谷口教授と学ぶ「税法基本判例」 【第48回】「所得税法56条の解釈適用に関する2つのアプローチ」-所得税法56条弁護士「夫」税理士「妻」事件に係る各審級裁判所の判断の比較検討-
今回は、所得税法56条弁護士「夫」税理士「妻」事件を取り上げ、所得税法56条の解釈適用について、同事件の第一審・東京地判平成15年7月16日判時1891号44頁(以下「平成15年東京地判」という。なお、同判決は「国破山河在」(杜甫)に擬えて「国敗れて[東京地裁民事]三部あり」といわれた藤山判決(藤山雅行裁判官)の1つである)と、控訴審・東京高判平成16年6月9日判時1891号18頁(以下「平成16年東京高判」という)及びこれを是認した上告審・最判平成17年7月5日税資255号順号10070(以下「平成17年最判」という)とを比較検討することにする。平成17年最判は、所得税法56条の解釈適用については所得税法56条弁護士「夫婦」事件・最判平成16年11月2日訟月51巻10号2615頁(以下「別件平成16年最判」という)を参照しているので、この判決も上記の比較検討において考察の対象とすることにする。
暗号資産(トークン)・NFTをめぐる税務 【第66回】
著名なDEXの1つであるUniswapを例に本稿で検討の対象とする取引等を確認する。
Uniswapプロトコルは、イーサリアムブロックチェーン上のERC-20(トークンの共通規格)に準拠したトークンの流動性を提供し、取引するためのオープンソースプロトコルである。
「税理士損害賠償請求」頻出事例に見る原因・予防策のポイント【事例145(消費税)】 「特定期間における納税義務の免除の特例により課税事業者であったにもかかわらず、インボイス制度の経過措置である「簡易課税制度選択届出書の提出期限の特例」の適用が受けられるものと誤認し、期限までに「簡易課税制度選択届出書」を提出しなかったため、不利な原則課税での申告となってしまった事例」
資本金900万円で法人成りした2期目である令和6年3月期の消費税につき、特定期間の課税売上高が1,000万円超であり、かつ、給与等支払額の合計額が1,000万円超であったため、適格請求書発行事業者の登録にかかわらず課税事業者になることから、「簡易課税制度選択届出書の提出期限の特例」の適用がないにもかかわらず、適用があるものと思い込み、本来の提出期限である令和5年3月末までに「簡易課税制度選択届出書」を提出しなかった。
これにより、不利な原則課税での申告になってしまい、有利な簡易課税と不利な原則課税との差額につき損害が発生し、賠償請求を受けた。
学会(学術団体)の税務Q&A 【第16回】「オンラインセミナーを開催する場合の税務上の留意点」
オンラインでセミナーを開催する場合の税務上の留意点について教えてください。
固定資産をめぐる判例・裁決例概説 【第48回】「約17年間放置していた家屋について損耗減点補正率を使って評価しなかったことは違法であるとされた事例」
今回は、天災、火災のような突発的な災害が原因ではなく、約17年間放置されたことを原因として、家屋について損耗減点補正率を用いて評価しなかったことは違法であると裁判所が判断した事例を検討する。
〈一角塾〉図解で読み解く国際租税判例 【第70回】「「技術上の役務に対する料金」の該当性が問題となった事例(審裁令5.8.15)(その2)」~日印租税条約12条4項~
わが国事業体が関連する国際的商取引の場合、わが国と取引先国の法律関係が問題となる。審判所は、当該裁決において、インド法に準拠して設立され、インドに所在する事業体J社を「インドLLP法に基づき設立された法人」であるとし、わが国租税法上の法人に該当するとしている。まず、わが国及びインド租税法における法人及びLLPの相違について検討をする。
日本の企業税制 【第138回】「ガソリンの暫定税率をめぐる三党協議の行方」
このように、「103万円の壁」と「ガソリンの暫定税率」の両論点ともに幹事長合意以上の具体策までは自公国の三党税調で年内合意に至らず、年明けに議論が持ち越されていた。令和7年2月4日には、第217回国会の閣法第1号議案として、与党税制改正大綱を踏まえた「所得税法等の一部を改正する法律案」が衆議院に提出され、税制改正法案と予算の年度内成立を目指す与党は野党の協力を得るために、2月18日から自公国の三党税調協議を再開した。
〈ポイント解説〉役員報酬の税務 【第71回】「法人名義の車両に係る使用料と経済的利益の供与」
当社が所有する車両を当社役員がプライベートで使用しています。
このような場合において、役員から収受すべき使用料をどのように算定すればよいでしょうか。
相続税の実務問答 【第106回】「贈与税の期限後申告における配偶者控除及び住宅取得等資金贈与の特例の適用可否」
私は令和6年に母との2分の1ずつの共有の居住用建物を建築し、同年12月末までに父母と私の3人で居住を開始しました。
私の建築資金は、父から贈与を受けました。この贈与については、直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税の特例(租税特別措置法第70条の2。以下「住宅取得等資金贈与の特例」といいます)を適用するつもりでした。また、母も父から建築資金の贈与を受けていますが、この贈与については贈与税の配偶者控除の特例(相続税法第21条の6。以下「配偶者控除の特例」といいます)を適用するつもりだったとのことです。
私も母も税金に関しては、あまり知識がありませんでしたので、実際の申告の手続きは、父が知り合いの税理士に依頼してくれることになっていました。ところが今年(令和7年)の1月に、その父が脳梗塞のため入院してしまいました。私も母も「贈与税の特例を適用すれば、贈与税額は算出されない」と父から聞かされていましたので、安易に考え、結局、私も母も贈与税の期限内申告をしませんでした。
父に万が一のことがあったときの相続税の計算にも影響しますから、無申告のまま放置しておくこともできませんので、母共々、今から贈与税の期限後申告をしたいと考えていますが、住宅取得等資金贈与の特例や配偶者控除の特例を適用することはできるでしょうか。
〈一角塾〉図解で読み解く国際租税判例 【第69回】「「技術上の役務に対する料金」の該当性が問題となった事例(審裁令5.8.15)(その1)」~日印租税条約12条4項~
本件は、わが国法人の審査請求人(以下「X社」という)が、インド所在企業のJ社、K社及びL社の各社に支払った金員について、原処分庁が、当該各支払金は、日印租税条約12条4項に規定する「技術上の役務に対する料金」にあたり、国内源泉所得に該当するとして、源泉徴収に係る所得税の納税告知処分等を行ったことに対し、X社が、当該支払金の一部は「技術上の役務に対する料金」に該当しないなどとして、処分の一部取消しを求めた事案である。