組織再編税制、グループ法人税制及びグループ通算制度の現行法上の問題点と今後の課題 【第6回】「グループ通算制度」
連結納税制度と同様に、グループ通算制度においても帳簿価額修正の制度が残されているが、帳簿価額修正後の離脱法人の株式の帳簿価額が離脱法人の簿価純資産価額に相当する金額となっている(法令119の3⑤)。その結果、例えば、P社がA社(簿価純資産価額2,000百万円)を6,000百万円で買収した後に、9,000百万円で転売した事案を想定すると、単体納税であれば6,000百万円であったA社株式の帳簿価額が2,000百万円に引き下げられてしまうため、P社における株式譲渡益が4,000百万円増加してしまうという問題がある。これは、のれんのある法人を買収し、数年後に転売するときに生じやすい問題であると言える。
法人税の損金経理要件をめぐる事例解説 【事例22】「役員給与における「不相当に高額な部分」の意義と租税法律主義」
私は、北陸地方において日本酒の醸造を行っている酒造メーカーである株式会社Aにおいて、ここ10年あまり経理部長を務めております。一昨年、先代の会長と、その奥様がわが社の経営の一線を完全に退くにあたり、その長年の貢献と労苦に報いるため、退職慰労金を支払っております。その金額は、顧問税理士はもとより、地元の金融機関とも相談し妥当といえるものであると考えておりました。ところが、最近受けた税務調査で、調査官から「先代の会長とその配偶者である元取締役に対して支払った役員退職慰労金は、同業他社の事例と比較してかなり高い」ことから、法人税法第34条第2項にいう「不相当に高額な部分の金額」があるため、その金額については損金の額に算入されないと言われました。
最近出た裁判例で、酒造メーカーの役員給与について争われた事案があり、それでは創業者に対して支払われた役員退職金がわが社のケースよりも高いにもかかわらず認容されたと聞きます。調査官にもその旨を反論しましたが、「あちらとは事情が異なる」として取り合ってもらえません。今後どのように対応したらよいのでしょうか、教えてください。
組織再編税制、グループ法人税制及びグループ通算制度の現行法上の問題点と今後の課題 【第5回】「株式移転」
単独株式移転を行った場合において、グループ内の適格株式移転に該当するためには、株式移転後に株式移転完全親法人と株式移転完全子法人との間に当該株式移転完全親法人による完全支配関係が継続することが見込まれている必要がある(法令4の3㉒)。すなわち、単独株式移転を行った後に、株式移転完全親法人が株式移転完全子法人株式を譲渡することが見込まれている場合には、非適格株式移転として取り扱われる。
収益認識会計基準と法人税法22条の2及び関係法令通達の論点研究 【第38回】
法人税法22条の2第5項は、第4項の資産の引渡しの時における価額相当額又は提供をした役務につき通常得べき対価の額相当額は、その資産の販売等につき、次の事実が生ずる可能性がある場合においても、その可能性がないものとした場合における価額とする旨定めている。
山本守之の法人税“一刀両断” 【第75回】「連結納税制度からグループ通算制度へ」
令和2年度税制改正で現行の連結納税制度が見直され、令和4年4月1日以後に開始する事業年度から「グループ通算制度」に移行します。
従来の連結納税制度では、企業グループ全体を1つの課税単位として計算した法人税額を親会社が申告していましたが、グループ通算制度では、企業グループ内の親会社及び子会社それぞれを納税単位として各法人が個別に法人税額の計算と申告を行うことになります。
組織再編税制、グループ法人税制及びグループ通算制度の現行法上の問題点と今後の課題 【第4回】「無対価組織再編成、グループ法人税制及び株式交換等」
平成22年度税制改正により無対価組織再編成の明確化が図られ、対価の交付を省略したと同視することができる場合を条文に限定列挙し(法令4の3)、それ以外の場合には、非適格組織再編成に該当するという制度に改められた。
「税理士損害賠償請求」頻出事例に見る原因・予防策のポイント【事例90(法人税)】 「売却価額の高い順から1,500頭に「肉用牛の免税特例」を適用したため、1頭あたりの上限金額を超過して適用している頭数につき税務調査で否認され、追加適用ができなくなってしまった事例」
平成Y9年3月期から平成Z1年3月期の法人税につき「農地所有適格法人の肉用牛の売却に係る所得の課税の特例」(以下「肉用牛の免税特例」という)により、1頭あたり100万円(交雑種80万円、乳用種50万円)未満であれば、年間の売却頭数が1,500頭まで法人税等が免除となるところ、価額の検討をせずに金額の高い順から1,500頭に上記特例を適用したため、1頭あたりの上限価額を超過して適用している頭数につき税務調査で否認された。
上限価額を考慮して上記特例を適用していれば、別の肉用牛に特例の適用ができ、納付税額を低くできたとして過大納付税額につき賠償請求を受けたものである。
〈ポイント解説〉役員報酬の税務 【第18回】「役員給与・役員退職給与に係る未払金計上」
私は中小企業の経理担当者です。当社は一時的に資金繰りが厳しくなったため、社長から「自分の分の役員報酬を未払金にするように」という指示がありました。
この場合に税務上問題があるかどうか教えてください。また、税務上の役員給与に加え、役員退職給与についても網羅的に教えていただければ幸いです。
組織再編税制、グループ法人税制及びグループ通算制度の現行法上の問題点と今後の課題 【第3回】「移転資産に対する支配の継続」
組織再編税制、グループ法人税制及びグループ通算制度の多くが「移転資産に対する支配の継続」という概念で説明することができるが、このような包括的に説明できる概念は、結局のところ何も説明していないことが多く、「移転資産に対する支配の継続」についての下位概念がそれぞれ必要になってくる。