収益認識会計基準と法人税法22条の2及び関係法令通達の論点研究 【第25回】
法人税法22条の2第2項は、資産の販売等に係る収益の額につき一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従って当該資産の販売等に係る契約の効力が生ずる日その他の1項に規定する日に近接する日の属する事業年度の確定した決算において収益として経理した場合には、1項の規定にかかわらず、その資産の販売等に係る収益の額は、「別段の定め(前条第4項を除く。)があるものを除き」、その事業年度の所得の金額の計算上、益金の額に算入するとしている。
日本の企業税制 【第77回】「グループ通算制度創設に伴う税効果会計の適用」
令和2年度税制改正に係る所得税法等の一部を改正する法律案が、1月31日に国会に提出された。2月28日に衆議院を通過し、3月6日に参議院財政金融委員会に付託された。
〈検証〉TPR事件 東京高裁判決 【第2回】
「〈検証〉TPR事件 東京地裁判決」でも解説したように、東京地裁、東京高裁が示した制度趣旨は、平成22年度税制改正と整合していないことから、平成22年度税制改正後の事件において参考にすべきではないと考えている。
〈ポイント解説〉役員報酬の税務 【第12回】「役員退職給与に係る功績倍率の是認水準」
当社は、代表取締役が今期退任するため、役員退職給与を支給する予定です。役員退職給与の損金算入限度額について、代表取締役であれば功績倍率を3倍まで設定することができるとセミナーで聞いたので、その通りにする予定です。また、「特段の事情」があれば認められる功績倍率がさらに大きく増加するとも聞いたのですが、これらは正しいでしょうか。
相続税の実務問答 【第45回】「令和元年台風第19号による被災地内の土地等の評価」
長野県N市に住んでいた私の父は、令和元年6月20日に亡くなりました。相続人は母、姉及び私の3名です。主な相続財産は、自宅建物及びその敷地並びに貸家及びその敷地で、いずれもN市内にあります。
相続税の申告の準備をしていたところ、10月の台風第19号により、近くを流れる河川が氾濫し、これらの土地が冠水してしまいました。N市は台風第19号に係る「特定地域」に指定されたと聞きましたが、冠水してしまった土地の評価について何らかの配慮はされないのでしょうか。
基礎から身につく組織再編税制 【第14回】「非適格合併を行った場合の合併法人の取扱い」
被合併法人が合併により合併法人にその有する資産・負債の移転をしたときは、合併時の時価による譲渡をしたものとされるため、合併法人が受け入れる資産・負債の取得価額は、合併時の時価となります(法法62)。
酒井克彦の〈深読み◆租税法〉 【第86回】「政策目的からみる租税法(その2)」
まずは、自動車重量税がどのような政策目的の下で創設されたものであるのか、その趣旨目的を明らかにするために、同税制を簡単に確認することとしたい。
自動車重量税法1条《趣旨》は次のように同法の趣旨を述べる。
〈検証〉TPR事件 東京高裁判決 【第1回】
すでに解説したように、TPR事件の特徴として、適格合併を行う前に、被合併法人で行っていた事業を新会社に移転したという点が挙げられる。そのため、東京地裁でも、被合併法人が営んでいた事業、従業員が新会社に移転し、合併法人には移転していないことから、本件合併が繰越欠損金を引き継ぐための行為であり、事業目的が十分に認められないと判断している。この点については、裁判官の心証によるものも大きく、判決文だけでは判断できないものも多いため、敢えて分析を行う必要もないと思われる。
これに対し、包括的租税回避防止規定(法法132の2)の適用は、制度趣旨に反することが明らかであることが前提となっているものの、そもそも東京地裁、東京高裁が示した制度趣旨に問題があるという点については、再度、分析を行う必要があると考えている。
谷口教授と学ぶ「税法の基礎理論」 【第31回】「租税法律主義と租税回避との相克と調和」-個別的否認規定と個別分野別の一般的否認規定との関係(その1)-
前回は、租税回避否認規定の類型を整理した上で、一般的否認規定の意義と問題を検討し、最後に、現行税法上の個別分野別の一般的否認規定についてその「具体的な相貌」(志場喜徳郎ほか共編『国税通則法精解〔平成31年改訂/16版〕』(大蔵財務協会・2019年)26頁)を明らかにしていくことが必要である旨を述べた。今回から、そのための検討作業の一環として、個別的否認規定との関係を検討することにしたい。
具体的には、組織再編成に係る行為計算の否認規定(法税132条の2)と未処理欠損金額の引継ぎに係る個別的否認規定(同57条3項)との関係(とりわけ適用関係)について、ヤフー事件・最判平成28年2月29日民集70巻2号242頁(以下「ヤフー事件最判」という)とTPR事件・東京地判令和元年6月27日(未公刊・LEX/DB文献番号25564253。以下「TPR事件東京地判」という)との比較検討を通じて、検討することにする。
事例でわかる[事業承継対策]解決へのヒント 【第15回】「資本金等の額が大きい会社の自己株式の取得」
私Kは不動産管理業を営む非上場会社T社の代表取締役社長(65歳)です。
私には、長男A(35歳)と次男B(33歳)がいます。Aはサラリーマンで、不動産業にも会社経営にも興味はないようです。Bは障害をもっており、私の扶養で妻が面倒を見ています。
このような状況ですので、T社は私の代で清算させようと思っています。小規模企業ですので、費用対効果からM&Aも検討していません。
私もまだ元気ですし、今すぐ会社を清算するつもりはありませんが、Bが障害をもっていることもあり、私の身に“万が一”のことがあった時が心配です。そのため、T社の現預金の一部を拠出し、将来、Bが安心して住める不動産だけでも予め取得し、遺言で相続させたいと考えています。
この場合の現預金の拠出方法について、この先数年間の配当や役員報酬を増額して原資とすることも考えましたが、私の所得税等の負担が大きくなってしまいます。何か良い方法はありますか。