公開日: 2021/01/07 (掲載号:No.401)
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法人税の損金経理要件をめぐる事例解説 【事例25】「事業譲渡に伴って行った債権放棄の貸倒損失該当性と寄附金課税」

筆者: 安部 和彦

法人税の損金経理要件をめぐる事例解説

【事例25】

「事業譲渡に伴って行った債権放棄の貸倒損失該当性と寄附金課税」

 

国際医療福祉大学大学院准教授
税理士 安部 和彦

 

【Q】

私は、関東地方でいくつかの業態の飲食店チェーンを経営する株式会社Aにおいて、経営企画室長をしております。これまで当社グループは、創業の居酒屋チェーンを中心に、M&Aにより順調に事業を拡大してきましたが、中には伸び悩む業態もあり、特にファーストフード系の子会社であるB・Cの2社の業績が低迷しておりました。当該子会社の親会社であるA社は、これまで役員の派遣や低利融資などにより援助してきましたが、同業者との激しい競争に打ち勝てず、赤字体質からの脱却が困難な情勢が続いていました。

そこで、親会社であるA社は、子会社B社及びC社の2社の事業をグループ会社のD社に事業譲渡を行うとともに、当該子会社(いずれも事業譲渡後に清算)に対する金銭債権について債権放棄を行い、その金額をA社の法人税の申告上、損金に算入しました。法人税法には債権放棄や貸倒損失の損金性に関する特定の規定はないことから、当該金額が損金に算入されるのか会社内で議論はありましたが、A社を創業したオーナー社長による「債務免除しないとやっていけない会社への債権放棄なんて、わが社の損金じゃなかったら何なんだ!」という鶴の一声で、全額損金算入したというところです。なお、当該債権放棄は、子会社2社の特別清算手続において、A社と子会社2社との間の契約により行われたものです。

ところが、先日税務調査でA社を訪れた国税局の調査官は、A社が行った子会社2社に対する債権放棄は法人税基本通達の定める要件を満たしていないことから、損金算入可能な貸倒損失ではなく、むしろ法人税法第37条に規定される寄附金に該当するものと指摘してきました。社長はその主張に対して大層ご立腹で、最高裁まで争うと息巻いておりますが、私としましては勝ち目のない争いは避けるべきと考えております。社長をどのように説得すべきか、アドバイスをお願いします。

〇 取引関係図

債権放棄 損金算入? 子会社B社 貸付金 株式会社A 貸付金 子会社C社 事業譲渡 債権放棄 損金算入? D社

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法人税の損金経理要件をめぐる事例解説

【事例25】

「事業譲渡に伴って行った債権放棄の貸倒損失該当性と寄附金課税」

 

国際医療福祉大学大学院准教授
税理士 安部 和彦

 

【Q】

私は、関東地方でいくつかの業態の飲食店チェーンを経営する株式会社Aにおいて、経営企画室長をしております。これまで当社グループは、創業の居酒屋チェーンを中心に、M&Aにより順調に事業を拡大してきましたが、中には伸び悩む業態もあり、特にファーストフード系の子会社であるB・Cの2社の業績が低迷しておりました。当該子会社の親会社であるA社は、これまで役員の派遣や低利融資などにより援助してきましたが、同業者との激しい競争に打ち勝てず、赤字体質からの脱却が困難な情勢が続いていました。

そこで、親会社であるA社は、子会社B社及びC社の2社の事業をグループ会社のD社に事業譲渡を行うとともに、当該子会社(いずれも事業譲渡後に清算)に対する金銭債権について債権放棄を行い、その金額をA社の法人税の申告上、損金に算入しました。法人税法には債権放棄や貸倒損失の損金性に関する特定の規定はないことから、当該金額が損金に算入されるのか会社内で議論はありましたが、A社を創業したオーナー社長による「債務免除しないとやっていけない会社への債権放棄なんて、わが社の損金じゃなかったら何なんだ!」という鶴の一声で、全額損金算入したというところです。なお、当該債権放棄は、子会社2社の特別清算手続において、A社と子会社2社との間の契約により行われたものです。

ところが、先日税務調査でA社を訪れた国税局の調査官は、A社が行った子会社2社に対する債権放棄は法人税基本通達の定める要件を満たしていないことから、損金算入可能な貸倒損失ではなく、むしろ法人税法第37条に規定される寄附金に該当するものと指摘してきました。社長はその主張に対して大層ご立腹で、最高裁まで争うと息巻いておりますが、私としましては勝ち目のない争いは避けるべきと考えております。社長をどのように説得すべきか、アドバイスをお願いします。

〇 取引関係図

債権放棄 損金算入? 子会社B社 貸付金 株式会社A 貸付金 子会社C社 事業譲渡 債権放棄 損金算入? D社

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連載目次

法人税の損金経理要件をめぐる事例解説

▷総論

● 法人税の課税所得計算と損金経理(その1~5)

▷事例解説

・・・  以下、順次公開 ・・・

筆者紹介

安部 和彦

(あんべ・かずひこ)

税理士
和彩総合事務所 代表社員
国際医療福祉大学大学院教授

東京大学卒業後、平成2年、国税庁入庁。
調査査察部調査課、名古屋国税局調査部、関東信越国税局資産税課、国税庁資産税課勤務を経て、外資系会計事務所へ移り、平成18年に安部和彦税理士事務所・和彩総合事務所を開設、現在に至る。
医師・歯科医師向け税務アドバイス、相続税を含む資産税業務及び国際税務を主たる業務分野としている。
平成23年4月、国際医療福祉大学大学院医療経営管理分野准教授に就任。

【主要著書】
・『消費税 インボイス制度導入の実務』(清文社)
・『裁判例・裁決事例に学ぶ 消費税の判定誤りと実務対応』(清文社)
・『新版 医療・福祉施設における消費税の実務』(清文社)
・『【第三版】税務調査と質問検査権の法知識Q&A』(清文社)
・『最新判例でつかむ固定資産税の実務』(清文社)
・『新版 税務調査事例からみる役員給与実務Q&A』(清文社)
・『要点スッキリ解説 固定資産税Q&A』(清文社)
・『Q&A 医療法人の事業承継ガイドブック』(清文社)
・『税務調査の指摘事例からみる法人税・所得税・消費税の売上をめぐる税務』(清文社)
・『修正申告と更正の請求の対応と実務』(清文社)
・『事例でわかる病医院の税務・経営Q&A(第2版)』(税務経理協会)
・『Q&A 相続税の申告・調査・手続相談事例集』(税務経理協会)
・『医療現場で知っておきたい税法の基礎知識』(税務経理協会)
・『消費税の税務調査対策ケーススタディ』(中央経済社)
・『消費税[個別対応方式・一括比例配分方式]有利選択の実務』(清文社)
・『国際課税における税務調査対策Q&A』(清文社)

【主要論文】
・「わが国企業の海外事業展開とタックスヘイブン対策税制について」(『国際税務』2001年12月号)
・「タックスヘイブン対策税制の適用範囲-キャドバリー・シュウェップス事件の欧州裁判所判決等を手がかりにして-」『税務弘報』(2007年10月号)
など
            

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