固定資産をめぐる判例・裁決例概説 【第41回】「不動産売却時に未経過固定資産税を売主が負担したことから買主に経済的利益は生じず、売主から交付を受けた商品券は買主の一時所得であり、所得計上時期は不動産の引渡しを受け商品券の交付を受けた日とされた事例」
固定資産税は、賦課期日である1月1日に土地や家屋及び償却資産を所有している者に課する税金である(地法341一、343①、359)。よって、年中において土地や家屋が売却されたとしても、納税義務があるのは1月1日時点で所有していた売主であり、買主ではない。しかし実務的には、買主が土地や家屋の引渡しを受けた日以後の固定資産税や都市計画税(以下「未経過固定資産税等」という)については、買主が売主に未経過固定資産税等として支払うことがしばしば行われている。
〈一角塾〉図解で読み解く国際租税判例 【第55回】「シンガポール居住者該当性訴訟(地判令1.5.30、高判令1.11.27)(その2)」~旧所得税法2条1項5号、5条1項、2項、同法施行令14条1項2号~
本判決が示した「住所」の解釈について借用概念論を基に検討を行う。なお、本判決は一審判決を全面的に引用したため、一審二審の両判決内容から検討を行う(以下、一審二審の両判決をもって「本件」という)。
日本の企業税制 【第131回】「各府省庁の令和7年度税制改正要望が公表」
8月末に、各府省庁からの令和7年度税制改正要望が公表された。
今回の要望項目数は、単純合計で、国税163項目、地方税187項目、重複排除ベースで、国税110項目、地方税130項目であった。項目数では、国税は過去10年間で最少、地方税でも令和4年度改正に次ぐ少なさとなっている。
〈ポイント解説〉役員報酬の税務 【第65回】「役員のホームリーブ」
海外親会社から赴任してきた当社の役員が、いわゆるホームリーブ休暇により帰国します。このような場合に考えられる論点を教えてください。
基礎から身につく組織再編税制 【第68回】「非適格株式移転を行った場合の株式移転完全親法人、株式移転完全子法人、株式移転完全子法人の株主の取扱い」
今回は、非適格株式移転を行った場合の株式移転完全親法人、株式移転完全子法人、株式移転完全子法人の株主の取扱いについて解説します。
相続税の実務問答 【第99回】「更正の請求における小規模宅地等の選択の同意」
父が、昨年1月に亡くなりました。相続人は兄と私の2名です。相続税の申告書の提出期限までに遺産分割協議が調わなかったので、相続税の申告期限である昨年11月には、法定相続分の割合に従って父の遺産を取得したものとして相続税の計算を行い、期限内申告をしました。
その後、兄と私の間で協議を重ね、今年の8月10日に私と兄がほぼ法定相続分の割合で父の遺産を取得する内容の遺産分割協議が成立しました。
父は、N市とK市にアパートを所有していましたが、遺産分割協議の結果、N市のアパートは私が、K市のアパートは兄がそれぞれ取得することとなりました。いずれのアパートの敷地についても貸付事業用宅地等として小規模宅地等の特例を適用することが可能ですが、私が取得したN市のアパートの敷地300㎡のうち200㎡について小規模宅地等の特例を適用することについて兄も同意していますので、私の相続税について同特例を適用したいと考えています。小規模宅地等の特例を適用するにはどのようにすればよいでしょうか。
〈一角塾〉図解で読み解く国際租税判例 【第54回】「シンガポール居住者該当性訴訟(地判令1.5.30、高判令1.11.27)(その1)」~旧所得税法2条1項5号、5条1項、2項、同法施行令14条1項2号~
X(原告・被控訴人)は、所得税法(平成25年法律第5号による改正前のもの)2条1項5号の「非居住者」に該当するとの認識の下、平成21年分から平成24年分までの所得について日本では申告を行わず、シンガポールの居住者として同国で所得税の申告を行っていたところ、所轄税務署長から同項3号の「居住者」に該当するとして、期限後申告を勧奨されたため、期限後申告を行ったうえで平成23年及び平成24年分の所得税につき更正の請求をしたが認められず、本件各年分の所得税の無申告加算税に係る各賦課決定処分を受けたため、その取消しを求めた。
《速報解説》 各省庁の令和7年度税制改正要望は既存制度の延長・拡充が中心~生命保険料控除は前年度与党大綱通りの拡充を共同要望~
8月末から9月頭にかけて各府省庁から令和7年度税制改正要望が公表された。
令和6年度税制改正における戦略分野国内生産促進税制やイノベーションボックス税制など、ここ数年は経済産業省からの要望を中心に新たな税制の創設も見られたが、令和7年度税制改正要望は例年に比べ新税制創設の要望は少なく、中小企業経営強化税制や中小企業投資促進税制、中小企業者等の法人税率の特例といった既存制度の延長・拡充の要望が中心となっている。