 〈法人実効税率の今後の推移(3月決算法人を想定)〉 2 秋の大綱(民間投資活性化等のための税制改正大網)決定事項 (1) 「生産性向上設備投資促進税制」及び「中小企業投資促進税制」 産業競争力強化法の施行日(平成26年1月下旬の見込み)以後、平成28年3月31日までの取得について、即時償却又は5%(建物・構築物は3%)の税額控除の適用となる。 ただし税額控除は、中小企業投資促進税制により、資本金3,000万円以下の中小企業は10%の税額控除、資本金1億円以下の中小企業は7%の税額控除とされた。 対象設備には、「生産設備」と「生産ライン等の刷新・改善」がある。 「生産設備」の要件は、機械・装置については用途についての限定はなく、 「生産ライン等の刷新・改善」については、申請者作成の設備投資計画において、その設備の投資利益率が15%以上(中小企業5%)であることを、経産局が確認し、確認後取得した生産ラインの改善が対象設備となる。 以上について、即時償却又は5%(中小企業では最大10%)の税額控除が可能となる。 〈生産性向上設備投資促進税制の創設〉※経済産業省ホームページより一部抜粋 〈中小企業投資促進税制の延長・拡充〉※経済産業省ホームページより一部抜粋 〈両制度の対象資産比較〉 (2) 所得拡大促進税制の延長・拡充 平成25年度改正において導入された要件の1つである「基準年度(平成24年度)給与等支給額の5%以上増加要件」が厳しいということで、平成25年度、及び平成26年度は2%に緩和されるとともに、制度が2年延長された。平成26年度改正以後の要件は、平成25年度の遡及適用を含めて以下の通り。 上記は平成26年4月1日以後終了適用年度から適用され、平成25年4月1日開始事業年度については、平成26年度改正後の要件を満たす場合、平成26年度適用年度の法人税申告において、上乗せ控除(平成26年度も適用の場合、重複して控除)となる。 この増加額要件の「2%(H25)、2%(H26)、3%(H27)、5%(H28)、5%(H29)」は、すべて基準年度である平成24年度からの増加額なので、例えば、次の対前年度増加額の場合、初年度(25年度)=2%、26年度=0.5%、27年度=0.5%、28年度=2%、29年度=0.1%である場合、25年度から29年度までの5年間について、24年度からの増加額、2%、2%、3%、5%、5%が、法人税額の10%の税額控除の対象となる。 〈所得拡大促進税制の見直し・拡充〉※経済産業省ホームページより一部抜粋 3 法人税決定事項 平成26年度税制改正大綱における決定事項のうち法人税関連については、秋の大綱における決定事項に比べ、迫力に欠けるものが多い。 (1) 交際費等損金不算入制度 すでに中小企業については、全額損金算入の800万円の定額控除限度額が導入されているが、これを2年延長し、大法人については、交際費のうち飲食等支出額の1/2損金算入制度が導入された。中小法人については800万円定額控除制度との選択適用となる。 ※経済産業省ホームページより一部抜粋 (2) 国際戦略特区改正 国際戦略特区改正に係る改正が行われた。 特定中核事業の一定の機械装置については即時償却とされるが、特定中核事業及び当該自治体は未決定である。 (3) 沖縄振興関連 平成14年に名護市に金融・情報特区が制定されたが、その実績がなく、今回、「産業集積経済金融活性化特区」とされ、金融・情報から指定産業に拡大された。 4 相続税決定事項 (1) 持分あり医療法人の持分放棄を前提とする相続税・贈与税の納税猶予制度 医療法人は、平成19年度改正により、平成19年4月1日以後設立医療法人は、持分の定めのない医療法人しか新規設立ができなくなった。 既存の医療法人である持分の定めのある医療法人は経過措置型医療法人とされ、そのまま存続しているところであるが、配当ができない医療法人においては、多額の内部留保が蓄積され、社員の死亡に伴う出資額の相続税評価はかなり高額となり、納税に困難を伴うところであった。 平成19年医療法改正以後、この相続税負担を回避する手法は 以上①、②は安全な手法であった。 この場合、相続税法66条4項で課税されないセーフガードが明確でなかった。 以下④、⑤には相続税法66条の規定の適用はない の選択となった。 この④、⑤は医療法人にとって、かなりハ-ドルが高いものである。 以上の③と④の間に、良質な医療を提供する法人(仮称)として、厚生労働省の良質医療提供法の要件を満たし、厚生労働省の同法認定医療法人となったときは、相続の場合は、持分の放棄を前提として、当該持分に係る相続税を猶予して免除し、かつ、そのときの残存出資者についても、残存出資者も、この際、その持分の放棄することを前提として贈与税の納税を猶予し免除する制度が創設され、この制度に係る法律による認定制度施行日以後の相続・贈与から適用されることとなった。 このように、医業においては、認定制度の施行日から3年以内に厚生労働省の認定を受けることなどを要件に、全社員の持分放棄により、相続税・贈与税を免除する制度が創設された。 〈医業継続に係る相続税・贈与税の納税猶予等の特例措置の創設〉※厚生労働省ホームページより一部抜粋 5 所得税決定事項 (1) 公益法人等に財産を譲渡した場合の非課税申請 公益法人等に財産を譲渡した場合の非課税申請について、次の事項が整備された。 株式の寄附については、株式の寄附を受けた法人が、当該寄附により、株式発行法人の発行済株式数の1/2を超えてはならないこととされた。 公益認定基準においては、公益認定等委員会FAQ問Ⅴ-7-①(公益認定法5条15号関係)等において、株式保有の制限があり、他の団体の意思決定に関与することができる株式を保有しないことが求められている。 このこととの均衡を受けて、認定法上の議決権ベース(支配権)ではなく、所得税法上は、発行済株式数ベースにおいて1/2が上限とされた。 この規定は、平成26年4月1日以後の寄附について適用される。 (2) ゴルフ会員権等の譲渡損失に係る損益通算の廃止 ゴルフ会員権は生活に通常必要でない資産に該当せず、その譲渡損は他の所得との損益通算が認められていたところであるが、平成26年4月1日以降の譲渡からは所得税法施行令178条に規定する「生活に通常必要でない資産」と規定され、総合課税の譲渡所得内の通算に限られ、他の給与等の所得との通算ができないことになる。 したがって給与所得、配当所得(総合課税選択)等との損益通算ができるのは、平成26年3月31日までの譲渡となる。 また、分離課税である土地等の譲渡所得との損益通算については、すでに平成16年度改正において、平成16年1月1日以後の土地等、建物の譲渡損益については譲渡所得内損益通算及び他の所得との損益通算ができない取扱いとなっている(措法31,32)。 (3) 給与所得控除の改正 給与所得控除の上限を給与等収入金額の1,500万円超より245万円とすることは、すでに平成24年度改正において決定され、平成25年分より施行されているところであり、また所得税の最高税率は平成25年度改正で決定され、平成27年分からの適用である。 平成26年度改正において、次の決定がされた。 (4) 同族会社発行社債の特定公社債からの除外 金融証券税制は、平成25年度改正で10%の軽減税率が廃止され、平成26年以降は20%税率となる。あわせて、NISA口座が平成26年から導入され、また公社債、公社債投資信託は20%(正確には20.315%、以下略)の源泉分離課税かつ譲渡益非課税であったが、平成28年以後は特定公社債として、上場株式等と同一のグル-プとして損益通算されることとなった。 そして、この改正のあおりで、上場株式等の譲渡損と非上場株式の譲渡益の損益通算は通算不可となり、非上場株式と一般公社債グル-プとなる。 この改正の中で、同族会社が発行する社債は、一般公社債の20%の源泉分離課税ではなく、同族会社が発行した社債で同族会社の役員等が支払いを受けるものは、一般公社債であれば利子は源泉分離課税で、譲渡益等は申告分離課税であるが、いずれも、総合課税とされていた。 ここで、平成27年以前中に発行された私募債は、特定公社債に該当するとされていたが、平成26年改正においてこの規定が改正され、特定公社債となることから除外されたので、同族会社発行私募債の利子課税は、株主等が受ける利子は、平成28年以後支払いのものより総合課税となる。 (5) 相続財産である土地等を譲渡した場合の取得費加算の縮小 相続財産である土地等を申告期限から3年以内に譲渡した場合は、その相続人が取得したすべての土地等に対応したその相続人の相続税を取得費に加算できたが、平成26年度改正において、他の株式等の財産と同様に、その譲渡した土地等に対応する相続税額に縮小される。 この改正は平成27年1月以後の相続による取得財産の譲渡について適用される。 (6) 老朽化マンションの建替え等の促進に係る特例措置 避難路に面した耐震非適格建物の改修が義務付けられたことに伴い、一定の区分所有者の譲渡所得の1,500万円特別控除制度が創設された 耐震改修法に規定された通行障害既存耐震不適格マンションについて、改修若しくは建替えが義務付けられるが、認定建物敷地売却制度が新設され、決議反対区分所有者への売り渡し請求が行われ、この一定の区分所有者について1,500万円控除が適用できることになった。 〈老朽化マンションの建替え等の促進に係る特例措置〉※国土交通省ホームページより一部抜粋 (了)
酒井克彦の 〈深読み◆租税法〉 【第12回】 「内縁の妻は配偶者控除の適用を受けられるか?(その3)」 ~一夫多妻制における多数配偶者の配偶者控除~ 国士舘大学法学部教授・法学博士 酒井 克彦 1 裁判所の判断(結論) これまで検討したとおり、租税行政上の特段の問題はなく、また実質が形式を凌駕するという点からも、租税法において、内縁の妻を配偶者控除の対象としてもよいように思われるが、最終的に大阪地裁昭和36年9月19日判決は、次のように論じて、文理解釈の見地から内縁の妻に係る当時の扶養控除の適用において、その配偶者該当性を否定している。 判決は、このように原則論を論じた上で、次のように、「配偶者(届出をしないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む)」と規定する条文と、裸で「配偶者」と規定する条文があることを論じる。 このように、所得税法上の規定が「配偶者(届出をしないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む)」とせず、単に「配偶者」とのみ規定していることから、他の社会法と同様に配偶者の中に、内縁の妻を読み込むことはできないと論じるのである。 いかに説得的に配偶者に内縁の妻が含まれるべきであると述べても、結局は、文理を乗り越えられない限り、配偶者に内縁の妻を含めて解釈することはできないというのである。そして、このような考え方は、最高裁平成9年9月9日第三小法廷判決(訟月44巻6号1009頁)においても論じられ、現在の判例として定着しているのである。 そして、所得税基本通達もそのことを次のように明示している。 内縁の妻の問題は、今日の超高齢化社会においても大きな問題として伏在していると思われるが、担税力の配慮という面から立法論をも含めた再検証が図られるべきではなかろうか。 2 一夫多妻制と配偶者控除 さて、今日的問題の別の局面に、我が国居住者が、イスラム教国で認められる一夫多妻制の下で多数の配偶者を有する場合の配偶者控除適用の問題がある。 これは、配偶者控除の生計同一要件は本国への仕送りなどの事実によって確認することができる場合に、例えば、4人の配偶者を有するとすると、配偶者控除は38万円×4人分受けることができるか否かという問題である。 この問題は、前述のように借用概念の解釈で乗り越えられる問題であろうか。 少なくとも、民法を前提として配偶者概念を理解しようにも、民法はそもそも一夫一妻制を採用し、重婚を禁止しているのであるから、民法上、多数の配偶者の存在を観念することはできない。 そこで、解釈の糸口の1つを提示するものに、前述の所得税基本通達がある。 ここでは、法の適用に関する通則法に従うことを述べているが、同法によれば、当該外国に適法に成立した婚姻関係に従うということになるから(同法24)、配偶者控除の対象となる配偶者も4人まで認められることになる。 しかしながら、仮に配偶者が4人まで認められるとしても、所得税法76条は、配偶者控除として「控除対象配偶者を有していた場合に・・・38万円を控除する。」と規定している。 つまり、所得税法は、「控除対象配偶者を有している」か否かのみを問題としており、有している場合の控除額は38万円と固定されているのである(この点は扶養控除が、「1人につき38万円」を控除すると規定しているのとは異なる)。 このように、所得税法の規定は、控除対象配偶者の有無のみを対象とし、控除額を38万円に固定していることからすれば、たとえ控除対象配偶者が何人いても、その額は38万円の控除ということになるのである。 この点も、やはり文理解釈が支配しているというべきであろう。 (了)
「税理士損害賠償請求」 頻出事例に見る 原因・予防策のポイント 【事例9(消費税)】 税理士 齋藤 和助 《事例の概要》 設立初年度である平成25年3月期の消費税につき、設立時の資本金が1,000万円未満であったため免税事業者であるにもかかわらず、期中増資により期末資本金が1,000万円以上となっていたため課税事業者と誤認し、提出期限までに「消費税課税事業者選択届出書」の提出を失念したことから、設立初年度の設備投資に係る消費税の還付を受けることができなかった。 これにより、還付不能となった消費税額560万円につき損害が発生し、賠償請求を受けた。 《賠償請求の経緯》 法人設立時の資本金は1万円であった。 設立関係の届出は前任税理士が行っており、その後税理士が業務を引き継いでいた。 期中増資により期末資本金は1,000万円を超えていた。 《基礎知識》 ◆基準期間がない法人の納税義務の免除の特例(消法12の2) その事業年度の基準期間がない法人のうち、当該事業年度開始の日における資本金の額又は出資の金額が1,000万円以上である法人(以下「新設法人」という。)については、当該新設法人の基準期間がない事業年度に含まれる各課税期間における課税資産の譲渡等については、納税義務は免除されない。 《税理士の落とし穴》 《税理士の責任》 税理士は、決算作業中に設立時の届出書類を確認してはじめてミスに気づいている。受任時に設立時の届出書類を確認し、期限までに「課税事業者選択届出書」を提出していれば、課税事業者となり、還付は受けられたことから、税理士に責任がある。 なお、課税事業者の選択には2年間の継続適用要件があるが、設立初年度中に増資し、期末において資本金額が1,000万円以上となっていることから、翌期は課税事業者になるため、損害は平成25年3月期のみである。 《予防策》 [ポイント①] 思い込みに注意する 本事例は新設法人の特例の判断基準が事業年度開始の日であるにもかかわらず、期末であるとの思い込みから生じたものである。 このようなミスをなくすためには、担当者だけでなく、所長又は有資格者等によるダブルチェック体制を構築することが必要である。 [ポイント②] 関与開始時に設立時の届出書類を確認する 本事例は設立初年度に税理士が変わるというレアケースであるが、新設法人のみならず、新規に法人に関与する場合には、次のような提出書類は、必ず控えのコピー(収受印等のあるもの)を入手して、「各種届出書類等」としてパーマネントファイル(永久保存ファイル)に保管しておくべきである。 消費税については、次のような届出書が提出されているかどうかを必ず確認し、提出されていれば、上記パーマネントファイルに保管し、新たに提出が必要な場合には、以下の《参考》ような「意思決定通知書」を入手したうえで提出するよう心がけたい。 《参考》 意思決定通知書の具体例 1 課税事業者の選択について ※クリックすると別ページでPDFファイルが開きます 2 簡易課税制度の選択について ※クリックすると別ページでPDFファイルが開きます (了)
居住用財産の譲渡所得 3,000万円特別控除 [一問一答] 【第12問】 「相続による取得後、居住の用に供したことがない家屋の譲渡」 -居住用財産の範囲- 税理士 大久保 昭佳 Q Xは、昨年3月に死亡した父親のA居住用物件を相続し、家族と共に暮らすB居住用物件から住民票をA物件に異動した後、A物件を居住の用に供することなく、本年11月に売却しました。 この場合、「3,000万円特別控除(措法35)」の特例を受けることができるでしょうか? A 「3,000万円特別控除」の特例の適用を受けることはできない。 〈解説〉 Xは、自己の所有となってから居住したという事実がないので、「特例」の適用を受けることはできない(措通31の3-2(居住用家屋の範囲))。 また、前回【問11】と同様に、居住の事実がないところを、特例を受ける目的のみで故意に住民票を異動するなどした場合には重加算税の対象となり得る可能性があることから、その判定にあたってはX及びその家族の日常生活の状況、住民票を異動した目的等について十分な聴取が必要であると考える。 (了)