民法(相続関係)等改正「追加試案」のポイント 【第2回】「追加試案で新たに示された改正内容(その1)」
現行法上、配偶者に対する配慮がなされている制度として、配偶者に対する居住用財産の贈与についての贈与税の特例が挙げられる。居住用不動産の贈与は、残される配偶者の老後の生活保障を考慮して行われることが多く、民法上も同様の配慮を行う必要性がある。
婚姻期間20年以上の夫婦に限定したのは、このような夫婦間の贈与は、通常、贈与を受ける配偶者の生活保障を意図しており、相続時に、(生前)贈与を受けた配偶者の相続分を減少させる意図がないことが通常と考えられるからである。
税理士が知っておきたい[認知症]と相続問題〔Q&A編〕 【第17回】「実務の現場における判断能力の判定方法(その3)」
この第3ステップまで進んできているということは、①第1ステップ(予備面談を行う)において、意思確認対象者との間で「一応の会話のやり取りが成立する」というケースか、②第2ステップ(医師の手を借りた確認を行う)において、医師により「一般的見地から最低限の判断能力は兼ね備わっている」と判定されるケースであるということである。
これからの会社に必要な『登記管理』の基礎実務 【第7回】「みなし解散により被る不利益」-解散とみなされないために-
事業活動の実態がないにもかかわらず登記記録が存在している会社(以下、「休眠会社」という)を対象として、登記所側が解散したものとみなす登記を入れることによって、事業活動の実態のある会社とそうではない会社が登記記録上整理されるという目的がある。
もっとも事業活動を行っているか否かを個別具体的に判断するのは困難である。そこで、最後の登記手続から12年間を経過しているかをもって事業活動の実態の有無が形式的に判断される。
民法(相続関係)等改正「追加試案」のポイント 【第1回】「中間試案パブリックコメント後の検討概要」
8月1日付けで「中間試案後に追加された民法(相続関係)等の改正に関する試案(追加試案)」が、パブリックコメントに付された。
本稿では、昨年実施された中間試案に対するパブリックコメント後の法制審議会における検討状況を概説し、次回は追加試案で新たに示された改正内容について紹介したい。
家族信託による新しい相続・資産承継対策 【第20回】「家族信託の活用事例〈不動産編①〉(将来認知症になり自宅を売却できない場合に備えて、施設入居時に子へ信託する事例)」
私の母は、父に先立たれたあと、ずっと札幌で一人暮らしをしていました。数年前、母名義の実家はそのままにして、高齢者施設に入居して元気に過ごしていますが、年齢だけに認知症が心配です。
実家の方は、私が東京から年に2度ほど様子を見に来ていますが、結構な経済的負担になっています。
母の施設費用も少し足りなくなってきたので、いずれは実家を売却して施設費用にあてたいのですが・・・
税理士が知っておきたい[認知症]と相続問題〔Q&A編〕 【第16回】「実務の現場における判断能力の判定方法(その2)」
前回解説したとおり、第1ステップ(予備面談を行う)を実施した結果、最も判断に迷うのが、(ハ)簡単な質問は理解し、何とか答えられるが、少し込み入った質問となると適切な回答ができない場合である。
このような場合、①聞き手の理解のペースに合わせて、ゆっくり、丁寧に話をしていけば、こちらが言うことをおおよそ理解できるという場合も多い。そこで、このようにゆっくり丁寧に話をしていくことで本人とのコミュニケーションが成立し、話の内容もほぼ理解できるという感触が得られた場合には、次の第3ステップへ進んでよいだろう。
家族信託による新しい相続・資産承継対策 【第19回】「信託契約作成上の留意点⑥」-受益者及び帰属権利者等の地位-
受益者とは、受益権を有する者であり、受益権とは信託財産に関して受益者が受託者に対して請求できる権利及びその確保のために有する権利をいう(信託法第2条第6項・第7項)。
すなわち、受益者は受託者を通じ信託財産から発生する利益を享受する立場にあり、受託者が信託事務を正当に遂行することを確保するために、後述するように、受託者への監督権限等の権限を有する。
税理士が知っておきたい[認知症]と相続問題〔Q&A編〕 【第15回】「実務の現場における判断能力の判定方法(その1)」
私は30年近く税理士をしておりますが、ここ数年、認知症高齢者の判断能力が関わってくる相談が増えたことを実感しています。
これまでの連載で、判断能力とはどのようなものであるのか、その有無を判定するにはどのようなものが証拠になるのか等についての一般的知識はよくわかりました。
その一方で、普段の税理士業務の現場において「いま目の前のいるこの人が、法律上の判断能力を有しているのか」が問題となった場合に、具体的にどのような方法を用いて判断すればよいのか、いまいちイメージがつかめません。
医学的な専門知識がない私でも判定できるような実践的方法はありますか。
事例で検証する最新コンプライアンス問題 【第9回】「政府系金融機関における危機対応融資に係る顧客資料の改ざんと不正隠ぺい」
政府系金融機関であるS中金では、①社内の稟議書に添付する試算表の改ざん(本件改ざん行為)と、②社内調査での隠ぺい(本件隠ぺい行為)が発覚し、2017年5月9日、経済産業省、財務省、金融庁、農林水産省より、業務改善命令を受けた。
本件は、半官半民の企業が陥りやすい問題を内包しており、また、ノルマによる従業員へのプレッシャーが原因の一旦にもなっている点、不正を認めたくない組織体質など、参考となる企業や団体は多いと思われる。
これからの会社に必要な『登記管理』の基礎実務 【第6回】「役員の任期到来の時期の特定」-実践編-
本稿では、任期管理とその役員変更の登記手続に携わる実務担当者が、本連載【第2回】で紹介した「会社主導で中長期的に管理し続けられる体制づくり」を実現するための実際の手順を解説する。
まず、役員の任期到来の時期を特定し、役員変更の登記手続をするための前段階として、自社の役員の任期管理の状態を認識しよう。