公開日: 2018/01/11 (掲載号:No.251)
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税理士のための〈リスクを回避する〉顧問契約・委託契約Q&A 【第5回】「監査法人(公認会計士)が関与している関与先における税理士の注意義務」

筆者: 米倉 裕樹、元氏 成保、橋森 正樹

税理士のための

〈リスクを回避する〉
顧問契約委託契約

【第5回】

「監査法人(公認会計士)が関与している関与先における

税理士の注意義務」

 

弁護士・税理士
米倉 裕樹
弁護士・ 関西大学法科大学院教授
元氏 成保
弁護士・税理士
橋森 正樹

 

X社は、会社法2条6号の大会社に該当し、決算について会計監査人の監査を受けることが義務付けられており(同法328条)、大手監査法人AがX社の会計監査人となっていた。そして、税理士YはX社との間で税務顧問契約を締結しており、毎年、X社から法人税確定申告書等の作成と税務代理の委任を受けていた。

X社の経理担当者Bは、インターネットを使って調べている中で、自社の自己資本比率が50%以下であった場合、租税特別措置法に規定されている特例制度(以下、「本件特例」という)を用いることができ、税負担を軽減することが可能であることを知った。そこで、Bは、日頃からよくコミュニケーションをとっていた監査法人Aの担当者である公認会計士Cに、「自社の自己資本比率を計算したいのだが、計算方法がよく分からないので、教えてほしい」と依頼した。

Cは税理士登録をしていなかったが、Bの依頼を受け、代わってX社の自己資本比率を計算した上で、Bに対し、「以下のとおり、X社の自己資本比率は60%となります」との結論と計算過程を記載したメモを手渡した。

当該期の法人税の申告書の作成に際し、Bは税理士Yに対し、「既に監査法人に確認してもらったところ、当社の自己資本比率は50%を超過していました。したがって、本件特例を適用させることはできません。前年の申告と同じように申告して下さい。」と依頼し、Cから受け取ったメモを手渡した。

Yは、申告書の提出期限まで日がなかったこともあり、Bから受け取ったメモについて、精査することなく誤記と思われる部分を訂正する程度でそのまま用いて、本件特例を適用しない法人税確定申告書を作成し、税務署に提出した。

後日、X社と監査法人Aとの関係が悪化し、会計監査人が別の監査法人に交代することとなった。そして、その新しい監査法人の担当者が、X社の自己資本比率は45%であり、本件特例を適用させることができたと指摘した。

実際にX社の自己資本比率が45%であった場合、本件特例を適用しない法人税確定申告書を提出したYは、X社からその責任を問われ得るのか。

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〈リスクを回避する〉
顧問契約委託契約

【第5回】

「監査法人(公認会計士)が関与している関与先における

税理士の注意義務」

 

弁護士・税理士
米倉 裕樹
弁護士・ 関西大学法科大学院教授
元氏 成保
弁護士・税理士
橋森 正樹

 

X社は、会社法2条6号の大会社に該当し、決算について会計監査人の監査を受けることが義務付けられており(同法328条)、大手監査法人AがX社の会計監査人となっていた。そして、税理士YはX社との間で税務顧問契約を締結しており、毎年、X社から法人税確定申告書等の作成と税務代理の委任を受けていた。

X社の経理担当者Bは、インターネットを使って調べている中で、自社の自己資本比率が50%以下であった場合、租税特別措置法に規定されている特例制度(以下、「本件特例」という)を用いることができ、税負担を軽減することが可能であることを知った。そこで、Bは、日頃からよくコミュニケーションをとっていた監査法人Aの担当者である公認会計士Cに、「自社の自己資本比率を計算したいのだが、計算方法がよく分からないので、教えてほしい」と依頼した。

Cは税理士登録をしていなかったが、Bの依頼を受け、代わってX社の自己資本比率を計算した上で、Bに対し、「以下のとおり、X社の自己資本比率は60%となります」との結論と計算過程を記載したメモを手渡した。

当該期の法人税の申告書の作成に際し、Bは税理士Yに対し、「既に監査法人に確認してもらったところ、当社の自己資本比率は50%を超過していました。したがって、本件特例を適用させることはできません。前年の申告と同じように申告して下さい。」と依頼し、Cから受け取ったメモを手渡した。

Yは、申告書の提出期限まで日がなかったこともあり、Bから受け取ったメモについて、精査することなく誤記と思われる部分を訂正する程度でそのまま用いて、本件特例を適用しない法人税確定申告書を作成し、税務署に提出した。

後日、X社と監査法人Aとの関係が悪化し、会計監査人が別の監査法人に交代することとなった。そして、その新しい監査法人の担当者が、X社の自己資本比率は45%であり、本件特例を適用させることができたと指摘した。

実際にX社の自己資本比率が45%であった場合、本件特例を適用しない法人税確定申告書を提出したYは、X社からその責任を問われ得るのか。

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連載目次

筆者紹介

米倉 裕樹

(よねくら・ひろき)

弁護士・税理士

【経歴等】
立命館大学法学部卒
1999年大阪弁護士会登録(第51期)
弁護士法人北浜法律事務所 パートナー弁護士
近畿弁護士会連合会税務委員会委員長(平成27年5月~同29年4月)

【著書・論文等】
相続税 税務調査[指摘事項]対応マニュアル」(清文社2018年出版)共著
弁護士と税理士の相互質疑応答集」(清文社2017年出版)編者・共著
税理士が実際に悩んだ相続問題の法務と税務」(清文社2014年出版)
有利な心証を勝ち取る民事訴訟遂行」(清文社2015年出版)
「弁護士は民事裁判をどう見ているか(調査結果の分析)」(日本弁護士連合会「自由と正義」共著、2013年8月号)
「Doing Business in Japan」(53版改訂版以降、執筆担当Consumption Tax(消費税)共著、LexisNexis社、2013年~)
そこが危ない!消費増税をめぐる契約実務Q&A」(清文社2013年出版)等

  
 


元氏 成保

(もとうじ・しげほ)

弁護士・関西大学法科大学院教授

【経歴等】
2001年3月  京都大学法学部卒
2002年10月 大阪弁護士会登録(第55期)
共栄法律事務所 パートナー弁護士
関西大学法科大学院教授(租税法、行政法)
近畿弁護士会連合会税務委員会 副委員長

【著書・論文等】
相続税 税務調査[指摘事項]対応マニュアル」(清文社2018年出版)共著
弁護士と税理士の相互質疑応答集」(清文社2017年出版)編者・共著
「固定資産税の台帳課税主義とその限界」(滝井繁男先生追悼論集 日本評論社2017年出版)
「新実務家のための税務相談 民法編」(有斐閣2017年出版)共著
「租税法判例実務解説」(信山社2011年出版)共著
「職務発明に関して従業者等が使用者等から受け取る金員の所得区分」(水野武夫先生古稀記念論文集 法律文化社2011年出版)

  


橋森 正樹

(はしもり・まさき)

弁護士・税理士

【経歴等】
早稲田大学法学部卒
2002年大阪弁護士会登録(第55期)
橋森・幡野法律会計事務所 所長
近畿弁護士会連合会税務委員会 委員長(平成29年5月~)

【著書・論文等】
相続税 税務調査[指摘事項]対応マニュアル」(清文社2018年出版)共著
「企業税務講座」(労働調査会発行2011年から連載)
弁護士と税理士の相互質疑応答集」(清文社2017年出版)編者・共著
「Q&A高齢者施設・事業所の法律相談-介護現場の76問-」(日本加除出版2015年出版)共著
「事例解説 教育対象暴力-教育現場でのクレーム対応-」(ぎょうせい2015年出版)編者・共著
「事例にみる遺言の効力」(新日本法規2011年出版)共著等

  

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