〈一角塾〉図解で読み解く国際租税判例 【第37回】「日本ガイシ事件-立地特殊優位性がもたらす利益の取扱いについて-(高判令4.3.10)(その1)」~租税特別措置法66条の4第1項、第2項1号ハ、同施行令39条の12第8項1号ハ~
わが国で、産業の空洞化の問題が取り質され、中小企業から大企業に至るまで様々な企業が海外に製造移管を行い久しい。企業の海外進出の目的は様々だが、主たる目的に、トータルコストの低減が挙げられる。日本に比しより廉価な労働賃金やインフラコストなどを提供する国・地域を求め、企業は進出している。移転価格において、ロケーション・セービング(Location Saving。以下、「LS」という)(※1)と表されるメリットを求めての企業行動である。
monthly TAX views -No.132-「暗雲垂れ込めるデジタル税制」
OECD/G20で進めてきたデジタル税制の議論が、ここにきて大きな転機を迎えている。このままいくと、せっかくの合意が実行に移されず、デジタル経済が混乱したり、米国と欧州とを主戦場とした貿易戦争に発展する可能性がある。筆者が得ている情報の範囲で現状を述べてみたい。
〈判例・裁決例からみた〉国際税務Q&A 【第37回】「経済活動基準の充足に関する手続要件」
現行制度において、経済活動基準の充足に関する手続要件はどのように規定されているのでしょうか。
〈一角塾〉図解で読み解く国際租税判例 【第36回】「大和鋼管工業代表者事件-特定外国子会社と租税条約-(地判平20.8.28、高判平21.2.26、最判平21.12.4)(その2)」~租税特別措置法40条の4、日星租税条約7条1項~
我が国のタックス・ヘイブン対策税制は、「課税の繰延べ」を規制することを目的としたものではなく、「租税回避の否認」を目的としたものである(※3)。なお、タックス・ヘイブン対策税制の本質論に関しては色々な見解があり、表にまとめると以下のようになる(※4)。
〈一角塾〉図解で読み解く国際租税判例 【第35回】「大和鋼管工業代表者事件-特定外国子会社と租税条約-(地判平20.8.28、高判平21.2.26、最判平21.12.4)(その1)」~租税特別措置法40条の4、日星租税条約7条1項~
タックス・ヘイブン対策税制(特定外国子会社利益合算制度、CFC税制、TH税制)が、日本とシンガポールとの間の租税条約(以下「日星租税条約」)に違反しないと最高裁で判断された事例には、グラクソ事件(※1)(法人税事案)と今回のテーマである大和鋼管工業代表者事件(※2)(所得税事案)がある。大和鋼管工業代表者事件の最高裁判決では、グラクソ事件での最高裁判決内容が参照されており、グラクソ事件と同一の論点となるが、法人税法の取扱い(内国法人の収益の額に合算)と所得税法の取扱い(個人の雑所得の総収入金額に合算)の違いがあるため、グラクソ事件判決内容との比較も含めて検討を行う。
〈一角塾〉図解で読み解く国際租税判例 【第34回】「移転価格税制と住民訴訟(地判平7.3.6、高判平8.3.28)(その3)」~旧日米租税条約11条、25条1項、租税条約実施特例法7条、8条、国税通則法23条2項3号、同施行令6条1項4号~
第一審判決では、「条約に適合しない課税」については、特に判示することもなく、前記6(1)②の判示のとおり、同条約における経済的二重課税に対して相互協議の申立てを行うことができるとした。
控訴審判決では、租税条約の「目的」や「常識」という概念により広く解し、「移転価格の調整によって生ずる経済的二重課税は、少なくとも租税条約の精神に反する」というOECD租税委員会の見解を根拠とした。
〈一角塾〉図解で読み解く国際租税判例 【第33回】「移転価格税制と住民訴訟(地判平7.3.6、高判平8.3.28)(その2)」~旧日米租税条約11条、25条1項、租税条約実施特例法7条、8条、国税通則法23条2項3号、同施行令6条1項4号~
本件地方税還付は、本件日米合意に端を発する手続きの流れによってもたらされた(前回図解参照)。Xは、この流れを遮断すべく、まず(1)Zらに相互協議を申し立てる権利がなかったとし、次いで(2)合意後の国税の減額更正処分の手続きに、さらに(3)国税に連動する地方税の減額更正手続きに、各々瑕疵があると主張した。
〈一角塾〉図解で読み解く国際租税判例 【第32回】「移転価格税制と住民訴訟(地判平7.3.6、高判平8.3.28)(その1)」~旧日米租税条約11条、25条1項、租税条約実施特例法7条、8条、国税通則法23条2項3号、同施行令6条1項4号~
本件は、日本に移転価格税制が導入された直後に行われた合意や処分について、租税条約適合性や国税処分の適法性などが争われた事案である。上記図解に沿って事実関係を説明すると、米国の内国歳入庁は、日産及びトヨタ(以下、日産を「Z1」、トヨタを「Z2」、両社を「Zら」)が、米国に所在する各々の子会社への自動車の輸出につき、その販売価格を高めに設定することにより、親子会社を一体とみた場合の利益の配分割合をZらに多くし、反面、Zらの米国子会社の利益を不当に圧縮したとして、①昭和60年(1985年)3月、日本の移転価格税制に相当する内国歳入法典482条を適用し、増額更正の仮更正処分を行った。これを受けて、Zらは日米間における経済的二重課税を回避するため、②昭和61年(1986年)5月、日米租税条約(以下、「日米条約」)25条に基づく相互協議の申立てを行い、③昭和62年(1987年)6月、日米の課税当局間による合意が成立した。合意内容は、Z1の米国子会社は昭和50年(1975年)から昭和61年(1986年)までの12年間について、Z2の米国子会社は昭和52年(1977年)から昭和57年(1982年)までの6年間について所得を増額し、一方の日本の親会社であるZらは、これらに対応する所得を減額することであった(以下、「本件日米合意」)。本件日米合意に基づき、米国ではZらの子会社が上記期間の連邦所得税を追加納税し、④日本ではZらが国税当局に更正の請求を行い、⑤国税当局は、昭和61年4月から施行された租税条約実施特例法7条(以下、「特例法7条」)により減額更正処分を行い、Zらに約800億円の法人税を還付した(以下、「本件国税処分」)。
〈判例・裁決例からみた〉国際税務Q&A 【第36回】「管理支配基準における自ら事業の管理、支配等を行っていることの意義」
管理支配基準における自ら事業の管理、支配等を行っていることとはどのように考えればよいのでしょうか。
〈一角塾〉図解で読み解く国際租税判例 【第31回】「武田薬品工業事件-無形資産の形成による移転価格税制の影響-(大裁平25.3.18)(その3)」~租税特別措置法66条の4第1項、第2項~
医薬が満たすべき条件は大変な数に上り、製薬会社がテストした化合物のうち医薬品として世に出るのは、ごく僅かな数である。実際の医薬品の研究開発は、細胞レベル・動物レベルの実験などで有効性・毒性などを確認し、医薬の候補化合物を見つける「前臨床段階」と、その化合物を実際に人に投与して治療効果・安全性などを確認する「臨床段階」の2つの段階に大きく分かれる。そして、医薬品業界では伝統的に、前臨床段階を行う部署を「研究」、臨床試験を担当する部署を「開発」と呼び分けている。