組織再編税制における不確定概念
【第6回】
「意図的な含み損の実現」
公認会計士 佐藤 信祐
平成22年度税制改正によりグループ法人税制が導入され、完全支配関係のある内国法人間で資産を譲渡した場合には、譲渡損益が繰り延べられることになった。
そのため、完全支配関係のある内国法人間で含み損のある資産を譲渡することにより譲渡損失を実現する行為については、グループ法人税制の導入により制約を受けることになった。
しかしながら、グループ法人税制は、完全支配関係のある内国法人の間で資産を譲渡した場合にのみ適用されるため、それ以外の者に対する資産の譲渡については適用されない。
本稿では、グループ法人税制が導入された後における資産の含み損の実現について、租税回避行為として認定されるか否かについて解説を行う。
1 基本的な論点
資産の含み損を実現させる目的で、グループ会社に対して資産を譲渡することにより譲渡損失を認識する行為に対応するために、平成22年度税制改正により、グループ法人税制が導入され、完全支配関係のある内国法人間における資産の譲渡については譲渡損益が繰り延べられることになり(法法61の13①)、非適格組織再編成に伴う資産の譲渡についても同様に譲渡損益が繰り延べられることになった。
さらに、完全支配関係のある内国法人間における非適格株式交換や非適格株式移転についても、時価評価課税の対象から除外されることになった(法法62の9)。
そのため、現行法上、含み損を実現させるためだけの資産の譲渡や組織再編成については一定の制約が設けられているものの、50%超100%未満グループ内における内国法人間の資産の譲渡、支配関係又は完全支配関係のある外国法人に対する資産の譲渡、自然人に対する資産の譲渡については、グループ法人税制の対象外となっていることから、資産の含み損を実現させるためだけの資産の譲渡が行われる可能性は否めない。
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