理由付記の不備をめぐる事例研究
【第19回】
(最終回)
「青色申告承認取消処分の事例②」
~青色申告承認取消事由(取引を隠ぺい仮装して記載等)に該当すると判断した理由は?~
中央大学大学院商学研究科 博士後期課程
(酒井克彦研究室所属)
泉 絢也
本連載の最終回となる今回は、青色申告法人X社に対して、架空の試験研究費を計上していた事実等が法人税法127条1項3号に該当するものとして行われた青色申告承認取消処分の理由付記の十分性が争われた、東京地裁平成16年10月15日判決(税資254号順号9780。以下「本判決」という)を取り上げる。
1 青色申告の承認の取消通知書に記載された処分の理由(本件理由付記)
青色申告の承認の取消通知書
貴法人の青色申告の承認は、次の事実が法人税法127条第1項第3号に該当するので、 自×4年4月1日 至×5年3月31日 事業年度以後これを取り消したから通知します。
(取消処分の基因となった事実)
貴法人は、×4年4月1日から×5年3月31日までの事業年度(以下「×5年3月期」といいます。)において、B株式会社に対する試験研究費を総勘定元帳に計上していますが、同社に確認したところ、次の事実が認められました。
貴法人は、B株式会社に依頼して、貴法人宛の架空の請求書を作成させた上、これに基づいて総勘定元帳の試験研究費科目に、×4年5月29日に300万円を計上し、その支払として、振込手数料721円を差し引いた299万9,279円をC銀行T支店のB名義の普通預金口座に送金し、その支払金額の2分の1である150万円をB株式会社から貴法人に現金で戻させていたのをはじめとして、総額で2,400万円の架空試験研究費を計上していたことが認められます。
このことは、貴法人が、×5年3月期に係る帳簿書類に「その事業年度に係る帳簿書類に取引の全部又は一部を隠蔽し又は仮装して記載し又は記録し、その他その記載又は記録をした事項の全体についてその真実性を疑うに足りる相当の理由があること」に当たり、法人税法127条1項3号の規定に該当しますので、×5年3月期以後の事業年度の青色申告の承認を取消します。
(注) 素材とした本判決の判決文から読み取ることができる理由付記の一部を筆者が加工している。
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