谷口教授と学ぶ「国税通則法の構造と手続」 【第15回】「国税通則法24条~26条(~30条)」-申告納税制度における税務官庁による納税義務の確定-
第11回では国税通則法17条(~22条)について、同条の定める期限内申告を申告納税制度の中心ないし基本に据えて「申告納税制度の体系的把握と実定的把握」(同回2・3)の観点から、検討したが、今回は、その検討の延長線上で、申告納税制度における税務官庁による納税義務の確定(税通24条~26条)について検討することにする。
谷口教授と学ぶ「国税通則法の構造と手続」 【第14回】「国税通則法23条(3)」-後発的理由の意義と範囲-
国税通則法が23条2項で特別の更正の請求を定めた趣旨は、前々回1でみたように、「期限内に[減額更正を請求する]権利が主張できなかつたことについて正当な事由があると認められる場合の納税者の立場を保護するため、後発的な事由により期限の特例が認められる場合を[個別税法で規定されていた場合よりも]拡張し、課税要件事実について、申告の基礎となつたものと異なる判決があつた場合その他これらに類する場合を追加する」(税制調査会「税制簡素化についての第三次答申」(昭和43年7月)54頁)ことにあった。
〈事例から理解する〉税法上の不確定概念の具体的な判断基準 【第5回】「「更正の請求」を限定的に解すべき理由」
① 国税通則法(通則法)第23条第1項は、納税申告書に記載した課税標準等若しくは税額等の計算が国税に関する法律の規定に従っていなかったこと又は当該計算に誤りがあったことにより納付すべき税額が過大である場合に、法定申告期限から1年(なお、平成23年12月法律第114号による改正により、5年とされた。)以内に限って、更正の請求をすることができるとしているが、その趣旨は、申告納税制度の下において、課税関係の早期安定と税務行政の効率的運用等の要請を満たす一方で、納税者の権利利益の救済を図るため、一定の事由及び期間に限って更正の請求を認めることとしたものと解される。
谷口教授と学ぶ「国税通則法の構造と手続」 【第13回】「国税通則法23条(2)」-通常の更正の請求と特別の更正の請求-
国税通則法23条1項は、納税者の提出した納税申告書(同法2条6号)に係る課税標準等(同号イ~ハ。同法19条1項柱書参照)又は税額等(同法2条6号ニ~ヘ。同法19条1項柱書参照)の記載の中に、納税者に不利な一定の過誤(同法23条1項1号~3号)があることを要件(過誤要件)として、これが充足された場合に、当該課税標準等又は当該税額等につき更正をすべき旨の請求をすることができると定めているが、この請求が「更正の請求」といわれるものである(同条2項柱書参照。以下「1項更正の請求」という)。
租税争訟レポート 【第66回】「第三者を利用した仮装行為と重加算税(国税不服審判所令和元年10月24日裁決)」
本件は、司法書士業を営む審査請求人(以下「請求人」という)の所得税及び消費税等について、原処分庁が総勘定元帳の売上金額の減額による隠蔽・仮装の行為があったとして重加算税の賦課決定処分を行ったのに対し、請求人が、当該隠蔽・仮装の行為は税理士事務所職員が行ったものであり、請求人に隠蔽・仮装の行為をした事実はないなどとして、原処分の全部の取消しを求めた事案である。
谷口教授と学ぶ「国税通則法の構造と手続」 【第12回】「国税通則法23条(1)」-総説-
申告納税制度は、第一次的には、納税者が各税法の規定に従って納税義務の存否又は範囲を法定申告期限内に正しく確定することを、建前としている(前回2参照)。しかし、納税者にその建前どおりの納税申告を常に期待することは、現実には困難である(申告納税制度の建前と現実の乖離)。では、納税義務の確定が各税法の規定に従っておらず誤っていると事後に納税者が判断した場合、納税者はその誤りをどのような手続(過誤是正手続)によって修正することができるであろうか。
〈事例から理解する〉税法上の不確定概念の具体的な判断基準 【第3回】「税務調査手続によって課税処分が違法になるレベル」
平成23年12月改正で、国税の調査の開始から終了までの手続が通則法に法定化され、平成25年1月1日以後の質問検査等に適用されている。
筆者は、平成26年7月に特定任期付職員として大阪国税不服審判所神戸支所国税審判官に任官されたが、その当時は、法定化された税務調査手続の運用が始まって間もなくの時期であり、導入によって調査現場の負担が増加したからか、一時的に審査請求件数が鍋底状に減少した時期である。
谷口教授と学ぶ「国税通則法の構造と手続」 【第11回】「国税通則法17条(~22条)」-申告納税制度の体系的把握と実定的把握-
前回は納税義務の確定の意義と方式について概説し、その方式については同4でとりわけ自動確定方式の性格を中心に検討したが、今回は、「国税の一般的確定方式」(廣瀬正『国税通則法要義』(新日本法規・1985年)33頁)とされる申告納税方式を取り上げ、納税申告のうち「原則的かつ基本的なもの」(志場喜徳郎ほか共編『国税通則法精解〔令和4年改訂・17版〕』(大蔵財務協会・2022年)294頁、武田昌輔監修『DHCコンメンタール国税通則法』(第一法規・加除式)1204頁)とされる期限内申告を中心に、納税申告について「総論的に」検討することにする(なお、税通22条については第9回2参照)。
〈事例から理解する〉税法上の不確定概念の具体的な判断基準 【第2回】「財産評価基本通達の通達を事実上超えた規範性」
相続税法は「財産の評価」という章立てがあるが、第22条から第26条の2までの7条文しかなく、これによって数多に存在する相続財産の評価体系を規律できるものではない。
とりわけ、評価の原則である第22条は「(略)相続、遺贈又は贈与により取得した財産の価額は、その財産の取得の時における時価により(略)」と概括的に規定しているのみであり、まずもって「時価」の定義を求めるところから始めなければならない。