谷口教授と学ぶ
国税通則法の構造と手続
【第35回】
「国税通則法97条(87条~96条・97条の2~97条の4)」
-国税不服審判所の調査審理手続と争点主義的運営の要請-
大阪学院大学法学部教授
谷口 勢津夫
国税通則法97条(審理のための質問、検査等)
(審理のための質問、検査等)
第97条 担当審判官は、審理を行うため必要があるときは、審理関係人の申立てにより、又は職権で、次に掲げる行為をすることができる。
一 審査請求人若しくは原処分庁(第4項において「審査請求人等」という。)又は関係人その他の参考人に質問すること。
二 前号に規定する者の帳簿書類その他の物件につき、その所有者、所持者若しくは保管者に対し、相当の期間を定めて、当該物件の提出を求め、又はこれらの者が提出した物件を留め置くこと。
三 第1号に規定する者の帳簿書類その他の物件を検査すること。
四 鑑定人に鑑定させること。
2 国税審判官、国税副審判官その他の国税不服審判所の職員は、担当審判官の嘱託により、又はその命を受け、前項第1号又は第3号に掲げる行為をすることができる。
3 国税審判官、国税副審判官その他の国税不服審判所の職員は、第1項第1号及び第3号に掲げる行為をする場合には、その身分を示す証明書を携帯し、関係者の請求があつたときは、これを提示しなければならない。
4 国税不服審判所長は、審査請求人等(審査請求人と特殊な関係がある者で政令で定めるものを含む。)が、正当な理由がなく、第1項第1号から第3号まで又は第2項の規定による質問、提出要求又は検査に応じないため審査請求人等の主張の全部又は一部についてその基礎を明らかにすることが著しく困難になつた場合には、その部分に係る審査請求人等の主張を採用しないことができる。
5 第1項又は第2項に規定する当該職員の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。
1 はじめに
第32回では、国税不服審判所創設の経緯及び背景を検討し、その創設の核心が「納税者の自主性と個別性の尊重という方向」にあり、ここにこそ、裁判所による権利救済制度とは別に国税不服審判所による権利救済制度を設ける意義があることを確認した上で、国税不服審判所制度を、「納税者の自主性と個別性の尊重」に方向づけられ民主主義的租税観によって支持される権利救済制度として位置づけた(1~2)。
今回は、国税不服審判所の調査審理手続に関して争点主義的運営の要請を検討するが、その検討を始めるに当たって、国税不服審判所の創設をめぐる議論の過程でその要請がどのようにして形成されてきたのかをみておくことにしよう。
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