年俸制と裁量労働制 【第3回】「2種類の裁量労働制の特徴」
裁量労働制とは、業務の遂行手段や時間配分について、使用者が細かく指示するのではなく、労働者本人の裁量に任せ、実際の労働時間数とは関係なく、労使の合意で定めた労働時間数を働いたものとみなす制度である。
裁量労働制には、「専門業務型」と「企画業務型」という2つの種類がある。
年俸制と裁量労働制 【第2回】「年俸制の支払方法」
年俸制は、文字通り「年」を単位として給与を支払うというものであるが、支払方法は企業によっていくつかの方法に分けられる。
年俸制と裁量労働制 【第1回】「給与の支払方法(年俸制)と労働時間管理の方法(裁量労働制)は別物」
「うちは年俸制で給与を支払い、裁量労働制を導入しているので残業代を支払っていない」という声をよく耳にする。特に設立間もない企業や、比較的小規模な企業で顕著であるように感じられる。
年俸制とは月給制・日給月給制など賃金の支払方法の一つであり、裁量労働制は労働時間管理方法の一つである。
年俸制は賃金の支払方法の一つであるために規制はないが、裁量労働制は労働基準法に定められた内容に基づいて運用する必要がある。基本的には、裁量労働制適用者には年俸制を適用するという関連性を持たせてもよいものではあるが、いわゆる固定費=人件費を削減する目的だけで年俸制を導入し、割増賃金が適正に支払われないという状況は避けなければならない。
活力ある会社を作る「社内ルール」の作り方 【第6回】「企業文化を就業規則に落とし込んだ会社の実例①」
前回は、企業文化を就業規則に落とす方法について述べてみた。
今回と次回を使って、企業文化を就業規則に落とした会社の実例を紹介したい。
まずは、アメリカの例から。すでにご存じの方も多いかもしれないが、アメリカで靴の通信販売サイトを運営している会社でZappos(ザッポス)社という会社がある。
この会社は、戦略的な企業文化の構築とその定着で業績を伸ばしている会社だ。
活力ある会社を作る「社内ルール」の作り方 【第5回】「企業文化による統治へどう取り組むか」
企業文化中心の社内ルールをつくるためには、(当たり前のことであるが)最初に企業文化を戦略的につくることから始めなければならない。
つまり、企業文化の構築を通じて「社内の価値観統一」を図っていくということだ。
そのためには、会社が大切にしている「気持ち」、「心がけ」、「行動」などを具体化していくことが必要となる。
この時に大事なのは、経営者が企業文化を戦略的につくり、それをベースにして経営を行うということに腹をくくることである。つまり、営業方針から採用、人事制度などなど、至るところで「ブレなく企業文化が価値判断の基準となる会社をつくる」という腹決めをするということだ。
活力ある会社を作る「社内ルール」の作り方 【第4回】「就業規則による管理のポイント」
就業規則による統治のポイントは、労働基準法に定めのない部分に先回りして自社オリジナルのルールとして明確にしておくところにある。
法的に定めがある部分については、極論を言ってしまえば工夫の余地はない。
例えば、年次有給休暇の付与については、正社員であるならば、入社から6ヶ月経過した時点で10日は付与しなければならない(もちろん、法律の基準より前倒しすることは自由だが)。
これをいくら就業規則で「当社は入社1年後に有給休暇を付与する」としても、無効である。
競業避止規定の留意点 【第4回】「個別特約と就業規則」
退職後の競業避止義務契約の有効性は、競業の制限が合理的範囲を超え、債務者らの職業選択の自由等を不当に拘束し、同人の生存を脅かす場合には、その制限は公序良俗に反し無効となるのは言うまでもない。退職労働者は、これまでの経験を活かせる職業に就こうとするため、自然と同業となる。労働者の働く権利を侵害しすぎない範囲に限って、会社を守ることも許されるのである。
活力ある会社を作る「社内ルール」の作り方 【第3回】「会社の企業統治のステップ」
企業統治には、次のようなステップがあると考える。
単体の企業もこのステップを踏むし、日本だけでなくグローバルで大括りにした場合でも、俯瞰してみると同じステップを踏んでいるのではないかと思う。
そのステップとは、以下のようなものである。
[ステップ1]経営者の考えや目に見えないが、皆がなんとなく共有している文化・風土による統治
競業避止規定の留意点 【第3回】「競業避止義務と職業選択の自由」
競業避止義務が有効であるか否かの判断基準は、前回《判例》のように、個々のケースバイケースにより判断される。競業避止義務の有効性の根拠は「企業と労働者の間の契約関係によるもの」とする考え方が一般的である。そこで、会社が取り得る事前措置としては、就業規則や契約書に、退職後も会社の営業機密を使用・開示してはならない旨の禁止・違反した場合の措置(使用者の差止請求や損害賠償請求)を設けておく方法がある。この裏返しとして、退任後や退職後に競業を禁止する特約が有効かどうか、という問題がある。
競業避止規定の留意点 【第2回】「競業禁止義務と秘密保持義務」
前回説明したように、現行法上「競業避止義務」が課せられるためには、企業の経営に直接関与し、企業との利害の一致が要請される。つまり、取締役や支配人、幹部労働者が対象となる。
一般労働者は、企業経営に直接関与しないため、企業と利害の一致にはならないケースが多い。ただし、一般労働者も労働契約上の義務として、使用者の秘密を保持すべき義務を負っている。
これに対し、退職した労働者が退職後も秘密保持義務を負うか否か、という点では議論が分かれている。