公開日: 2026/07/09 (掲載号:No.676)
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〔会計不正調査報告書を読む〕 【第188回】SAAFホールディングス株式会社「特別調査委員会調査報告書(公表版)(2026年6月11日付)」

筆者: 米澤 勝

〔会計不正調査報告書を読む〕

【第188回】

SAAFホールディングス株式会社

「特別調査委員会調査報告書(公表版)(2026年6月11日付)」

 

税理士・公認不正検査士(CFE)
米澤 勝

 

【SAAFホールディングス株式会社調査委員会による調査の概要】

【適時開示】

【調査委員会の構成】

【委員長】

番匠史人(弁護士 ひふみ総合法律事務所)

【委 員】

杉田篤史(公認会計士 株式会社WARC)

堤 大輔(弁護士 ひふみ総合法律事務所)

【調査補助者】

ひふみ総合法律事務所 弁護士:吉良一真、生井佳代

玉川法律事務所 弁護士:玉川竜大

株式会社WARC 公認会計士:渡井肇洋、佐藤友裕、東貴志、中村知義、坂下怜央、横田輝晃ほか1名

株式会社foxcale 公認会計士:小池赳司、吉津亮介

〔調査期間〕

2026年3月3日から同年6月10日まで

〔特別調査委員会による調査の目的〕

(1) 本件事案に関する事実関係の調査

(2) 本件事案の類似事案の存否及び事実関係の調査

(3) 上記(1)及び(2)の調査で確認された事実並びに本件事案に係る当社の対応及び内部管理体制等に関する検証・評価

(4) 上記(1)から(3)の検証において問題が認められた場合における原因分析及び再発防止策の検討・提言

(5) その他、特別調査委員会が必要と認めた事項

〔調査結果〕

 

【SAAFホールディングス株式会社の概要】

SAAFホールディングス株式会社(以下、「SAAF」と略称する)は、2018年10月、ITbook株式会社とサムシングホールディングス株式会社が共同株式移転の方法により設立。設立時の社名はITbookホールディングス株式会社(2024年9月、現商号に変更)。コンサルティング事業、システム開発事業、人材事業、地盤調査改良事業、保証検査事業、建設テック事業及び海外事業を主たる事業とする。

連結子会社19社(うち海外子会社2社)、持分法適用会社1社によりグループを構成している。売上高29,580百万円、経常利益1,001百万円、当期純利益460百万円、資本金1,909百万円、従業員数1,315人。元代表取締役社長の前俊守氏が発行済み株式の5.82%を所有している(いずれも2026年3月期有価証券報告書による)。

本店所在地は東京都江東区。東京証券取引所グロース市場上場。会計監査人は、2025年3月期決算までゼロス有限責任監査法人、2025年6月24日付で、フロンティア監査法人が就任している。

【SAAFホールディングスと元代表取締役社長をめぐる紛争の経緯】

2025年4月30日 代表取締役社長の前俊守氏(以下「前氏」と略称する)が、代表取締役社長を辞任したことを公表。
「代表取締役の異動に関するお知らせ」
5月9日 会計監査人であるゼロス有限責任監査法人が6月24日開催の定時株主総会終結の時をもって任期満了となり、新たにフロンティア監査法人を会計監査人として選任したことを公表。
「公認会計士等の異動に関するお知らせ」
5月27日 前氏が定時株主総会終結の時をもって退任することを公表。
「取締役および補欠監査役候補者の選任に関するお知らせ」
6月24日 定時株主総会において、会社提案の議案はすべて承認可決。
「第7回定時株主総会決議後通知」
代表取締役社長執行役員に、左奈田直幸氏が就任。
2026年2月5日 株主である前氏から、取締役7名の解任と新たに取締役7名を選任することを議案とする臨時株主総会招集請求があったことを公表。
「株主による臨時株主総会招集請求に関するお知らせ」
3月3日 特別調査委員会設置
3月23日 東京地方裁判所が、前氏による株主総会招集許可申立てに対して、許可決定を行ったことを公表。
「株主による株主総会招集の許可決定に関するお知らせ」
4月29日 特別調査委員会の調査報告書(中間報告)を受領。
5月12日 臨時株主総会開催
株主である前氏が提案した議案すべて承認可決されたことを公表。
「臨時株主総会決議ご通知および当社の対応に関するお知らせ」
5月22日 東京地方裁判所に対して、前氏提案取締役候補者が取締役および代表取締役の地位にないことの仮処分の申立てを行ったことを公表。
「(開示事項の経過)当社取締役による地位確認仮処分の申立ておよび当社による地位確認仮処分の申立ての取下げに関するお知らせ」
6月2日 東京地方裁判所が、前氏提案の取締役候補者が「取締役および代表取締役の地位にないことを仮に定める」との決定をしたことを公表。
「(開示事項の経過)当社取締役による地位確認仮処分命令決定に関するお知らせ」
6月11日 特別調査委員会による調査報告書(最終報告)を公表。
6月24日 東京地方裁判所が、株主である前氏による定時株主総会開催禁止仮処分申立てを却下したことを公表。
「当社株主による定時株主総会開催禁止仮処分申立て却下決定ならびに当社株主による一時取締役および一時代表取締役選任申立て却下決定に関するお知らせ」
6月29日 定時株主総会において、会社提案の議案はすべて承認可決。
「第8回定時株主総会決議後通知」
株主提案に係る第5号議案「取締役7名選任の件」は否決。

 

【特別調査委員会による調査報告書の概要】

1 特別調査委員会設置の経緯

2025年3月下旬から4月上旬にかけて、SAAFの常勤監査役らに対し、複数回にわたる内部告発があり、その内容は、当時、当社の代表取締役社長であり、100%子会社である株式会社サムシングの代表取締役会長であった前俊守氏、執行役員であり、サムシング代表取締役社長であった小白川貢氏(以下、「小白川氏」と略称する)及び常務取締役であり、サムシングの代表取締役副社長であった東剛志氏(報告書上の表記は「α氏」。以下、「東氏」と略称する)によるサムシングにおける交際費及び旅費交通費の私的流用の疑い、並びに前氏の親族でありSAAFの内部監査室長であったYa氏に対する不相当な高額給与の支払及び同給与の一部の前氏への還流の疑いの指摘を含むものであった。

監査役会は、上記及びに加え、同時期に新たに疑義が生じていたSAAFがM&Aにより子会社化した株式会社ユーシンの代表取締役会長が前氏に対して行った融資について、SAAFによる買収資金を原資とした迂回融資の疑いも併せて調査の対象とし、常勤監査役である西山靖氏の主導で調査を実施した。

4月25日には、監査役会から取締役会に対し、前氏の一部の経費について私的流用が疑われる旨等の調査結果が報告され、4月30日、前氏は、代表取締役を辞任し(取締役の地位は留保)、同日、松場清志取締役(以下「松場氏」という。)が新たに当社代表取締役に選任された。

その後、SAAFは、より独立・中立的な立場からの調査が必要であるとして、5月9日、A法律事務所のZa弁護士(特別調査委員会を構成する弁護士とは異なる)に対し、上記からまでの各疑惑に係る調査を委嘱した。Za弁護士は、調査を行うにあたり、「SAAFホールディングス株式会社内部調査委員会」と称する組織を設置した。内部調査委員会の調査においては、5月の中間報告の時点で、前氏の経費の私的流用が認められる旨の結果が示されたため、SAAFは、5月27日に開催された取締役会において、前氏及び東氏について、6月24日に開催予定の定時株主総会に提出する取締役選任議案の候補者としないことを決定し、これに基づき、前氏及び東氏は、同株主総会の終結の時をもって任期満了により取締役を退任した。また、前氏は当社及びサムシングを含む全ての子会社の各役職を辞任又は退任し、小白川氏及び東氏も同様に各役職を辞任又は退任した。

その後、取締役退任後もSAAFの株式を保有していた前氏は、2026年1月27日付で株主として臨時株主総会招集請求を行い、前氏及び小白川氏を含む7名を取締役候補者とする取締役選任の付議議案を提案した。

こうした状況を踏まえ、SAAFは、内部調査委員会の調査において問題とされた本件事案並びに本件事案に係る当社の対応及び内部管理体制等について、株主に対する透明性の確保及び客観的な判断材料の提供の観点から、当社から独立した中立かつ公正な立場による詳細な調査・検証・評価が必要であると判断し、3月3日、特別調査委員会を設置した。

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〔会計不正調査報告書を読む〕

【第188回】

SAAFホールディングス株式会社

「特別調査委員会調査報告書(公表版)(2026年6月11日付)」

 

税理士・公認不正検査士(CFE)
米澤 勝

 

【SAAFホールディングス株式会社調査委員会による調査の概要】

【適時開示】

【調査委員会の構成】

【委員長】

番匠史人(弁護士 ひふみ総合法律事務所)

【委 員】

杉田篤史(公認会計士 株式会社WARC)

堤 大輔(弁護士 ひふみ総合法律事務所)

【調査補助者】

ひふみ総合法律事務所 弁護士:吉良一真、生井佳代

玉川法律事務所 弁護士:玉川竜大

株式会社WARC 公認会計士:渡井肇洋、佐藤友裕、東貴志、中村知義、坂下怜央、横田輝晃ほか1名

株式会社foxcale 公認会計士:小池赳司、吉津亮介

〔調査期間〕

2026年3月3日から同年6月10日まで

〔特別調査委員会による調査の目的〕

(1) 本件事案に関する事実関係の調査

(2) 本件事案の類似事案の存否及び事実関係の調査

(3) 上記(1)及び(2)の調査で確認された事実並びに本件事案に係る当社の対応及び内部管理体制等に関する検証・評価

(4) 上記(1)から(3)の検証において問題が認められた場合における原因分析及び再発防止策の検討・提言

(5) その他、特別調査委員会が必要と認めた事項

〔調査結果〕

 

【SAAFホールディングス株式会社の概要】

SAAFホールディングス株式会社(以下、「SAAF」と略称する)は、2018年10月、ITbook株式会社とサムシングホールディングス株式会社が共同株式移転の方法により設立。設立時の社名はITbookホールディングス株式会社(2024年9月、現商号に変更)。コンサルティング事業、システム開発事業、人材事業、地盤調査改良事業、保証検査事業、建設テック事業及び海外事業を主たる事業とする。

連結子会社19社(うち海外子会社2社)、持分法適用会社1社によりグループを構成している。売上高29,580百万円、経常利益1,001百万円、当期純利益460百万円、資本金1,909百万円、従業員数1,315人。元代表取締役社長の前俊守氏が発行済み株式の5.82%を所有している(いずれも2026年3月期有価証券報告書による)。

本店所在地は東京都江東区。東京証券取引所グロース市場上場。会計監査人は、2025年3月期決算までゼロス有限責任監査法人、2025年6月24日付で、フロンティア監査法人が就任している。

【SAAFホールディングスと元代表取締役社長をめぐる紛争の経緯】

2025年4月30日 代表取締役社長の前俊守氏(以下「前氏」と略称する)が、代表取締役社長を辞任したことを公表。
「代表取締役の異動に関するお知らせ」
5月9日 会計監査人であるゼロス有限責任監査法人が6月24日開催の定時株主総会終結の時をもって任期満了となり、新たにフロンティア監査法人を会計監査人として選任したことを公表。
「公認会計士等の異動に関するお知らせ」
5月27日 前氏が定時株主総会終結の時をもって退任することを公表。
「取締役および補欠監査役候補者の選任に関するお知らせ」
6月24日 定時株主総会において、会社提案の議案はすべて承認可決。
「第7回定時株主総会決議後通知」
代表取締役社長執行役員に、左奈田直幸氏が就任。
2026年2月5日 株主である前氏から、取締役7名の解任と新たに取締役7名を選任することを議案とする臨時株主総会招集請求があったことを公表。
「株主による臨時株主総会招集請求に関するお知らせ」
3月3日 特別調査委員会設置
3月23日 東京地方裁判所が、前氏による株主総会招集許可申立てに対して、許可決定を行ったことを公表。
「株主による株主総会招集の許可決定に関するお知らせ」
4月29日 特別調査委員会の調査報告書(中間報告)を受領。
5月12日 臨時株主総会開催
株主である前氏が提案した議案すべて承認可決されたことを公表。
「臨時株主総会決議ご通知および当社の対応に関するお知らせ」
5月22日 東京地方裁判所に対して、前氏提案取締役候補者が取締役および代表取締役の地位にないことの仮処分の申立てを行ったことを公表。
「(開示事項の経過)当社取締役による地位確認仮処分の申立ておよび当社による地位確認仮処分の申立ての取下げに関するお知らせ」
6月2日 東京地方裁判所が、前氏提案の取締役候補者が「取締役および代表取締役の地位にないことを仮に定める」との決定をしたことを公表。
「(開示事項の経過)当社取締役による地位確認仮処分命令決定に関するお知らせ」
6月11日 特別調査委員会による調査報告書(最終報告)を公表。
6月24日 東京地方裁判所が、株主である前氏による定時株主総会開催禁止仮処分申立てを却下したことを公表。
「当社株主による定時株主総会開催禁止仮処分申立て却下決定ならびに当社株主による一時取締役および一時代表取締役選任申立て却下決定に関するお知らせ」
6月29日 定時株主総会において、会社提案の議案はすべて承認可決。
「第8回定時株主総会決議後通知」
株主提案に係る第5号議案「取締役7名選任の件」は否決。

 

【特別調査委員会による調査報告書の概要】

1 特別調査委員会設置の経緯

2025年3月下旬から4月上旬にかけて、SAAFの常勤監査役らに対し、複数回にわたる内部告発があり、その内容は、当時、当社の代表取締役社長であり、100%子会社である株式会社サムシングの代表取締役会長であった前俊守氏、執行役員であり、サムシング代表取締役社長であった小白川貢氏(以下、「小白川氏」と略称する)及び常務取締役であり、サムシングの代表取締役副社長であった東剛志氏(報告書上の表記は「α氏」。以下、「東氏」と略称する)によるサムシングにおける交際費及び旅費交通費の私的流用の疑い、並びに前氏の親族でありSAAFの内部監査室長であったYa氏に対する不相当な高額給与の支払及び同給与の一部の前氏への還流の疑いの指摘を含むものであった。

監査役会は、上記及びに加え、同時期に新たに疑義が生じていたSAAFがM&Aにより子会社化した株式会社ユーシンの代表取締役会長が前氏に対して行った融資について、SAAFによる買収資金を原資とした迂回融資の疑いも併せて調査の対象とし、常勤監査役である西山靖氏の主導で調査を実施した。

4月25日には、監査役会から取締役会に対し、前氏の一部の経費について私的流用が疑われる旨等の調査結果が報告され、4月30日、前氏は、代表取締役を辞任し(取締役の地位は留保)、同日、松場清志取締役(以下「松場氏」という。)が新たに当社代表取締役に選任された。

その後、SAAFは、より独立・中立的な立場からの調査が必要であるとして、5月9日、A法律事務所のZa弁護士(特別調査委員会を構成する弁護士とは異なる)に対し、上記からまでの各疑惑に係る調査を委嘱した。Za弁護士は、調査を行うにあたり、「SAAFホールディングス株式会社内部調査委員会」と称する組織を設置した。内部調査委員会の調査においては、5月の中間報告の時点で、前氏の経費の私的流用が認められる旨の結果が示されたため、SAAFは、5月27日に開催された取締役会において、前氏及び東氏について、6月24日に開催予定の定時株主総会に提出する取締役選任議案の候補者としないことを決定し、これに基づき、前氏及び東氏は、同株主総会の終結の時をもって任期満了により取締役を退任した。また、前氏は当社及びサムシングを含む全ての子会社の各役職を辞任又は退任し、小白川氏及び東氏も同様に各役職を辞任又は退任した。

その後、取締役退任後もSAAFの株式を保有していた前氏は、2026年1月27日付で株主として臨時株主総会招集請求を行い、前氏及び小白川氏を含む7名を取締役候補者とする取締役選任の付議議案を提案した。

こうした状況を踏まえ、SAAFは、内部調査委員会の調査において問題とされた本件事案並びに本件事案に係る当社の対応及び内部管理体制等について、株主に対する透明性の確保及び客観的な判断材料の提供の観点から、当社から独立した中立かつ公正な立場による詳細な調査・検証・評価が必要であると判断し、3月3日、特別調査委員会を設置した。

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連載目次

会計不正調査報告書を読む

第1回~第150回 ※クリックするとご覧いただけます。

第151回~

筆者紹介

米澤 勝

(よねざわ・まさる)

税理士・公認不正検査士(CFE)

1997年12月 税理士試験合格
1998年2月 富士通サポートアンドサービス株式会社(現社名:株式会社富士通エフサス)入社。経理部配属(税務、債権管理担当)
1998年6月 税理士登録(東京税理士会)
2007年4月 経理部からビジネスマネジメント本部へ異動。内部統制担当
2010年1月 株式会社富士通エフサス退職。税理士として開業(現在に至る)

【著書】

・『新版 架空循環取引─法務・会計・税務の実務対応』共著(清文社・2019)

・『企業はなぜ、会計不正に手を染めたのか-「会計不正調査報告書」を読む-』(清文社・2014)

・「企業内不正発覚後の税務」『税務弘報』(中央経済社)2011年9月号から2012年4月号まで連載(全6回)

【寄稿】

・(インタビュー)「会計監査クライシスfile.4 不正は指摘できない」『企業会計』(2016年4月号、中央経済社)

・「不正をめぐる会計処理の考え方と実務ポイント」『旬刊経理情報』(2015年4月10日号、中央経済社)

【セミナー・講演等】

一般社団法人日本公認不正検査士協会主催
「会計不正の早期発見
――不正事例における発覚の経緯から考察する効果的な対策」2016年10月

公益財団法人日本監査役協会主催
情報連絡会「不正会計の早期発見手法――監査役の視点から」2016年6月

株式会社プロフェッションネットワーク主催
「企業の会計不正を斬る!――最新事例から学ぶ,その手口と防止策」2015年11月

 

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