家族信託による新しい相続・資産承継対策 【第18回】「信託契約作成上の留意点⑤」-受託者の地位-
受託者は、信託契約上の当事者となり、委託者から信託財産を受託し、信託財産の管理又は処分及びその他の信託の目的の達成のために必要な行為をすべき義務を負う(信託法第2条第5項)。
すなわち、家族信託においては、受託者は家族信託の対象となる財産を高齢者である委託者から信託され、委託者に代わって管理を行い、必要に応じて売却するような立場となる。
税理士が知っておきたい[認知症]と相続問題〔Q&A編〕 【第14回】「認知症患者の親族が負う監督責任」-JR東海認知症事件-
事故の原因を発生させた高齢者本人の認知能力が低下し、不法行為責任の前提となる「責任能力」(その内容については前回参照)すら欠く状態にあった場合、いったい誰が、どのような条件のもとに法的責任を負うのか。
この点に関し、最高裁平成28年3月1日判決は、【設問13】におけるような「事実上の後見人」(法定後見の申立てがされないまま、事実上、親族等が身の回りの面倒や財産管理を行っている状態)の監督義務・責任につき、民法714条1項が定める法定監督義務者の解釈に関連して次のように判示した。
法務・会計・税務からみた循環取引と実務対応 【第2回】「法務からみた循環取引」
法務からみた循環取引の知識が必要となる場面は、主に循環取引の破綻時において、当事者が自らの直接の取引先に対して、未払の売掛金等を請求する場面である。そこで、本稿では、循環取引に基づく請求の可否の判断枠組み及びこれを前提とした具体的な裁判事例について、解説を行う。
家族信託による新しい相続・資産承継対策 【第17回】「信託契約作成上の留意点④」-委託者の地位-
委託者は信託財産の元の保有者であり、「信託契約の当事者」として重要な立場にある。
そして、信託契約の締結により、信託財産の所有権は受託者に移転し、信託財産が賃貸不動産であるような場合には、賃貸人たる地位も同時に受託者に移転する。
税理士が知っておきたい[認知症]と相続問題〔Q&A編〕 【第13回】「高齢運転者が交通事故を起こしたケース」
私の父親は85歳で、妻(私の母親)に先立たれた後は、東北地方にある実家でひとり暮らしをしています。
田舎での生活ですので、買い物や病院に出かけるためには自動車が欠かせず、父も小さな自動車を1台所有しています。
しかしながら、3年ほど前から軽い認知症の症状が出始めていると診断されて以降、自分で車を運転するのは危険だということで、子である私たちからも父に強くお願いして、自分では車を運転しないようにしてもらっていました。
ところが、先月のある日、いつも外出に利用しているバスが悪天候で運休となったため、父は、相当久しぶりに自分で運転して買い物に出かけたようなのです。ところが、その途中、左隣のレーンで後方を走っていた軽自動車に気づかず、左折の際に衝突して相手に怪我を負わせ、その方の軽自動車を大破させてしまったのです。
税理士業務に必要な『農地』の知識 【第9回】「土地区画整理法・土地改良法」
今回は土地区画整理法と土地改良法について解説する。2つの法律は主として土地の面整備のためのものであるが、土地区画整理法は既存宅地の整備又は農地等を宅地化し整備するための手続きを定めた法律であるのに対し、土地改良法は農地そのものの整備のための法律であるという点に違いがある。
家族信託による新しい相続・資産承継対策 【第16回】「信託契約作成上の留意点③」-信託財産の特定-
信託財産とは、受託者に属する財産であって、信託により管理又は処分をすべき一切の財産をいう(信託法第2条第3項)。
これまで述べてきた通り、委託者が信託契約において受託者に管理・処分を委ねようとする財産であって、信託の効力発生時に受託者に所有権が移転する財産である。
委託者及び受託者は、この信託財産をいかに管理処分するかを信託契約において約定するのである。
これからの会社に必要な『登記管理』の基礎実務 【第5回】「定期メンテナンスの入り口」-定款を活用した任期到来の時期の特定②-
基準日制度とは、その日時点の株主名簿上の株主を、後日における権利行使ができる者として定めものである(会社法第124条第1項)。
上場会社では株式が広く流通し、頻繁に譲渡が行われるため、定時株主総会に先立ち、一定の日を基準日として、定時株主総会で議決権を行使できる者や剰余金の配当を受領する者を確定する必要がある。上記の規定例のとおり、決算期が基準日であることが多い。
また、中小企業では株主の変動こそ少ないが、上記の規定例のとおり、決算期が基準日である定款が広く浸透している。
民法(債権法)改正とは何だったのか
本稿では、120年ぶりの民法(債権法)の大改正に至るまでを、独断と偏見を承知のうえで、民法学者の描く理想像としての新「契約法」創設の動きと、それを実務の領域から押しとどめて、「民法改正」に終わらせた経緯として整理してみたい。
〈実務家が知っておきたい〉空家をめぐる法律上の諸問題【後編】
不適正に管理されている空家は、建築当時から長期間経過し、老朽化して物理的な問題が生じていることが想定されるところ、このような空家はいわゆる既存不適格建築物(※)であることが想定される。