〈事例から理解する〉税法上の不確定概念の具体的な判断基準 【第3回】「税務調査手続によって課税処分が違法になるレベル」
平成23年12月改正で、国税の調査の開始から終了までの手続が通則法に法定化され、平成25年1月1日以後の質問検査等に適用されている。
筆者は、平成26年7月に特定任期付職員として大阪国税不服審判所神戸支所国税審判官に任官されたが、その当時は、法定化された税務調査手続の運用が始まって間もなくの時期であり、導入によって調査現場の負担が増加したからか、一時的に審査請求件数が鍋底状に減少した時期である。
谷口教授と学ぶ「国税通則法の構造と手続」 【第11回】「国税通則法17条(~22条)」-申告納税制度の体系的把握と実定的把握-
前回は納税義務の確定の意義と方式について概説し、その方式については同4でとりわけ自動確定方式の性格を中心に検討したが、今回は、「国税の一般的確定方式」(廣瀬正『国税通則法要義』(新日本法規・1985年)33頁)とされる申告納税方式を取り上げ、納税申告のうち「原則的かつ基本的なもの」(志場喜徳郎ほか共編『国税通則法精解〔令和4年改訂・17版〕』(大蔵財務協会・2022年)294頁、武田昌輔監修『DHCコンメンタール国税通則法』(第一法規・加除式)1204頁)とされる期限内申告を中心に、納税申告について「総論的に」検討することにする(なお、税通22条については第9回2参照)。
〈事例から理解する〉税法上の不確定概念の具体的な判断基準 【第2回】「財産評価基本通達の通達を事実上超えた規範性」
相続税法は「財産の評価」という章立てがあるが、第22条から第26条の2までの7条文しかなく、これによって数多に存在する相続財産の評価体系を規律できるものではない。
とりわけ、評価の原則である第22条は「(略)相続、遺贈又は贈与により取得した財産の価額は、その財産の取得の時における時価により(略)」と概括的に規定しているのみであり、まずもって「時価」の定義を求めるところから始めなければならない。
日本の企業税制 【第111回】「令和5年度税制改正大綱における電子帳簿等保存制度の見直し」
電子帳簿等保存制度に関しては、令和4年度税制改正で電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存について猶予措置が講じられたが、令和5年度税制改正大綱ではさらに一歩進んで、新たな猶予措置を講ずるとともに、他者から受領した電子データとの同一性が確保された電磁的記録の保存を推進する観点から検索機能の確保の要件が緩和されるなど、さらに実務に配慮した改正が行われることとなった。
谷口教授と学ぶ「国税通則法の構造と手続」 【第10回】「国税通則法15条(及び16条)」-納税義務の成立と確定-
国税通則法は、これまで検討してきた「第1章 通則」に続き、「第2章 国税の納付義務の確定」について規定しているが、今回は、第2章の「第1節 通則(第15条・第16条)」について、「納税義務の成立」と「その納付すべき税額の確定」(以下「納税義務の確定」という)を定める国税通則法15条の規定を中心に検討することにする。
〈事例から理解する〉税法上の不確定概念の具体的な判断基準 【第1回】「国税通則法第65条第4項第1号の過少申告加算税が課されない「正当な理由」のハードル」
本稿は、「不確定概念」を含む代表的な税法規定の課税要件について、国税不服審判所が採用する法令解釈の出所を、事例を題材として解説するとともに、「このような事例は国税不服審判所において争う価値がある(取消しの可能性がある)」「このような事例ではお気の毒ながら救済は難しい(棄却の可能性が高い)」といった目利きを養っていただくことを目的としている。
谷口教授と学ぶ「国税通則法の構造と手続」 【第9回】「国税通則法12条(~14条)及び22条」-書類の送達と提出-
送達とは、「訴訟上の書類を一定の方式により当事者その他の訴訟関係人に了知させることを目的とする裁判権の作用」(角田禮次郎ほか編『法令用語辞典〔第10次改訂版〕』(学陽書房・2016年)501頁)をいうが、国税通則法はこれに「準じた送達の規定」(同頁)を定めている。すなわち、12条で「書類の送達」の通則について、13条で「相続人に対する書類の送達の特例」について、14条で書類の送達ができない場合の「公示送達」についてそれぞれ定めている。
〔顧問先を税務トラブルから救う〕不服申立ての実務 【第20回】「審判官経験者から見た税理士代理人の特徴」
これまでの回で解説したように、審査請求人には自らの主張立証活動に資するための各種権利が認められており、その行使をすれば、担当審判官は基本的にはそれを拒むことはできない。
しかし、これらの権利を経験上行使しない審査請求人の割合が高く、必要がないから敢えて行使しないのではなく、代理人も含めた不服申立制度の理解不足によって行使しないと思しきケースもある。
さっと読める! 実務必須の[重要税務判例] 【第82回】「税理士による隠ぺい・仮装事件」~最判平成18年4月20日(民集60巻4号1611頁)~
A(税理士)は、税務署の説明より譲渡所得に係る税額を低額に抑えられると述べた上、Xから、所得税の確定申告の委任を受けた。しかし、Aは、税務署に対し、譲渡所得は生じず税額は0円である旨の虚偽の確定申告書を提出の上、Xから受領した納税資金を横領した。
谷口教授と学ぶ「国税通則法の構造と手続」 【第8回】「国税通則法(10条及び)11条」-災害等による期限の延長-
期間とは、一般に、「一定の時間的隔たりの間の長さ」(角田禮次郎ほか編『法令用語辞典〔第10次改訂版〕』(学陽書房・2016年)116頁)をいい(ホステス報酬源泉徴収事件・最判平成22年3月2日民集64巻2号420頁によれば「ある時点から他の時点までの時間的隔たりといった、時的連続性を持った概念」)、期限とは、一般に、「公法上若しくは私法上の法律行為の効力の発生若しくは消滅又はこれらの法律行為若しくは事実行為の履行が、一定の日時の到達にかかっている場合における、その一定の日時」(角田ほか編・前掲書122頁)をいう。