公開日: 2016/02/25 (掲載号:No.158)
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[子会社不祥事を未然に防ぐ]グループ企業における内部統制システムの再構築とリスクアプローチ 【第10回】「グループ企業への具体的な関与(その4)」~監査機能の課題と重要性②~

筆者: 松藤 斉

[子会社不祥事を未然に防ぐ]
グループ企業における内部統制システムの再構築とリスクアプローチ

【第10回】

「グループ企業への具体的な関与(その4)」
~監査機能の課題と重要性②~

 

公認会計士 松藤 斉

 

(2 不正リスク対応の監査体制の課題)

③ 会計監査人

▷ 精神的独立性

会計監査人、監査事務所に対しては、昨今の巨額不正会計の続発を受け、国内外から監査品質について疑問視され、ますます厳格な監査の実施を期待されている状況である。不正リスク対応監査においては、監査基準の厳格化や当局指導を受け、監査手続強化、所内研修、審査機能強化の流れの中で不正の端緒を発見する機会も徐々に増えているようである。また、監査事務所への告発を契機に実態調査に発展する事例もある。

しかし、報酬を支払う監査先に対する精神的独立性の問題があるのは事実である。確かに、会社法改正によって会計監査人の選任・解任等の議案の決定権が監査役会に与えられ、取締役の職務執行を監査する監査役(会)との関係がすっきりした。一方、監査対象である取締役及びその他の役職員との相互関係性、コミュニケーションによって現場の監査が成り立っており、翌期の監査でいきなり厳しい態度で臨むのも難しいものである。

仮に監査事務所ローテーション制度が日本で導入された場合でも同様であるが、形式は独立、実質は遠慮とならぬよう、監査役(会)、監査委員(会)とのコミュニケーションの質、量を相当増やして、執行側、取締役(会)、監査役(会)とのバランスを保ち不正対応監査を進めるべきである。

▷ 不正リスク対応監査

次に、監査現場が持つ課題としては、監査先とのコミュニケーション不足、増える一方の監査手続及び文書化、品質管理のための工数に比しての予算や対応の不足が挙げられよう。

また、筆者の現役時代と比べると、内部統制監査、四半期監査を含め、監査対象データ、監査対象取引の複雑性などが膨大に増えている中で、それらを克服できるだけの技術革新が必ずしも得られているとも言えない現状があるのではないか。

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グループ企業における内部統制システムの再構築とリスクアプローチ

【第10回】

「グループ企業への具体的な関与(その4)」
~監査機能の課題と重要性②~

 

公認会計士 松藤 斉

 

(2 不正リスク対応の監査体制の課題)

③ 会計監査人

▷ 精神的独立性

会計監査人、監査事務所に対しては、昨今の巨額不正会計の続発を受け、国内外から監査品質について疑問視され、ますます厳格な監査の実施を期待されている状況である。不正リスク対応監査においては、監査基準の厳格化や当局指導を受け、監査手続強化、所内研修、審査機能強化の流れの中で不正の端緒を発見する機会も徐々に増えているようである。また、監査事務所への告発を契機に実態調査に発展する事例もある。

しかし、報酬を支払う監査先に対する精神的独立性の問題があるのは事実である。確かに、会社法改正によって会計監査人の選任・解任等の議案の決定権が監査役会に与えられ、取締役の職務執行を監査する監査役(会)との関係がすっきりした。一方、監査対象である取締役及びその他の役職員との相互関係性、コミュニケーションによって現場の監査が成り立っており、翌期の監査でいきなり厳しい態度で臨むのも難しいものである。

仮に監査事務所ローテーション制度が日本で導入された場合でも同様であるが、形式は独立、実質は遠慮とならぬよう、監査役(会)、監査委員(会)とのコミュニケーションの質、量を相当増やして、執行側、取締役(会)、監査役(会)とのバランスを保ち不正対応監査を進めるべきである。

▷ 不正リスク対応監査

次に、監査現場が持つ課題としては、監査先とのコミュニケーション不足、増える一方の監査手続及び文書化、品質管理のための工数に比しての予算や対応の不足が挙げられよう。

また、筆者の現役時代と比べると、内部統制監査、四半期監査を含め、監査対象データ、監査対象取引の複雑性などが膨大に増えている中で、それらを克服できるだけの技術革新が必ずしも得られているとも言えない現状があるのではないか。

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連載目次

「[子会社不祥事を未然に防ぐ]グループ企業における内部統制システムの再構築とリスクアプローチ」(全12回)

  • 【第1回】
    子会社の不祥事が親会社・親会社役員にもたらすインパクト
    ~場合によっては親会社の屋台骨をゆらがしかねない子会社の不祥事~
    (遠藤元一)
  • 【第2回】
    周辺エリアで生じやすい不祥事
    ~子会社で不祥事が生じやすいのには、様々な要因がある~
    (松澤公貴)
  • 【第3回】
    子会社管理についての判例・裁判例と平成26年改正会社法の影響
    ~グループ企業経営が会社法の本体に格上げされたことで親会社の責任はどのように変わるのか?~
    (遠藤元一)
  • 【第4回】
    グループ企業管理に関わる基本的方針(その1)
    ~親会社は全社的な統制とグループ会社の自主・独立性をどのように調和させるのか?~
    (遠藤元一)
  • 【第5回】
    グループ企業管理に関わる基本的方針(その2)
    ~リスクベースドアプローチの重要性~
    (遠藤元一)
  • 【第6回】
    グループ企業管理に関わる基本的方針(その3)
    ~早期不正対処の重要性~
    (松澤公貴)
  • 【第7回】
    グループ企業への具体的な関与(その1)
    ~法令遵守に係る基本的・具体的アプローチ~
    (遠藤元一)
  • 【第8回】
    グループ企業への具体的な関与(その2)
    ~リスク管理に係る基本的・具体的アプローチ~
    (遠藤元一)
  • 【第9回】
    グループ企業への具体的な関与(その3)
    ~監査機能の課題と重要性①~
    (松藤 斉)
  • 【第10回】
    グループ企業への具体的な関与(その4)
    ~監査機能の課題と重要性②~
    (松藤 斉)
  • 【第11回】
    グループ企業への具体的な関与(その5)
    ~グループ内部通報が親会社を救う~
    (遠藤元一)
  • 【第12回】
    海外子会社の内部統制システムとコンプライアンス強化
    ~親会社視点での国内子会社との相違点・留意点等~
    (遠藤元一)

筆者紹介

松藤 斉

(まつふじ・ひとし)

・早稲田大学第一政治経済学部政治学科卒(1975)
・公認会計士(1982~)
・有限責任監査法人トーマツグループ出身(勤務期間 1975~2014、パートナー 1990~2014)
・公認会計士松藤斉事務所代表(現在)
・日本公認不正検査士協会評議員(~2014)
・上場会社の日本、米国、国際会計基準監査、日本企業グローバルオファリング、米国上場指導に従事
・トーマツグループ子会社にて不正関連業務(フォレンジック)リーダーとして各種調査、アドバイザリー業務に従事、不正等調査委員等を歴任(2006~2014)

関連書籍

適時開示からみた監査法人の交代理由

公認会計士 鈴木広樹 著

不正・誤謬を見抜く実証手続と監査実務

EY新日本有限責任監査法人 編

先進事例と実践 人的資本経営と情報開示

EY新日本有限責任監査法人 編 EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社 編

気候変動リスクと会社経営 はじめの一歩

公認会計士 石王丸周夫 著

ドローン・ビジネスと法規制

森・濱田松本法律事務所 AI・IoTプラクティスグループ 編 弁護士 戸嶋浩二 編集代表 弁護士 林 浩美 編集代表 弁護士 岡田 淳 編集代表

法務コンプライアンス実践ガイド

弁護士・青山学院大学法学部教授 浜辺陽一郎 著

不正会計リスクにどう立ち向かうか!

公認会計士・公認不正検査士 宇澤亜弓 著

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