〔税理士・会計士が知っておくべき〕情報システムと情報セキュリティ 【第7回】「失敗しない会計事務所選び(ITの視点から)」
顧客にとって業務効率化における重要な点として、会計事務所との情報の受渡しの効率性がある。
日々の受渡しに関する業務量が多い業務のひとつに記帳委託時の領収証や請求書等の各種証憑のやりとりがある。これにはいくつかの受渡方法があるが、もっともシンプルな方法は郵送である。
郵送の場合、会計事務所側は顧客から入手した各種証憑に基づき記帳業務を行った後、基本的にこれらを再び顧客に返却する。そして、顧客側は戻ってきた証憑類を保管することになる。シンプルであり、ITに依存しない方法であるが、一連の作業が完結するまでに日数を要する方法であり、証憑類の受渡漏れの問題が発生しやすいため注意が必要である。
顧問先の経理財務部門の“偏差値”が分かるスコアリングモデル 【第15回】「仕入・買掛債務管理のKPI(その② 仕入値引等対応)」
今回は前回に引き続き、「仕入・買掛債務管理」を構成する業務プロセスから、「仕入値引等対応」を評価するKPIを取り上げる。
「仕入値引等対応」は、いったん受渡しが行われた物品や役務に数量不足や品質不良が発見された場合に発生するため、仕入・買掛債務管理においては特殊業務であるとともに、返品や仕入値引による仕入金額の減額の過程で誤謬や不正が発生しやすい。
そこで、仕入計上の評価の妥当性、資産保全の観点で業務管理が重要となるが、そのような業務管理のサービスレベルを評価するKPIを紹介しよう。
競業避止規定の留意点 【第2回】「競業禁止義務と秘密保持義務」
前回説明したように、現行法上「競業避止義務」が課せられるためには、企業の経営に直接関与し、企業との利害の一致が要請される。つまり、取締役や支配人、幹部労働者が対象となる。
一般労働者は、企業経営に直接関与しないため、企業と利害の一致にはならないケースが多い。ただし、一般労働者も労働契約上の義務として、使用者の秘密を保持すべき義務を負っている。
これに対し、退職した労働者が退職後も秘密保持義務を負うか否か、という点では議論が分かれている。
民法改正(中間試案)―ここが気になる!― 【第9回】「債権譲渡」
民法改正の中間試案の中で、最も複雑なものが債権譲渡に関する部分である。
特に、債権譲渡の対抗要件を、債務者を情報センターとする方法(債務者に対する通知や債務者の承諾とする方法:現行の民法に規定される方法)と、債権譲渡登記を活用する方法(「動産及び債権の譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律」により定められた方法)と二通りが並行して考えられており、結論が出ていない点が大きい。
会計事務所 “生き残り” 経営コンサル術 【第9回】「実務では変動費・固定費の区分なんて子供騙しだ」
本を読みますと、経費は変動費と固定費に分けられ、変動費は管理可能で固定費は管理不能だと書かれています。
「管理不能だ」という意味は、一度支出すれば長期間にわたって支払いが続いていくため、管理することが難しいということです。
私は学生時代に損益分岐点の本を読んで、このように学びました。そして、固定費とは家賃や地代、リース料のことをいうのだと知ったのでした。
当時は、「なるほど、このように経費を分析していき、損益分岐点を求めるのか」と感心したものでした。
しかし実際に仕事をしていて、中小企業の優秀な社長から次のように言われびっくりしてしまいました。
〔知っておきたいプロの視点〕病院・医院の経営改善─ポイントはここだ!─ 【第16回】「手術室の有効活用」
急性期病院で入院診療収益を増加させるために最も有効な施策が手術件数の増加である。
手術料は、DPC/PDPSの環境下でも出来高で評価されており、外科系診療科においては入院診療単価のうち半分以上を占めている。2012年度改定でDPC対象病院をⅠ~Ⅲ群にグルーピングされたが、Ⅱ群病院のうち手術1件当たり外保連手術指数が最もハードルが高かった。
顧問先の経理財務部門の“偏差値”が分かるスコアリングモデル 【第14回】「仕入・買掛債務管理のKPI(その① 仕入計上)」
前回までは「売上・売掛債権管理」のKPIを取り上げたが、今回から3回にわたり、「仕入・買掛債務管理」のKPIを取り上げる。
「仕入・買掛債務管理」は、販売用の商品・製品・サービス等を取得又は生産するために要する原材料、商品、役務の購入を管理する業務である。
スコアリングモデルを構成する18種類の業務の流れに照らすと、仕入・買掛債務管理は、原材料・商品・役務の購買、仕入・買掛金計上、棚卸資産管理、原価計算、決算という一連の流れの最初のトリガーとなる業務であり、そのサービスレベルが後に続く業務のサービスレベルを左右する点で重要な業務となる。
競業避止規定の留意点 【第1回】「競業避止規定の重要性」
終身雇用制の崩壊に伴い「就社」という「入社から定年まで一企業で労働」という思考から、労働者自身のライフプランの実現、グローバル化や情報化の傾向により、社内外問わず適材適所を求めた人の流動性が活発化している。
一方、企業にとってはポテンシャルの高い優秀な人材(取締役や支配人(会社法14条等)幹部労働者)、知識・ノウハウ・情報を持った労働者の流動は大きな痛手である。
活力ある会社を作る「社内ルール」の作り方 【第2回】「就業規則を作る時に必要な視点」
前回は、「権利と義務で統治することの限界」というテーマで「権利と義務」での統治はどんどん窮屈な会社を作っていくということを述べさせていただいた。
このやり方が進んでいくと「目的達成のために「自分たちがやるべきこと」をやる。」という積極前向きな姿勢ではなく、「決まったことだけやればいい。」「(組織にとって好ましくないとわかっていても)決まりがないからやってもかまわない。」という消極的な組織が出来上がってしまう。
そんな社員の集まりでは、スピードが要求される現在に対応できない。
親族図で学ぶ相続講義 【第9回】「特別受益」
上図のような相続事件が発生したとしましょう。被相続人は甲野一男です。
相続人は、配偶者と子供2人、一見、何の変哲もない相続事件です。
さて、甲野一男の相続開始時の財産の価額を金6,000万円としましょう。
相続人3名のうち、乙野花子が嫁入りのときに支度金として父(甲野一男)から金1,000万円の贈与を受けていたら、どうなるでしょうか?
これが、特別受益の問題です。