公開日: 2025/03/13 (掲載号:No.610)
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谷口教授と学ぶ「国税通則法の構造と手続」 【第35回】「国税通則法97条(87条~96条・97条の2~97条の4)」-国税不服審判所の調査審理手続と争点主義的運営の要請-

筆者: 谷口 勢津夫

谷口教授と学ぶ

国税通則法構造手続

【第35回】

「国税通則法97条(87条~96条・97条の2~97条の4)」

-国税不服審判所の調査審理手続と争点主義的運営の要請-

 

大阪学院大学法学部教授
谷口 勢津夫

 

国税通則法97条(審理のための質問、検査等)

(審理のための質問、検査等)

第97条 担当審判官は、審理を行うため必要があるときは、審理関係人の申立てにより、又は職権で、次に掲げる行為をすることができる。

一 審査請求人若しくは原処分庁(第4項において「審査請求人等」という。)又は関係人その他の参考人に質問すること。

二 前号に規定する者の帳簿書類その他の物件につき、その所有者、所持者若しくは保管者に対し、相当の期間を定めて、当該物件の提出を求め、又はこれらの者が提出した物件を留め置くこと。

三 第1号に規定する者の帳簿書類その他の物件を検査すること。

四 鑑定人に鑑定させること。

2 国税審判官、国税副審判官その他の国税不服審判所の職員は、担当審判官の嘱託により、又はその命を受け、前項第1号又は第3号に掲げる行為をすることができる。

3 国税審判官、国税副審判官その他の国税不服審判所の職員は、第1項第1号及び第3号に掲げる行為をする場合には、その身分を示す証明書を携帯し、関係者の請求があつたときは、これを提示しなければならない。

4 国税不服審判所長は、審査請求人等(審査請求人と特殊な関係がある者で政令で定めるものを含む。)が、正当な理由がなく、第1項第1号から第3号まで又は第2項の規定による質問、提出要求又は検査に応じないため審査請求人等の主張の全部又は一部についてその基礎を明らかにすることが著しく困難になつた場合には、その部分に係る審査請求人等の主張を採用しないことができる。

5 第1項又は第2項に規定する当該職員の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。

 

1 はじめに

第32回では、国税不服審判所創設の経緯及び背景を検討し、その創設の核心が「納税者の自主性と個別性の尊重という方向」にあり、ここにこそ、裁判所による権利救済制度とは別に国税不服審判所による権利救済制度を設ける意義があることを確認した上で、国税不服審判所制度を、「納税者の自主性と個別性の尊重」に方向づけられ民主主義的租税観によって支持される権利救済制度として位置づけた()。

今回は、国税不服審判所の調査審理手続に関して争点主義的運営の要請を検討するが、その検討を始めるに当たって、国税不服審判所の創設をめぐる議論の過程でその要請がどのようにして形成されてきたのかをみておくことにしよう。

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国税通則法構造手続

【第35回】

「国税通則法97条(87条~96条・97条の2~97条の4)」

-国税不服審判所の調査審理手続と争点主義的運営の要請-

 

大阪学院大学法学部教授
谷口 勢津夫

 

国税通則法97条(審理のための質問、検査等)

(審理のための質問、検査等)

第97条 担当審判官は、審理を行うため必要があるときは、審理関係人の申立てにより、又は職権で、次に掲げる行為をすることができる。

一 審査請求人若しくは原処分庁(第4項において「審査請求人等」という。)又は関係人その他の参考人に質問すること。

二 前号に規定する者の帳簿書類その他の物件につき、その所有者、所持者若しくは保管者に対し、相当の期間を定めて、当該物件の提出を求め、又はこれらの者が提出した物件を留め置くこと。

三 第1号に規定する者の帳簿書類その他の物件を検査すること。

四 鑑定人に鑑定させること。

2 国税審判官、国税副審判官その他の国税不服審判所の職員は、担当審判官の嘱託により、又はその命を受け、前項第1号又は第3号に掲げる行為をすることができる。

3 国税審判官、国税副審判官その他の国税不服審判所の職員は、第1項第1号及び第3号に掲げる行為をする場合には、その身分を示す証明書を携帯し、関係者の請求があつたときは、これを提示しなければならない。

4 国税不服審判所長は、審査請求人等(審査請求人と特殊な関係がある者で政令で定めるものを含む。)が、正当な理由がなく、第1項第1号から第3号まで又は第2項の規定による質問、提出要求又は検査に応じないため審査請求人等の主張の全部又は一部についてその基礎を明らかにすることが著しく困難になつた場合には、その部分に係る審査請求人等の主張を採用しないことができる。

5 第1項又は第2項に規定する当該職員の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。

 

1 はじめに

第32回では、国税不服審判所創設の経緯及び背景を検討し、その創設の核心が「納税者の自主性と個別性の尊重という方向」にあり、ここにこそ、裁判所による権利救済制度とは別に国税不服審判所による権利救済制度を設ける意義があることを確認した上で、国税不服審判所制度を、「納税者の自主性と個別性の尊重」に方向づけられ民主主義的租税観によって支持される権利救済制度として位置づけた()。

今回は、国税不服審判所の調査審理手続に関して争点主義的運営の要請を検討するが、その検討を始めるに当たって、国税不服審判所の創設をめぐる議論の過程でその要請がどのようにして形成されてきたのかをみておくことにしよう。

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連載目次

谷口教授と学ぶ「国税通則法の構造と手続」

筆者紹介

谷口 勢津夫

(たにぐち・せつお)

大阪学院大学法学部教授

1956年高知県生まれ。京都大学法学部卒業、同大学大学院法学研究科博士後期課程単位修得退学。甲南大学法学部教授、大阪大学大学院高等司法研究科教授を経て2022年4月より現職。大阪大学名誉教授。ほかに大阪大学大学院高等司法研究科長・大阪大学法務室長、アレクサンダー・フォン・フンボルト財団奨励研究員(Forschungsstipendiat der Alexander von Humboldt-Stiftung)・ミュンヘン大学客員研究員、日本税法学会理事長、租税法学会理事、IFA(International Fiscal Association)日本支部理事、資産評価政策学会理事、司法試験考査委員、公認会計士試験試験委員、独立行政法人造幣局契約監視委員会委員・委員長、大阪府収用委員会委員・会長、大阪府行政不服審査会委員・会長、公益財団法人日本税務研究センター評議員・同「日税研究賞」選考委員、公益財団法人納税協会連合会「税に関する論文」選考委員、公益社団法人商事法務研究会「商事法務研究会賞」審査委員、近畿税理士会・近畿税務研究センター顧問など(一部現職。ほか歴任)。

主要著書は『租税条約論』(清文社・1999年)、『租税回避論』(清文社・2014年)、『租税回避研究の展開と課題〔清永敬次先生謝恩論文集〕』(共著・ミネルヴァ書房・2015年)、『税法の基礎理論』(清文社・2021年)、『税法基本講義〔第7版〕』(弘文堂・2021年)、『基礎から学べる租税法〔第3版〕』(共著・弘文堂・2022年)、『税法創造論』(清文社・2022年)、『税法基本判例Ⅰ』(清文社、2023年)など。
 
  

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