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実務書を書こうとするとき、はじめに選択を迫られるのが、1人で書く(単著)か、複数人で書く(共著)か、という点です。
単著で始めたものが途中から共著になる、共著で進めたものが途中から単著になるというケースは、通常であれば、ほとんどありません(あるとすれば、さまざまな理由で“やむを得ず”そうなったケースです)。
編集Xがこれらの判断に迷われている著者の方へお伝えする定番のコメントは、以下のようなものです。
「単著を経験された方は『次は共著がいい』とおっしゃいますし、共著を経験された方は『単著のほうが楽』とも言われます。要は、それぞれ一長一短ありますね!」
皆さんご想像のとおり、1人だけで原稿を書き上げ、発刊に至るのは、大変な労力がかかります。
そして、孤独です(いくら編集者のサポートがあったとしても、書くことまではお手伝いできません)。
ただし、誤解を恐れずにお伝えすると、単著は楽しいのです。
それは、ご自身がイメージする書籍(ゴール)へ向かって、ご自身の判断で進めることができるからです。
どのような構成とするか、どのように解説するか、どういう図表を載せればいいか、いつ頃原稿を書き上げいつ発刊するか? タイトルは? 等々。
(版元と調整しながらではありますが)著作権者としてのオリジナリティを遺憾なく発揮することができます。
書籍へ込めた想いを形にする楽しさ、これを独り占めできるのが単著です(カバーに載るのは自分の名前だけ!)。
もちろん単著ゆえの責任やプレッシャーはかかりますが、そもそも実務家の方々は普段からそういうお立場にある方が多いので、特別な状況とは言えないのかもしれません。
では共著はどうかというと、これもまた、一人では登れない大きな山の頂へ、仲間と共に到達するという、(逆に普段では味わえない)充実感があります。
また、ご自身が書くべき原稿の分量は単著に比べて大幅に減り、労力のわりに内容・ボリューム共に大きな成果を得ることができます。
ここで、共著のスタイルは大きく2つあるように思います。1つは、著作歴があり、かつ、その書籍の内容について精通した方を編者(中心)として、その方に指導を仰ぐ方や慕う方々が共著者として参集し、一冊の本を書き上げるもの。もう1つは横のつながり(まさにお仲間)で集まった数人が力を出し合い書き上げるもの。
出来上がった分厚い本を手に取ると、「これは私一人では出せなかったな」と感慨深く、発刊後の打上げ(≒お酒)はとても楽しい(≒美味しい)。
共著にはそういう良さがあります。
ただ、もちろん単著で味わう充実感とは異なりますし、共著者の一人としての意見が必ずしも採用されることは限りません(特に編者の方がおられるケース)。また最も問題となるのが「共著者ごとのモチベーションの差」であり、一方の方が熱い想いで締め切り通りに完全な原稿を書いたとしても、期限を守れず内容も想定したものとは異なる原稿が別の共著者から上がってくるときのストレスは、実はけっこう大きいのです(トラブルにもなりやすい)。
そうならないためには、月並みですが「最初に『しっかり』話し合う」ことだと思います。そういう意味では、飲み友だちがお酒の席で共著作を決めその企画が採用されたとしても、なかなか話が進まないことが多い。
では結局どうすればいいのか、正解は、と言いますと、やっぱり
「(前略)要は、それぞれ一長一短ありますね!」
というお話に尽きるのです。
アドバイスできるとすると、お一人での仕事を好み、かつ、執筆にかける時間がある(発刊も急がない)という場合は、単著から始めていただくのがよいと思います。
単著での著作を続けていると、そのうち「私も本を出したい」という若い方から憧れの眼差しとともにお声がかかり、彼らを率い編著者のお立場となって共著書を出すこともあります。そういう執筆経験の豊富な方が編者だと、編集者はすごく助かります。
また、書籍発刊という成果を早く獲得したい場合や、一人では書き上げられない原稿を複数の力で結集(分担)し仕上げることに面白さを感じるのであれば、共著をお薦めします。
書籍ごとに共著者を募り、大きな山を次々に踏破していくのも、執筆者としての醍醐味だと思います。
最後に、お気づきの方もいるかと思いますが、実はどちらのケースも結果として「(まだ単著を出す勇気を持てない)若手の著者を育てる場」になっております。
編集者は共著の編集作業をしながら、「こういう良い原稿を書く先生なら、単著での出版を提案してみたい」と、(虎視眈々と)狙っているので、結局は編集者にとって大変ありがたいというお話でした。
(注)この連載に書かれている内容は筆者の私見であり、所属する組織とは一切関係ありません<(_ _)>
(つづく)
「書く論」は、不定期の掲載となります。






















