公開日: 2022/10/21
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《速報解説》 会計士協会が監基報600「グループ監査における特別な考慮事項」の改正案を公表~コミュニケーション・職業的懐疑心の重要性を強調、品質管理への取組み等見直す~

筆者: 阿部 光成

《速報解説》

会計士協会が監基報600「グループ監査における特別な考慮事項」の改正案を公表

~コミュニケーション・職業的懐疑心の重要性を強調、品質管理への取組み等見直す~

 

公認会計士 阿部 光成

 

Ⅰ はじめに

2022年10月18日、日本公認会計士協会は、「監査基準報告書600「グループ監査における特別な考慮事項」の改正について」(公開草案)を公表し、意見募集を行っている。

これは、2022年4月に国際監査・保証基準審議会(IAASB)から公表された、International Standard on Auditing 600 (Revised), Special Considerations- Audits of Group Financial Statements (Including the Work of Component Auditors)に対応するためのものである。

意見募集期間は2022年11月25日までである。

文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。

 

Ⅱ 主な内容

1 適用範囲

本報告書は、構成単位の監査人が関与する状況を含む、グループ財務諸表の監査(以下「グループ監査」という)に関して、特に考慮すべき事項を中心に実務上の指針を提供するものである(1項)。

グループ財務諸表は、連結プロセスを通じて作成された複数の企業又は事業単位の財務情報を含む財務諸表である(14項(11))。

このように「グループ財務諸表」の定義を具体化し、個別財務諸表監査であっても複数の事業単位(例えば、支店又は部門)が存在する場合、グループ監査の対象になり得ることを明確化している(14項(11))。

2 グループ監査人

現行監基報600の「グループ監査チーム」を廃止し、「グループ監査人」を新設している。

グループ監査人とは、グループ監査責任者及び構成単位の監査人以外の監査チームのメンバーをいう(14項(8))。

3 構成単位の監査人

構成単位の監査人とは、グループ監査の目的で構成単位に関連する監査の作業を実施する監査人をいう(14項(3))。

4 品質管理への積極的な取組み

グループ監査人が、グループ財務諸表に対する重要な虚偽表示リスクを識別及び評価し、評価したグループ財務諸表に対する重要な虚偽表示リスクに基づいて、リスク対応手続を決定することがより強調されている(13項(2))。

重要な構成単位の概念は廃止されている。

監査の作業を実施する構成単位の決定の柔軟性の確保とともに(5項及び22項(1))、適用指針において、決定に影響する要素の例示として、事業単位における資産、負債及び取引の規模並びに内容が含まれている(A51項)。

5 重要性

現行の「構成単位の重要性の基準値」に代えて、構成単位の財務情報の監査手続を立案及び実施する際に適切な「構成単位の手続実施上の重要性」の決定を要求している(35項)。

6 コミュニケーションの強調

グループ監査人と構成単位の監査人の双方向のコミュニケーションの重要性を強調している(8項)。

7 職業的懐疑心の重要性の強調

グループ監査人の職業的専門家としての懐疑心を行使することの重要性を強調している(9項)。

8 構成単位の監査人の作業の妥当性の評価

グループ監査人は、構成単位の監査人の作業がグループ監査人の目的に照らして十分ではないと結論付けた場合、どのような追加的な監査手続を実施すべきか、及びその追加的な監査手続を構成単位の監査人又はグループ監査人のいずれが実施すべきかを決定しなければならないとしている(48項)。

9 適用の柔軟性

本報告書は、規模や複雑さを問わず、すべてのグループ監査を対象としている(10項)。

ただし、本報告書の要求事項は、各グループ監査の性質又は状況に照らして適用されることを意図している。

 

Ⅲ 適用時期等

原則として、2024年4月1日以後開始する事業年度に係る財務諸表の監査及び同日以後開始する中間会計期間に係る中間財務諸表の中間監査から適用する予定である(12項)。

適用時期等が詳細に規定されているので、注意が必要である。

(了)

《速報解説》

会計士協会が監基報600「グループ監査における特別な考慮事項」の改正案を公表

~コミュニケーション・職業的懐疑心の重要性を強調、品質管理への取組み等見直す~

 

公認会計士 阿部 光成

 

Ⅰ はじめに

2022年10月18日、日本公認会計士協会は、「監査基準報告書600「グループ監査における特別な考慮事項」の改正について」(公開草案)を公表し、意見募集を行っている。

これは、2022年4月に国際監査・保証基準審議会(IAASB)から公表された、International Standard on Auditing 600 (Revised), Special Considerations- Audits of Group Financial Statements (Including the Work of Component Auditors)に対応するためのものである。

意見募集期間は2022年11月25日までである。

文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。

 

Ⅱ 主な内容

1 適用範囲

本報告書は、構成単位の監査人が関与する状況を含む、グループ財務諸表の監査(以下「グループ監査」という)に関して、特に考慮すべき事項を中心に実務上の指針を提供するものである(1項)。

グループ財務諸表は、連結プロセスを通じて作成された複数の企業又は事業単位の財務情報を含む財務諸表である(14項(11))。

このように「グループ財務諸表」の定義を具体化し、個別財務諸表監査であっても複数の事業単位(例えば、支店又は部門)が存在する場合、グループ監査の対象になり得ることを明確化している(14項(11))。

2 グループ監査人

現行監基報600の「グループ監査チーム」を廃止し、「グループ監査人」を新設している。

グループ監査人とは、グループ監査責任者及び構成単位の監査人以外の監査チームのメンバーをいう(14項(8))。

3 構成単位の監査人

構成単位の監査人とは、グループ監査の目的で構成単位に関連する監査の作業を実施する監査人をいう(14項(3))。

4 品質管理への積極的な取組み

グループ監査人が、グループ財務諸表に対する重要な虚偽表示リスクを識別及び評価し、評価したグループ財務諸表に対する重要な虚偽表示リスクに基づいて、リスク対応手続を決定することがより強調されている(13項(2))。

重要な構成単位の概念は廃止されている。

監査の作業を実施する構成単位の決定の柔軟性の確保とともに(5項及び22項(1))、適用指針において、決定に影響する要素の例示として、事業単位における資産、負債及び取引の規模並びに内容が含まれている(A51項)。

5 重要性

現行の「構成単位の重要性の基準値」に代えて、構成単位の財務情報の監査手続を立案及び実施する際に適切な「構成単位の手続実施上の重要性」の決定を要求している(35項)。

6 コミュニケーションの強調

グループ監査人と構成単位の監査人の双方向のコミュニケーションの重要性を強調している(8項)。

7 職業的懐疑心の重要性の強調

グループ監査人の職業的専門家としての懐疑心を行使することの重要性を強調している(9項)。

8 構成単位の監査人の作業の妥当性の評価

グループ監査人は、構成単位の監査人の作業がグループ監査人の目的に照らして十分ではないと結論付けた場合、どのような追加的な監査手続を実施すべきか、及びその追加的な監査手続を構成単位の監査人又はグループ監査人のいずれが実施すべきかを決定しなければならないとしている(48項)。

9 適用の柔軟性

本報告書は、規模や複雑さを問わず、すべてのグループ監査を対象としている(10項)。

ただし、本報告書の要求事項は、各グループ監査の性質又は状況に照らして適用されることを意図している。

 

Ⅲ 適用時期等

原則として、2024年4月1日以後開始する事業年度に係る財務諸表の監査及び同日以後開始する中間会計期間に係る中間財務諸表の中間監査から適用する予定である(12項)。

適用時期等が詳細に規定されているので、注意が必要である。

(了)

筆者紹介

阿部 光成

(あべ・みつまさ)

公認会計士
中央大学商学部卒業。阿部公認会計士事務所。

現在、豊富な知識・情報力を活かし、コンサルティング業のほか各種実務セミナー講師を務める。
企業会計基準委員会会社法対応専門委員会専門委員、日本公認会計士協会連結範囲専門委員会専門委員長、比較情報検討専門委員会専門委員長を歴任。

主な著書に、『新会計基準の実務』(編著、中央経済社)、『企業会計における時価決定の実務』(共著、清文社)、『新しい事業報告・計算書類―経団連ひな型を参考に―〔全訂第2版〕』(編著、商事法務)がある。

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