《税務必敗法》
【第12回】
「議事録の内容を確認しなかった」
公認会計士・税理士 森 智幸
【事例】
X会計事務所の顧問先である創業4年目のスタートアップA社は、業績が好調のため、×8年度から定期同額給与に加えて、初めて役員賞与を支給することにした。なお、役員賞与はすべて金銭で支給予定である。
A社は3月決算で、定時株主総会は6月に開催される。また、A社は同族会社ではなく、役員はすべて常勤である。
X会計事務所の担当税理士甲は、毎月A社から取締役会議事録の写しを受領している。×8年5月の取締役会では、招集手続の決定において、×8年6月19日開催予定の定時株主総会の議案に役員賞与の支給も含まれ、その議事録も提出された。
定時株主総会では役員賞与は総額のみが決議され、具体的な支給対象者・支給額・支給時期は、同年6月24日の臨時取締役会において確定した。また、定時株主総会と臨時取締役会の議事録の写しは同年6月30日に甲に提出された。
しかし、甲は議事録を受け取るだけで全く見ておらず、役員賞与の支給の決定を把握していなかった。そのため、甲は「事前確定届出給与に関する届出書」(以下「届出書」という)を提出していなかった。
一方、A社の経理部長は、法人税法上、役員賞与を損金算入するには、事前確定届出給与として届出が必要であることを知らず、甲へ事前相談をしていなかった。
翌年の×9年2月に税務調査が入った。この調査において、届出書が提出されていないことから、役員賞与は損金算入することができないことを指摘され、A社は法人税等の追加納付をすることになった。
驚いたA社は「届出書が提出されていなければ役員賞与が損金算入されないなんて知りませんでした。なぜ教えてくれなかったのですか。」と甲に説明を求めた。すると、甲は「事前に告知がなかった」と反論した。
しかし、A社は「毎月、先生には取締役会議事録を提出していました。株主総会議事録も提出しました。それらを読んでいただければ事前に把握できたのではないですか」と再反論し、損害賠償を請求することになった。
結局、両者の主張は平行線のままとなり、X会計事務所はA社の信頼を失い、×9年6月の確定申告を機に契約解除となった。
1 はじめに
本連載は、税務を行う上で「これをやったら失敗する」という必敗法を紹介するものである。今回は「議事録の内容を確認しなかった」である。
税務においては、事前に届出書を提出していないと認められない制度が多数ある。本事例で取り上げた役員賞与に関する「事前確定届出給与に関する届出書」もそのひとつである。
しかしながら、株式会社等の経理担当者の中には、このような損金算入の要件を知らない人も少なくない。そのため、事例のように事前に会計事務所に相談がないケースも想定される。
とはいえ、取締役会議事録等を確認して顧問先の事業計画などを把握できていれば、それに基づいて制度の案内や税務の対応をすることも可能である。
逆に、事例のように、議事録を入手していても内容を確認していなければ、税務の事故にもつながることもある。
そこで、今回は会計事務所が顧問先の議事録を入手して内容を確認することの重要性を解説する。
なお、本稿は私見であることにご留意いただきたい。
この記事全文をご覧いただくには、プロフェッションネットワークの会員登録およびログインが必要です。
すでに会員登録をされている方は、下記ボタンからログインのうえ、ご覧ください。
Profession Journalのすべての記事をご覧いただくには、「プレミアム会員(有料)」へのご登録が必要となります。
なお、『速報解説』については「一般会員(無料)」へのご登録でも、ご覧いただけます。
※他にもWebセミナー受け放題のスーパープレミアム会員などがございます。
会員登録がお済みでない方は、下記会員登録のボタンより、ご登録のお手続きをお願いいたします。





















